説明

鍵盤装置

【課題】 発光素子を安定した状態で固定することができると共に、鍵を精度良く良好にガイドすることができ、且つ鍵盤シャーシの構造を簡素化して低価格化を図ることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 第1、第2の各基板22、28を鍵盤シャーシ6に起立させて設けると共に、この第1、第2の各基板22、28に、鍵盤シャーシ6上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵7の各内部に挿入して各鍵7をそれぞれガイドする複数のガイド突起部23、29を設け、この複数のガイド突起部23、29にそれぞれ発光素子24、30を設けた。従って、複数のガイド突起部23、29によって、発光素子24、30を安定した状態で固定できると共に、鍵7を押鍵した際に鍵7の横振れを防いで、鍵7を良好にガイドすることができるほか、鍵盤シャーシ6の構造を簡素化することができ、楽器全体の低価格化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、更に詳しくは演奏に応じて各鍵が順次発光する鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵を配列させて上下方向に回転可能に設けると共に、この鍵盤シャーシ上に各鍵の内部に光を照射させるための複数の発光素子を設け、この複数の鍵を順次押鍵操作して演奏する際、その演奏に応じて複数の発光素子を順次発光させることにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵を光らせて指示するナビゲーション機能を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−34268号公報
【0004】
この種の鍵盤楽器は、複数の鍵を押鍵した際に、鍵の横振れを防ぐために、鍵盤シャーシに複数の鍵ガイド部をそれぞれ起立させて設け、この複数の鍵ガイド部によって各鍵をそれぞれガイドすることにより、複数の発光素子を複数の鍵にそれぞれ精度良く対応させて配置し、複数の発光素子による光をそれぞれ各鍵の所定位置の照射するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器では、鍵盤シャーシに複数の鍵をガイドするための複数の鍵ガイド部をそれぞれ起立させて設けた構成であるため、鍵盤シャーシの構造が複雑になり、鍵盤シャーシを成形するための成形用の金型の構造も複雑になり、金型の制作費用が高くなるという問題がある。この場合、鍵ガイド部は、金型で成形する際に、抜き勾配が必要となるため、鍵ガイド部の上端部の幅を下端部の幅よりも狭くしなければならず、このため鍵を精度良く良好にガイドすることができないという問題もある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、発光素子を安定した状態で固定することができると共に、鍵を精度良く良好にガイドすることができ、且つ鍵盤シャーシの構造を簡素化して低価格化を図ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、前記鍵盤シャーシに起立して設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ挿入されて前記複数の鍵をそれぞれガイドする複数のガイド突起部を有する基板と、この基板の前記複数のガイド突起部にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ光を照射する複数の発光素子とを備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記ガイド突起部に、前記鍵を押鍵操作した際に、前記鍵の内面に接触して摺動する接触面積を小さくするための接触部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記基板に、前記複数の鍵の上限位置を規制するためのストッパ部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記基板が、前記複数のガイド突起部を前記鍵盤シャーシの下側から挿入させて前記鍵盤シャーシの上方に突出させた状態で、前記鍵盤シャーシに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記発光素子が、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、鍵盤シャーシに基板を起立させて設けると共に、この基板に設けられた複数のガイド突起部により、鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた複数の鍵をそれぞれガイドすることができ、この複数のガイド突起部にそれぞれ設けられた複数の発光素子によって複数の鍵に光を良好に照射させて各鍵を光らせることができる。
【0013】
このため、基板に設けられた複数のガイド突起部によって、発光素子を安定した状態で固定することができると共に、鍵を押鍵した際に、鍵が横振れせずに、鍵の動作を安定させることができ、これにより鍵を精度良く良好にガイドすることができる。また、鍵盤シャーシに鍵をガイドするための複数の鍵ガイド部をそれぞれ起立させて設ける必要がないため、鍵盤シャーシの構造を簡素化することができ、これにより鍵盤シャーシを成形するための成形用の金型を安価に製作することができるので、楽器全体の低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1を示した平面図である。
【図2】図1のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図3】図2において鍵を取り外した状態を示した要部の拡大平面図である。
【図4】図2における白鍵用の第1基板の取付構造を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図3のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図6】図1のC−C矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図7】図1のD−D矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図8】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2において要部を示した拡大断面図である。
【図9】図8において鍵を取り外した状態を示した要部の拡大平面図である。
【図10】図8における白鍵用の第1基板の取付構造を示した要部の拡大断面図である。
【図11】図8のE−E矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図12】実施形態1、2の第1、第2の各基板におけるガイド突起部の第1変形例を示した要部の拡大断面図である。
【図13】実施形態1、2の第1、第2の各基板におけるガイド突起部の第1変形例を示した要部の拡大断面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図7を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1の手前側(図1では下部側)には、鍵盤部2が設けられており、この楽器本体1における鍵盤部2の後部側(図1では上部側)には、スピーカ部3、表示部4、およびスイッチ部5が設けられている。
【0016】
スピーカ部3は、楽音を発音するためのものであり、図1に示すように、鍵盤部2の後部側(図1では上部側)に位置する楽器本体1の両側に設けられている。表示部4は、楽音情報を表示するものであり、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1の中間部に設けられている。スイッチ部5は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1における両側のスピーカ部3の間に表示部4を除いて分散して設けられている。
【0017】
鍵盤部2は、図1〜図3に示すように、下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる多数の鍵7が配列されている。鍵盤シャーシ6は、図2に示すように、その前部側(図2では左側部)に白鍵7aの前端部における下部側を覆う前カバー部8が形成されている。この前カバー部8の後側下部(図2では右側下部)には、白鍵7aの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる白鍵ストッパ部9が設けられている。
【0018】
この白鍵ストッパ部9の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、白鍵用の第1基板22を取り付けるための第1基板取付部10が上方に突出して設けられている。この第1基板取付部10の後方下部(図2では右側下部)には、黒鍵7bの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる黒鍵ストッパ部11が設けられている。この黒鍵ストッパ部11の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、黒鍵用の第2基板28を取り付けるための第2基板取付部12が上方に突出して設けられている。
【0019】
また、この黒鍵用の第2基板取付部12の後部側(図2では右側部)には、図2に示すように、スイッチ基板13を搭載するためのスイッチ基板取付部14が上方に突出して設けられている。さらに、鍵盤シャーシ6の後端部(図2では右端部)には、各鍵7の後端部(図2では右端部)を支持するための鍵支持部15が上方に突出して設けられている。
【0020】
一方、多数の鍵7のうち、複数の白鍵7aは、それぞれ光透過性を有する白色の合成樹脂からなり、図2および図6に示すように、その内部が中空状に形成されている。この白鍵7aは、図2に示すように、その後端部(図2では右端部)に複数の白鍵7aの配列方向(図2では紙面の表裏面方向)に沿って各白鍵7aを順次連結する共通連結部16が形成されていると共に、この共通連結部16に各白鍵7aをそれぞれ上下方向に変位させるための薄肉形状の屈曲部17が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0021】
また、複数の黒鍵7bも、白鍵7aと同様、それぞれ光透過性を有する黒色の合成樹脂からなり、図2および図7に示すように、その内部が中空状に形成されている。この黒鍵7bも、図2に示すように、その後端部(図2では右端部)に複数の黒鍵7bの配列方向に沿って各黒鍵7bを順次連結する共通連結部18が形成されていると共に、この共通連結部18に各黒鍵7bをそれぞれ上下方向に変位させるための薄肉形状の屈曲部19が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0022】
これにより、多数の鍵7は、図2に示すように、白鍵7aの共通連結部16を黒鍵7bの共通連結部18上に重ね合わせ、この状態で両者の共通連結部16、18を鍵盤シャーシ6の後端部に設けられた鍵支持部15上に取り付けることにより、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bが鍵盤シャーシ6上に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0023】
このため、多数の鍵7は、複数の白鍵7aがそれぞれ押鍵された際に、複数の白鍵7aが各屈曲部17の撓み変形によってそれぞれ上下方向に変位すると共に、複数の黒鍵7bがそれぞれ押鍵された際に、複数の黒鍵7bが各屈曲部19の撓み変形によってそれぞれ上下方向に変位するように構成されている。
【0024】
また、これら白鍵7aおよび黒鍵7bには、図2および図3に示すように、それぞれスイッチ押圧部20がスイッチ基板13上の各ゴムスイッチ21に対応して設けられている。このスイッチ押圧部20は、白鍵7aおよび黒鍵7bが押鍵された際に、スイッチ基板13上に設けられた各ゴムスイッチ21を押圧するように構成されている。ゴムスイッチ21は、図2および図3に示すように、白鍵7aおよび黒鍵7bの各スイッチ押圧部20に対応してそれぞれ設けられている。
【0025】
この場合、ゴムスイッチ21は、ゴムシート21aにドーム状の多数の膨出部21bを各鍵7にそれぞれ対応させて形成してスイッチ基板13上に配置され、この状態でドーム状の各膨出部21bが押圧されると、各膨出部21bがそれぞれ弾性変形し、その内部に設けられた可動接点がスイッチ基板13上に設けられた固定接点に接触することにより、押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0026】
ところで、鍵盤シャーシ6の第1基板取付部10には、図2および図4に示すように、白鍵用の第1基板22が起立して取り付けられている。この第1基板22は、図3および図6に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されている。この第1基板22の上部には、各白鍵7aの内部にそれぞれ挿入して各白鍵7aをガイドする複数のガイド突起部23が形成されている。この複数のガイド突起部23の各上部前面(図2では左側面)には、図2および図6に示すように、各白鍵7aの前側内部に光を照射する白鍵用の発光素子24がそれぞれ設けられている。
【0027】
この場合、第1基板取付部10は、図2および図4に示すように、鍵盤シャーシ6上に前後方向(図2では左右方向に)に所定間隔離れて設けられた一対の立上り部10a、10bと、これらの上部にその上端部から少し下がった位置に設けられた連結部10cと、この連結部10cの上部に設けられたねじ取付部25と、第1基板22の下端部を前側(図2では左側)の立上り部10aとの間に挟む基板差込リブ26とを備えている。
【0028】
一対の立上り部10a、10bおよび連結部10cは、図2、図3および図6に示すように、鍵盤シャーシ6上に白鍵7aの配列方向に沿って連続して設けられている。ねじ取付部25は、図4および図5に示すように、鍵盤シャーシ6から連結部10cの両側上方に向けて突出して設けられた一対の補強リブ25a間に、半円筒状のねじ孔25bを上側に開放して設けた構成になっている。このねじ孔25bは、連結部10cの上面および一対の補強リブ25aの上部内面に亘ってねじ溝が形成された構成になっている。
【0029】
このねじ取付部25は、図3に示すように、白鍵7aの配列方向に所定間隔で設けられ、図4に示すように、そのねじ孔25bにビス27が螺着するように構成されている。また、基板差込リブ26は、図4に示すように、鍵盤シャーシ6の底部から前側(図4では左側)の立上り部10aに沿ってほぼ垂直に設けられ、基板差込リブ26の上部と立上り部10aとの間に第1基板22の下部が挿入する基板挿入溝26aが設けられている。
【0030】
これにより、白鍵用の第1基板22は、図4に示すように、その下端部が第1基板取付部10の前側(図4では左側)に位置する立上り部10aの前面に沿って上方から基板差込リブ26の基板挿入溝26aに差し込まれると、立上り部10aの前面に沿ってほぼ垂直に起立し、第1基板22の複数のガイド突起部23が鍵盤シャーシ6の上方に突出した状態で位置規制されて配置されるように構成されている。
【0031】
また、この第1基板22は、図4に示すように、その前面側からビス27を第1基板取付部10に設けられたねじ取付部25のねじ孔25bに螺入させて締め付けることにより、前側の立上り部10aの前面にほぼ垂直に起立した状態で取り付けられるように構成されている。この状態では、図4および図6に示すように、第1基板22の複数のガイド突起部23が複数の白鍵7aの内部にそれぞれ挿入可能な状態になる。
【0032】
一方、鍵盤シャーシ6の第2基板取付部12には、図2および図7に示すように、黒鍵用の第2基板28が起立した状態で取り付けられている。この第2基板28も、図3および図7に示すように、黒鍵7bの配列方向に沿って細長く形成されている。この第2基板28の上部には、第1基板22と同様、各黒鍵7bの内部にそれぞれ挿入して各黒鍵7bをガイドする複数のガイド突起部29が形成されている。この複数のガイド突起部29の上部前面(図2では左側面)には、図2に示すように、各黒鍵7bの前側内部に光を照射する黒鍵用の発光素子30がそれぞれ設けられている。
【0033】
この場合、第2基板取付部12は、図2に示すように、鍵盤シャーシ6上に前後方向(図2では左右方向に)に所定間隔離れて設けられた一対の立上り部12a、12bと、これらの上部にその上端部から少し下がった位置に設けられた連結部12cと、この連結部12cの上部に設けられたねじ取付部31とを備えている。一対の立上り部12a、12bおよび連結部12cは、図2および図3に示すように、鍵盤シャーシ6上に黒鍵7bの配列方向に沿って連続して設けられている。
【0034】
また、ねじ取付部31は、第1基板取付部10のねじ取付部25と同様、連結部12cの両側上方に向けて突出して設けられた一対のリブ31a間に、半円筒状のねじ孔31bを上側に開放して設けた構成になっており、このねじ孔31bは、連結部12cの上面および一対のリブ31aの上部内面にねじ溝が形成された構成になっている(図5参照)。このねじ取付部31も、第1基板取付部10のねじ取付部25と同様、黒鍵7bの配列方向に所定間隔で設けられ、そのねじ孔31bにビス27が螺着するように構成されている。
【0035】
これにより、黒鍵用の第2基板28は、図2に示すように、その下端部が第2基板取付部12の前側(図2では左側)に位置する立上り部12aの前面に沿ってほぼ垂直に起立した状態で、第2基板28の複数のガイド突起部29が鍵盤シャーシ6の上方に突出して配置されるように構成されている。また、この第2基板28は、図2に示すように、その前面側からビス27を第2基板取付部12のねじ取付部28のねじ孔1bに螺入させて締め付けることにより、前側の立上り部12aの前面にほぼ垂直に起立した状態で取り付けられるように構成されている。
【0036】
この状態では、図2および図7に示すように、第2基板28の複数のガイド突起部29が複数の黒鍵7bの内部にそれぞれ挿入可能な状態になる。また、この黒鍵用の第2基板28は、図2に示すように、その下端部に各鍵7の上限位置を規制するための上限ストッパ部32が設けられている。
【0037】
すなわち、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bには、図2に示すように、その両者の前後方向における同じ位置に鍵フック部33が、白鍵7aおよび黒鍵7bから下側に延びた上、後方(図2では右側)に向けてそれぞれ突出して設けられている。これにより、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bである各鍵7は、図2に示すように、各鍵フック部33が第2基板28の下端部に設けられた上限ストッパ部32に下側からそれぞれ当接することにより、各鍵7の上限位置が規制されるように構成されている。
【0038】
ところで、白鍵用の発光素子24および黒鍵用の発光素子30は、図4、図6および図7に示すように、それぞれほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面のみから光を発光する側面発光ダイオードである。この発光素子24、30は、ほぼ直方体のチップ形状に形成されていることにより、図2に示すように、その後面(図2では右側面)が第1、第2の各基板22、28にそれぞれ形成された各ガイド突起部23、29の各上部前面(図2では左側面)に密着して半田などで電気的に接続された状態で平面実装されている。
【0039】
これにより、白鍵用の発光素子24は、その一側面である上面から光を発すると、図2に示すように、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。また、黒鍵用の発光素子30は、白鍵用の発光素子24と同様、その一側面である上面から光を発すると、図2に示すように、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0040】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、その演奏に応じて各鍵7を押鍵する際に、その押鍵すべき鍵7に対応する発光素子24、30を順次発光させて、押鍵すべき鍵7を順次光らせることができる。例えば、押鍵する鍵7が複数の白鍵7aのいずれかである場合には、その白鍵7aに対応する発光素子24を発光させると、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせることができる。
【0041】
また、押鍵する鍵7が複数の黒鍵7bのいずれかである場合には、その黒鍵7bに対応する発光素子30を発光させると、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせることができる。これにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵7を順次光らせることができるので、演奏者が初心者であっても、良好に演奏することができる。
【0042】
さらに、この鍵盤楽器では、演奏者が複数の鍵7を押鍵操作して演奏をする際に、その演奏に応じて押鍵された鍵7をこれに対応する発光素子24、30によって光らせることにより、どの鍵7が押鍵されているのかを演奏者が確認することができ、これにより演奏に応じて正しく鍵7が押鍵されているかを判断することができる。
【0043】
このように、この鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ6に第1、第2の各基板22、28を起立させて設けると共に、この第1、第2の各基板22、28にそれぞれ複数のガイド突起部23、29を設け、この複数のガイド突起部23、29によって、鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵7の各白鍵7aおよび各黒鍵7bをそれぞれガイドすることができ、この複数のガイド突起部23、29にそれぞれ設けられた複数の発光素子24、30によって複数の鍵7に光を良好に照射させて各鍵7を光らせることができる。
【0044】
このため、第1、第2の各基板22、28に設けられた複数のガイド突起部23、29によって、複数の発光素子24、30を安定した状態で固定することができると共に、複数の発光素子24、30を各鍵7の下側に正確に且つ良好に対応させて配置することができる。また、複数のガイド突起部23、29の横方向(図6および図7では左右方向)の長さ、つまり鍵7の配列方向における複数のガイド突起部23、29の長さを、各鍵7の内部における鍵7の長手方向と直交する方向の長さと、ほぼ同じ長さに形成することができる。
【0045】
このため、複数のガイド突起部23、29によって、各鍵7の配列精度を高めることができると共に、鍵7を押鍵した際に、複数のガイド突起部23、29によって、各鍵7の横振れを防いで、鍵7の動作を安定させることができ、これにより各鍵7を精度良く良好にガイドすることができる。
【0046】
この場合、鍵盤シャーシ6に複数の鍵7をガイドするための従来の鍵ガイド部を起立させて一体的に設ける必要がないため、鍵盤シャーシ6の構造を簡素化することができる。このため、鍵盤シャーシ6を成形するための成形用の金型の難易度が下り、金型の製作が容易にできるので、金型費用を安くすることができると共に、金型によって鍵盤シャーシ6を成形する際に不良品の発生率を下げることができ、これにより楽器全体の低価格化を図ることができる。
【0047】
すなわち、従来の鍵ガイド部を金型で成形する際には、鍵ガイド部に抜き勾配を設ける必要があるため、従来の鍵ガイド部の上端部の幅を下端部の幅よりも狭く形成する必要があるほか、その公差を考慮すると、鍵7をガイドする精度が低下する。これに対して、この実施形態1の第1、第2の各基板22、28に複数のガイド突起部23、29を設ける場合には、打ち抜き加工によって複数のガイド突起部23、29を形成することができるので、抜き勾配に相当するガイド突起部23、29の両側部を互いに平行な直線状(抜き勾配ゼロの状態)に形成することができ、これにより各鍵7の配列精度を高めことができると共に、各鍵7を精度良く良好にガイドすることができる。
【0048】
また、この鍵盤楽器では、第1、第2の各基板22、28のうち、黒鍵用の第2基板28に各鍵7の上限位置を規制する上限ストッパ部31を設けているので、これによっても鍵盤シャーシ6の構造を簡素化することができ、鍵盤シャーシ6を成形するための成形用の金型の製作が容易にでき、金型費用を更に安くすることができるので、より一層、楽器全体の低価格化を図ることができる。
【0049】
すなわち、鍵盤シャーシ6に鍵7の上限位置を規制する上限ストッパ部31を設けるためには、従来では、鍵7の鍵フック部32が上下方向に移動可能な開口部を鍵盤シャーシ6に設けなければ、鍵7の鍵フック部32を上限ストッパ部31に下側から当接させることができない。このため、鍵盤シャーシ6を成形するための成形用の金型の構造が複雑になるほか、金型による樹脂成形時における樹脂の流れが悪くなり、金型による成形サイクルの回数が少なく、不良品の発生率が高くなる。
【0050】
これに対して、この実施形態1のように第2基板28の下端部に上限ストッパ部31を設けることにより、成形用の金型の構造を簡素化することができ、金型による樹脂成形時における樹脂の流れを良くすることができると共に、金型による成形サイクルの回数を多くすることができるので、生産性を高めることができるほか、不良品の発生率を大幅に下げることができ、これにより、より一層の低価格化を図ることができる。
【0051】
さらに、この鍵盤楽器では、各発光素子24、30を第1、第2の各基板22、28に起立させずに設けることができるので、各発光素子24、30の倒れを防ぐための保持部材を用いずに、各発光素子24、30を安定した状態で第1、第2の各基板22、28の各ガイド突起部23、29に確実に固定することができると共に、第1、第2の各基板22、28およびその各ガイド突起部23、29によって各発光素子24、30で発光した光が隣接する鍵7に漏れるのを抑制することができ、これにより押鍵すべき鍵7のみを良好に光らせることができる。
【0052】
この場合、発光素子24、30は、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであるから、その一側面である上面を上に向けた状態で、その後面(図2では右側面)を平面実装により第1、第2の各基板22、28に設けられたガイド突起部23、29の上部前面(図2では左側面)に密着させて半田などで電気的に接続した状態で確実に固定することができる。
【0053】
このため、発光素子24、30を第1、第2の各基板22、28の各ガイド突起部23、29に安定させた状態で確実に取り付けることができる。また、この発光素子24、30は、第1、第2の各基板22、28の各ガイド突起部23、29の上部前面に取り付けられていることにより、各発光素子24、30が光を発すると、その光を鍵7の前側内部に確実に照射することができるので、発光した光が隣接する鍵7に漏れるのをガイド突起部23、29によって抑制して鍵7の前部側を良好に光らせることができる。
【0054】
(実施形態2)
次に、図8〜図11を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図7に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図8に示すように、鍵盤シャーシ6に対する白鍵用の第1基板22の取付構造が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0055】
すなわち、白鍵用の第1基板22が取り付けられる鍵盤シャーシ6の第1基板取付部35は、図9および図11に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されている。また、この第1基板取付部35は、図8および図10に示すように、鍵盤シャーシ6に前後方向(図10では左右方向に)に所定間隔離れて設けられた一対の立上り部35a、35bと、これらの上部に設けられた連結部35cと、前側(図10では左側)の立上り部35aの前面に設けられたねじ取付部36とを備えている。
【0056】
一対の立上り部35a、35bおよび連結部35cは、図9に示すように、鍵盤シャーシ6に白鍵7aの配列方向に沿って連続して設けられている。この場合、一対の立上り部35a、35bは、図10に示すように、第1基板22が鍵盤シャーシ1の下側から挿入する程度の間隔で設けられている。また、連結部35cには、図8および図9に示すように、第1基板22に設けられた複数のガイド突起部23がそれぞれ下側から挿入して上方に突出する複数のスリット孔37が白鍵7aの配列方向に沿って設けられている。
【0057】
ねじ取付部36は、図8および図10に示すように、前側(図10では左側)の立上り部35aの前面に上下方向に沿って設けられたボス部36aと、このボス部36aに設けられて下側に開放されたねじ穴36bとで構成されている。このねじ取付部36は、ビス38がワッシャーなどの押え板39を介してボス部36aの下側からねじ穴36bに螺入して締め付けられることにより、第1基板22の下端部を押え板39で押えるように構成されている。
【0058】
次に、白鍵用の第1基板22を鍵盤シャーシ6に取り付ける場合いついて説明する。
この場合には、第1基板22を鍵盤シャーシ6の下側から第1基板取付部35の一対の立上り部35a、35b間に挿入すると共に、第1基板22の複数のガイド突起部23を連結部35cに設けられた複数のスリット孔37にそれぞれ挿入させて、図11に示すように、複数のガイド突起部23間に位置する第1基板22の上部を、複数のスリット孔37間に位置する連結部35cの下面に当接させる。
【0059】
これにより、複数のガイド突起部23が鍵盤シャーシ6の上方に突出した状態で、第1基板22が鍵盤シャーシ6に位置決めされて配置される。この後、第1基板取付部35のねじ取付部36の下側からボス部36aのねじ穴36bに、ビス38をワッシャーなどの押え板39を介して螺入して締め付けると、押え板39が第1基板22の下端部を押え付ける。これにより、第1基板22が鍵盤シャーシ6に強固に取り付けられる。
【0060】
このような鍵盤楽器によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、第1、第2の各基板22、28のうち、白鍵用の第1基板22が、複数のガイド突起部23を鍵盤シャーシ6の下側から挿入して鍵盤シャーシ6の上方に突出させた状態で、鍵盤シャーシ6に取り付けられている構成であるから、鍵盤シャーシ6に複数の白鍵7aを組み付けた状態でも、また白鍵7aを組み付ける前の状態でも、第1基板22を鍵盤シャーシ6に組み付けることができる。このため、保守点検や修理の際に、白鍵7aを鍵盤シャーシ6から取り外さなくても、白鍵用の第1基板22を鍵盤シャーシ6から取り外して保守点検や修理を行うことができる。
【0061】
この場合、鍵盤シャーシ6の第1基板取付部35は、鍵盤シャーシ6上に前後方向(図10では左右方向に)に所定間隔離れて設けられた一対の立上り部35a、35bと、これらの上部に設けられた連結部35cとを備え、この連結部35aに第1基板22の複数のガイド突起部23がそれぞれ下側から挿入して上方に突出する複数のスリット孔37が白鍵7aの配列方向に沿って設けられているので、第1基板22を鍵盤シャーシ6の下側から一対の立上り部35a、35b間に挿入して、複数のガイド突起部23を連結部35cの複数のスリット孔37に挿入させるだけで、簡単に第1基板22を鍵盤シャーシ6に対して位置決めして配置することができる。
【0062】
また、この第1基板取付部35は、前側(図10では左側)の立上り部35aの前面に設けられたねじ取付部36を備えていることにより、このねじ取付部36のボス部36aの下側からボス部36aのねじ穴36bに、ビス38をワッシャーなどの押え板39を介して螺入して締め付けるだけで、鍵盤シャーシ6に対して位置決めされた第1基板22の下端部を押え板39によって簡単に且つ容易に押え付けることができ、これにより第1基板22を鍵盤シャーシ6に確実に且つ強固に取り付けることができる。
【0063】
なお、前述した実施形態1、2では、第1、第2の各基板22、28に設けられた複数のガイド突起部23、29の両側部が、互いに平行に形成されて各鍵7の内面にそれぞれ接触するように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えば図12に示された第1変形例または図13に示された第2変形例のように、鍵7に対するガイド突起部40、41の接触面積を小さくするように構成しても良い。
【0064】
すなわち、図12に示された第1変形例は、ガイド突起部40の上部両側に一対の接触突起40aをその両側から突出させて形成した構成になっている。このような第1変形例では、実施形態1、2のガイド突起部23、29よりも、一対の接触突起40aが鍵7の内面に接触する接触面積を小さくすることができるので、鍵7を押鍵操作した際に、異音の発生を軽減することができると共に、鍵7を円滑に且つ良好にガイドすることができる。
【0065】
また、図13に示された第2変形例は、ガイド突起部41の両側部に複数の微細な接触突起41aをその両側からそれぞれ同じ長さで突出させて形成した構成になっている。このような第2変形例においても、第1変形例と同様、複数の微細な接触突起41aが鍵7の内面に接触する接触面積を小さくすることができるので、鍵7を押鍵操作した際に、異音の発生を軽減することができると共に、鍵7を円滑に且つ良好にガイドすることができる。
【0066】
また、前述した実施形態1、2では、黒鍵用の第2基板28の下端部に各鍵7の上限位置を規制するための上限ストッパ部32を設けた場合について述べたが、必ずしも第2基板28の下端部に上限ストッパ部32を設ける必要はなく、第2基板28の前面に上限ストッパ部32を設けても良く、また必ずしも第2基板22のみに上限ストッパ部32を設ける必要はなく、白鍵用の第1基板22と黒鍵用の第2基板28との両方に、それぞれ上限ストッパ部32を設けても良い。
【0067】
さらに、前述した実施形態1、2では、第1、第2の各基板22、28に設けられた各ガイド突起部23、29にそれぞれ発光素子24、30を1つずつ設けた場合について述べたが、これに限らず、1つの突起部23、29に複数の発光素子24、30を設けた構成でも良い。この場合には、1つの突起部23、29に設けられた複数の発光素子24、30をそれぞれ異なる色、例えば赤色、青色、黄色などの異なる色で発光させるようにすれば、演奏者の好みに応じた色で鍵7を光らせることができる。
【0068】
また、前述した実施形態1、2では、鍵7のうち、白鍵7aの後端部に屈曲部17を介して共通連結部16を設け、黒鍵7bの後端部に屈曲部19を介して共通連結部18を設け、白鍵7aの共通連結部16を黒鍵7bの共通連結部18を重ね合わせて鍵盤シャーシ6の鍵支持部15上に取り付けるように構成した場合について述べたが、これに限らず、鍵盤シャーシ6の鍵支持部15上に支持軸を設け、この支持軸に複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵盤7bの各後端部をそれぞれ回転可能に取り付けることにより、各鍵7がそれぞれ独立して上下方向に回転するように構成した鍵盤装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 楽器本体
2 鍵盤部
6 鍵盤シャーシ
7 鍵
7a 白鍵
7b 黒鍵
10、35 第1基板取付部
12 第2基板取付部
15 鍵支持部
16、18 共通連結部
17、19 屈曲部
22、28 第1、第2の各基板
23、29、40、41 ガイド突起部
24、30 発光素子
25、31、36 ねじ取付部
25a、31a 補強リブ
25b、31b ねじ孔
26 基板差込リブ
27、38 ビス
32 上限ストッパ部
33 鍵フック部
36a ボス部
36b ねじ穴
37 スリット孔
39 押え板
40a、41a 接触突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、
この鍵盤シャーシ上に配列されて上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、
前記鍵盤シャーシに起立して設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ挿入されて前記複数の鍵をそれぞれガイドする複数のガイド突起部を有する基板と、
この基板の前記複数のガイド突起部にそれぞれ設けられ、前記複数の鍵の各内部にそれぞれ光を照射する複数の発光素子と
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記ガイド突起部には、前記鍵を押鍵操作した際に、前記鍵の内面に接触して摺動する接触面積を小さくするための接触部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記基板には、前記複数の鍵の上限位置を規制するためのストッパ部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記基板は、前記複数のガイド突起部を前記鍵盤シャーシの下側から挿入させて前記鍵盤シャーシの上方に突出させた状態で、前記鍵盤シャーシに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記発光素子は、ほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面から光を発光する側面発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−128511(P2011−128511A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289039(P2009−289039)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】