説明

開放型電磁石装置及び磁気共鳴イメージング装置

【課題】強磁性体部材15、16の配置において製作誤差が生じても、静磁場均一度を高く維持可能な開放型電磁石装置2を提供する。
【解決手段】超電導主コイル7と超電導シールドコイル8を冷媒9aと共に内包して冷却する冷却容器9と、冷却容器9に支持される強磁性体部材15、16とを有する開放型電磁石装置2において、冷却容器9内に配置されそれぞれで囲まれる内側の領域の面積S1、S2が互いに略等しい第1超電導コイル23と第2超電導コイル24を、それぞれが作る磁場の向きが互いに逆となる様に直列接続した第1閉回路32を有し、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とは、超電導主コイル7の中心軸11方向から透視して、互いに重なっていない領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放型電磁石装置及びそれを搭載した磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、核磁気共鳴(以下、NMRという)現象により水素原子核スピンが放出する電磁波を計測し、その計測結果を演算処理することによって、被験者を体内中の水素原子核密度分布として断層像化するものである。計測する際には、観測領域内に、強い磁場強度(例えば0.2T以上)で、高い静磁場均一度(例えば10ppm程度)を有する磁場分布を形成することが求められている。このため、MRI装置には、観測領域に、強磁場の均一磁場領域を発生可能な開放型電磁石装置が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
開放型電磁石装置には、静磁場の発生源として超電導主コイルが設けられ、漏洩磁場を抑えるために超電導シールドコイルが設けられている。超電導主コイルと超電導シールドコイルは極低温に保つために冷却容器に格納され、その冷却容器は断熱のために格納される真空容器から支持されている。
【0004】
冷却容器の外側で真空容器の内側には、強磁性体部材が配置されている。この強磁性体部材は、高熱抵抗支持部材を介して冷却容器から支持されている。強磁性体部材を真空容器から支持しないのは、外気温の変化による真空容器の膨張収縮により強磁性体部材の位置が変化するのを避けるためである。この強磁性体部材によれば、開放型電磁石装置が持つ磁気回路の磁気抵抗を低減でき、一層の高磁場化が実現できる。
【0005】
一方、静磁場均一度を高めるためには、観測領域の磁場計測を行い、その計測結果を元に、傾斜磁場コイルと高周波照射装置の間に配置した磁場補正コイルに外部電源から給電する磁場調整作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−204105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁場調整作業は、設計上の静磁場均一度が得られない場合に行われる作業である。設計上の静磁場均一度が得られない理由としては、強磁性体部材が高熱抵抗支持部材を介して冷却容器に支持されているので、位置精度を確保するのが難しく、製作誤差が生じやすいためであると考えられた。強磁性体部材の配置において製作誤差が生じても、その製作誤差に応じて、自ら磁場分布を補正し、設計上の静磁場均一度を維持することが望まれた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、強磁性体部材の配置において製作誤差が生じても、静磁場均一度を高く維持可能な開放型電磁石装置及びMRI装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、超電導主コイルと超電導シールドコイルを冷媒と共に内包して冷却する冷却容器と、前記冷却容器に支持される強磁性体部材とを有する開放型電磁石装置において、
前記冷却容器内に配置されそれぞれで囲まれる内側の領域の面積が互いに略等しい第1超電導コイルと第2超電導コイルを、それぞれが作る磁場の向きが互いに逆となる様に直列接続した第1閉回路を有し、
前記第1超電導コイルと前記第2超電導コイルとは、前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、互いに重なっていない領域を有することを特徴としている。
また、本発明の開放型電磁石装置を搭載したMRI装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強磁性体部材の配置において製作誤差が生じても、静磁場均一度を高く維持可能な開放型電磁石装置及びMRI装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る開放型電磁石装置を搭載した磁気共鳴イメージング装置の側面図である。
【図2】図1のA−A方向の矢視断面図である。
【図3】超電導主コイルと超電導シールドコイルと強磁性体部材と第1超電導コイルと第2超電導コイルと冷却容器を、超電導主コイルの中心軸方向から透視した透視図である。
【図4】図2の磁気共鳴イメージング装置の矢視断面図の上側半分に、開放型電磁石装置が発生させた磁力線の磁力線図を重ねた図である。
【図5】第1超電導コイルと第2超電導コイルを、超電導主コイルの中心軸方向から透視した透視図であり、本発明の作用の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る開放型電磁石装置に備えられた超電導主コイルと超電導シールドコイルと強磁性体部材と第1超電導コイルと第2超電導コイルと第3超電導コイルと第4超電導コイルと冷却容器を、超電導主コイルの中心軸方向から透視した透視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る開放型電磁石装置に備えられた超電導主コイルと超電導シールドコイルと強磁性体部材と第1超電導コイルと第2超電導コイルと冷却容器を、超電導主コイルの中心軸方向から透視した透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)1の側面図を示す。MRI装置1は、開放型電磁石装置2を搭載している。開放型電磁石装置2は、上下一対の真空容器3と、それら上下一対の真空容器3を互いに離間させて支持する連結柱5とを有している。上下一対の真空容器3は、共通の中心軸11に対して概ね軸回転対称の円盤形状をしている。そして、この開放型電磁石装置2によれば、上下一対の真空容器3の間の球状の観測領域4に、磁場強度が例えば0.2T以上の強磁場であり、その磁場強度の均一度が例えば10ppm程度に高い静磁場(いわゆる均一磁場領域)を生成することができる。
【0014】
また、MRI装置1は、上下一対の真空容器3の間に配置されたベッド42を有している。被験者41は、ベッド42に横たえられたまま上下一対の真空容器3の間に搬送され、被験者41の観測箇所を、観測領域4内に移動させる。MRI装置1は、NMR現象により水素原子核スピンが放出する電磁波を計測し、その計測結果を演算処理することによって、被験者41を体内中の水素原子核密度分布として断層像化する。
【0015】
図2に、本発明の第1の実施形態に係るMRI装置1の縦断面図を示す。MRI装置1は、上下一対の真空容器3を外観とする開放型電磁石装置2を有し、開放型電磁石装置2は、上下一対の真空容器3の間に、静磁場の方向(矢印6の方向)が中心軸11の方向に一致する観測領域(均一磁場領域)4を発生させることができる。上下一対の真空容器3の間の空間において、前記均一磁場領域4を挟むように上下一対の傾斜磁場コイル12と、上下一対の高周波照射装置13と、上下一対の磁場補正コイル14とが設けられている。傾斜磁場コイル12は、真空容器3の均一磁場領域4側に配置されている。高周波照射装置13は、傾斜磁場コイル12の均一磁場領域4側に設置されている。磁場補正コイル14は、高周波照射装置13と傾斜磁場コイル12の間の空間に設置されている。上下一対の傾斜磁場コイル12は、被験者41の撮像において空間位置情報を付与する目的で、均一磁場領域4に磁場の空間的な変化(傾斜磁場)を印加する。上下一対の高周波照射装置13は、NMR現象を引起すための共鳴周波数の電磁波を、均一磁場領域4に印加する。上下一対の磁場補正コイル14は、外部電源(図示省略)によって電流を流し、磁場を発生させ、前記均一磁場領域4の静磁場の均一度を向上させる。
【0016】
これらの構成を用いてベッド42に搬送された被験者体内の関心領域の断面を画像化する。即ち、開放型電磁石装置2で生成した均一静磁場に、傾斜磁場コイル12で傾斜磁場を重畳させることにより関心領域(通常1mm厚のスライス面)だけを所定の磁場強度に設定する。続いて、その領域に共鳴周波数の電磁波を照射して、スライス面にだけNMR現象を引き起こさせ、水素原子核スピンが放出する電磁波に基づいて、スライス面を画像化する。
【0017】
開放型電磁石装置2は、対向して配置された上下一対の冷却容器9を、対向して配置された上下一対の真空容器3の中に一つずつ有している。冷却容器9は、真空容器3の中にあって外界から断熱されている。上下一対の冷却容器9の中には、上下一対の超電導主コイル7と、上下一対の超電導シールドコイル8と、上下一対の第1超電導コイル(製作誤差補正コイル)23と、上下一対の第2超電導コイル(製作誤差補正コイル)24とが一つずつ、冷媒の液体ヘリウム(He)と共に収容され、冷却可能になっている。上下一対の超電導主コイル7は、中心軸11を共通の中心軸とし、均一磁場領域4を挟んで対向するように配置されている。上下一対の超電導シールドコイル8は、中心軸11を共通の中心軸とし、均一磁場領域4を挟んで対向するように配置され、超電導主コイル7とは逆方向の磁場を発生するように逆向きの電流が流される。超電導主コイル7と超電導シールドコイル8とは、冷却容器9の中にあって冷媒9aによって冷却され超電導状態になっている。超電導主コイル7は、中心軸11方向に対して、超電導シールドコイル8よりも観測領域(均一磁場領域)4に近い位置に配置される。超電導シールドコイル8は、超電導主コイル7がMRI装置1の外部に生成する磁場(漏れ磁場)を抑制する磁場を生成する。超電導主コイル7と超電導シールドコイル8は、冷却容器9に支持されている。
【0018】
上下一対の第1超電導コイル23と、上下一対の第2超電導コイル24とは、中心軸11方向に対して、超電導主コイル7と超電導シールドコイル8の間に配置されている。上下一対の第1超電導コイル23と、上下一対の第2超電導コイル24とは、支持部材31を介して、冷却容器9に支持されている。冷却容器9は、熱抵抗の大きい断熱支持部材10を介して、真空容器3に支持されている。
【0019】
また、開放型電磁石装置2は、上下一対の強磁性体部材15と、上下一対の強磁性体部材16を、真空容器3の内部に有している。上下一対の強磁性体部材15は、中心軸11を共通の中心軸とする円板状であり、均一磁場領域4を挟んで対向している。上下一対の強磁性体部材16は、中心軸11を共通の中心軸とする円環状であり、均一磁場領域4を挟んで対向している。強磁性体部材15と16は、冷却容器9の外部に設けられている。また、強磁性体部材15と16は、冷却容器9の内筒壁の内側で囲まれるように配置されている。強磁性体部材16は、中心軸11方向に対して、強磁性体部材15よりも観測領域(均一磁場領域)4に近い位置に配置されている。また、強磁性体部材16は、中心軸11方向に対して、強磁性体部材15よりも超電導主コイル7に近い位置に配置されている。強磁性体部材16は、円環形状をなし、超電導主コイル7の内径、さらには、冷却容器9の内径よりも小さい外径を持っている。強磁性体部材15は、円環形状又は円盤形状をなし、強磁性体部材16の内径よりも小さい外径を持っている。強磁性体部材15と16は、成分の調整された鋼材、好ましくは純鉄で構成されている。強磁性体部材15と16は、支持部材18と高熱抵抗支持部材17と支持部材19とを介して、冷却容器9に支持されている。強磁性体部材15と16は、複数の金属製で非磁性の支持部材19で連結されている。冷却容器9には、溶接等によって非磁性の支持部材18が固定されている。高熱抵抗支持部材17は、支持部材18と支持部材19を連結している。高熱抵抗支持部材17は、熱が、支持部材19から支持部材18へ伝導するのを抑制するため、高熱抵抗率のFRP製等にされ、さらに、熱の伝導方向にできるだけ長く細く形成されている。このため、高熱抵抗支持部材17を単純に短く太く形成した場合に比べても、高熱抵抗支持部材17の変形が起こりやすく、冷却容器9に対する強磁性体部材15と16の位置(精度)において、製作誤差が生じ易くなっている。この製作誤差については後記する。
【0020】
図3に、超電導主コイル7と、超電導シールドコイル8と、強磁性体部材15、16と、第1超電導コイル23と、第2超電導コイル24と、冷却容器9を、中心軸11方向から透視した透視図を示す。冷却容器9の内筒壁と外筒壁の間に、超電導主コイル7(ライン7aは超電導主コイル7の外周を示している)と、超電導シールドコイル8(ライン8aは超電導シールドコイル8の内周を示している)と、第1超電導コイル23と、第2超電導コイル24とが配置されている。また、冷却容器9の内筒壁に囲まれるように、強磁性体部材15と16が配置されている。
【0021】
第1超電導コイル23には、中心軸23aを中心軸とする円弧形状の1巻きコイルを用いることができる。また、第2超電導コイル24には、中心軸24aを中心軸とする円弧形状の1巻きコイルを用いることができる。第1超電導コイル23と第2超電導コイル24は、超電導主コイル7の内筒面よりも外側で、超電導シールドコイル8の外筒面よりも内側にとなる様に配置されている。第1超電導コイル23と第2超電導コイル24の半径は略等しく、第1超電導コイル23で囲まれる内側の領域の面積S1と第2超電導コイル24で囲まれる内側の領域の面積S2も略等しくなっている(S1=S2)。第1超電導コイル23の中心軸23aと、第2超電導コイル24の中心軸24aとは、ずれて一致しておらず、互いに離れている。中心軸23aと中心軸24aとは、超電導主コイル7と超電導シールドコイル8の共通する中心軸11ともずれて一致しておらず離れている。中心軸23aと中心軸24aとは、中心軸11を対称軸とする軸対称の位置関係になっている。
【0022】
このずれにより、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とは、互いに重なっていない領域を有している。第1超電導コイル23と第2超電導コイル24は、一部重なり、冷却容器9の内筒壁や強磁性体部材15、16を含む領域が重なっている。この一部重なった領域は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24に共通であるので、それぞれの共通していない領域の面積、すなわち、第1超電導コイル23の外側の領域と第2超電導コイル24の内側の領域が重なる面積(図5の領域29の面積に相当)と、第1超電導コイル23の内側の領域と第2超電導コイル24の外側の領域が重なる面積(図5の領域30の面積に相当)とは、略等しくなっている。
【0023】
また、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とは、交差部32aにおいて互いに交差し、接続部32bにおいて電気的に接続されている。この接続部32bによって、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とは、直列接続され、第1閉回路32を構成している。このため、第1超電導コイル23を流れる電流Iの大きさと、第2超電導コイル24を流れる電流Iの大きさは、等しくなっている。また、交差部32aがあることによって、第1超電導コイル23を流れる電流Iの方向と、第2超電導コイル24を流れる電流Iの方向は、反対方向になっている。例えば、図3に示すように、第1超電導コイル23を流れる電流Iの方向が反時計回りであれば、第2超電導コイル24を流れる電流Iの方向は時計回りになっている。このことにより、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とが作る磁場の向きは、互いに逆になる。
【0024】
この第1超電導コイル23と第2超電導コイル24からなる第1閉回路32上には、好ましくは、図3に示すように、超電導状態を破るための超電導スイッチ33や、その場合の電流を消費する保護抵抗34も配置される。
【0025】
図4では、図2のMRI装置1の矢視断面図の上側半分に、開放型電磁石装置2が発生させた磁力線21L、21R、22L、22Rの磁力線図を重ねている。また、高熱抵抗支持部材17まわりに、製作誤差eがある場合を記載している。数値解析によれば、磁力線21L、21R、22L、22Rには大きく2種類あることが分かっている。その1つは強磁性体部材16を通過する磁力線21L、21Rであり、もう1つは強磁性体部材15を通過する磁力線22L、22Rである。これらの磁力線21L、21R、22L、22Rは、超電導シールドコイル8により下側に向かって押し曲げられるが、何れの磁力線21L、21R、22L、22Rも、超電導主コイル7と超電導シールドコイル8の間の空間を通過する。また、磁力線21L、21R、22L、22Rの一部は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24の間の空間(図5の領域29と領域30に相当)を通過する(どちらか一方のコイルのみを通過する)ようになっている。
【0026】
そして、例えば、強磁性体部材15、16が、冷却容器9(超電導主コイル7)に対して図4の右側へ変位するような製作誤差eが発生した場合は、この磁力線21L、21R、22L、22Rの間隔(即ち磁束密度B)が中心軸11を挟んで非対称となり、磁力線22Rの本数は、磁力線22Lの本数より多くなり、磁力線の間隔は狭くなる。そして、図5に示すように、第1超電導コイル23の外側かつ第2超電導コイル24の内側の領域29の磁束密度B2は、第2超電導コイル24の外側かつ第1超電導コイル23の内側の領域30の磁束密度B1より大きくなる(B1<B2)。このように、磁束密度Bが非対称な場合(B1<B2)は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24のそれぞれと鎖交する磁力線の本数の差はゼロにならない(第1閉回路32に交差する正味の磁束がゼロとならない)ので、磁束保存の法則により、その正味の磁束がゼロとなる様に、第1閉回路32(第1超電導コイル23と第2超電導コイル24)に電流Iが流れることになる。電流Iにより、前記正味の磁束をゼロとするような磁束密度Bが生じ、第1超電導コイル23の重なっていない第2超電導コイル24の領域29の磁束密度は、B2からB減少し(B2−B)、第2超電導コイル24の重なっていない第1超電導コイル23の領域30の磁束密度は、B1からB増加する(B1+B)。そして、増減後の領域29の磁束密度(B2−B)と、領域30の磁束密度(B1+B)とは略等しくなる(B2−B≒B1+B)。製作誤差eによって発生していた中心軸11に対して非対称な磁力線間隔が対称となり、製作誤差eが補正されたことになる。このことにより、磁場補正コイル14(図4等参照)を用いての磁場調整作業を軽減することができる。なお、第1の実施形態では、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24に、超電導線材を用いているが、これに限らず、常電導線材を用いてもよい。この場合、超電導スイッチ33と保護抵抗34を省けるのはもちろんである。
【0027】
(第2の実施形態)
図6に、本発明の第2の実施形態に係る開放型電磁石装置2の一部の透視図を示している。図6では、超電導主コイル7と、超電導シールドコイル8と、強磁性体部材15、16と、第1超電導コイル23と、第2超電導コイル24と、第3超電導コイル25と、第4超電導コイル26と、冷却容器9の内筒壁と外筒壁を、中心軸11方向から透視している。第2の実施形態の開放型電磁石装置2の第1の実施形態の開放型電磁石装置2との相違点は、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26を有している点である。
【0028】
冷却容器9の内筒壁と外筒壁の間に、第3超電導コイル25と、第4超電導コイル26とが配置されている。第3超電導コイル25には、中心軸25aを中心軸とする円弧形状の1巻きコイルを用いることができる。また、第4超電導コイル26には、中心軸26aを中心軸とする円弧形状の1巻きコイルを用いることができる。第3超電導コイル25と第4超電導コイル26は、超電導主コイル7の内筒面よりも外側で、超電導シールドコイル8の外筒面よりも内側にとなる様に配置されている。第3超電導コイル25と第4超電導コイル26の半径は略等しく、第3超電導コイル25で囲まれる内側の領域の面積S3と第4超電導コイル26で囲まれる内側の領域の面積S4も略等しくなっている(S3=S4)。第3超電導コイル25の中心軸25aと、第4超電導コイル26の中心軸26aとは、ずれて一致しておらず、互いに離れている。中心軸25aと中心軸26aとは、中心軸11ともずれて一致しておらず離れている。中心軸25aと中心軸26aとは、中心軸11を対称軸とする軸対称の位置関係になっている。中心軸25aと中心軸26aとを含む平面は、中心軸23aと中心軸24aとを含む平面と略直交している。
【0029】
前記ずれにより、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26とは、互いに重なっていない領域を有している。また、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とに重なっていない領域を有している。第3超電導コイル25と第4超電導コイル26は、一部重なり、冷却容器9の内筒壁や強磁性体部材15、16を含む領域が重なっている。この一部重なった領域は、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26に共通であるので、それぞれの共通していない領域の面積、すなわち、第3超電導コイル25の外側かつ第4超電導コイル26の内側の領域の面積と、第3超電導コイル25の内側かつ第4超電導コイル26の外側の領域の面積とは、略等しくなっている。
【0030】
また、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26とは、交差部35aにおいて互いに交差し、接続部35bにおいて電気的に接続されている。この接続部35bによって、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26とは、直列接続され、第2閉回路35を構成している。このため、第3超電導コイル25を流れる電流Iの大きさと、第4超電導コイル26を流れる電流Iの大きさは、等しくなっている。また、交差部35aがあることによって、第3超電導コイル25を流れる電流Iの方向と、第4超電導コイル26を流れる電流Iの方向は、反対方向になっている。例えば、図6に示すように、第3超電導コイル25を流れる電流Iの方向が時計回りであれば、第4超電導コイル26を流れる電流Iの方向は反時計回りになっている。このことにより、第3超電導コイル25と第4超電導コイル26とが作る磁場の向きは、互いに逆になる。
【0031】
第3超電導コイル25と第4超電導コイル26(第2閉回路35)は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24(第1閉回路32)を、中心軸11回りに90度回転させると重なるように配置されている。第1閉回路32と第2閉回路35とは、互いに絶縁されている。この第3超電導コイル25と第4超電導コイル26(第2閉回路35)によれば、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24(第1閉回路32)では補正できない方向の強磁性体部材15、16の製作誤差eを補正することができる。この第3超電導コイル25と第4超電導コイル26からなる第2閉回路35上には、好ましくは、図6に示すように、超電導スイッチ33や保護抵抗34も配置される。
【0032】
(第3の実施形態)
図7に、本発明の第3の実施形態に係る開放型電磁石装置2の一部の透視図を示している。図7では、超電導主コイル7と、超電導シールドコイル8と、強磁性体部材15、16と、第1超電導コイル23と、第2超電導コイル24と、冷却容器9の内筒壁と外筒壁を、中心軸11方向から透視している。第3の実施形態の開放型電磁石装置2の第1の実施形態の開放型電磁石装置2との相違点は、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とが、円形ではなく、三日月形をして、それぞれが冷却容器9の内筒壁を囲んでいない点である。第1超電導コイル23と第2超電導コイル24とは、互いに交差しない様に結線され、第1閉回路32を構成している。第1超電導コイル23と第2超電導コイル24は、互いに逆方向に電流Iが流れるように直列に結線される。そして、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24それぞれで囲まれる内側の面積S1、S2が互いに概ね同じとなる(S1=S2)様に構成される。第1閉回路32上には、好ましくは、第1超電導コイル23と第2超電導コイル24を結線する接続部32bに、超電導状態を破るための超電導スイッチ33や、その場合の電流を消費する保護抵抗34が配置されている。また、接続部32bには、前記結線を交差させた交差部32aが含まれている。この第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同じ作用で、同じ効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)
2 開放型電磁石装置
4 観測領域(均一磁場領域)
7 超伝導主コイル
8 超伝導シールドコイル
9 冷却容器
11 中心軸
15、16 強磁性体部材
17 高熱抵抗支持部材
23 第1超電導コイル(製作誤差補正コイル)
24 第2超電導コイル(製作誤差補正コイル)
25 第3超電導コイル(製作誤差補正コイル)
26 第4超電導コイル(製作誤差補正コイル)
29 第1超電導コイルの重なっていない第2超電導コイルの領域
30 第2超電導コイルの重なっていない第1超電導コイルの領域
31 支持部材
32 第1閉回路
32a 交差部
32b 接続部
35 第2閉回路
35a 交差部
35b 接続部
36 第3超電導コイルの重なっていない第4超電導コイルの領域
37 第4超電導コイルの重なっていない第3超電導コイルの領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導主コイルと超電導シールドコイルを冷媒と共に内包して冷却する冷却容器と、前記冷却容器に支持される強磁性体部材とを有する開放型電磁石装置において、
前記冷却容器内に配置されそれぞれで囲まれる内側の領域の面積が互いに略等しい第1超電導コイルと第2超電導コイルを、それぞれが作る磁場の向きが互いに逆となる様に直列接続した第1閉回路を有し、
前記第1超電導コイルと前記第2超電導コイルとは、前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、互いに重なっていない領域を有することを特徴とする開放型電磁石装置。
【請求項2】
前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、前記第1超電導コイルと前記第2超電導コイルとが、一部重なり、
前記第1超電導コイルの外側の領域と前記第2超電導コイルの内側の領域が重なる面積と、前記第1超電導コイルの内側の領域と前記第2超電導コイルの外側の領域が重なる面積とが、略等しいことを特徴とする請求項1に記載の開放型電磁石装置。
【請求項3】
前記冷却容器内に配置され、それぞれで囲まれる内側の領域の面積が互いに略等しく、それぞれが作る磁場の向きが互いに逆となる様に第3超電導コイルと第4超電導コイルを直列接続した第2閉回路を有し、
前記第3超電導コイルと前記第4超電導コイルとは、前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、互いに重なっていない領域を有し、
前記第3超電導コイルと前記第4超電導コイルは、前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、前記第1超電導コイルと前記第2超電導コイルとに重なっていない領域を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開放型電磁石装置。
【請求項4】
前記超電導主コイルの中心軸方向から透視して、前記第3超電導コイルと前記第4超電導コイルとが一部重なり、
前記第3超電導コイルの外側の領域と前記第4超電導コイルの内側の領域が重なる面積と、前記第3超電導コイルの内側の領域と前記第4超電導コイルの外側の領域が重なる面積とが、略等しいことを特徴とする請求項3に記載の開放型電磁石装置。
【請求項5】
前記超電導シールドコイルの中心軸は、前記超電導主コイルの主中心軸に略一致し、
前記第1超電導コイルの第1中心軸と、前記第2超電導コイルの第2中心軸は、前記主中心軸を対称軸とする軸対称の位置関係になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開放型電磁石装置。
【請求項6】
前記超電導シールドコイルの中心軸は、前記超電導主コイルの主中心軸に略一致し、
前記第1超電導コイルの第1中心軸と、前記第2超電導コイルの第2中心軸は、前記主中心軸を対称軸とする軸対称の位置関係になっていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の開放型電磁石装置。
【請求項7】
前記第3超電導コイルの第3中心軸は前記第4超電導コイルの第4中心軸と前記主中心軸を対称軸とする軸対称の位置関係になり、
前記第3中心軸と前記第4中心軸とを含む平面は前記第1中心軸と前記第2中心軸とを含む平面と略直交することを特徴とする請求項6に記載の開放型電磁石装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の開放型電磁石装置を搭載したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62360(P2011−62360A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216053(P2009−216053)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】