説明

鍵盤装置

【課題】鍵盤装置の演奏操作子の動作で種々の形態を表現可能にして、演奏とは別の視覚的楽しみを与える。
【解決手段】データ記憶部24に記憶される形態データFRMは、演奏のためのデータではなく、動作イベントデータAE、タイミングデータTD等を含み、鍵31の動作状態によって表される形態を規定するためのデータである。動作イベントデータAEは、発音することなく鍵31を動作させるためのイベントデータである。タイミングデータTDは、イベントデータの発生タイミングを示す動作イベントデータAE中の動作指示データ41は、発音を起こさない程度に遅い速度v0以内でプランジャ38を動作させ、且つ鍵31の押鍵深さが、押鍵深さ43が示す値となるように制御することを規定する。動作イベントデータAE中のノートナンバ42は、音高を規定し、従って、駆動する鍵31を規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動信号によって鍵等の演奏操作子を駆動する自動演奏ピアノ等の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵やペダル等の演奏操作子をソレノイド等の駆動手段で駆動して、演奏操作子の動作に伴いハンマが打弦することで発音を行うようにした自動演奏ピアノ等の鍵盤装置が知られている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
この種の装置は、例えば、演奏データ中の発音イベントに基づく駆動信号をソレノイドに供給し、プランジャが鍵を駆動すると、鍵に連動してハンマが弦を打弦し、発音がなされるように構成される。
【特許文献1】特開平9−62255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような種類の鍵盤装置では、楽しみ方は、奏者による実際の演奏のほか、演奏データに基づき演奏される演奏音を聞いて楽しむ、あるいはこれに加えて演奏データに沿って自動的に動く鍵の動作を見て楽しむこと等に限定され、楽しみ方を広げる上で改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、鍵盤装置の演奏操作子の動作で種々の形態を表現可能にして、演奏のための動作に制約されない視覚的楽しみを与えることができる鍵盤装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の鍵盤装置は、並列的に配設された複数の演奏操作子と、前記演奏操作子の各々に対応して設けられ、供給される駆動信号によって各々動作して対応する演奏操作子を駆動する駆動手段とを有する鍵盤装置であって、演奏操作子が駆動されることによる演奏音を発生させることなく前記演奏操作子を駆動するように、複数の演奏操作子の動作形態によって視覚的に表される形態を規定するための操作子駆動用データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された操作子駆動用データを読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段により読み出された操作子駆動用データに基づいて前記演奏操作子を駆動するための駆動信号を前記駆動手段に供給する駆動信号供給手段とを有し、前記操作子駆動用データは、駆動される演奏操作子の音高及び押鍵深さを規定する動作用データと、タイミングを規定するタイミングデータとを含んで構成され、前記駆動手段は、前記駆動信号供給手段により供給される駆動信号により、前記読み出し手段により読み出された操作子駆動用データ中の前記タイミングデータで規定されるタイミングで、該操作子駆動用データ中の前記動作用データで規定される音高の演奏操作子を、該動作用データで規定される押鍵深さ分だけ駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鍵盤装置の演奏操作子の動作で種々の形態を表現可能にして、演奏のための動作に制約されない視覚的楽しみを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。本鍵盤装置30は、自動演奏ピアノとして構成される。鍵盤装置30は、通常のアコーステックピアノと同様、鍵31の運動をハンマ32に伝達するアクションメカニズム33と、ハンマ32により打撃される弦34と、弦34の振動を止めるためのダンパ36とを備えている。以降、鍵31の奏者側を「前方」と称する。
【0010】
また、不図示のソレノイドを有するキードライブユニット20が、鍵31ごとに設けられ、鍵31の後端部側の下方に配置されている。鍵盤装置30では、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)等の演奏データに基づき、キードライブユニット20に駆動信号を供給するように制御して、自動演奏が実現される。すなわち、演奏データ中の発音イベントデータで規定される音高に対応するキードライブユニット20に駆動信号が供給されると、そのプランジャ38が上昇して対応する鍵31の後端を突き上げる。これにより鍵31が押下され、弦34がハンマ32により叩かれることによりピアノ音が発音される。
【0011】
また、キーセンサユニット37が各鍵31に対応して設けられる。キーセンサユニット37は、各鍵31の前部下方に配置され、鍵31が押下された状態になると、その鍵31の押下位置を示す信号(押下信号)を出力する。また、奏者によるピアノ演奏中に、キーセンサユニット37から出力される押下信号を収集してこれをデータ化すれば、ユーザの行ったピアノ演奏をデータ保存(演奏記録)することができる。
【0012】
図2は、鍵盤装置30の制御機構の構成を示すブロック図である。
【0013】
鍵盤装置30の制御機構は、CPU11に、バス15を通じて、上記キードライブユニット20及びキーセンサユニット37のほか、ROM12、RAM13、MIDIインターフェイス(MIDII/F)14、タイマ16、表示部17、外部記憶装置18、操作部19、音源回路21、効果回路22及びデータ記憶部24が接続されて構成される。音源回路21には効果回路22を介してサウンドシステム23が接続されている。
【0014】
CPU11は、本装置30全体の制御を司る。ROM12は、CPU11が実行する制御プログラムやテーブルデータ等の各種データを記憶する。RAM13は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。MIDII/F14は、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI信号として入力する。タイマ16は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。表示部17は、例えばLCDを含んで構成され、鍵盤近傍に配設されて、楽譜等の各種情報を表示する。外部記憶装置18は、フラッシュメモリ等の可搬記憶媒体に対してアクセス可能に構成され、これら可搬記憶媒体に対して演奏データ等のデータを読み書きすることができる。操作部19は、不図示の各種操作子を有し、自動演奏のスタート/ストップの指示、曲選択等の指示、各種設定等を行う。
【0015】
音源回路21は、演奏データを楽音信号に変換する。効果回路22は、音源回路21から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム23が、効果回路22から入力される楽音信号等を音響に変換する。
【0016】
データ記憶部24には、演奏データ26が記憶されると共に、後述する形態データFRMが記憶される。演奏データ26及び形態データFRMは、MIDII/F14、外部記憶装置18等から入力する等によって得られる。あるいは、これら演奏データ26または形態データFRMは、ROM12に予めプリセットデータとして記憶しておいてもよい。
【0017】
操作部19の不図示の選択用操作子を操作することで、データ記憶部24に記憶された演奏データ26及び形態データFRMのうち、読み出すべきものが選択される。この選択が行われた後、操作部19の再生指示を行うための不図示の再生指示操作子を操作すると、ROM12に記憶されている再生用プログラムをCPU11が実行することによって、上記選択された演奏データ26及び形態データFRMが順次読み出される。
【0018】
ここで、演奏データ26のデータ構造は一般的なものであるので図示はしないが、自動演奏を行うためのMIDIコードで構成される。演奏データ26は、曲目やテンポ等を示すヘッダデータ、キーオン(ノートオン)またはキーオフ(ノートオフ)をノートナンバ及びベロシティと共に示すイベントデータ、イベントデータの発生タイミングを示すタイミングデータ、曲の終わりを示すエンドデータ等で構成される。
【0019】
図3は、形態データFRMのデータ構造を示す概念図である。
【0020】
形態データFRMは、例えば、MIDIコードで成り、ヘッダデータHD、動作イベントデータAE、タイミングデータTD及びエンドデータEDを含んで構成される。形態データFRMは、演奏データ26とは異なり、演奏のためのデータではなく、鍵31の動作状態によって表される形態(具体例は後述する)を規定するためのデータである。
【0021】
動作イベントデータAEは、発音することなく鍵31を動作させるための「動作用」のイベントデータであって、キーオンイベントデータのようないわゆる「発音用データ」とは異なる。ヘッダデータHDは、以降に動作イベントデータAEが読み出された場合における制御ルールを規定するデータを含んでいる。ここでいう制御ルールには、少なくともプランジャ38の速度が、予め定めた、発音を起こさない程度に遅い速度v0(例えば、10mm/sec)以内で駆動されるように、キードライブユニット20を制御するという情報が含まれている。すなわち、このような遅い速度v0でプランジャ38が動作したときは、ハンマ32が弦34を打撃するに至らない。なお、押鍵だけでなく、離鍵方向の動作速度についても、キードライブユニット20で制御可能な範囲でデフォルトで決めておいてもよい。あるいは、ハンマ32を打弦直前で停止させるように制御することで、発音を起こさないようにしてもよい。
【0022】
動作イベントデータAEは、図3に示すように、3バイト構成のMIDIメッセージであり、1バイトのステータスバイトである動作指示データ41と、それぞれ1バイトのデータバイトであるノートナンバ42及び押鍵深さ43の情報を含んでいる。一般の演奏データ中の発音イベントデータにおいては、例えば、16進数表記で「90・○○・××」である場合は、ステータスバイトである「90」がキーオンを表し、データバイトである「○○」、「××」がそれぞれ音高、ベロシティを表す。これに対し、動作イベントデータAEでは、動作指示データ41は、上記速度v0以内でプランジャ38を動作させ、且つ鍵31の押鍵深さが、押鍵深さ43が示す値となるようにキードライブユニット20を制御することを規定する。ノートナンバ42は、音高を規定し、従って、動作対象となるキードライブユニット20(乃至鍵31)を規定する。押鍵深さ43は、非押鍵位置からの鍵31のストロークを示す。例えば、動作イベントデータAEが「A0・37・2C」である場合は、音高G3に対応するキードライブユニット20を制御して、対応する鍵31が「2C」に相当する位置(例えば、押鍵下限位置)に駆動されることが規定される。
【0023】
タイミングデータTD及びエンドデータEDの機能については、演奏データ26中のタイミングデータ及びエンドデータと同様である。従って、形態データFRM中の動作イベントデータAEの読み出しタイミングに従って、その動作イベントデータAEに応じて個々の鍵31が動作する。
【0024】
図4は、「静止階段状形態」を規定する形態データFRM(FRM1)の具体例を示す図である。同図では、理解容易化のため、動作イベントデータAE及びタイミングデータTDのみの構成部分を示している。図5は、図4に示す形態データFRM1に基づく鍵盤の動作状態を示す図であり、鍵盤装置30の鍵盤部分の正面図である。
【0025】
図4に示すように、形態データFRM1の再生開始からの経過時刻t1において、「A0・37・2C」、「A0・39・24」、「A0・3B・1B」・・・「A0・48・09」というように、次のタイミングデータTD(51)まで動作イベントデータAEが連続している。これらは、白鍵であるG3鍵、A3鍵、B3鍵・・・C5鍵が、各々押鍵深さを異にして動作することを示している。
【0026】
これらの動作イベントデータAEにより、図5(a)に示すように、ほぼ経過時刻t1において、G3鍵が最も深く押鍵され、C5鍵に向かって徐々に押鍵深さが浅くなる、「静止階段状形態」が表現される。
【0027】
次に、タイミングデータTD(51)以後に、「A0・48・00」、「A0・47・00」・・・「A0・37・00」というように、次のタイミングデータTD(52)まで動作イベントデータAEが連続している。これらは、白鍵C5〜G3のうち押鍵状態にあるものすべてが、押鍵深さ「00」、すなわち、非押鍵位置に復帰するよう動作することを示している。
【0028】
これらの動作イベントデータAEにより、図5(b)に示すように、ほぼ経過時刻t2において、押鍵状態にある白鍵C5〜G3が非押鍵位置に復帰し、階段形態が消滅する。
【0029】
同様にして、タイミングデータTD(52)以後、タイミングデータTD(53)までの動作イベントデータAE群により、図5(c)に示すように、ほぼ経過時刻t3において、図5(a)とは反対方向に段差が形成される静止階段状形態が表現される。また、タイミングデータTD(53)以後、タイミングデータTD(54)までの動作イベントデータAE群により、図5(d)に示すように、ほぼ経過時刻t4において、図5(b)と同様の非押鍵状態が表現される。
【0030】
本実施の形態によれば、鍵31の動作で形態を表現可能にして、演奏とは別の、演奏のための動作に制約されない自由な視覚的楽しみを与えることができ、新たなエンターテイメントが実現される。
【0031】
特に、形態データFRM中の動作イベントデータAEは、演奏データ26中の発音用イベントデータとは別のデータであるので、動作イベントデータAEによっては、打弦がなされず、鍵31の動作を、その動作に起因する発音とは無関係に行わせることができる。従って、本実施の形態においては、押鍵しても弦の打撃が防止される「サイレント機構」を演奏装置30が備えていなくても、鍵31の動作に起因する発音を回避しつつ、形態を自由に表現することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態に対して、形態データとして用いるデータの内容が異なるのみであり、その他は同様である。
【0033】
図6は、本発明の第2の実施の形態で用いられる、「市松模様形態」を規定する形態データの具体例を示す概略図である。この形態データFRM(FRM2)には、図4に示す形態データFRM1に対し、打楽器のキーオンイベントが追加されている。図7は、図6に示す形態データFRM2に基づく鍵盤の動作状態を示す図であり、鍵盤装置30の鍵盤部分の正面図である。
【0034】
図6に示す形態データFRM2中の「打楽器キーオン」は、例えば、和太鼓の発音を行わせるための発音イベントであり、この和太鼓の楽音は、音源回路21、効果回路22及びサウンドシステム23によって電子的に発音される。
【0035】
図6に示すように、形態データFRM2の再生開始からの経過時刻t11において、白鍵G3、B3、D4、F4、A4、C5を押鍵深さ「1F」の位置まで動作させるための動作イベントデータAE群(詳細は図示せず;以下同様)が存在し、これらにより、図7(a)に示すように、白鍵G3〜C5までの白鍵が1つ置きに押鍵された市松模様のような形態が表現される。また、ほぼ同時刻において、打楽器キーオンイベントデータ(61)に基づき、サウンドシステム23から和太鼓の音が発音される。そして、タイミングデータTD(62)以後、時刻t12において、打楽器キーオフイベントデータ(63)に基づき、和太鼓の音が消音される。
【0036】
次に、タイミングデータTD(64)以後、白鍵G3、B3、D4、F4、A4、C5を押鍵深さ「00」の位置まで動作させるための動作イベントデータAE群が存在し、これらにより、図7(b)に示すように、経過時刻t13において、白鍵G3〜C5のうち押鍵状態となっていた白鍵が非押鍵位置に復帰する。さらに、ほぼ同時刻において、打楽器キーオンイベントデータ(65)に基づき和太鼓の音が発音される。
【0037】
以降、同様にして、図7(c)に示すように、経過時刻t15において、白鍵A3、C4、E4、G4、B4、D5が押鍵された形態が表現されると共に、和太鼓の音が発音され、経過時刻t17において、白鍵A3〜D5のうち押鍵状態となっていた白鍵が非押鍵位置に復帰すると共に、和太鼓の音が発音される。
【0038】
このように、ドンドンという和太鼓の音に合わせて鍵盤模様が瞬時に反転する小気味良い動きにより、音と動作の競演という新たなエンターテイメントが実現される。
【0039】
本実施の形態によれば、鍵31の動作で視覚的楽しみを与えることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、形態データFRM2中に発音イベントを追加することで、表現される形態に合わせた効果音を付加することができ、表現の幅が増す。特に、追加される発音イベントに基づく楽音は、サウンドシステム23から発音されるので、鍵31の動作とは無関係に発音を行わせることができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、上記第1の実施の形態に対して、形態データとして用いるデータの内容が異なるのみであり、その他は同様である。
【0041】
図8(a)は、本発明の第3の実施の形態で用いられる、「海岸の波形態」を規定する形態データの具体例を示す概略図である。この形態データFRM(FRM3)には、図4に示す形態データFRM1に対し、波の音のキーオンイベントが追加されている。図8(b)は、同図(a)に示す形態データFRM3に基づく鍵盤の動作状態を示す概略図である。
【0042】
形態データFRM3では、押鍵深さ43が「2C」と「00」の2値であるので、図8(a)においては、「2C」を「オン」、「00」を「オフ」と便宜上表記している。また、「波の音キーオンイベント」以降において隣接する動作イベントデータAE間には、不図示のタイミングデータTDが存在している。
【0043】
まず、「C8オン」の動作イベントデータAEにより、C8鍵が押鍵状態とされ、「波の音キーオンイベント」により、上記和太鼓と同様に、サウンドシステム23から波の楽音が電子的に発音される。その後、「B7オン」、「A7オン」、「C7オン」と続き、次に、「C8オフ」と続いている。
【0044】
すなわち、最高音の白鍵から順に押鍵状態とされ、その後、非押鍵状態とされる。その結果、図8(b)に示すように、波が高音側から発生して、低音側に徐々に移動していく、というような海岸の波の形態が表現される。各鍵の押鍵、離鍵の動作速度は上述したように遅いため、このような2値による制御であっても、このような滑らかな動作を表現することができる。
【0045】
本実施の形態によれば第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、個々の鍵31の動きの連動により、波が移動するという、動的な形態を表現できるので、楽しみの幅が一層広がる。
【0046】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態では、上記第1の実施の形態に対して、データ記憶部24に記憶されたデータの内容が異なるが、処理するハードウェア構成は同様である。図9(a)は、本第4の実施の形態において鍵盤で表される形態の概略図である。
【0047】
本第4の実施の形態では、図示はしないが、データ記憶部24中に、演奏データ26、形態データFRMとは別に、それらに対応する効果音用のオーディオデータをさらに記憶させておく。また、形態データFRM中には、図3で説明した動作イベントデータAE群の他に、上記オーディオデータの読み出し開始を指示するイベントデータを、そのタイミングに合わせて記憶させておく。そして、形態データFRM及び上記オーディオデータを順次読み出して、上記オーディオデータに基づく効果音を発生させながら形態データFRMに基づき鍵31を駆動することにより、鍵31の動きによって表される形態が示すイメージを効果音によっても具体化して、よりわかりやすくすることができる。
【0048】
例えば、図9(a)に示すような形態を規定する形態データFRMとそれに対応するオーディオデータを読み出して、水滴の落下を連想させる効果音(「ポチョン」等)を発生させると共に、鍵31の駆動によって、鍵盤の中央付近からさざ波が立つような形態を表現し、そのさざ波の波紋が左右両方向に広がるように移動しながら徐々に減衰していくように各データを構成すれば、鍵盤の動作による形態をよりリアルにイメージしながら楽しむことができる。
【0049】
本実施の形態によれば、上記第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態では、形態表現と共に、形態に関係する表示を表示部17に表示させるようにする。本第5の実施の形態では、上記第1の実施の形態に対して、データ記憶部24に記憶されたデータの内容が異なるが、処理するハードウェア構成は同様である。
【0051】
図9(b)は、本第5の実施の形態において鍵盤で表される形態に対応する表示部17における表示内容の一例を示す図である。
【0052】
本第5の実施の形態では、図示はしないが、データ記憶部24中に、演奏データ26、形態データFRMとは別に、それらに対応する映像表示用のビデオデータをさらに記憶させておく。また、形態データFRM中には、図3で説明した動作イベントデータAE群の他に、上記ビデオデータの読み出し開始を指示するイベントデータを、そのタイミングに合わせて記憶させておく。そして、形態データFRM及び上記ビデオデータを順次読み出して、上記ビデオデータに基づく映像を表示部17に表示させながら形態データFRMに基づき鍵31を駆動することにより、鍵31の動きによって表される形態が示すイメージを映像表示によっても具体化して、よりわかりやすくすることができる。
【0053】
例えば、図9(a)に示すような形態を規定する形態データFRMとそれに対応するビデオデータを読み出して、図9(b)に示すような、水滴が落下する様子を示す映像を表示部17に表示させると共に、鍵31の駆動によって、図9(a)に示すように、鍵盤の表示部17付近からさざ波が立つような形態を表現し、そのさざ波の波紋が左右両方向に広がるように移動しながら徐々に減衰していくように各データを構成すれば、鍵盤の動作による形態をよりリアルにイメージしながら楽しむことができる。
【0054】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、形態に関係する映像表示を形態表現と共に表示させるようにしたので、楽しみの幅を一層広げることができる。
【0055】
なお、第4、第5の実施の形態とを組み合わせて、すなわち、データ記憶部24中に、オーディオデータとビデオデータの双方及びそれらの読み出し開始を指示するイベントデータを記憶させておき、効果音と映像表示の双方によって、鍵31の動きによって表される形態が示すイメージを一層具体化し、わかりやすくするようにしてもよい。
【0056】
なお、第4、第5の実施の形態において、図9(a)、(b)に示す例はあくまで一例であり、効果音や映像表示のためのデータとしては、鍵31が駆動されて表される形態に関連する所望のものを記憶しておけばよい。
【0057】
なお、形態データFRMによって表現される形態は、静的、動的、あるいは両者を混合した形態であってもよく、少なくとも1鍵による動作状態によって視覚的に表される形態であればよい。従って、上記第1〜第5の実施の形態に例示された形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、図9(c)に鍵盤で表される他の例の形態の概略図を示すように、押鍵状態となった鍵31の押鍵深さが徐々に浅くなると共に音量が次第に小さくなって、楽音の減衰と共に上記鍵31が非押鍵位置に復帰していくように構成してもよい。
【0059】
なお、鍵盤を複数の鍵域に分割し、演奏データ26と形態データFRMとを並行して読み出して、ある鍵域では演奏データ26に基づく演奏を行うと共に、他の鍵域では形態データFRMに基づく形態を表すように構成してもよい。
【0060】
なお、上記各実施の形態において、形態データFRMには、弦34を打撃するための発音イベントが含まれていてもよい。その場合、制御を正確にする観点から、動作イベントデータAEが読み出されたとき、その動作イベントデータAEから所定時間区間内にノートオンイベントが存在しない場合にのみ、プランジャ38の速度が速度v0で駆動されるように制御するのが望ましい。
【0061】
なお、上記各実施の形態において、動作イベントデータAEによる動作は、発音を起こさない程度に遅いものとしたが、ノートオンイベントに基づき、一定の形態を表現すること、すなわち、通常のノートオンイベントを動作イベントデータAEとして用いることも、本発明から排除されるものではない。すなわち、通常のノートオンイベントによれば、弦34が打撃されて発音してしまうだけでなく、鍵31の繊細な位置制御ができないが、形態表現自体は可能であるので、発音する楽音や表現する形態によっては、楽音と共に視覚的な楽しみを与えることが可能である。特に、サイレント機構を備えた鍵盤装置においては、弦34の打撃による発音が回避されるので、通常のノートオンイベントのデータ構成を適切に構成することで、通常のノートオンイベントを形態データFRMの代わりに用いることが可能である。
【0062】
なお、上記各実施の形態では、鍵31の動作状態によって一定の形態が表現される構成を例示したが、対象となる操作子は、白鍵に限定されず、例えば、黒鍵、ペダルあるいは効果操作子等、アクチュエータを設けることができる操作子であればよい。例えば、ペダルで形態を表現する場合は、ペダルドライブユニットを設けて、キードライブユニット20の場合と同様に制御すればよい。
【0063】
なお、形態データFRMは、MIDIデータに限定されず、他のフォーマット形式によるデータであってもよい。
【0064】
なお、形態データFRMは、事前に制作するだけでなく、奏者の演奏等の鍵操作を動作イベントとして記録することで制作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。
【図2】鍵盤装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図3】形態データのデータ構造を示す概念図である。
【図4】「静止階段状形態」を規定する形態データの具体例を示す図である。
【図5】図4に示す形態データに基づく鍵盤の動作状態を示す図であり、鍵盤装置の鍵盤部分の正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態で用いられる、「市松模様形態」を規定する形態データの具体例を示す概略図である。
【図7】図6に示す形態データに基づく鍵盤の動作状態を示す図であり、鍵盤装置の鍵盤部分の正面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態で用いられる、「海岸の波形態」を規定する形態データの具体例を示す概略図(図(a))、及び同図(a)に示す形態データに基づく鍵盤の動作状態を示す概略図(図(b))である。
【図9】本発明の第4の実施の形態において鍵盤で表される形態の概略図(図(a))、本発明の第5の実施の形態において鍵盤で表される形態に対応する表示部における表示内容の一例を示す図(図(b))、及び鍵盤で表される他の例の形態の概略図(図(c))である。
【符号の説明】
【0066】
11 CPU(読み出し手段、駆動信号供給手段)、 20 キードライブユニット(駆動手段)、 24 データ記憶部、 26 演奏データ、 30 鍵盤装置、 31 鍵(演奏操作子)、 FRM 形態データ(操作子駆動用データ)、 AE 動作イベントデータ(動作用データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列的に配設された複数の演奏操作子と、
前記演奏操作子の各々に対応して設けられ、供給される駆動信号によって各々動作して対応する演奏操作子を駆動する駆動手段とを有する鍵盤装置であって、
演奏操作子が駆動されることによる演奏音を発生させることなく前記演奏操作子を駆動するように、複数の演奏操作子の動作形態によって視覚的に表される形態を規定するための操作子駆動用データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された操作子駆動用データを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段により読み出された操作子駆動用データに基づいて前記演奏操作子を駆動するための駆動信号を前記駆動手段に供給する駆動信号供給手段とを有し、
前記操作子駆動用データは、駆動される演奏操作子の音高及び押鍵深さを規定する動作用データと、タイミングを規定するタイミングデータとを含んで構成され、
前記駆動手段は、前記駆動信号供給手段により供給される駆動信号により、前記読み出し手段により読み出された操作子駆動用データ中の前記タイミングデータで規定されるタイミングで、該操作子駆動用データ中の前記動作用データで規定される音高の演奏操作子を、該動作用データで規定される押鍵深さ分だけ駆動することを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、前記操作子駆動用データとは別個のデータであって前記演奏操作子の動作に起因して発音をさせるための発音用データが記憶され、前記駆動信号供給手段は、前記記憶手段から読み出した発音用データに従って前記演奏操作子を駆動して演奏音を発生させることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記操作子駆動用データは、演奏音を発生させることなく前記演奏操作子を駆動するための動作用データと、該動作用データとは異なり、前記演奏操作子を駆動して演奏音を発生させるための発音用データとを含んで構成されることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項4】
さらにサウンドシステムを有し、前記操作子駆動用データはさらに、効果音用データを含んで構成され、前記サウンドシステムは、前記読み出し手段により前記操作子駆動用データ中の前記効果音用データが読み出されたときに、該読み出された効果音用データに対応する効果音を発音することを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−31814(P2009−31814A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260627(P2008−260627)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願2004−5907(P2004−5907)の分割
【原出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】