説明

閉空間提示計測装置

【課題】環境や使用者へ大きな負荷を与えず、実世界において、閉空間を形成する幾何学図形を自由かつ簡便に描画するとともに、その閉空間内に存在する人や物等について、その位置、運動状態等を計測可能な、簡単で、応用及び利便性に富む手段を実現する
【解決手段】閉空間提示計測装置1は、複数のモジュール2からなるモジュール群3を備えており、複数のモジュール2は、それぞれ、赤外線受光部4及び赤外線発光部5を有する赤外線通信手段と、レーザ発光器6と、制御装置とを備えており、複数のモジュール2がそれぞれ隣接する他の一つのモジュール2に向けて順次レーザ光を投光し、レーザ光で表示され囲まれて閉じた平面領域を有する閉空間を生成するとともに、赤外線通信手段によりモジュール間で、固有のアドレス信号等の情報を交信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上面、床面、机上面等の平面上に、閉じた空間(区画)を提示し、また閉空間内の人や物体の検知や位置計測も可能な、複数のモジュールから成る閉空間提示計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、実世界における情報提示や直感的な情報操作を目指し、仮想現実感やタンジブルインタフェース、及び実空間と仮想世界を重ね合わせる複合現実感技術等の研究が広く行われている。このように、現実の空間内における人の動作に応じて情報空間の操作を行うためには、適切な情報提示と実時間での動作計測が必要不可欠である。
【0003】
情報提示については、プロジェクタやヘッドマウントディスプレー(頭部装着ディスプレー、Head Mounted Display; HMD) 等による視覚刺激に加え、スピーカやハプティックデバイス(通常、ロボットアーム等において用いられる触覚装置)等、聴覚・触覚提示が用いられている。
【0004】
一方動作計測には、カメラ計測に加え、レンジファインダ、フオースプレート、モーションキャプチャ等、環境にセンサデバイスを設置し、人が機器を装着することなく実世界での動作計測をする手段が多く用いられている。
【0005】
このような背景のもと、簡便に動作計測と情報提示を実現するデバイスを利用して運動療法に応用するといった新しい試みが見られる。これらに共通する点は、単なる運動計測のみならず、同時に音や光により人の動作を促すことが可能であるという特徴を有することであると言える。
【0006】
以下、さらに、よりかみ砕いて説明すると、従来、地面や床に、所定の閉空間を複数設け、この複数の閉空間を、遊び、運動、その他の利用に供するということが行われていた。例えば、古くから、地面、床面等の平面に円等、閉じた図形を複数描いて、これら複数の円等の間を飛び歩いたりする遊び等が行われている。このような遊びでは、地面、床面等の平面に描かれた円等、閉じた図形が、実世界における情報提示に相当する。
【0007】
また、マット体の上面に、格子状の境界部で形成された接地面を有する複数の歩行表示部を設け、このマットを利用して、境界部に足を接触しないように、踵を上げた状態を維持し、転倒予防に重要な筋力、および敏捷性等の調整力を効率的に鍛えることのできる運動用具がすでに提案されている(特許文献1参照)。この例では、マット体の歩行表示部が、実世界における情報提示に相当する。
【0008】
そして、所定の空間領域を他の空間領域とは、異なる所有空間という前提に下に、防犯等の目的のために、所定の空間領域への出入りを検知する投光器と受光器を備えた装置は、すでに多数知られている(特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4191526号公報
【特許文献2】特開平5−182083号公報
【特許文献3】特開平9−210772号公報
【特許文献4】特開2006−39984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来における情報提示及び動作計測を実現するためには、実空間に情報を提示する必要上、上記のように、少なくとも地面や床面等に円を描いたり、マット、その他の手段が必要となる。しかしながら、地面、床面、机上面等に傷として残るような所作を施すことは、当該場所への影響も大きく、このような観点から、使用者のみならず周囲の環境に対する負荷が大きくなる。
【0011】
情報提示手段として、例えば、上記のとおり表示部を備えたマット等を利用する場合は、複数の利用領域全面に大きなマット等を敷き詰めなくてはならず、費用はもちろん、運搬その他の点から大きな制約がある。しかも、マットの表示部は、ある程度固定的な空間領域の情報しか提供できず、簡単に空間領域を可変とすることもできない。
【0012】
このような観点から、本発明は、環境や使用者へ大きな負荷を与えず、実世界において、例えば、地面、床面、机上面等に、閉空間を形成する幾何学図形を自由かつ簡便に描画して提示し、ゲーム、その他の利用に供することができ、しかも、その閉空間自体、又はその閉空間内に存在する人や物等について、その位置、運動状態等を計測可能な、簡単で、応用及び利便性に富む手段を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために、複数のモジュールからなるモジュール群を備えた閉空間提示計測装置であって、前記複数のモジュールは、それぞれ、赤外線受光部及び赤外線発光部を有する赤外線通信手段と、レーザ発光器と、制御装置とを備えており、前記制御装置は、CPU、メモリ及び赤外線通信インターフェース部を備えており、メモリに搭載されたプログラムに従って、複数のモジュールがそれぞれ隣接する一つのモジュールに向けてレーザ光が投光された際に、隣接するモジュール間の赤外線通信手段により互いに隣接するモジュールの固有のアドレス信号を認識し、それぞれメモリに登録を行う構成であり、複数のモジュールがそれぞれ隣接する一つのモジュールに向けて順次レーザ光を投光し、レーザ光で表示され囲まれて閉じた平面領域を有する閉空間を生成する構成であることを特徴とする閉空間提示計測装置を提供する。
【0014】
前記赤外線受光部は、モジュールの外周側面における外周方向に一定の間隔をおいて複数設けられており、前記赤外線発光部は、モジュールの外周側面における外周方向の一箇所にモジュールから側方に向けて赤外光を投光するように構成されており、前記レーザ発光器は、モジュールの外周方向の赤外線発光部と同じ箇所にモジュールから側方に向けてレーザ光を投光するように設けられていることが好ましい。
【0015】
前記制御装置は、メッシュ通信インターフェース部を備えており、該メッシュ通信インターフェース部を介して、他のモジュール又は外部のコンピュータと通信可能であることが好ましい。
【0016】
前記複数のモジュールは、それぞれ、モジュールの外周側面における外周方向に一定の間隔をおいて複数設けられた前記測距センサを有し、前記閉空間内の物体の存在又は移動を検知するとともに、位置を計測することが可能な構成であることが好ましい。
【0017】
前記複数のモジュールは、それぞれ、LED発光部を備えており、当該モジュールの動作状態を表示する構成であることが好ましい。
【0018】
前記モジュール群が、1つ又は複数配置されることで、ゲーム機、遊技機、娯楽機、運動器具、訓練機器、健康増進機、リハビリ器具、ディスプレー装置、イルミネーション装置又は芸術表現手段として使用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る認知機能評価システムによれば、次のような効果が生じる。
(1)環境や使用者へ大きな負荷を与えず、実世界において、例えば、地面、床面、机上面等に、閉空間を形成する幾何学図形を自由かつ簡便に描画し表示することができるので、ゲーム機、娯楽具、ディスプレー器具、イルミネーション器具、新たな芸術表現手段等にきわめて有用である。
【0020】
(2)モジュール群内の閉空間内に存在する人や物等の検知や認識結果の提示が可能であり、モジュール群内の閉空間内に存在する人や物等について、位置、運動等を計測が可能である。さらに、複数のモジュール群により複数の閉空間を提示し、人や物等が複数の閉空間の間を移動していることを検知したり、人に移動を促す動作位置の指示や情報提示を行うことができる。従って、マット等の機材を使用することなく、ゲーム機、遊技機、娯楽機、運動器具、訓練機器(ダンス、バレエ等の訓練用機器)、健康増進機、リハビリ器具等への適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る閉空間提示計測装置の実施例についてモジュールの構成を説明する図であり、(a)はモジュールの斜視図であり、(b)はモジュール群の一例を示す斜視図であり、(c)は赤外線受光部の配置を説明する図である。
【図2】本発明に係る閉空間提示計測装置の実施例についてモジュールに搭載された機器を説明するブロック図を示す図である。
【図3】本発明に係る閉空間提示計測装置のモジュール群を形成するまでの動作フローを説明する図である。
【図4】本発明に係る閉空間提示計測装置のモジュール群間の相対角度を検出する原理を説明する図である。
【図5】本発明に係る閉空間提示計測装置の測距について説明する図である。
【図6】本発明に係る閉空間提示計測装置の使用例を説明する図である。
【図7】本発明に係る閉空間提示計測装置の試作例により閉空間を作成している様子、及び本発明に係る閉空間提示計測装置の試作例により閉空間内の人の手の検知中の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る閉空間提示計測装置を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0023】
(概要)
本発明に係る閉空間提示計測装置は、図1に示すように、レーザ光を出力するモジュールを複数、地面、床面、机上面等の平面内に自由に配置することで、各モジュールが発光する複数のレーザ光で所望の図形を自由に表示(描画)可能とするとともに、これら複数のモジュールからなるモジュール群が形成する閉空間における、人や物体等(以下、物体という)の検知、計測を実現可能とするものである。
【0024】
これにより、描画される閉空間の形成される平面上に、特別の造作や物を置く等の阻害をすることなく、またこの閉空間内での物体の検知、移動(人の跳躍も含む)等の運動計測、次の動作位置の指示、及び認識結果の提示等が可能になり、例えば、子ども達が広場に線を引いて、遊びの空間を作るような感覚を実現可能とするものである。
【0025】
なお、本発明及び本願明細書では、「閉空間」とは、周囲及び上下において壁等で囲まれ物理的に閉ざされた空間を意味するのではなく、地面、床面、机上面等の平面内で周囲が囲われた領域の上下方向の空間を意味するものとする。そして、モジュールを複数、あたかもタイルのように地面、床面、机上面等に置いて、このような閉空間を形成するので、モジュールは、本発明者、本出願人では、「エアタイル」とも呼んでいる。
【実施例】
【0026】
本発明に係る閉空間提示計測装置の実施例を説明する。本発明に係る閉空間提示計測装置1は、複数のモジュール2からなるモジュール群3(図1(b)参照)の1つ以上から構成される。図1(a)は、モジュール2の構成を示す斜視図である。
【0027】
モジュール群3を構成する複数のモジュール2は、それぞれ互いに同じ構成である。本実施例の閉空間提示計測装置1は、3個のモジュール2からなるモジュール群3を有する例を示すが、閉空間が形成されれば、特に、モジュール2は3個でなくてもよい。
【0028】
モジュール2は、全体的には、円盤又は多角形盤に形成されていることが好ましく、本実施例では、平面視で八角形の盤体に形成されている。その使用目的に応じてモジュール2の大きさは、適宜設計すればよいが、ごく一般的なイメージとしては、例えば、手のひらサイズである。
【0029】
そして、モジュール2は、図1(a)、図2のブロック図で示すように、赤外線受光部4、赤外線発光部5、レーザ発光器6、測距センサ7、制御装置8、LED発光部9及びバッテリ(図示せず)等の構成要素を備えている。
【0030】
制御装置8は、具体的には、マイクロコントローラ又はマイコンが使用される。本実施例では、マイクロコントローラ(制御装置8と同じ符号8を付す)を使用した構成で説明する。
【0031】
赤外線受光部4は、他のモジュール2の赤外線発光部5からの赤外光を受光し、赤外光の検知及び赤外線通信を行う手段である。本実施例では、赤外線受光部4は、図1(a)、(c)に示すように、モジュール2の外周側面部11に周方向に互いに45度間隔で8個設けられている。具体的には、8個の赤外線受光部4は、それぞれモジュール2の8つの角部10の位置に、その受光面をモジュール2の放射方向外側に向けて設けられている。
【0032】
仮に、モジュール2の8つの角部10を、例えば、時計針方向周りに順次、第1の角部10−1〜第8の角部10−8とすると、第1の角部10−1〜第8の角部10−8の位置にそれぞれ設けられた赤外線受光部4を、図1(c)に示すように、第1の赤外線受光部4−1〜第8の赤外線受光部4−8とする。
【0033】
赤外線発光部5は各モジュール2に1個設けられており、本実施例では、例えば、図1(a)、(c)に示すように、モジュール2の第1の角部10−1の位置において、モジュール2の外周面部における赤外線受光部4の下方に、赤外線投光面12をモジュール2の放射方向外側に向けて設けられている。
【0034】
赤外線発光部5は赤外光を当該モジュール2の放射方向に赤外光を投光するが、その赤外光を利用した通信(赤外線通信)によって、当該モジュール2の固有アドレス(信号)を交信するとともに、他のモジュール2との相対的角度及び相対的位置の検出を可能とする。
【0035】
ここで、モジュール2の固有アドレスとは、複数のモジュール2、例えば図1(b)に示すようなモジュール2−1、2−2、2−3のそれぞれに付され、各モジュールを識別することのできる固有のアドレスコードである。このアドレスは、マイクロコントローラ8内のメモリ13に記憶されており、マイクロコントローラ8で制御されて赤外線通信により赤外光として発信される。
【0036】
レーザ発光器6は各モジュール2に1個設けられており、本実施例では、例えば、赤外線発光部5と同じようにモジュール2の第1の角部10−1の位置において、モジュール2の上面外周縁14近くに、レーザ光投光面15をモジュール2の放射方向外側に向けて設けられている。
【0037】
レーザ光は、複数のモジュール2から成るモジュール群3によって閉空間30(図1(b)、図3(f)、図6等参照)を形成しこれを、人が認識できるように表示するために、可視可能な太さの光束で色が付与されたレーザ光である。
【0038】
赤外線発光部5とレーザ発光器6は、モジュール2に設けられた投光スイッチ(図示せず)を介してバッテリに接続され、投光スイッチを操作することで、赤外光及びレーザ光を同時又は選択的に投光するように構成されている。
【0039】
図1(c)に示すように、モジュール2の第1の角部10−1〜第8の角部10−8の位置にそれぞれ設けられた第1の赤外線受光部4−1〜第8の赤外線受光部4−8は、その受光した赤外光に係る検知信号を、対応する第1〜第8の角部の位置と関係付けられて、マイクロコントローラ8に認識されるように構成されている。
【0040】
即ち、第1の赤外線受光部4−1〜第8の赤外線受光部4−8は、それぞれ第1〜第8の識別番号が付されている。そして、赤外線受光部4のいずれかが赤外光を受光した場合に、その赤外光を受光した赤外線受光部4は、赤外光検知信号とともに、対応する第1の赤外線受光部4−1〜第8の赤外線受光部4−8のいずれかの識別信号(第1の角部10−1〜第8の角部10−8に対応する固有の識別信号)を、マイクロコントローラ8に送信し、マイクロコントローラ8で当該識別信号が認識される。
【0041】
或いは、第1の赤外線受光部4−1〜第8の赤外線受光部4−8に対応して、それぞれマイクロコントローラ8に入力ポートを設ける構成として、赤外線受光部4が検知信号のみをマイクロコントローラ8に送信しても、受信するマイクロコントローラ8の入力ポートによって、当該赤外線受光部4を認識されるような構成としてもよい。
【0042】
本発明のモジュール2は、赤外線通信とは別に、メッシュネットワーク通信も可能な構成を備えている。このメッシュネットワーク通信は、ピア・ツー・ピアメッシュ型のネットワークプロトコル(短距離無線ネットワーク規格)を用い、ユニキャストとブロードキャストの切り替えを利用することで、次の通信を行う。
イ.モジュール群3内のモジュール2間のネットワーク通信
ロ.複数のモジュール群3間のネットワーク通信
ハ.外部のホストコンピュータとモジュール2又はモジュール群3のネットワーク通信
なお、ピア・ツー・ピアメッシュ型のネットワークプロトコルとして、具体的には、例えば、DIGIMESH(Digi International, Inc.所有の登録商標名)プロトコル、或いはZigbee等が利用される。
【0043】
メッシュネットワーク通信においては、ユニキャストでは、モジュール群3内のモジュール2間の通信を行い、ブロードキャストの切り替えを行って複数のモジュール群3間の通信と、外部のホストコンピュータ20(図2参照)に対するモジュール2又はモジュール群3の通信を行う。
【0044】
なお、モジュール群単位で通信する場合(例えば、モジュール群3相互間の通信、モジュール群3と外部のホストコンピュータ20との送信)は、第1のモジュール2−1(モジュール群3内のリーダであるメンバ)のマイクロコントローラ8の制御の下で、メッシュネットワーク通信が行われる。
【0045】
測距センサ7は各モジュール2に8個設けられており、本実施例では、これら8個の測距センサ7−1〜測距センサ7−8は、図1(c)に示すように、45°間隔でモジュール2の外周面における、第1の角部10−1〜第8の角部10−8のそれぞれ隣接する角部間に設けられている。
【0046】
各モジュール2に設けられた8個の測距センサ7−1〜測距センサ7−8は、それぞれ第1〜第8の固有の識別番号が付されており、マイクロコントローラ8は、この第1〜第8の固有の識別番号により、測距センサ7−1〜測距センサ7−8のそれぞれの動作を制御し、それぞれの測距結果を認識する。
【0047】
測距センサ7は、光(測距光42:図5参照)を物体に投光し、物体からの反射光を受光して、受光信号をマイクロコントローラ8に送信して、マイクロコントローラ8の処理機能により測距を行うものであり、測距センサ7自体は、通常の測距センサ7が利用される。例えば、測距センサ7は、測距光42の発光素子として赤外発光ダイオード(LED)、受光素子として位置検出素子PSD(Position Sensitive Detector)を備えたPSD測距センサを利用する。
【0048】
LED発光部9は、マイクロコントローラ8によって制御され、複数のモジュール2のそれぞれの動作状態を表示するものであり、例えば、隣接するモジュール2間の赤外線通信が完了した際に、発光して、その完了状態を表示する。
【0049】
マイクロコントローラ8は、図2に示すように、CPU21、メモリ13、記憶部22、赤外線通信インターフェース部23、入出力インターフェース部24、メッシュネットワークインターフェース部25、データバス26を備えており、主に以下の4つの処理を行う。
【0050】
(1)赤外線発光部5及び赤外線受光部4を制御して赤外線通信を行い、モジュール2の固有アドレスや赤外線受光部4の識別番号の認識、交信を行い、他のモジュール2の検出、さらには他のモジュール2との相対的角度及び相対的位置の検出を行い、必要に応じて22へ登録し、登録内容を共有する。
(2)メッシュネットワークを構成し、モジュール群3内での複数のモジュール2相互間の通信と、他のモジュール群3との通信と、外部のホストコンピュータ20との通信を行う。
(3)測距センサ7を制御して、モジュール2周囲の物体の測距を行い、その位置の検出を行う。
(4)レーザ発光器6を制御してレーザ光を投光し、閉空間30を形成して表示する。また、LED発光部9を制御して、モジュール2の状態(例えば、モジュール2相互間の赤外線通信による相互の認識、登録、登録内容の共有作業が完了した状態等)の表示を行う。
【0051】
マイクロコントローラ8のメモリ13には、モジュール2の動作を行うプログラムが搭載されており、このプログラムに従ってCPU21が動作して、マイクロコントローラ8は後記する動作フローに示す処理を行う。
【0052】
赤外線通信インターフェース部23は、赤外線受光部4が赤外線通信により受信した他のモジュール2からの信号を入力し、また赤外線発光部5を制御して、赤外線通信により送信する他のモジュールへの信号を赤外線発光部5へ出力する。
【0053】
入出力インターフェース部24は、レーザ発光器6へ制御信号を送信し、また、測距センサ7へ測距制御信号を出力するとともに、測距センサ7からの測距信号を受信する。さらに、入出力インターフェース部24、モジュール2のLED発光部9に向けて、モジュール2の動作状態を知らせる表示信号を出力する。
【0054】
バッテリは、モジュール2内の諸構成要素、即ち、赤外線受光部4、赤外線発光部5、レーザ発光器6、測距センサ7、マイクロコントローラ8、LED発光部9等の機器の電源となる。
【0055】
(動作フロー)
上記構成から成る本発明に係る閉空間提示計測装置1の構成をさらに明確にするために、特に、モジュール2のマイクロコントローラ8に搭載されたプログラムの構成(アルゴリズム)を明確にするために、このプログラムに従って動作する上記実施例の閉空間提示計測装置1の動作フロー、作用等を、以下説明する。
【0056】
閉空間の提示:
ここでは、3つのモジュールから成るモジュール群(図1(b)参照)で、1つの閉空間30を形成する動作フローを例に挙げて説明する。
【0057】
(1)第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2の結合
図3(a)に示すように、利用者は、地面、床面又は机上面等の同一平面内に、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2を置く。
【0058】
そして、第2のモジュール2−2の投光スイッチ(図示せず)を操作して、第2のモジュール2−2のレーザ発光器6及び赤外線発光部5からレーザ光40及び赤外光41を発光し、レーザ光40及び赤外光41を第2のモジュール2−2から互いに同一の放射方向に投光する。第2のモジュール2−2は、この赤外光41によって、第2のモジュール2−2の固有アドレスを発信する。
【0059】
利用者は、第2のモジュール2−2から投光されたレーザ光40の方向を確認しながら、図3(b)に示すように、第1のモジュール2−1の赤外線受光部4が、第2のモジュール2−2から投光された赤外光41が受光するように、第2のモジュール2−2の向きを矢印のように回転して調整する。
【0060】
なお、第2のモジュール2−2は、赤外光41を発光すると同時に自動的に回転し、この赤外光41を第1のモジュール2−1の赤外線受光部4が受光すると、赤外線通信により回転を停止する構成にすれば、利用者による上記回転操作が省ける。これは、以下に順次説明する第3のモジュール2−3及び第1のモジュール2−1についての回転による方向調整についても同様である。
【0061】
第1のモジュール2−1の赤外線受光部4が、第2のモジュール2−2から投光された赤外光41を受光すると、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2との間の赤外線通信により、第1のモジュール2−1は、第2のモジュール2−2の固有アドレスを受信する。
【0062】
第1のモジュール2−1は、第2のモジュール2−2の固有アドレスを受信すると、第1のモジュール2−1のマイクロコントローラ8が動作して、第1のモジュール2−1を第1番目のメンバ(リーダであるメンバ)とし、第2のモジュール2−2を第2番目のメンバとしてそれぞれ割り当てて、記憶部22内に登録する。
【0063】
そして、第1のモジュール2−1は、第2のモジュール2−2を閉空間提示計測装置1の第2のメンバとして登録したことを通知するコマンド(確認信号)を第2のモジュール2−2に赤外線通信により発信するとともに、第1のモジュール2−1の固有アドレスと、第1のモジュール2−1を第1番目のメンバとし第2のモジュール2−2を第2番目のメンバとして登録した旨の情報を、第2のモジュール2−2に赤外線通信により発信する。
【0064】
第2のモジュール2−2は、上記コマンド、第1のモジュール2−1の固有アドレス、及びメンバの登録情報を受信すると、マイクロコントローラ8が動作して、上記第1のモジュール2−1の固有アドレス及びメンバの登録情報を、その記憶部22内に登録する。これにより、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2との間で、上記メンバの登録内容を共有することとなる。
【0065】
以上の動作が終了すると、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2のそれぞれに設けられたLED発光部9のLEDが発光し、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2間の赤外線通信による登録内容の共有作業が完了したことの表示を行う。
【0066】
(2)第2のモジュール2−2と第3のモジュール2−3の結合
次に、図3(c)に示すように、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2の置かれた同一平面内に、第3のモジュール2−3を置く。
【0067】
そして、第3のモジュール2−3の投光スイッチ(図示せず)を操作して、第3のモジュール2−3のレーザ発光器6及び赤外線発光部5からレーザ光40及び赤外光41を発光し、レーザ光40及び赤外光41をモジュール2から同一の放射方向に投光する。第3のモジュール2−3は、この赤外光によって、第3のモジュール2−3の固有アドレスを発信する。
【0068】
利用者は、第3のモジュール2−3から投光されたレーザ光40の方向を確認しながら、図3(d)に示すように、第2のモジュール2−2の赤外線受光部4が、第3のモジュール2−3から投光された赤外光41を受光するように、第3のモジュール2−3の向きを矢印のように回転して調整する。
【0069】
第2のモジュール2−2の赤外線受光部4が、第3のモジュール2−3から投光された赤外光41を受光すると、第2のモジュール2−2と第3のモジュール2−3との間の赤外線通信により、第2のモジュール2−2は、第3のモジュール2−3の固有アドレスを受信する。
【0070】
第2のモジュール2−2は、第3のモジュール2−3の固有アドレスを受信すると、第2のモジュール2−2のマイクロコントローラ8が動作して、第3のモジュール2−3を第3番目のメンバとして割り当てて、記憶部22内に登録するとともに、第2のモジュール2−2の固有アドレスと、第3のモジュール2−3を第3番目のメンバとして割り当ててメモリ記憶部22内に登録する。
【0071】
そして、第2のモジュール2−2は、第3のモジュール2−3を閉空間提示計測装置1の第3のメンバとして登録したことを通知するコマンド(確認信号)を、第3のモジュール2−3に赤外線通信により発信するとともに、第1のモジュール2−1及び第2のモジュール2−2のそれぞれの固有アドレスと、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3を第1番目〜第3番目のメンバとして登録した旨の情報を、第3のモジュール2−3に赤外線通信により発信する。
【0072】
同時に、第2のモジュール2−2は、第3のモジュール2−3を閉空間提示計測装置1のメンバとして登録したことを通知するコマンド(確認信号)を、第1のモジュール2−1に赤外線通信により発信するとともに、第3の固有アドレスと、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3を第1番目〜第3番目のメンバとして登録した旨の情報を、第3のモジュール2−1に赤外線通信により発信する。
【0073】
第3のモジュール2−3は、上記コマンド、モジュール1、2の固有アドレス、及び第1〜3のメンバの登録情報を受信すると、マイクロコントローラ8が動作して、モジュール1、2の固有アドレス及び第1〜3のメンバの登録情報を、その記憶部22内に登録する。これにより、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3は、互いにそれまでの登録内容を共有することとなる。
【0074】
以上の動作が終了すると、第1のモジュール2−1と第2のモジュール2−2のそれぞれに設けられたLED発光部9のLEDが発光し、第2のモジュール2−2と第3のモジュール2−3間の赤外線通信による登録内容の共有作業が完了した表示を行う。
【0075】
(3)第3のモジュール2−3と第1のモジュール2−1の結合
次に、利用者は、第1のモジュール2−1の投光スイッチ(図示せず)を操作して、図3(e)に示すように、第1のモジュール2−1のレーザ発光器6及び赤外線発光部5からレーザ光40及び赤外光41を発光させ、レーザ光40及び赤外光41をモジュール2−1から同一の放射方向に投光する。
【0076】
そして、第1のモジュール2−1から投光されたレーザ光40の方向を確認しながら、図4(f)に示すように、第3のモジュール2−3の赤外線受光部4が、第1のモジュール2−1から投光された赤外光41を受光するように、第1のモジュール2−1の向きを矢印のように回転して調整する。
【0077】
このようにして、第3のモジュール2−3の赤外線受光部4が、第1のモジュール2−1から投光された赤外光を受光すると、第1のモジュール2−1と第3のモジュール2−3との間の赤外線通信により、第3のモジュール2−3は、第1のモジュール2−1の固有アドレスを受信する。
【0078】
第3のモジュール2−3は、第1のモジュール2−1の固有アドレスを受信すると、第3のモジュール2−3のマイクロコントローラ8が動作して、第1のモジュール2−1の固有のアドレスを登録されている固有のアドレスと照合し、第1番目のメンバ(リーダであるメンバ)として登録されていることを確認し、そのコマンド(確認信号)を、第1のモジュール2−1と第3のモジュール2−3との間の赤外線通信により第1のモジュール2−1に送信する。
【0079】
第1のモジュール2−1は、第3のモジュール2−3から上記コマンドを受信すると、マイクロコントローラ8が動作して、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3間で閉空間(第1〜3のモジュールから投光された3つのレーザ光40による閉ループ)が完成されたことを認識する。
【0080】
この認識に基づいて、第1のモジュール2−1は、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3のそれぞれのLED発光部9が発光するコマンドを発生し、赤外線通信により第2のモジュール2−2及び第3のモジュール2−3に送信する。これにより、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3のそれぞれのLED発光部9が全て発光し、利用者は、第1〜3のモジュール2によって、利用者が所望とする閉空間が形成されたことが分かる。
【0081】
以上、3つのモジュール2から成るモジュール群3により閉空間を形成する動作フローを説明したが、4つ以上の複数のモジュール2を利用しても、同様の動作フローで所望の多角形の平面を有する閉空間を形成することも可能である。
【0082】
複数のモジュール2で閉空間を形成すると、3つのモジュール2による3つの頂点と、3本のレーザ光40による3つの辺で形成された閉空間内の計測可能領域を視覚的に示し、その閉空間内の物体の検出が可能となる。この閉空間は、換言すると、全ての頂点を1度ずつ通る閉路から形成される。閉空間への人の出入りが検知できたり、複数のモジュール群3間で、メッシュネットワーク通信により交信することで人の移動を計測することも可能となる。
【0083】
なお、複数のモジュール2を、支持具(図示しない)を使用して空間内に立体的な位置関係で置くことができれば、同一平面内だけでなく、立体空間から成る閉空間を形成することも可能である。
【0084】
相対角度の検知:
複数のモジュール間の相対角度の検知について、その原理を以下する。図4(a)に示すように、赤外線受光部4−1〜赤外線受光部4−8は、モジュール2の外周部に互いに45度の等間隔で設けられている。
【0085】
従って、モジュール2のレーザ発光器6及び赤外線発光部5と同位置に設けられた赤外線受光部4−1を、平面内で一定の方向に向けて置いている場合、赤外線通信で、他のモジュールの赤外線発光部5から赤外光を受光した赤外線受光部4(図4(a)では赤外線受光部4−8)の識別番号によって、当該赤外線受光部4が特定されれば、赤外線受光部4−1に対する他のモジュールの位置の相対角度αは判別できる。
【0086】
図4(b)に示すように配置された、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3のモジュールにより閉空間を形成する場合を例として説明する。第1のモジュール2−1(リーダであるメンバ)を基本位置として、この第1のモジュール2−1の位置に対し、第2のモジュール2−2及び第3のモジュール2−3の位置の相対角度は、次のようにして検知される。
【0087】
具体的には、図4(b)に示すように、第1のモジュール2−1の中心を、例えばX−Y座標の原点とし、第1の赤外線受光部4−1が、X軸上に対応するように配置されているとする。第2のモジュール2−2からの赤外光を受光した第1のモジュール2−1の赤外線受光部4(例えば、第4の受光部4−4)は、赤外光検知信号と、第2のモジュール2−2の固有信号と、受光した第1のモジュール2−1の赤外線受光部4−4の識別信号とを、第1のモジュール2−1のマイクロコントローラ8に送信する。
【0088】
第1のモジュール2−1のマイクロコントローラ8は、その受信した第2のモジュール2−2の固有信号と、受信した第1のモジュール2−1の赤外線受光部4−4の識別信号とから、送信先の第2のモジュール2−2が、基本となる赤外線受光部4−1に対してモジュール2−1の中心周りに反時計針方向に相対角度α(図4(b)の例では45°)の位置にあることを判別することができる。
【0089】
同様に、第1のモジュール2−1のマイクロコントローラ8は、受信した第3のモジュール2−3の固有信号と、受光した第1のモジュール2−1の赤外線受光部4−7の識別信号とから、送信先のモジュール3が、基本となる赤外線受光部4−1に対してモジュール2−1の中心周りに反時計針方向に相対角度β(図4(b)の例では90°)の位置にあることを判別する。
【0090】
なお、図4(a)に示すモジュール2の周囲に設けられる赤外線受光部4の数を多くすれば、モジュール間の相対角度をより精度よく判別することができる。また、後記するが、測距センサ7により、第1のモジュール2−1に対する第2のモジュール2−2又は第3のモジュール2−3の距離を測定できれば、上記角度α、βと併せることで、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3の座標位置が明確になる。
【0091】
閉空間の計測:
図1(c)において説明したとおり、各モジュール2の外周側面部11に等間隔で複数の測距センサ7が設けられており、それぞれ測距光42を投光している。本実施例では、各モジュール2に、8個の測距センサ7が45°間隔で角部10間に設けられている。
【0092】
第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3のそれぞれのマイクロコントローラ8は、閉空間内に面している測距センサ7を制御して測距光42を投光し、閉空間内に存在する物体の検知を行い、必要に応じて物体の測距を行うことができる。
【0093】
第1のモジュール2−1の測距センサ7により物体を測距すると、図5(a)に示すように、当該測距動作をする測距センサ7の識別番号から第1のモジュール2−1に対する物体位置の角度が分かるとともに、第1のモジュール2−1に対する距離が取得できる。
【0094】
同様に、第2のモジュール2−2及び第3のモジュール2−3のそれぞれの測距センサ7による測距により、当該それぞれの測距センサ7の識別番号により、第2のモジュール2−2及び第3のモジュール2−3に対する物体の角度及び距離も取得できる。
【0095】
図5(b)に示すように、第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3で囲まれた閉空間30領域のうち、それぞれの測距センサの測距光42が交わる領域50(図5(b)の点線部分の領域)に存在する物体は、その位置が第1のモジュール2−1〜第3のモジュール2−3の全てから測距できるので、精確に位置の測定が可能となる。
【0096】
(使用例)
使用者は、このような同じモジュール2を複数用いて、空間内に描きたい図形の頂点にモジュール2を置き、各モジュール2からレーザ光を投光して、レーザ光40により各辺を構成することで自由に閉空間を描くことができる。
【0097】
図6(a)は、本発明に係る閉空間提示計測装置1のきわめて分かり易い使用例として、遊技機又は運動器具に使用した様子を示す。この例では、3つのモジュール2から成るモジュール群3を複数個、適宜、平面上の所望の位置に配置し、レーザ光40の閉路で閉空間30を複数形成した。利用者は、複数のモジュール群3のそれぞれの閉空間30を移動したり、跳躍したりして遊んだり、運動したりすることができる。
【0098】
また、図6(b)は、適宜異なる形状の複数のモジュール群3を配置した例を示す平面図である。このようにして、本発明に係る閉空間提示計測装置1は、いろいろな形状(三角形、四角形、五角形等)の閉空間30の提示も可能であり、拡張性が確保可能である。
【0099】
(モジュールの試作例)
本発明者は、本発明に係る閉空間提示計測装置の有効性を検証するため、モジュールの試作を行った。試作した各モジュールは、図1に示すモジュール2の実施例と同じ構成であり、平面視で八角形の外周面に角部に赤外線受光部4、角部間に測距センサ7が交互に設けられて成る外形輪郭は、直径約10cmの略円筒状に形成されている。
【0100】
各モジュールは、制御にはマイクロコントローラ(Atmel社製AVR)、電源には1000mAhのリチウムポリマー電池を用い、長時間の使用を想定している。また充電回路を内蔵することで、モジュール単位で充電が可能である。PSD方式の測距センサ7の測距範囲は10〜150cmであり、モジュール間の有効最大距離は約3m程度である。
【0101】
また、赤外線による他モジュールの検出における相対角度の分解能は、22.5°程度である。実際にモジュールを利用して閉空間を形成し、該閉空間内の物体検知が可能であることを確認した。実際に動作中の様子を、図7に示す。
【0102】
図7(a)は、第2のモジュール(第2番目のメンバー)を追加した状態を示す。図7(b)は、第3のモジュール(第3番目のメンバー)を追加した状態を示す。図7(c)は、第1〜第3のモジュールにより、正三角形の閉空間を完成した状態を示す。
【0103】
図7(d)は、正三角形の閉空間において、物体として人の手の検知をしている状態を示す。また、図7(e)は、直角三角形の閉空間において、物体として人の手の検知をしている状態を示す。このような試作実験により、閉空間を、正三角形のみならず、直角三角形など自由に形状を変化させることが可能であることを示した。
【0104】
以上、本発明に係る閉空間提示計測装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【0105】
例えば、上記実施例のモジュール2は、赤外線受光部4、赤外線発光部5、測距センサ7及びLED発光部9等の構成要素を、図1(a)、(c)に示すような数及び配置で設けているが、これは、あくまでも一つの実施例であり、本発明ではこのような構成に限定されるものではない。
【0106】
具体的には、赤外線受光部4、赤外線発光部5及び測距センサ7をそれぞれ、その数を多く設ければ、より精度が高く物体を検知でき、またきめ細かい赤外線通信によるモジュール間等における情報交換も可能となる。
【0107】
また、レーザー光の照射方向と同方向に測距センサを配置すれば、形成する図形の大きさをより正確に把握することが可能となる。即ち、レーザー発光器から照射されるレーザー光の照射方向と同方向に測距センサを配置する構成を採用し、測距光としてレーザー光も利用すれば、より正確に測距センサで受光可能であるから、モジュール間の相対的な位置関係をより明確に把握でき、その結果、レーザー光で形成する図形の大きさをより正確に把握することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明に係る閉空間提示計測装置は上記のような構成であり、簡便に平面に描画し、また仕切りを形成して閉空間を形成することができるから、産業上の利用可能性としては、次に示すような態様がある。
【0109】
(1)複数のモジュール群により複数の複数の閉空間を提示し、人が複数の閉空間の間を移動していることを検知したり、人に移動を促す情報提示を行うことが可能である。これにより、閉空間提示計測装置を、マット等の機材を使用することなく、ゲーム機、遊技機、娯楽機、運動器具、訓練機器(ダンス、バレエ等の訓練用機器)、健康増進機、リハビリ器具等へ適用できる。
【0110】
(2)また、本発明に係る閉空間提示計測装置は、複数のモジュールにより、平面視でいろいろな形状の閉空間提示できるので、イベント会場での区画表示、建築現場における測量時の指標提示機や仮想縄張り提示機、カメラキャリブレーションの補助機器等として適用できる。
【0111】
(3)さらに、閉空間提示計測装置の表示機能を活かして、1又は複数のモジュール群を、店舗のショーウィンドウ内のディスプレー器具、イルミネーション器具、新たな芸術表現手段等への適用もできる。
【0112】
(4)さらに、モジュールの有するLEDについて多色にしたり、さらにLEDに合わせて音響を生じるようにして、1又は複数のモジュール群を利用して、ゲーム機、遊技機、娯楽機、運動器具、リハビリ器具、測量時の指標提示機や仮想的な縄張り提示機(縄張り紐に替えてレーザ光を使用する)、カメラキャリブレーションの補助機器、ディスプレー器具、イルミネーション器具、新たな芸術表現手段等をより多機能化して、付加価値を高めることも可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 閉空間提示計測装置
2 モジュール
2−1〜2−3 第1のモジュール〜第3のモジュール
3 モジュール群
4 赤外線受光部
4−1〜4−8 第1の赤外線受光部〜第8の赤外線受光部
5 赤外線発光部
6 レーザ発光器
7 測距センサ
7−1〜7−8 第1の測距センサ〜第8の測距センサ
8 制御装置(マイクロコントローラ)
9 LED発光部
10 モジュールの8つの角部
10−1〜10−8 第1の角部〜第8の角部
11 モジュールの外周側面部
12 赤外線投光面
13 メモリ
14 モジュールの上面外周縁
15 レーザ発光器のレーザ光投光面
20 ホストコンピュータ
21 CPU
22 記憶部
23 赤外線通信インターフェース部
24 入出力インターフェース部
25 メッシュネットワークインターフェース部
26 データバス
30 閉空間
40 レーザ光
41 赤外光
42 測距光
50 第1〜第3のモジュールで測距される領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモジュールからなるモジュール群を備えた閉空間提示計測装置であって、
前記複数のモジュールは、それぞれ、赤外線受光部及び赤外線発光部を有する赤外線通信手段と、レーザ発光器と、制御装置とを備えており、
前記制御装置は、CPU、メモリ及び赤外線通信インターフェース部を備えており、メモリに搭載されたプログラムに従って、複数のモジュールがそれぞれ隣接する一つのモジュールに向けてレーザ光が投光された際に、隣接するモジュール間の赤外線通信手段により互いに隣接するモジュールの固有のアドレス信号を認識し、それぞれメモリに登録を行う構成であり、
複数のモジュールがそれぞれ隣接する一つのモジュールに向けて順次レーザ光を投光し、レーザ光で表示され囲まれて閉じた平面領域を有する閉空間を生成する構成であることを特徴とする閉空間提示計測装置。
【請求項2】
前記赤外線受光部は、モジュールの外周側面における外周方向に一定の間隔をおいて複数設けられており、前記赤外線発光部は、モジュールの外周側面における外周方向の一箇所にモジュールから側方に向けて赤外光を投光するように構成されており、
前記レーザ発光器は、モジュールの外周方向の赤外線発光部と同じ箇所にモジュールから側方に向けてレーザ光を投光するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の閉空間提示計測装置。
【請求項3】
前記制御装置は、メッシュ通信インターフェース部を備えており、該メッシュ通信インターフェース部を介して、他のモジュール又は外部のコンピュータと通信可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の閉空間提示計測装置。
【請求項4】
前記複数のモジュールは、それぞれ、モジュールの外周側面における外周方向に一定の間隔をおいて複数設けられた前記測距センサを有し、前記閉空間内の物体の存在又は移動を検知するとともに、位置を計測することが可能な構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の閉空間提示計測装置。
【請求項5】
前記複数のモジュールは、それぞれ、LED発光部を備えており、当該モジュールの動作状態を表示する構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の閉空間提示計測装置。
【請求項6】
前記モジュール群が、1つ又は複数配置されることで、ゲーム機、遊技機、娯楽機、運動器具、訓練機器、健康増進機、リハビリ器具、ディスプレー装置、イルミネーション装置又は芸術表現手段として使用されることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の閉空間提示計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−164034(P2011−164034A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29600(P2010−29600)
【出願日】平成22年2月14日(2010.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】