説明

門型走行クレーン

【課題】発電機器および発電機器の付帯設備の両方の点検が行え、脚部材が発電機器に接触するおそれを回避することができ、走行通路が作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害しない門型走行クレーンを提供する。
【解決手段】発電機器(M)に沿って走行可能な、車輪とガイド輪を備えた台車1と、発電機器(M)の両側の床面上に設置される、台車1の走行通路5と、台車1上に設置される脚部材8と、脚部材8間に発電機器(M)を跨いで設置される、クレーンレール15が設けられた主桁14と、クレーンレール15に沿って横行するホイスト16と、クレーンの作動を制御する制御盤とを備え、走行通路5は、前記車輪が走行する軌道板材と、前記軌道板材上に固定される、前記ガイド輪が走行するガイドプレートとからなり、脚部材8は、伸縮可能であり、クレーンレール15は、付帯設備の点検が行えるように、主桁14の両端から外方に向かって水平に張り出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、門型走行クレーン、特に、火力発電所のタービン建屋内の床面に設置されているタービン主機、発電機等からなる発電機器の定期点検、整備時等(以下、単に点検という)に使用される門型走行クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所のタービン建屋内の床面には、タービン主機、発電機等からなる発電機器およびその付帯設備が設置されており、発電機器の点検時には、タービン建屋内の支柱上に設置された大型天井クレーンを用いて、発電機器の分解、組立、レイダウン等の作業を行っている。なお、発電機器は、タービン建屋内に複数機、平行に並べて設置され、天井クレーンは、複数機の発電機器を跨ぐようにタービン建屋内に設置されている。
【0003】
しかしながら、発電機器のケーシング、ロータ等の大物重量構造物から、発電機器の軸受台カバー、ノズル等の小物軽量構造物までの分解、組立、レイダウン等の全ての作業を天井クレーンのみによって行う場合、以下のような問題があった。
【0004】
天井クレーンは、大型であるがゆえに、クレーンの吊り上げ、吊り下げ速度、クレーンレールに沿ったクレーンの移動速度を安全上、低速に制限しなければならない。従って、発電機器のケーシング、ロータ等の大物重量構造物の場合はともかく、発電機器の軸受台カバー、ノズル等の小物軽量構造物の場合まで低速運転で作業をせざるを得ない。この結果、発電機器の分解、組立、レイダウン等の作業に長時間を要し、点検時間が長くなる。
【0005】
上記問題を解決するための門型走行クレーンの一例が特許文献1(特開平7−101674号公報)に開示されている。以下、この門型走行クレーンを従来門型走行クレーンAといい、図面を参照しながら説明する。
【0006】
図10は、従来門型走行クレーンAを示す斜視図、図11は、従来門型走行クレーンAの組み立て方法を示す斜視図であり、(a)は、床面での組み立て状態を示す斜視図、(b)は、床面で組み立てた従来門型走行クレーンAを立ち上げる状態を示す斜視図である。
【0007】
図10および図11に示すように、従来門型走行クレーンAは、主桁21と、上端部が主桁21の両側に軸支された脚部材22a、22b、22c、22dと、脚部材22a、22b、22c、22dの下端部に軸支された連結部材23a、23b、23c、23dと、連結部材23a、23b、23c、23dに固定された台車24a、24b、24c、24dと、主桁21に設けられたクレーンレール25に沿って横行するホイスト26と、クレーンの作動を制御する制御盤27とを備えている。
【0008】
従来門型走行クレーンAは、床面に敷設された走行レール28に沿って、台車24a、24b、24c、24dを介して走行する。走行レール28は、発電機器(図示せず)の両側に発電機器に沿って設置されている。走行レール28の設置方向は、天井クレーン29の走行方向と直交している。
【0009】
従来門型走行クレーンAを組み立てるには、図11(a)に示すように、床面上で梁部材21の両端部に脚部材22a、22b、22c、22dの上端部を軸支するとともに、脚部材22a、22b、22c、22dの下端部を連結部材23a、23b、23c、23dに軸支し、連結部材23a、23b、23c、23dを台車24a、24b、24c、24dに固定する。
【0010】
次に、図11(b)に示すように、主桁21を天井クレーン29により吊り上げる。主桁21を吊り上げると、脚部材22a、22b、22c、22dは、主桁21と連結部材23a、23b、23c、23dとに軸支されているので、主桁21の上昇に伴って台車25a、25b、25c、25dは、連結部材23aと、23b、および、連結部材23cと23dがそれぞれ接近し、互いに当接するまで、図11(b)中、矢印で示すように、走行レール28に沿って走行する。
【0011】
このようにして、連結部材23aと23b、および、連結部材23cと23dがそれぞれ互いに当接したら、連結部材23aと23bとを連結するとともに、連結部材23cと23dとを連結する。これによって、図10に示すように、脚部材22a、22b、22c、22dは、立ち上がり、従来門型走行クレーンAの組み立てが完了する。
【0012】
従来門型走行クレーンAによりタービン建屋内の発電機器の点検を行うには、走行レール28を発電機器の両側に発電機器に沿って設置し、発電機器の分解、組立、レイダウン等の作業を行う。
【0013】
このようにして、一つの発電機器の点検が終了したら、従来門型走行クレーンAを天井クレーン29により吊り上げて別の発電機器に移動し、同様にして点検を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−101674号公報
【特許文献2】特開平9−315767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来門型走行クレーンAによれば、以下のような利点があった。
【0016】
容易にクレーンを組み立てることができ、しかも、小型であるがゆえに、大型天井クレーンに比べて高速運転が可能であるので、発電機器の分解、組立、レイダウン等の作業が短時間で行える。この結果、天井クレーンにより点検を行う場合に比べて点検時間を短縮することができる。点検時間の短縮の効果は、従来門型走行クレーンAと天井クレーンとの同時使用にさらに向上する。
【0017】
しかしながら、従来門型走行クレーンAは、以下のような問題があった。
(1)通常、発電機器には、主蒸気弁や高温再熱弁等の付帯設備が設置され、これらの付帯設備は、発電機器の両側の床面に設置されている。これに対して、ホイスト26が横行するクレーンレール25の長さは、主桁21の長さであり、主桁21は、脚部材22a、22b、22c、22dから外側に張り出していない。この結果、従来門型走行クレーンAにより発電機器の両側の床面に設置されている付帯設備を吊り上げることができず、付帯設備の点検を行うことはできなかった。従って、やむを得ず別のクレーンにより行わざるを得なかった。
(2)従来門型走行クレーンAを天井クレーン29により吊り上げて別の発電機器に移動させる際に、脚部材22a、22b、22c、22dが発電機器に当たってしまい、移動が困難になるおそれがあった。
(3)台車24a、24b、24c、24dが移動する走行レール28は、床面に敷設されるが、走行レール28が床面から大きく出っ張っていると、作業員の歩行や運搬台車の走行が阻害されるおそれがあった。
(4)台車24a、24b、24c、24dを連結するには、各台車の芯合わせを行う必要があり、クレーンの組み立てに時間がかかる。
【0018】
従って、この発明の目的は、一台の門型走行クレーンにより発電機器および発電機器の付帯設備の両方の点検が行え、門型走行クレーンを天井クレーンにより吊り上げて別の発電機器に移動させる際に、門型走行クレーンの脚部材が発電機器に接触するおそれを回避することができ、門型走行クレーンを発電機器に沿って確実に直進させることができ、門型走行クレーンの走行通路の設置が容易に行え、しかも、走行通路が作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害しない門型走行クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明等は、上記問題点を解決すべく、鋭意、検討を加えた結果、以下のような知見を得た。
(a)ホイストが横行するクレーンレールの長さを延長すれば、発電機器の両側に設置されている付帯設備の点検を、別のクレーンを設置することなく行うことができる。
(b)門型走行クレーンの脚部材を伸縮可能にすれば、門型走行クレーンを天井クレーンにより吊り上げて別の発電機器に移動させる際に、脚部材が発電機器に当たるおそれを回避することができる。
(c)門型走行クレーンが走行する走行通路を、軌道板材とこの上に固定される高さが低いガイドプレートにより構成すれば、門型走行クレーンを発電機器に沿って確実に直進させることができるとともに、ガイドプレートの走行通路からの出っ張り高さは低いので、走行通路が作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害するおそれがない。
(d)走行通路を複数個の走行通路ピースを互いに連結したもので構成すれば、走行通路の設置と移動および延長が容易に行える。
【0020】
この発明は、上記(a)から(d)の知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0021】
請求項1に記載の発明は、火力発電所のタービン建屋内に設置される門型走行クレーンであって、前記タービン建屋内に設置されている、タービン主機、発電機等からなる発電機器に沿って走行可能な、車輪とガイド輪を備えた台車と、前記発電機器の両側の床面上に設置される、前記台車が走行する走行通路と、前記台車上に設置される脚部材と、前記脚部材間に前記発電機器を跨いで設置される、クレーンレールが設けられた主桁と、前記クレーンレールに沿って横行するホイストと、クレーンの作動を制御する制御盤とを備え、前記走行通路は、前記車輪が走行する軌道板材と、前記軌道板材上に固定される、前記ガイド輪が走行するガイドプレートとからなり、前記脚部材は、伸縮可能であり、前記クレーンレールは、前記発電機器の両側の床面に設置されている、前記発電機器の付帯設備の点検が行えるように、前記主桁の両端から外方に向かって水平に張り出していることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の門型走行クレーンにおいて、前記走行通路は、複数個の走行通路ピースを互いに連結したものからからなっていることに特徴を有するものである。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の門型走行クレーンにおいて、前記脚部材は、前記台車に2本、垂直に設置され、2本の前記脚部材の上部は、互いに内側に傾斜していることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、クレーンレールを主桁の両端から外方に向かって水平に張り出すことによって、一台の門型走行クレーンにより、発電機器および発電機器の付帯設備の両方の点検が行え、しかも、脚部材を伸縮可能とすることによって、門型走行クレーンを天井クレーンにより吊り上げて別の発電機器に移動させる際に、門型走行クレーンの脚部材が発電機器に接触するおそれを回避することができ、さらに、門型走行クレーンが走行する走行通路を、床面上に載置される軌道板材とこの上に固定されるガイドプレートとで構成することによって、門型走行クレーンを発電機器に沿って確実に直進させることができるとともに、門型走行クレーンの走行通路の設置が容易に行え、しかも、走行通路が作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害するおそれがない門型走行クレーンを提供することができる。
【0025】
また、走行通路を複数個の走行通路ピースを互いに連結したもので構成することによって、走行通路の設置と移動および延長が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の門型走行クレーンを示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】発電機器の両側に床面に設置された、この発明の門型走行クレーンの走行通路を示す平面図である。
【図4】図1のB−B矢視図である。
【図5】図4のC−C矢視図である。
【図6】この発明の門型走行クレーンの脚部材を示す部分省略側面図である。
【図7】図6のD−D矢視図である。
【図8】中間筒に取り付けられた他のクランプ手段を示す断面図である。
【図9】図8のA−A矢視図である。
【図10】従来門型走行クレーンAを示す斜視図である。
【図11】従来門型走行クレーンAの組み立て方法を示す斜視図であり、(a)は、床面での組み立て状態を示す斜視図、(b)は、床面で組み立てた従来門型走行クレーンAを立ち上げる状態を示す斜視図である。
【図12】従来門型走行クレーンBを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の門型走行クレーンの一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、この発明の門型走行クレーンを示す正面図、図2は、図1のA−A矢視図である。
【0029】
図1および図2において、1は、一対の台車であり、タービン主機、発電機等からなる発電機器(M)の両側の床面上に設置された後述する走行通路に沿って走行する。台車1は、図5に示すように、車輪2とガイド輪3を備え、車輪2は、図4に示すように、台車1の下部の四隅に設けられ、駆動手段4(図2、図5参照)により、後述する走行通路の軌道板材上を走行する。車輪2の外周部は、ウレタンゴムにより覆われ、騒音を低減している。ガイド輪3は、車輪2間に設けられ、両側にフランジ3aが形成されている。フランジ3a間に後述する走行通路のガイドプレートが入り込むことによって、台車1がガイドされ、かくして、門型走行クレーンは、発電機器(M)に沿って確実に直進する。
【0030】
5は、台車1が走行する走行通路である。走行通路5は、図5に示すように、発電機器(M)の両側の床面上に設置され、車輪2が走行する軌道板材6と、軌道板材6の幅方向中央部上に固定される、ガイド輪3が走行するガイドプレート7とからなっている。なお、ガイド輪3は、軌道板材6と非接触である。軌道板材6は、車輪2が走行可能な幅寸法を有する厚さ2mm〜3mmの鉄板からなり、発電機器(M)の両側の床面上に載置される。ガイドプレート7は、厚さ6mm程度の鉄板からなっている。このように、軌道板材6およびガイドプレート7の床面からの突出高さが低いので、バリヤフリー効果により作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害するおそれがない。走行通路5は、複数個の走行通路ピースに分割され、走行通路ピース同士は、互いに連結可能になっている。このように、走行通路5を複数個の走行通路ピースに分割することによって、走行通路5の設置と移動が容易に行える。
【0031】
8は、台車1の両端部上に設置された断面角型の脚部材である。脚部材8の上端部は、後述する主桁により連結されている。図6に示すように、脚部材8は、外筒8a、外筒8a内に挿入された中間筒8b、中間筒8b内に挿入された内筒8cとからなるさや構造からなり伸縮可能になっている。脚部材8を伸縮可能にすることによって、脚部材8を伸ばせば、必要な作業揚程が容易に確保でき、脚部材8を縮ませれば、門型走行クレーンを天井クレーン18(図1参照)により吊り上げて別の発電機器に移動させる際に、脚部材8が発電機器(M)に接触するおそれを確実に回避することができる。すなわち、脚部材8を短く分解する必要性がなくなる。なお、脚部材8は、3段に限定されることはない。また、脚部材8を伸縮可能にすることによって、後述するホイスト16等の点検が脚部材8を縮ませることによって、高所作業によらず行える。
【0032】
脚部材8の伸縮は、天井クレーンを用いて行うので、脚部材8に油圧シリンダー等の駆動源を設置する必要がない。これによって、駆動源の故障および油漏れによる脚部材8の縮みによる事故を防止することができる。
【0033】
従来門型走行クレーンAでは、主桁21と脚部材22a、22b、22c、22dを地上で組み立てるために、脚部材を水平に組み立てる必要があった。このために、各脚部材は、真っすぐな部材である必要があった。
【0034】
しかし、この発明の門型走行クレーンでは、脚部材8が伸縮可能であるために、高所作業によらず、後述する主桁14と脚部材8の組み立てが行えるので、脚部材8の形状を自由な形状に設計にすることができる。この例では、脚部材8の内筒8cの上部が互いに内側に傾斜している形状になっている(図2参照)。
【0035】
このように、脚部材8の上部を互いに内側に傾斜させることによって、クレーン走行方向の脚部材8の間隔調整幅が広くなる。例えば、脚部材8の間隔を広くするほど脚部材8の安定度が増すが、脚部材8を互いに内側に傾斜させなければ、主桁14の設置に支障を来す。しかし、脚部材8を互いに内側に傾斜させることによって、この問題は、解消される。すなわち、脚部材8を互いに内側に傾斜させることによって、脚部材8の安定度を確保することができる最小の脚間で設計することができる。この結果、台車1の長さを最小にすることができるので、最大限の作業範囲を確保することができる。しかも、台車1の長さを最小にすることによって、従来門型走行クレーンAのように台車を分割せずに一体化できるので、台車同士の芯合わせを作業が不要となる。この結果、クレーンの組立作業を短縮できる。
【0036】
なお、特許文献2には、図12に示すように、ヒンジ30により連結した上部脚31と下部脚32とで構成される脚部材33を有する従来門型走行クレーンBが開示されている。脚部材33は、クレーン走行方向と直交する面内において、油圧シリンダ等により互いに内側に折れ曲がり可能に構成されている。この従来門型走行クレーンBによれば、脚部材33が折れ曲がり可能に構成されているので、脚部材33の組み立てが容易に行えるものの、脚部材33の高さ調整が行えない。しかも、脚部材33の組み立ては、油圧シリンダを介して行われるが、脚部材33を直立させる際に、上部脚31と下部脚32との当接部に異物等が挟まると、脚部材33の組み立てが確実に行えないといったトラブルが発生するおそれがあった。
【0037】
しかし、この発明の門型走行クレーンのように、脚部材8を伸縮可能に構成すれば、このようなトラブルは発生しない。
【0038】
図7に示すように、中間筒8bの上端部には、スライド部材9が取り付けられ、中間筒8bに対して内筒8cがガタツキなく円滑に伸縮できるようになっている。外筒8aと中間筒8bとにおいても同様である。図7に示すように、内筒8cは、クランプ手段10により中間筒8bに仮止め可能になっている。クランプ手段10は、クランプレバー11と中間筒8bに螺合するクランプバー12とからなり、クランプレバー11を回すことによって、クランプバー12の先端が内筒8cを押圧し、かくして、内筒8cが中間筒8bに仮止めされる。中間筒8bに仮止めされた内筒8cは、中間筒8bと内筒8cとに形成されたピン孔13にピン(図示せず)を挿入することにより本止めされる。これらの仮止めと本止めの構造は、外筒8aと中間筒8bとにおいても同様である。
【0039】
中間筒8bと内筒8cとを仮止めする他のクランプ手段を説明する。図8は、中間筒8bに取り付けられた他のクランプ手段を示す断面図、図9は、図8のA−A矢視図である。
【0040】
他のクランプ手段19は、クランプレバー11を回すことによって楔20と中間筒8bに螺合するクランプバー12とが一体的に進退可能になっているものであり、中間筒8bの対角線上のコーナー部に取り付けられている。楔20は、中間筒8bに形成されたスリット(S)を通って内筒8cと中間筒8bとの間の隙間に挿入される。楔20が隙間に強制的に挿入されると同時に、クランプバー12の先端が内筒8cを押圧し、かくして、内筒8cと中間筒8bとが強固に仮止めされる。外筒8aと中間筒8bも他のクランプ手段19によって仮止めされる。
【0041】
14は、脚部材8の上端部間に発電機器(M)を跨いで設置される主桁である。主桁14の設置方向は、天井クレーン18の走行方向と直交する。主桁14には、クレーンレール15が設けられている。図1に示すように、クレーンレール15は、主桁14の両端から外方に向かって水平に張り出している。図1中、クレーンレール15の張り出し部分を(L)で示す。クレーンレール15が張り出していることによって、発電機器(M)の両側の床面に設置されている、発電機器(M)の付帯設備の点検が行える。付帯設備には、例えば、図1に示すように、一般的なタービンレイアウトでは、タービンの左右にMSV(主蒸気弁)やRSV(高温再熱弁)等が配置されており、これらの付帯設備は、脚部材8間のクレーンレール15を横行する、後述するホイストでは吊り上げることができない。しかし、クレーンレール15を主桁14の両端から脚部材8の外側に張り出すことによって、これら付帯設備を吊り上げることができ、かくして、付帯設備の点検が可能となる。
【0042】
16は、クレーンレール15に沿って横行するホイストである。ホイスト16は、脚部材8間は勿論、脚部材8の外側に張り出したクレーンレール15に沿って横行して、付帯設備の点検を可能にする。
【0043】
17は、図2に示すように、台車1の走行やホイスト16等の操作を行う制御盤である。
【0044】
上述した、この発明の門型走行クレーンによれば、以下のようにして、タービン建屋内の発電機器(M)および発電機器(M)の付帯設備の点検が行われる。
【0045】
先ず、発電機器(M)の両側の床面上に走行通路5を設置する。走行通路5の設置にあたっては、走行通路ピースを床面上に載置し、走行通路ピース同士を互い発電機器(M)に沿って直列に連結する。このように、走行通路5の設置に際しては、走行通路ピースを床面に載置し、走行通路ピース同士を連結するのみで良いので、走行通路5の設置が容易に行え、延長も容易に行える。走行通路5の設置が容易に行えることによって、タービン建屋内に複数の走行通路5を設け、工事工程に合わせて、クレーンを配置することができる。また、クレーンの移設が天井クレーンにより容易に行えることを合わせると、設置が容易な走行通路5の効果は大きい。
【0046】
このようにして、走行通路5の設置が完了したら、走行通路5上でクレーンを組み立てる。この際、脚部材8の高さ調整は、クランプ手段10によって脚部材8を仮止めした後、互いに合致した所定高さ位置のピン孔13にピン(図示せず)を挿通することにより行う。
【0047】
このようにして、クレーンの組み立てが完了したら、脚部材8間のクレーンレール15に沿ってホイスト16を横行させることによって、発電機器(M)の点検が行え、脚部材8の外側に張り出したクレーンレール15に沿ってホイスト16を横行させることによって、付発電機器(M)の帯設備の点検が行える。
【0048】
次の発電機器(M)の点検を行うために、門型走行クレーンを移動させるには、図1に示すように、天井クレーン18により門型走行クレーンを吊り上げ、この状態で、走行通路5を撤去し、撤去した走行通路5を次の発電機器(M)の床面に移設する。この際、走行通路5の移設は、走行通路5が複数個の走行通路ピースに分割されているので、容易に行える。この後、移設された走行通路5上に門型走行クレーンを吊り下ろす。
【0049】
門型走行クレーンの移動の際、脚部材8を縮めておけば、脚部材8が発電機器(M)に接触するおそれがないので、安全に門型走行クレーンを次の発電機器(M)に移動させることができる。
【0050】
以上、説明したように、この発明によれば、以下のような効果がもたらされる。
(A)クレーンレール15を主桁14の両端から外方に向かって水平に張り出すことによって、一台の門型走行クレーンにより、発電機器(M)および発電機器(M)の付帯設備の両方の点検が行える。
(B)脚部材8を伸縮可能とすることによって、門型走行クレーンを天井クレーン18により吊り上げて別の発電機器(M)に移動させる際に、脚部材8が発電機器(M)に接触するおそれを確実に回避することができる。
(C)作業性を考慮して高い揚程の門型クレーンでは、脚部材8が長くなるので、既存の天井クレーンでの移設が困難な場合があるが、脚部材8を伸縮可能とすることによって、作業に必要な揚程を確保しつつ、既存の天井クレーンでの移設が行える。また、脚部材8を伸縮可能とすることによって、タービン建屋内で一番高い発電機器(M)と干渉せずに組み立て解体および移設が行える。
(D)門型走行クレーンが走行する走行通路5を、床面上に載置される、台車1のガイド輪3が嵌り込みながら走行する軌道板材6とこの上に固定されるガイドプレート7とで構成し、軌道板材6とガイドプレート7を薄板で形成することによって、門型走行クレーンを発電機器(M)に沿って確実に直進させることができ、しかも、門型走行クレーンの走行通路5の設置が容易に行えるとともに、走行通路5が作業員の歩行や運搬台車の走行を阻害するおそれがない。
【符号の説明】
【0051】
1:台車
2:車輪
3:ガイド輪
3a:フランジ
4:駆動手段
5:走行通路
6:軌道板材
7:ガイドプレート
8:脚部材
8a:外筒
8b:中間筒
8c:内筒
9:スライド部材
10:クランプ手段
11:クランプレバー
12:クランプバー
13:ピン孔
14:主桁
15:クレーンレール
16:ホイスト
17:制御盤
18:天井クレーン
19:他のクランプ手段
20:楔
21:主桁
22a〜22d:脚部材
23a〜23d:連結部材
24a〜24d:台車
25:クレーンレール
26:ホイスト
27:制御盤
28:走行レール
29:天井クレーン
30:ヒンジ
31:上部脚
32:下部脚
33:脚部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所のタービン建屋内に設置される門型走行クレーンであって、
前記タービン建屋内に設置されている、タービン主機、発電機等からなる発電機器に沿って走行可能な、車輪とガイド輪を備えた台車と、前記発電機器の両側の床面上に設置される、前記台車が走行する走行通路と、前記台車上に設置される脚部材と、前記脚部材間に前記発電機器を跨いで設置される、クレーンレールが設けられた主桁と、前記クレーンレールに沿って横行するホイストと、クレーンの作動を制御する制御盤とを備え、前記走行通路は、前記車輪が走行する軌道板材と、前記軌道板材上に固定される、前記ガイド輪が走行するガイドプレートとからなり、前記脚部材は、伸縮可能であり、前記クレーンレールは、前記発電機器の両側の床面に設置されている、前記発電機器の付帯設備の点検が行えるように、前記主桁の両端から外方に向かって水平に張り出していることを特徴とする門型走行クレーン。
【請求項2】
前記走行通路は、複数個の走行通路ピースを互いに連結したものからからなっていることを特徴とする、請求項1記載の門型走行クレーン。
【請求項3】
前記脚部材は、前記台車に2本、垂直に設置され、2本の前記脚部材の上部は、互いに内側に傾斜していることを特徴とする、請求項1または2に記載の門型走行クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−35666(P2013−35666A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173775(P2011−173775)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】