説明

長繊維強化ポリアミド樹脂組成物

【課題】ペレット内からガラス繊維の抜け落ちが少なく、取り扱い性、成形性に優れ、かつ長繊維強化材料としての機械的強度、耐熱性などの優位性をも併せ持つ長繊維強化ポリアミド樹脂材料の提供。
【解決手段】(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂、(B)非晶性ポリアミド樹脂および/またはTc2が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂および(C)ガラス長繊維を含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂のメルトマスフローレイト(MFR:JIS K7210に準拠)が70g/10分以上であることを特徴とする長繊維強化ポリアミド樹脂組成物であり、(A)成分が20〜85重量%、(B)成分が1〜25重量%および(C)成分が20〜75重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のポリアミド樹脂とガラス繊維からなる長繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。詳しくは強度、弾性率および衝撃強度等の機械的特性や耐熱特性に優れ、かつ、成形材料として取り扱い性が優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスロービングを使った長繊維強化ポリアミド樹脂の開発は古くから検討されていたが、ガラス繊維束への樹脂の含浸性が悪く、また強化樹脂の生産性が悪いため、ガラス繊維のチュップドストランドをブレンド溶融混錬した短繊維強化ポリアミド樹脂が広く使用されている。しかしながら 強度、弾性率や衝撃強度等の機械的特性や熱変形温度等の耐熱特性は短繊維強化樹脂より長繊維強化樹脂が優れているため、用途分野によっては長繊維強化樹脂の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、剛性や衝撃強度等の機械的特性を改良した窓枠や扉枠を開発するため、長繊維強化熱可塑性樹脂を使用することが提案されている。長繊維強化熱可塑性樹脂の製造ではガラス繊維の束に対するマトリックス樹脂による溶融含浸性が極めて重要である。ここに提案されている方法は含浸性を良くするために、樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)が5g/10分以上であり、また実施例ではポリアミド樹脂のMFRは50g/10分の樹脂を使用している。一方、樹脂のMFRが100g/10分以上になると一部の機械的特性が低下して好ましくないことが記載されている。
しかしながら、樹脂のMFRが5〜50g/10分程度では、ガラス繊維の束に対するマトリックス樹脂による溶融含浸性は十分とは言えない。含浸性が十分でない場合は滞留時間を長くして樹脂との含浸性を向上させることが必要となり、生産性が低下したり、ペレットのガラス繊維抜けや割れが発生する場合があり、取り扱い性が悪くなる。
【特許文献1】特開2003−25456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明はガラス繊維の束へのポリアミド樹脂の含浸性を向上させ、未含浸の繊維による成形工程中で起こるガラス繊維の脱離やペレットの割れ等の不具合を防止すると共に、長繊維強化ポリアミド樹脂の優れた機械的強度や耐熱性等の物性を保持することにより、良好な成形品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、流動性と固化速度の異なる複数のポリアミド樹脂を組合せることにより、ガラス繊維へのマトリックス樹脂の含浸性の向上とガラス長繊維強化材料の高物性の保持という二律背反的特性の両立が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、以下の構成を採用するものである。
(1)(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂、(B)非晶性ポリアミド樹脂および/またはTc2が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂および(C)ガラス長繊維を含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂のメルトマスフローレイト(MFR:JIS K7210に準拠)が70〜140g/10分であることを特徴とする長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
(2)前記(1)項の(A)成分が20〜85重量%、(B)成分が1〜25重量%および(C)成分が20〜75重量%である請求項1記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物およびそのペレット。
(3)長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレット中のガラス長繊維が、ペレットの長さ方向に対して実質的に平行に配列し、かつ前記(A)および(B)成分のポリアミド樹脂による含浸度が50%以上であることを特徴とする前項(1)または(2)に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ガラスロービング繊維束と結晶性ポリアミド樹脂を主体とする長繊維強化ポリアミド樹脂組成物でありながら、溶融流動性の優れた脂肪族結晶性ポリアミド樹脂を用い、しかも非晶性ポリアミド樹脂および/または結晶化速度の遅い半芳香族結晶性ポリアミド樹脂を併用することによって固化速度をコントロールできるため、ガラスロービング繊維束に対するポリアミド樹脂の含浸性が優れ、ガラス繊維へのマトリックス樹脂の含浸性の向上とガラス長繊維強化材料としての高物性が保持できるという従来は達成が困難であった特性の両立が可能となった。
また、本発明の樹脂組成物のペレットは、ガラス繊維抜けやペレットの割れ等のなく、成形機のホッパードライヤー内の目詰まり等、成形上のトラブルが減少し、取り扱い性、成形性に優れた成形材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明の(A)成分は脂肪族結晶性ポリアミド樹脂である。具体的にはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612等、およびそれらのブレンド物を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。これらの脂肪族結晶性ポリアミド樹脂は、それぞれの成形温度付近でJIS K7210に準じて測定されたメルトマスフローレイト(以下、MFRと表記する)が70g/10分 以上である。好ましくは、MFRは100g/10分以上である。MFRが大きいほどガラスロービング繊維束に対する含浸性の点では好ましいが、MFRが大きくなりすぎると、固化速度が速くなり、また繊維強化ポリアミド樹脂組成物とした場合の機械的特性が劣るようになる傾向があるため、MFRの上限は、120g/10分程度が好ましい。
MFRがJIS K 7210に従って測定され、荷重2.16kgである。試験温度はそれぞれの融点から高温側に20℃まで加算された温度までの領域でJIS K 7210 附属書A表1より選択される。また融点が280℃を超えるものについては試験温度を310℃とする。
【0008】
MFRが70g/10分以上の(A)成分の脂肪族結晶性ポリアミド樹脂を得るには、通常よく良く用いられる相対粘度2.3以上の脂肪族結晶性ポリアミド樹脂を用いると、目標とするMFRに達しない場合が多い。そのため、特別に相対粘度が1.6〜2.2程度の超低粘度の脂肪族結晶性ポリアミド樹脂を重合するか、または通常の相対粘度を持つ脂肪族結晶性ポリアミド樹脂で減粘剤を用いてポリアミド分子鎖を切断して使用することも出来る。
減粘剤としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が有効であり、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。その添加量は結晶性ポリアミド樹脂100重量部に対し0.1〜3重量部前後配合して溶融混錬すると、本発明のMFRが70g/10分程度になるが、個々の脂肪族結晶性ポリアミド樹脂の種類によってMFIの値は異なるので、予め予備実験を行い、減粘剤の添加量を決めることが必要である。
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の中で、脂肪族結晶性ポリアミド樹脂の配合量は20〜85重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70重量%である。
【0009】
本発明における(B)成分は非晶性ポリアミド樹脂および/または示差走査熱量計(DSC)で測定した降温結晶化温度(以下、Tc2 と表記する)が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂である。
非晶性ポリアミド樹脂とは、例えばJIS K7121に準じて昇温速度20℃/分でDSC測定いた場合に、明確な融点を示さないものである。具体的には4、4’−ダイアミノ−3、3’ −ジメチル−ジシクロ−ヘキシレンメタン(CA)、4、4’ −ダイアミノジ
シクロ−ヘキシレンメタン(PACM)、メタキシリレンジアミン(MXD)、トリメチル−ヘキサメチレンジアミン(TMD)、イソフォロンジアミン(IA)、4、4’ −ダイアミン−ジシクロ−ヘキシレンプロパン(PACP)、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンとテルフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン2酸 等のジカルボン酸およびカプロラクタム、ラウリルラクタム 等のラクタム類から重縮合して得られる重合体または共重合体もしくはブレンド物等を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
これらの非晶性ポリアミド重合体の中で、特に好ましいものはヘキサメチレンテレフタレート/ヘキサメチレンイソフタレート共重合体(6T/6I)、4、4´−ダイアミノ−3、3´−ジメチル−ジシクロ−ヘキシレンメタン(CA)/イソフタル酸(I)/ラウリルラクタム(LL)共重合体(I/CA/LL)およびテレフタル酸(T)/トリメチル−ヘキサメチレンジアミン(TMD)重合体(T/TMD)等である。
非晶性ポリアミド樹脂の96%硫酸測定による相対粘度は1.6〜3.5の範囲が好ましく、より好ましくは1.7〜2.8の範囲である。なお1.6未満ではタフネス性が低下する傾向があり、3.5を越えると流動性が低下する傾向がある。
【0010】
本発明における(B)成分のもう一つポリアミド樹脂はTc2 が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂である。具体的な半芳香族結晶性ポリアミド樹脂としてはポリヘキサメチレンイソフタルアミド(6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)およびトリメチルヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体(TMD−T/6)等であるが、これらに限定されるものではない。
TC2 が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂の96%硫酸測定による相対粘度は1.6〜3.5の範囲が好ましく、より好ましくは1.7〜2.8の範囲である。 なお1.6未満ではタフネス性が低下する傾向があり、3.5を越えると流動性が低下する傾向がある。
【0011】
本発明における(B)成分では非晶性ポリアミド樹脂および/またはTC2 が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂をそれぞれ単独で使用しても良いし、併用で使用しても良い。長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の中で、(B)成分の配合量は1〜25重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。
【0012】
本発明における(C)成分として、ガラス繊維を用いる。ガラス繊維は、E−ガラス、S−ガラス、C−ガラス等、市販されているものは全て使用することが出来る。これらは通常、複数のフィラメントを集めた束をコイル状に巻き取ったガラスロービングの形態をしている。ガラス繊維の繊維径は5〜30μmものが適している。好ましくは7〜20μmである。
ガラス繊維はカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理されているものが好ましい。カップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤等いずれも使用することが出来るが、アミノシランカップリング剤およびエポキシシランカップリング剤が好ましい。
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の中で、(C)成分であるガラス繊維の配合量は20〜75重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70重量%である。
【0013】
本発明における長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットはガラス繊維が切断されたペレットの長さと同一の長さで、長さ方向に対して実質的に平行に配列した状態で存在する。ペレットの長さは4mm〜40mmである。好ましくは6mm〜20mmである。
ペレットの長さが4mm以下の場合、ガラス繊維の補強効率が悪く、ガラス繊維をチップドストランドで補強した短繊維強化物との差が少なくなり、好ましくない。一方、40mm以上になると、成形時にホッパー詰まり等が発生し易くなり、取扱い性が悪くなるばかりか、機械的特性の補強効率も飽和状態となるので好ましくない。ペレットの形状で長さ以外は特に制限されるものではなく、例えば ペレットの断面形状が円形、楕円形、四角形、扁平状等でも良いが、一般的には、ペレット断面形状は円形から楕円形に近い形状になる。
【0014】
長繊維強化熱可塑性樹脂製造において重要な事は数千本のガラス繊維フィラメントを束ねたガラス繊維の束、即ちロービングに熱可塑性樹脂を素早く含浸させる点である。この素早い含浸性によって、長繊維強化熱可塑性樹脂の物性、取扱い性および生産性等が決定される。含浸性は熱可塑性樹脂の特性とガラス繊維の束のロービングの状態および混錬機の含浸ヘッド形状等に関連する。
本発明における長繊維強化用のポリアミド樹脂は製造工程における樹脂の含浸性が優れ、かつ成形品の物性を高めるために、溶融流動性の優れた脂肪族結晶性ポリアミド樹脂と固化速度をコントロールできる非晶性ポリアミド樹脂および/または結晶化速度の遅い半芳香族結晶性ポリアミド樹脂を併用している。溶融流動性のみを考慮した場合、MFRが高い、即ち、低い分子量の脂肪族結晶性ポリアミド樹脂のみで含浸性は改良できるが、固化が速いため樹脂の含浸性が充分であるとは言えず好ましくはない。ガラス繊維ロービング束への樹脂の含浸性を充分にするためには、複数のポリアミド樹脂を組み合わせる本発明の組成が最適である。
【0015】
本発明における長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットの製造法は、公知の引抜き成形法(特開昭53−50279号公報他)を基本製造法としている。この引抜き法とは数千本のフィラメントからなる強化用連続繊維を引き抜きながら、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂を強化用繊維に含浸した後、強化繊維を引き抜く方向と直角方向に切断することによってペレットが得られる。
本発明において強化用ガラス繊維の束にポリアミド樹脂を含浸する方法は、いかなる方法を用いても良いが、二軸押出機等で加熱溶融したポリアミド樹脂をバー、ロール、ダイス等の上でガラス繊維の束を開繊させながら含浸させる方法が最も好ましい。
【0016】
こうして得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットはガラス繊維が切断されたペレットの長さと同一の長さで、長さ方向に対して実質的に平行に配列した状態で存在する。得られたペレットには、強化用ガラス繊維が長繊維強化ポリアミド樹脂組成物全体に対して20〜75重量%含有されている。
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の用途分野によって、必要とするガラス繊維の配合量は異なるのが一般的であり、このような場合は成形工程で一般的な結晶性ポリアミド樹脂をブレンドして成形することが出来る。ポリアミド樹脂同種のブレンドであるから、相容性が極めて良く、均一な成形品が得られる。
【0017】
従来の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットにおいては、ガラス繊維の含浸性が不完全で、ガラス繊維の束の間に樹脂が十分に行渡らず含浸度が低くなり、ガラス繊維が樹脂で濡れていないままペレット内に偏在している場合があり、このような場合は、取り扱い性が極めて悪くなり、また物性のバラツキも発生しやすくなる。また、含浸度が低いペレットは、輸送中等に衝撃や繰り返しの振動や摩擦によって、ペレットが割れたり、ペレット表面にガラス繊維束が浮き出してきて脱落する等により、成形機にペレットを輸送する配管にガラス繊維が詰まったり、成形機のホッパードライヤーのフィルターの目詰まりの原因になる。そのため、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットにおいて、ガラス長繊維束に対するポリアミド樹脂の含浸度は極めて重要なポイントである。
【0018】
ここで言う含浸度とはペレット断面を顕微鏡で観察し、1本のガラス繊維の円周が樹脂で半分以上濡れている本数をペレット内のガラス繊維全本数で割ることで求めたものである。含浸度は50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。50%未満では輸送中等における衝撃や繰り返しの振動および摩擦によって、ペレットが割れたり、ペレット表面にガラス繊維束が浮き出してきて脱落する等により、成形機にペレットを輸送する配管にガラス繊維が詰まったり、成形機のホッパードライヤーのフィルターの目詰まり等の問題を起こしやすくなる。
【0019】
本発明の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて他の配合剤、添加剤等を配合することが出来る。例えば 炭素繊維および各種の無機フィラー等の強化材、および通常のポリアミド樹脂に用いられる熱安定剤、紫外線安定剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、離型剤、滑材等の配合剤および添加剤であるが、これらに限定されるものではない。

【実施例】
【0020】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0021】
本発明の(A)成分である脂肪族結晶性ポリアミド樹脂として以下のポリアミド6(PA6)を使用した。MFRはJIS K 7210に従い、試験温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
・PA6(MFR 110)・・・T−840SF(相対粘度 1.9) 東洋紡績社製
・PA6(MFR 13)・・・T−820(相対粘度 3.1) 東洋紡績社製
【0022】
本発明の(B)成分である非晶性ポリアミド樹脂として以下のPA6T/6Iを使用した。また、TCが185℃以下の半芳香族ポリアミド樹脂として以下のMXD6を使用した。
・PA6T/6I ・・・T−714E 東洋紡績社製
・PA MXD6 ・・・T−600−03 東洋紡績社製(TC 175℃)
ガラス繊維は日本電気硝子社製 ER2400T−448N/S を使用した。
【0023】
樹脂成分については表1に示した混合割合で各原料を計量し、混合した後押出機に投入、溶融混錬し被覆ダイに送った。押出機、被覆ダイの温度は270〜300℃であり、ストランドの引取速度は10m/minである。
【0024】
実施例、比較例のペレットはISO 294−1に従い、試験片を射出成形し物性評価を行った。物性評価の方法は以下の通りである。
ASH ・・・ ISO 3451−4
引張特性・・・ ISO 527−1
曲げ特性・・・ ISO 178
シャルピー・・・ISO 179/le A(ノッチあり)
HDT・・・・ ISO 75−1
含浸度・・・ペレット断面を顕微鏡で観察し、1本のガラス繊維の円周が樹脂で半分以上濡れている本数をペレット内のガラス繊維全本数で割ることで求めた。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例1及び実施例2ではガラス繊維への樹脂の含浸度が高く、かつ物性が高いものが得られた。一方、MFRが低いPA6を使用した比較例1では含浸度が低くなってガラス繊維が抜け落ちやすくなり、同時に物性も低くなった。MFRが高いPA6を使用した比較例2では比較例1より含浸度は向上したが充分なものは得られなかった。
また、6T/6Iの添加量を実施例1より多くした実施例3では含浸度は更に向上した。一方、実施例3で使用したPA6をMFRが低いPA6に置き換えた比較例3では含浸度が低下し、かつ物性も実施例3より低くなった。
また、比較例4はガラス繊維としてチョップドストランドを使用したもので、二軸押出機のホッパーに樹脂原料であるPA6を投入し、ガラス繊維をサイドフィードして得たものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、ペレット内からのガラス繊維の抜け落ちが少なく、取り扱い性、成形性に優れるのみならず、長繊維強化材としての補強効率が高く、強度、弾性率および衝撃強度等の機械的強度、さらには、熱変形温度等の耐熱性も優れるため、成形材料の強度が要求される自動車外装材料、ブレーカーカバー材料、また薄い肉厚で高い強度が要求されるパソコン筐体など、金属代替を中心とした幅広い分野に展開することができ、産業界に寄与すること大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂、(B)非晶性ポリアミド樹脂および/またはTc2が185℃以下の半芳香族結晶性ポリアミド樹脂および(C)ガラス長繊維を含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)脂肪族結晶性ポリアミド樹脂のメルトマスフローレイト(MFR:JIS K7210に準拠)が70〜140g/10分であることを特徴とする長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の(A)成分が20〜85重量%、(B)成分が1〜25重量%および(C)成分が20〜75重量%である請求項1記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレット中のガラス長繊維が、ペレットの長さ方向に対して実質的に平行に配列し、かつ前記(A)および(B)成分のポリアミド樹脂による含浸度が50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。


【公開番号】特開2009−51885(P2009−51885A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217914(P2007−217914)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】