説明

開封確認可能な容器及び容器の開封判定方法

容器1の封止部分7に薬に関する情報を記憶した薬側ICチップ11を装着し、被投薬者に該被投薬者に関する情報を記憶した被投薬者側ICチップ25を装着する。所定の検出範囲内に存在するICチップに記憶されている情報を読み取り且つ所定の検出範囲内にICチップが存在しているか否かを検出する読取リーダー13を封止部分7を開封する作業者に装着する。読取リーダー13によって被投薬者側ICチップ25及び薬側ICチップ11に記憶されている情報を取得し、容器1内の薬が被投薬者のためのものであることを確認する。開封作業に要する時間に基づいて予め定めた時間以上、読取リーダー13によって薬側ICチップ11が存在していることを検出した後、読取リーダー13によって薬側ICチップ11の存在を検出せず且つ被投薬者側ICチップ25に記憶されている情報から被投薬者を再度確認した場合に、容器1が開封され投薬が完了したものと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬収納容器等のように、実際に開封されたことが確認できる開封確認可能な容器、容器の開封判定方法及び誤投薬判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2002−362613号公報には、被収納物が収納される容器の表面にICチップに接続された導電層を形成し、導電層が切断されて分離することにより2個の独立したアンテナ部が形成される開封確認可能な容器が示されている。この容器では、容器が開封されるとアンテナ部が形成されて、ICチップから開封を知らせる信号が発信される。この信号を読取リーダーによって読み取ることにより容器が開封されたことを確認する。
【特許文献1】特開2002−362613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の開封確認可能な容器では、開封するまでは、容器の存在を検出できず、開封されて初めて容器の存在と開封を検出するため、開封前の事前作業でICチップを利用することができず、また開封検出処理で検出エラーが生じやすくなる問題がある。
【0004】
本発明の目的は、従来よりも確実に、容器の開封を確認できる開封確認可能な容器及び薬収納容器を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、容器の開封前に容器の存在を確認処理をすることができて、しかも容器の開封の確認もすることができる容器及び薬収納容器を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、既存の容器を用いて簡単に構成できる開封確認可能な容器または薬収納容器を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、安価な開封確認可能な容器及び薬収納容器を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、作業者が開封を行ったかどうかを判定できる容器の開封判定方法を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、作業者が被投薬者に正しく投薬を行ったかどうかを判定できる誤投薬判定方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、投薬前に容器内の薬が被投薬者のためのものであるか否かを判定できる誤投薬判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が適用される封止部分の開封確認が可能な容器は、粉体、固体、液体等の被収納物が収納される容器本体と、この容器本体を封止する封止部分とを備えている。封止部分は、開封時に容器本体から分離される構造を有しているものである。例えば、封止部分は蓋のように容器本体とは別に構成されるものだけでなく、閉じられた紙袋等の切り取り部分のように、容器本体と一体になったものも含むものである。本発明では、封止部分に非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスを装着する。ここで非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスとは、ICチップ等のように、接触せずに内部の記憶手段に記憶した情報を読み取ることが可能なすべてのディバイスを含むものであり、読み取り方式はいかなるものであってもよい。本発明のように、封止部分に情報記憶ディバイスを装着すれば、容器を開封していない状態では情報記憶ディバイスが容器上に位置しているものの、容器本体から封止部分を離して封止部分を廃棄すれば情報記憶ディバイスは容器本体から離れた場所に置かれることになる。例えば、情報記憶ディバイス内の情報を読取る読取リーダーの検出範囲をある程度狭めておき作業者の体に読取リーダーを取り付けておくものとする。この場合、封止部分が容器本体から離されて廃棄される前においては、容器を作業者が取り扱っている状態で読取リーダーが情報記憶ディバイスの存在を検出する。作業者が、容器を開封して封止部分を容器本体から分離し、読取リーダーの検出範囲から封止部分を離すと、読取リーダーは情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなる。その結果、作業中に容器が開封されたか否かを判定することが可能になる。本発明によれば、封止部分に情報記憶ディバイスを装着するだけで、開封判定可能な容器を簡単に形成できるので、既存の容器を簡単に開封判定可能な容器とすることができる。
【0012】
情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路は、容器本体と封止部分とに跨って形成することができる。この場合、アンテナ回路は、封止部分が開封されたときに切断されて、情報記憶ディバイスの読取が不可能になるように形成すればよい。このようにすると、容器本体と封止部分とに跨ってアンテナ回路を形成しなければならず容器の形成は煩雑になる。しかしながら、このようにすれば、開封前に容器の存在を確認することができる上、開封後に封止部分が読取リーダーの検出範囲内に何らかの理由で存在する場合でも、アンテナ回路の切断によって、読取リーダーは情報記憶ディバイスの存在を検出しないため、開封判定でエラーの発生を阻止することができる。
【0013】
また、従来の容器と異なり、容器本体が封止されている状態で、情報記憶ディバイスの存在を検出し、容器が開封された時点で情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなる。そのため、容器本体が封止されている当初の状態で情報記憶ディバイスの存在が検出できなければ、ICチップの故障や電波障害が生じていることを発見することができる。
【0014】
情報記憶ディバイスは、封止部分のみでなく、容器本体及び封止部分のそれぞれに装着してもよい。このようにすれば、容器を開封していない状態では、読取リーダーは容器本体及び封止部分上にそれぞれ装着された2つの情報記憶ディバイスの存在を検出することになり、容器を開封して封止部分を廃棄した後は、読取リーダーが容器本体上の情報記憶ディバイスの存在だけを検出するようになる。この場合において、アンテナ回路を容器本体と封止部分とに跨って形成する場合には、封止部分に設けられた情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路のみを容器本体と封止部分とに跨って形成すればよい。
【0015】
なお、情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路を容器本体と封止部分とに跨って形成する場合には、情報記憶ディバイスを容器本体にのみ装着してもよい。
【0016】
本発明の開封確認可能な容器は、種々の用途の容器に用いることができる。例えば、本発明を適用した薬収納容器は、1回の投薬に必要な薬が収納される容器本体と容器本体を封止する封止部分とを備え、封止部分が開封時に容器本体から分離される構造を有している。さらに被投薬者、薬等に関する情報を記憶し且つ非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスが装着されている。そして、封止部分に情報記憶ディバイスを装着する。このような薬収納容器では、容器の封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に読取リーダーを装着することにより、被投薬者に正しい薬が投与されるかどうか、また、作業者が被投薬者に適切に投薬を行ったかどうかを判定することができる。
【0017】
封止部分に情報記憶ディバイスを装着した容器を用いた場合の具体的な容器の開封判定方法としては、次のようなものがある。すなわち、所定の検出範囲内に存在する情報記憶ディバイスに記憶されている情報を読み取り且つ所定の検出範囲内に情報記憶ディバイスが存在しているか否かを検出する機能を有する読取リーダーを、容器の封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に装着しておく。そして、開封作業に要する時間に基づいて予め定めた第1の時間以上、読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後に、予め定めた第2の時間以内に読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスの存在を検出しない状態を検出すると、容器の開封が行われたものと判定する。
【0018】
ここで、「予め定めた第1の時間及び第2の時間」は、例えば次のように定めることができる。すなわち第1の時間は、封止部分の除去作業準備時間である。第1の時間は、作業者が容器を手に取ってから、一方の手で容器本体を持ち、他方の手で封止部分を持つまでの平均的な時間として定めることができる。そして第2の時間は、準備が終わった後に、実際に封止部分を容器本体から分離して廃棄するのに要する平均的な時間として定めることができる。例えば第1の時間を3秒とし、第2の時間を2秒と定めた場合は、3秒以上、読取リーダーによって情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後に、2秒以内に読取リーダーによって情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなった場合に、封止部分が除去されて廃棄された(即ち、容器の開封が行われた)ものと判断する。このような開封判定方法によれば、作業者に装着した読取リーダーからの情報を解析して作業者が開封作業を適切に行ったかどうかを推定により判定することができる。
【0019】
容器本体及び封止部分のそれぞれに情報記憶ディバイスを装着した容器を用いる場合の具体的な容器の開封判定方法の一例は次のとおりである。まず、読取リーダーによって容器本体及び封止部分の両方に装着した情報記憶ディバイスの存在を検出する。その後、読取リーダーによって容器本体に装着した情報記憶ディバイスの存在のみを検出したときに容器の開封が行われたと判定する。このような開封判定方法によれば、作業時間を考慮することなく、読取リーダーの読取り結果だけに基づいて開封の有無を判定することができる。
【0020】
前述したように読取リーダーが装着される所定位置は、開封作業中における作業者の手の動作範囲内で情報記憶ディバイスの読み取りが可能となる位置と定められている。そのため、このような所定位置は、手の動作範囲内の中心となる位置、即ち、作業者の指、手の甲、手首または手首に近い腕の部分等が好ましい。
【0021】
情報記憶ディバイスの存在を検出する所定の検出範囲は、作業者が容器を指で触って作業を行っている状態において、情報記憶ディバイスの読み取りを行えるように定めるのが好ましい。このようにすれば、作業者が実際に容器に触れなければ、情報記憶ディバイスの読み取りが行われないので、作業者の開封作業をより正確に判定することができる。
【0022】
読取リーダーは、種々の形状のものを採用できる。例えば、腕時計に近似した形を有していて、作業者の手首に装着可能に読取リーダーを構成すれば、作業に支障を与えることなく、しかも作業中に容器に近い位置に確実に読取リーダーを近づけることができる。
【0023】
封止部分に情報記憶ディバイスを装着した容器を用いて、被投薬者(病院の患者、介護施設の入居者等)に誤って薬を投薬したか否かを判定する方法は以下のとおりである。まず、容器の封止部分に薬に関する情報を記憶した情報記憶ディバイスを装着し、被投薬者に関する情報を記憶した情報記憶ディバイスを被投薬者に装着する。また、所定の検出範囲内に存在する情報記憶ディバイスに記憶されている情報を読み取り且つ所定の検出範囲内に情報記憶ディバイスが存在しているか否かを検出する機能を有する読取リーダーを容器の封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に装着する。ここで、所定位置とは、前述と同様に、開封作業中における作業者の手の動作範囲内で情報記憶ディバイスの読み取りが可能となる位置である。
【0024】
そして、最初に読取リーダーによって被投薬者に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報と封止部分に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報とを取得し、封止部分に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報と被投薬者に関する情報とに基づいて容器内の薬が被投薬者のためのものであることを確認する。
【0025】
その後、開封作業に要する時間に基づいて予め定めた時間以上、読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後、読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスの存在を検出せず且つ被投薬者に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報から被投薬者を再度確認した場合に、容器の開封が行われ且つ被投薬者への投薬が完了したものと判定する。
【0026】
このようにすれば、最初に読取リーダーによって被投薬者に装着した情報記憶ディバイスから被投薬者に関する情報を取得するため、投薬前に被投薬者の確認が行われる。そのため、投薬前に誤投薬の防止を図れる。また、読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスの存在を検出せず且つ被投薬者に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報から被投薬者を再度確認した場合に、容器の開封が行われ且つ被投薬者への投薬が完了したものと判定するため、投薬が実際に行われたか否かの判定の精度を上げることができる。
【0027】
被投薬者に装着される情報記憶ディバイスは、被投薬者の種々の位置に装着することができる。情報記憶ディバイスを被投薬者の着衣の襟の部分に装着すれば、作業者は被投薬者をベッドから起こす際や、被投薬者に薬を飲ませる際にとる自然な動作で、被投薬者に気付かれることなく、読取リーダーを被投薬者に装着した情報記憶ディバイスに接近させることができる。
【0028】
読取リーダーには、判定結果を記憶する記憶手段と警報発生手段とを設けるのが好ましい。そして、警報発生手段は、封止部分に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報と被投薬者に関する情報とに基づいて容器内の薬が被投薬者のためのものではないと判断したときに作業の中止を作業者に知らせる警報を、被投薬者に知られない態様で発生するように構成するのが好ましい。このように記憶手段を設ければ、作業後に記憶手段から記憶内容を取得して、その内容を解析することによって作業者が被投薬者に正しく薬の投与が行われたか否かを判定することができる。また警報発生手段を設けて警報を発すれば、被投薬者に誤った薬を投与するのを事前に防ぐことができる。また、警報を被投薬者に知られない態様で発生させれば、被投薬者に不安感を与えることなく、誤った薬の投与を防ぐことができる。このような警報発生手段は、被投薬者に装着した情報記憶ディバイスに記憶されている情報から被投薬者を再度確認しない(すなわち他のときに、作業の中止を作業者に知らせる警報を、被投薬者に知られない態様で発生する)ように構成することができる。このようにすれば、介護作業の途中で被投薬者に投薬するのを忘れた場合でも警報によりそのことを作業者に知らせることができるので、投薬忘れを防止することができる。
【0029】
このような警報の態様としては、例えば、作業者に読取リーダーから振動を加える態様がある。このようにすれば、被投薬者に知られることなく作業者に確実に警報を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】誤投薬防止用薬収納容器に適用した本発明を実施するための最良の形態の第1の実施の形態の開封確認可能な容器の概略図である。
【図2】読取リーダーの装着を説明するために用いる図である。
【図3】誤投薬判定方法を説明するために用いる図である。
【図4】第2の実施の形態の容器を説明するために用いる図である。
【図5】被投薬者側ICチップの装着を説明するために用いる図である。
【図6】第3の実施の形態の容器を説明するために用いる図である。
【図7】第4の実施の形態の容器を説明するために用いる図である。
【図8】第5の実施の形態の容器を説明するために用いる図である。
【図9】第6の実施の形態の容器を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、介護施設等で使用される紙等の破ることが可能な袋からなる薬収納容器に本発明を適用し構成した開封確認可能な第1の実施の形態の薬収納容器1の概略図である。本例の薬収納容器1は、2枚の引張強度の高い半透明の紙3,3のそれぞれの周縁部3aが相互に接着されて構成された袋形状を有している。図1に示した状態においては、この容器1の上から1/3程度の部分には、袋を上下に分けるように分離線4が形成されている。分離線4は、印刷によって形成してもよいし、複数の孔の列によって構成されるミシン目によって形成してもよい。この分離線4よりも下側の部分が、容器1の容器本体5を構成しており、分離線4よりも上側の部分が封止部分7を構成している。被投薬者(老人や病人)に薬を投与する介護者または作業者は、分離線4に沿って手で容器に切り込みを入れ、封止部分7を切り取って、ごみとして廃棄する。容器1内には、被投薬者の1回の投薬に必要な薬9が収納されている。
【0032】
また、封止部分7のほぼ中央の表面には、被投薬者に関する情報を記憶する情報記憶ディバイスとしての薬側ICチップ11が装着されている。薬側ICチップ11は、被投薬者及び薬9に関する情報を記憶している周知の非接触で読取が可能なICチップである。このICチップは、記憶している情報が、所定の距離または範囲内にある読取リーダーによって非接触で読み取れるアンテナ内蔵タイプのICチップである。この容器1では、作業者が被投薬者に薬を飲ませる際に、封止部分7が容器本体5から切り離されて、封止部分7が容器本体5の近くから離されることにより、容器1が開封されたと判定する方法に使用できる。
【0033】
ここで、この容器1を用いて作業者が被投薬者に容器1内の薬9を飲ませたか否かを判定する誤投薬判定方法(容器の開封判定方法)の一例について説明する。この方法では、図2に示すように、容器1の封止部分7を開封して被投薬者に薬を投与する作業者の利き腕の手首(本例では右手首)に携帯型の読取リーダー13を装着する。この読取リーダー13は、作業者の手首に装着可能な腕時計に近似した形に構成してある。読取リーダーの原理及び構造はすでに公知であるので説明を省略する。専用のICを開発することにより、時計程度の大きさの読取リーダーを構成することは現在の技術では十分に可能である。このような腕時計タイプの読取リーダー13を用いると、被投薬者は作業者が読取リーダーを持っていることに気がつかない。そのため被投薬者が、管理されているという意識を持つことなく自然に投薬作業を実施できる。また腕時計タイプの読取リーダー13を用いると、容器1の開封作業をする際に、容器1に非常に近い位置で読取動作を行うことができるので、読取ミスが発生する可能性が少なくなる。なおこの読取リーダー13は、読取手段と、ICチップの存在を検出する検出手段と、読み取った情報に基づいて所定の判定を行う判定手段と、判定手段の判定結果を記憶する判定記憶手段と、判定結果により作業者に対して警報を発生する事態が発生したときに警報を発生する警報発生手段とを備えている。検出手段は、所定の検出範囲内(例えば、半径20cm以内)にICチップが存在していることを検出する。例えば繰り返し、読取動作を行い同じ情報が読み取れる間は、ICチップが存在していると判断するように検出手段を構成すればよい。
【0034】
図3に示すように、作業者が容器1の封止部分7を開封する際には、一方の手で容器本体5をつかみ、読取リーダー13を装着した他方の手で封止部分7をつかみ、封止部分7と容器本体5との間に分離線4に沿って容器1を破る。なお予め読取リーダー13に被投薬者の情報が記憶されていれば、読取リーダー13が封止部分7に近づいて際に、薬側ICチップ11に記憶されている被投薬者の情報と読取リーダー13に記憶されている被投薬者の情報とを対比して、両者が一致していない場合には、投薬を阻止するために読取リーダー13は警報を発するようにしてもよい。この実施の形態では、警報が振動で発生させられるので、被投薬者が警報に気付くことはない。封止部分7を破って容器1を開封する際に、読取リーダー13の読取可能範囲または検出可能範囲(破線Aで囲んだ範囲)内に封止部分7に取り付けた薬側ICチップ11が必ず入ることになる。封止部分7を取った後は、封止部分7はごみ入れに棄てられることになる。読取リーダー13内の判定手段は、開封準備作業に要する時間に基づいて予め定めた第1の時間以上、読取リーダー13によって封止部分7に装着した薬側ICチップ11が存在していることを検出した後に、予め定めた第2の時間以内に読取リーダーによって封止部分に装着した情報記憶ディバイスの存在を検出しない状態になったことを検出した場合に容器の開封が行われたものと判定することもできる。ここで、「予め定めた第1の時間及び第2の時間」は、例えば次のように定めることができる。すなわち第1の時間は、封止部分の除去作業準備時間である。第1の時間は、作業者が容器を手に取ってから、一方の手で容器本体を持ち、他方の手で封止部分を持つまで(図3に示す状態になるまで)の平均的な時間として定めることができる。そして第2の時間は、準備が終わった後に、実際に封止部分を容器本体から分離して廃棄するのに要する平均的な時間として定めることができる。例えば第1の時間を3秒とし、第2の時間を2秒と定めた場合は、3秒以上、読取リーダーによって情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後に、2秒以内に読取リーダーによって情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなった場合に、封止部分が除去されて廃棄された(即ち、容器の開封が行われた)ものと判断する。
【0035】
なお、上記例で示す容器1は、封止部分7のみに薬側ICチップ11を装着しているが、図4に示す第2の実施の形態の容器101のように、容器本体5及び封止部分7のそれぞれに薬側ICチップ12及び11を装着することができる。このような容器101では、まず、読取リーダー13によって容器本体5及び封止部分7の両方に装着した薬側ICチップ12及び11の存在を検出する。その後、読取リーダー13によって容器本体5に装着した薬側ICチップ12の存在のみを検出したときに容器101の開封が行われたと判定する。このような開封判定方法によれば、作業時間を考慮することなく、読取リーダー13の読取り結果だけに基づいて開封の有無を判定することができるので、判定精度は上がる。
【0036】
本発明の容器を用いて誤投薬を防ぐ他の方法について説明する。この方法では、図5に示すように、被投薬者の着衣21の襟23に情報記憶ディバイスを構成する被投薬者側ICチップ25を装着しておく。この被投薬者側ICチップ25は、服用する薬等の被投薬者に関する情報を予め記憶している。作業者は、最初に被投薬者を介護するする動作で、被投薬者の着衣21の襟23の近くに読取リーダー13を近づける。この動作で、被投薬者の情報が読取リーダー13に読み取られる。次に前述と同様に、容器1の開封動作を行う。このときに、容器1に装着されている薬側ICチップ11から読み取った情報と読取リーダー13に記憶されている被投薬者の情報とから、薬が被投薬者に投薬するものではないこと(異なる人に投薬するものであること)が判定されたときには、読取リーダー13に内蔵してある振動型の警報発生手段により警報を発する。これによって誤投薬が防止できる。
【0037】
被投薬者が正しいことを確認した後、容器が開封されたか否かの判定は、前の実施の形態で説明したとおりである。開封を確認した後、作業者は薬を被投薬者に飲ませるために、再度被投薬者の体の近くに寄ることになる。その際に、読取リーダー13で再度襟23に付けた被投薬者側ICチップ25の読取動作を行うように作業マニュアルを定めておく。そして容器の開封を確認した後に再度読取リーダー13が被投薬者側ICチップ25の存在を確認した場合にだけ、投薬が実際に行われたものと判定する。このようにすると、誤投薬の防止だけでなく、投薬が実際に行われたか否かの判定の精度を上げることが可能になる。
【0038】
なお、開封が行われたことの評価は、作業終了後に読取リーダー13の判定記憶手段から記憶内容を取得して、その内容を解析することによって行われる。これにより、作業者が被投薬者に薬の投与を行ったか否かを判定することができるので、作業者の怠慢を検査することが可能になる。
【0039】
図6は、本発明の他の実施の形態(第3の実施の形態)の薬収納容器201の概略図である。本例の薬収納容器201では、情報記憶ディバイス(ICチップ)11に対して外付けで設けられたアンテナ回路221が容器本体5と封止部分7とに跨って形成されている。その他は、図1に示す薬収納容器1と同じ構造を有している。アンテナ回路221は、2カ所の部分221aが分離線4と交差する矩形のループ形状を有している。このアンテナ回路221は、金、銀、銅等の導電膜によって形成されている。このような導電膜は、印刷等による厚膜や、蒸着等による薄膜によって形成することができる。そこでこのような導電膜の形成が可能なように、容器201の材質は選定されている。切断によって切り離すアンテナ回路221の長さは、封止部分7が開封されたときに部分221aが切断されて、十分な電波の受信と発信とを行うことができなくなる程度に定めればよい。
【0040】
本例の薬収納容器201でも前述と同様の誤投薬判定方法(容器の開封判定方法)を採用することができる。本例の薬収納容器201では、開封後の封止部分7が誤って読取リーダー13の検出範囲内にあった場合でも、アンテナ回路221の切断により、読取リーダー13はICチップ11の存在を検出しないため、開封判定を正確に行うことができる。
【0041】
アンテナ回路は、種々の形状に形成することができる。図7に示す第4の実施の形態の薬収納容器301では、情報記憶ディバイス(ICチップ)11に対して設けられたアンテナ回路321は、1カ所の部分321aが分離線4を跨っている。そして、アンテナ回路321は、容器本体5上で渦巻く形状を有している。
【0042】
図8に示す第5の実施の形態の薬収納容器401では、容器本体5及び封止部分7のそれぞれに情報記憶ディバイス(薬側ICチップ)11,12が装着されている。この場合、封止部分7に設けられたICチップ11のアンテナ回路421のみを容器本体5と封止部分7とに跨って形成する。アンテナ回路421は、2カ所の部分421aが分離線4を横切る矩形のループ形状を有している。本例の薬収納容器401でも、開封後の封止部分7が誤って読取リーダー13の検出範囲内にあった場合、アンテナ回路421の切断により、読取リーダー13はICチップ11の存在を検出しないため、開封判定を正確に行うことができる。
【0043】
また、図9に示す第6の実施の形態の薬収納容器501のように、アンテナ回路521を容器本体5と封止部分7とに跨って形成する場合には、情報記憶ディバイス(ICチップ)11を容器本体5にのみ装着してもよい。
【0044】
上記例では、服用薬を収納する誤投薬防止用薬収納容器及び該容器を用いた誤投薬判定方法を示したが、本発明の容器はその他の用途でも効果を発揮する。例えば、点滴に1種類以上の薬を入れる場合にも効果を発揮する。この場合には、投薬指示書に予め被投薬者に投与する薬の情報を記憶させたICチップを装着しておく。点滴を作る作業者は、最初に投薬指示書に付いているICチップから被投薬者の情報を読取リーダで読み取っておく。そして各薬のアンプルまたはビンに本発明を採用し、アンプルまたはビンのキャップまたは蓋(封止部分)に装着したICチップには、その薬に関する情報を記憶させておく。このようにすると作業者が、薬のアンプルまたはビンを開封する前に、その薬が正しい薬か否かの判定を行える。また開封の有無を判定すると、その有無の判定から、開封し忘れた(入れ忘れた薬)があることを見つけ出すことができる。このように本発明の容器を用いると、開封の有無を確認できることから、その利用の仕方により、さまざまな効果を発揮させる可能である。また、薬以外の被収納物を収納する容器及び該容器を用いた容器の開封判定にも本発明を適用できるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、少なくとも容器の封止部分に情報記憶ディバイスを装着するだけで、高い印刷精度等を必要とすることなく、容器の開封を確認できる開封確認可能な容器を簡単に構成することができる。また本発明によれば、既存の容器を用いて開封確認可能な容器を簡単に構成できる。更に本発明によれば、作業者が被投薬者に正しく投薬を行ったか否かを判定できる。
【0046】
また、情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路を容器本体と封止部分とに跨って形成することにより、開封後の封止部分が誤って読取リーダーの検出範囲内にあった場合でも、アンテナ回路の切断により、読取リーダーは情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなるため、開封判定を正確に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物が収納される容器本体と前記容器本体を封止する封止部分とを備え、前記封止部分が開封時に前記容器本体から分離される構造を有していて前記封止部分の開封確認が可能な容器であって、
前記封止部分に非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスが装着されていることを特徴とする開封確認可能な容器。
【請求項2】
前記情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路は、前記容器本体と前記封止部分とに跨って形成されており、
前記アンテナ回路は、前記封止部分が開封されたときに切断されて、前記情報記憶ディバイスの読取が不可能になるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開封確認可能な容器。
【請求項3】
被収納物が収納される容器本体と前記容器本体を封止する封止部分とを備え、前記封止部分が開封時に前記容器本体から分離される構造を有していて前記封止部分の開封確認が可能な容器であって、
前記容器本体及び前記封止部分にそれぞれ非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスが装着されていることを特徴とする開封確認可能な容器。
【請求項4】
前記封止部分に設けられた前記情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路は、前記容器本体と前記封止部分とに跨って形成されており、
前記アンテナ回路は、前記封止部分が開封されたときに切断されて、前記情報記憶ディバイスの読取が不可能になるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の開封確認可能な容器。
【請求項5】
被収納物が収納される容器本体と前記容器本体を封止する封止部分とを備え、前記封止部分が開封時に前記容器本体から分離される構造を有していて前記封止部分の開封確認が可能な容器であって、
前記容器本体に非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスが装着されており、
前記情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路は、前記容器本体と前記封止部分とに跨って形成されていることを特徴とする開封確認可能な容器。
【請求項6】
1回の投薬に必要な薬が収納される容器本体と前記容器本体を封止する封止部分とを備え、前記封止部分が開封時に前記容器本体から分離される構造を有していて、さらに被投薬者、前記薬等に関する情報を記憶し且つ非接触で読取が可能な情報記憶ディバイスが装着されている薬収納容器であって、
少なくとも前記封止部分に前記情報記憶ディバイスが装着されていることを特徴とする薬収納容器。
【請求項7】
前記情報記憶ディバイスに対して設けられたアンテナ回路は、前記容器本体と前記封止部分とに跨って形成されており、
前記アンテナ回路は、前記封止部分が開封されたときに切断されて、前記情報記憶ディバイスの読取が不可能になるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の薬収納容器。
【請求項8】
請求項1,2,6のいずれか1項に記載の容器を用いて前記容器の開封を判定する容器の開封判定方法であって、
所定の検出範囲内に存在する前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報を読み取り且つ前記所定の検出範囲内に前記情報記憶ディバイスが存在しているか否かを検出する機能を有する読取リーダーを前記容器の前記封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に装着し、
前記所定位置を、開封作業中における前記作業者の手の動作範囲内で前記情報記憶ディバイスの読み取りを可能にする位置と定め、
前記開封準備作業に要する時間に基づいて予め定めた第1の時間以上、前記読取リーダーによって前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後に、予め定めた第2の時間以内に前記読取リーダーによって前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスの存在を検出しなくなった場合に前記容器の開封が行われたものと判定することを特徴とする容器の開封判定方法。
【請求項9】
前記所定位置が、前記作業者の指、手の甲、手首または手首に近い腕の部分である請求項8に記載の容器の開封判定方法。
【請求項10】
前記所定の検出範囲は、前記作業者が前記容器を指で触って作業を行っている状態において、前記情報記憶ディバイスの読み取りを行えるように定められていることを特徴とする請求項8に記載の容器の開封判定方法。
【請求項11】
前記読取リーダーは、腕時計に近似した形を有していて、前記作業者の手首に装着可能に構成されており、
前記所定の検出範囲は、前記作業者が前記容器を指で触っている状態において、前記情報記憶ディバイスの読み取りを行うように定められていることを特徴とする請求項8に記載の容器の開封判定方法。
【請求項12】
請求項3,4に記載の容器を用いて前記容器の開封を判定する容器の開封判定方法であって、
所定の検出範囲内に存在する前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報を読み取り且つ前記所定の検出範囲内に前記情報記憶ディバイスが存在しているか否かを検出する機能を有する読取リーダーを前記容器の前記封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に装着し、
前記所定位置を、開封作業中における前記作業者の手の動作範囲内で前記情報記憶ディバイスの読み取りを可能にする位置と定め、
前記読取リーダーによって前記容器本体及び前記封止部分の両方に装着した前記情報記憶ディバイスの存在を検出した後に、前記読取リーダーによって前記容器本体に装着した前記情報記憶ディバイスの存在のみを検出したときに前記容器の開封が行われたと判定することを特徴とする容器の開封判定方法。
【請求項13】
前記所定位置が、前記作業者の指、手の甲、手首または手首に近い腕の部分である請求項12に記載の容器の開封判定方法。
【請求項14】
前記所定の検出範囲は、前記作業者が前記容器を指で触って作業を行っている状態において、前記情報記憶ディバイスの読み取りを行えるように定められていることを特徴とする請求項12に記載の容器の開封判定方法。
【請求項15】
前記読取リーダーは、腕時計に近似した形を有していて、前記作業者の手首に装着可能に構成されており、
前記所定の検出範囲は、前記作業者が前記容器を指で触っている状態において、前記情報記憶ディバイスの読み取りを行うように定められていることを特徴とする請求項14に記載の容器の開封判定方法。
【請求項16】
請求項1,2,6のいずれか1項に記載の容器を用いて作業者が被投薬者に前記容器内の薬を正しく飲ませたか否かを判定する誤投薬判定方法であって、
前記容器の封止部分に前記薬に関する情報を記憶した情報記憶ディバイスを装着し、
前記被投薬者に該被投薬者に関する情報を記憶した情報記憶ディバイスを装着し、
所定の検出範囲内に存在する前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報を読み取り且つ前記所定の検出範囲内に前記情報記憶ディバイスが存在しているか否かを検出する機能を有する読取リーダーを前記容器の前記封止部分を開封する作業者の身体の所定位置に装着し、
前記所定位置を、開封作業中における前記作業者の手の動作範囲内で前記情報記憶ディバイスの読み取りを可能にする位置と定め、
最初に前記読取リーダーによって前記被投薬者に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報と前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報とを取得し、前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報と前記被投薬者に関する情報とに基づいて前記容器内の前記薬が前記被投薬者のためのものであることを確認し、
その後、前記開封作業に要する時間に基づいて予め定めた時間以上、前記読取リーダーによって前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスが存在していることを検出した後、前記読取リーダーによって前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスの存在を検出せず且つ前記被投薬者に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報から前記被投薬者を再度確認した場合に、前記容器の開封が行われ且つ前記被投薬者への投薬が完了したものと判定することを特徴とする誤投薬判定方法。
【請求項17】
前記被投薬者に装着される前記情報記憶ディバイスは、前記被投薬者の着衣の襟の部分に装着されている請求項16に記載の誤投薬判定方法。
【請求項18】
前記読取リーダーには、判定結果を記憶する記憶手段と警報発生手段とが設けられており、
前記警報発生手段は、前記封止部分に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報と前記被投薬者に関する情報とに基づいて前記容器内の前記薬が前記被投薬者のためのものではないと判断したときに作業の中止を前記作業者に知らせる警報を、前記被投薬者に知られない態様で発生するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の誤投薬判定方法。
【請求項19】
前記警報発生手段は、前記被投薬者に装着した前記情報記憶ディバイスに記憶されている情報から前記被投薬者を再度確認しないときに、作業の中止を前記作業者に知らせる警報を、前記被投薬者に知られない態様で発生するように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の誤投薬判定方法。
【請求項20】
前記警報の前記態様は、前記作業者に前記読取リーダーから振動を加える態様である請求項18または19に記載の誤投薬判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/026014
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513900(P2005−513900)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013169
【国際出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(503330130)
【Fターム(参考)】