説明

鍵と可動体との管理システム

【課題】手動式鍵で操作される錠を有する家具や扉についても解施錠状態の把握を可能ならしめ、以って、セキュリティを向上させる。
【手段】ワゴンの引出しにシリンダ錠25が取り付けられている。シリンダ錠25は鍵12で回転操作される閂板25bを有しており、閂板25bがカマチ28の係合穴29に嵌脱する。引出し9の鏡板26又はワゴン本体のカマチ27に使用状態検知手段30が取り付けられている。使用状態検知手段30はセンサ31や無線発振回路等を内蔵しており、シリンダ錠25の解施錠状態を検出した信号は無線で中継アンテナに送信され、次いで、中継アンテナから管理装置(パソコン)に送信される。鍵管理装置や警報手段や入退室管理システムをシステムに組み込むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、手動式鍵(キー)とこの鍵で解施錠される錠を有する可動体との管理システムに関するものである。ここに、可動体の代表例としては家具の引出しや扉、建物の扉(ドア,戸,窓)が挙げられる。また、家具にはキャビネット、ワゴン、机、金庫など様々のものがある。扉は、水平回動式やスライド式、跳ね上げ回動式、シャッター式など様々の構造が含まれる。
【背景技術】
【0002】
錠は多種多様のものがあるが、解施錠操作の方法から見ると、人が手動操作して機械的に解施錠するものと、電気的に解施錠できるものとに大別されると言える。前者の手動操作するものとしては、シリンダ錠のように鍵を使用して解施錠するものと、ダイヤル錠のように鍵無しで解施錠できるものとに大別される。鍵の形態も錠の形態に応じて多種多様である。オフィスや各種施設では多数の鍵方式錠が使用されているが、鍵の紛失の早期発見や不正使用を防止する必要があり、そこで、鍵の持ち出し状態を管理する装置が提案されている(特許文献1〜4)。
【0003】
電気錠は、電磁ソレノイドやモータのようなアクチェータによって解施錠(正確には、解錠又は施錠若しくは両方)が行われる。但し、機械的錠と電気錠とは構造が全く相違するという訳ではなく、例えばダイアル錠のロッドをモータで回転させて解錠する電気錠や、シリンダ錠のデッドボルトに連動する閂部材を電磁ソレノイドで動かす電気錠のように、鍵による解施錠と電気的な解施錠とを併用したものもある。
【0004】
他方、オフィス等の施設には、出入り口用の扉の錠を初めとして建物や家具に多数の錠が使用されており、これらの錠の使用状態を管理することはセキュリティ上で重要なことである。この管理手段として従来は電気錠を使用することで対処しており、例えば出入り口用の扉を例に取ると、解錠手段として磁気カードやICカードを使用することにより、扉の開閉状態や開閉履歴等を管理できるようになっている。
【特許文献1】特許第3182258号公報
【特許文献2】特許第2774888号公報
【特許文献3】特公昭58−56792号公報
【特許文献4】特開平6−146671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鍵式の錠でロックされる扉や引出し等についても使用状態を管理すべきものが多くあるが、従来は、鍵自体の持ち出しを管理できているに過ぎず、鍵が実際に使用されているのか否かと言う点や、使用の頻度のような使用履歴の点などを把握する試みは成されていなかった。これは、錠の使用状態の管理は電気錠でしか実現できず、鍵方式の錠に関しては使用状態を遠隔的に管理することはできない、という発想に基づくものと推測される。
【0006】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、鍵で操作される錠を設けた可動体を遠隔的・集中的に管理することを可能ならしめんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は鍵と可動体との管理システムに係るものであり、請求項1の発明では、手動式鍵で操作される錠を有する可動体と、前記錠又は可動体の解施錠状態を直接に又は間接的に検出する使用状態検知手段と、前記錠又は可動体の解施錠状態を管理する管理装置と、前記使用状態検知手段の信号を管理装置に送る送信手段とが備えられている。ここに「管理する」とは、少なくとも、解錠状態であるか施錠状態であるかを識別してモニター等で把握できれば足りる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、請求項1の構成に加えて、多数の可動体の錠に対応した多数の鍵を保管する鍵保管装置が備えられており、前記鍵保管装置には、個々の鍵ごとにその有無を検知する鍵検知手段が設けられており、前記鍵保管装置の各鍵検知手段と管理装置とを電気的に接続することにより、個々の鍵と個々の錠又は可動体との使用状態が管理装置で把握可能になっている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記送信手段は、前記使用状態検知手段で検知した信号を無線で送る無線送信手段と、前記無線送信手段から送信された信号を受信する中継アンテナとを備えており、前記中継アンテナから管理装置に有線又は無線若しくは両者併用にて信号が送られるようになっている。
【0010】
請求項4の発明では、請求項1〜3のうちの何れかにおいて、前記可動体は、家具の引出し、家具の扉、建物の扉、のうちの少なくとも一つである。なお、本願発明において「解施錠状態を検知する」とは、解錠状態のみを検知する場合、施錠状態のをみを検知する場合、解錠状態と施錠状態との両方を検知する場合、の三者を含んでいる。また、解錠状態と施錠状態とは、錠自体のロック状態・ロック解錠状態と、扉等の可動体のロック状態・ロック解錠状態との両方を含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によると、手動式の鍵で操作される錠を備えた可動体であっても解錠状態と施錠状態とが管理装置で管理されるため、オフィスや建物等におけるセキュリティ機能を向上できる。また、可動体の解施錠状態が管理されることは、可動体の錠を操作する鍵の使用状態が管理されることと同じであり、従って、鍵の紛失の早期発見や鍵の不正使用防止にも貢献できる。
【0012】
会社等の組織(或いは施設・建物)では多数の鍵が使用されており、これらの鍵は就業時間中にはそれぞれ使用を許可された責任者が所持し、就業時間外には守衛室等の管理エリアに設けた鍵保管庫に保管しておくことが行われているが、請求項2の構成を採用すると、鍵の持ち出し・使用状態・返却の履歴を管理装置で把握できるため、セキュリティ性を大幅にアップできる。
【0013】
使用状態検知手段で検出した信号を管理装置に送信する手段としては、使用状態検知手段を端末としてこれと管理装置との間の全体を通信ケーブルで接続することも可能であるが、これは配線作業が非常に面倒であり、特に、既に設置している扉や家具に後付けすることは現実には不可能に近いことが多い。これに対して請求項3の構成を採用すると、建物の適当な場所にアンテナを配置して、家具や建物等には適当な箇所に使用状態検知手段と送信手段とを取り付けるだけで足りるため、面倒な配線作業を無くすことができ、その結果、既設の建物や家具等への後付けにも容易に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は会社や官公庁のオフィスに適用した例を示しており、図1ではシステムを構成する各要素の関係を模式的に示している。
【0015】
(1).システムの概略
本実施形態では、可動体の例として、建物の出入り口に設けた扉1、キャビネット2の引出し3、キャビネット4のスライド式引き戸5、キャビネット6の水平回動式扉7、ワゴン8の引出し9を表示している。ワゴン8は机10の内部に格納している。机10に錠付きの引出しを設けることも多く行われているが、この場合、机10を本願発明のシステムに組み込むことも可能である。金庫や耐火庫のような他の家具、或いは、建物に作り付けた戸棚を本願発明のシステムに組み込むことも可能である。
【0016】
管理システムは、管理装置の一例としての管理パソコン11と、多数の鍵12を保管する鍵保管庫13とを有している。管理パソコン11はデスクトップ型を使用しているがノート型パソコンを使用することも可能であり、また、管理装置としてワークステーションを使用することも可能である。言うまでもないが、管理パソコン11は本実施形態のシステムの専用品という訳ではなく、様々の用途に供される。管理状態はディスプレイに表示してビジュアルに把握できる。
【0017】
管理パソコン11の設置場所は任意に設定できる。例えば守衛室である場合もあるし、セキュリティ管理者のデスクである場合もある。複数台の管理パソコン11を管理装置として共有し、それぞれに独立性を持たせることも可能である。大きな組織の場合、各部署ごとに個別に中間管理パソコンを設置して、例えば総務部のような統括部に統括パソコンを設置するといったことも可能である。
【0018】
鍵保管庫13は多数の鍵保持部を有する本体15を備えている。各鍵保持部には鍵穴14が空いており、特定の鍵穴14には特定の鍵12しか挿入できないようになっている。本体15には各鍵穴14に対応して鍵検知手段16を設けている。鍵検知手段16は接触式や非接触式のセンサを備えており、特定の鍵12を特定の番地の鍵穴14に挿入するとセンサが鍵12の存在を検出する。鍵12を回転させることで存在が検知されるように設定することも可能である。また、各鍵穴14に対応してロックボタンを設け、ロックボタンを押さないと鍵12が抜けないように設定することも可能である。
【0019】
図示は省略しているが、鍵保管庫13は扉(或いはカバー)を備えており、扉を開けないと鍵12の出し入れはできない。そして、本体15の適当な場所にカードリーダ17を設けており、特定のカードをカードリーダ17に通さないと扉を開けることはできない。カードは使用者ごとに特定されており、従って、誰が扉を開けてどの鍵12を取り出したり戻したりしたかの履歴を知ることができる。カードリーダ17に代えて又はこれに加えてボタン式又はタッチパネル式等の入力手段を設け、適正な番号(暗唱番号)が入力されないと開扉しない構成とすることも可能である。
【0020】
各鍵検知手段16とカードリーダ17とは第1枝ケーブル18及び主ケーブル19を介して管理パソコン11に接続されている。敢えて述べるまでもないが、枝ケーブル18と主ケーブル19とは専用回線とすることも可能であるが、コストの面からは電話線や電力線を使用するのが好適である。特に、無線LANの回線を兼用すると好適である。
【0021】
キャビネット2,4,6やワゴン8を設置している部屋には無線受信用の中継アンテナ21を配置しており、キャビネット2,4,6やワゴン8や扉1から送信された無線信号(解錠信号又は施錠信号若しくは両方)が中継アンテナ21で受信され、信号は第2枝ケーブル22を介して主ケーブル19に伝達される。中継アンテナ21は各家具や扉1から発せられた無線信号(電波)を的確に受信できる箇所に配置すべできあり、天井や壁、或いは壁際に設置した家具の最上面などが好適である。
【0022】
フロアーが広い場合は、一部屋に複数の中継アンテナ21を配置するこことも可能である。中継アンテナとして横長の棒状(又はワイヤー状)のものを使用することも可能である。また、机上に設置した中継パソコン23に机上アンテナ24を介して中継アンテナ21から電波信号を送信し、信号を電話線(主ケーブル19)で管理パソコン11に送信することも可能である。或いは、中継パソコン23を解さずに、机上アンテナ24と電話線とを直接に接続することも可能である。勿論、中継アンテナ21から管理パソコン11に直接に送信することも可能である。
【0023】
多数の室がある場合は、各室ごとに1台又は複数台の中継アンテナ21が配置されており、これら中継アンテナ21の群は主ケーブル19に接続されている。従って、管理パソコン11で各室の家具類や扉1の解施錠状態を把握できる。管理パソコン11には必要なプログラムが格納されており、各室における個別の家具や扉1の解施錠状態を視認することができる。当然ながら、誰がどの鍵を保管しているかという基本情報も把握でき、更に、鍵や錠の使用履歴はメモリーに随時記録されている。
【0024】
中継アンテナ21や第2枝ケーブル22や主ケーブル19は、請求項に記載した送信手段を構成している。
【0025】
(2).使用状態検知手段の第1具体例
次に、図2以下の図面を参照して使用状態検知手段の配置例を説明する。使用状態検知手段は家具の構造や錠の構造によってその構成や配置態様が大きく異なる。図2(A)の第1具体例ではワゴン8の例を示している。
【0026】
このワゴン8では最上段の引出し9のみにシリンダ錠25を取り付けている。すなわち、引出し9は中空の鏡板26を有しているが、鏡板67の内部に、鍵穴25aが外側に露出する状態でシリンダ錠25を取り付けている。シリンダ錠25は鍵12で回転する閂板(デッドボルト)25bを有しており、施錠すると、閂板25bは上向き姿勢となってワゴン本体27におけるカマチ28に形成した係合穴29に嵌まり込み、これによって引出し9はロックされる。
【0027】
そして、この例では、使用状態検知手段30は、実線で示すように鏡板26の内部に配置するか、又は一点鎖線で示すようにワゴン本体27におけるカマチ28の内部に配置している。使用状態検知手段30には閂板25bの姿勢を検知するセンサ31が設けられている。また、使用状態検知手段30はケースに納まって一つの外観を成しており、ケースの内部には電池や無線送信アンテナ、駆動及び制御の回路が内蔵されている。
【0028】
図2(A)においてセンサ31は模式的に描いているが、反射式等の近接センサや、発光ダイオードと受光ダイオードとの対を使用した透光式センサ、或いはリミットスイッチ(マイクロスィッチ)のような接触式など各種のものを使用できる。敢えて述べるまでもないが、センサ31はシリンダ錠25の施錠でONになっても良いし解錠でONになっても良い。使用状態検知手段30を構成するセンサ31と本体部と電池との三者を別々のユニットに構成して、これらを結線することも可能である(電池ユニットは電池の交換を容易な箇所に配置できる。)。
【0029】
一点鎖線で簡単に示すように、鏡板26の前面やカマチ28の前面のように室内に向いた面に太陽電池32を配置し、太陽電池から使用状態検知手段30に給電することも可能である。また、使用状態検知手段30を鏡板26の前面やワゴン本体27の前面に取り付けることも可能である。
【0030】
(3).使用状態検知手段の第2具体例
図2(B)では複数段(3段)の引出し3が一斉にロック・ロック解除されるオールロック装置を有するキャビネット2への適用例を示している。この例では、オールロック装置は、シリンダ錠25の他に、キャビネット本体2aの天板部の下面部に配置した左右横長で左右一対のシーソー部材34、シリンダ錠25の解施錠操作によってシーソー部材34を回動させるクランク部材25、シーソー部材34の回動によって上下動するようにキャビネット本体2aの内側面に配置した上下長手のロックバー(縦杆)36、各引出し3をロック・ロック解除するためにキャビネット本体2aの内側面に配置した係合部材(ストッパー)、といった部材を有している。図の例では、シリンダ錠25の閂板25bは解施錠操作で上下動する(ロックバー36が上昇するとロック状態になる。)。
【0031】
オールロック装置は多数の可動部材を備えているので、いずれかの可動部材の動きを使用状態検知手段30で検知することで解施錠状態を検出できる。図2(B)では、左右いずれかのシーソー部材34の動きを検知すべくキャビネット本体1の天板下面部に配置した態様と、片方のロックバー36の動きを検知すべくキャビネット本体2aの内側面部に配置した態様、引出し3の動きを検知するためにキャビネット本体2aの内側面部に配置した態様、の3つを示している(3つの態様はいずれか一つが選択される。)。もちろん、閂板25bの動きを検知したりクランク部材35の動きを検知したりすることも可能である。
【0032】
(4).使用状態検知手段の第3具体例
図3では、オールロック装置を有する引き出し式キャビネット2に適用した第3具体例を示している。(A)は内部から見た概略側面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。この例はロックバー36の動きを検知するものであり、ロックバー36は補強部材37に形成した溝部37aの内部に上下動自在に嵌め入れられている。符号38で示すのはサスペンションレール本体である。
【0033】
そして、この例では、キャビネット本体2aにおける片方の内側面部でかつ最下段のサスペンションレール本体38の外側に、使用状態検知手段30として、主ユニット30aとセンサユニット(接触式リミットスイッチ)31と電池ユニット30bとを配置している。主ユニット30aとセンサユニット31、主ユニット30aと電池ユニット30bとは互いに結線されている。センサユニット31は補強部材37と外面板との間の空所に配置されており、ロックバー36が下降し切ってロック解除状態になるとONになる。
【0034】
主ユニット30aには発振回路や送信アンテナが内蔵されている。発振回路や制御回路等の回路類は1枚の基板に実装されている。敢えて述べるまでもないが、各ユニットを一体化することも可能である。また、使用状態検知手段30をキャビネット本体2aの上部内面に配置することも可能である。電源としてはボタン型等の各種の電池を使用できるし、また、第1具体例の変形例のように太陽電池32を使用することも可能である。
【0035】
(5).使用状態検知手段の第4具体例
図4では、建物における出入り口の扉(ドア)1に適用した第4具体例を示している。建物における扉1の錠ユニット39はノブ40や閂杆41やラッチ体(図示せず)等を有しており、ラッチ体はノブ40の回転によって後退し、閂杆41は鍵12(及び内部摘み)を回転させることで突出・後退して建物Bの係合穴B1に嵌脱する。
【0036】
本具体例では、使用状態検知手段30は錠ユニット39を構成するケースの内部に配置されている。そして、使用状態検知手段30は、閂体41が後退動するとこれに押されてばねに抗して後退するスライダー42を有しており、スライダ42が後退するとONの信号が発せられるように設定している。
【0037】
更に、使用状態検知手段30には、スライダー42が後退すると発電する圧電素子43と電池とを内蔵しており、回路を駆動する電力や無線送信のための電力は圧電素子43で発電された電力でまかなわれる。従って、本例では電池の交換は不要である。この実施形態では、既設の扉1であっても、錠ユニット39を交換することにより、本願発明のシステムに簡単に組み込むことができる。
【0038】
(6).使用状態検知手段の第5〜第6具体例
図5(A)では、シリンダ錠25に使用状態検知手段30を内蔵した第5具体例を示している。シリンダ錠25は、おおよそ、外側を構成する固定式の外筒45、鍵穴46aを有すると共に外筒45の内部に回転可能に嵌め入れられた内筒46、内筒46に放射姿勢で嵌め入れられ駆動ピン47の群、外筒45に放射姿勢で嵌められたロックピン48の群、ロックピン48を軸心方向に押すばね49、といった部材で構成されており、鍵が適正であるとロックピン48の群は外筒45に逃げて、内筒46を所定角度(例えば90度)回転させることが許容される(図5(A)は原理を示すものであり、実際にはもっと複雑である。)。
【0039】
そして、この第5具体例では、内筒46の適当な箇所に外向きの突起50を設ける一方、外筒45には突起50が逃げ移動することを許容する凹所51と、凹所51に向けて部分的に開口したケース格納部52を形成し、ケース格納部52に使用状態検知手段30を取り付けている。使用状態検知手段30は、内筒46が回転すると突起50の回動によってばねに抗して後退する接触子53と、接触子53の後退動によって発電する圧電素子、発振回路等の回路類が内蔵されている。
【0040】
この第5具体例では、キャビネット等の家具や扉には特段の加工を施す必要はないため、既設の家具類についてもシリンダ錠25を交換するだけで本願発明のシステムに簡単に組み込むことができる。
【0041】
図5(B)では、鍵12に使用状態検知手段30を一体に設けた第6具体例を示している。この具体例では、鍵12のうち人が指で摘む部分にケースで囲われた使用状態検知手段30を設けて、ケースの前端にプッシュボタン30cを設けている。使用状態検知手段30は回路類や発振アンテナを内蔵している。そして、キー12を錠25の鍵穴に回転し得る深さまで差し込むとプッシュボタン30の動きによって内蔵したスイッチがONになり、発振回路が作動して信号が中継アンテナ21に送信される。
【0042】
この実施形態では錠25や家具等には特段の加工を施す必要がないためシステム化が極めて容易であり、特に、既設の家具や建物をシステム化する場合に好適である。使用状態検知手段30には電池を設けているが、この電池は交換式でもよいし充電式でもよい。使用状態検知手段30の前端面と鍵保管庫13における鍵穴14の前端面箇所とに電極を設けて、鍵保管庫13に格納しているときに充電するという方法も採用することも可能である。
【0043】
(7).ブロック図・まとめ
図6では上述したシステムのブロック図を示している。使用状態検知手段30とCPUを中核とするコントローラやセンサー、無線通信端末(送信アンテナ)等を備えており、無線通信端末から信号が中継アンテナ21に送信され、信号は例えばLAN回線を通じて管理パソコン11等の管理装置に送信される。中継アンテナ21は複数配置していることが多いが、この場合は回路中にスイッチングハブやルータ(或いはサーバ)等の中継接続手段を介在させたらよい。管理装置11はCPUを中核とするコントローラやメモリー類、通信インターフエース、入力装置、出力装置、表示装置なども備えている。
【0044】
鍵保管庫13の制御部は信号を受け取る通信インターフェースやコントローラ、メモリー類、鍵検出手段16、扉用カードリーダー17等を備えており、各鍵検出手段16はドライバ(駆動回路)や鍵有無検知用センサ等を備えている。また、鍵保管庫13は液晶式等の表示装置を備えており、使用者へのメッセージ等の各種の情報を表示できる。持ち出された鍵が実際に使用されたが施錠忘れになっている場合、その鍵が鍵保管庫13に返却されたら、「○○は施錠されていません。戻って施錠して下さい。」 というメッセージを表示といったことが可能である。
【0045】
管理装置11と鍵保管庫13とを一体化して「鍵保管管理装置」とすることも可能である。例えば、鍵保管室に設置したパソコンに、鍵保管庫13への鍵12の出し入れ状態の管理機能と、各鍵12と引出し等の可動体の解施錠状態の管理機能とを併有させるのである。鍵保管庫13が表示装置や入力装置を備えている場合は、鍵保管庫13の制御部に本願システムの管理機能を保持させることも可能である。
【0046】
オフィスでは、家具は鍵で解施錠するものの室の扉はカードによって解施錠する電気錠方式にしているケースも多々ある。本願発明は電気錠を使用して入退室管理システムと組み合わせることも可能であり、そこで、図6では、入退室用リーダーと管理パソコン11とをLAN回線で接続している。そして、入退室用リーダーに(或いはその近傍に)文字や音声等の表示手段を設けておくことにより、例えば、家具が解錠されたのに施錠されていない場合は、鍵12の所有責任者が退室する際にその旨を文字や音声で知らせることができる。
【0047】
以上の説明から理解できるように、本実施形態では、手動式の鍵で操作される錠を有する家具や扉なが配置・設置されている各種施設において、鍵の使用状態や家具・扉類の使用状態を遠隔的に把握・管理できるため、高いセキュリティ機能を確保できる。
【0048】
特に、管理パソコン11等の管理装置で各錠の解施錠状態を常に把握できるため、既述のように、鍵を鍵保管室の所定位置(鍵穴14)に戻した際や退室する際に、例えば、施錠忘れしている場合はその旨を表示装置に文字で表示して然るべき行動を採らせることができる。文字での表示に代えて、ランプの点灯による注意喚起や音声のアナウンスと言った方策を取ることも可能になり、これらの注意喚起手段によって格段に高いセキュリティ性を確保できる。
【0049】
また、解錠状態や施錠状態、或いは引出し等の可動体の実際の動きの状態等の検知信号は無線で中継アンテナ21に送信されるため、煩わしい配線作業は不要であって工事の手間を抑制できる。その結果、既設の設備類をシステムに組み込むことも容易にななる。また、本実施形態のシステムは電話線や無線LANシステムを部分的に共用できることも特徴としており、これにより、システムの構築コストを著しく抑制できる。無線LANシステムがアンテナを備えている場合、このLAN用のアンテナを本願発明の中継アンテナに兼用することも可能である。
【0050】
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば圧電素子等の発電装置を家具等に設けることは第1〜第3具体例を初めとして広く適用できる。例えば引出し付きのキャビネットを例に取ると、引出しの引き出し動又は押し込み動によって発電する圧電素子を設け、その電力を電池に蓄電して使用状態検知手段の駆動電源とすることも可能である。このように構成すると、引出しの前後動や扉の開閉では大きな力が発生するため、必要な電力をしっかりと確保できる利点がある。
【0051】
建物の扉をシステムに組み込む場合、警備会社のような外部の管理システムと連係させることも可能である。鍵保管庫は建物に一体に作り込むことも可能である。錠にはシリンダ錠の他に押し込み錠や南京錠など様々のタイプがあるが、本願発明では各種の錠に適応できる(従って、解錠のみが鍵で行われる錠も含んでいる。)。本願のシステムを警報システムに組み込んだり、本願のシステムに警報手段を組み込むことも可能である。また、使用状態検知手段の駆動電源としては、中継アンテナから送信された電波エネルギーを利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本願発明のシステムを模式的に示す概略斜視図である。
【図2】使用状態検知手段の第1及び第2具体例を示す図である。
【図3】使用状態検知手段の第3具体例を示す図である。
【図4】使用状態検知手段の第4具体例を示す図である。
【図5】使用状態検知手段の第5〜第6具体例を示す図である。
【図6】システムの概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
1 可動体の一例としての建物の扉
2,6 家具の一例としてのキャビネット
3,9 可動体の一例としての引出し
8 家具の一例としてのワゴン
11 管理装置として機能する管理パソコン
12 鍵
13 鍵保管庫
16 鍵保管庫の鍵検出手段
19 送信手段の一環を成す主ケーブル(電話線)
21 中継アンテナ
22 送信手段の一環を成す枝ケーブル
30 使用状態検知手段
31 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式鍵で操作される錠を有する可動体と、前記錠又は可動体の解施錠状態を直接に又は間接的に検出する使用状態検知手段と、前記錠又は可動体の解施錠状態を管理する管理装置と、前記使用状態検知手段の信号を管理装置に送る送信手段とが備えられている、 鍵と可動体との管理システム。
【請求項2】
請求項1の構成に加えて、多数の可動体の錠に対応した多数の鍵を保管する鍵保管装置が備えられており、前記鍵保管装置には、個々の鍵ごとにその有無を検知する鍵検知手段が設けられており、前記鍵保管装置の各鍵検知手段と管理装置とを電気的に接続することにより、個々の鍵と個々の錠又は可動体との使用状態が管理装置で把握可能になっている、
鍵と可動体との管理システム。
【請求項3】
前記送信手段は、前記使用状態検知手段で検知した信号を無線で送る無線送信手段と、前記無線送信手段から送信された信号を受信する中継アンテナとを備えており、前記中継アンテナから管理装置に有線又は無線若しくは両者併用にて信号が送られるようになっている、
請求項1又は2に記載した鍵と可動体との管理システム。
【請求項4】
前記可動体は、家具の引出し、家具の扉、建物の扉、のうちの少なくとも一つである、
請求項1〜3のうちの何れかに記載した鍵と可動体との管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−185451(P2009−185451A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23438(P2008−23438)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】