長尺光導波路およびその製造方法
【課題】容易に製造することができる長尺光導波路およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アンダークラッド層の表面にコア層3を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成し、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成し、そのようにして形成した3層構造体を、コア層3の、非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路Aに形成し、その光導波路Aの両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより、蛇行状等の光導波路Aを引き伸ばして長尺に形成する。
【解決手段】アンダークラッド層の表面にコア層3を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成し、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成し、そのようにして形成した3層構造体を、コア層3の、非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路Aに形成し、その光導波路Aの両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより、蛇行状等の光導波路Aを引き伸ばして長尺に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられる長尺光導波路およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスに組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。光導波路としては、例えば、アンダークラッド層上に、コア層が所定パターンに形成され、このコア層を包含するようにオーバークラッド層が形成された三層構造のものがあげられる。上記コア層のパターン形成は、フォトリソグラフィ工程により行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、最近では、光通信の発達により、光配線基板等の光デバイス間の情報通信が、金属ケーブルから光導波路を用いた光インタコネクションへ移行しつつある。それに対応して、長尺の光導波路が要請されている。
【特許文献1】特開2005−266739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、光導波路の作製には、フォトリソグラフィ工程を要し、そのフォトリソグラフィ工程で使用する露光装置の露光エリアは、通常、250mm×250mm程度である。このため、そのエリアを超える長さの光導波路を作製するためには、露光を複数回に分けて行う必要がある。しかしながら、この場合、隣接し合う露光領域間(連結部)では、露光の管理が困難となり、位置ずれが起こり易く、その位置ずれにより、露光が重なる部分や露光されない部分が生じ、その結果として、光導波路に断線が生じるおそれがある。
【0005】
また、露光エリアが長い露光装置を使用することも考えられるが、均一な露光が可能なエリアは、上記エリアであり、露光エリアが長い露光装置を新たに開発することは、コスト的に実用的ではない。また、上記通常の露光エリアを利用し路長の短い光導波路を複数つくり、これらを連結して路長の長い光導波路を得ることも可能であるが、高価な連結具を要し、工程も長くなるという難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、容易に製造することができる長尺光導波路およびその製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成された路長の長い光導波路であって、蛇行状等における上記屈曲部を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成した長尺光導波路を第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面にコア層を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成する工程と、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成する工程と、これらアンダークラッド層,コア層およびオーバークラッド層からなる3層構造体を上記コア層の上記非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路に形成する工程と、その光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより蛇行状等の形状を引き伸ばし上記光導波路を長尺に形成する工程とを備えている長尺光導波路の製造方法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の長尺光導波路は、蛇行状等における屈曲部等を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行形状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成したものであるため、その製造において、路長を露光エリアよりも長くすることが容易なものとなっている。すなわち、本発明によれば、露光装置が有する露光エリア内で、蛇行状等の、屈曲部を有するパターンを無理なく形成し、その後、蛇行状等の形状を引き伸ばすという簡単な工程で路長の長い光導波路を得ることができる。このため、連結部(連結具)や煩雑な連結作業が不要になる。また、路長の長い光導波路に連結部(連結具)がないことから、その連結部(連結具)による障害(断線等)も生じない。
【0010】
本発明の長尺光導波路の製造方法によれば、上記のような路長の長い光導波路を、蛇行状等の、屈曲部を有する光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張るという簡単な工程により、得ることができる。このため、露光エリアよりも長い長尺の光導波路を容易に製造することができる。
【0011】
特に、上記コア層の非直線状の帯状パターンが、1箇所以上のU字状の屈曲部を有する折り返し形状である場合には、限られた露光エリアにおいて、光導波路をより有効に長く形成することができ、光導波路の長尺化がより容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1〜図7は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第1の実施の形態を示し、そのうち図7は、その製造方法によって得られる本発明の長尺光導波路の第1の実施の形態を示している。この実施の形態の長尺光導波路は、図7に示すように、隣り合う短冊状光導波路10がそれぞれの一端部の側方部分(後に説明する屈曲部11)で連続し、その屈曲部11から互いに反対方向に曲げられて長尺に形成されているものであり、この実施の形態では、4本の短冊状光導波路10が連続したものとなっている。
【0014】
上記長尺光導波路の製造方法をより詳しく説明する。
【0015】
まず、上記光導波路を製造する土台となる基材フィルム1(図1参照)を準備する。この基材フィルム1の形成材料としては、特に限定されないが、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート),PET(ポリエチレンテレフタレート),SUS(ステンレス)等があげられる。上記基材フィルム1の寸法は、露光エリア(250mm×250mm程度)に近づける観点から、250mm×250mm程度にすることが好ましく、その厚みは、特に限定されないが、通常、形成材料がPENやPETの場合は180μm程度、形成材料がSUSの場合は20μm程度である。
【0016】
ついで、図1に示すように、上記基材フィルム1の表面に、アンダークラッド層2を形成する。このアンダークラッド層2の形成材料としては、ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,光重合性樹脂,感光性樹脂等があげられる。そして、そのアンダークラッド層2の形成方法は、特に制限されないが、例えば、上記樹脂が溶媒に溶解しているワニスを基板上に塗布した後、硬化することにより行われる。上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。また、上記硬化は、アンダークラッド層2の形成材料や厚み等により適宜行われ、例えば、アンダークラッド層2がポリイミド樹脂からなる場合は、300〜400℃×60〜180分間の加熱処理により行われ、アンダークラッド層2が光重合性樹脂からなる場合は、1000〜5000mJ/cm2 の紫外線を照射した後、80〜120℃×10〜30分間の加熱処理により行われる。そして、アンダークラッド層2の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、5〜50μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、1〜20μmに設定される。
【0017】
つぎに、図2に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、後にコア層3〔図3(a),(b)参照〕となる樹脂層3aを形成する。この樹脂層3aの形成材料としては、通常、光重合性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層2および下記オーバークラッド層4〔図4(a),(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料となっている。そして、その樹脂層3aの形成は、特に制限されないが、上記と同様、例えば、光重合性樹脂が溶媒に溶解しているワニスをアンダークラッド層2上に塗布した後、乾燥することにより行われる。なお、上記ワニスの塗布は、上記と同様、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。また、上記乾燥は、50〜120℃×10〜30分間の加熱処理により行われる。
【0018】
そして、上記樹脂層3aを、所望のコア層3〔図3(a),(b)参照〕パターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクMを介して照射線Lにより露光する。この実施の形態では、上記コア層3パターンは、図3(b)に示すように、各コア層3が略W字状(3箇所のU字状の屈曲部11を有する折り返し形状)に形成されているとともに、その略W字状のコア層3が複数横に並んだ状態に形成されている。また、露光方法としては、例えば、投影露光,プロキシミティ露光,コンタクト露光等があげられる。樹脂層3aに粘着性がない場合は、フォトマスクMを樹脂層3aに接触させるコンタクト露光法が好適に用いられる。作業性が向上し、潜像の確実なパターン形成が可能になるからである。また、露光用の照射線Lとしては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは、50〜3000mJ/cm2 である。
【0019】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、80〜250℃、好ましくは、100〜200℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行う。その後、現像液を用いて現像を行うことにより、図3(a),(b)に示すように、樹脂層3aにおける未露光部分を溶解させて除去し、樹脂層3aをパターン形成する。そして、そのパターン形成された樹脂層3a中の現像液を加熱処理により除去し、コア層3を形成する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×10〜30分間行われる。また、コア層3の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、20〜100μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、2〜10μmに設定される。なお、現像は、例えば、浸漬法,スプレー法,パドル法等が用いられる。また、現像剤としては、例えば、有機系の溶媒,アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像剤および現像条件は、光重合性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0020】
このようにして、図3(b)に示すように、略W字状の各コア層3が複数横に並んだ状態に形成される。また、図3(a)に示すように、この略W字状の各コア層3には、1本ないし複数本の帯状のコア30が略W字状に平行に形成されており、図3(b)では、それらコア30を1本にまとめて図示している。
【0021】
つぎに、図4(a),(b)に示すように、上記コア層3(コア30)を包含するように、オーバークラッド層4を形成する。このオーバークラッド層4の形成材料としては、上記アンダークラッド層2と同様の材料があげられる。このオーバークラッド層4の形成材料は、上記アンダークラッド層2の形成材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、オーバークラッド層4の形成方法も上記アンダークラッド層2の形成方法と同様にして行われる。そして、オーバークラッド層4の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、5〜100μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、1〜20μmに設定される。このようにして、図4(b)に示すように、光導波路予定部(略W字状の各コア層3に沿う部分)が複数横に並んだ状態に形成される。
【0022】
つぎに、上記各光導波路予定部を、図5(a)に示すように、コア層3の略W字状に沿って、基材フィルム1とともに、金型を用いた打ち抜きにより切断する。これにより、略W字状(3箇所のU字状の屈曲部11を有する折り返し形状)の光導波路Aが、略W字状の基材フィルム1の表面に接着された状態で得られる。この略W字状の光導波路Aの寸法は、例えば、全長L1 :220mm、全幅W1 :8.3mm、略W字状を形成する短冊状光導波路10の幅W2 :2mm、隣り合う短冊状光導波路10の隙間D:0.1mm、U字状の屈曲部11(折り返し部分)の長さL2 :3mmに設定される。また、各コア層3には、例えば、図5(b)に示すように、4本の帯状のコア30が形成され、各コア30の断面寸法は50μm×50μmに設定される。また、アンダークラッド層2の厚みは25μmに設定され、オーバークラッド層4の厚み(コア層3上での厚み)も25μmに設定される。
【0023】
そして、図6に示すように、上記略W字状の光導波路Aの両端部を相互に逆方向(図6に図示した矢印X方向)に引っ張ると、上記略W字状の光導波路Aが、図7に示すように、引き伸ばされて長尺になり、長尺光導波路を得ることができる。この長尺光導波路の路長は、前記露光エリア(250mm×250mm程度)よりも長く(例えば300mm以上)なっている。なお、図6および図7では、基材フィルム1やアンダークラッド層2等の各層の側面を省略して図示している。
【0024】
本発明の長尺光導波路の製造方法の第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、金型を用いた打ち抜きによる切断に先立って、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離する製造方法である。この製造方法において、基材フィルム1とアンダークラッド層2とは、その形成材料から、接着力が弱く、基材フィルム1とオーバークラッド層4とをエアー吸着により引っ張ることにより、簡単に剥離することができる。そして、この製造方法は、長尺光導波路をよりフレキシブルなものとして使用する場合に有効である。
【0025】
図8および図9は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第3の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記第2の実施の形態において、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離した後、図8に示すように、光導波路予定部が並んでいる横方向に沿う両端縁部の片面または両面に、補強用テープTを貼り、その後、金型を用いた打ち抜きにより切断する製造方法である。この製造方法において、上記補強用テープTとしては、ポリエチレンテープ,ポリエステルテープ等があげられる。そして、この製造方法では、図9に示すように、略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)および両端部分に上記補強用テープTが位置決めされ、上記略W字状の光導波路Aを長尺にした状態(図7参照)において、上記U字状の屈曲部11の内側にかかる応力に対する耐性を得ることができる。
【0026】
図10および図11は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第4の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記第1の実施の形態において、基材フィルム1をSUS製とし、図10に示すように、アンダークラッド層2もオーバークラッド層4も略W字状にパターニングしている(但し、この第4の実施の形態では、隣接し合う光導波路予定部のアンダークラッド層2同士およびオーバークラッド層4同士は繋がっている)。このようにアンダークラッド層2およびオーバークラッド層4をパターニングする場合は、それらの形成材料として、光重合性樹脂または感光性樹脂等が用いられ、各形成材料を塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して照射線により露光してパターニングする。また、隣接し合う光導波路予定部の切断に先立って、図11に示すように、略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11および両端部分に対応するSUS製基材フィルム部分を残して、それ以外のSUS製基材フィルム部分をエッチング除去する。この製造方法では、残ったSUS製基材フィルム部分が上記第3の実施の形態における補強用テープT(図9参照)と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
本発明の長尺光導波路の製造方法の第5の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、隣接し合う光導波路予定部のアンダークラッド層2同士およびオーバークラッド層4同士が繋がらないよう、アンダークラッド層2およびオーバークラッド層4を、略W字状にパターニングする製造方法である。この製造方法では、基材フィルム1を剥離した際に、略W字状の光導波路Aが得られるため、金型を用いた打ち抜き等による切断工程が不要にすることができる。
【0028】
なお、上記各実施の形態において、上記略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)の内側部分は、応力集中を避けるために、例えば、図12に示すように、丸みを有する形状に形成してもよい。
【0029】
また、上記各実施の形態では、光導波路Aを、3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)を有する略W字状としたが、これに限定されるものではなく、U字状の屈曲部11を1箇所にした略V字状でもよいし、U字状の屈曲部11を2箇所にした略N字状でもよいし、U字状の屈曲部11を4箇所にした蛇行形状でもよい。
【0030】
さらに、光導波路の形状は、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンであれば、その屈曲部はU字状でなくてもよく、例えば、渦巻き状等に形成してもよい。この渦巻き状に形成する場合、その渦巻き状は、円状(屈曲部が連続的になっている)でもよいし、三角形以上の多角形状(角部が屈曲部になっている)でもよい。
【0031】
また、上記各実施の形態では、光導波路Aを製造する土台として基材フィルム1を用いたが、そのうちの上記第2,3,5の各実施の形態については、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離し、その基材フィルム1を切断やエッチングする必要がないため、上記基材フィルム1に代えて、青板ガラス,合成石英,シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー等の板状基材を用いてもよい。
【0032】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【実施例】
【0033】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
下記の一般式(1)で示されるビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(成分A)35重量部、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)(成分B)40重量部、シクロヘキセンオキシド骨格を有する脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、セロキサイド2081)(成分C)25重量部、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液2重量部とを混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0034】
【化1】
【0035】
〔コア層の形成材料〕
上記成分A:70重量部、1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタン:30重量部、上記成分B:1重量部を乳酸エチルに溶解することにより、コア層の形成材料を調製した。
【0036】
〔長尺光導波路の作製〕
上記第4の実施の形態(図10および図11参照)と同様にして長尺光導波路を作製した。すなわち、SUS製基材フィルム〔250mm×250mm×20μm(厚み)〕の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、100℃×15分間の加熱処理を行うことにより、アンダークラッド層を形成した。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると25μmであった。また、このアンダークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.542であった。
【0037】
そして、上記アンダークラッド層の表面に、コア層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、100℃×15分間の乾燥処理を行った。ついで、その上方に、略W字状のパターンが形成された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配置し、その上方から、コンタクト露光法にて4000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。さらに、120℃×15分間の加熱処理を行った。つぎに、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×30分間の加熱処理を行うことにより、略W字状のコア層を形成した〔図3(b)参照〕。このコア層には4本のコアが形成され〔図5(b)参照〕、各コアの断面寸法は、SEMで測定したところ、幅50μm×高さ50μmであった。また、コア層の、波長830nmにおける屈折率は、1.602であった。
【0038】
ついで、上記コア層の各コアを包含するように、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、150℃×60分間の加熱処理を行うことにより、オーバークラッド層を形成した(図10参照)。このオーバークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると25μmであった。また、このオーバークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.542であった。
【0039】
その後、略W字状の光導波路の3箇所のU字状の屈曲部および両端部分に対応するSUS製基材フィルム部分を残すよう、フォトレジストでマスクし、それ以外のSUS製基材フィルム部分をエッチング除去した(図11参照)。
【0040】
上記略W字状の光導波路の寸法〔図5(a)参照〕は、全長220mm、全幅8.3mm、短冊状光導波路の幅2mm、隣り合う短冊状光導波路の隙間0.1mm、U字状の屈曲部(折り返し部分)の長さ3mmであった。
【0041】
そして、上記略W字状の光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより、長尺光導波路を得ることができた(図7参照)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の長尺光導波路の製造方法の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記長尺光導波路の製造方法を示す断面図である。
【図3】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。
【図4】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。
【図5】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその平面図であり、(b)はその一部の拡大図である。
【図6】上記長尺光導波路の製造方法を示す斜視図である。
【図7】上記長尺光導波路の製造方法により得られる長尺光導波路を示す斜視図である。
【図8】上記長尺光導波路の第3の実施の形態を示す平面図である。
【図9】上記第3の実施の形態により得られる長尺光導波路を示す平面図である。
【図10】上記長尺光導波路の第4の実施の形態を示す平面図である。
【図11】上記第4の実施の形態により得られる長尺光導波路を示す平面図である。
【図12】上記長尺光導波路の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
A 光導波路
3 コア層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられる長尺光導波路およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスに組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。光導波路としては、例えば、アンダークラッド層上に、コア層が所定パターンに形成され、このコア層を包含するようにオーバークラッド層が形成された三層構造のものがあげられる。上記コア層のパターン形成は、フォトリソグラフィ工程により行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、最近では、光通信の発達により、光配線基板等の光デバイス間の情報通信が、金属ケーブルから光導波路を用いた光インタコネクションへ移行しつつある。それに対応して、長尺の光導波路が要請されている。
【特許文献1】特開2005−266739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、光導波路の作製には、フォトリソグラフィ工程を要し、そのフォトリソグラフィ工程で使用する露光装置の露光エリアは、通常、250mm×250mm程度である。このため、そのエリアを超える長さの光導波路を作製するためには、露光を複数回に分けて行う必要がある。しかしながら、この場合、隣接し合う露光領域間(連結部)では、露光の管理が困難となり、位置ずれが起こり易く、その位置ずれにより、露光が重なる部分や露光されない部分が生じ、その結果として、光導波路に断線が生じるおそれがある。
【0005】
また、露光エリアが長い露光装置を使用することも考えられるが、均一な露光が可能なエリアは、上記エリアであり、露光エリアが長い露光装置を新たに開発することは、コスト的に実用的ではない。また、上記通常の露光エリアを利用し路長の短い光導波路を複数つくり、これらを連結して路長の長い光導波路を得ることも可能であるが、高価な連結具を要し、工程も長くなるという難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、容易に製造することができる長尺光導波路およびその製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成された路長の長い光導波路であって、蛇行状等における上記屈曲部を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成した長尺光導波路を第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面にコア層を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成する工程と、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成する工程と、これらアンダークラッド層,コア層およびオーバークラッド層からなる3層構造体を上記コア層の上記非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路に形成する工程と、その光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより蛇行状等の形状を引き伸ばし上記光導波路を長尺に形成する工程とを備えている長尺光導波路の製造方法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の長尺光導波路は、蛇行状等における屈曲部等を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行形状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成したものであるため、その製造において、路長を露光エリアよりも長くすることが容易なものとなっている。すなわち、本発明によれば、露光装置が有する露光エリア内で、蛇行状等の、屈曲部を有するパターンを無理なく形成し、その後、蛇行状等の形状を引き伸ばすという簡単な工程で路長の長い光導波路を得ることができる。このため、連結部(連結具)や煩雑な連結作業が不要になる。また、路長の長い光導波路に連結部(連結具)がないことから、その連結部(連結具)による障害(断線等)も生じない。
【0010】
本発明の長尺光導波路の製造方法によれば、上記のような路長の長い光導波路を、蛇行状等の、屈曲部を有する光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張るという簡単な工程により、得ることができる。このため、露光エリアよりも長い長尺の光導波路を容易に製造することができる。
【0011】
特に、上記コア層の非直線状の帯状パターンが、1箇所以上のU字状の屈曲部を有する折り返し形状である場合には、限られた露光エリアにおいて、光導波路をより有効に長く形成することができ、光導波路の長尺化がより容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1〜図7は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第1の実施の形態を示し、そのうち図7は、その製造方法によって得られる本発明の長尺光導波路の第1の実施の形態を示している。この実施の形態の長尺光導波路は、図7に示すように、隣り合う短冊状光導波路10がそれぞれの一端部の側方部分(後に説明する屈曲部11)で連続し、その屈曲部11から互いに反対方向に曲げられて長尺に形成されているものであり、この実施の形態では、4本の短冊状光導波路10が連続したものとなっている。
【0014】
上記長尺光導波路の製造方法をより詳しく説明する。
【0015】
まず、上記光導波路を製造する土台となる基材フィルム1(図1参照)を準備する。この基材フィルム1の形成材料としては、特に限定されないが、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート),PET(ポリエチレンテレフタレート),SUS(ステンレス)等があげられる。上記基材フィルム1の寸法は、露光エリア(250mm×250mm程度)に近づける観点から、250mm×250mm程度にすることが好ましく、その厚みは、特に限定されないが、通常、形成材料がPENやPETの場合は180μm程度、形成材料がSUSの場合は20μm程度である。
【0016】
ついで、図1に示すように、上記基材フィルム1の表面に、アンダークラッド層2を形成する。このアンダークラッド層2の形成材料としては、ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,光重合性樹脂,感光性樹脂等があげられる。そして、そのアンダークラッド層2の形成方法は、特に制限されないが、例えば、上記樹脂が溶媒に溶解しているワニスを基板上に塗布した後、硬化することにより行われる。上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。また、上記硬化は、アンダークラッド層2の形成材料や厚み等により適宜行われ、例えば、アンダークラッド層2がポリイミド樹脂からなる場合は、300〜400℃×60〜180分間の加熱処理により行われ、アンダークラッド層2が光重合性樹脂からなる場合は、1000〜5000mJ/cm2 の紫外線を照射した後、80〜120℃×10〜30分間の加熱処理により行われる。そして、アンダークラッド層2の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、5〜50μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、1〜20μmに設定される。
【0017】
つぎに、図2に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、後にコア層3〔図3(a),(b)参照〕となる樹脂層3aを形成する。この樹脂層3aの形成材料としては、通常、光重合性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層2および下記オーバークラッド層4〔図4(a),(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料となっている。そして、その樹脂層3aの形成は、特に制限されないが、上記と同様、例えば、光重合性樹脂が溶媒に溶解しているワニスをアンダークラッド層2上に塗布した後、乾燥することにより行われる。なお、上記ワニスの塗布は、上記と同様、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。また、上記乾燥は、50〜120℃×10〜30分間の加熱処理により行われる。
【0018】
そして、上記樹脂層3aを、所望のコア層3〔図3(a),(b)参照〕パターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクMを介して照射線Lにより露光する。この実施の形態では、上記コア層3パターンは、図3(b)に示すように、各コア層3が略W字状(3箇所のU字状の屈曲部11を有する折り返し形状)に形成されているとともに、その略W字状のコア層3が複数横に並んだ状態に形成されている。また、露光方法としては、例えば、投影露光,プロキシミティ露光,コンタクト露光等があげられる。樹脂層3aに粘着性がない場合は、フォトマスクMを樹脂層3aに接触させるコンタクト露光法が好適に用いられる。作業性が向上し、潜像の確実なパターン形成が可能になるからである。また、露光用の照射線Lとしては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは、50〜3000mJ/cm2 である。
【0019】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、80〜250℃、好ましくは、100〜200℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行う。その後、現像液を用いて現像を行うことにより、図3(a),(b)に示すように、樹脂層3aにおける未露光部分を溶解させて除去し、樹脂層3aをパターン形成する。そして、そのパターン形成された樹脂層3a中の現像液を加熱処理により除去し、コア層3を形成する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×10〜30分間行われる。また、コア層3の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、20〜100μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、2〜10μmに設定される。なお、現像は、例えば、浸漬法,スプレー法,パドル法等が用いられる。また、現像剤としては、例えば、有機系の溶媒,アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像剤および現像条件は、光重合性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0020】
このようにして、図3(b)に示すように、略W字状の各コア層3が複数横に並んだ状態に形成される。また、図3(a)に示すように、この略W字状の各コア層3には、1本ないし複数本の帯状のコア30が略W字状に平行に形成されており、図3(b)では、それらコア30を1本にまとめて図示している。
【0021】
つぎに、図4(a),(b)に示すように、上記コア層3(コア30)を包含するように、オーバークラッド層4を形成する。このオーバークラッド層4の形成材料としては、上記アンダークラッド層2と同様の材料があげられる。このオーバークラッド層4の形成材料は、上記アンダークラッド層2の形成材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、オーバークラッド層4の形成方法も上記アンダークラッド層2の形成方法と同様にして行われる。そして、オーバークラッド層4の厚みは、通常、マルチモード光導波路の場合には、5〜100μmに設定され、シングルモード光導波路の場合には、1〜20μmに設定される。このようにして、図4(b)に示すように、光導波路予定部(略W字状の各コア層3に沿う部分)が複数横に並んだ状態に形成される。
【0022】
つぎに、上記各光導波路予定部を、図5(a)に示すように、コア層3の略W字状に沿って、基材フィルム1とともに、金型を用いた打ち抜きにより切断する。これにより、略W字状(3箇所のU字状の屈曲部11を有する折り返し形状)の光導波路Aが、略W字状の基材フィルム1の表面に接着された状態で得られる。この略W字状の光導波路Aの寸法は、例えば、全長L1 :220mm、全幅W1 :8.3mm、略W字状を形成する短冊状光導波路10の幅W2 :2mm、隣り合う短冊状光導波路10の隙間D:0.1mm、U字状の屈曲部11(折り返し部分)の長さL2 :3mmに設定される。また、各コア層3には、例えば、図5(b)に示すように、4本の帯状のコア30が形成され、各コア30の断面寸法は50μm×50μmに設定される。また、アンダークラッド層2の厚みは25μmに設定され、オーバークラッド層4の厚み(コア層3上での厚み)も25μmに設定される。
【0023】
そして、図6に示すように、上記略W字状の光導波路Aの両端部を相互に逆方向(図6に図示した矢印X方向)に引っ張ると、上記略W字状の光導波路Aが、図7に示すように、引き伸ばされて長尺になり、長尺光導波路を得ることができる。この長尺光導波路の路長は、前記露光エリア(250mm×250mm程度)よりも長く(例えば300mm以上)なっている。なお、図6および図7では、基材フィルム1やアンダークラッド層2等の各層の側面を省略して図示している。
【0024】
本発明の長尺光導波路の製造方法の第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、金型を用いた打ち抜きによる切断に先立って、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離する製造方法である。この製造方法において、基材フィルム1とアンダークラッド層2とは、その形成材料から、接着力が弱く、基材フィルム1とオーバークラッド層4とをエアー吸着により引っ張ることにより、簡単に剥離することができる。そして、この製造方法は、長尺光導波路をよりフレキシブルなものとして使用する場合に有効である。
【0025】
図8および図9は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第3の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記第2の実施の形態において、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離した後、図8に示すように、光導波路予定部が並んでいる横方向に沿う両端縁部の片面または両面に、補強用テープTを貼り、その後、金型を用いた打ち抜きにより切断する製造方法である。この製造方法において、上記補強用テープTとしては、ポリエチレンテープ,ポリエステルテープ等があげられる。そして、この製造方法では、図9に示すように、略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)および両端部分に上記補強用テープTが位置決めされ、上記略W字状の光導波路Aを長尺にした状態(図7参照)において、上記U字状の屈曲部11の内側にかかる応力に対する耐性を得ることができる。
【0026】
図10および図11は、本発明の長尺光導波路の製造方法の第4の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記第1の実施の形態において、基材フィルム1をSUS製とし、図10に示すように、アンダークラッド層2もオーバークラッド層4も略W字状にパターニングしている(但し、この第4の実施の形態では、隣接し合う光導波路予定部のアンダークラッド層2同士およびオーバークラッド層4同士は繋がっている)。このようにアンダークラッド層2およびオーバークラッド層4をパターニングする場合は、それらの形成材料として、光重合性樹脂または感光性樹脂等が用いられ、各形成材料を塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して照射線により露光してパターニングする。また、隣接し合う光導波路予定部の切断に先立って、図11に示すように、略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11および両端部分に対応するSUS製基材フィルム部分を残して、それ以外のSUS製基材フィルム部分をエッチング除去する。この製造方法では、残ったSUS製基材フィルム部分が上記第3の実施の形態における補強用テープT(図9参照)と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
本発明の長尺光導波路の製造方法の第5の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、隣接し合う光導波路予定部のアンダークラッド層2同士およびオーバークラッド層4同士が繋がらないよう、アンダークラッド層2およびオーバークラッド層4を、略W字状にパターニングする製造方法である。この製造方法では、基材フィルム1を剥離した際に、略W字状の光導波路Aが得られるため、金型を用いた打ち抜き等による切断工程が不要にすることができる。
【0028】
なお、上記各実施の形態において、上記略W字状の光導波路Aの3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)の内側部分は、応力集中を避けるために、例えば、図12に示すように、丸みを有する形状に形成してもよい。
【0029】
また、上記各実施の形態では、光導波路Aを、3箇所のU字状の屈曲部11(折り返し部分)を有する略W字状としたが、これに限定されるものではなく、U字状の屈曲部11を1箇所にした略V字状でもよいし、U字状の屈曲部11を2箇所にした略N字状でもよいし、U字状の屈曲部11を4箇所にした蛇行形状でもよい。
【0030】
さらに、光導波路の形状は、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンであれば、その屈曲部はU字状でなくてもよく、例えば、渦巻き状等に形成してもよい。この渦巻き状に形成する場合、その渦巻き状は、円状(屈曲部が連続的になっている)でもよいし、三角形以上の多角形状(角部が屈曲部になっている)でもよい。
【0031】
また、上記各実施の形態では、光導波路Aを製造する土台として基材フィルム1を用いたが、そのうちの上記第2,3,5の各実施の形態については、基材フィルム1をアンダークラッド層2から剥離し、その基材フィルム1を切断やエッチングする必要がないため、上記基材フィルム1に代えて、青板ガラス,合成石英,シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー等の板状基材を用いてもよい。
【0032】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【実施例】
【0033】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
下記の一般式(1)で示されるビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(成分A)35重量部、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)(成分B)40重量部、シクロヘキセンオキシド骨格を有する脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、セロキサイド2081)(成分C)25重量部、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液2重量部とを混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0034】
【化1】
【0035】
〔コア層の形成材料〕
上記成分A:70重量部、1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタン:30重量部、上記成分B:1重量部を乳酸エチルに溶解することにより、コア層の形成材料を調製した。
【0036】
〔長尺光導波路の作製〕
上記第4の実施の形態(図10および図11参照)と同様にして長尺光導波路を作製した。すなわち、SUS製基材フィルム〔250mm×250mm×20μm(厚み)〕の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、100℃×15分間の加熱処理を行うことにより、アンダークラッド層を形成した。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると25μmであった。また、このアンダークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.542であった。
【0037】
そして、上記アンダークラッド層の表面に、コア層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、100℃×15分間の乾燥処理を行った。ついで、その上方に、略W字状のパターンが形成された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配置し、その上方から、コンタクト露光法にて4000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。さらに、120℃×15分間の加熱処理を行った。つぎに、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×30分間の加熱処理を行うことにより、略W字状のコア層を形成した〔図3(b)参照〕。このコア層には4本のコアが形成され〔図5(b)参照〕、各コアの断面寸法は、SEMで測定したところ、幅50μm×高さ50μmであった。また、コア層の、波長830nmにおける屈折率は、1.602であった。
【0038】
ついで、上記コア層の各コアを包含するように、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、所望の開口パターンが形成されているフォトマスクを介して2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、150℃×60分間の加熱処理を行うことにより、オーバークラッド層を形成した(図10参照)。このオーバークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると25μmであった。また、このオーバークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.542であった。
【0039】
その後、略W字状の光導波路の3箇所のU字状の屈曲部および両端部分に対応するSUS製基材フィルム部分を残すよう、フォトレジストでマスクし、それ以外のSUS製基材フィルム部分をエッチング除去した(図11参照)。
【0040】
上記略W字状の光導波路の寸法〔図5(a)参照〕は、全長220mm、全幅8.3mm、短冊状光導波路の幅2mm、隣り合う短冊状光導波路の隙間0.1mm、U字状の屈曲部(折り返し部分)の長さ3mmであった。
【0041】
そして、上記略W字状の光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより、長尺光導波路を得ることができた(図7参照)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の長尺光導波路の製造方法の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記長尺光導波路の製造方法を示す断面図である。
【図3】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。
【図4】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。
【図5】上記長尺光導波路の製造方法を示し、(a)はその平面図であり、(b)はその一部の拡大図である。
【図6】上記長尺光導波路の製造方法を示す斜視図である。
【図7】上記長尺光導波路の製造方法により得られる長尺光導波路を示す斜視図である。
【図8】上記長尺光導波路の第3の実施の形態を示す平面図である。
【図9】上記第3の実施の形態により得られる長尺光導波路を示す平面図である。
【図10】上記長尺光導波路の第4の実施の形態を示す平面図である。
【図11】上記第4の実施の形態により得られる長尺光導波路を示す平面図である。
【図12】上記長尺光導波路の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
A 光導波路
3 コア層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成された路長の長い光導波路であって、蛇行状等における上記屈曲部を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成したことを特徴とする長尺光導波路。
【請求項2】
蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンの路長が300mm以上である請求項1記載の長尺光導波路。
【請求項3】
折り畳む前の帯状パターン全体の大きさが250mm×250mmの正方形領域内に納まる大きさである請求項1または2記載の長尺光導波路。
【請求項4】
アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面にコア層を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成する工程と、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成する工程と、これらアンダークラッド層,コア層およびオーバークラッド層からなる3層構造体を上記コア層の上記非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路に形成する工程と、その光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより蛇行状等の形状を引き伸ばし上記光導波路を長尺に形成する工程とを備えていることを特徴とする長尺光導波路の製造方法。
【請求項5】
上記コア層の非直線状の帯状パターンが、1箇所以上のU字状の屈曲部を有する折り返し形状である請求項4記載の長尺光導波路の製造方法。
【請求項1】
蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成された路長の長い光導波路であって、蛇行状等における上記屈曲部を折り畳み代に形成し、この折り畳み代を利用して折り曲げることにより、蛇行状等の非直線状の帯状光導波路を略直線状に形成可能に構成したことを特徴とする長尺光導波路。
【請求項2】
蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンの路長が300mm以上である請求項1記載の長尺光導波路。
【請求項3】
折り畳む前の帯状パターン全体の大きさが250mm×250mmの正方形領域内に納まる大きさである請求項1または2記載の長尺光導波路。
【請求項4】
アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面にコア層を、蛇行状等の、屈曲部を有する非直線状の帯状パターンに形成する工程と、そのコア層を包含するようにオーバークラッド層を形成する工程と、これらアンダークラッド層,コア層およびオーバークラッド層からなる3層構造体を上記コア層の上記非直線状の帯状パターンに沿った形状の光導波路に形成する工程と、その光導波路の両端部を相互に逆方向に引っ張ることにより蛇行状等の形状を引き伸ばし上記光導波路を長尺に形成する工程とを備えていることを特徴とする長尺光導波路の製造方法。
【請求項5】
上記コア層の非直線状の帯状パターンが、1箇所以上のU字状の屈曲部を有する折り返し形状である請求項4記載の長尺光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−102296(P2008−102296A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284392(P2006−284392)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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