説明

開き戸枠用の枠材及びこれを用いた開き戸納まり構造

【課題】開き戸納まり構造施工時の部品点数を低減することができると共に、開口部にシンプルで斬新な意匠性に優れた開き戸納まり構造を形成することが可能な枠材を提供する。
【解決手段】壁Wに設けられた開口部Aの内面に取り付けられると共に、前記開口部Aを開閉する開き戸Dが取り付けられる開き戸枠F用の枠材10であって、前記壁Wを構成する表裏一対の壁板12a,12bの間に嵌挿可能な幅に形成されると共に、前記開口部Aに面する表面側における開き戸D嵌り込み側の端部の肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、前記開き戸Dの端部と面する段差面16bを有する開き戸収容段部16aが形成された長尺の本体16と、前記本体16における幅方向両端部の表面側にて長手方向全体に亘って突設され、前記壁板12a,12bの開口部A側の端面を覆う一対の凸条部18,20とで構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等において開き戸を取り付けるために開口部の内面に取着される開き戸枠用の枠材と、これを用いた開き戸納まり構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部に取り付けられる開き戸枠用の枠材のうち、開き戸枠としての強度ないし剛性を確保しつつ見掛け上の厚さを小さくするものとして、図5に示すような枠材1が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この枠材1は、開き戸枠の縦枠及び上枠として使用されるものであって、長尺の本体1aの前面3と外側面4との角及び後面5と外側面4との角をそれぞれ断面略L字形に切り欠くこと、すなわち前側切欠き6及び後側切欠き7を形成することにより、本体1aの幅方向両端部の表面側に前側切欠き残部F及び後側切欠き残部Rが設けられている。又、左右一対の縦枠及び上枠として使用される該枠材1における本体1aの幅方向略中央部には、それぞれ別部材で構成された戸当たり8が長手方向全体に亘って取り付けられている。
【0003】
かかる枠材1は、開き戸枠としての強度ないし剛性を確保しつつ、開口部Aに取り付けた際に枠材1の見掛け上の厚さTを小さくすることができるため、これを用いて開口部に開き戸納まり構造を形成した場合、該構造がシンプル且つ斬新な印象となり、従来の他の枠材を用いた場合に比べて意匠性に優れたものとなる。
【特許文献1】特開2008−38419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような枠材1を用いた開き戸納まり構造では、開き戸Dの後側(図5における右側)から開口部Aを見た場合、枠材1の見掛け上の厚さTが薄いことから、特に戸当たり8が目立ち易く、この点において意匠性が劣るという問題があった。又、この戸当たり8は、枠材1とは別部材で構成されているので、開き戸納まり構造を施工する際の部品点数が増え、施工が煩雑になるという問題もあった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる課題は、開き戸納まり構造施工時の部品点数を低減することができると共に、開口部にシンプルで斬新な意匠性に優れた開き戸納まり構造を形成することが可能な開き戸枠用の枠材と、かかる枠材を用いたシンプルで斬新な意匠性に優れた、施工が簡便な開き戸納まり構造とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、
(a) 壁Wに設けられた開口部Aの内面に取り付けられると共に、前記開口部Aを開閉する開き戸Dが取り付けられる開き戸枠F用の枠材10であって、
(b) 前記壁Wを構成する表裏一対の壁板12a,12bの間に嵌挿可能な幅に形成されると共に、前記開口部Aに面する表面側における開き戸D嵌り込み側のコーナー部の肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、前記開き戸Dの端部と面する段差面16bを有する開き戸収容段部16aが形成された本体16と、
(c) 前記本体16における幅方向両端部の表面側にて長手方向全体に亘って突設され、前記壁板12a,12bの開口部A側の端面を覆う一対の凸条部18,20とで構成されていることを特徴とする、
(d) 開き戸枠F用の枠材10である。
【0007】
本発明の枠材10では、本体16の開口部Aに面する表面側における開き戸Dの嵌り込み側のコーナー部分に、当該部分の肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、開き戸Dの端部が収まった時に、これと面する段差面16bを有する開き戸収容段部16aが形成されている。このため、かかる枠材10を用いて開き戸納まり構造Sを構成した場合、開き戸Dの開閉側の端部が、開き戸非蝶着側の枠材10に設けた開き戸収容段部16aの段差面16bに突き当たるようになる。つまり、この段差面16bが戸当たり面として機能するようになり、枠材10に別途、戸当たりを取り付ける必要がない。又、開き戸蝶着側の枠材10やこの枠材10を上枠として使用する場合においても、前記と同様に別途、戸当たりを取り付ける必要はない。
【0008】
また、このように別途、戸当たりが必要でないことから、開き戸納まり構造Sを構成する際の部品点数を削減できるばかりでなく、従来のもののように開き戸Dの後側から見た(図2におけるB矢視)場合に戸当たりが見えることがなく、凸条部18,20が壁板12a,12bの開口部A側の端面を覆っている事と相俟って、開き戸納まり構造Sをシンプルで且つ斬新な意匠とすることができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の開き戸枠F用の枠材10において、「一対の凸条部18,20の厚さT1,T2が互いに略等しく形成されている」ことを特徴とするもので、これにより、かかる枠材10を開口部Aに施工した際に、開き戸Dの前側から見える枠材10の見掛け上の厚さと、開き戸Dの後側から見える枠材10の見掛け上の厚さが略同一となり、より一層シンプルで斬新な意匠性に優れた開き戸納まり構造Sを形成することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、「壁Wに設けられた開口部Aの内面に取り付けられる左右一対の縦枠F1と上枠F2とからなり、少なくとも縦枠F1に請求項1又は2に記載の枠材10を用いた開き戸枠Fと、前記縦枠F1の一方に回動自在に取り付けられ、前記開口部Aを開閉する開き戸Dとで構成された」ことを特徴とする開き戸納まり構造Sで、少なくとも縦枠F1として請求項1又は2に記載の開き戸枠F用の枠材10を用いることにより、開き戸Dが取り付けられていない他方(開き戸非蝶着側)の縦枠F1の段差面16bが戸当たり面となるので、上述のように、別途戸当たりを取り付ける必要がなく、施工が簡便であると共に、開き戸Dの後側から見た(図2におけるB矢視)場合に戸当たりが見えることがなく、シンプルで斬新な意匠性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開き戸納まり構造施工時の部品点数を低減することができると共に、開口部にシンプルで斬新な意匠性に優れた開き戸納まり構造を形成することが可能な開き戸枠用の枠材と、施工が簡便であり、シンプルで斬新な意匠性に優れた開き戸納まり構造とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明の開き戸納まり構造Sを表わす正面図であり、図2は、図1におけるX−X線断面図である。
【0013】
これらの図が示すように、本発明の開き戸納まり構造Sは、住宅等の壁Wに設けられた開口部Aの内面に取り付けられる開き戸枠Fと、該開き戸枠Fに蝶着されて前記開口部Aを開閉する開き戸Dとで構成されている。
【0014】
ここで、開口部Aが設けられる壁Wは、壁Wの一方面(表)を構成する第1の壁板12aと、壁Wの他方面(裏)を構成する第2の壁板12bと、第1の壁板12a及び第2の壁板12bを所定の間隔にて支持する柱14とで構成されており、壁Wを構成する柱14が開口部Aの内周部近傍に配置されている。
【0015】
開き戸枠Fは、左右一対の縦枠F1と、上枠F2とで構成されており、本実施例では、図1及び2に示すように、少なくとも縦枠F1として本発明の開き戸枠F用の枠材10(以下、単に「枠材10」と云う。)が用いられている。
【0016】
枠材10は、本体16と、この本体16と一体的に或いは図示していないが別体にて形成された凸条部18及び20とで構成されている。
【0017】
本体16は、挽材,合板,木質繊維板(IB,MDF等),木削片板(パーティクルボード,ストランドボード,OSB等),集成材,無垢などの木質材料、プラスチック材料または金属材料等の単独材料、もしくは、これらの複合材料により形成された長尺部材で、壁Wを構成する一対の壁板12a,12bの間に嵌挿可能な幅にて形成されている。
【0018】
この本体16における開口部Aに面する表面側の開き戸D嵌り込み側のコーナー部には、その肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、開き戸Dの端部が収まる開き戸収容段部16aが形成されている。このため、当該本体16の幅方向断面の形状は、略L字状となっており、枠材10を縦枠F1として使用した場合における開き戸非蝶着側の枠材10では、本体16の幅方向と略直交する方向に形成された開き戸収容段部16aの段差面16bが戸当たり面として機能するようになっている(図2参照)。
【0019】
なお、本体16表面側の開き戸D嵌り込み側のコーナー部を切り欠いて、開き戸収容段部16aを形成する方法としては、上記材料(板材)の該当部分を切削する方法や、幅の異なる2枚の板材を厚み方向に積層して貼り合わせる方法、或いは厚みの異なる2枚の板材を幅方向に連結して貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0020】
ここで、開口部Aに枠材10を取り付けて開き戸枠Fの縦枠F1とした際に、開き戸Dの開閉側の端部が収められる、開き戸非蝶着側の枠材10の開き戸収容段部16aの段差面16bには、長手方向の全体或いは一部に、図2に示すように、緩衝材22を取り付けておくのが望ましい。このような緩衝材22を設けることにより、開き戸Dを閉めた際の音や衝撃を抑えることができるからである。なお、この緩衝材22としては、軟質樹脂やゴム等の材料からなる中空のものや、発泡樹脂製のもの等を用いることができる。
【0021】
そして、この本体16における幅方向両端部の表面側には、該本体16の側面が長手方向全体に亘って突設し、壁板12a,12bの開口部側の端面を覆う一対の凸条部18,20が一体的に或いは図示していないが別体にて形成されている。
【0022】
この凸条部18の厚さT1及び凸条部20の厚さT2は、凸条部18及び20が割れたり、折れたりしない程度の強度をもつ範囲であれば特に限定されないが、図2に示すように、凸条部18の厚さT1と凸条部20の厚さT2とが互いに略等しくなるよう形成する(この際、壁板12bの開口部Aへの突出長さを段差面16bの高さ分だけ壁板12aよりも長く形成する)ことにより、開き戸Dの前側からの見た目(図2におけるF矢視)と、開き戸Dの後側からの見た目(図2におけるB矢視)とを同じようにすることができ、開き戸納まり構造Sの意匠性をより一層高めることができる。
【0023】
ここで、本体16における幅方向両端部の表面側に、凸条部18及び20を形成する方法としては、壁Wの厚みと同等もしくはやや大きな幅に形成した本体16の幅方向両端部を背面側から切削して凸条部18及び20を一体的に形成する方法や、木質材料、プラスチック材料または金属材料等の単独材料、もしくは、これらの複合材料により別体として形成した凸条部18及び20を、本体16の幅方向両端部の表面側に接着剤等を用いて取着する方法などが挙げられる。
【0024】
なお、図2に示す例では、凸条部18,20の突出幅を、壁材12a,12bの厚さと略等しく形成する場合を示しているが、この凸条部18,20の突出幅は、壁材12a,12bの開口部側の端面を覆うことができるものであれば如何なるものであってもよく、例えば、図3に示すように、壁材12a,12bの厚さよりも大きくするようにしてもよい。
【0025】
また、凸条部18,20の形状についても、図2に示すような矩形のものに限定されるものではなく、図4に示すように、凸条部18,20の開口部A側を面取りして幅方向断面の形状を円弧状とするようにしてもよい。
【0026】
次に、本実施例の枠材10を用いて、図1に示すような開き戸納まり構造Sを構成する際には、まず始めに、必要に応じて接着剤等の接着手段を用い、本実施例の枠材10を縦枠F1として開口部Aの左右に取り付けると共に、天面側に上枠F2として(従来から在る)横枠材26を取り付け、開き戸枠Fを完成させる。この際、縦枠F1として開口部Aに取り付けられる一対の枠材10は、開き戸収容段部16aが互いに対面し、且つこの開き戸収容段部16aが開口部Aの開き戸D取付側に配設されるよう位置決めされた後、本体16の背面側が壁材12a及び12bの間に嵌挿される。
【0027】
そして、開き戸収容段部16aの段差面16bに緩衝材22が取り付けられていない方の枠材10(すなわち、開き戸蝶着側の縦枠F1)に、ピポット蝶番24を介して開き戸Dを回動自在に固定する。これにより、開き戸納まり構造Sが完成する。
【0028】
本実施例の枠材10によれば、本体16の開口部Aに面する表面側における開き戸Dの嵌り込み側のコーナー部分に、当該部分の肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、開き戸Dの端部が収まった時に、これと面する段差面16bを有する開き戸収容段部16aが形成されているため、かかる枠材10を用いて開き戸納まり構造Sを構成した場合、開き戸Dの開閉側の端部が、開き戸非蝶着側の枠材10に設けた開き戸収容段部16aの段差面16bに突き当たるようになる。このため、この段差面16bが戸当たり面として機能するようになり、枠材10に別途、戸当たりを取り付ける必要がない。
【0029】
また、このように別途、戸当たりを必要としないことから、開き戸納まり構造Sを構成する際の部品点数を削減できるばかりでなく、従来のもののように開き戸Dの後側から見た場合に戸当たりが見えることがなく、開き戸納まり構造Sをシンプルで且つ斬新な意匠とすることができる。
【0030】
なお、上述の例では、枠材10を縦枠F1のみに使用する場合を示したが、この枠材10を縦枠F1及び上枠F2として使用するようにしてもよい。この場合、上枠F2として使用する枠材10の開き戸収容段部16aの位置を、縦枠F1として使用する枠材10の開き戸収容段部16aの位置に合わせる必要があることは云うまでもない。
【0031】
また、枠材10に開き戸Dを取り付ける際にピボット蝶番24を用いる場合を示したが、枠材10に対する開き戸Dの取り付け態様はこれに限定されるものではなく、枠材10に対して開き戸Dを回動自在に取り付けられるものであれば、如何なるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例の枠材を用いた開き戸納まり構造を示す正面図である。
【図2】図1におけるX−X線断面図である。
【図3】本発明の他の実施例の枠材を用いた開き戸納まり構造を示す水平方向断面図である。
【図4】本発明の他の実施例の枠材を用いた開き戸納まり構造を示す水平方向断面図である。
【図5】従来の枠材を用いた開き戸納まり構造を示す水平方向断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10…枠材
12a,12b…壁板
14…柱
16…本体
16a…開き戸収容段部
16b…段差面
18…(前側の)凸条部
20…(後側の)凸条部
22…緩衝材
24…ピボット蝶番
A…開口部
D…開き戸
F…開き戸枠
1…縦枠
2…上枠
S…開き戸納まり構造
W…壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に設けられた開口部の内面に取り付けられると共に、前記開口部を開閉する開き戸が取り付けられる開き戸枠用の枠材であって、
前記壁を構成する表裏一対の壁板の間に嵌挿可能な幅に形成されると共に、前記開口部に面する表面側における開き戸嵌り込み側のコーナー部の肉が長手方向全体に亘って切り欠かれ、前記開き戸の端部と面する段差面を有する開き戸収容段部が形成された本体と、
前記本体における幅方向両端部の表面側にて長手方向全体に亘って突設され、前記壁板の開口部側の端面を覆う一対の凸条部とで構成されていることを特徴とする開き戸枠用の枠材。
【請求項2】
前記一対の凸条部の厚さが互いに略等しく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開き戸枠用の枠材。
【請求項3】
壁に設けられた開口部の内面に取り付けられる左右一対の縦枠と上枠とからなり、少なくとも縦枠に請求項1又は2に記載の枠材を用いた開き戸枠と、
前記縦枠の一方に回動自在に取り付けられ、前記開口部を開閉する開き戸とで構成されたことを特徴とする開き戸納まり構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−24654(P2010−24654A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184826(P2008−184826)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】