鍵盤楽器
【課題】初心者等が利用し易い鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器100は、音を半音分移調させることが可能なペダル機構70と、ペダル機構70により操作される鍵盤ユニットとを備えている。ペダル機構70は、ダンパーペダル71を備え、また鍵盤部180の鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側(例えば左側)に設けられた第1のペダル72、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側(例えば右側)に設けられた第2のペダル73を備えている。第1のペダル72を踏むことで、ワイヤ75が矢印B方向に引かれ、鍵盤ユニットが半音分左方向Cに移動するように構成されている。第2のペダル73を踏むことで、ワイヤ77が矢印D方向に引かれ、鍵盤ユニットが半音分右方向Eに移動するように構成されている。
【解決手段】鍵盤楽器100は、音を半音分移調させることが可能なペダル機構70と、ペダル機構70により操作される鍵盤ユニットとを備えている。ペダル機構70は、ダンパーペダル71を備え、また鍵盤部180の鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側(例えば左側)に設けられた第1のペダル72、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側(例えば右側)に設けられた第2のペダル73を備えている。第1のペダル72を踏むことで、ワイヤ75が矢印B方向に引かれ、鍵盤ユニットが半音分左方向Cに移動するように構成されている。第2のペダル73を踏むことで、ワイヤ77が矢印D方向に引かれ、鍵盤ユニットが半音分右方向Eに移動するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤を有する鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤楽器の鍵盤は、白鍵と黒鍵とが白、黒、白、黒、白、白、黒、白、黒、白、黒及び白の繰り返しとなるように順に配列されて構成されている。配列された各鍵盤の音程は半音に設定され、各白鍵の音程は全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように設定されている。弦を有するアコースティックピアノ等の鍵盤楽器は、鍵盤を押鍵することでハンマが弦を叩き音が発生し、鍵盤から指を離すことでダンパが下がり弦を抑えて振動を停止させるように構成されている。エレクトリックピアノ等の電子式の鍵盤楽器は、音のデジタルデータを利用して音源により音が発生するように構成されている。このように、初心者から上級者まで略全ての人が利用可能な鍵盤楽器が提供されている。
【0003】
この電子式の鍵盤楽器には、曲の調を移すための自動移調装置(機能)を具備しているものがある。例えば特許文献1には、電子式の鍵盤楽器全体の移調情報を設定するための移調情報設定手段や移調しないパートを設定するための移調除外パート設定手段を有する自動移調装置が開示されている。自動移調設定手段、移調除外パート設定手段に、移調する度数等の情報を設定することで、所望の移調を行っている。また、この電子式の鍵盤楽器は、例えば演奏者が演奏したデータを記憶し再生可能な自動演奏装置を有している。
【特許文献1】特開平9−319368号公報(段落[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、白鍵と黒鍵とが繰り返し配列されており、初心者が気軽に利用し易いものとはいい難い。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、初心者等が利用し易い鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鍵盤楽器は、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみからなる鍵盤部と、前記鍵盤部を支持する支持部と、前記鍵盤毎に対応して設けられた振動可能な弦と、押鍵された前記鍵盤に連動して打弦するハンマーと、前記各弦に対して前記ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構とを具備する。
【0007】
本発明では、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみから鍵盤部が構成されている。すなわち、初心者等を鍵盤楽器から遠退ける原因となり得る鍵盤(例えば、黒鍵)を設けずに鍵盤が配列されている。これにより、曲の演奏に必要な鍵盤を確保しつつ初心者が鍵盤楽器に気軽に取り組めるようにすることができると共に、初心者が演奏し易くなるようにすることができる。鍵盤楽器を製造するために準備する鍵盤等の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。また、初心者は鍵盤のみを用いて演奏することができると共に、例えば中級者等はペダルを用いて半音分ずれた音を出して演奏すことができる。
【0008】
ここで、鍵盤部とは、上記鍵盤1つ1つの集合体である。支持部は、例えば、各鍵盤を下から支持する支持部材、または各鍵盤の一部を収容するケーシング等を有している。
【0009】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーによる打弦により振動する前記弦を振動させ続けるためのダンパーペダルを更に具備し、前記ペダル機構は、前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより低音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音下げることができる第1のペダルと、前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより高音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音上げることができる第2のペダルとを有する。これにより、演奏者から見て鍵盤の右側が高音側であり、左側が低音側である場合に、例えば演奏者の左の足を押鍵した鍵盤の音を半音下げるために用い、右の足を押鍵した鍵盤の音を半音上げるために用いることができる。したがって、演奏者にとって直感的なペダル操作が可能となり、第1のペダル及び第2のペダルを用いた演奏を容易にすることができる。
【0010】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦の配列された方向で低音側に移動可能であり、前記第2のペダルにより、前記各弦の配列された方向で高音側に移動可能である。このため、例えば音を小さくするために各弦の配列方向にハンマーを移動させる従来のシフティングペダルと同様の機構を、ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構に用いることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0011】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦が配列される方向に略垂直な軸の周りで低音側に回動可能であり、前記第2のペダルにより、前記軸の周りで高音側に回動可能である。このようにしても左右の足を用いて押鍵した音を半音下げたり上げたりすることができる。
【0012】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、各鍵盤上であって該各鍵盤の配列される面内でスライド可能に設けられた演奏支援盤を更に具備する。
【0013】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、前記各鍵盤に離接するように回動可能に設けられた演奏支援盤を更に具備する。
【0014】
このような構成によれば、例えば演奏時等に演奏支援盤をスライド又は回動させて各鍵盤に重ね、演奏支援盤を利用して演奏することができる。従って、より一層演奏し易くすることができる。また、演奏終了時等には、例えば白鍵のみとすることで鍵盤上に形成されたスペースを有効に利用して再び演奏支援盤をスライド又は回動させて待避させることができる。
【0015】
本発明の一の形態によれば、前記演奏支援盤は、黒鍵が印された支援盤、カラー鍵盤が印された支援盤、音階が印された支援盤、又は、数字が記された支援盤である。黒鍵が印された支援盤、音階が印された支援盤、数字が印された支援盤は、例えばスライド又は回動可能に設けられた透明シートに黒鍵盤印、音名、数字がそれぞれ印されたものである。カラー鍵盤は、例えばスライド又は回動可能な半透明シートであり、半透明シートをスライド又は回動させることで、各鍵盤に重なり各鍵盤が異なる色に見えるように着色されている。これにより、使用者等の好みに合わせて演奏支援盤を利用することができるので、より演奏し易くすることができる。
【0016】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、曲の情報を記憶する手段と、前記各鍵盤を上方からそれぞれ押鍵可能となるように設けられた複数の押鍵部と、前記曲の情報に基づき前記各押鍵部を制御する手段とを有し、前記支持部に載置可能な自動演奏部をさらに具備する。このような構成によれば、各鍵盤を上方から各押鍵部により押すことができる。このため、実際に演奏者が鍵盤を叩いたときのような繊細な音を発生させることができる。このとき、各押鍵部が移動する量及び速さ等を制御することで、より繊細な音の強弱を発生させることができる。自動演奏部は鍵盤楽器の支持部に載置して取り付けたり、取外したりすることができるので、汎用性に優れている。鍵盤楽器の内部に自動演奏部を設ける必要がないので、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみから鍵盤部を構成することで、初心者が利用し易い鍵盤楽器を提供することができる。また、初心者は鍵盤のみを用いて演奏することができると共に、例えば中級者等はペダルを用いて半音分ずれた音を出して演奏すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1、図2及び図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子式の鍵盤楽器を示すブロック図、正面図、及び、部分平面図である。
【0020】
本実施形態の鍵盤楽器10は、鍵盤楽器10全体を制御するCPU(Central Processing Unit)1を備えている。CPU1は、制御プログラムやPCM(Pulse Code Modulation)データ等が記憶されたROM(Read Only memory)2、CPU1のワークエリアとなるとともに、鍵盤楽器10の外部から入力された曲の情報や、後述する設定パネル11で設定された曲の調の情報等を記憶可能なRAM(Random Access memory)3、複数の音を同時に発生可能な音源回路7にそれぞれ内部インターフェースを介して接続されている。RAM3に記憶された曲の情報には、例えば、鍵盤楽器10の外部から入力された曲に使用されている音、音の使用回数等の情報が含まれている。
【0021】
音源回路7は、図示を省略したD/A(Digital/Analog)変換器、アンプ8を介してスピーカ9に接続されている。鍵盤楽器10は、音を入力するための鍵盤部4を備えている。鍵盤部4は発音又は消音される音のタイミング等を指示するための鍵盤21を複数有している(図2参照)。鍵盤部4は、各鍵盤21のオンオフをスキャンして操作された鍵盤21を検出したりする鍵盤部インターフェース回路5を介してCPU1等に接続されている。
【0022】
CPU1等は、移調先となる調を設定可能な設定パネル11に内部インターフェースを介して接続されている。例えば鍵盤楽器10の使用者の操作入力により、鍵盤楽器10が再生する曲の調を設定するために設定パネル11が用いられる。この設定パネル11には、例えば図示しない操作ボタンが設けられており、使用者によってその操作ボタンが操作されることでCPU1は移調先を設定する。CPU1等は、自動移調プログラムが記憶された自動移調プログラム記憶部6に内部インターフェースを介して接続されている。
【0023】
自動移調プログラムは、RAM3に記憶された音の情報に基づき、鍵盤楽器10の外部から入力された曲の調を判別し、判別された調の音を設定パネル11で設定された調の音に移すことで、調を移調するために用いられる。鍵盤楽器10の外部から入力された曲とは、例えば利用者が鍵盤21をたたいて入力された曲等が考えられる。これを以下、初期設定という。しかし、使用者が初心者である場合、当該初心者が、ある1つの曲を入力することは難しい。したがって、この場合、その使用者はその曲のテンポ等に関係なく鍵盤をたたいて1つ1つの音を入力していくようにすればよい。この場合、使用者は楽譜を見ながら入力すればよい。また、この場合の楽譜としては、本実施の形態に係る鍵盤楽器10で用いることができる楽譜等が予め用意されていればよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、鍵盤楽器10は、鍵盤部4と、鍵盤部4を支持可能な支持部17とを備えている。鍵盤部4は、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるようにX方向に配列された鍵盤21のみから構成されている。各鍵盤21は、全て同一色であり、例えば白色に設定されており、黒鍵は設けられていない。なお、全て同一色の例を示したが、例えば、「ド(音名)」に相当する鍵盤21を他の鍵盤と異なる色にしたり、1オクターブ毎に鍵盤の色を異なる色にしたりするようにしてもよい。また、設定パネル11で設定した移調先の調の主音を発生させるための鍵盤21の位置は、例えば、鍵盤部4の中央(真中)のドの位置に設定されていることが好ましい。この位置は、一見して分かるように印を印したり発光するようにしてもよい。
【0025】
支持部17の上面には、各鍵盤21側から見てY方向奥側に、演奏を支援するための演奏支援盤15が収容された収容部18が設けられている。演奏支援盤15は、各鍵盤21上であって各鍵盤21の配列される面内で初期設定位置SからY方向にスライド可能に設けられている。演奏支援盤15をY方向にスライドさせることで、各鍵盤21上のスペースに移動させ鍵盤21に重ねることができる。演奏支援盤15は、例えば透明シートに「ドレミファソラシド」等の音名が印されたものである。なお、例えば、音名の代わりに黒鍵盤印、数字がそれぞれ印された透明シートを用いるようにしてもよいし、スライドして各鍵盤21に重ねることで各鍵盤21が異なる色に見えるように着色された半透明シートを用いるようにしてもよい。また、各鍵盤21自体の色を同様に変えるようにしてもよい。
【0026】
次に、鍵盤楽器10の動作について図面を参照しながら説明する。なお、既に上記初期設定が終了し、設定パネル11から予め移調先の調の情報が設定されてRAM3に記憶された後のステップについて説明する。初心者等は、例えば演奏し易い「ハ長調」に移調先を設定することが好ましい。
【0027】
図4に示すように、ステップ10において、CPU1は、自動移調プログラムによりRAM3に記憶された曲の音と、音の使用回数の情報を用いて、入力された曲の調を判別する。例えば、入力された音の情報を多い順に8個選択し、選択された各音の間の音程を演算し、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音となるときには長調と判断する。一方、同様に選択された各音の間の音程が全音、半音、全音、全音、半音、全音及び全音となるときには短調と判断する。
【0028】
ステップ11では、8個の音の情報のうち最低音を主音と判別する。これにより、曲の調が例えば「ホ長調」等に判別されるとする。
【0029】
ステップ12では、ステップ10、11で判別された曲の調の音を、設定パネル11で設定された調の音に移して移調する。例えば、設定パネル11で設定された移調先の調が「ハ長調」、ステップ10、11で判別された曲の調が「ホ長調」のときには、半音4個分移すように設定されている。
【0030】
以上のように、本実施形態では、鍵盤楽器10は音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤21のみからなる鍵盤部4を備えている。すなわち、初心者等を鍵盤楽器10から遠退ける原因となり得る黒鍵を設けずに各鍵盤21が配列されている。これにより、曲の演奏に必要な各鍵盤21を確保しつつ初心者が鍵盤楽器10に気軽に取り組めるようにすることができると共に、初心者が演奏し易くなるようにすることができる。鍵盤楽器10を製造するために準備する鍵盤21等の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0031】
本実施形態では、各鍵盤21が全て同一色である。このような構成によれば、初心者が打楽器に取り組むように鍵盤楽器10に取り組むことができると共に、鍵盤楽器10を製造するために異なる色や形状の鍵盤21を準備する必要がないので、低コスト化を図ることができる。なお、本実施形態では、電子式の鍵盤楽器10を例示したが、アコースティックピアノ等の鍵盤楽器の場合には、鍵盤や鍵盤を押鍵することで弦を叩くハンマーや弦の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0032】
本実施形態では、設定パネル11で設定される調の情報等を記憶し、自動移調プログラムにより自動移調を行っている。これにより、移調するための度数等の情報を使用者が設定することなく容易に移調することができる。従って、移調された曲を演奏者が聞きながら同調で演奏したりすることが可能となる。このとき、移調した楽譜を予め準備しておくことが好ましい。これにより、予め準備した楽譜を見ながら演奏することができるので、演奏がより容易となる。
【0033】
本実施形態では、演奏支援盤15が、各鍵盤21上であって各鍵盤21の配列される面内でY方向にスライド可能に設けられている。このため、演奏時に演奏支援盤15をスライドさせて各鍵盤21に重ね、演奏支援盤15を利用して演奏することができる。従って、より一層容易に演奏することができる。また、演奏終了時等には、各鍵盤21上のスペースを有効に利用して再び演奏支援盤15をスライドさせて待避させることができる。つまり、黒鍵がないので演奏支援盤15をスライドさせることが容易となる。
【0034】
図5は図2に示す鍵盤楽器を示す正面図、図6は鍵盤楽器の自動演奏装置を示すブロック図である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態の鍵盤楽器30は、自動で曲を演奏可能な自動演奏装置50を備えている。自動演奏装置50は、支持部17の上面に載置されて設けられている。自動演奏装置50は、支持部17の上面に載置されたケーシング51と、各鍵盤21を上方からそれぞれ押鍵可能に設けられた複数の押鍵部52とを備えている。自動演奏装置50が支持部17の上面に安定して支持されるように、ケーシング51の下端面に、例えば自動演奏装置50の位置ずれを防止するための合成樹脂製部材を設けたり、支持部17の上面に凹部を設けたりするようにすることが好ましい。
【0036】
ケーシング51内には、図6に示すように、自動演奏装置50全体を制御するCPU57と、CPU57のワークエリアとなるRAM53と、制御プログラム、PCMデータ及び曲の情報等が記憶されたROM54と、CPU57の命令により押鍵部52を上下動させるためのインターフェース回路56とを有している。各押鍵部52は、例えば磁性体でなり、円柱状の形状を有しており、周りにはコイルが巻回されている。CPU57によりコイルに印加する電圧を制御することで、各押鍵部52を上下動させ各鍵盤21を上方から押すことができるように構成されている。このため、実際に演奏者が鍵盤21を叩いたときのような繊細な音を発生させることができる。このとき、各押鍵部52が移動する量及び速さ等をCPU57が制御することで、より繊細な音の強弱を発生させることができる。自動演奏装置50は支持部17に載置して取り付けたり、取外したりすることができるので、汎用性に優れている。鍵盤楽器30の内部に自動演奏装置50を設ける必要がないので、専門業者等により鍵盤楽器を改造する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。
【0037】
図8は第3の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す正面図、図9は鍵盤ユニットの内部を示す側面図である。図11は、図9に示す鍵盤ユニットの一部を示す平面図である。第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態に係る鍵盤楽器10の部材や機能等について同様のものは説明を簡略または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0038】
鍵盤楽器100は、音を半音分移調させることが可能なペダル機構70と、ペダル機構70により操作される鍵盤ユニット80(図9参照)とを備えている。
【0039】
ペダル機構70は、ダンパーペダル71を備え、また鍵盤部180の鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側(例えば左側)に設けられた第1のペダル72、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側(例えば右側)に設けられた第2のペダル73を備えている。
【0040】
第1のペダル72は、例えばワイヤ75の一端部に連結されておりワイヤ75の他端部は鍵盤ユニット80の左側に連結されている。ワイヤ75は、パイプ76に収容されている。第1のペダル72を踏むことで、ワイヤ75が矢印B方向に引かれ、鍵盤ユニット80が半音分左方向Cに移動するように構成されている。
【0041】
第2のペダル73は、例えばワイヤ77の一端部に連結されておりワイヤ77の他端部は鍵盤ユニット80の右側に連結されている。ワイヤ77は、パイプ78に収容されている。第2のペダル73を踏むことで、ワイヤ77が矢印D方向に引かれ、鍵盤ユニット80が半音分右方向Eに移動するように構成されている。
【0042】
図9に示すように、鍵盤ユニット80には、鍵盤部180と、鍵盤部180を支持する支持部材81と、打弦機構82と、ダンパー機構90とが設けられている。打弦機構82及びダンパー機構90は周知の構造でなり、これらは1つの鍵盤85ごとに設けられている。打弦機構82は、1つの鍵盤85に対応する弦91、92、93(94〜96、97〜99)(図11参照)を弾いて音を出すための楕円板状のハンマー82a、(82b、82c)、これらのハンマー82a等を支持する支持棒82e、演奏者による押鍵時にハンマー82a等が上昇するように支持棒82eの一端部を軸支する軸支部材82f、押鍵時に鍵盤85に連動して支持棒82eのハンマー82a側を上昇させるための棒部材82g等を有している。棒部材82gは後述するように鍵盤85の動きに連動するように構成されている。
【0043】
ダンパー機構90は、弦91、92、93に当接してその振動を停止させるためのダンパー90a、ダンパー90aに接続されたワイヤ90b、ワイヤ90bの下端に接続され、演奏者により鍵盤85が押鍵されたときに鍵盤85の端部85aに当接して突き上げられる回動部材90cと備えている。また、ダンパー機構90は上述したように鍵盤85ごとに設けられているが、ダンパー機構90の全てがダンパーペダル71に突き上げ棒74を介して機構的に接続されている。これにより、演奏者によりダンパーペダル71が踏まれることで、突き上げ棒74が矢印A方向(図8参照)に突き上げられ、全てのダンパー機構90が作動して各ダンパー90aが弦91等から離れた状態となる。
【0044】
次に、鍵盤85を押鍵したとき及びダンパーペダル71を踏んだときの動作について説明する。
【0045】
図10に示すように、鍵盤85を押鍵すると端部85aの上昇に連動して、棒部材82gの一端部が上昇すると共に支持棒82eの他端部が上昇する。棒部材82gの上昇は軸支部材82fの底面により制限される。支持棒82eと一体的にハンマー82aが上昇し打弦した後ハンマー82aが下降し弦91から離れる。押鍵により上昇する端部85aは回動部材90cを回動させて、ワイヤ90bと共にダンパー90aを突き上げ、弦91からダンパー90aが離れるようにする。これにより、鍵盤85が押鍵されている間は、弦91が振動し続ける。演奏者が鍵盤85を離すと、端部85aが下降すると共に、回動部材90cが下降する。回動部材90cの下降に連動してワイヤ90bと一体的にダンパー90aが下降し、ダンパー90aが弦91に接触する。一方、ダンパーペダル71を踏むと、突き上げ棒74が上昇し、全ての鍵盤85に対応する全ての回動部材90cが回動して上昇する。回動部材90c等が上昇する共に、ワイヤ90bと一体的にダンパー90aが上昇し、弦91から離れる。演奏者がダンパーペダル71を離すと、突き上げ棒74が下降すると共に回動部材90c等が下降する。回動部材90c等の下降に連動して、ワイヤ90bと一体的にダンパー90aが下降し、ダンパー90aが弦91に接触する。すなわち、ダンパーペダル71を踏んでいる間は、押鍵されない状態でも弦91とダンパー90aとが離れた状態を保ち一度鳴らした音を響かせることができる。
【0046】
次に、第2のペダル73の使用時の動作について説明する。図12は鍵盤楽器100におけるハンマー82a近傍の第2のペダル73を使用したときの拡大平面図である。
【0047】
図11に示すように、第2のペダル73の未使用時には、例えば3本の弦91、92、93がハンマー82aの直上に設けられ、3本の弦94、95、96がハンマー82bの直上に設けられ、3本の弦97、98、99がハンマー82cの直上に設けられている。このとき、例えば、演奏者がハンマー82aに対応する鍵盤85を押鍵する共に第2のペダル73を踏むと、図12に示すように各弦に対して各ハンマーが高音側(右方向E)に半音分移動する。すなわち、ハンマー82aは弦94、95、96を打弦する。図13に示すように、例えば演奏者が鍵盤86を押鍵すると共に第1のペダル72を踏むことで、鍵盤86の音より半音低い音を出すための実際には設けられていない鍵盤87(通常は黒鍵)の音を出すことができる。鍵盤85を押鍵すると共に第2のペダル73を踏むことで、鍵盤87の音を出すことができる。このように、全音間隔で設けられた鍵盤の音から半音ずれた音を出すことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤楽器100は、弦91等に対して半音分ハンマー82aを低音側に移動させたり高音側に移動させたりするペダル機構70を備えている。このため、初心者はペダル71、72、73を用いずに鍵盤85だけを用いて演奏することができると共に、例えば中級者以上の人は足を使って音を半音上げたり下げたりして演奏することができる。
【0049】
本実施形態に係る鍵盤楽器100は、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側に配置された第1のペダル72と、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側に配置された第2のペダル73とを備えている。このため、演奏時にダンパーペダル71を挟んで左に第1のペダル72、右に第2のペダル73が位置することになる。従って、左右の足をそれぞれ音の半音下げ上げに対応させることができるので、直感的な演奏が可能となり、第1のペダル72及び第2のペダル73を用いた演奏を容易にすることができる。
【0050】
本実施形態では、第1のペダル72を踏むことにより、ワイヤ75を介して弦91等の配列された方向で低音側にハンマー82a等を移動させることができると共に、第2のペダル73を踏むことより、ワイヤ77を介して弦91等の配列された方向で高音側にハンマー82a等を移動させることができる。このため、例えば音を小さくするために各弦の配列方向にハンマーを移動させる周知のシフティングペダルと同様の機構を、ペダル機構70に用いることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0051】
図14は第4の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す拡大平面図である。
【0052】
本実施形態では、ハンマー82bは、弦91等が配列される方向に垂直な回動軸101の周りに、低音側及び高音側にそれぞれ半音分回動可能に設けられている。ハンマー82bの先端部は、ワイヤ105の一端に連結されており、ワイヤ105の他端部は第1のペダル72に連結されている。また、ハンマー82bの先端部は、ワイヤ106の一端部に連結されており、ワイヤ106の他端部は第2のペダル73に連結されている。なお、他のハンマーについても同様に構成されている。
【0053】
本実施形態では、演奏者が第1のペダル72を踏むことで、ハンマー82bを回動軸101の周りに低音側に半音分回動させることができると共に、第2のペダル73を踏むことで、ハンマー82bを回動軸101の周りに高音側に半音分回動させることができる。このようにしても同様に第1のペダル72及び第2のペダル73を用いて、押鍵した音を半音上げたり下げたりすることができる。
【0054】
本発明は以上説明した実施形態には限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、曲の音及びその曲の調の情報等が予め記憶された図示を省略したROMを備え、第1の実施形態の自動移調プログラムのうちステップ12のみを有する自動移調プログラムを備えるようにしてもよい。この場合の自動移調プログラムは、ROMに記憶されている曲の音の情報を、ROMに記憶された曲の調の情報に基づき、設定パネル11で設定された調の音に自動で移調するために用いられる。このような構成では、予めROMに曲の調の情報が記憶されているので、第1の実施形態のように曲の調を判別する必要がない。従って、曲の調の判別が不正確のために正確に移調できなくなることを防止することができるので、確実かつ迅速に移調することができる。
【0056】
上記第1の実施の形態では、曲に使用されている音とその使用回数を用いる自動移調プログラムを使用して移調する例を示した。しかし、移調するプログラムはこれに限定されない。例えば、曲の最初又は最後に主音がくることが多いことに着目し、曲の最初又は最後の音により主音と判別するようにしてもよい。また、上記実施形態と同様に曲の調を判別し、調の判別が適正であるか否かを判断するために曲の最初又は最後の音を使用するようにしてもよい。
【0057】
上記第1の実施形態では、ステップ10で曲が長調か否かを判別し、ステップ11で主音を判別する例を示した。しかし、主音を判別した後に曲が長調か否かを判別するようにしてもよい。
【0058】
上記第1の実施形態では、初期設定において、使用者が鍵盤部4で鍵盤をたたく等して曲を演奏することによって、その曲の情報を入力する例を示した。しかし、入力装置はこれに限定されない。例えば、図1に示すように、鍵盤楽器10の外部から曲の情報を入力可能なマイクロフォン12や図示を省略したCD−ROMドライブを、音をデジタルデータに変換する図示を省略したサンプラ部を介して接続するようにしてもよい。マイクロフォン12や図示を省略したCD(Compact Disk)−ROMドライブのCDから入力した音をサンプリングし、同様に音の情報に基づき調を判別し移調するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0059】
上記第1の実施形態では、設定パネル11で設定される移調先の調の情報と、曲の音の情報とが同一のRAM3に記憶される例を示した。しかし、設定パネル11で設定される調の情報と、曲の音の情報とが異なるRAMに記憶されるようにしてもよい。
【0060】
上記第2の実施形態では、曲の情報が記憶されたROM54を有する自動演奏装置50を例示した。しかし、ROM54に曲の情報を持たせずに、外部からRAM3に入力して記憶された曲の情報を用いて自動演奏するようにしてもよい。このようにすることで、自動演奏装置の低コスト化を図ることができる。
【0061】
上記第2の実施形態では、各押鍵部52を電磁式に上下動させる例を示した。しかし、例えば空気圧、水圧、油圧によるシリンダ駆動、又はリニアモータ等の駆動機構によって押鍵部52を上下動するようにしてもよい。このようにしても、同様に繊細な音を発生させることができる。
【0062】
上記実施形態では、自動移調プログラムを有している例を示した。しかし、設定パネル11に手動式の移調設定部を設けるようにしてもよい。このようにしても、鍵盤楽器の利用者が移調する度数を計算して手動で移調し、移調された曲を演奏者が聞きながら同調で演奏したりすることが可能となる。
【0063】
上記実施形態では、スライド可能に設けられた演奏支援盤15を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、図7に示すように、アコースティックピアノ40等の場合には、各鍵盤21に離接するように蓋45の回動軸Xと同軸上に回動可能に設けられた演奏支援盤26を用いるようにしてもよい。これにより、演奏支援盤26を回動させ各鍵盤21に重ねることで、演奏支援盤を利用することができるので、初心者が演奏し易くすることができる。
【0064】
上記実施形態では、本発明を鍵盤楽器10、30が自動移調プログラムや演奏支援盤15を有する例を示したが、自動移調プログラムや演奏支援盤15を有さないようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、本発明を電子式の鍵盤楽器に適用する例を示したが、アコースティックの鍵盤楽器に適用してもよいことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子式の鍵盤楽器を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る鍵盤楽器を示す正面図である。
【図3】図2に示す鍵盤楽器を示す部分平面図である。
【図4】自動演奏プログラムのフローチャートである。
【図5】図2に示す鍵盤楽器を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る鍵盤楽器の自動演奏装置を示すブロック図である。
【図7】第1、第2の実施の形態に係る鍵盤楽器の演奏支援盤の変形例を示す側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す正面図である。
【図9】図8に示す鍵盤楽器の鍵盤ユニットの内部を示す側面図である。
【図10】鍵盤ユニットの内部の打弦時の拡大平面図である。
【図11】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルを使用する前の拡大平面図である。
【図12】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルを使用したときの拡大平面図である。
【図13】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルの使用による作用を説明するための図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1、57…CPU
3、53…RAM
4、180…鍵盤部
6…自動移調プログラム記憶部
10、30、100…鍵盤楽器
11…設定パネル
15、26…演奏支援盤
17…支持部
21、85、86…鍵盤
50…自動演奏装置
52…押鍵部
54…ROM
71…ダンパーペダル
72…第1のペダル
73…第2のペダル
82a、82b、82c…ハンマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤を有する鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤楽器の鍵盤は、白鍵と黒鍵とが白、黒、白、黒、白、白、黒、白、黒、白、黒及び白の繰り返しとなるように順に配列されて構成されている。配列された各鍵盤の音程は半音に設定され、各白鍵の音程は全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように設定されている。弦を有するアコースティックピアノ等の鍵盤楽器は、鍵盤を押鍵することでハンマが弦を叩き音が発生し、鍵盤から指を離すことでダンパが下がり弦を抑えて振動を停止させるように構成されている。エレクトリックピアノ等の電子式の鍵盤楽器は、音のデジタルデータを利用して音源により音が発生するように構成されている。このように、初心者から上級者まで略全ての人が利用可能な鍵盤楽器が提供されている。
【0003】
この電子式の鍵盤楽器には、曲の調を移すための自動移調装置(機能)を具備しているものがある。例えば特許文献1には、電子式の鍵盤楽器全体の移調情報を設定するための移調情報設定手段や移調しないパートを設定するための移調除外パート設定手段を有する自動移調装置が開示されている。自動移調設定手段、移調除外パート設定手段に、移調する度数等の情報を設定することで、所望の移調を行っている。また、この電子式の鍵盤楽器は、例えば演奏者が演奏したデータを記憶し再生可能な自動演奏装置を有している。
【特許文献1】特開平9−319368号公報(段落[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、白鍵と黒鍵とが繰り返し配列されており、初心者が気軽に利用し易いものとはいい難い。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、初心者等が利用し易い鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鍵盤楽器は、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみからなる鍵盤部と、前記鍵盤部を支持する支持部と、前記鍵盤毎に対応して設けられた振動可能な弦と、押鍵された前記鍵盤に連動して打弦するハンマーと、前記各弦に対して前記ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構とを具備する。
【0007】
本発明では、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみから鍵盤部が構成されている。すなわち、初心者等を鍵盤楽器から遠退ける原因となり得る鍵盤(例えば、黒鍵)を設けずに鍵盤が配列されている。これにより、曲の演奏に必要な鍵盤を確保しつつ初心者が鍵盤楽器に気軽に取り組めるようにすることができると共に、初心者が演奏し易くなるようにすることができる。鍵盤楽器を製造するために準備する鍵盤等の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。また、初心者は鍵盤のみを用いて演奏することができると共に、例えば中級者等はペダルを用いて半音分ずれた音を出して演奏すことができる。
【0008】
ここで、鍵盤部とは、上記鍵盤1つ1つの集合体である。支持部は、例えば、各鍵盤を下から支持する支持部材、または各鍵盤の一部を収容するケーシング等を有している。
【0009】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーによる打弦により振動する前記弦を振動させ続けるためのダンパーペダルを更に具備し、前記ペダル機構は、前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより低音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音下げることができる第1のペダルと、前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより高音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音上げることができる第2のペダルとを有する。これにより、演奏者から見て鍵盤の右側が高音側であり、左側が低音側である場合に、例えば演奏者の左の足を押鍵した鍵盤の音を半音下げるために用い、右の足を押鍵した鍵盤の音を半音上げるために用いることができる。したがって、演奏者にとって直感的なペダル操作が可能となり、第1のペダル及び第2のペダルを用いた演奏を容易にすることができる。
【0010】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦の配列された方向で低音側に移動可能であり、前記第2のペダルにより、前記各弦の配列された方向で高音側に移動可能である。このため、例えば音を小さくするために各弦の配列方向にハンマーを移動させる従来のシフティングペダルと同様の機構を、ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構に用いることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0011】
本発明の一の形態によれば、前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦が配列される方向に略垂直な軸の周りで低音側に回動可能であり、前記第2のペダルにより、前記軸の周りで高音側に回動可能である。このようにしても左右の足を用いて押鍵した音を半音下げたり上げたりすることができる。
【0012】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、各鍵盤上であって該各鍵盤の配列される面内でスライド可能に設けられた演奏支援盤を更に具備する。
【0013】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、前記各鍵盤に離接するように回動可能に設けられた演奏支援盤を更に具備する。
【0014】
このような構成によれば、例えば演奏時等に演奏支援盤をスライド又は回動させて各鍵盤に重ね、演奏支援盤を利用して演奏することができる。従って、より一層演奏し易くすることができる。また、演奏終了時等には、例えば白鍵のみとすることで鍵盤上に形成されたスペースを有効に利用して再び演奏支援盤をスライド又は回動させて待避させることができる。
【0015】
本発明の一の形態によれば、前記演奏支援盤は、黒鍵が印された支援盤、カラー鍵盤が印された支援盤、音階が印された支援盤、又は、数字が記された支援盤である。黒鍵が印された支援盤、音階が印された支援盤、数字が印された支援盤は、例えばスライド又は回動可能に設けられた透明シートに黒鍵盤印、音名、数字がそれぞれ印されたものである。カラー鍵盤は、例えばスライド又は回動可能な半透明シートであり、半透明シートをスライド又は回動させることで、各鍵盤に重なり各鍵盤が異なる色に見えるように着色されている。これにより、使用者等の好みに合わせて演奏支援盤を利用することができるので、より演奏し易くすることができる。
【0016】
本発明の一の形態によれば、鍵盤楽器は、曲の情報を記憶する手段と、前記各鍵盤を上方からそれぞれ押鍵可能となるように設けられた複数の押鍵部と、前記曲の情報に基づき前記各押鍵部を制御する手段とを有し、前記支持部に載置可能な自動演奏部をさらに具備する。このような構成によれば、各鍵盤を上方から各押鍵部により押すことができる。このため、実際に演奏者が鍵盤を叩いたときのような繊細な音を発生させることができる。このとき、各押鍵部が移動する量及び速さ等を制御することで、より繊細な音の強弱を発生させることができる。自動演奏部は鍵盤楽器の支持部に載置して取り付けたり、取外したりすることができるので、汎用性に優れている。鍵盤楽器の内部に自動演奏部を設ける必要がないので、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみから鍵盤部を構成することで、初心者が利用し易い鍵盤楽器を提供することができる。また、初心者は鍵盤のみを用いて演奏することができると共に、例えば中級者等はペダルを用いて半音分ずれた音を出して演奏すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1、図2及び図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子式の鍵盤楽器を示すブロック図、正面図、及び、部分平面図である。
【0020】
本実施形態の鍵盤楽器10は、鍵盤楽器10全体を制御するCPU(Central Processing Unit)1を備えている。CPU1は、制御プログラムやPCM(Pulse Code Modulation)データ等が記憶されたROM(Read Only memory)2、CPU1のワークエリアとなるとともに、鍵盤楽器10の外部から入力された曲の情報や、後述する設定パネル11で設定された曲の調の情報等を記憶可能なRAM(Random Access memory)3、複数の音を同時に発生可能な音源回路7にそれぞれ内部インターフェースを介して接続されている。RAM3に記憶された曲の情報には、例えば、鍵盤楽器10の外部から入力された曲に使用されている音、音の使用回数等の情報が含まれている。
【0021】
音源回路7は、図示を省略したD/A(Digital/Analog)変換器、アンプ8を介してスピーカ9に接続されている。鍵盤楽器10は、音を入力するための鍵盤部4を備えている。鍵盤部4は発音又は消音される音のタイミング等を指示するための鍵盤21を複数有している(図2参照)。鍵盤部4は、各鍵盤21のオンオフをスキャンして操作された鍵盤21を検出したりする鍵盤部インターフェース回路5を介してCPU1等に接続されている。
【0022】
CPU1等は、移調先となる調を設定可能な設定パネル11に内部インターフェースを介して接続されている。例えば鍵盤楽器10の使用者の操作入力により、鍵盤楽器10が再生する曲の調を設定するために設定パネル11が用いられる。この設定パネル11には、例えば図示しない操作ボタンが設けられており、使用者によってその操作ボタンが操作されることでCPU1は移調先を設定する。CPU1等は、自動移調プログラムが記憶された自動移調プログラム記憶部6に内部インターフェースを介して接続されている。
【0023】
自動移調プログラムは、RAM3に記憶された音の情報に基づき、鍵盤楽器10の外部から入力された曲の調を判別し、判別された調の音を設定パネル11で設定された調の音に移すことで、調を移調するために用いられる。鍵盤楽器10の外部から入力された曲とは、例えば利用者が鍵盤21をたたいて入力された曲等が考えられる。これを以下、初期設定という。しかし、使用者が初心者である場合、当該初心者が、ある1つの曲を入力することは難しい。したがって、この場合、その使用者はその曲のテンポ等に関係なく鍵盤をたたいて1つ1つの音を入力していくようにすればよい。この場合、使用者は楽譜を見ながら入力すればよい。また、この場合の楽譜としては、本実施の形態に係る鍵盤楽器10で用いることができる楽譜等が予め用意されていればよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、鍵盤楽器10は、鍵盤部4と、鍵盤部4を支持可能な支持部17とを備えている。鍵盤部4は、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるようにX方向に配列された鍵盤21のみから構成されている。各鍵盤21は、全て同一色であり、例えば白色に設定されており、黒鍵は設けられていない。なお、全て同一色の例を示したが、例えば、「ド(音名)」に相当する鍵盤21を他の鍵盤と異なる色にしたり、1オクターブ毎に鍵盤の色を異なる色にしたりするようにしてもよい。また、設定パネル11で設定した移調先の調の主音を発生させるための鍵盤21の位置は、例えば、鍵盤部4の中央(真中)のドの位置に設定されていることが好ましい。この位置は、一見して分かるように印を印したり発光するようにしてもよい。
【0025】
支持部17の上面には、各鍵盤21側から見てY方向奥側に、演奏を支援するための演奏支援盤15が収容された収容部18が設けられている。演奏支援盤15は、各鍵盤21上であって各鍵盤21の配列される面内で初期設定位置SからY方向にスライド可能に設けられている。演奏支援盤15をY方向にスライドさせることで、各鍵盤21上のスペースに移動させ鍵盤21に重ねることができる。演奏支援盤15は、例えば透明シートに「ドレミファソラシド」等の音名が印されたものである。なお、例えば、音名の代わりに黒鍵盤印、数字がそれぞれ印された透明シートを用いるようにしてもよいし、スライドして各鍵盤21に重ねることで各鍵盤21が異なる色に見えるように着色された半透明シートを用いるようにしてもよい。また、各鍵盤21自体の色を同様に変えるようにしてもよい。
【0026】
次に、鍵盤楽器10の動作について図面を参照しながら説明する。なお、既に上記初期設定が終了し、設定パネル11から予め移調先の調の情報が設定されてRAM3に記憶された後のステップについて説明する。初心者等は、例えば演奏し易い「ハ長調」に移調先を設定することが好ましい。
【0027】
図4に示すように、ステップ10において、CPU1は、自動移調プログラムによりRAM3に記憶された曲の音と、音の使用回数の情報を用いて、入力された曲の調を判別する。例えば、入力された音の情報を多い順に8個選択し、選択された各音の間の音程を演算し、音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音となるときには長調と判断する。一方、同様に選択された各音の間の音程が全音、半音、全音、全音、半音、全音及び全音となるときには短調と判断する。
【0028】
ステップ11では、8個の音の情報のうち最低音を主音と判別する。これにより、曲の調が例えば「ホ長調」等に判別されるとする。
【0029】
ステップ12では、ステップ10、11で判別された曲の調の音を、設定パネル11で設定された調の音に移して移調する。例えば、設定パネル11で設定された移調先の調が「ハ長調」、ステップ10、11で判別された曲の調が「ホ長調」のときには、半音4個分移すように設定されている。
【0030】
以上のように、本実施形態では、鍵盤楽器10は音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤21のみからなる鍵盤部4を備えている。すなわち、初心者等を鍵盤楽器10から遠退ける原因となり得る黒鍵を設けずに各鍵盤21が配列されている。これにより、曲の演奏に必要な各鍵盤21を確保しつつ初心者が鍵盤楽器10に気軽に取り組めるようにすることができると共に、初心者が演奏し易くなるようにすることができる。鍵盤楽器10を製造するために準備する鍵盤21等の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0031】
本実施形態では、各鍵盤21が全て同一色である。このような構成によれば、初心者が打楽器に取り組むように鍵盤楽器10に取り組むことができると共に、鍵盤楽器10を製造するために異なる色や形状の鍵盤21を準備する必要がないので、低コスト化を図ることができる。なお、本実施形態では、電子式の鍵盤楽器10を例示したが、アコースティックピアノ等の鍵盤楽器の場合には、鍵盤や鍵盤を押鍵することで弦を叩くハンマーや弦の数を減少させることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0032】
本実施形態では、設定パネル11で設定される調の情報等を記憶し、自動移調プログラムにより自動移調を行っている。これにより、移調するための度数等の情報を使用者が設定することなく容易に移調することができる。従って、移調された曲を演奏者が聞きながら同調で演奏したりすることが可能となる。このとき、移調した楽譜を予め準備しておくことが好ましい。これにより、予め準備した楽譜を見ながら演奏することができるので、演奏がより容易となる。
【0033】
本実施形態では、演奏支援盤15が、各鍵盤21上であって各鍵盤21の配列される面内でY方向にスライド可能に設けられている。このため、演奏時に演奏支援盤15をスライドさせて各鍵盤21に重ね、演奏支援盤15を利用して演奏することができる。従って、より一層容易に演奏することができる。また、演奏終了時等には、各鍵盤21上のスペースを有効に利用して再び演奏支援盤15をスライドさせて待避させることができる。つまり、黒鍵がないので演奏支援盤15をスライドさせることが容易となる。
【0034】
図5は図2に示す鍵盤楽器を示す正面図、図6は鍵盤楽器の自動演奏装置を示すブロック図である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態の鍵盤楽器30は、自動で曲を演奏可能な自動演奏装置50を備えている。自動演奏装置50は、支持部17の上面に載置されて設けられている。自動演奏装置50は、支持部17の上面に載置されたケーシング51と、各鍵盤21を上方からそれぞれ押鍵可能に設けられた複数の押鍵部52とを備えている。自動演奏装置50が支持部17の上面に安定して支持されるように、ケーシング51の下端面に、例えば自動演奏装置50の位置ずれを防止するための合成樹脂製部材を設けたり、支持部17の上面に凹部を設けたりするようにすることが好ましい。
【0036】
ケーシング51内には、図6に示すように、自動演奏装置50全体を制御するCPU57と、CPU57のワークエリアとなるRAM53と、制御プログラム、PCMデータ及び曲の情報等が記憶されたROM54と、CPU57の命令により押鍵部52を上下動させるためのインターフェース回路56とを有している。各押鍵部52は、例えば磁性体でなり、円柱状の形状を有しており、周りにはコイルが巻回されている。CPU57によりコイルに印加する電圧を制御することで、各押鍵部52を上下動させ各鍵盤21を上方から押すことができるように構成されている。このため、実際に演奏者が鍵盤21を叩いたときのような繊細な音を発生させることができる。このとき、各押鍵部52が移動する量及び速さ等をCPU57が制御することで、より繊細な音の強弱を発生させることができる。自動演奏装置50は支持部17に載置して取り付けたり、取外したりすることができるので、汎用性に優れている。鍵盤楽器30の内部に自動演奏装置50を設ける必要がないので、専門業者等により鍵盤楽器を改造する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。
【0037】
図8は第3の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す正面図、図9は鍵盤ユニットの内部を示す側面図である。図11は、図9に示す鍵盤ユニットの一部を示す平面図である。第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態に係る鍵盤楽器10の部材や機能等について同様のものは説明を簡略または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0038】
鍵盤楽器100は、音を半音分移調させることが可能なペダル機構70と、ペダル機構70により操作される鍵盤ユニット80(図9参照)とを備えている。
【0039】
ペダル機構70は、ダンパーペダル71を備え、また鍵盤部180の鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側(例えば左側)に設けられた第1のペダル72、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側(例えば右側)に設けられた第2のペダル73を備えている。
【0040】
第1のペダル72は、例えばワイヤ75の一端部に連結されておりワイヤ75の他端部は鍵盤ユニット80の左側に連結されている。ワイヤ75は、パイプ76に収容されている。第1のペダル72を踏むことで、ワイヤ75が矢印B方向に引かれ、鍵盤ユニット80が半音分左方向Cに移動するように構成されている。
【0041】
第2のペダル73は、例えばワイヤ77の一端部に連結されておりワイヤ77の他端部は鍵盤ユニット80の右側に連結されている。ワイヤ77は、パイプ78に収容されている。第2のペダル73を踏むことで、ワイヤ77が矢印D方向に引かれ、鍵盤ユニット80が半音分右方向Eに移動するように構成されている。
【0042】
図9に示すように、鍵盤ユニット80には、鍵盤部180と、鍵盤部180を支持する支持部材81と、打弦機構82と、ダンパー機構90とが設けられている。打弦機構82及びダンパー機構90は周知の構造でなり、これらは1つの鍵盤85ごとに設けられている。打弦機構82は、1つの鍵盤85に対応する弦91、92、93(94〜96、97〜99)(図11参照)を弾いて音を出すための楕円板状のハンマー82a、(82b、82c)、これらのハンマー82a等を支持する支持棒82e、演奏者による押鍵時にハンマー82a等が上昇するように支持棒82eの一端部を軸支する軸支部材82f、押鍵時に鍵盤85に連動して支持棒82eのハンマー82a側を上昇させるための棒部材82g等を有している。棒部材82gは後述するように鍵盤85の動きに連動するように構成されている。
【0043】
ダンパー機構90は、弦91、92、93に当接してその振動を停止させるためのダンパー90a、ダンパー90aに接続されたワイヤ90b、ワイヤ90bの下端に接続され、演奏者により鍵盤85が押鍵されたときに鍵盤85の端部85aに当接して突き上げられる回動部材90cと備えている。また、ダンパー機構90は上述したように鍵盤85ごとに設けられているが、ダンパー機構90の全てがダンパーペダル71に突き上げ棒74を介して機構的に接続されている。これにより、演奏者によりダンパーペダル71が踏まれることで、突き上げ棒74が矢印A方向(図8参照)に突き上げられ、全てのダンパー機構90が作動して各ダンパー90aが弦91等から離れた状態となる。
【0044】
次に、鍵盤85を押鍵したとき及びダンパーペダル71を踏んだときの動作について説明する。
【0045】
図10に示すように、鍵盤85を押鍵すると端部85aの上昇に連動して、棒部材82gの一端部が上昇すると共に支持棒82eの他端部が上昇する。棒部材82gの上昇は軸支部材82fの底面により制限される。支持棒82eと一体的にハンマー82aが上昇し打弦した後ハンマー82aが下降し弦91から離れる。押鍵により上昇する端部85aは回動部材90cを回動させて、ワイヤ90bと共にダンパー90aを突き上げ、弦91からダンパー90aが離れるようにする。これにより、鍵盤85が押鍵されている間は、弦91が振動し続ける。演奏者が鍵盤85を離すと、端部85aが下降すると共に、回動部材90cが下降する。回動部材90cの下降に連動してワイヤ90bと一体的にダンパー90aが下降し、ダンパー90aが弦91に接触する。一方、ダンパーペダル71を踏むと、突き上げ棒74が上昇し、全ての鍵盤85に対応する全ての回動部材90cが回動して上昇する。回動部材90c等が上昇する共に、ワイヤ90bと一体的にダンパー90aが上昇し、弦91から離れる。演奏者がダンパーペダル71を離すと、突き上げ棒74が下降すると共に回動部材90c等が下降する。回動部材90c等の下降に連動して、ワイヤ90bと一体的にダンパー90aが下降し、ダンパー90aが弦91に接触する。すなわち、ダンパーペダル71を踏んでいる間は、押鍵されない状態でも弦91とダンパー90aとが離れた状態を保ち一度鳴らした音を響かせることができる。
【0046】
次に、第2のペダル73の使用時の動作について説明する。図12は鍵盤楽器100におけるハンマー82a近傍の第2のペダル73を使用したときの拡大平面図である。
【0047】
図11に示すように、第2のペダル73の未使用時には、例えば3本の弦91、92、93がハンマー82aの直上に設けられ、3本の弦94、95、96がハンマー82bの直上に設けられ、3本の弦97、98、99がハンマー82cの直上に設けられている。このとき、例えば、演奏者がハンマー82aに対応する鍵盤85を押鍵する共に第2のペダル73を踏むと、図12に示すように各弦に対して各ハンマーが高音側(右方向E)に半音分移動する。すなわち、ハンマー82aは弦94、95、96を打弦する。図13に示すように、例えば演奏者が鍵盤86を押鍵すると共に第1のペダル72を踏むことで、鍵盤86の音より半音低い音を出すための実際には設けられていない鍵盤87(通常は黒鍵)の音を出すことができる。鍵盤85を押鍵すると共に第2のペダル73を踏むことで、鍵盤87の音を出すことができる。このように、全音間隔で設けられた鍵盤の音から半音ずれた音を出すことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤楽器100は、弦91等に対して半音分ハンマー82aを低音側に移動させたり高音側に移動させたりするペダル機構70を備えている。このため、初心者はペダル71、72、73を用いずに鍵盤85だけを用いて演奏することができると共に、例えば中級者以上の人は足を使って音を半音上げたり下げたりして演奏することができる。
【0049】
本実施形態に係る鍵盤楽器100は、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より低音側に配置された第1のペダル72と、鍵盤85の配列方向でダンパーペダル71より高音側に配置された第2のペダル73とを備えている。このため、演奏時にダンパーペダル71を挟んで左に第1のペダル72、右に第2のペダル73が位置することになる。従って、左右の足をそれぞれ音の半音下げ上げに対応させることができるので、直感的な演奏が可能となり、第1のペダル72及び第2のペダル73を用いた演奏を容易にすることができる。
【0050】
本実施形態では、第1のペダル72を踏むことにより、ワイヤ75を介して弦91等の配列された方向で低音側にハンマー82a等を移動させることができると共に、第2のペダル73を踏むことより、ワイヤ77を介して弦91等の配列された方向で高音側にハンマー82a等を移動させることができる。このため、例えば音を小さくするために各弦の配列方向にハンマーを移動させる周知のシフティングペダルと同様の機構を、ペダル機構70に用いることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0051】
図14は第4の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す拡大平面図である。
【0052】
本実施形態では、ハンマー82bは、弦91等が配列される方向に垂直な回動軸101の周りに、低音側及び高音側にそれぞれ半音分回動可能に設けられている。ハンマー82bの先端部は、ワイヤ105の一端に連結されており、ワイヤ105の他端部は第1のペダル72に連結されている。また、ハンマー82bの先端部は、ワイヤ106の一端部に連結されており、ワイヤ106の他端部は第2のペダル73に連結されている。なお、他のハンマーについても同様に構成されている。
【0053】
本実施形態では、演奏者が第1のペダル72を踏むことで、ハンマー82bを回動軸101の周りに低音側に半音分回動させることができると共に、第2のペダル73を踏むことで、ハンマー82bを回動軸101の周りに高音側に半音分回動させることができる。このようにしても同様に第1のペダル72及び第2のペダル73を用いて、押鍵した音を半音上げたり下げたりすることができる。
【0054】
本発明は以上説明した実施形態には限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、曲の音及びその曲の調の情報等が予め記憶された図示を省略したROMを備え、第1の実施形態の自動移調プログラムのうちステップ12のみを有する自動移調プログラムを備えるようにしてもよい。この場合の自動移調プログラムは、ROMに記憶されている曲の音の情報を、ROMに記憶された曲の調の情報に基づき、設定パネル11で設定された調の音に自動で移調するために用いられる。このような構成では、予めROMに曲の調の情報が記憶されているので、第1の実施形態のように曲の調を判別する必要がない。従って、曲の調の判別が不正確のために正確に移調できなくなることを防止することができるので、確実かつ迅速に移調することができる。
【0056】
上記第1の実施の形態では、曲に使用されている音とその使用回数を用いる自動移調プログラムを使用して移調する例を示した。しかし、移調するプログラムはこれに限定されない。例えば、曲の最初又は最後に主音がくることが多いことに着目し、曲の最初又は最後の音により主音と判別するようにしてもよい。また、上記実施形態と同様に曲の調を判別し、調の判別が適正であるか否かを判断するために曲の最初又は最後の音を使用するようにしてもよい。
【0057】
上記第1の実施形態では、ステップ10で曲が長調か否かを判別し、ステップ11で主音を判別する例を示した。しかし、主音を判別した後に曲が長調か否かを判別するようにしてもよい。
【0058】
上記第1の実施形態では、初期設定において、使用者が鍵盤部4で鍵盤をたたく等して曲を演奏することによって、その曲の情報を入力する例を示した。しかし、入力装置はこれに限定されない。例えば、図1に示すように、鍵盤楽器10の外部から曲の情報を入力可能なマイクロフォン12や図示を省略したCD−ROMドライブを、音をデジタルデータに変換する図示を省略したサンプラ部を介して接続するようにしてもよい。マイクロフォン12や図示を省略したCD(Compact Disk)−ROMドライブのCDから入力した音をサンプリングし、同様に音の情報に基づき調を判別し移調するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0059】
上記第1の実施形態では、設定パネル11で設定される移調先の調の情報と、曲の音の情報とが同一のRAM3に記憶される例を示した。しかし、設定パネル11で設定される調の情報と、曲の音の情報とが異なるRAMに記憶されるようにしてもよい。
【0060】
上記第2の実施形態では、曲の情報が記憶されたROM54を有する自動演奏装置50を例示した。しかし、ROM54に曲の情報を持たせずに、外部からRAM3に入力して記憶された曲の情報を用いて自動演奏するようにしてもよい。このようにすることで、自動演奏装置の低コスト化を図ることができる。
【0061】
上記第2の実施形態では、各押鍵部52を電磁式に上下動させる例を示した。しかし、例えば空気圧、水圧、油圧によるシリンダ駆動、又はリニアモータ等の駆動機構によって押鍵部52を上下動するようにしてもよい。このようにしても、同様に繊細な音を発生させることができる。
【0062】
上記実施形態では、自動移調プログラムを有している例を示した。しかし、設定パネル11に手動式の移調設定部を設けるようにしてもよい。このようにしても、鍵盤楽器の利用者が移調する度数を計算して手動で移調し、移調された曲を演奏者が聞きながら同調で演奏したりすることが可能となる。
【0063】
上記実施形態では、スライド可能に設けられた演奏支援盤15を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、図7に示すように、アコースティックピアノ40等の場合には、各鍵盤21に離接するように蓋45の回動軸Xと同軸上に回動可能に設けられた演奏支援盤26を用いるようにしてもよい。これにより、演奏支援盤26を回動させ各鍵盤21に重ねることで、演奏支援盤を利用することができるので、初心者が演奏し易くすることができる。
【0064】
上記実施形態では、本発明を鍵盤楽器10、30が自動移調プログラムや演奏支援盤15を有する例を示したが、自動移調プログラムや演奏支援盤15を有さないようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、本発明を電子式の鍵盤楽器に適用する例を示したが、アコースティックの鍵盤楽器に適用してもよいことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子式の鍵盤楽器を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る鍵盤楽器を示す正面図である。
【図3】図2に示す鍵盤楽器を示す部分平面図である。
【図4】自動演奏プログラムのフローチャートである。
【図5】図2に示す鍵盤楽器を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る鍵盤楽器の自動演奏装置を示すブロック図である。
【図7】第1、第2の実施の形態に係る鍵盤楽器の演奏支援盤の変形例を示す側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す正面図である。
【図9】図8に示す鍵盤楽器の鍵盤ユニットの内部を示す側面図である。
【図10】鍵盤ユニットの内部の打弦時の拡大平面図である。
【図11】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルを使用する前の拡大平面図である。
【図12】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルを使用したときの拡大平面図である。
【図13】鍵盤楽器におけるハンマー近傍の第2のペダルの使用による作用を説明するための図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態の鍵盤楽器のペダル機構を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1、57…CPU
3、53…RAM
4、180…鍵盤部
6…自動移調プログラム記憶部
10、30、100…鍵盤楽器
11…設定パネル
15、26…演奏支援盤
17…支持部
21、85、86…鍵盤
50…自動演奏装置
52…押鍵部
54…ROM
71…ダンパーペダル
72…第1のペダル
73…第2のペダル
82a、82b、82c…ハンマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみからなる鍵盤部と、
前記鍵盤部を支持する支持部と、
前記鍵盤毎に対応して設けられた振動可能な弦と、
押鍵された前記鍵盤に連動して打弦するハンマーと、
前記各弦に対して前記ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構と
を具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーによる打弦により振動する前記弦を振動させ続けるためのダンパーペダルを更に具備し、
前記ペダル機構は、
前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより低音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音下げることができる第1のペダルと、
前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより高音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音上げることができる第2のペダルと
を有することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦の配列された方向で低音側に移動可能であり、前記第2のペダルにより、前記各弦の配列された方向で高音側に移動可能であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項2に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦が配列される方向に略垂直な軸の周りで低音側に回動可能であり、前記第2のペダルにより、前記軸の周りで高音側に回動可能であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記各鍵盤上であって該各鍵盤の配列される面内でスライド可能に設けられた演奏支援盤を更に具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項6】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記各鍵盤に離接するように回動可能に設けられた演奏支援盤を更に具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の鍵盤楽器であって、
前記演奏支援盤は、黒鍵が印された支援盤、カラー鍵盤が印された支援盤、音階が印された支援盤、又は、数字が記された支援盤であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項8】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
曲の情報を記憶する手段と、前記各鍵盤を上方からそれぞれ押鍵可能となるように設けられた複数の押鍵部と、前記曲の情報に基づき前記各押鍵部を制御する手段とを有し、前記支持部に載置可能な自動演奏部をさらに具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項1】
音程が全音、全音、半音、全音、全音、全音及び半音の繰り返しとなるように配列された鍵盤のみからなる鍵盤部と、
前記鍵盤部を支持する支持部と、
前記鍵盤毎に対応して設けられた振動可能な弦と、
押鍵された前記鍵盤に連動して打弦するハンマーと、
前記各弦に対して前記ハンマーを半音分移動させるためのペダル機構と
を具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーによる打弦により振動する前記弦を振動させ続けるためのダンパーペダルを更に具備し、
前記ペダル機構は、
前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより低音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音下げることができる第1のペダルと、
前記鍵盤の配列方向で前記ダンパーペダルより高音側に配置され、押鍵された前記鍵盤の音を半音上げることができる第2のペダルと
を有することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦の配列された方向で低音側に移動可能であり、前記第2のペダルにより、前記各弦の配列された方向で高音側に移動可能であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項2に記載の鍵盤楽器であって、
前記ハンマーは、前記第1のペダルにより、前記各弦が配列される方向に略垂直な軸の周りで低音側に回動可能であり、前記第2のペダルにより、前記軸の周りで高音側に回動可能であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記各鍵盤上であって該各鍵盤の配列される面内でスライド可能に設けられた演奏支援盤を更に具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項6】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
前記各鍵盤に離接するように回動可能に設けられた演奏支援盤を更に具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の鍵盤楽器であって、
前記演奏支援盤は、黒鍵が印された支援盤、カラー鍵盤が印された支援盤、音階が印された支援盤、又は、数字が記された支援盤であることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項8】
請求項1に記載の鍵盤楽器であって、
曲の情報を記憶する手段と、前記各鍵盤を上方からそれぞれ押鍵可能となるように設けられた複数の押鍵部と、前記曲の情報に基づき前記各押鍵部を制御する手段とを有し、前記支持部に載置可能な自動演奏部をさらに具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−52450(P2007−52450A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271600(P2006−271600)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【分割の表示】特願2006−514637(P2006−514637)の分割
【原出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(599120554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【分割の表示】特願2006−514637(P2006−514637)の分割
【原出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(599120554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]