閉空間送信装置
【課題】従来、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間においてISDB−T方式の地上デジタル放送波など、OFDMデジタル波を受信するにあたり、複数の送信手段、特に複数のアンテナを使用しないで正受信場所率を改善し、閉空間全体で安定な受信を可能にすることはできなかった。
【解決手段】本発明閉空間送信装置は、漏洩同軸ケーブル302、入力信号を漏洩同軸ケーブル302の一方の端子に入力する手段、漏洩同軸ケーブル302の他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および該時間的に変化させる手段により得られた信号を漏洩同軸ケーブル302の他方の端子に入力する手段を具えて構成され、漏洩同軸ケーブル302から電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるように構成した。
【解決手段】本発明閉空間送信装置は、漏洩同軸ケーブル302、入力信号を漏洩同軸ケーブル302の一方の端子に入力する手段、漏洩同軸ケーブル302の他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および該時間的に変化させる手段により得られた信号を漏洩同軸ケーブル302の他方の端子に入力する手段を具えて構成され、漏洩同軸ケーブル302から電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−T方式の地上デジタル放送波など、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)デジタル波を送信または再送信する装置に係り、特に、既存のアンテナや漏洩同軸ケーブルを送信アンテナとして地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内で電波を放射し、放射に際しての正受信場所率を改善した閉空間送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間においては、漏洩同軸ケーブルなどを送信アンテナとして使用した防災無線システムが設置されている。また、一部の地下街では、漏洩同軸ケーブルを使用したAMラジオ放送の再送信が行われている。こうしたシステムの送信装置では、一本の漏洩同軸ケーブルの一方の端子から送信信号を入力し他方の端子に終端抵抗またはアンテナを接続する構造、あるいは、信号をハイブリッド等で分配し、その分配した出力を複数本の漏洩同軸ケーブルに一方の端子から入力し、他方の端子に終端抵抗またはアンテナを接続した構造としている。
【0003】
また、閉空間への送信を特に意識した技術ではないが、下記の特許文献1には、OFDM信号を互いに異なる地点から同一チャンネルで同時に送信する複数のOFDM送信手段を有し、それら複数のOFDM送信手段の少なくとも1つの送信出力特性を制御することで、送信エリア内の任意の場所での合成電界が時間的に変化するようにし、OFDM信号の時間インターリーブの効果を利用して、受信機におけるビット誤り率を改善し、送信エリア内で受信不能となる場所を減少させる技術が記載されている。
【特許文献1】特開平9−252291号公報
【非特許文献1】高橋ほか、「漏洩同軸ケーブルを用いた地上デジタル放送波の室内伝送実験−地上デジタル放送波の再送信−」、信学技報、IE2002-101(2002-11 )
【非特許文献2】ARIB STD−B31 「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内に配置された受信アンテナは、送信アンテナである通常のアンテナや漏洩同軸ケーブルからの直接波と、天井、壁面あるいは床面等からの反射波との合成波を受信することになる。この合成波は定在波として空間内に存在し、その分布は殆ど時間的に変化しない。この定在波において直接波と反射波が逆相、かつ同レベルで合成される地点はヌルポイントと呼ばれ、極端に電界強度が小さく、信号を正しく受信することができない。
【0005】
受信アンテナがヌルポイントに存在し続ける場合、時間経過による電界変動も望めないため、OFDM信号の時間インターリーブの効果も期待できず、常時受信不可能となる。特に、日本の地上デジタル放送の放送方式であるISDB−T方式の特徴の1つである携帯受信端末による1セグメントの部分受信を、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間で行う場合、反射波の遅延時間が短く、マルチパスによる周波数リップルの周期が長いため、OFDM信号の周波数ダイバーシティ効果も小さく、正受信場所率が低下する。また、このようなヌルポイントは閉空間内に複数生じており、正受信場所率を著しく低下させる原因となっている。これらの現象は、非特許文献1に記載されているため、参考とされたい。
【0006】
一方、こうした問題を解決する方法の1つとして、特許文献1に記載さている方法を導入することが考えられる。しかし、特許文献1に記載の方法は、主として地上デジタル放送の単一周波数中継(SFN:Singl Frequency Network )において、希望波とSFNの干渉波のD/Uがほぼ0dBとなる地域での受信特性の改善を意図しており、基本的に、空間的に離れた場所に複数の送信手段を設けることが前提となっている。しかし、この方法を電波反射体で囲まれた閉空間に適用する場合、複数の送信手段、特に複数のアンテナを設置するために複数の場所やエリアを確保する必要があり、設備コストが大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間においてISDB−T方式の地上デジタル放送波など、OFDMデジタル波を受信するにあたり、上述した問題を伴うことなく正受信場所率を改善し、閉空間全体で安定な受信を可能にする閉空間送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明閉空間送信装置は、漏洩同軸ケーブル、入力信号を前記漏洩同軸ケーブルの一方の端子に入力する手段、前記漏洩同軸ケーブルの他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および該時間的に変化させる手段により得られた信号を前記漏洩同軸ケーブルの前記他方の端子に入力する手段を具えて構成され、前記漏洩同軸ケーブルから電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内へデジタル放送波を放射する送信または再送信装置において、送信アンテナから放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させることにより、璧や床などでの電波の反射によって空間内に生成されるヌルポイントまたは低電界領域を高速に時間的に変化させ、加えてISDB−T信号がもつ時間インターリーブの効果を利用することで、閉空間内での正受信場所率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、複数のアンテナ素子で構成したアレイアンテナ、複数の漏洩同軸ケーブルをアンテナ素子として構成したアレイアンテナ、または単一の漏洩同軸ケーブルを使用して電波反射体で囲まれた閉空間内でOFDMデジタル波を放射する送信装置(再送信装置を含む)において、アレイアンテナ、複数の漏洩同軸ケーブルをアンテナ素子として構成したアレイアンテナ、または単一の漏洩同軸ケーブルの放射特性または放射パターンを時間的に変化させることにより、空間内に生成されるヌルポイントや低電界領域を高速に時間的に変化させ、加えて、送信波がISDB−T信号の場合には、ISDB−T信号が有する時間インターリーブの効果を利用して正受信場所率の改善を図るように構成する。
【0011】
以下では、本発明の実施例として、日本の地上デジタル放送の放送方式であるISDB−T方式に準拠した放送信号を室内や地下街など閉空間に放射する送信装置ついて具体的に説明する。
また、以下の説明においては、信号源として受信した放送波(無線で送られてきた信号)を再送信する場合は再送信装置、ケーブルや光ファイバなど有線を使って配信された放送TS(Transport Stream)を使用する場合は送信装置とそれぞれ呼ぶ。本発明は、これを再送信装置および送信装置のいずれをも含むものである。
以下に添付図面を参照し、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第1の実施例を示している。
図1において、100Aは信号生成部、200は信号分配部、および300Aはアンテナ部である。
動作につき説明する。
信号生成部100Aで生成された中間周波数帯(IF帯)のISDB−T信号は、信号分配部200に入力される。信号分配部200は入力されたIF帯のISDB−T信号をN系統に分配し、高周波(RF)帯に周波数変換し、さらに増幅して出力する。このとき、N系統のRF出力信号は、信号分配部200においてRF信号の信号パラメータが各系統毎に独立に時間的に変化させられている。時間的に変化させられている信号パラメータは周波数、位相、振幅、遅延時間のいずれか、またはそれらの組み合わせである。信号分配部200から出力されたN系統のRF信号はアンテナ部300Aに入力される。アンテナ部300Aは入力されたN系統のRF信号を電波として放射する。このとき、アンテナ部300Aは入力されるRF信号の信号パラメータが時間的に変化しているため、電波を放射する空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域は高速度で時間的に変化する。
【実施例2】
【0013】
図2は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第2の実施例を示している。
図2において、100Aは信号生成部、300Bはアンテナ部、400はアップコンバータ(U/C)、および500は電力増幅部(PA部)である。
動作につき説明する。
信号生成部100AはIF帯のISDB−T信号を生成し出力する。信号生成部100Aから出力されたIF信号はアップコンバータ(U/C)400に入力される。U/C400においては、入力されたIF信号をRF帯の信号に周波数変換した後、出力する。U/C400の出力信号であるRF信号は電力増幅部(PA部)500に入力される。PA部500は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500から出力されたRF信号はアンテナ部300Bに入力される。アンテナ部300Bは入力されたRF信号を電波として放射する。また、アンテナ部300Bは電波の放射特性を時間的に変化させて、空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速度で時間的に変化させる。
【実施例3】
【0014】
図3は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第3の実施例を示している。
図3において、100Bは信号生成部、300Bはアンテナ部、および500はPA部である。
動作につき説明する。
信号生成部100BはRF帯のISDB−T信号を生成し出力する。信号生成部100Bから出力されたRF信号はPA部500に入力される。PA部500は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500から出力されたRF信号はアンテナ部300Bに入力される。アンテナ部300Bは入力されたRF信号を電波として放射する。また、アンテナ部300Bは電波の放射特性を時間的に変化させて、空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速度で時間的に変化させる。
【実施例4】
【0015】
図4は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第4の実施例を示している。
図4において、100Cは信号生成部、300Aはアンテナ部、400−1,400−2,・・・,400−NはU/C、および500−1,500−2,・・・,500−NはPA部である。
動作につき説明する。
信号生成部100CはIF帯のISDB−T信号(IF信号)をN系統生成して出力する。このとき、信号生成部100Cは出力するIF信号の信号パラメータを各系統で独立に時間的に変化させる。時間的に変化させる信号パラメータとしては周波数、位相、振幅、遅延時間のいずれかまたはそれらの組み合わせである。信号生成部100Cから出力された第1の系統のIF信号はU/C400−1に入力される。U/C400−1は入力されたIF信号をRF帯の信号に周波数変換した後、出力する。U/C400−1から出力された第1の系統のRF信号はPA部500−1に入力される。PA部500−1は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500−1から出力されたRF信号はアンテナ部300Aに入力される。
【0016】
以上は、第4の実施例に関し、信号生成部100Cから出力された第1の系統について信号の処理を説明したが、第2乃至第Nの系統についても同様の処理が行われ、得られた第2乃至第Nの系統のRF信号がそれぞれアンテナ部300Aに入力される。アンテナ部300Aは入力されたN系統のRF信号を電波として放射する。アンテナ部300Aに入力されるRF信号の信号パラメータが時間的に変化するため、電波を放射する空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域は高速度で時間的に変化する。
【実施例5】
【0017】
図5は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図5において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、107は判定部、108はIFFT部、および109は直交変調部である。
【0018】
動作につき説明する。
図5において、アンテナ101はISDB−T方式の地上デジタル放送波を受信し、RF帯の受信信号を出力する。アンテナ101から出力された受信信号は受信部102に入力される。受信部102は入力されたRF信号にフィルタ処理を行い、不要な帯域外成分を除去するとともに、後段の信号処理に適したレベルまで信号を増幅する。さらに出力するRF信号のレベルが一定になるように自動利得制御(AGC制御)を行う。受信部102から出力されたRF信号はダウンコンバータ(D/C)103に入力される。D/C103においては、入力されたRF信号をIF帯の信号に周波数変換して出力する。周波数変換はIF信号の周波数に応じて、1回で、もしくは2回に分けて行う。また、周波数変換に伴って生じるイメージ成分の除去も行う。D/C103から出力されたIF信号は直交復調部104に入力される。
【0019】
直交復調部104は入力されたIF信号を直交復調し、等価ベースバンドのI,Q信号に復調するとともにA/D変換してデジタル信号にする。また、直交復調の際に生じるイメージ成分の除去も行う。直交復調部104の回路構成としては、A/D変換をIF信号に対して行い直交復調をデジタル処理で行う場合と、A/D変換を直交復調後のI,Q信号に対して行う場合の2通りが考えられる。さらに、直交復調部104は自動周波数制御(AFC)機能を有し、出力するI,Q信号の周波数ずれを補正するとともに、直交復調に使用した周波数ずれの補正が加えられたローカル信号を直交変調部109に出力する。また、直交復調部104はISDB−T信号の同期再生を行い、FFTクロック、シンボル同期、FFT窓タイミング、フレーム同期など後段の処理で必要となる各種タイミング信号を生成し、それらを必要とする各部に出力する。直交復調部104から出力されたデジタル信号のI,Q信号はFFT部105に入力される。FFT部105は入力されたI,Q信号の有効シンボル期間を抽出して高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理を行い、時間領域の波形信号を周波数領域のシンボル信号に変換する。
【0020】
FFT部105から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号はSP等化部106に入力される。SP等化部106は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号の中からSP(Scattered Pilot )を抽出して伝送路特性を算出し、算出した伝送路特性で入力されたI,Qシンボル信号を複素除算することで等化を行い出力する。SP等化部106から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号は判定部107に入力される。判定部107は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号に対して硬判定を行い、雑音成分を除去して出力する。周波数領域の各シンボルの変調方式に関する情報は、周波数領域のI,Qシンボル信号からTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Contorol)を抽出して復調することにより得られる。
【0021】
判定部107から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号はIFFT部108に入力される.IFFT部108は入力された周波数領域のI,Qシンボル信号に対して逆高速フーリエ変換(Invers Fast Fourier Transform )処理を行い、時間領域のI,Q信号に変換した後、ガードインターバルを付加して出力する。IFFT部108から出力されたI,Q信号は直交変調部109に入力される。直交変調部109は入力された等価ベースバンドのI,Q信号を直交変調してIF信号に変換するとともに、D/A変換してアナログ信号にする。また、直交変調の際に生じるイメージ成分の除去も行う。直交変調部109の回路構成としては、D/A変換をI,Q信号に対して行い直交変調をアナログ回路で行う場合と、D/A変換を直交変調後のIF信号に対して行う場合の2通りがある。さらにSFN再送信を行う場合には、直交復調器104から出力されるローカル信号を使用して直交変調を行う。直交変調部109から出力されたIF信号は信号生成部(図1,2に符号100Aで示される)の出力信号になる。
【実施例6】
【0022】
図6は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図6において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、108はIFFT部、および109は直交変調部である。
【0023】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)は、図5に示した第1の実施例中の判定部107を省略し、構成を簡素化したものである。すなわち、本実施例では、受信した放送波に対して周波数領域のI,Qシンボル信号に対する硬判定を行わない(従って、雑音成分は除去されない)で、等化処理のみを行うようにしている。その他は図6に示した第1の実施例との場合と同じである。
【実施例7】
【0024】
図7は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図7において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、109は直交変調部、110は伝送路特性推定部、111はフィルタ係数生成部、112は適応フィルタ部、および120は分配器である。
【0025】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)は、図5に示した第1の実施例において、FFT処理後の周波数領域で行っていた等化処理をFFT処理前の時間領域で行うようにしたもので、装置の遅延時間を短縮化できる反面、硬判定ができないため雑音成分は除去されない。
【0026】
図7において、直交復調部104までの動作は図5,6に示した信号生成部の第1,2の実施例と同じである。直交復調部104から出力された等価ベースバンドのI,Q信号は分配器120に入力される。分配器1120は入力されたI,Q信号をそれぞれ2分配して出力する。2分配されたI,Q信号の一方はFFT部105に、他方は適応フィルタ部112にそれぞれ入力される。FFT部105は入力されたI,Q信号の有効シンボル期間を抽出してFFT処理を行い、時間領域の波形信号を周波数領域のシンボル信号に変換して出力する。FFT部105から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号は伝送路特性推定部110に入力される。
【0027】
伝送路特性推定部110は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号からSPを抽出して伝送路の周波数特性を算出し出力する。伝送路特性推定部110から出力された伝送路の周波数特性データはフィルタ係数生成部111に入力される。フィルタ係数生成部111は、まず、入力された伝送路の周波数特性データをもとに適応フィルタ部112中のトランスバーサルフィルタで実現すべき周波数特性を算出する。次に、算出した周波数特性をIFFT処理してインパルス応答に変換し、さらに、得られたインパルス応答に窓処理を行って有限タップ長の複素数のフィルタ係数を生成し出力する。また、フィルタ係数生成部111で生成するタップ係数は、適応フィルタ部112の具体的な構成法によって異なる。フィルタ係数生成部111から出力されたデジタルフィルタのタップ係数は適応フィルタ部112に入力される。
【0028】
一方、適応フィルタ部112はフィルタ係数生成部111から入力されたタップ係数を、内部のデジタルフィルタの係数レジスタに反映し、分配器120から入力されたI,Q信号に複素数の畳み込み演算を施して伝送路の等化を行い、その結果を出力する。適応フィルタ部112の構成法としては、様々な形式が提案されており、FIR(Finite Impulse Response )タイプやIIR(Infinite Impulse Response )タイプ、さらに、FIRとIIRとを組み合わせたタイプなどがよく知られている。適応フィルタ部112から出力された等化処理済みのI,Q信号は直交変調部109に入力される。なお、直交変調部109の動作は、
図5,6に示した信号生成部の第1,2の実施例と同じである。
以上説明した信号生成部の第3の実施例は、受信した放送波と同一の周波数で再送信を行う際に、例えば、室内再送信のように部屋の窓から直接入射される放送波と再送信された放送波とが重なり合うような場合にも適用できる。
【実施例8】
【0029】
図8は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第4の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図8において、101は受信アンテナ、102は受信部、および103はダウンコンバータ(D/C)である。
【0030】
動作につき説明する。
以上説明した第1乃至第3の実施例による信号生成部は、いずれも受信した放送波に含まれるマルチパス歪を等化する機能を有していたが、本実施例(第4の実施例)は、単純に受信したRF帯のISDB−T信号を増幅しIF帯に周波数変換して出力するもので、受信信号の歪が小さい場合に使用することができる。アンテナ101と受信部102とD/C103の動作は、図5に示した第1の実施例の場合と同じである。
【実施例9】
【0031】
図9は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第5の実施例を示している。
この構成は、図3に示され、第3の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Bに使用されるものである。
図9において、101は受信アンテナ、および102は受信部である。
【0032】
動作につき説明する。
本実施例(第5の実施例)は、さらに単純に、受信したRF帯のISDB−T信号を増幅して出力するだけのものであり、図8に示した第4の実施例の場合と同様に受信信号の歪が小さい場合に使用することができる。アンテナ101と受信部102の動作は、図5に示した第1の実施例との場合と同じである。
【実施例10】
【0033】
図10は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第6の実施例を示している。
この構成は、図4に示され、第4の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Cに使用されるものである。
図10において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、107は判定部、108はIFFT部、113は分配部、109−1,109−2,・・・,109−Nは直交変調部、114−1,114−2,・・・,114−Nは可変遅延器、115−1,115−2,・・・,115−Nは複素乗算器、116−1,116−2,・・・,116は数値制御発信器(NCO)、および117は制御部である。
【0034】
動作につき説明する。
本実施例(第6の実施例)において、受信アンテナ101からIFFT部108までの動作は、図5に示した第1の実施例と同じであるのでその説明は省略する。
IFFT部108から出力された等価ベースバンドのI,Q信号は分配器113に入力される。分配器113は入力されたI,Q信号をN系統に分配して出力する。分配器113から出力された第1の系統のI,Q信号は可変遅延器114−1に入力される。可変遅延器114−1は、入力されたI,Q信号の遅延時間を制御部117から入力される制御信号に応じてクロック単位で変化させて出力する。
【0035】
可変遅延器114−1から出力されたI,Q信号は複素乗算器115−1に入力される。複素乗算器115−1においては、入力された可変遅延器114−1からのI,Q信号と数値制御発信器(NCO:Numerical Controlled Oscillator )116−1から入力されるI,Qローカル信号とを複素乗算し、入力された可変遅延器114−1からのI,Q信号に位相回転と振幅変化を与えて出力する。複素乗算器115−1から出力されたI,Q信号は直交変調器109−1に入力される。直交変調器109−1は入力された等価ベースバンドのI,Q信号を直交変調してIF信号に変換するとともにD/A変換してアナログ信号にする。
【0036】
直交変調器109−1の動作は、図5に示した第1の実施例中の直交変調器109の動作と同じである。NCO116−1は制御部117から入力される制御信号に応じて、発生する等価ベースバンドのI,Qローカル信号(複素乗算器115−1に入力するための)の振幅、周波数および位相を変化させる。以上により、分配器113から出力された第1の系統のI,Q信号の処理の説明を終わるが、第2乃至第Nの系統についてもまったく同じ処理が行われる。
ただし、可変遅延器114−1乃至114−Nの各遅延時間、およびNCO116−1乃至116−Nからそれぞれ出力されるI,Qローカル信号の振幅、周波数および位相は、制御部117から入力される制御信号によって、それぞれ異なるパターンの時間的に変化を生じるように制御される。
【実施例11】
【0037】
図11は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第7の実施例を示している。
この構成は、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図11において、118はISDB−T変調器である。
【0038】
動作につき説明する。
上述した信号生成部の第1から第6までの実施例はそれらのいずれもが放送波信号を受信して信号源とする構成であったのに対し、本実施例(第7の実施例)は、有線で伝送されてきた放送TS信号を入力して信号源とする構成である。ISDB−T変調器118は入力された放送TS信号からIF帯のISDB−T信号を生成して出力する。放送TS信号およびISDB−T変調器の構成については、非特許文献2に詳しく記載されているので参照されたい。
【実施例12】
【0039】
図12は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第8の実施例を示している。
この構成は、図4に示され、第4の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Cに使用されるものである。
図12において、108はIFFT部、109は直交変調部、113は分配部、114−1,114−2,・・・,114−Nは可変遅延器、115−1,115−2,・・・,115−Nは複素乗算器、116−1,116−2,・・・,116はNCO、117は制御部、119はISDB−T伝送路符号化部である。
【0040】
動作につき説明する。
本実施例(第8の実施例)は、図11に示した第7の実施例と同様に、有線で伝送されてきた放送TS信号を入力して信号源とする構成である。ISDB−T伝送路符号化部119は入力された放送TS信号に対して、外符号化、内符号化、階層処理、各種インターリーブ等のISDB−T伝送路符号化処理を行い、IFFT処理前の周波数領域のシンボル信号に変換して出力する。ISDB−T伝送路符号化部119から出力された周波数領域のシンボル信号はIFFT部108に入力される。
IFFT部108以降の構成は、図10に示した第6の実施例と同じであるのでその説明は省略する。
【実施例13】
【0041】
図13は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図13において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Nはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Nはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Nは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Nは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Nは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−NはBPF、および209は制御部である。
【0042】
動作につき説明する。
図13において、入力信号であるIF帯のISDB−T信号は増幅器201に入力される。増幅器201は入力されたIF信号を増幅して出力する。増幅器201から出力されたIF信号は分配器202に入力される。分配器202は入力されたIF信号をN系統に分配して出力する。分配器202から出力された第1の系統のIF信号はアナログ可変遅延器203−1に入力される。アナログ可変遅延器203−1は入力されたIF信号の遅延時間を制御部209から入力される制御信号に応じて変化させ出力する。アナログ可変遅延器はA/D変換器、D/A変換器、メモリ等によって容易に実現することができる。
【0043】
アナログ可変遅延器203−1から出力されたIF信号はアナログ乗算器204−1の被乗算入力端子に入力される。アナログ乗算器204−1はその被乗算入力端子に入力されたアナログ可変遅延器203−1からのIF信号に、電圧制御発振器(VCO:Voltage Contloled Oscillator)205−1から乗算入力端子に入力されるローカル信号を乗算して、RF帯のISDB−T信号に周波数変換して出力する。VCO205−1は制御部209から入力される制御信号に応じて、出力するローカル信号の周波数および位相を変化させる。アナログ乗算器204−1の出力端子から出力されるRF信号は帯域通過フィルタ(BPF)206−1に入力される。BPF206−1は入力されたRF信号に含まれる周波数変換時に生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF206−1から出力されたRF信号は可変利得増幅器207−1に入力される。
【0044】
可変利得増幅器207−1は入力されたRF信号のレベルを制御部209から入力される制御信号に応じて変化させるとともに、アンテナ部(図1に符号300Aで示す)に入力するのに十分な電力を得るため、電力増幅を行い出力する。可変利得増幅器207−1から出力されたRF信号はBPF208−1に入力される。BPF208−1は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。
【0045】
分配器202からから出力された第2から第Nの系統までのIF信号についても、上述した第1の系統のlF信号と同じ信号処理がなされる。ただし、可変遅延器203−1,203−2,203−3,・・・,203−Nの各遅延時間、VCO205−1,205−2,205−3,・・・,205−Nからそれぞれ出力されるローカル信号の周波数、位相、および可変利得増幅器207−1,207−2,207−3,・・・,207−Nの各増幅利得は、制御部209から出力される制御信号によって、それぞれ異なるパターンの時間的に変化を生じるように制御される。
【実施例14】
【0046】
図14は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図14において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Mはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Mはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Mは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Mは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Mは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−MはBPF、209は制御部、および210−1,210−2,210−3,・・・,210−Mは分配器である。
【0047】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)は、アンテナ部(図1に符号300Aで示す)が多くのアンテナ素子で構成されている場合、すなわち、素子数Nが大きい値をとる場合、K個のアンテナ素子を1つの単位として、アンテナ素子全体を複数のグループに分割し、それぞれのグループに対して振幅、周波数、位相、遅延時間が、各系統でそれぞれ異なるパターンの時間的に変化をする信号を供給する場合に適用される。
【0048】
アンテナ素子全体を複数のグループに分割することで、信号分配部の回路規模を小さくすることができる。本実施例(第2の実施例)において、BPF208−1,208−2,・・・,208−Mまでの構成は上述の第1の実施例(実施例13)と同じである。ただし、本実施例では分配器202以降の系統の数はMであり、MはM<Nを満たす整数で、かつM×K=Nの関係を満足するものとする。ここに、Kは1グループのアンテナ素子数で、正の整数である。BPF208−1から出力されたRF信号は分配器210−1に入力される。分配器210−1に入力されたRF信号はK系統に分配されアンテナ部300A(図1参照)に出力される。分配器202からの第2から第Mまでの系統についても同様である。
【実施例15】
【0049】
図15は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図15において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Mはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Mはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Mは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Mは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Mは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−MはBPF、209は制御部、および211はマトリクス回路である。
【0050】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)は、信号分配部の第2の実施例と同様に、K個のアンテナ素子を1つの単位として、アンテナ素子全体を複数のグループに分割し、それぞれのグループに対して振幅、周波数、位相、遅延時間が、各系統でそれぞれ異なるパターンの時間的に変化をする信号を入力する場合に適用される。
しかし、上述の第2の実施例と異なる点は、第2の実施例では異なるパターンで時間的に変化する信号系統数Mがアンテナ素子数Nに比較的近い数字で、かつN/M=Rを満たすRが整数でなければならなかったのに対し、この第3の実施例ではそのような制約は伴わない。
【0051】
図15において、BPF208−1,208−2,208−3,・・・,208−M以前の構成は図14に示した第2の実施例と同じである。BPF208−1,208−2,208−3,・・・,208−Mから出力され、振幅、周波数、位相、遅延時間がそれぞれ異なるパターンで時間的に変化するM系統のRF信号は、マトリクス回路211に入力される。マトリクス回路211は入力されたM系統のRF信号にN行M列のマトリクス演算を行い、N系統のRF信号を生成して出力する。マトリクス演算の各要素の値を変更することにより様々な電波の放射パターンを作り出すことができる。
【実施例16】
【0052】
図16は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1,4に示され、第1および第4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図16において、301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nはアンテナ素子である。
【0053】
動作につき説明する。
本実施例(第1の実施例)では、アレイアンテナを構成するアンテナ素子としてダイポール、パッチ、スロットなどよく知られたアンテナ素子を使用する。また、八木アンテナのような線状アンテナやループアンテナも適用可能である。入力されたN系統のRF帯のISDB−T信号をダイポール等のアンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nにそれぞれ入力し、電波として放射する。アンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nは、電波の波長を入としたとき、各アンテナ素子の配置間隔が入/2のものがよく用いられるが、本実施例ではこれには限定されるものではない。また、本実施例では不均等な配置間隔も使用可能である。
【実施例17】
【0054】
図17は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図17において、302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nは漏洩同軸ケーブル、および303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nは抵抗終端器である。
【0055】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)では、アレイアンテナを構成するアンテナ素子として漏洩同軸ケーブルを使用する。入力されたN系統のRF帯のISDB−T信号を漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nにそれぞれ入力する。漏洩同軸ケーブルは分布定数線路であり、ケーブルの長手方向に沿って一定間隔で作られたスロットから電波を放射する。漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nの終端には抵抗終端器303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nがそれぞれ接続され、電波として放射されなかった信号電力を吸収消費して反射を防止する。漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nの配置間隔は、電波の波長を入として入/2が適しているが、これに限定されない。また、不均等な配置間隔も可能である。
【実施例18】
【0056】
図18は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図18において、301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nはアンテナ素子、および302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nは漏洩同軸ケーブルである。
【0057】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)でも、図17に示した第2の実施例と同様にアレイアンテナを構成するアンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nを使用する。しかし、第2の実施例では漏洩同軸ケーブルの信号を入力する端子とは反対側の端子に抵抗終端器303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nを接続した(図17参照)のに対して、本実施例(第3の実施例)ではダイボールなどの別のアンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nを接続する点が異なっている。
【実施例19】
【0058】
図19は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第4の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図19において、302−1,302−2,302−3,・・・,302−Lは漏洩同軸ケーブル、304A−1,304A−2,304A−3,・・・,304A−Lはアイソレータ、および304B−1,304B−2,304B−3,・・・,304B−Lはアイソレータである。
【0059】
動作につき説明する。
本実施例(第4の実施例)は、入力されるRF信号の系統数Nに対し、電波を放射する漏洩同軸ケーブルの本数LがN/2、すなわちRF信号の系統数の半分になる。また、上述したアンテナ部の第2の実施例と第3の実施例では漏洩同紬ケーブルの一方の端子にのみRF信号を入力し、反対側の端子に第2の実施例では抵抗終端器を、第3の実施例ではダイポールなど別のアンテナ素子を接続したのに対し、本実施例(第4の実施例)では漏洩同軸ケーブルの双方の端子からRF信号を入力する点において異なっている。
【0060】
漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Lに双方の端子からRF信号を入力することで漏洩同軸ケーブル内に定在波が生じる。さらに、双方の端子から入力されるRF信号の振幅、周波数、位相、遅延時間に、漏洩同軸ケーブル毎にそれぞれ異なるパターンの時間的に変化を与えるものとすれば、漏洩同軸ケーブル内に生じる定在波のパターンが時間的に変化し、漏洩同軸ケーブルから放射される電波の放射特性も時間的に変化する。その結果、電波が放射される空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速に時間的に変化させることができる。
【0061】
また、本実施例(第4の実施例)では、漏洩同軸ケーブルの双方の端子から入力する2つのRF信号のうちの一方は、振幅、周波数、位相、遅延時間を時間的に変化させる必要はない。2つのRF信号間の相対的な振幅差、周波数差、位相差、遅延時間差が時間的に変化すれば、漏洩同軸ケーブル内に生じる定在波のパターンは時間的に変化するからである。
さらにまた、本実施例(第4の実施例)によれば、アンテナ素子である漏洩同軸ケーブルが1本、すなわちN=2であっても、電波が放射される空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速に時間的に変化させるという目的が達成されるため、漏洩同軸ケーブルの敷設費用が軽減でき、ケーブルが占有する面積も小さくて済むという効果を生じる。
【0062】
なお、本実施例(第4の実施例)により複数本の漏洩同軸ケーブルを使用してアレイアンテナを構成する場合、Nは偶数である必要がある。もしNが奇数の場合には、そのうちの1本の漏洩同軸ケーブルの一方の端子に抵抗終端器を接続して構成することになる。
【0063】
さらに詳細に説明する。
入力されたN系統のRF信号のうち、第1の系統のRF信号(左側、一番上の入力端子から入力されるRF信号)はアイソレータ304A−1に入力される。アイソレータ304A−1は入力された第1の系統のRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302−1から出力される漏洩同軸ケーブル302−1の反対の端子から入力された第2の系統のRF信号(左側、上から2番目の入力端子から入力されるRF信号)の電力を吸収する。アイソレータ304A−1から出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302−1に入力される。一方、第2の系統のRF信号はアイソレータ304B−1に入力される。アイソレータ304B−1は入力された第2の系統のRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302−1から出力される漏洩同軸ケーブル302−1の反対の端子から入力された第1の系統のRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304B−1から出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302−1に入力される。第1、第2以外の他の系統も同様の動作を行う。ここでLは整数で、L=N/2を満足する。
【実施例20】
【0064】
図20は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第5の実施例を示している。
この構成は、図2,3に示され、第2および第3の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Bに使用されるものである。
図20において、302は漏洩同軸ケーブル、304Aはアイソレータ、304Bはアイソレータ、305は方向性結合器、306は増幅器、307はBPF、308はアナログ乗算器、309はローカル発振器、310はBPF、311は可変遅延器、312はアナログ乗算器、313はBPF、314はVCO、315は可変利得増幅器、316はBPF、および317は制御部である。
【0065】
動作につき説明する。
図16乃至19に示したアンテナ部のそれぞれ第1乃至第4の実施例では入力されるRF信号の系統数は複数、すなわちN≧2であるのに対して、本実施例(第5の実施例)は入力されるRF信号は1系統のみである。
また、本実施例ではアンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302を使用するとともに、漏洩同軸ケーブル302の−方の端子にはRF信号を入力し、漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には、漏洩同軸ケーブル302から出力されたRF信号の振幅、周波数、位相、遅延時間に時間的な変化を与えた後に増幅した信号を入力することで、漏洩同軸ケーブル302内に生じる定在波のパターンを時間的に変化させることで、漏洩同軸ケーブル302から放射される電波の放射特性を時間的に変化させるように構成している。
【0066】
さらに詳細に説明する。
RF信号は入力端子(左上方に示される端子)介してアイソレータ304Aに入力される。アイソレータ304Aは入力されたRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302から出力される漏洩同軸ケーブル302の反対の端子から入力されたRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304Aから出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302に入力される。漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には方向性結合器305が接続される。方向性結合器305はアイソレ一夕304Aを介して漏洩同軸ケーブル302に入力されたRF信号、すなわち進行波成分のみを抽出してその出力端子から出力する。方向性結合器305から出力されたRF信号はアイソレ一タ304Bの出力端子に入力される。アイソレータ304Bは、方向性結合器305からその(アイソレータ304Bの)出力端子に入力されたRF信号を反射波と見なして、RF信号の電力を吸収する。
【0067】
方向性結合器305の進行波成分出力端子から出力されたRF信号は増幅器306に入力される。増幅器306は入力されたRF信号を増幅して出力する。増幅器306から出力されたRF信号はBPF307に入力される。BPF307は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。BPF307から出力されたRF信号はアナログ乗算器308の被乗算信号入力端子に入力される。アナログ乗算器308は、被乗算信号入力端子に入力されたRF信号と乗算信号入力端子に入力されたローカル信号を乗算することで、入力されたRF信号をIF帯に周波数変換して出力する。ローカル発振器309は固定周波数のローカル信号を発生させ出力する。ローカル発振器309から出力されたローカル信号はアナログ乗算器308の乗算信号入力端子に入力される。
【0068】
アナログ乗算器308から出力されたIF信号はBPF310に入力される。BPF310は、入力されたIF信号に含まれる周波数変換で生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF310から出力されたIF信号は可変遅延器311に入力される。可変遅延器311は、入力されたIF信号の遅延時間を制御郡317から入力された制御信号に応じて変化させて出力する。可変遅延器311から出力されたIF信号はアナログ乗算器312の被乗算信号入力端子に入力される。アナログ乗算器312は、被乗算信号入力端子に入力されたIF信号に乗算信号入力端子に入力されたローカル信号を乗算して、RF帯の信号に周波数変換して出力する。VCO314は制御部317から入力される制御信号に応じて、出力するローカル信号の周波数および位相を変化させる。VCO314から出力されたローカル信号はアナログ乗算器312の乗算信号入力端子に入力される。
【0069】
アナログ乗算器312から出力されたRF信号はBPF313に入力される。BPF313は入力されたRF信号に含まれ、アナログ乗算器312での周波数変換時に生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF313から出力されたRF信号は可変利得増幅器315に入力される。可変利得増幅器315は入力されたRF信号のレベルを制御部317から入力される制御信号に応じて変化させるとともに、漏洩同軸ケーブル302に入力するのに十分な電力を得るため、電力増幅を行い出力する。可変利得増幅器315から出力されたRF信号はBPF316に入力される。BPF316は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。BPF316から出力されたRF信号はアイソレ一タ304Bの入力端子に入力される。アイソレータ304Bは入力されたRF信号を進行波とみなしてそのまま出力する。アイソレータ304Bから出力されたRF信号は方向性結合器305を介して漏洩同軸ケーブル302に供給される。制御部317は可変遅延器311、VCO314、および可変利得増幅器315に制御信号を入力し、可変遅延器311の遅延量、VCO314から出力されるローカル信号の周波数、位相、および可変利得増幅器315の増幅利得をそれぞれ時間的に変化させる。
【実施例21】
【0070】
図21は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第6の実施例を示している。
この構成は、図2,3に示され、第2および第3の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Bに使用されるものである。
図21において、302は漏洩同軸ケーブル、304Aはアイソレータ、317は制御部、および318は可変インピーダンス回路である。
【0071】
動作につき説明する。
本実施例(第6の実施例)は、上述の第5の実施例と同様に、アンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302を使用するとともに、入力されるRF信号は1系統のみで構成されている。
しかし、本実施例は、上述の第5の実施例と異なり、漏洩同軸ケーブル302にRF信号を入力する端子とは反対側の端子にインピーダンスが可変の終端器を接続して意図的に反射を生じさせるとともに、終端器のインピーダンスを時間的に変化させることでケーブル内に生じる定在波のパターンを時間的に変化させ、漏洩同軸ケーブル302から放射される電波の放射特性を時間的に変化させる。
【0072】
さらに詳細に説明する。
RF信号は入力端子(左上方に示される端子)介してアイソレータ304Aに入力される。アイソレータ304Aは入力されたRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302から出力される漏洩同軸ケーブル302の反対の端子で反射され戻ってきたRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304Aから出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302に入力される。
【0073】
漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には可変インピーダンス回路318が接続されている。可変インピーダンス回路318は制御部317から入力される制御信号に応じて、その入力インピーダンスを変化させる。漏洩同軸ケーブル302から出力されるRF信号は可変インピーダンス回路318におけるインピーダンス不整合により、一部の電力が反射波となって再び漏洩同軸ケーブル302に戻る。制御部317は可変インピーダンス回路318に制御信号を入力し、可変インピーダンス回路318の入力インピーダンスを時間的に変化させる。
【実施例22】
【0074】
以上、本発明送信装置、再送信装置を、21の実施例に基づいて詳細に説明してきたが、振幅、周波数、位相、遅延時間の各信号パラメータを時間的に変化させる具体的な変化のパターンについては説明をしなかった。
これについては、時間的に変化させる変化のパターンは各種様々なものがあり、代表的なものとして正弦波的なパターンがある。ただし、送信アンテナからの電波の放射パターンの時間的変化により、空間内の任意の点においてヌルまたは低電界の状態が生じても、誤り率が悪化する時間の周期がISDB−T信号の時間インターリーブの1周期に等しいか、それより十分に短いことが必要である。
また、振幅、周波数、位相、遅延時間の各信号パラメータの変化幅が大き過ぎたり、変化の速度が早過ぎたりした場合にはISDB−T受信機の同期が外れてしまうため、時間的に変化させる信号パラメータの変化幅、変化速度はISDB−T受信機の同期が破綻しない範囲に制限する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、地下街や地下駐車場等で地上デジタル放送波の送信または再送信を行うに際し、正受信場所率を改善することができるので、特にISDB−T方式による地上デジタル放送波の送信または再送信に利用される可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明閉空間送信装置の全体構成の第1の実施例を示している。
【図2】本発明閉空間送信装置の全体構成の第2の実施例を示している。
【図3】本発明閉空間送信装置の全体構成の第3の実施例を示している。
【図4】本発明閉空間送信装置の全体構成の第4の実施例を示している。
【図5】全体構成のうちの信号生成部の第1の実施例を示している。
【図6】全体構成のうちの信号生成部の第2の実施例を示している。
【図7】全体構成のうちの信号生成部の第3の実施例を示している。
【図8】全体構成のうちの信号生成部の第4の実施例を示している。
【図9】全体構成のうちの信号生成部の第5の実施例を示している。
【図10】全体構成のうちの信号生成部の第6の実施例を示している。
【図11】全体構成のうちの信号生成部の第7の実施例を示している。
【図12】全体構成のうちの信号生成部の第8の実施例を示している。
【図13】全体構成のうちの信号分配部の第1の実施例を示している。
【図14】全体構成のうちの信号分配部の第2の実施例を示している。
【図15】全体構成のうちの信号分配部の第3の実施例を示している。
【図16】全体構成のうちのアンテナ部の第1の実施例を示している。
【図17】全体構成のうちのアンテナ部の第2の実施例を示している。
【図18】全体構成のうちのアンテナ部の第3の実施例を示している。
【図19】全体構成のうちのアンテナ部の第4の実施例を示している。
【図20】全体構成のうちのアンテナ部の第5の実施例を示している。
【図21】全体構成のうちのアンテナ部の第6の実施例を示している。
【符号の説明】
【0077】
100A,100B,100C 信号生成部
101 受信アンテナ
102 受信部
103 ダウンコンバータ(D/C)
104 直交復調部
105 FFT部
106 SP等化部
107 判定部
108 IFFT部
109,109−1,109−2,・・・,109−N 直交変調部
110 伝送路特性推定部
111 フィルタ係数生成部
112 適応フィルタ部
113 分配部、
114−1,114−2,・・・,114−N 可変遅延器
115−1,115−2,・・・,115−N 複素乗算器
116−1,116−2,・・・,116 数値制御発信器(NCO)
117 制御部
118 ISDB−T変調器
119 ISDB−T伝送路符号化部
120 分配器
200 信号分配部
201 増幅器
202 分配器
203−1,203−2,203−3,・・・,203−N アナログ可変遅延器
203−1,203−2,203−3,・・・,203−M アナログ可変遅延器
204−1,204−2,204−3,・・・,204−N アナログ乗算器
204−1,204−2,204−3,・・・,204−M アナログ乗算器
205−1,205−2,205−3,・・・,205−N 電圧制御発振器(VCO)
205−1,205−2,205−3,・・・,205−M 電圧制御発振器(VCO)
206−1,206−2,206−3,・・・,206−N 帯域通過フィルタ(BPF)
206−1,206−2,206−3,・・・,206−M 帯域通過フィルタ(BPF)
207−1,207−2,207−3,・・・,207−N 可変利得制御増幅器
207−1,207−2,207−3,・・・,207−M 可変利得制御増幅器
208−1,208−2,208−3,・・・,208−N BPF
208−1,208−2,208−3,・・・,208−M BPF
209 制御部
210−1,210−2,210−3,・・・,210−M 分配器
211 マトリクス回路
300A,300B アンテナ部
301−1,301−2,301−3,・・・,301−N アンテナ素子
302 漏洩同軸ケーブル
302−1,302−2,302−3,・・・,302−N 漏洩同軸ケーブル
302−1,302−2,302−3,・・・,302−L 漏洩同軸ケーブル
303−1,303−2,303−3,・・・,303−N 抵抗終端器
304A,304A−1,304A−2,304A−3,・・・,304A−L アイソレータ
304B,304B−1,304B−2,304B−3,・・・,304B−L アイソレータ
305 方向性結合器
306 増幅器
307 BPF
308 アナログ乗算器
309 ローカル発振器
310 BPF
311 可変遅延器
312 アナログ乗算器
313 BPF
314 VCO
315 可変利得増幅器
316 BPF
317 制御部
318 可変インピーダンス回路
400,400−1,400−2,・・・,400−N アップコンバータ(U/C)
500,500−1,500−2,・・・,500−N 電力増幅部(PA部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−T方式の地上デジタル放送波など、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)デジタル波を送信または再送信する装置に係り、特に、既存のアンテナや漏洩同軸ケーブルを送信アンテナとして地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内で電波を放射し、放射に際しての正受信場所率を改善した閉空間送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間においては、漏洩同軸ケーブルなどを送信アンテナとして使用した防災無線システムが設置されている。また、一部の地下街では、漏洩同軸ケーブルを使用したAMラジオ放送の再送信が行われている。こうしたシステムの送信装置では、一本の漏洩同軸ケーブルの一方の端子から送信信号を入力し他方の端子に終端抵抗またはアンテナを接続する構造、あるいは、信号をハイブリッド等で分配し、その分配した出力を複数本の漏洩同軸ケーブルに一方の端子から入力し、他方の端子に終端抵抗またはアンテナを接続した構造としている。
【0003】
また、閉空間への送信を特に意識した技術ではないが、下記の特許文献1には、OFDM信号を互いに異なる地点から同一チャンネルで同時に送信する複数のOFDM送信手段を有し、それら複数のOFDM送信手段の少なくとも1つの送信出力特性を制御することで、送信エリア内の任意の場所での合成電界が時間的に変化するようにし、OFDM信号の時間インターリーブの効果を利用して、受信機におけるビット誤り率を改善し、送信エリア内で受信不能となる場所を減少させる技術が記載されている。
【特許文献1】特開平9−252291号公報
【非特許文献1】高橋ほか、「漏洩同軸ケーブルを用いた地上デジタル放送波の室内伝送実験−地上デジタル放送波の再送信−」、信学技報、IE2002-101(2002-11 )
【非特許文献2】ARIB STD−B31 「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内に配置された受信アンテナは、送信アンテナである通常のアンテナや漏洩同軸ケーブルからの直接波と、天井、壁面あるいは床面等からの反射波との合成波を受信することになる。この合成波は定在波として空間内に存在し、その分布は殆ど時間的に変化しない。この定在波において直接波と反射波が逆相、かつ同レベルで合成される地点はヌルポイントと呼ばれ、極端に電界強度が小さく、信号を正しく受信することができない。
【0005】
受信アンテナがヌルポイントに存在し続ける場合、時間経過による電界変動も望めないため、OFDM信号の時間インターリーブの効果も期待できず、常時受信不可能となる。特に、日本の地上デジタル放送の放送方式であるISDB−T方式の特徴の1つである携帯受信端末による1セグメントの部分受信を、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間で行う場合、反射波の遅延時間が短く、マルチパスによる周波数リップルの周期が長いため、OFDM信号の周波数ダイバーシティ効果も小さく、正受信場所率が低下する。また、このようなヌルポイントは閉空間内に複数生じており、正受信場所率を著しく低下させる原因となっている。これらの現象は、非特許文献1に記載されているため、参考とされたい。
【0006】
一方、こうした問題を解決する方法の1つとして、特許文献1に記載さている方法を導入することが考えられる。しかし、特許文献1に記載の方法は、主として地上デジタル放送の単一周波数中継(SFN:Singl Frequency Network )において、希望波とSFNの干渉波のD/Uがほぼ0dBとなる地域での受信特性の改善を意図しており、基本的に、空間的に離れた場所に複数の送信手段を設けることが前提となっている。しかし、この方法を電波反射体で囲まれた閉空間に適用する場合、複数の送信手段、特に複数のアンテナを設置するために複数の場所やエリアを確保する必要があり、設備コストが大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間においてISDB−T方式の地上デジタル放送波など、OFDMデジタル波を受信するにあたり、上述した問題を伴うことなく正受信場所率を改善し、閉空間全体で安定な受信を可能にする閉空間送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明閉空間送信装置は、漏洩同軸ケーブル、入力信号を前記漏洩同軸ケーブルの一方の端子に入力する手段、前記漏洩同軸ケーブルの他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および該時間的に変化させる手段により得られた信号を前記漏洩同軸ケーブルの前記他方の端子に入力する手段を具えて構成され、前記漏洩同軸ケーブルから電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地下街や地下駐車場など電波反射体で囲まれた閉空間内へデジタル放送波を放射する送信または再送信装置において、送信アンテナから放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させることにより、璧や床などでの電波の反射によって空間内に生成されるヌルポイントまたは低電界領域を高速に時間的に変化させ、加えてISDB−T信号がもつ時間インターリーブの効果を利用することで、閉空間内での正受信場所率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、複数のアンテナ素子で構成したアレイアンテナ、複数の漏洩同軸ケーブルをアンテナ素子として構成したアレイアンテナ、または単一の漏洩同軸ケーブルを使用して電波反射体で囲まれた閉空間内でOFDMデジタル波を放射する送信装置(再送信装置を含む)において、アレイアンテナ、複数の漏洩同軸ケーブルをアンテナ素子として構成したアレイアンテナ、または単一の漏洩同軸ケーブルの放射特性または放射パターンを時間的に変化させることにより、空間内に生成されるヌルポイントや低電界領域を高速に時間的に変化させ、加えて、送信波がISDB−T信号の場合には、ISDB−T信号が有する時間インターリーブの効果を利用して正受信場所率の改善を図るように構成する。
【0011】
以下では、本発明の実施例として、日本の地上デジタル放送の放送方式であるISDB−T方式に準拠した放送信号を室内や地下街など閉空間に放射する送信装置ついて具体的に説明する。
また、以下の説明においては、信号源として受信した放送波(無線で送られてきた信号)を再送信する場合は再送信装置、ケーブルや光ファイバなど有線を使って配信された放送TS(Transport Stream)を使用する場合は送信装置とそれぞれ呼ぶ。本発明は、これを再送信装置および送信装置のいずれをも含むものである。
以下に添付図面を参照し、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第1の実施例を示している。
図1において、100Aは信号生成部、200は信号分配部、および300Aはアンテナ部である。
動作につき説明する。
信号生成部100Aで生成された中間周波数帯(IF帯)のISDB−T信号は、信号分配部200に入力される。信号分配部200は入力されたIF帯のISDB−T信号をN系統に分配し、高周波(RF)帯に周波数変換し、さらに増幅して出力する。このとき、N系統のRF出力信号は、信号分配部200においてRF信号の信号パラメータが各系統毎に独立に時間的に変化させられている。時間的に変化させられている信号パラメータは周波数、位相、振幅、遅延時間のいずれか、またはそれらの組み合わせである。信号分配部200から出力されたN系統のRF信号はアンテナ部300Aに入力される。アンテナ部300Aは入力されたN系統のRF信号を電波として放射する。このとき、アンテナ部300Aは入力されるRF信号の信号パラメータが時間的に変化しているため、電波を放射する空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域は高速度で時間的に変化する。
【実施例2】
【0013】
図2は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第2の実施例を示している。
図2において、100Aは信号生成部、300Bはアンテナ部、400はアップコンバータ(U/C)、および500は電力増幅部(PA部)である。
動作につき説明する。
信号生成部100AはIF帯のISDB−T信号を生成し出力する。信号生成部100Aから出力されたIF信号はアップコンバータ(U/C)400に入力される。U/C400においては、入力されたIF信号をRF帯の信号に周波数変換した後、出力する。U/C400の出力信号であるRF信号は電力増幅部(PA部)500に入力される。PA部500は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500から出力されたRF信号はアンテナ部300Bに入力される。アンテナ部300Bは入力されたRF信号を電波として放射する。また、アンテナ部300Bは電波の放射特性を時間的に変化させて、空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速度で時間的に変化させる。
【実施例3】
【0014】
図3は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第3の実施例を示している。
図3において、100Bは信号生成部、300Bはアンテナ部、および500はPA部である。
動作につき説明する。
信号生成部100BはRF帯のISDB−T信号を生成し出力する。信号生成部100Bから出力されたRF信号はPA部500に入力される。PA部500は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500から出力されたRF信号はアンテナ部300Bに入力される。アンテナ部300Bは入力されたRF信号を電波として放射する。また、アンテナ部300Bは電波の放射特性を時間的に変化させて、空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速度で時間的に変化させる。
【実施例4】
【0015】
図4は、本発明閉空間送信装置の全体構成の第4の実施例を示している。
図4において、100Cは信号生成部、300Aはアンテナ部、400−1,400−2,・・・,400−NはU/C、および500−1,500−2,・・・,500−NはPA部である。
動作につき説明する。
信号生成部100CはIF帯のISDB−T信号(IF信号)をN系統生成して出力する。このとき、信号生成部100Cは出力するIF信号の信号パラメータを各系統で独立に時間的に変化させる。時間的に変化させる信号パラメータとしては周波数、位相、振幅、遅延時間のいずれかまたはそれらの組み合わせである。信号生成部100Cから出力された第1の系統のIF信号はU/C400−1に入力される。U/C400−1は入力されたIF信号をRF帯の信号に周波数変換した後、出力する。U/C400−1から出力された第1の系統のRF信号はPA部500−1に入力される。PA部500−1は入力されたRF信号を電力増幅して出力する。PA部500−1から出力されたRF信号はアンテナ部300Aに入力される。
【0016】
以上は、第4の実施例に関し、信号生成部100Cから出力された第1の系統について信号の処理を説明したが、第2乃至第Nの系統についても同様の処理が行われ、得られた第2乃至第Nの系統のRF信号がそれぞれアンテナ部300Aに入力される。アンテナ部300Aは入力されたN系統のRF信号を電波として放射する。アンテナ部300Aに入力されるRF信号の信号パラメータが時間的に変化するため、電波を放射する空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域は高速度で時間的に変化する。
【実施例5】
【0017】
図5は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図5において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、107は判定部、108はIFFT部、および109は直交変調部である。
【0018】
動作につき説明する。
図5において、アンテナ101はISDB−T方式の地上デジタル放送波を受信し、RF帯の受信信号を出力する。アンテナ101から出力された受信信号は受信部102に入力される。受信部102は入力されたRF信号にフィルタ処理を行い、不要な帯域外成分を除去するとともに、後段の信号処理に適したレベルまで信号を増幅する。さらに出力するRF信号のレベルが一定になるように自動利得制御(AGC制御)を行う。受信部102から出力されたRF信号はダウンコンバータ(D/C)103に入力される。D/C103においては、入力されたRF信号をIF帯の信号に周波数変換して出力する。周波数変換はIF信号の周波数に応じて、1回で、もしくは2回に分けて行う。また、周波数変換に伴って生じるイメージ成分の除去も行う。D/C103から出力されたIF信号は直交復調部104に入力される。
【0019】
直交復調部104は入力されたIF信号を直交復調し、等価ベースバンドのI,Q信号に復調するとともにA/D変換してデジタル信号にする。また、直交復調の際に生じるイメージ成分の除去も行う。直交復調部104の回路構成としては、A/D変換をIF信号に対して行い直交復調をデジタル処理で行う場合と、A/D変換を直交復調後のI,Q信号に対して行う場合の2通りが考えられる。さらに、直交復調部104は自動周波数制御(AFC)機能を有し、出力するI,Q信号の周波数ずれを補正するとともに、直交復調に使用した周波数ずれの補正が加えられたローカル信号を直交変調部109に出力する。また、直交復調部104はISDB−T信号の同期再生を行い、FFTクロック、シンボル同期、FFT窓タイミング、フレーム同期など後段の処理で必要となる各種タイミング信号を生成し、それらを必要とする各部に出力する。直交復調部104から出力されたデジタル信号のI,Q信号はFFT部105に入力される。FFT部105は入力されたI,Q信号の有効シンボル期間を抽出して高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理を行い、時間領域の波形信号を周波数領域のシンボル信号に変換する。
【0020】
FFT部105から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号はSP等化部106に入力される。SP等化部106は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号の中からSP(Scattered Pilot )を抽出して伝送路特性を算出し、算出した伝送路特性で入力されたI,Qシンボル信号を複素除算することで等化を行い出力する。SP等化部106から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号は判定部107に入力される。判定部107は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号に対して硬判定を行い、雑音成分を除去して出力する。周波数領域の各シンボルの変調方式に関する情報は、周波数領域のI,Qシンボル信号からTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Contorol)を抽出して復調することにより得られる。
【0021】
判定部107から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号はIFFT部108に入力される.IFFT部108は入力された周波数領域のI,Qシンボル信号に対して逆高速フーリエ変換(Invers Fast Fourier Transform )処理を行い、時間領域のI,Q信号に変換した後、ガードインターバルを付加して出力する。IFFT部108から出力されたI,Q信号は直交変調部109に入力される。直交変調部109は入力された等価ベースバンドのI,Q信号を直交変調してIF信号に変換するとともに、D/A変換してアナログ信号にする。また、直交変調の際に生じるイメージ成分の除去も行う。直交変調部109の回路構成としては、D/A変換をI,Q信号に対して行い直交変調をアナログ回路で行う場合と、D/A変換を直交変調後のIF信号に対して行う場合の2通りがある。さらにSFN再送信を行う場合には、直交復調器104から出力されるローカル信号を使用して直交変調を行う。直交変調部109から出力されたIF信号は信号生成部(図1,2に符号100Aで示される)の出力信号になる。
【実施例6】
【0022】
図6は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図6において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、108はIFFT部、および109は直交変調部である。
【0023】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)は、図5に示した第1の実施例中の判定部107を省略し、構成を簡素化したものである。すなわち、本実施例では、受信した放送波に対して周波数領域のI,Qシンボル信号に対する硬判定を行わない(従って、雑音成分は除去されない)で、等化処理のみを行うようにしている。その他は図6に示した第1の実施例との場合と同じである。
【実施例7】
【0024】
図7は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図7において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、109は直交変調部、110は伝送路特性推定部、111はフィルタ係数生成部、112は適応フィルタ部、および120は分配器である。
【0025】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)は、図5に示した第1の実施例において、FFT処理後の周波数領域で行っていた等化処理をFFT処理前の時間領域で行うようにしたもので、装置の遅延時間を短縮化できる反面、硬判定ができないため雑音成分は除去されない。
【0026】
図7において、直交復調部104までの動作は図5,6に示した信号生成部の第1,2の実施例と同じである。直交復調部104から出力された等価ベースバンドのI,Q信号は分配器120に入力される。分配器1120は入力されたI,Q信号をそれぞれ2分配して出力する。2分配されたI,Q信号の一方はFFT部105に、他方は適応フィルタ部112にそれぞれ入力される。FFT部105は入力されたI,Q信号の有効シンボル期間を抽出してFFT処理を行い、時間領域の波形信号を周波数領域のシンボル信号に変換して出力する。FFT部105から出力された周波数領域のI,Qシンボル信号は伝送路特性推定部110に入力される。
【0027】
伝送路特性推定部110は、入力された周波数領域のI,Qシンボル信号からSPを抽出して伝送路の周波数特性を算出し出力する。伝送路特性推定部110から出力された伝送路の周波数特性データはフィルタ係数生成部111に入力される。フィルタ係数生成部111は、まず、入力された伝送路の周波数特性データをもとに適応フィルタ部112中のトランスバーサルフィルタで実現すべき周波数特性を算出する。次に、算出した周波数特性をIFFT処理してインパルス応答に変換し、さらに、得られたインパルス応答に窓処理を行って有限タップ長の複素数のフィルタ係数を生成し出力する。また、フィルタ係数生成部111で生成するタップ係数は、適応フィルタ部112の具体的な構成法によって異なる。フィルタ係数生成部111から出力されたデジタルフィルタのタップ係数は適応フィルタ部112に入力される。
【0028】
一方、適応フィルタ部112はフィルタ係数生成部111から入力されたタップ係数を、内部のデジタルフィルタの係数レジスタに反映し、分配器120から入力されたI,Q信号に複素数の畳み込み演算を施して伝送路の等化を行い、その結果を出力する。適応フィルタ部112の構成法としては、様々な形式が提案されており、FIR(Finite Impulse Response )タイプやIIR(Infinite Impulse Response )タイプ、さらに、FIRとIIRとを組み合わせたタイプなどがよく知られている。適応フィルタ部112から出力された等化処理済みのI,Q信号は直交変調部109に入力される。なお、直交変調部109の動作は、
図5,6に示した信号生成部の第1,2の実施例と同じである。
以上説明した信号生成部の第3の実施例は、受信した放送波と同一の周波数で再送信を行う際に、例えば、室内再送信のように部屋の窓から直接入射される放送波と再送信された放送波とが重なり合うような場合にも適用できる。
【実施例8】
【0029】
図8は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第4の実施例を示している。
この構成も、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図8において、101は受信アンテナ、102は受信部、および103はダウンコンバータ(D/C)である。
【0030】
動作につき説明する。
以上説明した第1乃至第3の実施例による信号生成部は、いずれも受信した放送波に含まれるマルチパス歪を等化する機能を有していたが、本実施例(第4の実施例)は、単純に受信したRF帯のISDB−T信号を増幅しIF帯に周波数変換して出力するもので、受信信号の歪が小さい場合に使用することができる。アンテナ101と受信部102とD/C103の動作は、図5に示した第1の実施例の場合と同じである。
【実施例9】
【0031】
図9は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第5の実施例を示している。
この構成は、図3に示され、第3の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Bに使用されるものである。
図9において、101は受信アンテナ、および102は受信部である。
【0032】
動作につき説明する。
本実施例(第5の実施例)は、さらに単純に、受信したRF帯のISDB−T信号を増幅して出力するだけのものであり、図8に示した第4の実施例の場合と同様に受信信号の歪が小さい場合に使用することができる。アンテナ101と受信部102の動作は、図5に示した第1の実施例との場合と同じである。
【実施例10】
【0033】
図10は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第6の実施例を示している。
この構成は、図4に示され、第4の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Cに使用されるものである。
図10において、101は受信アンテナ、102は受信部、103はダウンコンバータ(D/C)、104は直交復調部、105はFFT部、106はSP等化部、107は判定部、108はIFFT部、113は分配部、109−1,109−2,・・・,109−Nは直交変調部、114−1,114−2,・・・,114−Nは可変遅延器、115−1,115−2,・・・,115−Nは複素乗算器、116−1,116−2,・・・,116は数値制御発信器(NCO)、および117は制御部である。
【0034】
動作につき説明する。
本実施例(第6の実施例)において、受信アンテナ101からIFFT部108までの動作は、図5に示した第1の実施例と同じであるのでその説明は省略する。
IFFT部108から出力された等価ベースバンドのI,Q信号は分配器113に入力される。分配器113は入力されたI,Q信号をN系統に分配して出力する。分配器113から出力された第1の系統のI,Q信号は可変遅延器114−1に入力される。可変遅延器114−1は、入力されたI,Q信号の遅延時間を制御部117から入力される制御信号に応じてクロック単位で変化させて出力する。
【0035】
可変遅延器114−1から出力されたI,Q信号は複素乗算器115−1に入力される。複素乗算器115−1においては、入力された可変遅延器114−1からのI,Q信号と数値制御発信器(NCO:Numerical Controlled Oscillator )116−1から入力されるI,Qローカル信号とを複素乗算し、入力された可変遅延器114−1からのI,Q信号に位相回転と振幅変化を与えて出力する。複素乗算器115−1から出力されたI,Q信号は直交変調器109−1に入力される。直交変調器109−1は入力された等価ベースバンドのI,Q信号を直交変調してIF信号に変換するとともにD/A変換してアナログ信号にする。
【0036】
直交変調器109−1の動作は、図5に示した第1の実施例中の直交変調器109の動作と同じである。NCO116−1は制御部117から入力される制御信号に応じて、発生する等価ベースバンドのI,Qローカル信号(複素乗算器115−1に入力するための)の振幅、周波数および位相を変化させる。以上により、分配器113から出力された第1の系統のI,Q信号の処理の説明を終わるが、第2乃至第Nの系統についてもまったく同じ処理が行われる。
ただし、可変遅延器114−1乃至114−Nの各遅延時間、およびNCO116−1乃至116−Nからそれぞれ出力されるI,Qローカル信号の振幅、周波数および位相は、制御部117から入力される制御信号によって、それぞれ異なるパターンの時間的に変化を生じるように制御される。
【実施例11】
【0037】
図11は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第7の実施例を示している。
この構成は、図1,2に示され、それぞれ第1および第2の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Aに使用されるものである。
図11において、118はISDB−T変調器である。
【0038】
動作につき説明する。
上述した信号生成部の第1から第6までの実施例はそれらのいずれもが放送波信号を受信して信号源とする構成であったのに対し、本実施例(第7の実施例)は、有線で伝送されてきた放送TS信号を入力して信号源とする構成である。ISDB−T変調器118は入力された放送TS信号からIF帯のISDB−T信号を生成して出力する。放送TS信号およびISDB−T変調器の構成については、非特許文献2に詳しく記載されているので参照されたい。
【実施例12】
【0039】
図12は、上述した全体構成のうちの信号生成部の第8の実施例を示している。
この構成は、図4に示され、第4の実施例として説明した全体構成中の信号生成部100Cに使用されるものである。
図12において、108はIFFT部、109は直交変調部、113は分配部、114−1,114−2,・・・,114−Nは可変遅延器、115−1,115−2,・・・,115−Nは複素乗算器、116−1,116−2,・・・,116はNCO、117は制御部、119はISDB−T伝送路符号化部である。
【0040】
動作につき説明する。
本実施例(第8の実施例)は、図11に示した第7の実施例と同様に、有線で伝送されてきた放送TS信号を入力して信号源とする構成である。ISDB−T伝送路符号化部119は入力された放送TS信号に対して、外符号化、内符号化、階層処理、各種インターリーブ等のISDB−T伝送路符号化処理を行い、IFFT処理前の周波数領域のシンボル信号に変換して出力する。ISDB−T伝送路符号化部119から出力された周波数領域のシンボル信号はIFFT部108に入力される。
IFFT部108以降の構成は、図10に示した第6の実施例と同じであるのでその説明は省略する。
【実施例13】
【0041】
図13は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図13において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Nはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Nはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Nは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Nは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Nは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−NはBPF、および209は制御部である。
【0042】
動作につき説明する。
図13において、入力信号であるIF帯のISDB−T信号は増幅器201に入力される。増幅器201は入力されたIF信号を増幅して出力する。増幅器201から出力されたIF信号は分配器202に入力される。分配器202は入力されたIF信号をN系統に分配して出力する。分配器202から出力された第1の系統のIF信号はアナログ可変遅延器203−1に入力される。アナログ可変遅延器203−1は入力されたIF信号の遅延時間を制御部209から入力される制御信号に応じて変化させ出力する。アナログ可変遅延器はA/D変換器、D/A変換器、メモリ等によって容易に実現することができる。
【0043】
アナログ可変遅延器203−1から出力されたIF信号はアナログ乗算器204−1の被乗算入力端子に入力される。アナログ乗算器204−1はその被乗算入力端子に入力されたアナログ可変遅延器203−1からのIF信号に、電圧制御発振器(VCO:Voltage Contloled Oscillator)205−1から乗算入力端子に入力されるローカル信号を乗算して、RF帯のISDB−T信号に周波数変換して出力する。VCO205−1は制御部209から入力される制御信号に応じて、出力するローカル信号の周波数および位相を変化させる。アナログ乗算器204−1の出力端子から出力されるRF信号は帯域通過フィルタ(BPF)206−1に入力される。BPF206−1は入力されたRF信号に含まれる周波数変換時に生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF206−1から出力されたRF信号は可変利得増幅器207−1に入力される。
【0044】
可変利得増幅器207−1は入力されたRF信号のレベルを制御部209から入力される制御信号に応じて変化させるとともに、アンテナ部(図1に符号300Aで示す)に入力するのに十分な電力を得るため、電力増幅を行い出力する。可変利得増幅器207−1から出力されたRF信号はBPF208−1に入力される。BPF208−1は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。
【0045】
分配器202からから出力された第2から第Nの系統までのIF信号についても、上述した第1の系統のlF信号と同じ信号処理がなされる。ただし、可変遅延器203−1,203−2,203−3,・・・,203−Nの各遅延時間、VCO205−1,205−2,205−3,・・・,205−Nからそれぞれ出力されるローカル信号の周波数、位相、および可変利得増幅器207−1,207−2,207−3,・・・,207−Nの各増幅利得は、制御部209から出力される制御信号によって、それぞれ異なるパターンの時間的に変化を生じるように制御される。
【実施例14】
【0046】
図14は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図14において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Mはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Mはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Mは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Mは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Mは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−MはBPF、209は制御部、および210−1,210−2,210−3,・・・,210−Mは分配器である。
【0047】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)は、アンテナ部(図1に符号300Aで示す)が多くのアンテナ素子で構成されている場合、すなわち、素子数Nが大きい値をとる場合、K個のアンテナ素子を1つの単位として、アンテナ素子全体を複数のグループに分割し、それぞれのグループに対して振幅、周波数、位相、遅延時間が、各系統でそれぞれ異なるパターンの時間的に変化をする信号を供給する場合に適用される。
【0048】
アンテナ素子全体を複数のグループに分割することで、信号分配部の回路規模を小さくすることができる。本実施例(第2の実施例)において、BPF208−1,208−2,・・・,208−Mまでの構成は上述の第1の実施例(実施例13)と同じである。ただし、本実施例では分配器202以降の系統の数はMであり、MはM<Nを満たす整数で、かつM×K=Nの関係を満足するものとする。ここに、Kは1グループのアンテナ素子数で、正の整数である。BPF208−1から出力されたRF信号は分配器210−1に入力される。分配器210−1に入力されたRF信号はK系統に分配されアンテナ部300A(図1参照)に出力される。分配器202からの第2から第Mまでの系統についても同様である。
【実施例15】
【0049】
図15は、上述した全体構成のうちの信号分配部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1に示され、第1の実施例として説明した全体構成中の信号分配部200に使用されるものである。
図15において、201は増幅器、202は分配器、203−1,203−2,203−3,・・・,203−Mはアナログ可変遅延器、204−1,204−2,204−3,・・・,204−Mはアナログ乗算器、205−1,205−2,205−3,・・・,205−Mは電圧制御発振器(VCO)、206−1,206−2,206−3,・・・,206−Mは帯域通過フィルタ(BPF)、207−1,207−2,207−3,・・・,207−Mは可変利得制御増幅器、208−1,208−2,208−3,・・・,208−MはBPF、209は制御部、および211はマトリクス回路である。
【0050】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)は、信号分配部の第2の実施例と同様に、K個のアンテナ素子を1つの単位として、アンテナ素子全体を複数のグループに分割し、それぞれのグループに対して振幅、周波数、位相、遅延時間が、各系統でそれぞれ異なるパターンの時間的に変化をする信号を入力する場合に適用される。
しかし、上述の第2の実施例と異なる点は、第2の実施例では異なるパターンで時間的に変化する信号系統数Mがアンテナ素子数Nに比較的近い数字で、かつN/M=Rを満たすRが整数でなければならなかったのに対し、この第3の実施例ではそのような制約は伴わない。
【0051】
図15において、BPF208−1,208−2,208−3,・・・,208−M以前の構成は図14に示した第2の実施例と同じである。BPF208−1,208−2,208−3,・・・,208−Mから出力され、振幅、周波数、位相、遅延時間がそれぞれ異なるパターンで時間的に変化するM系統のRF信号は、マトリクス回路211に入力される。マトリクス回路211は入力されたM系統のRF信号にN行M列のマトリクス演算を行い、N系統のRF信号を生成して出力する。マトリクス演算の各要素の値を変更することにより様々な電波の放射パターンを作り出すことができる。
【実施例16】
【0052】
図16は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第1の実施例を示している。
この構成は、図1,4に示され、第1および第4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図16において、301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nはアンテナ素子である。
【0053】
動作につき説明する。
本実施例(第1の実施例)では、アレイアンテナを構成するアンテナ素子としてダイポール、パッチ、スロットなどよく知られたアンテナ素子を使用する。また、八木アンテナのような線状アンテナやループアンテナも適用可能である。入力されたN系統のRF帯のISDB−T信号をダイポール等のアンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nにそれぞれ入力し、電波として放射する。アンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nは、電波の波長を入としたとき、各アンテナ素子の配置間隔が入/2のものがよく用いられるが、本実施例ではこれには限定されるものではない。また、本実施例では不均等な配置間隔も使用可能である。
【実施例17】
【0054】
図17は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第2の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図17において、302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nは漏洩同軸ケーブル、および303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nは抵抗終端器である。
【0055】
動作につき説明する。
本実施例(第2の実施例)では、アレイアンテナを構成するアンテナ素子として漏洩同軸ケーブルを使用する。入力されたN系統のRF帯のISDB−T信号を漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nにそれぞれ入力する。漏洩同軸ケーブルは分布定数線路であり、ケーブルの長手方向に沿って一定間隔で作られたスロットから電波を放射する。漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nの終端には抵抗終端器303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nがそれぞれ接続され、電波として放射されなかった信号電力を吸収消費して反射を防止する。漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nの配置間隔は、電波の波長を入として入/2が適しているが、これに限定されない。また、不均等な配置間隔も可能である。
【実施例18】
【0056】
図18は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第3の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図18において、301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nはアンテナ素子、および302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nは漏洩同軸ケーブルである。
【0057】
動作につき説明する。
本実施例(第3の実施例)でも、図17に示した第2の実施例と同様にアレイアンテナを構成するアンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Nを使用する。しかし、第2の実施例では漏洩同軸ケーブルの信号を入力する端子とは反対側の端子に抵抗終端器303−1,303−2,303−3,・・・,303−Nを接続した(図17参照)のに対して、本実施例(第3の実施例)ではダイボールなどの別のアンテナ素子301−1,301−2,301−3,・・・,301−Nを接続する点が異なっている。
【実施例19】
【0058】
図19は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第4の実施例を示している。
この構成も、図1,4に示され、第1および4の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Aに使用されるものである。
図19において、302−1,302−2,302−3,・・・,302−Lは漏洩同軸ケーブル、304A−1,304A−2,304A−3,・・・,304A−Lはアイソレータ、および304B−1,304B−2,304B−3,・・・,304B−Lはアイソレータである。
【0059】
動作につき説明する。
本実施例(第4の実施例)は、入力されるRF信号の系統数Nに対し、電波を放射する漏洩同軸ケーブルの本数LがN/2、すなわちRF信号の系統数の半分になる。また、上述したアンテナ部の第2の実施例と第3の実施例では漏洩同紬ケーブルの一方の端子にのみRF信号を入力し、反対側の端子に第2の実施例では抵抗終端器を、第3の実施例ではダイポールなど別のアンテナ素子を接続したのに対し、本実施例(第4の実施例)では漏洩同軸ケーブルの双方の端子からRF信号を入力する点において異なっている。
【0060】
漏洩同軸ケーブル302−1,302−2,302−3,・・・,302−Lに双方の端子からRF信号を入力することで漏洩同軸ケーブル内に定在波が生じる。さらに、双方の端子から入力されるRF信号の振幅、周波数、位相、遅延時間に、漏洩同軸ケーブル毎にそれぞれ異なるパターンの時間的に変化を与えるものとすれば、漏洩同軸ケーブル内に生じる定在波のパターンが時間的に変化し、漏洩同軸ケーブルから放射される電波の放射特性も時間的に変化する。その結果、電波が放射される空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速に時間的に変化させることができる。
【0061】
また、本実施例(第4の実施例)では、漏洩同軸ケーブルの双方の端子から入力する2つのRF信号のうちの一方は、振幅、周波数、位相、遅延時間を時間的に変化させる必要はない。2つのRF信号間の相対的な振幅差、周波数差、位相差、遅延時間差が時間的に変化すれば、漏洩同軸ケーブル内に生じる定在波のパターンは時間的に変化するからである。
さらにまた、本実施例(第4の実施例)によれば、アンテナ素子である漏洩同軸ケーブルが1本、すなわちN=2であっても、電波が放射される空間内に生成されるヌルポイントもしくは低電界領域を高速に時間的に変化させるという目的が達成されるため、漏洩同軸ケーブルの敷設費用が軽減でき、ケーブルが占有する面積も小さくて済むという効果を生じる。
【0062】
なお、本実施例(第4の実施例)により複数本の漏洩同軸ケーブルを使用してアレイアンテナを構成する場合、Nは偶数である必要がある。もしNが奇数の場合には、そのうちの1本の漏洩同軸ケーブルの一方の端子に抵抗終端器を接続して構成することになる。
【0063】
さらに詳細に説明する。
入力されたN系統のRF信号のうち、第1の系統のRF信号(左側、一番上の入力端子から入力されるRF信号)はアイソレータ304A−1に入力される。アイソレータ304A−1は入力された第1の系統のRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302−1から出力される漏洩同軸ケーブル302−1の反対の端子から入力された第2の系統のRF信号(左側、上から2番目の入力端子から入力されるRF信号)の電力を吸収する。アイソレータ304A−1から出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302−1に入力される。一方、第2の系統のRF信号はアイソレータ304B−1に入力される。アイソレータ304B−1は入力された第2の系統のRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302−1から出力される漏洩同軸ケーブル302−1の反対の端子から入力された第1の系統のRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304B−1から出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302−1に入力される。第1、第2以外の他の系統も同様の動作を行う。ここでLは整数で、L=N/2を満足する。
【実施例20】
【0064】
図20は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第5の実施例を示している。
この構成は、図2,3に示され、第2および第3の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Bに使用されるものである。
図20において、302は漏洩同軸ケーブル、304Aはアイソレータ、304Bはアイソレータ、305は方向性結合器、306は増幅器、307はBPF、308はアナログ乗算器、309はローカル発振器、310はBPF、311は可変遅延器、312はアナログ乗算器、313はBPF、314はVCO、315は可変利得増幅器、316はBPF、および317は制御部である。
【0065】
動作につき説明する。
図16乃至19に示したアンテナ部のそれぞれ第1乃至第4の実施例では入力されるRF信号の系統数は複数、すなわちN≧2であるのに対して、本実施例(第5の実施例)は入力されるRF信号は1系統のみである。
また、本実施例ではアンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302を使用するとともに、漏洩同軸ケーブル302の−方の端子にはRF信号を入力し、漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には、漏洩同軸ケーブル302から出力されたRF信号の振幅、周波数、位相、遅延時間に時間的な変化を与えた後に増幅した信号を入力することで、漏洩同軸ケーブル302内に生じる定在波のパターンを時間的に変化させることで、漏洩同軸ケーブル302から放射される電波の放射特性を時間的に変化させるように構成している。
【0066】
さらに詳細に説明する。
RF信号は入力端子(左上方に示される端子)介してアイソレータ304Aに入力される。アイソレータ304Aは入力されたRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302から出力される漏洩同軸ケーブル302の反対の端子から入力されたRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304Aから出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302に入力される。漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には方向性結合器305が接続される。方向性結合器305はアイソレ一夕304Aを介して漏洩同軸ケーブル302に入力されたRF信号、すなわち進行波成分のみを抽出してその出力端子から出力する。方向性結合器305から出力されたRF信号はアイソレ一タ304Bの出力端子に入力される。アイソレータ304Bは、方向性結合器305からその(アイソレータ304Bの)出力端子に入力されたRF信号を反射波と見なして、RF信号の電力を吸収する。
【0067】
方向性結合器305の進行波成分出力端子から出力されたRF信号は増幅器306に入力される。増幅器306は入力されたRF信号を増幅して出力する。増幅器306から出力されたRF信号はBPF307に入力される。BPF307は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。BPF307から出力されたRF信号はアナログ乗算器308の被乗算信号入力端子に入力される。アナログ乗算器308は、被乗算信号入力端子に入力されたRF信号と乗算信号入力端子に入力されたローカル信号を乗算することで、入力されたRF信号をIF帯に周波数変換して出力する。ローカル発振器309は固定周波数のローカル信号を発生させ出力する。ローカル発振器309から出力されたローカル信号はアナログ乗算器308の乗算信号入力端子に入力される。
【0068】
アナログ乗算器308から出力されたIF信号はBPF310に入力される。BPF310は、入力されたIF信号に含まれる周波数変換で生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF310から出力されたIF信号は可変遅延器311に入力される。可変遅延器311は、入力されたIF信号の遅延時間を制御郡317から入力された制御信号に応じて変化させて出力する。可変遅延器311から出力されたIF信号はアナログ乗算器312の被乗算信号入力端子に入力される。アナログ乗算器312は、被乗算信号入力端子に入力されたIF信号に乗算信号入力端子に入力されたローカル信号を乗算して、RF帯の信号に周波数変換して出力する。VCO314は制御部317から入力される制御信号に応じて、出力するローカル信号の周波数および位相を変化させる。VCO314から出力されたローカル信号はアナログ乗算器312の乗算信号入力端子に入力される。
【0069】
アナログ乗算器312から出力されたRF信号はBPF313に入力される。BPF313は入力されたRF信号に含まれ、アナログ乗算器312での周波数変換時に生じたイメージ成分を除去して出力する。BPF313から出力されたRF信号は可変利得増幅器315に入力される。可変利得増幅器315は入力されたRF信号のレベルを制御部317から入力される制御信号に応じて変化させるとともに、漏洩同軸ケーブル302に入力するのに十分な電力を得るため、電力増幅を行い出力する。可変利得増幅器315から出力されたRF信号はBPF316に入力される。BPF316は入力されたRF信号に含まれる不要な帯域外成分を除去して出力する。BPF316から出力されたRF信号はアイソレ一タ304Bの入力端子に入力される。アイソレータ304Bは入力されたRF信号を進行波とみなしてそのまま出力する。アイソレータ304Bから出力されたRF信号は方向性結合器305を介して漏洩同軸ケーブル302に供給される。制御部317は可変遅延器311、VCO314、および可変利得増幅器315に制御信号を入力し、可変遅延器311の遅延量、VCO314から出力されるローカル信号の周波数、位相、および可変利得増幅器315の増幅利得をそれぞれ時間的に変化させる。
【実施例21】
【0070】
図21は、上述した全体構成のうちのアンテナ部の第6の実施例を示している。
この構成は、図2,3に示され、第2および第3の実施例として説明した全体構成中のアンテナ部300Bに使用されるものである。
図21において、302は漏洩同軸ケーブル、304Aはアイソレータ、317は制御部、および318は可変インピーダンス回路である。
【0071】
動作につき説明する。
本実施例(第6の実施例)は、上述の第5の実施例と同様に、アンテナ素子として漏洩同軸ケーブル302を使用するとともに、入力されるRF信号は1系統のみで構成されている。
しかし、本実施例は、上述の第5の実施例と異なり、漏洩同軸ケーブル302にRF信号を入力する端子とは反対側の端子にインピーダンスが可変の終端器を接続して意図的に反射を生じさせるとともに、終端器のインピーダンスを時間的に変化させることでケーブル内に生じる定在波のパターンを時間的に変化させ、漏洩同軸ケーブル302から放射される電波の放射特性を時間的に変化させる。
【0072】
さらに詳細に説明する。
RF信号は入力端子(左上方に示される端子)介してアイソレータ304Aに入力される。アイソレータ304Aは入力されたRF信号を通過させるとともに、漏洩同軸ケーブル302から出力される漏洩同軸ケーブル302の反対の端子で反射され戻ってきたRF信号の電力を吸収する。アイソレータ304Aから出力されたRF信号は漏洩同軸ケーブル302に入力される。
【0073】
漏洩同軸ケーブル302の他方の端子には可変インピーダンス回路318が接続されている。可変インピーダンス回路318は制御部317から入力される制御信号に応じて、その入力インピーダンスを変化させる。漏洩同軸ケーブル302から出力されるRF信号は可変インピーダンス回路318におけるインピーダンス不整合により、一部の電力が反射波となって再び漏洩同軸ケーブル302に戻る。制御部317は可変インピーダンス回路318に制御信号を入力し、可変インピーダンス回路318の入力インピーダンスを時間的に変化させる。
【実施例22】
【0074】
以上、本発明送信装置、再送信装置を、21の実施例に基づいて詳細に説明してきたが、振幅、周波数、位相、遅延時間の各信号パラメータを時間的に変化させる具体的な変化のパターンについては説明をしなかった。
これについては、時間的に変化させる変化のパターンは各種様々なものがあり、代表的なものとして正弦波的なパターンがある。ただし、送信アンテナからの電波の放射パターンの時間的変化により、空間内の任意の点においてヌルまたは低電界の状態が生じても、誤り率が悪化する時間の周期がISDB−T信号の時間インターリーブの1周期に等しいか、それより十分に短いことが必要である。
また、振幅、周波数、位相、遅延時間の各信号パラメータの変化幅が大き過ぎたり、変化の速度が早過ぎたりした場合にはISDB−T受信機の同期が外れてしまうため、時間的に変化させる信号パラメータの変化幅、変化速度はISDB−T受信機の同期が破綻しない範囲に制限する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、地下街や地下駐車場等で地上デジタル放送波の送信または再送信を行うに際し、正受信場所率を改善することができるので、特にISDB−T方式による地上デジタル放送波の送信または再送信に利用される可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明閉空間送信装置の全体構成の第1の実施例を示している。
【図2】本発明閉空間送信装置の全体構成の第2の実施例を示している。
【図3】本発明閉空間送信装置の全体構成の第3の実施例を示している。
【図4】本発明閉空間送信装置の全体構成の第4の実施例を示している。
【図5】全体構成のうちの信号生成部の第1の実施例を示している。
【図6】全体構成のうちの信号生成部の第2の実施例を示している。
【図7】全体構成のうちの信号生成部の第3の実施例を示している。
【図8】全体構成のうちの信号生成部の第4の実施例を示している。
【図9】全体構成のうちの信号生成部の第5の実施例を示している。
【図10】全体構成のうちの信号生成部の第6の実施例を示している。
【図11】全体構成のうちの信号生成部の第7の実施例を示している。
【図12】全体構成のうちの信号生成部の第8の実施例を示している。
【図13】全体構成のうちの信号分配部の第1の実施例を示している。
【図14】全体構成のうちの信号分配部の第2の実施例を示している。
【図15】全体構成のうちの信号分配部の第3の実施例を示している。
【図16】全体構成のうちのアンテナ部の第1の実施例を示している。
【図17】全体構成のうちのアンテナ部の第2の実施例を示している。
【図18】全体構成のうちのアンテナ部の第3の実施例を示している。
【図19】全体構成のうちのアンテナ部の第4の実施例を示している。
【図20】全体構成のうちのアンテナ部の第5の実施例を示している。
【図21】全体構成のうちのアンテナ部の第6の実施例を示している。
【符号の説明】
【0077】
100A,100B,100C 信号生成部
101 受信アンテナ
102 受信部
103 ダウンコンバータ(D/C)
104 直交復調部
105 FFT部
106 SP等化部
107 判定部
108 IFFT部
109,109−1,109−2,・・・,109−N 直交変調部
110 伝送路特性推定部
111 フィルタ係数生成部
112 適応フィルタ部
113 分配部、
114−1,114−2,・・・,114−N 可変遅延器
115−1,115−2,・・・,115−N 複素乗算器
116−1,116−2,・・・,116 数値制御発信器(NCO)
117 制御部
118 ISDB−T変調器
119 ISDB−T伝送路符号化部
120 分配器
200 信号分配部
201 増幅器
202 分配器
203−1,203−2,203−3,・・・,203−N アナログ可変遅延器
203−1,203−2,203−3,・・・,203−M アナログ可変遅延器
204−1,204−2,204−3,・・・,204−N アナログ乗算器
204−1,204−2,204−3,・・・,204−M アナログ乗算器
205−1,205−2,205−3,・・・,205−N 電圧制御発振器(VCO)
205−1,205−2,205−3,・・・,205−M 電圧制御発振器(VCO)
206−1,206−2,206−3,・・・,206−N 帯域通過フィルタ(BPF)
206−1,206−2,206−3,・・・,206−M 帯域通過フィルタ(BPF)
207−1,207−2,207−3,・・・,207−N 可変利得制御増幅器
207−1,207−2,207−3,・・・,207−M 可変利得制御増幅器
208−1,208−2,208−3,・・・,208−N BPF
208−1,208−2,208−3,・・・,208−M BPF
209 制御部
210−1,210−2,210−3,・・・,210−M 分配器
211 マトリクス回路
300A,300B アンテナ部
301−1,301−2,301−3,・・・,301−N アンテナ素子
302 漏洩同軸ケーブル
302−1,302−2,302−3,・・・,302−N 漏洩同軸ケーブル
302−1,302−2,302−3,・・・,302−L 漏洩同軸ケーブル
303−1,303−2,303−3,・・・,303−N 抵抗終端器
304A,304A−1,304A−2,304A−3,・・・,304A−L アイソレータ
304B,304B−1,304B−2,304B−3,・・・,304B−L アイソレータ
305 方向性結合器
306 増幅器
307 BPF
308 アナログ乗算器
309 ローカル発振器
310 BPF
311 可変遅延器
312 アナログ乗算器
313 BPF
314 VCO
315 可変利得増幅器
316 BPF
317 制御部
318 可変インピーダンス回路
400,400−1,400−2,・・・,400−N アップコンバータ(U/C)
500,500−1,500−2,・・・,500−N 電力増幅部(PA部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩同軸ケーブル、
入力信号を前記漏洩同軸ケーブルの一方の端子に入力する手段、
前記漏洩同軸ケーブルの他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および
該時間的に変化させる手段により得られた信号を前記漏洩同軸ケーブルの前記他方の端子に入力する手段を具えて構成され、
前記漏洩同軸ケーブルから電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるようにしたことを特徴とする閉空間送信装置。
【請求項1】
漏洩同軸ケーブル、
入力信号を前記漏洩同軸ケーブルの一方の端子に入力する手段、
前記漏洩同軸ケーブルの他方の端子から出力される信号の振幅、周波数、位相、遅延時間の少なくとも1つを時間的に変化させる手段、および
該時間的に変化させる手段により得られた信号を前記漏洩同軸ケーブルの前記他方の端子に入力する手段を具えて構成され、
前記漏洩同軸ケーブルから電波反射体で囲まれた閉空間内に放射される電波の放射特性または放射パターンを時間的に変化させるようにしたことを特徴とする閉空間送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−295099(P2008−295099A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221091(P2008−221091)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【分割の表示】特願2003−291720(P2003−291720)の分割
【原出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【分割の表示】特願2003−291720(P2003−291720)の分割
【原出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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