説明

長短グラファイトシートから製造されたヒートシンク

ヒートシンク装置(10)は、グラファイト材料からなる長短シート(14)、(16)が交互にサンドイッチ上に配置されてなり、長シート(14)が短シート(16)よりも長く伸びてフィンを形成してなる。異方性グラファイト材料の熱伝導率の高い方向は、シートの平面方向に配向している。長(14)短(16)シートの基底末端(18)は、それら基底末端(18)が全体的に平坦な基底表面(20)を形成するように互いに整列して、前記ヒートシンク装置により冷却される電子装置(12)と前記基底表面(20)とが係合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置等の熱源から放出される熱を管理することができるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
高い処理速度および高周波数で作動する能力があり、小型で、より複雑な電力条件を有する電子装置、マイクロプロセッサーや電子および電気部品ならびに装置の集積回路等の他の技術的に進化した装置、さらに高出力光学装置等の他の装置を含む電子装置の開発は益々高度になっており、極端に高い温度が発生することがある。しかしながら、マイクロプロセッサー、集積回路、その他の高性能な電子部品は、特定範囲の閾温度下でのみ効率的に動作するのが一般的である。電子部品の動作中に発生する過剰の熱は、その固有性能に有害であるのみならず、システム全体の性能や信頼性が損なわれ、システムの故障を引き起こす場合もある。電子システムの稼働によって予期される極端な温度を含む環境条件の幅が益々広くなることも、過剰熱による悪影響を助長するものである。
【0003】
小型電子装置から熱を放散させる必要性が高まるに従い、電子製品の設計においては熱管理が益々重要な要素になっている。電子装置の性能信頼性および期待される寿命の両方が、装置の部品温度に逆比例する。例えば、典型的なシリコン半導体等のデバイスの動作温度を下げることにより、デバイスの処理速度、信頼性および期待される寿命を増加させることができる。従って、最大限の部品寿命や信頼性を得るために最も重要なことは、デバイスの動作温度を、設計者により設定される限度内に制御することである。
【0004】
電子装置から熱が放散し易くするためのいくつかの放熱部品が用いられている。本発明は、フィン付きヒートシンクに直接応用できる。
【0005】
これらのヒートシンクは、発熱している電子装置等の熱源の表面から、より低温の環境(通常は空気)中に熱を放散し易くする。ヒートシンクは、主として、空気または他の熱移動媒体と直接接触している表面積を増加することにより、電子装置と周囲空気との間の熱移動効率を高めようとするものである。これによって、より多くの熱を逃がし、電子装置の動作温度を下げる。放熱部品の主目的は、装置の温度を、その設計者/製造業者により規定される最高許容温度より低く維持し易くすることである。
【0006】
ヒートシンクには、金属、特に銅またはアルミニウムから形成されているのが典型的であるが、これは、銅のような金属が熱を容易に吸収し、その熱をその構造全体に移動させる能力を有するためである。銅製のヒートシンクには、ヒートシンクの表面積を増加するためのフィンまたは他の構造が形成されており、フィンの横方向または縦方向に空気を強制的に送り(例えばファンにより)、電子部品から、銅製のヒートシンクを介して空気中に熱を放散させる。
【0007】
銅またはアルミニウムの放熱素子を使用すると、特に放熱部品の熱伝達面積が電子装置の面積より著しく大きい場合に、金属の重量による問題が生じることがある。例えば、純粋な銅は、1立方体センチメートルあたりの重量が8.96グラム(g/cm)であり、純粋なアルミニウムは2.70g/cmである。
【0008】
例えば、多くの用途において、数個のヒートシンクを、例えば回路基板上に配列させて、基板上の種々の部品から放熱させる必要がある。金属製のヒートシンクを使用した場合、基板上の金属の正味重量によって、基板に亀裂が入ったり他の同様の好ましくない影響を及ぼす可能性が増し、部品自体の重量も増加する。携帯用電子装置においては、放熱特性を維持しながら重量を下げるための方法が特に希求されている。
【0009】
ヒートシンクに使用するのに好適な別の材料群は、一般的にグラファイトと呼ばれるが、特に以下に説明するような天然グラファイトおよびフレキシブルグラファイトを基材とする材料である。これらの材料は、材料シートの平面で370W/m゜Kの高い熱伝導率を有する。これは、アルミニウム(200W/m゜K)や銅(360W/m゜K)よりも高い。また、グラファイト材料は、はるかに軽量であり、銅やアルミニウムに対して多くの優位性を与える。
【0010】
グラファイトは、炭素原子の六角形配列又は網目構造の層面から構成されている。これらの六角形に配列された炭素原子の層面は、実質的に平坦であり、かつ実質的に平行で等距離となるように互いの層面が配向又は配列されている。炭素原子からなる実質的に平坦で平行な等距離の、通常「グラフェーン層」又は「基底面」と称されるシート又は層は、互いに連結又は結合され、それらの群はクリスタリット形態で配列されている。高度に配列したグラファイトは、相当大きいクリスタリットからなり、そのクリスタリットは、互いに高度に整列もしくは配向し、よく整列した炭素層を有する。換言すれば、高度に配列したグラファイトは、高いクリスタリット配向を有する。ここで、グラファイトは、異方性構造を有するため、熱伝導性や導電率ならびに流体拡散等に高い方向性を有する多数の特徴を示したりあるいは有している。
【0011】
簡単に述べると、グラファイトは、炭素の層状構造、すなわち、弱いファンデルワールス力により互いに接合した炭素原子の層または薄層が重なった構造を有することが特徴である。グラファイト構造を考える際、通常、2つの軸(又は方向)、すなわち、c軸(又は方向)及びa軸(又は方向)により説明できる。単純化するために、c軸(又は方向)は、炭素層に垂直な方向と考えることができる。a軸(又は方向)は、炭素層に平行な方向、又はc軸方向に垂直な方向と考えることができる。フレキシブルグラファイトシート製造用のグラファイトは、相当高い配向性を有していることが好ましい。
【0012】
上記したように、炭素原子からなる平行な各層は、弱いファンデルワールス力によってのみ結合を保っている。天然グラファイトの処理により、炭素の層または薄層が重なり合った間隔が広くなり、層と垂直な方向、すなわちc軸方向に著しく広がるため、炭素層の重なりが実質的に保たれたまま、伸張ないし膨張したグラファイト構造が形成される。
【0013】
もとのc軸方向寸法の約80倍以上の最終厚さ(またはc軸方向寸法)を有する程度に大きく膨張したグラファイトフレークは、バインダーを使用せずに、例えば、ウエブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マット等(一般に「フレキシブルグラファイト」と呼ばれる)の膨張グラファイトの凝集又は一体化したシートに形成される。もとのc軸方向寸法の約80倍以上の最終厚さ(またはc軸寸法)を有する程度にまで大容積化した膨張グラファイト粒子は、グラファイト粒子間での機械的な絡み合いや凝集力有するために、バインダー材料を用いなくとも圧縮して一体化したフレキシブルシートに形成することができると考えられる。
【0014】
ロールプレス加工等の高圧縮から生じるシートの対向面は、実質的に平行な膨張グラファイト粒子やグラファイト層が配向しているため、上記のシート材料はフレキシブルであるとともに、熱伝導率や電気導電率の異方性および流体拡散性の異方性が、出発材料であるグラファイトと同程度に高いことも判明した。このように製造されたシート材料は、優れた可撓性を有し、良好な強度及び高度の配向を有する。
【0015】
簡単に述べると、フレキシブルでバインダーを必要としない異方性グラファイトシート材料(例えば、ウエブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マット等)の製造方法は、もとの粒子寸法の約80倍以上のc軸方向寸法を有する膨張グラファイト粒子を、バインダーを用いずに所定負荷で圧縮又は圧密化して、実質的に平坦でフレキシブルな一体化したグラファイトシートを形成する工程を含む。一度圧縮すると、その外観が一般的にコイル構造すなわち虫様になる膨張グラファイト粒子は、圧縮ひずみが残り、シート主面と対向した配置が維持される。シート材料の密度及び厚さは、圧縮の度合いを制御することにより変更できる。シート材料の密度は、約0.04g/cc〜約2.0g/ccの範囲とし得る。フレキシブルグラファイトシート材料は、グラファイト粒子がシートの主対向平行表面と平行して整列しているので高い異方性を示し、シートのロールプレス加工により異方性の程度が増加して配向性も増加する。ロールプレス加工した異方性シート材料においては、厚さ、すなわち、対向した平行シート表面に垂直な方向はc軸方向を含み、長さおよび幅に沿って広がる方向、すなわち、対向主面に沿った又は平行な方向はa軸方向を含む。また、シートの熱的、電気的性質および流体拡散性は、c軸方向とa軸方向とでは、大きさが何桁も異なる。
【0016】
従来のヒートシンクの設計と比較して熱抵抗が比較的低く、かつ比較的軽量である、改良されたヒートシンクを設計することが依然として必要とされている。
【発明の開示】
【0017】
本発明は、異方性グラファイト材料から構成されるフィン付ヒートシンク装置であって、グラファイト材料からなる長短シートが交互にサンドイッチ上に配置されてなり、前記長シートが、前記短シートよりも長く伸びてフィンを形成してなる、ヒートシンク装置を提供する。
【0018】
好ましくは、長短シートすべてが基底末端を有し、それら基底末端が全体的に平坦な基底表面を形成するように互いに整列して、前記ヒートシンク装置により冷却される電子装置と前記基底表面とが係合してなるものである。
【0019】
本発明の好ましい実施態様では、長短交互のシートが、積層された樹脂含浸グラファイトシート材料からそれぞれ構成されてなり、樹脂含浸材料の樹脂が、長短交互のシートを一つに結合し、ヒートシンク装置を形成するための十分な接着特性を与える。
【0020】
また、銅から構成されるヒートスプレッダバーを基底部に、シートの平面を横切るように挿入し、熱源由来の熱をすべてのフィンに放散することもできる。
【0021】
熱管理装置は、上記のようなヒートシンクを、ヒートシンク装置の平坦基底表面と熱を伝達するように係合した熱伝達表面を有する電子熱源と共に含んでなる。
【0022】
本発明の別の態様では、そのようなヒートシンク装置の製造方法であって、
(a)短長の複数のグラファイト材料部品を形成する工程、
(b)前記短長部品を、その部品の基底末端が互いに隣接して基底部を形成し、かつ前記長部品が前記短部品を越えた長さを有し、前記基底部から離れる方向に伸びるフィンを形成するように、組み立てる工程、および
(c)前記部品の厚さ方向で前記部品に圧力を作用させて、前記部品を一つに結合する工程
を含んでなる方法を提供する。
【0023】
従って、本発明の目的は、電子装置の熱を管理するための改良されたヒートシンク設計を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、グラファイト材料からなる長短交互のシートから構成されたフィン付ヒートシンク装置であって、長短シートが交互にサンドイッチ上に配置されてなり、長シートが前記短シートよりも長く伸びてヒートシンク装置のフィンを形成してなる装置を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、グラファイトシートから形成されたヒートシンク装置であって、冷却される装置から熱エネルギーが急速に放散されるように、すべてのグラファイトシートが、ヒートシンク装置の基底表面から実質的に直角に離れる方向で、熱伝導率がより高い方向を有する装置を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面を参照しながら以下の開示を読むことにより、当業者には容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上記のように、本発明のヒートシンクは、グラファイトシート材料から構成される。ヒートシンクの構成を説明する前に、グラファイトおよびそのグラファイトのフレキシブルシートへの変換を簡潔に説明する。
フレキシブルグラファイトシートの製造
【0028】
グラファイトは、原子が平坦層状に共有結合した面どうしが、より弱く結合した結晶形態の炭素である。上記グラファイトのフレキシブルシート等の原材料を得る際に、天然グラファイトフレーク等のグラファイト粒子を、典型的には、例えば、硫酸及び硝酸の溶液からなる挿入物質(インターカラント)で処理することにより、グラファイトの結晶構造が反応してグラファイトとインターカラントとの化合物が形成される。処理したグラファイト粒子を、以下「インターカラントグラファイト粒子」と称する。高温暴露すると、グラファイト内のインターカラントが分解・揮発して、インターカラントグラファイトの粒子が、c軸方向、すなわち、グラファイトの結晶面に垂直な方向に、もとの容積の約80倍以上の寸法に蛇腹状に膨張する。膨張(剥離とも称される)グラファイト粒子は、外観がねじ状であり、したがって、一般的にウォームと称されている。ウォームは、ともに圧縮してフレキシブルシートとすることができる。フレキシブルシートは、処理前のグラファイトフレークとは異なり、種々の形状に形成及び切断でき、また変形により機械的影響を受けて小さな横軸開口を備えることができる。
【0029】
本発明に使用するのに好適なフレキシブルシート用のグラファイト出発材料としては、熱に暴露したときに有機酸や無機酸だけでなくハロゲンを挿入して膨張させた、高度に黒鉛化した炭素質材料などがある。これらの黒鉛化度の高い炭素質材料は、最も好ましくは黒鉛化度が約1.0である。この開示で使用される用語「黒鉛化度」とは、下式による値(g)を意味する:
【数1】



(式中、d(002)は、結晶構造におけるグラファイトの炭素層間の間隔(単位:オングストローム)である)。グラファイトの層間の間隔dは、標準X線回折法により測定される。(002)、(004)及び(006)ミラー指数に対応する回折ピークの位置を測定し、標準最小二乗法を用いてこれらのピークの全てについて全誤差を最小にする間隔を導く。黒鉛化度が高い炭素質材料の例として、種々の原料から得られる天然グラファイトだけでなく、他の炭素質材料、例えば、化学蒸着、ポリマーの高温熱分解、または溶融金属液からの結晶化等により調製したグラファイトなどが挙げられるが、天然グラファイトが最も好ましい。
【0030】
本発明に使用されるフレキシブルシート用のグラファイト出発材料は、原料の結晶構造に必要とされる黒鉛化度を保ち、かつこれらが剥離し得る限り、非グラファイト成分を含有しても良い。一般的に、結晶構造に必要とされる黒鉛化度を有し、かつ剥離し得るいずれの炭素含有原料も、本発明に好適に使用できる。このようなグラファイトは、好ましくは少なくとも80%の純度を有する。より好ましくは、本発明に用いられるグラファイトは、純度が少なくとも約94%の純度を有する。最も好ましい実施態様によれば、用いられるグラファイトは、少なくとも約98%の純度を有する。
【0031】
グラファイトシートを製造するための一般的な方法が、米国特許第3,404,061号(Shane等)に記載されている。この文献に開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容の一部とされる。Shane等の方法の典型的な実施に際して、天然グラファイトフレークを、例えば、硝酸と硫酸の混合物溶液に分散する、好ましくは、グラファイトフレーク100重量部当たりインターカラント溶液約20〜約300重量部(pph)程度含む溶液に分散することによりグラファイトに物質挿入を行う。インターカレーション溶液は、当該技術分野において公知の酸化剤等のインターカレーション剤を含有する。それらの例として、酸化剤及び酸化性混合物を含有するもの、例えば、硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸等を含有する溶液、又は混合物、例えば、濃硝酸と塩素酸塩の混合物、クロム酸とリン酸の混合物、硫酸と硝酸の混合物、もしくは強有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸)とこの有機酸に溶解する強酸化剤との混合物を含有する溶液などが挙げられる。別の方法として、電位を使用してグラファイトの酸化を生じさせることができる。電解酸化を用いたグラファイト結晶に導入できる化学種には、硫酸だけでなく他の酸も挙げられる。
【0032】
好ましい実施態様によれば、インターカレーション剤は、硫酸又は硫酸とリン酸と、酸化剤、すなわち、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸若しくは過ヨウ素酸との混合物の溶液等である。これらの溶液よりは好ましくないが、塩化第二鉄等のハロゲン化金属、及び塩化第二鉄と硫酸との混合物、又はハロゲン化物、例えば、臭素を臭素と硫酸の溶液としてか、あるいは臭素を有機溶媒に溶解した溶液として含有できる。
【0033】
インターカレーション溶液の量は、約20〜約350pphの範囲でよく、より典型的には約40〜約160pphの範囲でよい。グラファイトフレークに物質挿入した後、過剰の溶液をグラファイトフレークから取り除いて、グラファイトフレークを水洗する。あるいは、インターカレーション溶液の量は、約10〜約40pphに制限することもできる。この量では、米国特許第4,895,713号に開示されているように洗浄工程を省略してもよい。上記文献に開示されている内容も、引用することにより本明細書の内容の一部とされる。
【0034】
インターカレーション溶液で処理したグラファイトフレークの粒子は、必要に応じて、例えば、25℃〜125℃の範囲で酸化性インターカレーション液の表面膜と反応するアルコール類、糖類、アルデヒド類及びエステル類から選択された還元性有機剤と混合して、これら還元性有機剤と接触させてもよい。好ましい具体的有機剤としては、ヘキサデカノール、オクタデカノール、1−オクタノール、2−オクタノール、デシルアルコール、1,10−デカンジオール、デシルアルデヒド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、デキストロース、フルクトース、ラクトース、スクロース、ジャガイモデンプン、エチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ジメチルオキシレート、ジエチルオキシレート、メチルホルメート、エチルホルメート、アスコルビン酸、及びリグニン由来化合物、例えば、リグノ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。有機還元剤の量は、グラファイトフレークの粒子の約0.5〜4重量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
インターカレーション前、インターカレーション中、もしくはインターカレーション直後に膨張助剤を使用して改善することもできる。これらの改善には、剥離温度の減少及び膨張体積(「ウォーム体積」とも称される)の増加などがある。このための膨張助剤は、インターカレーション溶液に充分溶解して膨張を改善できる有機材料であるのが有利である。より詳細には、この種の有機材料としては、炭素、水素、及び酸素含有物を用いてもよく、このような有機材料のみを用いることが好ましい。上記有機材料としてカルボン酸がとりわけ有効であることが判明した。膨張助剤として有用である好適なカルボン酸は、炭素数が少なくとも1個、好ましくは炭素数が最大約15個である、芳香族、脂肪族又はシクロ脂肪族、直鎖又は分岐鎖、飽和及び不飽和のモノカルボン酸類、ジカルボン酸類並びに多カルボン酸類から選択できるが、これらのカルボン酸は、一つ以上の剥離面で適度な改善をするのに有効な量のインターカレーション溶液に可溶であることが必要である。好適な有機溶媒を用いて、インターカレーション溶液への有機膨張剤の溶解度を改善することができる。
【0036】
飽和脂肪族カルボン酸類の代表例としては、H(CHCOOH(式中、nは0〜約5の数である)等で表される酸類、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸等が挙げられる。カルボン酸類の代わりに、無水物又は反応性カルボン酸誘導体、例えば、アルキルエステルを用いてもよい。アルキルエステル類の代表例は、ギ酸メチル及びギ酸エチルである。硫酸、硝酸及び他の公知の水性インターカラントは、ギ酸を分解して最終的に水と二酸化炭素とすることができる。このため、ギ酸及び他の効果的な膨張助剤を、グラファイトフレークを水性のインターカラントに浸漬する前にグラファイトフレークと接触させるのが有利である。代表的なジカルボン酸として、炭素数が2〜12個である脂肪族ジカルボン酸、特にシュウ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,5−ペンタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、例えば、フタル酸又はテレフタル酸が挙げられる。代表的なアルキルエステルとして、ジメチルオキシレート及びジエチルオキシレートが挙げられる。代表的なシクロ脂肪族酸として、シクロヘキサンカルボン酸が挙げられ、代表的な芳香族カルボン酸として、安息香酸、ナフトエ酸、アンスラニル酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、o−、m−及びp−トリル酸、メトキシ及びエトキシ安息香酸、アセトアセタミド安息香酸類及びアセタミド安息香酸類、フェニル酢酸並びにナフトエ酸類が挙げられる。代表的なヒドロキシ芳香族酸としては、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸及び7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられる。多カルボン酸中で代表的なものとしては、クエン酸が挙げられる。
【0037】
インターカレーション溶液は水性であり、剥離を高めるのに有効な量として、好ましくは膨張助剤を約1〜10%含有する。膨張助剤を、インターカレーション水溶液に浸漬する前又は後にグラファイトフレークと接触させる実施態様では、膨張助剤とグラファイトとを混合するに際して、典型的には膨張助剤と約0.2重量%〜約10重量%の量のグラファイトフレークとを、好適な手段、例えば、Vブレンダーにより混合できる。
【0038】
グラファイトフレークに物質挿入した後及びインターカラントグラファイトフレークと有機還元剤との混合に続いて、混合物を、25℃〜125℃の範囲の温度に暴露して還元剤とインターカラントグラファイトフレークとの反応を促進することができる。加熱期間は、約20時間以内であり、例えば、上記範囲において温度が高い場合には、加熱時間はもっと短かくてもよく、少なくとも約10分間である。より高い温度では、30分間以下の時間、例えば、10〜25分間程度でよい。
【0039】
このように処理されたグラファイト粒子は、「インターカラントグラファイトの粒子」と称されることがある。高温、例えば、少なくとも約160℃の温度、とりわけ約700℃〜1000℃及びそれ以上の温度に暴露すると、インターカラントグラファイトの粒子は、c軸方向、すなわち、構成グラファイト粒子の結晶面に垂直な方向に、蛇腹状にもとの体積の約80〜1000倍以上に膨張する。膨張、すなわち、剥離したグラファイト粒子は、その外観が虫状であることから、一般的にウォームと称される。ウォームを、一緒に圧縮成形して小さな横軸開口を有するフレキシブルシートとすることができる。このフレキシブルシートは、もとのグラファイトフレークとは異なり、種々の形状に形成したり切断できる。
【0040】
フレキシブルグラファイトシートや箔は、凝集性があり、良好な取扱強度を有し、例えばロールプレス加工により、厚さ約0.003〜約0.15インチおよび密度約0.1〜1.5グラム/立方センチメートルに効果的に圧縮される。米国特許第5,902,762号公報(この文献に開示されている内容は引用することにより本明細書の内容の一部とされる。)に開示されているように、約1.5〜30重量%のセラミック添加剤をインターカレーション加工したグラファイトフレークと混合し、最終的なフレキシブルグラファイト製品の樹脂含浸性を高めることができる。これらの添加剤は、長さ約0.15〜1.5ミリメートルのセラミック繊維粒子を含む。粒子の幅は約0.04〜0.004mmが好適である。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で且つ非粘着性であり、約1100℃までの、好ましくは約1400℃以上の温度で安定している。好適なセラミック繊維粒子は、細断した石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、等から形成される。
【0041】
フレキシブルグラファイトシートは、場合によっては樹脂で処理するのが有利であり、吸収された樹脂は、硬化後、フレキシブルグラファイトシートの耐湿性や取扱強度(すなわち剛性)を高めると共に、シートの形状を「固定する」。好適な樹脂含有量は、好ましくは少なくとも5〜約90重量%、より好ましくは約10〜35重量%であり、約60重量%までが好適である。本発明の実施に特に有用であることが分かっている樹脂としては、アクリル、エポキシおよびフェノールを基剤とする樹脂系、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ二フッ化ビニル、またはそれらの混合物がある。好適なエポキシ樹脂系には、ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールA(DGEBA)を基剤とする系、および他の多官能性樹脂系があり、使用できるフェノール系樹脂としては、レゾールおよびノボラックフェノール系がある。
ラミネート化されたグラファイト材料の製造
【0042】
以下に説明するヒートシンクの構成に用いられる長短交互のグラファイトシートは、好ましくは2001年8月31日に提出された米国特許出願であってNorleyらの「LAMINATES PREPARED FROM IMPREGNATED FLEXIBLE GRAPHITE SHEETS」と題する、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/943,131号に記載されている方法により構成される。上記文献に開示されている内容も、引用することにより本明細書の内容の一部とされる。
【0043】
Norleyらの方法により、上記のように製造された、厚さが約4mm〜7mmのフレキシブルグラファイトシートを、エポキシ、アクリルまたはフェノール樹脂系等の熱硬化性樹脂で含浸させる。好適なエポキシ樹脂系としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)樹脂系が挙げられるが、他の多官能性エポキシ樹脂系も本発明に好適に使用できる。好適なフェノール樹脂系としては、レゾールおよびノボラックフェノール樹脂を含む系が挙げられる。次いで、シートの厚さを約0.35mm〜0.5mmにカレンダー加工するが、その時点で、カレンダー加工したエポキシ含浸フレキシブルマットは、密度が約1.4g/cm〜約1.9g/cmである。
【0044】
エポキシ含浸グラファイトシート中の樹脂量は、最終的に組み立てられ、硬化した層構造が高密度に凝集するとともに、その緻密化されたグラファイト構造に関連する異方性熱伝導率が悪影響を受けない十分な量とすべきである。好適な樹脂含有量は、最終製品に求められる特性に応じて、好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは約5〜約35重量%である。
【0045】
樹脂含浸工程においては、フレキシブルグラファイトシートは、容器を通過して(例えばスプレーノズルから放出された)樹脂系で含浸されるのが典型的である。その樹脂系は真空チャンバーにより「マットを通して吸引される」のが有利である。典型的には、樹脂系を溶媒和させ、フレキシブルグラファイトシートの中に塗布し易くするが、必ずしも必要というわけではない。その後、好ましくは樹脂を乾燥させ、樹脂や樹脂含浸シートの粘着性を下げる。
【0046】
樹脂含浸され、カレンダー加工されたフレキシブルグラファイトシートを連続的に形成する装置の一種は、国際特許公開第WO00/64808号パンフレットに記載されている。上記文献に開示されている内容も、引用することにより本明細書の内容の一部とされる。
【0047】
カレンダー加工に続いて、樹脂含浸されたシートを適当なサイズの断片に切断し、これらの断片を積層して、プレスに載せ高温で硬化させる。硬化温度は、薄層構造が硬化圧力で確実に緻密化し、構造の異方性が改良され、その放熱装置としての特性が改良されるのに十分な温度とすべきである。一般的に、約150℃〜200℃の温度を必要とする。硬化させる圧力は、使用する温度によって異なるが、構造の熱的特性に悪影響を及ぼさずに、薄層構造を確実に緻密化するのに十分な圧力とすべきである。一般的に、製造上の都合から、構造を必要な程度に緻密化するのに必要な最小圧力を使用する。そのような圧力は、一般的に1000〜3000ポンド/平方インチ(psi)である。硬化時間は、使用する樹脂系や温度および圧力によって異なるが、一般的に0.5時間〜2時間である。硬化が完了した後、その複合材料の密度は、約1.8g/cm〜2.0g/cmとなる。
【0048】
含浸シート中に存在する樹脂は、複合材料のための接着剤として作用するのが有利である。あるいは、カレンダー加工された、含浸フレキシブルグラファイトシートに接着剤を塗布して、フレキシブルシートを積層し硬化させてもよい。好適な接着剤としては、エポキシ、アクリルまたはフェノール系樹脂が挙げられる。本発明の実施に特に有用であることが判明しているフェノール系樹脂としては、レゾールおよびノボラックフェノール樹脂を包含するフェノールを基材とする樹脂系が挙げられる。
【0049】
所望により、予備プレス加工した積重構造中に非グラファイト層を含んでもよい。そのような非グラファイト層としては、金属、プラスチックまたは他の非金属材料、例えば繊維ガラスまたはセラミックが挙げられる。含浸グラファイトシート中のエポキシ重合体は、硬化して構造中の非グラファイトと含浸グラファイト層とを所定の位置にしっかりと接着結合できる。
【0050】
下記の例は、好適なラミネート化された構造を例示して説明するが、本発明が制限されるものではない。他に指示がない限り、部数および百分率はすべて重量で表示する。
【実施例】
【0051】
例1
単位面積あたりの重量が70mg/cmで、寸法が約30cmx30cmのグラファイトシートをカレンダー加工して得られたマットのエポキシが12重量%になるように、エポキシで含浸させた。使用したエポキシは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)の高温硬化処方物であり、含浸手順は、アセトン−樹脂溶液で飽和させ、続いて約80℃で乾燥させた。含浸に続いて、シートを厚さ約7mmから約0.4mmに、密度が1.63g/cmとなるようにカレンダー加工を行った。次いで、カレンダー加工した含浸シートを直径約50mmのディスクに切断し、これらのディスクを46層の高さに積層した。このディスクの積層構造体をTMP(Technical Machine Products)プレスに載せて、2600psiの力で、150℃、1時間硬化させた。得られたラミネートは、密度が1.90g/cm、曲げ強度が8000psi、ヤング率が7.5Msi(百万ポンド/平方インチ)、平面内抵抗率が6マイクロオームであった。平面方向および厚さ方向の熱伝導率は、それぞれ396W/m・゜Kおよび6.9W/m・゜Kであった。これらのラミネートは、機械加工性が優れており、滑らかな仕上げの細孔の無い連続的な表面を有し、電子工学用熱管理装置に使用するのに適していた。異方性が高い熱伝導率を有する構造であることから、熱の影響を受けやすいエレクトロニクス部品から熱をヒートシンクに移動させるのに非常に適している。さらに、材料の密度約1.94g/cmは、アルミニウム(2.7g/cm)より相当小さく、銅(8.96g/cm)よりはるかに小さい。従って、グラファイトラミネートの比熱伝導率(すなわち熱伝導率と密度の比)は、アルミニウムの約3倍であり、銅の約4〜6倍である。
【0052】
本発明で使用するのに好適な積層化されたグラファイト材料は、上記の特別な材料に限定されるものではなく、例えば熱分解グラファイトシート、例えばMatsushita Electric Components Co., Ltd. Ceramic Division, 1006 Kadoma, 大阪、日本国により、パナソニックの「PGS」(登録商標)グラファイトシートの商品名で製造されているシートの層を含んでなる積層体を含む。
【0053】
ここで図面、特に図1および2において、ヒートシンクを全体的に10で示す。図2の立面図に、冷却すべき電子装置12と組み合わせたヒートシンク装置10を示すが、ヒートシンク装置10と電子装置12との組合せを熱管理装置と呼ぶ。
【0054】
ヒートシンク装置10は、交互の長いシート14A〜I、および短いシート16A〜Hから構築され、これらのシートは、サンドイッチ状に配置されており、長シート14が短シート16よりも長く伸びて、フィンを形成している。
【0055】
シート14および16はすべて、それらの基底末端(例えば18)が、揃って整列し、全体的に平坦な基底表面20を形成する。
【0056】
ここで使用する用語「長」および「短」は、基底面20より上の、シートの長さに関して使用する。例えば、図2において明らかなように、長いフィン14は、24の長さを有する短いフィン16と比較して、より長い長さ22を有する。
【0057】
従って、長シート14は、短シート16を、フィンの高さ26ぶんだけ長く伸びている。
【0058】
基底表面20は、図1で明らかなように、基底長さ28および基底幅30を有する。
【0059】
各シート、例えばシート14Aは、その高さまたは長さ22と、基底幅30とで規定される平面を有する平坦なシートとして説明できる。各シート、例えばシート14Aは、シートの平面を通って伸びるシート厚32を有するとしても説明できる。同様に、短いシート16Aは、シート厚さ34を有し、高さまたは長さ24および基底幅30により規定される平面を有するものとしても説明できる。
【0060】
電子装置12は、熱を伝達するように基底表面20と係合している。好ましくは、界面層36を備えるが、この層は、接着剤、サーマルグリース、またはフレキシブルグラファイト材料の薄いシートを含んでなる固体熱界面であってもよい。
【0061】
長短のグラファイト部品と呼ぶこともできる、長短のシート14、16は、「ラミネート化されたグラファイト材料の製造」の項で上記したような、積層した樹脂含浸グラファイトシート材料からそれぞれ構成することができる。そのような樹脂含浸積層グラファイト材料を使用してヒートシンク装置10を構成する場合、複数の長短シート14、16を先ず形成し、次いで長短シート14、16を、図1および2に示すような方法で一つに組み立て、次いで組み立てた部品に図1で示す方向38で圧力を作用させ、部品14、16を一つに結合させることにより、装置10を構成することができる。
【0062】
部品14および16自体が、それぞれ張り合わされた樹脂含浸フレキシブルグラファイトシート材料から構成されている場合、それらの部品を十分な圧力下で、十分な温度で適切な時間一緒に保持することが好ましく、これにより張り合わされた樹脂含浸材料中にすでに存在する樹脂が、シート同士を結合させる十分な接着剤となる。
【0063】
あるいは、長短シート14、16を、異なった材料から製造することもできる。例えば、長シートを樹脂含浸して予め硬化させたグラファイト材料から製造し、短シートを未硬化の樹脂含浸グラファイト材料から製造することができる。長短シートを組み立てた後、それらのシートを、矢印38の方向で圧力をかける装置中に配置し、次いで、装置を加熱炉中に入れ、圧力下で組立構造全体を硬化させ、スペーサー(すなわち短部品16)をフィン(つまり長部品14)に結合させる。
【0064】
シートまたは部品14、16は、各部品の熱伝導率が比較的高い方向が、シートの高さ22および基底部長さ30により規定される平面内となるように、そして熱伝導率が比較的低い軸が、シートの平面に対して直角の、シートの厚さ32方向に配向するように配置されたフレキシブルグラファイト材料の張り合わされたシートから構成される。
【0065】
従って、電子装置12である熱源がヒートシンク装置10に取り付けて動作させる場合、長シート14A〜Hにより形成されるフィンは、熱が基底表面20から全体的に直角に遠ざかるように、非常に効率的な方法で伝導する。
【0066】
図1および2に記載した実施態様は、ヒートシンク装置10の平らな基底表面20とほぼ同じサイズの熱移動面積を有する熱源12で使用するのに最適である。あるいは、ヒートシンク装置10が、電子装置12の熱移動面積よりも遙かに大きい基底表面20を有する場合、図3および4の別の実施態様が好ましい。
【0067】
下記のヒートシンク10の製造例は、ヒートシンクの構成をさらに例示し説明するものであるが、本発明が限定されるものではない。
【0068】
例2
フィン14は、張り合わせて硬化させた樹脂含浸グラファイト材料から上記のようにして製造する。完成したフィン14は厚さが0.025インチである。スペーサー16は、未硬化38重量%4Dエポキシ、78mg/cm TG-440シートの単層から製造する。個々のシートを厚さ約0.032”、密度約1.45g/ccとなるようにカレンダー加工を行う。これらのシートを、ヒートシンクの基底部の厚さに相当する高さ24が10mmである細片16に切断する。フィン14およびスペーサー16を製造した後、積層構造に組み立てる。積層構造を鋼製の型に入れ、次いでボルトにトルクをかけ、必要な長さに圧縮する。グラファイトフィンおよびスペーサーの位置を決めるために、鋼製のスペーサーを使用する。鋼製スペーサーは、型に通すボルトを受け入れるための穴を有する。ボルトにトルクをかけ、スペーサー材料をその初期厚さ0.032”から0.028”に圧縮する。組み立てる前に、フィン14の底部を増粘した液状エポキシ接着剤中で浸漬させて、スペーサーとの結合を強化する。型を組み立て、圧縮した後、約1.63g/ccとなるよう(約4mmの成形粉末層を製造するのに十分である)カレンダー加工を行った、メッシュサイズ−50メッシュの12重量%エポキシ/グラファイト未硬化粉末の層を型の中に注ぎ込む。次いで、粉末の上に鋼板を配置し、型をTMPプレス中に入れる。約1000psiの圧力を鋼板に作用させ、部品を温度310°Fで1時間硬化させる(1時間温度上昇および45分間強制冷却サイクルが伴う)。次いで、型を分解し、自己倒立させた成形されたヒートシンクを取り出し、これを所望により機械加工し、取付構造および/または機械的補強を与えることができる。
【0069】
図3および4に、変形ヒートシンク装置を全体的に番号110で示す。ヒートシンク装置110は、複数の長部品114A〜114I、および複数の短部品116A〜116Hを含んでなる。
【0070】
本実施態様においては、熱源112(その平面輪郭を図3に破線で示す)は、ヒートシンク装置110の基底表面120よりかなり小さい面積を有し、その基底表面120は、基底長さ128および基底幅130により規定される。
【0071】
本実施態様においては、熱源112自体の直上に位置していないヒートシンクが動作するように係合していないこれらの長いフィン114に、熱源112から熱を伝達するための手段を与える必要がある。これは、ヒートスプレッダバー150を使用することにより達成される。図4の断面図に最も分かり易く示すように、長短部品114、116の基底末端は、その中に形成された、材料シートの平面に対して横方向または直角に伸びる細長い空隙152を有する。空隙152の範囲は図3に破線で示す。
【0072】
ヒートスプレッダバー150は、好ましくは銅から構成され、図4に示すように細長い空隙152の中に近接して取り込まれている。ヒートスプレッダバー150は、空隙152の中に接着剤か熱収縮フィットにより保持する。
【0073】
このようにして熱源112由来の熱は、ヒートスプレッダバー150により、基底長さ128に沿って、ヒートシンク装置110のフィンを構成する各長シート114に運ばれる。
【0074】
電子装置112は、ヒートスプレッダバー150と熱伝達するように係合しており、ヒートスプレッダバー150により、電子装置112は長短部品114、116の基底末端と熱伝達する関係にあると説明できる。好ましくは、電子装置112とヒートスプレッダバー150との間に界面層136を設け、その界面層136は、接着剤、サーマルグリース、またはフレキシブルグラファイト材料からなる薄いシートを含んでなる固体熱界面でよい。
【0075】
図3に最も分かり易く示すように、ヒートスプレッダバーは、バーの幅154がシート114および116の平面と平行であり、バーの長さはシート基底長さ128と一致する。図3の平面図に破線で示す、熱源112の最上部の熱伝達表面158は、バーの幅154以下である熱源幅160を有し、バーの長さ128未満の熱源長さ162を有するとして説明できる。
【0076】
このように、本発明の装置は、上記の、および固有の目的および利点を容易に達成することは明らかである。本開示の目的に、本発明の特定の好ましい実施態様を例示して説明したが、当業者は数多くの変更を加えることができ、このような変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱するものではなく、全てのこのような修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明により構成されたヒートシンクを図式的に示す平面図である。
【図2】図1の線2−2の立面断面図である。
【図3】基底部に熱発散部を含む別の実施態様を図式的に示す平面図である。
【図4】図3の線4−4の立面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト材料からなる長短シートが交互にサンドイッチ上に配置されてなり、前記長シートが、前記短シートよりも長く伸びてフィンを形成してなる、ヒートシンク装置。
【請求項2】
前記長短シートすべてが基底末端を有し、それら基底末端が全体的に平坦な基底表面を形成するように互いに整列して、前記ヒートシンク装置により冷却される電子装置と前記基底表面とが係合してなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記グラファイト材料が、前記平坦な基底表面に対して垂直に配向した比較的高い熱伝導率を有する軸を有し、それにより、前記フィンが前記平坦基底表面から離散する方向に熱を伝達する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記長短交互のシートが、積層された樹脂含浸グラファイトシート材料からそれぞれ構成されてなる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記長短交互のシートが、前記樹脂含浸グラファイトシート材料の樹脂により、接着剤を添加することなく一つに接着されてなる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記各グラファイト材料シートが、前記シートの平面方向に配向した最大熱伝導率を有する軸と、前記シートの厚さ方向に配向した最低熱伝導率を有する軸とを有してなる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
熱伝達表面が形成された電子熱源をさらに含んでなり、前記長短シートが、基底表面を形成する基底末端を有してなり、その基底表面が前記電子熱源の熱伝達表面と係合して熱伝達が行われる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
基底末端を有する前記長短シートと、
前記基底末端と動作するように係合し、かつ前記シートに対して横方向に伸びるヒートスプレッダバーと、
をさらに含んでなり、熱源からの熱が、前記ヒートスプレッダバーと係合した前記の各長シートに放散される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ヒートスプレッダバーが銅から構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記長短シートの前記基底末端が、前記シート平面に対して横方向に形成された細長い空隙を有し、前記ヒートスプレッダバーが前記空隙中に近接して取り込まれてなる、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
熱伝達表面が形成された電子熱源と、
前記熱伝達表面上に配置され、かつ、前記熱伝達表面から離れるように伸びた複数の長短交互のグラファイト材料シートからなるヒートシンクと
を含んでなる熱管理装置であって、前記長シートが、隣接する前記短シートよりも長く伸びて冷却フィンを形成してなる、熱管理装置。
【請求項12】
前記長短シートすべてが基底末端を有し、それら基底末端が全体的に平坦な基底表面を形成するように互いに整列して、前記ヒートシンク装置により冷却される電子装置と前記基底表面とが係合してなる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記グラファイト材料が、前記平坦な基底表面に対して垂直に配向した比較的高い熱伝導率を有する軸を有し、それにより、前記フィンが前記平坦基底表面から離散する方向に熱を伝達する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記長短交互のシートが、積層された樹脂含浸グラファイトシート材料からそれぞれ構成されてなる、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記長短交互のシートが、前記樹脂含浸グラファイトシート材料の樹脂により、接着剤を添加することなく一つに接着されてなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記各グラファイト材料シートが、前記シートの平面方向に配向した最大熱伝導率を有する軸と、前記シートの厚さ方向に配向した最低熱伝導率を有する軸とを有してなる、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
熱伝達表面が形成された電子熱源をさらに含んでなり、前記長短シートが、基底表面を形成する基底末端を有してなり、その基底表面が前記電子熱源の熱伝達表面と係合して熱伝達が行われる、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記ヒートスプレッダバーが銅から構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記長短シートが、前記シート平面に対して横方向に形成された細長い空隙を有し、前記ヒートスプレッダバーが前記空隙中に近接して取り込まれてなる、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記シートの平面に対して、水平方向の幅と横方向の長さとを有する前記ヒートスプレッダバー、および
前記ヒートスプレッダバーの幅以下で、かつ前記前記ヒートスプレッダバーの長さ未満の長さを有する電子的熱源の熱伝達表面
をさらに含んでなる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
ヒートシンク装置の製造方法であって、
(a)短長の複数のグラファイト材料部品を形成する工程、
(b)前記短長部品を、その部品の基底末端が互いに隣接して基底部を形成し、かつ前記長部品が前記短部品を越えた長さを有し、前記基底部から離れる方向に伸びるフィンを形成するように、組み立てる工程、および
(c)前記部品の厚さ方向で前記部品に圧力を作用させて、前記部品を一つに結合する工程
を含んでなる、方法。
【請求項22】
前記工程(a)において、前記グラファイト材料が、積層された樹脂含浸フレキシブルグラファイトシートを含んでなり、
前記工程(c)において、前記短長部品が、前記積層樹脂含浸フレキシブルグラファイトシート由来の樹脂により互いに結合されてなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(a)において、前記短部品が、未硬化の樹脂含浸グラファイト材料を含んでなり、
前記工程(c)中で、前記短長部品が、前記短部品由来の樹脂により互いに結合されるように、前記部品を加圧下で加熱して前記短部品を硬化させる工程
をさらに含んでなる、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2005−536872(P2005−536872A)
【公表日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518122(P2004−518122)
【出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/020590
【国際公開番号】WO2004/003975
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(505003241)アドバンスド、エナジー、テクノロジー、インコーポレーテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED ENERGY TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】