説明

閉じ補助装置、画像読取装置及び画像形成装置

【課題】 背の低いユーザや車いすのユーザでも、自動原稿供給装置を容易に閉じることができるようにする。
【解決手段】 閉じ補助装置は、画像読取装置102の上部に一端を連結機構19によって枢着された開閉可能な自動原稿供給装置101が、連結機構19によって所定の角度に開かれて保持されているとき、自動原稿供給装置を閉じるのを補助するようになっており、画像読取装置102と自動原稿供給装置101との間にひも20を一端は固定し他端は固定又は拘束するように備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に開閉可能に備えた開閉体をユーザが閉じるとき、補助的に使用される閉じ補助装置と、この閉じ補助装置を備えた画像読取装置及び画像形成装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿を読み取る画像読取装置は、ユーザによって原稿が載置される原稿台ガラスを開閉する開閉蓋を、あるいは原稿を原稿台ガラス上に自動的に送り込む自動原稿供給装置を開閉自在に有している。原稿台ガラスの下には、原稿に光を照射して、原稿を読み取る画像読取部が設けられている。
【0003】
この場合、開閉蓋や自動原稿供給装置は、ユーザによって手前側を持ち上げられて、原稿台ガラスを開いたとき、ユーザが原稿台ガラスに原稿を置くことができるように、所定の開き角度に保持されるようになっている。
【0004】
ところが、画像読取装置は、一般に、画像読取装置が原稿を読み取った読取情報に基づいてシートに画像を形成する画像形成装置の上部に設けられていることが多い。このため、画像読取装置の位置が高くなって、ましてや、その画像読取装置の上にある開閉蓋や自動原稿供給装置の位置がさらに高くなり、開閉蓋や自動原稿供給装置を開いたとき、背の低いユーザや、車椅子に乗ったユーザは、開いた開閉蓋や自動原稿供給装置に手が届きにくいという問題があった。特に、車椅子に乗ったユーザは、車椅子が邪魔になって、画像読取装置の傍に寄るのが困難であり、開いた開閉蓋や自動原稿供給装置に手が届きにくい問題があった。
【0005】
この問題を解決したのが、特許文献1に記載の閉じ補助装置である。この閉じ補助装置は、開閉体としての開閉蓋や自動原稿供給装置をユーザが開いたとき、垂下する閉じ補助部材を、開閉蓋や自動原稿供給装置の側部で、かつ前後方向の中間位置に設けて構成されている。そして、閉じ補助装置は、ユーザが閉じ補助部材を手前側に引くと開閉蓋や自動原稿供給装置を閉じることができるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−66544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年ますます市場では、高速、かつ多数枚の画像形成が可能な画像形成装置が要求され、その性能に対応すべく大容量の記録媒体を収容可能な給紙オプションが装着されるようになってきた。このような給紙オプションを装着する場合、画像形成装置全体の設置スペースを増やさぬ工夫として給紙オプションを画像形成装置本体の下部に配設する構成が考えられている。従来の閉じ補助装置は、閉じ補助部材が、開閉蓋や自動原稿供給装置の側部に設けられているので、開閉蓋や自動原稿供給装置を開くと閉じ補助部材も一緒に上方に移動するため、近年開発された大容量の給紙オプション等を下部に配設した画像形成装置等に対しては、背の低いユーザや車椅子に乗ったユーザの手が開いた状態の開閉蓋や自動原稿供給装置の閉じ補助部材に届きにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、背の低いユーザや車椅子に乗ったユーザのように、高い位置で開いた開閉体に手の届かないユーザであっても開閉体を閉じることができる閉じ補助装置を提供することを目的としている。
【0009】
本発明は、上記閉じ補助装置を備えて、ユーザが読み取り操作を行いやすくした画像読取装置を提供することを目的としている。
【0010】
本発明は、上記閉じ補助装置を備えて、画像形成能率を向上させた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の閉じ補助装置は、装置本体の上部に一端を枢着手段によって枢着された開閉可能な開閉体が、前記枢着手段によって所定の角度に開かれて保持されているとき、前記開閉体を前記装置本体に対して閉じるのを補助する閉じ補助装置であって、前記装置本体と前記開閉体との間に索状部材を、少なくとも一端を前記装置本体と前記開閉体のいずれかに固定して備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の閉じ補助装置は、装置本体と開閉体との間に索状部材を設けてあるので、開いたたままの開閉体に手の届かないような、例えば、背の低いユーザや車椅子に乗ったユーザであっても自分に近い位置で索状部材に手を掛けて、開閉体を容易に閉じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の閉じ補助装置と、この閉じ補助装置を備えた画像読取装置、及び画像形成装置を図に基づいて説明する。なお、本実施形態に記載の数値は、参考であって、本発明を限定する数値ではない。
【0014】
図2は、画像読取装置と画像形成装置などからなる画像形成ユニットの右側面図である。
【0015】
画像形成ユニット110において、移動自在な収容ラック104の棚104aには、原稿を読み取る画像読取装置102が積載されている。画像読取装置102は、読み取った原稿の読取情報を後述する画像形成装置102に送信するか、あるいは、他の画像形成装置に送信するようになっている。
【0016】
画像読取装置102の上には、画像読取装置102に原稿を自動的に供給する自動原稿供給装置101が設けてある。この自動原稿供給装置101は、矢印A方向に回転させると、図1に示すように、画像読取装置102の上面に原稿が置けるようになっている。
【0017】
収容ラック104の下部台104bには、画像形成装置103が積載されている。画像形成装置103は、画像読取装置102からの原稿の読取情報に基づいてシートに画像を形成するようになっている。また、画像形成装置103は、他の画像読取装置から送信されてくる読取情報に基づいてシートに画像を形成するようになっている。
【0018】
図3は、自動原稿供給装置101と画像読取装置102との正面断面図である。なお、画像形成装置の内部構造は、公知の内部構造であるので図示を省略する。
【0019】
開閉体としての自動原稿供給装置101は、装置本体としての画像読取装置102の上部にユーザによって開閉自在に設けられている。自動原稿供給装置101は、閉じられた状態で、原稿トレイ7に積載された原稿を、分離給送ローラ8で1枚ずつに分離して、搬送ベルト9で、順次、画像読取装置102の原稿台ガラス6上に供給した後、その原稿を、反転排紙部10で反転してから排出部11に排出する。
【0020】
画像読取装置102は、自動原稿供給装置101によって原稿台ガラス6上を通過搬送される原稿に、スキャナユニット13のランプ12の光を照射する。原稿からの反射光は、ミラー14,15,16、及びレンズ17を通してCCDイメージセンサ部18に入力される。CCDイメージセンサ部18に入力された原稿の反射光は、CCDイメージセンサ部18で光電変換等の電気処理が行われて、通常のデジタル処理が施される。
【0021】
画像形成装置103は、CCDイメージセンサ部18からの画像情報に基づいて、不図示の画像形成手段としての感光ドラムにトナー像を形成し、そのトナー像をシートに転写して、定着させる。
【0022】
ところで、図2において、画像読取装置102と画像形成装置103との間には、画像形成装置103から排出されるシートが積載される排紙部105が形成されている。空間SPは、シートが積載されるようになっている。この空間SPは、ユーザが手を差し込んでシートを取り出し易い広さが必要である。このため、画像読取装置102と自動原稿供給装置101は、高い位置に設置されている。しかも、自動原稿供給装置101は、画像読取装置102の上に設けられているため、画像形成ユニット110において、一番高い位置に設置されている。
【0023】
なお、画像形成装置103は、シートを画像形成装置の脇に排出するようになっていてもよい。この場合、空間SPは不要である。空間SPが不要な場合であっても、自動原稿供給装置101が、画像形成ユニット110において、一番高い位置に設置されている点においてかわりがない。また、本実施形態においては画像読取装置102と画像形成装置103が分離して各々収容ラック104の所定の収容スペースに設置される構成について説明するが、画像形成装置の上部に一体的に画像読取装置を配設した画像形成ユニットにおいても本発明が有効であることは言うまでもない。
【0024】
また、自動原稿供給装置101は、画像読取装置102に対して蝶番式の1対の枢着手段としての連結機構19によって、所定の角度(例えば、約15度)以上に開いたとき、開状態が保持されるようになっている。すなわち、自動原稿供給装置101は、原稿を原稿台ガラス6に載置するとき、載置しやすくするため、所定の角度以上に開くと、連結機構19によって、その所定の角度に開いたままの状態に保持されるようになっている。なお、連結機構19は、自動原稿供給装置101の開き角度が所定の角度以下のときには、自動原稿供給装置101を閉じる方向に力を加えるようになっている。なお、連結機構19の構成は公知であるので、構成の説明は省略する。
【0025】
このように、自動原稿供給装置101は、画像形成ユニット110において、ユーザが一番高い位置に設置されて、所定の角度に開かれるようになっていので、背の低いユーザや車椅子に乗ったユーザは、自動原稿供給装置101に手が届きにくく、自動原稿供給装置101を閉じにくいことがある。
【0026】
そこで、本実施形態の自動原稿供給装置101と画像読取装置102は、それぞれの開閉端側の端部近傍を、可撓性を備えた(フレキシブルな)索状部材としての、太さ約1mmの樹脂製、あるいは繊維製のひも20で繋がれている。すなわち、ひも20の上端20aは、自動原稿供給装置101の右手前に、下端20bは画像読取装置102の右手前(自動原稿供給装置101の取り付け位置と略対向位置)にそれぞれ固定されている。なお、ひも20の代わりに、ワイヤ、鎖等を使用してもよい。なお、鎖は、樹脂製、あるいは金属性のいずれであってもよい。したがって、索状部材はひもに限定されるものではない。
【0027】
ユーザが画像形成ユニット110を使用して自動原稿供給装置101を開いたまま立ち去った後、次に画像形成ユニット110を使用するユーザが、例えば車椅子に乗っているユーザの場合、開いたままの自動原稿供給装置101に手が届かないようなことがあっても、図1に示すように、ひも20に手を掛けて手前側に引くことで、自動原稿供給装置101を閉じることができる。ひも20は、閉じ補助装置を構成している。
【0028】
なお、図1に示すように、ひも20の手を掛ける場所にパイプ状の把手21を設けておくと、ひも20を引き易くなって自動原稿供給装置101を確実に閉じることができる。しかも、把手21は、ひも20に固定しないで、ユーザに応じて、位置調節可能に設けておくと、ユーザが自動原稿供給装置101を容易かつ安全に閉じることができる。この場合、ひも20と把手21は、閉じ補助装置121を構成している。
【0029】
また、以上の構成であれば握力のない非力なユーザでも、腕をひも20や把手21にひっかけて手前側に引くことで自動原稿供給装置101を容易に閉じることができる。
【0030】
なお、把手21は、図4に示すように、ひも20を画像読取装置102に設けた案内部材24に貫通させて、その下端20bに設けてもよい。案内部材24は、ひも20を案内するだけでなく、自動原稿供給装置101を開き過ぎたとき、抜け止め部材としての把手21を受け止めて、自動原稿供給装置101が不必要な角度まで開かないようにする役目もしている。この場合、ひも20、把手21、案内部材24は、閉じ補助装置122を構成している。
【0031】
このように、把手21をひも20の下端20bに設けると、把手21の位置が低くなり、例えば車椅子に乗ったユーザでも把手23を下方向あるいは手前方向へ容易に引くことができて、自動原稿供給装置101を楽に閉じることができる。特に、腕が高い位置まで上がらないユーザでも、自動原稿供給装置101より低い位置にある把手21を容易に握ってひも20を引くことができるので、自動原稿供給装置101を確実に閉じることができる。
【0032】
さらに、ひも20の下端20bは、図5に示すように、画像読取装置102の右脇あるいは右手前側に設けた巻き取りリール26によって巻き取られるようになっていてもよい。
【0033】
この場合においても、ユーザが巻き取りリール26に設けたハンドル27を回すことによって、自動原稿供給装置101を容易に閉じることができる。特に、腕が高い位置まで上がらないユーザでも、自動原稿供給装置101より低い位置にあるハンドル27を容易に回すことができるので、自動原稿供給装置101を確実に閉じることができる。
【0034】
さらに、ハンドル27の長さを長くすると、非力なユーザでも巻き取りリール26を楽に回転させて、自動原稿供給装置101を容易に閉じることができる。
【0035】
なお、巻き取りリール26の代わりにモータを使用してもよい。また、滑車状のリールを自動原稿供給装置101に取り付けて、ひも20の一端を画像読取装置102側に固定し、自動原稿供給装置101側の滑車状リールに掛け回した残りの他端を引っ張ることにより、閉じ操作力を軽減することができる。
【0036】
図5において、ひも20、巻き取りリール26、ハンドル27は、閉じ補助装置123を構成している。
【0037】
以上の実施形態における自動原稿供給装置101は、代わりに画像読取装置102の原稿台ガラス6を覆う開閉体としての開閉蓋であっても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態の閉じ補助装置によって、自動原稿供給装置を閉じるときの動作説明用の図である。
【図2】画像読取装置と画像形成装置などからなる画像形成ユニットの右側面図である。
【図3】自動原稿供給装置と画像読取装置との正面断面図である。
【図4】ひもの下端に把手を設けた場合の閉じ補助装置の右側面図である。
【図5】ひもの下端に巻き取りリールを設けた場合の閉じ補助装置の右側面図である。
【符号の説明】
【0039】
6 原稿台ガラス
19 連結機構
20 ひも(索状部材)
20b ひもの下端
21 把手(抜け止め部材)
24 案内部材
26 巻き取りリール(巻き取り手段)
27 ハンドル(巻き取り手段)
101 自動原稿供給装置(開閉体)
102 画像読取装置(装置本体)
103 画像形成装置
104 収容ラック
105 排紙部
110 画像形成ユニット
121 閉じ補助装置
122 閉じ補助装置
123 閉じ補助装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の上部に一端を枢着手段によって枢着された開閉可能な開閉体が、前記枢着手段によって所定の角度に開かれて保持されているとき、前記開閉体を前記装置本体に対して閉じるのを補助する閉じ補助装置であって、
前記装置本体と前記開閉体との間に索状部材を、少なくとも一端を前記装置本体と前記開閉体のいずれかに固定して備えたことを特徴とする閉じ補助装置。
【請求項2】
前記索状部材に把手が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の閉じ補助装置。
【請求項3】
前記索状部材の前記装置本体側の端部が、前記装置本体に設けられて前記索状部材を案内する案内部材を貫通して備えられ、前記装置本体側の端部に設けられた抜け止め部材によって、前記案内部材から抜け止めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の閉じ補助装置。
【請求項4】
前記索状部材の前記装置本体側の端部が、前記装置本体に設けられた前記索状部材を巻き取る巻き取り手段に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の閉じ補助装置。
【請求項5】
原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段上部に一端を枢着手段によって枢着され、前記画像読取手段に原稿を供給する自動原稿供給装置と、
前記自動原稿供給装置を閉じるのを補助する閉じ補助装置と、を備え、
前記閉じ補助装置が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の閉じ補助装置であることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
原稿の画像を読み取る画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像をシートに形成する画像形成手段と、を備え、
前記画像読取装置が請求項5に記載の画像読取装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段上部に一端を枢着手段によって枢着され、前記画像読取手段に原稿を供給する自動原稿供給手段と、
前記画像読取手段によって読み取られた画像をシートに形成する画像形成手段と、
前記自動原稿供給手段を閉じるのを補助する閉じ補助装置と、を備え、
前記閉じ補助装置が請求項1乃至4のいずれか1項に記載の閉じ補助装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−304012(P2006−304012A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124218(P2005−124218)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】