説明

鍵盤装置

【課題】 簡単な構造で、組立て作業性が良く、発光素子を安定した状態で確実に固定できると共に、発光素子で発光した光が隣接する鍵に漏れるのを抑制できる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 鍵盤シャーシ6に複数の発光素子32を組み付ける際に、複数の発光素子32を第1基板25の各突起部31に取り付け、この第1基板25を基板取付部材24の取付部28に取り付け、この基板取付部材24の固定部27を鍵盤シャーシ6に取り付けることにより、第1基板25を起立させて取り付けることができると共に、複数の白鍵7aの各内部にそれぞれ非接触状態で挿入した第1基板25の複数の突起部31に、それぞれ発光素子32を起立させずに設けることができる。従って、構造が簡単で、組立て作業性が良く、発光素子32を安定した状態で確実に固定することができると共に、発光素子32で発光した光が隣接する白鍵7aに漏れるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、更に詳しくは演奏に応じて各鍵が順次発光する鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵を配列させて上下方向に回転可能に設けると共に、この鍵盤シャーシ上に各鍵の内部に光を照射させるための複数の発光素子を設け、この複数の鍵を順次押鍵操作して演奏する際、その演奏に応じて複数の発光素子を順次発光させることにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵を光らせて指示するナビゲーション機能を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−34268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器では、複数の発光素子を鍵盤シャーシに組み付けるために、鍵盤シャーシ上に基板を鍵の配列方向に沿って水平に配置し、この基板上に複数の発光素子の各リード線をそれぞれ接続させて、複数の発光素子を基板上に起立させた状態で取り付けているので、各発光素子が不安定な状態になるばかりか、各発光素子で発光した光が隣接する鍵に漏れ易いという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解消するために、基板上に保持部材を起立させて設け、この保持部材で複数の発光素子をそれぞれ保持するように構成したものが考えられている。しかし、このような構成では、保持部材によって複数の発光素子を安定した状態で保持すると共に、この保持部材によって複数の発光素子の光が隣接する鍵に漏れ難くすることができても、保持部材の構造が複雑になるほか、基板に保持部材を強固に設けなければならないため、組立て作業が煩雑で面倒になるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、組立て作業性が良く、発光素子を安定した状態で確実に固定することができると共に、発光素子で発光した光が隣接する鍵に漏れるのを抑制することができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、前記鍵盤シャーシ上に取り付けられる固定部、前記鍵の下側に向けて起立する取付部、およびこの取付部を前記固定部に連結する連結部を有する基板取付部材と、この基板取付部材の前記取付部に取り付けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ非接触状態で挿入する複数の突起部を有する基板と、この基板の前記複数の突起部にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ光を照射する複数の発光素子とを備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記発光素子が、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記基板取付部材における前記連結部が、前記固定部に対する前記取付部の傾き角度が調整可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記固定部に対する前記取付部の傾き角度を規制する角度規制部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、鍵盤シャーシに複数の発光素子を組み付ける際に、複数の発光素子をそれぞれ基板の各突起部に取り付け、この基板を基板取付部材の取付部に取り付けると共に、この基板取付部材の固定部を鍵盤シャーシに取り付けることにより、基板を鍵盤シャーシ上に起立させた状態で取り付けることができると共に、基板の複数の突起部を複数の鍵の各内部にそれぞれ非接触状態で挿入させることにより、この挿入した複数の突起部にそれぞれ発光素子を起立させずに設けることができる。
【0012】
このため、構造が簡単で、組立て作業が容易にでき、量産化を図ることができるほか、鍵の内部に挿入する基板の突起部によって発光素子を安定した状態で確実に且つ良好に固定することができ、これにより落下などの衝撃を受けても、発光素子を搭載した基板が外れることがなく、耐衝撃性を確保することができる。また、基板の突起部によって発光素子を鍵の下側に正確に且つ良好に配置させることができ、これにより発光素子で発光した光が隣接する鍵に漏れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1を示した平面図である。
【図2】図1のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図3】図1のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図4】図2のA部を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図4を上方から見た要部の拡大平面図である。
【図6】図2のB部を示した要部の拡大断面図である。
【図7】図6を上方から見た要部の拡大平面図である。
【図8】図2における基板取付部材の取付部の傾き角度がほぼ80度の場合における光の照射状態を示した拡大断面図である。
【図9】図2における基板取付部材の取付部の傾き角度がほぼ60度の場合における光の照射状態を示した拡大断面図である。
【図10】図2における基板取付部材の取付部の傾き角度がほぼ90度の場合における光の照射状態を示した拡大断面図である。
【図11】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2において要部を示した拡大断面図である。
【図12】図11を上方から見た要部の拡大平面部である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1の手前側(図1では下部側)には、鍵盤部2が設けられており、この楽器本体1における鍵盤部2の後部側(図1では上部側)には、スピーカ部3、表示部4、およびスイッチ部5が設けられている。
【0015】
スピーカ部3は、楽音を発音するためのものであり、図1に示すように、鍵盤部2の後部側(図1では上部側)に位置する楽器本体1の両側に設けられている。表示部4は、楽音情報を表示するものであり、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1の中間部に設けられている。スイッチ部5は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1における両側のスピーカ部3の間に表示部4を除いて分散して設けられている。
【0016】
ところで、鍵盤部2は、図1〜図4に示すように、下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる多数の鍵7が配列されている。鍵盤シャーシ6は、図2に示すように、その前部側(図2では左側部)に白鍵7aの前端部における下部側を覆う前カバー部8が形成されている。この前カバー部8の後側下部(図2では右側下部)には、白鍵7aの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる白鍵ストッパ部9が設けられている。
【0017】
この白鍵ストッパ部9の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、白鍵7aの内部に挿入して白鍵7aの横振れを防ぐための白鍵ガイド部10が上方に突出して設けられている。この白鍵ガイド部10の後部には、後述する白鍵用の第1基板搭載部11が設けられている。この第1基板搭載部11の後方には、黒鍵7bの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる黒鍵ストッパ部12が設けられている。
【0018】
この黒鍵ストッパ部12の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、後述する黒鍵用の第2基板搭載部13が上方に突出して設けられている。この黒鍵用の第2基板搭載部13における前側(図2では左側)の上部下面には、白鍵7aおよび黒鍵7bの各上限位置を規制するためのフェルトなどからなる上限ストッパ部14が設けられている。また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の下端部および黒鍵ストッパ部12の下端部には、その両者に亘って底蓋13aがビス13bによって開閉可能に取り付けられている。
【0019】
また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、黒鍵7bの内部に挿入して黒鍵7bの横振れを防ぐための黒鍵ガイド部15が上方に突出して設けられている。この黒鍵ガイド部15の後端下部には、スイッチ基板16が設けられている。さらに、鍵盤シャーシ6の後端部には、各鍵7の後端部(図2では右端部)を支持する鍵支持部17が上方に突出して設けられている。
【0020】
一方、複数の鍵7のうち、複数の白鍵7aは、それぞれ光透過性を有する白色の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、その内部が中空状に形成されている。この白鍵7aは、図2に示すように、その後端部(図2では右端部)に複数の白鍵7aの配列方向(図2では紙面の表裏面方向)に沿って各白鍵7aを順次連結する共通連結部18が形成されていると共に、この共通連結部18に各白鍵7aをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部19が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0021】
また、複数の黒鍵7bも、白鍵7aと同様、それぞれ光透過性を有する黒色の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、その内部が中空状に形成されている。この黒鍵7bも、図2に示すように、その後端部(図2では右端部)に複数の黒鍵7bの配列方向に沿って各黒鍵7bを順次連結する共通連結部20が形成されていると共に、この共通連結部20に各黒鍵7bをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部21が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0022】
これにより、複数の鍵7は、図2に示すように、白鍵7aの共通連結部18を黒鍵7bの共通連結部20上に重ね合わせ、この状態で両者の共通連結部18、20を鍵盤シャーシ6の後端部に設けられた鍵支持部17上に取り付けることにより、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bが鍵盤シャーシ6上に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0023】
このため、複数の鍵7は、複数の白鍵7aがそれぞれ押鍵された際に、複数の白鍵7aが各屈曲部19の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位すると共に、複数の黒鍵7bがそれぞれ押鍵された際に、複数の黒鍵7bが各屈曲部21の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位するように構成されている。
【0024】
また、これら白鍵7aおよび黒鍵7bには、図2に示すように、それぞれスイッチ押圧部22がスイッチ基板16上の各ゴムスイッチ23に対応して設けられている。このスイッチ押圧部22は、白鍵7aおよび黒鍵7bが押鍵された際に、スイッチ基板16上に設けられた各ゴムスイッチ23を押圧するように構成されている。
【0025】
この場合、ゴムスイッチ23は、図2に示すように、白鍵7aおよび黒鍵7bの各スイッチ押圧部22に対応してそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ23は、ゴムシートにドーム状の膨出部を形成してスイッチ基板16上に配置され、この状態で膨出部が押圧されると、ドーム状の膨出部が弾性変形し、その内部に設けられた可動接点がスイッチ基板16上に設けられた固定接点に接触することにより、押鍵操作に応じてスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0026】
ところで、鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11には、図4および図5に示すように、基板取付部材24が取り付けられている。この基板取付部材24は、アルミニウムなどの金属または硬質の合成樹脂によって形成されており、この基板取付部材24には、白鍵用の第1基板25が白鍵7aの後側(図4では右側)に向けて少し傾いた状態で起立して取り付けられている。
【0027】
この基板取付部材24は、図4に示すように、鍵盤シャーシ6上にビス26によって取り付けられる固定部27と、白鍵7aの下側に向けて起立する取付部28と、この取付部28を固定部27の前端部(図4左端部)に連結固定する連結部29とを備え、これらが一体に形成されている。この場合、固定部27および取付部28は、図3〜図5に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されている。
【0028】
また、取付部28は、図4に示すように、連結部29によって固定部27に対して所定角度(例えばほぼ80度)だけ、白鍵7aの後方(図4では右側)に向けて傾いた状態で固定されている。この傾いた取付部28の前面(図4では左側面)には、第1基板25がビス30によって取り付けられている。このビス30は、固定部27を固定するビス26に対して白鍵7aの配列方向に位置がずれた状態で取り付けられるように構成されている。
【0029】
また、この第1基板25は、図3〜図5に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成され、図示しない配線接続シートなどの接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。この第1基板25の上部には、図3に示すように、各白鍵7aの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する複数の突起部31が形成されている。この複数の突起部31の各上部前面(図4では左側面)には、各白鍵7aの前側内部に光を照射する白鍵用の発光素子32がそれぞれ設けられている。
【0030】
一方、鍵盤シャーシ6の第2基板搭載部13には、図2および図6に示すように、黒鍵用の第2基板33が黒鍵7bの前側(図6では左側)に向けて少し傾いた状態で起立して取り付けられている。この場合、第2基板搭載部13は、第2基板33が挿入する凹溝形状に形成され、その前側(図6では左側)の内面が後下り(図6では右下り)に傾斜し、後側(図6では右側)の内面にリブ部36が設けられた構成になっている。このリブ部36には、ビス34がワッシャなどの押え板35を介して取り付けられている。
【0031】
これにより、第2基板搭載部13は、図6に示すように、黒鍵用の第2基板33が前側内面とリブ部36との間に上方から挿入された状態で、リブ部36にビス34が押え板35を介して取り付けられると、この押え板35によって第2基板33が前側内面に押し付けられることにより、この前側内面によって第2基板33を前側に傾けた状態で、第2基板33が固定されるように構成されている。
【0032】
また、黒鍵用の第2基板33も、第1基板25と同様、黒鍵7bの配列方向に沿って細長く形成され、図示しない配線接続シートなどの接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。この第2基板33の上部には、第1基板25と同様、各黒鍵7bの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する複数の突起部37が形成されている。この複数の突起部37の上部前面(図6では左側面)には、各黒鍵7bの前側内部に光を照射する黒鍵用の発光素子38がそれぞれ設けられている。
【0033】
この場合、白鍵用の発光素子32および黒鍵用の発光素子38は、それぞれほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面のみから光を発光する側面発光ダイオードである。この発光素子32、38は、ほぼ直方体のチップ形状に形成されていることにより、図2および図3に示すように、その後面(図2では右側面)が第1、第2の各基板25、33にそれぞれ形成された各突起部31、37の各上部前面(図2では左側面)に密着して半田などで電気的に接続された状態で平面実装されている。
【0034】
これにより、白鍵用の発光素子32は、その一側面である上面から光を発すると、図2に示すように、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。また、黒鍵用の発光素子38は、白鍵用の発光素子32と同様、その一側面である上面から光を発すると、図2に示すように、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0035】
次に、白鍵用の発光素子32を鍵盤シャーシ6に組み付ける場合について説明する。
この場合には、図4に示すように、まず、白鍵用の第1基板25の複数の突起部31にそれぞれ発光素子32を取り付け、この第1基板25を基板取付部材24の取付部28の前面に配置してビス30によって取り付ける。この後、基板取付部材24の固定部27を鍵盤シャーシ6に基板取付部材24をビス26によって取り付ける。
【0036】
このときには、図5に示すように、固定部27を鍵盤シャーシ6に取り付けるビス26の取付位置と、取付部28に第1基板25を取り付けるビス30の取付位置とが、白鍵7aの配列方向において位置がずれていることにより、取付部28に第1基板25を取り付けたビス30が邪魔にならず、固定部27を鍵盤シャーシ6に取り付けるビス26を鍵盤シャーシ6の上方からドライバーなどの工具によって締め付けることができる。
【0037】
これにより、図4に示すように、基板取付部材24の取付部28が鍵盤シャーシ6上に後方(図4では右側)に向けて所定角度(例えばほぼ80度)、傾いて起立すると共に、第1基板25が取付部28と同様に鍵盤シャーシ6の後方(図4では右側)に向けて傾いた状態で起立して取り付けられる。
【0038】
この状態で、鍵盤シャーシ6の鍵支持部17に複数の鍵7を取り付ける。このときには、図2および図3に示すように、複数の白鍵7aの各内部に、発光素子32が設けられた第1基板25の複数の突起部31をそれぞれ非接触状態で相対的に挿入させる。これにより、第1基板25の各突起部31に設けられた発光素子32がそれぞれ白鍵7aの下側に対応して配置される。
【0039】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、その演奏に応じて各鍵7を押鍵する際に、その押鍵すべき鍵7に対応する発光素子32、38を順次発光させて、押鍵すべき鍵7を順次光らせることができる。例えば、押鍵する鍵7が複数の白鍵7aのいずれかである場合には、その白鍵7aに対応する発光素子32を発光させると、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせることができる。
【0040】
また、押鍵する鍵7が複数の黒鍵7bのいずれかである場合には、その黒鍵7bに対応する発光素子38を発光させると、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせることができる。これにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵7を順次光らせることができるので、演奏者が初心者であっても、良好に演奏することができる。
【0041】
さらに、この鍵盤楽器では、演奏者が複数の鍵7を押鍵操作して演奏をする際に、その演奏に応じて押鍵された鍵7をこれに対応する発光素子32、38によって光らせることにより、どの鍵7が押鍵されているのかを演奏者が確認することができ、これにより演奏に応じて正しく鍵7が押鍵されているかを判断することができる。
【0042】
ところで、このような鍵盤楽器では、製品の大きさや形状によって複数の鍵7の長さや形状が異なっているため、その製品の大きさや形状に応じて、取付部28の傾き角度を、例えば、ほぼ80度、ほぼ60度、ほぼ90度のいずれに設定することにより、白鍵7aに対して発光素子32が光を照射する光照射領域を最適化することができる。
【0043】
すなわち、取付部28の傾き角度がほぼ80度の基板取付部材24を用いた場合には、図8に示すように、基板取付部材24の取付部28の傾きに応じて第1基板25をほぼ80度の角度で傾けることにより、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図8では左側)に位置する白鍵7aのほぼ中間部付近の箇所に照射させることができる。
【0044】
また、取付部28の傾き角度がほぼ60度の基板取付部材24を用いた場合には、図9に示すように、基板取付部材24の取付部28の傾きに応じて第1基板25をほぼ60度の角度で傾けることにより、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図9では左側)に位置する白鍵7aのほぼ後部側付近(図9では右側付近)の箇所に照射させることができる。
【0045】
さらに、取付部28の傾き角度がほぼ90度の基板取付部材24を用いた場合には、図10に示すように、基板取付部材24の取付部28の傾きに応じて第1基板25をほぼ90度の角度で傾けることにより、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図10では左側)に位置する白鍵7aのほぼ前部側付近(図10では左側付近)の箇所に照射させることができる。
【0046】
このように、この鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ6に複数の発光素子32を組み付ける際に、複数の発光素子32を白鍵用の第1基板25の各突起部31に取り付け、この第1基板25を基板取付部材24の取付部28にビス30によって取り付け、この基板取付部材24の固定部27を鍵盤シャーシ6にビス26によって取り付けることにより、第1基板25を鍵盤シャーシ6に対して起立させた状態で簡単に且つ容易に取り付けることができると共に、この基板取付部材24によって第1基板25を鍵盤シャーシ6に対して確実に且つ強固に固定することができる。
【0047】
この場合、第1基板25を鍵盤シャーシ6に対して起立させた状態で取り付けることにより、複数の発光素子32を第1基板25にそれぞれ起立させて設けなくても、発光素子32を鍵盤シャーシ6に対して起立させて設けることができる。すなわち、複数の発光素子32を第1基板25に起立させずに設けることができることにより、各発光素子32の倒れを防ぐための保持部材を用いずに、各発光素子32を安定した状態で第1基板25の各突起部31に確実に固定することができる。
【0048】
また、鍵盤シャーシ6に光透過性を有する複数の白鍵7aを上下方向に回転可能に取り付ける際に、複数の白鍵7aの各内部に第1基板25の複数の突起部31をそれぞれ非接触状態で挿入させることにより、複数の発光素子32を各白鍵7aの下側に正確に且つ良好に対応させて配置することができる。これにより、第1基板25およびその各突起部31によって各発光素子32で発光した光が隣接する白鍵7aに漏れるのを抑制することができ、これにより押鍵すべき白鍵7aのみを良好に光らせることができる。
【0049】
この場合、基板取付部材24は、その取付部28が所定角度に傾いて起立しているので、この取付部28によって第1基板25を鍵盤シャーシ6に対して傾けて取り付けることができる。このため、取付部28の傾き角度に応じて白鍵7aに対する発光素子32の光照射領域を選択することができると共に、取付部28の傾き角度に応じて白鍵7aに対する発光素子32の光照射領域を最適化することができるほか、基板取付部材24を鍵盤シャーシ6に取り付けるための第1基板搭載部11の設置箇所が限定されず、第1基板搭載部11の設置箇所の自由度を高めることができる。
【0050】
このように、この鍵盤楽器では、簡単な構造で、組立て作業が容易にできるので、生産性が高く、量産化を図ることができるほか、白鍵7aの内部に挿入する第1基板25の突起部31によって発光素子32を安定した状態で確実に且つ強固に固定することができ、これにより落下などの衝撃を受けても、発光素子32を搭載した第1基板25の脱落を防ぐことができるので、耐衝撃性の高いものを得ることができる。また、第1基板25の突起部31によって発光素子32を白鍵7aの下側に正確に且つ良好に配置させることができると共に、発光素子32で発光した光が隣接する白鍵7aに漏れるのを抑制することができる。
【0051】
この場合、発光素子32は、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであるから、その一側面である上面を上に向けた状態で、その後面(図2では右側面)を平面実装により第1基板25に設けられた突起部31の上部前面(図2では左側面)に密着させて半田などで電気的に接続した状態で確実に固定することができる。
【0052】
このため、発光素子32を第1基板25の各突起部31に安定させた状態で確実に取り付けることができるほか、この発光素子32が第1基板25の各突起部35の上部前面に取り付けられていることにより、各発光素子32が光を発すると、その光を白鍵7aの前側内部に確実に照射することができるので、発光した光が隣接する白鍵7aに漏れるのを突起部31によって抑制して白鍵7aの前部側を良好に光らせることができる。
【0053】
(実施形態2)
次に、図11および図12を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2について説明する。なお、図1〜図10に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、白鍵7aに対応する第1基板25を鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11に取り付けるための基板取付部材40が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1と同じ構成になっている。
【0054】
すなわち、この基板取付部材40は、図11に示すように、鍵盤シャーシ6に対する白鍵用の第1基板25の傾き角度が調整可能に構成されている。この場合、基板取付部材40は、アルミニウムなどの金属からなり、図11に示すように、鍵盤シャーシ6上にビス26によって取り付けられる固定部41と、白鍵7aの下側に向けて起立する取付部42と、この取付部42を固定部41の一端部に屈曲可能に連結固定する連結部43とを備え、これらが一体に形成されている。
【0055】
固定部41および取付部42は、実施形態1と同様、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されており、取付部42の前面(図11では左側面)には、第1基板25がビス30によって取り付けられている。このビス30も、実施形態1と同様、固定部41を固定するビス26に対して白鍵7aの配列方向に位置がずれている。また、連結部43は、図11に示すように、肉厚が薄い薄肉部に形成され、任意の角度に屈曲するように構成されている。
【0056】
これにより、基板取付部材40は、図11に示すように、連結部43が屈曲することによって、取付部42が固定部41に対して任意の角度で傾くように構成されている。また、この基板取付部材40は、固定部41に対する取付部42の傾き角度を規制して保持するための複数の角度規制部材44を備えている。
【0057】
この角度規制部材44は、アルミニウムやステンレスなどの金属または硬質の合成樹脂などからなり、図11に示すように、固定部41上にビス26によって固定される固定片44aと、取付部42の傾きを規制する規制片44bとを備え、これらが一体に形成されている。この角度規制部材44は、図12に示すように、基板取付部材40の両端部(図12では右側の端部のみを示す。)に設けられている。
【0058】
また、この角度規制部材44は、製品の大きさや形状によって複数の鍵7の長さや形状が異なっているため、その製品の大きさや形状に応じて、取付部42の傾き角度を規制することにより、白鍵7aに対する発光素子32の光照射領域を最適化するように、複数の種類が用意されている。すなわち、この角度規制部材44は、規制片44bの傾き角度が、ほぼ80度、ほぼ60度、ほぼ90度の3種類があり、図8〜図10に示した実施形態1と同様、白鍵7aに対する発光素子32の光照射領域を選択することができるように構成されている。
【0059】
例えば、規制片44bの傾き角度がほぼ80度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ80度に規制して第1基板25をほぼ80度の角度で傾けることにより、図8に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図8では左側)に位置する白鍵7aのほぼ中間部付近の箇所に照射させるように構成されている。
【0060】
また、規制片44bの傾き角度がほぼ60度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ60度に規制して第1基板25をほぼ60度の角度で傾けることにより、図9に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図91では左側)に位置する白鍵7aのほぼ後部側付近(図9では右側付近)の箇所に照射させるように構成されている。
【0061】
さらに、規制片44bの傾き角度がほぼ90度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ90度に規制して第1基板25をほぼ90度の角度で傾けることにより、図10に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図10では左側)に位置する白鍵7aのほぼ前部側付近(図10では左側付近)の箇所に照射させるように構成されている。
【0062】
このような鍵盤楽器によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、基板取付部材40の連結部43が固定部41に対する取付部42の傾き角度を調整可能に形成されているので、この連結部43によって取付部42の傾き角度を調整して取付部42に取り付けられる第1基板25の傾き角度を調整することができ、これにより第1基板25に取り付けられた発光素子32が光を白鍵7aに照射する光照射領域を最適な状態に調節することができる。
【0063】
この場合、基板取付部材40の固定部41に対する取付部42の角度を規制する複数種類の角度規制部材44を備えているので、この複数種類の角度規制部材44によって取付部42の傾きを所定角度に確実に規制することができ、これにより第1基板25の傾き角度を安定させて固定することができる。
【0064】
すなわち、この複数種類の各角度規制部材44は、それぞれ固定部41上にビス26によって固定される固定片44aと、取付部42の傾きを規制する規制片44bとを備え、基板取付部材40の取付部42の傾きに応じて規制片44bの傾き角度がそれぞれ異なっている。例えば、この複数の角度規制部材44は、規制片44bの傾き角度が、ほぼ80度、ほぼ60度、ほぼ90度の3種類があり、図8〜図10に示した実施形態1と同様、白鍵7aに対して発光素子32が光を照射する光照射領域に応じて選択することができる。
【0065】
例えば、規制片44bの傾き角度がほぼ80度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ80度に規制して第1基板25をほぼ80度の角度で傾けることにより、図8に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図8では左側)に位置する白鍵7aのほぼ中間部付近の箇所に照射させることができる。
【0066】
また、規制片44bの傾き角度がほぼ60度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ60度に規制して第1基板25をほぼ60度の角度で傾けることにより、図9に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図9では左側)に位置する白鍵7aのほぼ後部側付近(図9では右側付近)の箇所に照射させることができる。
【0067】
さらに、規制片44bの傾き角度がほぼ90度の角度規制部材44は、基板取付部材40の取付部42の傾きをほぼ90度に規制して第1基板25をほぼ90度の角度で傾けることにより、図10に示したように、発光素子32で発光した光を黒鍵7bよりも前側(図10では左側)に位置する白鍵7aのほぼ前部側付近(図10では左側付近)の箇所に照射させることができる。
【0068】
なお、上述した実施形態1、2では、第1、第2の各基板25、33に設けられた各突起部31、37にそれぞれ発光素子32、38を1つずつ設けた場合について述べたが、これに限らず、1つの突起部31、37に複数の発光素子32、38を設けた構成でも良い。この場合には、1つの突起部31、37に設けられた複数の発光素子32、37をそれぞれ異なる色、例えば赤色、青色、黄色などの異なる色で発光させるようにすれば、演奏者の好みに応じた色で鍵7を光らせることができる。
【0069】
また、上述した実施形態1、2では、鍵7のうち、白鍵7aの後端部に屈曲部19を介して共通連結部18を設け、黒鍵7bの後端部に屈曲部21を介して共通連結部20を設け、白鍵7aの共通連結部18を黒鍵7bの共通連結部20を重ね合わせて鍵盤シャーシ6の鍵支持部17上に取り付けるように構成した場合について述べたが、これに限らず、鍵盤シャーシ6の鍵支持部17上に支持軸を設け、この支持軸に複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵盤7bの各後端部をそれぞれ回転可能に取り付けることにより、各鍵7がそれぞれ独立して上下方向に回転するように構成した鍵盤装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 楽器本体
2 鍵盤部
6 鍵盤シャーシ
7 鍵
7a 白鍵
7b 黒鍵
11、13 第1、第2の各基板搭載部
17 鍵支持部
18、20 共通連結部
19、21 屈曲部
24、40 基板取付部材
25、33 第1、第2の各基板
26、30 ビス
27、41 固定部
28、42 取付部
29、43 連結部
31、37 突起部
32、38 発光素子
44 角度規制部材
44a 固定片
44b 取付片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、
この鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、
前記鍵盤シャーシ上に取り付けられる固定部、前記鍵の下側に向けて起立する取付部、およびこの取付部を前記固定部に連結する連結部を有する基板取付部材と、
この基板取付部材の前記取付部に取り付けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ非接触状態で挿入する複数の突起部を有する基板と、
この基板の前記複数の突起部にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ光を照射する複数の発光素子と
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記発光素子は、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記基板取付部材における前記連結部は、前記固定部に対する前記取付部の傾き角度が調整可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記固定部に対する前記取付部の傾き角度を規制する複数種類の角度規制部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−128506(P2011−128506A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289018(P2009−289018)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】