説明

開閉装置

【課題】通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、開き方向に所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れることで、アームの破損を防止する開閉装置を提供する。
【解決手段】開口21が形成された筐体20に、蓋30が取り付けられている。蓋30は、一端側を中心に開口21に対して開閉する方向に回動する。蓋30の本体31からアーム40が延設されている。アーム40の先端には係合部41が形成されており、係合部41は、第1接触面44及び第2接触面45を有する。係合部41の周辺には部分的に幅狭に形成された幅狭部47が形成されている。アーム40はアーム孔23に挿通されている。蓋30が最大まで開かれた位置で、係合部41とアーム孔23の周辺部位とが係合する。蓋30が開く向きへの所定以上の力が作用すると、幅狭部47が変形して、係合部41とアーム孔23の周辺部位との係合が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋が筐体に対して一端側を中心に回動して開閉が行われる開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体に取り付けられた蓋が筐体に対して一端側を中心に回動して開閉が行われる開閉装置が知られている。このような回動式の開閉装置は、主として、機材の一部を外部から遮断して保護するため、そして、機材の一部を必要な時だけ外部からアクセス可能な状態にするために使用されている。回動式の開閉装置は、電子機器を初めとする様々な機材に使用されており、一例として、小物の収納容器、電子写真装置、及びカード挿入スロット等に使用されている。
【0003】
また、回動式の開閉装置は、インクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジを装着するスロットを外部に対して遮断又は開放するためにも使用されている。スロットは、筐体に形成された開口の奥に設けられている。平常時には、蓋が開口に対して閉じられた状態となっており、スロットは外部から遮断されている。インクカートリッジの交換の際、ユーザはスロットにアクセスするために蓋を回動させて、蓋が開口に対して開かれた状態にする。インクカートリッジの交換後、ユーザは蓋を逆向きに回動させて、再び蓋が開口に対して閉じられた状態にする。
【0004】
開閉装置には、蓋の開きすぎを防止するアームを備えたものがある。一般的な構成では、アームは蓋から延設されており、アームの先端側が筐体に設けられた孔に挿入されている。蓋が閉じられた状態にあるとき、アームは筐体の内部に収容されている。蓋が開く向きに回動されると、アームは筐体の内部から部分的に脱抜されていく。アームの先端には突起等を有した係合部が形成されており、孔の周辺部位と係合するようになっている。係合部が孔の周辺部位と係合することで、アームは筐体の内部から完全には脱抜されず、蓋の回動が係止される。つまり、蓋は、所定の角度まで開かれると、それ以上開く向きに回動することはできず、蓋の開きすぎが防止される。
【0005】
また、特許文献1には、蓋が閉じられた位置から筐体面に沿ってスライドすることで、蓋の開く向きへの回動が阻止される開閉装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−225402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アームを備えた開閉装置において、蓋が最大まで開かれた状態で蓋に開く向きへの大きな力が加えられると、開閉装置を構成する部品が破損するおそれがある。蓋の設けられる位置や蓋が回動する向きによっては、蓋の回動が開閉装置の載置面によって止められて、蓋の開きすぎが防止されることもある。しかしながら、蓋が開閉装置の上部に設けられている場合や、開閉装置がテーブルや台の端に置かれた場合には、蓋の回動が開閉装置の載置面によって止められないため、上述のような問題が起こりやすい。特に、突起等を有した係合部は、負荷によって破損しやすい。また、上述されたようなインクジェットプリンタには、アームが機械式センサとして機能しているものがある。そのような機種では、アームの位置によって蓋の開閉状態が判断されるため、アームの破損によって機器が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0008】
蓋が開く向きへ所定以上の力が掛かったときに係合部の係合が解除されるようにすることで、部品の破損を防止することができる。係合が解除されると、アームは筐体の内部から完全に脱抜された状態となる。その際、ユーザは再びアームを筐体の内部にセットする必要がある。通常の使用で係合が簡単に解除されてしまうと、ユーザは頻繁にアームを筐体の内部にセットすることになる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アームを備えた開閉装置において、通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、開き方向に所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れることで、アームの破損を防止する開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は、蓋が筐体の開口に対して一端側を中心に回動し、上記筐体に対して閉じられた第1位置から、当該開口を開放する第2位置まで回動可能な開閉装置である。上記筐体は、上記開口の周縁に設けられた孔を有している。上記蓋は、第1位置及び第2位置へ回動して上記開口を開閉する本体と、当該本体から延出されて上記孔に挿通された平板形状のアームと、を有している。上記アームは、上記本体が第2位置であるときに、上記孔の周縁と係合して、上記本体が第2位置より開く向きへ回動することを制止する係合部と、当該係合部の近傍であって平板形状の幅が狭くなるようにくびれた幅狭部と、を有している。上記係合部は、上記アームから平板形状の幅方向へ突出して上記孔の周縁と当接する第1接触部と、上記アームから平板形状の厚み方向へ突出して上記孔の周縁と当接する第2接触部を有している。上記第1接触部及び上記第2接触部は、上記幅狭部が変形することにより上記孔を挿通可能である。
【0011】
蓋が第2位置にある場合、アームの係合部が、第1接触部及び第2接触部において孔の周縁と係合している。蓋に所定以上の開く向きの力が作用すると、第1接触部及び第2接触部の少なくとも一方が押圧されて幅狭部が変形する。幅狭部が変形することで係合部の係合が解除され、第1接触部及び第2接触部は、孔から完全に脱抜される。
【0012】
本構成では、幅狭部がくびれて湾曲しやすくなっているため、蓋に大きな開く向きの力が作用した場合においても、アームの係合部が破損する前に幅狭部が変形し、係合部の係合が解除される。すなわち、アームが孔から完全に脱抜されて、アームの破損が防止される。
【0013】
(2) 上記幅狭部は、上記アームの他の部分よりも撓みやすいものであってもよい。
【0014】
幅狭部がアームの他の部分よりも撓みやすく構成されることで、蓋に開き方向の力が作用した際に、係合部の係合が解除されやすくすることができる。
【0015】
(3) 上記第1接触部は、上記本体が第2位置であるときに、上記アームが脱抜される向きへ向く第1接触面を有し、上記第2接触部は、上記本体が第2位置であるときに、上記蓋の回動中心側へ向く第2接触面を有していてもよい。
【0016】
(4) 上記第2接触面は、上記平板形状の表裏面の一方と交差するものであってもよく、上記第2接触面と上記表裏面の一方との境界が曲面であってもよい。
【0017】
第2接触面と上記表裏面の一方との境界が曲面として形成されることで、第2接触面に大きな力が掛かった場合にも、係合部が破損することを回避することができる。
【0018】
(5) 上記孔は、上記本体が第2位置であるときに、上記第1接触面及び上記第2接触面とそれぞれ当接する第1枠面及び第2枠面を有する枠体に形成されたものであってもよい。
【0019】
(6) 上記アームは、上記蓋の回動方向に沿った円弧状であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、開く向きに所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れることで、アームの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の斜視図であり、蓋30が閉位置にある状態を示すものである。
【図2】図2は、複合機10の斜視図であり、蓋30が開位置にある状態を示すものである。
【図3】図3は、プリンタ部17の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図4は、図2の蓋30周辺を拡大した要部拡大図である。
【図5】図5(A)は、左右方向13の右側からアーム40の先端側を観察した側面図である。図5(B)は、前後方向12の後方からアーム40の先端側を観察した正面図である。
【図6】図6は、図5(A)の、V−V切断線における断面図である。
【図7】図7は、外側筐体部材26を取り外した状態において、複合機10の内側から蓋30を観察した斜視図である。
【図8】図8は、図7のアーム孔23周辺を拡大した要部拡大図である。
【図9】図9は、アーム40がアーム孔23から脱抜される際の動作を示す概略図であり、アーム孔23周辺を複合機10の内側から観察したものである。(A)は、係合部41と切片49とが係合した状態を示し、(B)は、係合部41と切片49との係合が解除された瞬間の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向14が定義され、蓋30が設けられている側を手前側(正面)として前後方向12が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向13が定義される。
【0023】
[複合機10の概要]
図1,2に示される複合機10(本発明の開閉装置の一例)は、筐体20(本発明の筐体の一例)の内部に、インクジェット記録方式のプリンタ部17が収容されたものである。筐体20は、複数の部材によって構成されているが、複合機10の外部からは、複合機10の側面を形成する外側筐体部材26のみが視認可能である。
【0024】
複合機10の正面右側には、蓋30が取り付けられている。蓋30の裏側において、内側筐体部材25(図2,4)によって開口21(本発明の開口の一例)が形成されている。蓋30は、開口21に対して開閉自在に取り付けられている。図2,4においては省略されているが、開口21の奥部には、後述されるインクカートリッジ80(図3を参照)を装着するためのスロット78(図3を参照)が設けられている。複合機10の正面中央には、記録用紙61が積載された給紙トレイ11が装着されている。給紙トレイ11は、複合機10に対して前後方向12に挿抜可能となっている。
【0025】
複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有しているが、プリント機能以外の機能の有無は任意である。なお、本実施形態において、複合機10はプリンタ機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0026】
[プリンタ部17]
図3に示されるように、プリンタ部17は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙61に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ部17は、インク供給装置62を備えている。インク供給装置62には、スロット78が設けられている。スロット78には、インクカートリッジ80が装着され得る。スロット78には、その一面が外部に開放された装着口64が設けられている。インクカートリッジ80は、装着口64を介してスロット78に挿入され、或いはスロット78から抜き出される。
【0027】
インクカートリッジ80には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。スロット78に装着された状態において、インクカートリッジ80と、記録部76のキャリッジ81に設けられた記録ヘッド82とがインクチューブ79で接続されている。記録ヘッド82にはサブタンク(不図示)が設けられている。サブタンクは、インクチューブ79を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。キャリッジ81が左右方向13(紙面に対して垂直な方向)に移動する中で、記録ヘッド82は、インクジェット記録方式によって、サブタンクから供給されたインクをノズル(不図示)から選択的に吐出する。
【0028】
給紙トレイ11から給紙ローラ63によって搬送路71へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対74によってプラテン77上へ搬送される。記録ヘッド82は、プラテン77上を通過する記録用紙61に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙61に記録される。プラテン77を通過した記録用紙61は、排出ローラ対85によって、搬送路71の最下流側に設けられた排紙トレイ86に排出される。
【0029】
[蓋30]
図1,2に示されるように、筐体20には、蓋30が取り付けられている。蓋30は、下端33側を中心に上端32側が第1向き15(図1)に回動して、開口21に対して閉じられた閉位置(本発明の第1位置の一例、図1の位置)から、筐体20に対して所定の角を為すように開かれた開位置(本発明の第2位置の一例、図2の位置)まで姿勢変化可能である。また、蓋30は、下端33側を中心に上端32側が第1向き15とは反対向きの第2向き16(図2)に回動して、開位置から閉位置に復帰することができる。
【0030】
図4に示されるように、蓋30は、概ね平板状の本体31(本発明の本体の一例)と本体31の裏面34から延設された平板状のアーム40(本発明のアームの一例)とを有する。本体31とアーム40とは一体成形されており、例えば熱可塑性樹脂によって製造されていてもよい。アーム40の先端には突起状の係合部41が形成されている。係合部41の周辺にはアーム40の幅が狭くされた幅狭部47が形成されている。
【0031】
左右方向13の両端部周辺において、本体31は裏面34側に湾曲されている。すなわち、本体31は、上端32又は下端33側から見て略コの字状の形状を有している。本体31の上端32周辺において、裏面34から突起35が突出されている。突起35は、蓋30が閉位置にあるとき、後述される筐体20の係止部(不図示)によって係止される。突起35及び係止部は、自重や外部からの振動によって蓋30が閉位置から開位置に姿勢変化することを防止するものである。
【0032】
左右方向13において湾曲された本体31の両端部周辺から、内側に向かって回動用凸部(不図示)が突出されている。回動用凸部は、下端33近くに設けられており、左右方向13に対向配置されて一対を為している。回動用凸部は、長さ数ミリ程度の円柱状の突起である。回動用凸部は、後述される張り出し部29に形成された2つの回動用凹部(不図示)にそれぞれ挿入されている。
【0033】
アーム40は、本体31の裏面34において、左右方向13の右端付近から延設されている。アーム40は、左右方向13に薄平な平板であり、本体31の下端33側に湾曲されて円弧を為している。平面視において円弧の接線と直交する方向の寸法(以下、単に幅と称される。)は、アーム40の基端(本体31側)において最も長く、先端側に向かって短くなっている。アーム40は、後述される筐体20のアーム孔23に挿通されており、蓋30の回動を案内すると同時に、蓋30の開きすぎを防止するものである。
【0034】
アーム40の先端には、図5に示される係合部41(本発明の係合部の一例)が形成されている。係合部41は、アーム40の円弧の外側に向けて突出する突起状である。係合部41において、左右方向13の右側の面(本発明の表裏面の一方)からリブ42が突出されている。図5(B)に示されるように、リブ42によって、係合部41は、アーム40の他の部分よりも左右方向13に厚みを有している。図5(A)に示されるように、リブ42は直線状に形成された2つの側縁43を有する。2つの側縁43によって、係合部41が突出する方向に沿った第1接触面44(本発明の第1接触面の一例)、及びアーム40が延出する方向に沿った第2接触面45(本発明の第2接触面の一例)が形成されている。第1接触面44と第2接触面45とは、係合部41の基端側付近で交差して鋭角を為している。第1接触面44及び第2接触面45は、蓋30が開位置のときに、後述される第1枠面27及び第2枠面28にそれぞれ当接するものである。ここで、リブ42における第1接触面44及び第2接触面45の周辺部位が、それぞれ本発明の第1接触部及び第2接触部の一例である。
【0035】
図5(A),図6に示されるように、アーム40の右側の面と第2接触面45との連続部分(本発明の境界の一例)には、アール46が形成されている。すなわち、アーム40の右側の面と第2接触面45とが交差する部分が、曲面状に形成されている。アール46は第2接触面45を押圧する力に対して、係合部41の剛性を高くするためのものである。
【0036】
図5に示されるように、係合部41の周辺には、アーム40の他の部分と比較して幅が狭い幅狭部47(本発明の幅狭部の一例)が形成されている。
【0037】
[筐体20]
図1,2,4に示される筐体20は、複数の部材が組み合わせられて構成されている。図4に示されるように、例えば、筐体20は、内部空間を有する枠状の内側筐体部材25と、複合機10の側面を構成する外側筐体部材26とを含むものである。内側筐体部材25は、給紙トレイ11よりも左右方向13の右側に配置されており、内部空間が複合機10の前面に露出されている。内側筐体部材25の内部空間が複合機10の前面に露出されることで、開口21が形成されている。開口21は矩形の孔であり、外部からスロット78に繋がる通路を形成している。外側筐体部材26は、内側筐体部材25を含む複合機10の構成部材を左右方向13及び前後方向12に取り囲んでいる。すなわち、複合機10の側面を形成している。ただし、複合機10の前面において、給紙トレイ11及び開口21が存在する部分は外側筐体部材26によってカバーされていない。内側筐体部材25及び外側筐体部材26は、例えば熱可塑性樹脂によって製造されてもよい。
【0038】
図4,7に示されるように、開口21の下方には、開口21よりも前後方向12の前方に張り出された張り出し部29が形成されている。上述された通り、張り出し部29の左右方向13の両端には、2つの回動用凹部が形成されている。本体31は、略コの字状に湾曲された左右方向13の両端部周辺が、張り出し部29を左右方向13の外側から覆うように配置されている。回動用凸部は、それぞれ回動用凹部に挿入されている。すなわち、本体31が張り出し部29に嵌め込まれた状態になっている。これにより、本体31は、2つの回動用凸部を結んだ仮想直線を中心に回動することができる。なお、図4に示される向きからは視認できないが、開口21の上下方向14の上方には、上述された突起35を係止する係止部が形成されている。
【0039】
開口21の左右方向13の右側には、アーム孔23(本発明の孔の一例)が形成されている。アーム孔23は、縦長形状の矩形の孔である。アーム孔23の左右方向13の寸法は、アーム40の係合部41の厚みよりも長く、上下方向14の寸法は、アーム40の最大の幅、すなわち最基端側における幅よりも長い。アーム孔23にはアーム40が挿通されている。アーム40は、アーム孔23の左右方向13の概ね右側に寄るように位置されており、アーム40の右側の面が内側筐体部材25に接触している。
【0040】
図8に示されるように、複合機10の内側において、内側筐体部材25のアーム孔23を構成する右側の枠の上部に切片49が形成されている。切片49は、内側筐体部材25の側面24と交差する2つの面である第1枠面27(本発明の第1枠面の一例)及び、第2枠面28(本発明の第2枠面の一例)に沿って形成されている。すなわち、枠の一部が第1枠面27と第2枠面28とに沿って切り取られた形状を為している。第1枠面27と第2枠面28とは、切片49の奥部で交差して鋭角を為している。
【0041】
[蓋30及び筐体20の動作]
蓋30が閉位置にあるとき、すなわち図1の状態において、アーム40は、大部分がアーム孔23の内部に収容されている。また、蓋30の突起35は、係止部によって係止されている。係止部が突起35を係止する力を上回る第1向き15の力が蓋30に作用すると、突起35の係止が解除されて、蓋30は下端33側を中心に第1向き15に回動する。アーム40の右側の面が内側筐体部材25に接触しているため、アーム40が枠に対して摺動し、蓋30は左右方向13にがたつくことなく回動する。蓋30が開位置まで回動すると、図7,8に示されるように、アーム40の大部分がアーム孔23から脱抜され、アーム40の係合部41が切片49に係合した状態となる。つまり、第1接触面44は、アーム40が脱抜される側に向けられて、第1枠面27と当接する。第2接触面45は、上下方向14の下方、すなわち蓋30の回動中心側に向けられて、第2枠面28と当接する。これにより、アーム40はアーム孔23から完全には脱抜されず、蓋30の第1向きの回動が係止される。
【0042】
この状態で、蓋30に対して所定以上の第1向き15の力が作用すると、第1向き15の力は、第1接触面44が第1枠面27を押圧する力の成分と、第2接触面45が第2枠面28を押圧する力の成分とに分解される。その力の大部分は、上下方向14の下向きの力、すなわち第2接触面45が第2枠面28を押圧する力となる。
【0043】
第2接触面45は、アーム40の右側の面と交差しているため、第2接触面45が第2枠面28を押圧する力の一部は、アーム40を図9(A)の第3向き50に湾曲させる力に変換される。幅狭部47は、アーム40の他の部分よりも幅が狭く形成されているため、撓みやすい。したがって、アーム40は、幅狭部47よりも先端側が第3向き50に捻れるように変形する。幅狭部47よりも先端側が第3向き50に捻れることで、図9(B)に示されるように、第1接触面44と第1枠面27とが当接しない状態となり、係合部41と切片49との係合が解除される。こうして、係合部41がアーム孔23を挿通可能となり、アーム40はアーム孔23から完全に脱抜される。
【0044】
アーム孔23から完全に脱抜されたアームは、ユーザが再びアーム孔23にセットすることができる。ユーザは、手指によってアーム40の幅狭部47よりも先端側を第3向き50に湾曲させた状態を維持しながら、アーム40をアーム孔23に挿入する。以上の手順によって、アーム40は、再びアーム孔23に挿通された状態となる。
【0045】
[実施形態の作用効果]
本実施形態に係る複合機10は、アーム40の幅狭部47がくびれて湾曲しやすくなっているため、蓋30に大きな第1向きの力が作用した場合においても、アーム40が破損する前に幅狭部が変形して内部に作用する応力を逃がすことができる。また、幅狭部47よりも先端側が第3向きに変形し、係合部41と切片49との係合が解除されるため、アーム40の破損が防止される。
【0046】
また、アーム40の左右方向13の右側の面と第2接触面45との連続部分には、アール46が形成されているため、第2接触面45を押圧する力に対する剛性が高くされている。したがって、開位置において、蓋30に第1向き15の大きな力が作用して第2接触面45が第2枠面28から力を受けたとしても、係合部41が破損することを防止することができる。
【0047】
また、アーム40の右側の面が内側筐体部材25に対して摺動するため、蓋30は左右方向13にがたつくことなく回動することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る蓋30は、製造が容易であり、剛性が高い。
【0049】
[変形例]
上述された実施形態において、リブ42の側縁によって第1接触面44及び第2接触面45が形成されているが、係合部41の形状は上述された実施形態に限定されるものではない。すなわち、第1接触面44及び第2接触面45は、上述された実施形態と同等の機能を有するものあれば異なる形状に形成されていてもよい。例えば、第1接触面44及び第2接触面45は、必ずしもリブ42の側縁に形成されている必要はない。同様に、内側筐体部材25の切片49の形状についても同様に、上述された実施形態と異なる形状に形成されていてもよい。当業者は、第1接触面44と第1枠面27とが当接する面積や角度、及び第2接触面45と第2枠面28とが当接する面積や角度によって、係合部41と切片49との係合が解除されるために必要な第1向き15の力を変更してもよい。
【0050】
また、上述された実施形態において、幅狭部47を撓みやすくするため、幅狭部47の幅が狭くされているが、幅狭部47を撓みやすくするために他の方法が用いられてもよい。例えば、図5に示されるアーム40の幅狭部47のうち、係合部41の付け根部48周辺には、部分的に弾性係数の高い材料が使用されていてもよい。それにより幅狭部47は、アーム40の他の部分と比較して左右方向13に撓みやすくされてもよい。幅狭部47の撓みやすさを決定する際に、例えば左右方向13への曲げに対する断面2次モーメントが基準とされてもよい。弾性係数の高い材料には、当業者が最適なものを選択することができる。その一例として、例えばフィラーを多く含んだ樹脂が使用されてもよい。弾性係数の高い材料によって幅狭部47を撓みやすくすることで、蓋に第1向き15の力が作用した際に、係合部41と切片49との係合がより解除されやすくすることができる。
【0051】
また、幅狭部47を撓みやすくするため、幅狭部47の幅に加えて厚みが薄くされてもよい。あるいは、幅狭部47が湾曲する方向に沿ってスリットが設けられてもよい。また、上述された方法のうちの複数が組み合わせられて使用されてもよい。
【0052】
また、本発明に係る開閉装置は、必ずしも複合機10のようなプリント機能を備えた機器として構成される必要はなく、蓋やアームは、必ずしもインクカートリッジ80を装着するスロット78に対して使用される必要はない。例えば、本発明は、上述されたように小物の収納容器、電子写真装置、及びカード挿入スロット等に使用されてもよい。つまり、機材の一部を外部に対して遮断及び開放することが求められるあらゆる機材が、本発明に係る開閉装置として構成されうるものである。
【符号の説明】
【0053】
10・・・複合機(開閉装置)
20・・・筐体
25・・・内側筐体部材(枠体)
21・・・開口
23・・・アーム孔(孔)
27・・・第1枠面
28・・・第2枠面
30・・・蓋
31・・・本体
40・・・アーム
41・・・係合部
44・・・第1接触面
45・・・第2接触面
47・・・幅狭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋が筐体の開口に対して一端側を中心に回動し、上記筐体に対して閉じられた第1位置から、当該開口を開放する第2位置まで回動可能な開閉装置であって、
上記筐体は、上記開口の周縁に設けられた孔を有しており、
上記蓋は、第1位置及び第2位置へ回動して上記開口を開閉する本体と、当該本体から延出されて上記孔に挿通された平板形状のアームと、を有しており、
上記アームは、上記本体が第2位置であるときに、上記孔の周縁と係合して、上記本体が第2位置より開く向きへ回動することを制止する係合部と、当該係合部の近傍であって平板形状の幅が狭くなるようにくびれた幅狭部と、を有しており、
上記係合部は、上記アームから平板形状の幅方向へ突出して上記孔の周縁と当接する第1接触部と、上記アームから平板形状の厚み方向へ突出して上記孔の周縁と当接する第2接触部を有しており、
上記第1接触部及び上記第2接触部は、上記幅狭部が変形することにより上記孔を挿通可能である開閉装置。
【請求項2】
上記幅狭部は、上記アームの他の部分よりも撓みやすいものである請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
上記第1接触部は、上記本体が第2位置であるときに、上記アームが脱抜される向きへ向く第1接触面を有し、
上記第2接触部は、上記本体が第2位置であるときに、上記蓋の回動中心側へ向く第2接触面を有する請求項1又は2に記載の開閉装置。
【請求項4】
上記第2接触面は、上記平板形状の表裏面の一方と交差するものであり、
上記第2接触面と上記表裏面の一方との境界が曲面である請求項3に記載の開閉装置。
【請求項5】
上記孔は、上記本体が第2位置であるときに、上記第1接触面及び上記第2接触面とそれぞれ当接する第1枠面及び第2枠面を有する枠体に形成されたものである請求項1から4のいずれかに記載の開閉装置。
【請求項6】
上記アームは、上記蓋の回動方向に沿った円弧状である請求項1から5のいずれかに記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−232469(P2012−232469A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102184(P2011−102184)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】