関心領域決定装置
【課題】統計的に有意な異常がある部位を関心領域として設定する上で、有意水準の設定による相違を考慮して、関心領域を適切に設定できるようにする。
【解決手段】入力された健常者と患者の両方の標準臓器画像群の一部に対して複数の有意水準に関する2群間検定処理を行って複数の関心領域を作成し(ステップ1)、入力された画像群の一部に対して健常者との統計的比較処理を行い(ステップ2)、該比較結果を基に複数の関心領域に関する関心領域内の評価処理を行い(ステップ3)、各評価処理結果に関して関心領域内診断性能算出処理を行い(ステップ4)、ある有意水準の関心領域と標準臓器画像の重畳画像を作成し(ステップ5)、該重畳画像と有意水準別の関心領域内診断性能の表示を行い(ステップ6)、ユーザの有意水準の入力と確認表示を繰り返して、関心領域の決定を支援する。
【解決手段】入力された健常者と患者の両方の標準臓器画像群の一部に対して複数の有意水準に関する2群間検定処理を行って複数の関心領域を作成し(ステップ1)、入力された画像群の一部に対して健常者との統計的比較処理を行い(ステップ2)、該比較結果を基に複数の関心領域に関する関心領域内の評価処理を行い(ステップ3)、各評価処理結果に関して関心領域内診断性能算出処理を行い(ステップ4)、ある有意水準の関心領域と標準臓器画像の重畳画像を作成し(ステップ5)、該重畳画像と有意水準別の関心領域内診断性能の表示を行い(ステップ6)、ユーザの有意水準の入力と確認表示を繰り返して、関心領域の決定を支援する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心領域決定装置に係り、特にMRI(Magnetic Resonance Imaging)等により脳を含む臓器を複数の患者と健常者について撮像し、得られた各画像を標準化処理した標準臓器画像を入力し、これら画像群に対する統計処理等を通してユーザが疾患別に適切な関心領域を決定する場合の支援を行なう際に適用して好適な関心領域決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来により、脳の機能低下に起因する痴呆性疾患の患者が年々増加している。痴呆性疾患には様々な種類があり、診断においてはそれらを区別して、疾患に応じた適切な処置を施すことが必要である。
【0003】
一方、このような要請に応えるべく、近年、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(Positron Emission Tomography)等の核医学検査や、CT(Computerized Tomography)やMRIによって脳の状態に関する情報が取得可能になってきている。
【0004】
その結果、脳の特定部位の血流が低下したり、組織が萎縮したりする現象が、疾患によって異なることが明らかになってきており、これらに対する定量的な評価方法が求められている。
【0005】
例えば、脳の局所的な部位の血流低下は、SPECTやPETの画像によって比較することにより検定することができる。
【0006】
又、組織の萎縮に関しては、MRI画像によって特定部位の容積を求め、その相対的な大きさを比較することにより異常の有無を判別できる。
【0007】
このような脳画像を用いて異常の有無を判別する場合には、画像上に所定の大きさの関心領域(regions of interest:ROI)を設定する関心領域法が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。これは、脳画像上において、特定の疾患に関係するとして注目されている特定部位に所定の大きさの関心領域を設定して比較を行なうものである。
【0008】
このような関心領域を設定して画像診断を行う手法は、脳だけに限られるものではなく胸部や肺などの画像診断にも用いられる。例えば、超音波診断装置による心臓の断層像に対する関心領域の設定について、特許文献1に記載されている。そこで、ここでは臓器に脳が含まれるものとして説明する。
【0009】
ところが、上記のような従来の関心領域法は、オペレータが画像上で対応する部位の輪郭を入力装置を使って手動で描いて目的の関心領域を設定していることから、その精度に視覚や経験の差による人為的な誤差が入り込むことになり、そのために客観的なデータに基づく診断支援ができないという問題があった。
【0010】
そこで、最近のアルツハイマー型認知症(痴呆)に関する研究では、健常者とアルツハイマー型認知症患者の画像群に関する2群間解析を行い、統計的に有意に萎縮している領域を関心領域とする手法が採用されるようになっている(例えば、非特許文献2参照)。
【0011】
このように、経験上得られる情報を利用する手動による特定部位の指定方法ではなく、数学的に導かれる情報を利用する2群間解析による手法を採用することにより、関心領域を客観的な評価に基づいて設定する技術が、特許文献2に開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開平8−66399号公報
【特許文献2】特開2005−237441号公報
【非特許文献1】松田博史:SPECTの統計学的画像解析.アルツハイマー型痴呆の画像診断,メジカルビュー社:pp.76−86(2001).
【非特許文献2】Hirata Y, Matsuda H, Nemoto K, et al.: Voxel-based morphometry to discriminate early Alzheimer’s disease from controls.Neurosci Lett, 382, 269-274, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、2群間解析において統計的に有意であることの判断は、有意水準の設定に基づいており、有意水準の設定の仕方により、関心領域の形状も診断性能に関しても異なったものとなる。
【0014】
その上、例えば、アルツハイマー型認知症(痴呆)であれば海馬が萎縮することが経験的に知られており、従って2群間解析により得られた関心領域が、海馬と一致しているかどうかにも注目しなければ、正確な診断に結びつけることができない。
【0015】
本発明は、前記従来の問題点を解決すべくなされたもので、健常者の臓器画像と患者の臓器画像とを比べて統計的に有意な異常がある部位を関心領域として設定する上で、有意水準の設定による関心領域の相違を考慮すると共に、経験に基づいた適切な関心領域を決定する際の支援を行うことができ、その結果ユーザに対して客観的な診断結果を提示することができるようになる関心領域決定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、関心領域決定装置において、標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に2群間検定処理を行なって、複数の有意水準に対応する関心領域をそれぞれ作成する2群間検定機能と、標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に統計的比較処理を行なって、統計的に有意な差があるボクセルを検出して診断用比較結果を作成する統計的比較処理機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域内の診断用比較結果をそれぞれ評価する関心領域内評価機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域に関して、該関心領域内の評価結果を基に診断性能をそれぞれ算出する診断性能算出機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域と標準臓器画像との重畳画像を作成し、対応する診断性能と併せて画面上に表示させる重畳画像作成処理機能と、前記有意水準を設定変更する機能とを有していることにより、前記課題を解決したものである。
【0017】
本発明においては、前記有意水準を、p値及びt値の少なくとも一方で設定するようにしてもよい。
【0018】
又、本発明においては、前記統計的比較処理を、関心領域を構成するボクセルのZスコアを算出して行なうようにしてもよい。
【0019】
又、本発明においては、前記関心領域内の評価を、該関心領域内の全ボクセルのZスコアの平均値、及び、統計的に有意な差があるボクセルの数の少なくとも一方を算出して行なうようにしてもよい。
【0020】
又、本発明においては、前記診断性能を、ROC解析により行なうようにしてもよい。その場合、前記ROC解析により算出される診断性能を、設定される有意水準に対応する正診率、及び、前記ROC解析により得られるROC曲線を0≦x≦1で積分した値を表わすAzの少なくとも一方のグラフとして画面表示するようにしてもよい。
【0021】
本発明は、又、前記関心領域決定装置をコンピュータで実現するためのコンピュータ読取可能なプログラムとしたものである。
【0022】
本発明は、更に、上記コンピュータ読取可能なプログラムが格納された記録媒体としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユーザが2群間解析における有意水準別の診断性能を確認する機能と、ユーザが有意水準を設定変更する機能とを有し、有意水準の変更と同時に、その閾値に対応した関心領域を標準臓器画像に重畳した画像を表示できるようにすると共に、有意水準に対応した診断性能を表示できるようにしたので、ユーザは経験に基づく診断性能を確認しながら関心領域を決定することができるため、ユーザに対して関心領域の決定の支援を行うことができる。その結果、ユーザに対して客観的で適切な診断結果を提示することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、便宜上、ここでは臓器画像として脳画像を取り挙げる。
【0025】
図1は、本発明に係る一実施形態である関心領域決定装置(システム)を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態の診断支援システムは、ユーザインタフェース10、画像・統計処理部20及びデータベース部30を備えている。ユーザインタフェース10は入力画像としてMRI画像を入力する画像入力機能11と、処理部20で作成された関心領域と標準臓器画像との重畳画像を表示する関心領域確認機能12とを有している。
【0027】
又、この処理部20はユーザインタフェース10から入力されたMRI画像について、後に詳述する2群間検定を行って関心領域を抽出する2群間検定機能21と、統計的比較処理機能22と、関心領域内評価機能23と、診断性能算出機能24と、重畳画像作成処理機能25とを有している。又、データベース部30には、処理部20による後述する処理に使用する健常者画像データベース31及び標準脳画像を含む標準臓器画像32等が保存されている。
【0028】
まずは、本実施形態の関心領域決定装置に入力される標準化された脳画像、即ち標準脳画像(標準臓器画像)について、灰白質を抽出した灰白質脳画像を例に説明する。
【0029】
予め多数の健常者及び患者からMRI脳画像を取得し、取得した各MRI脳画像の前処理を行なっておく。具体的には、図2に脳全体とその一部を切り出したスライス画像のイメージを示すように、被検者の脳全体を含むように所定厚さのスライス状に撮像した、例えば100〜200枚のT1強調MRI画像とする。又、各スライス画像におけるボクセル(voxel)の各辺の長さを予め等しくなるようにスライス画像のリサンプリングを行なっておく。ここでボクセルは、「厚さ」を持つ画像の座標単位であり、2次元画像におけるピクセルに相当する。
【0030】
このような前処理を行なった後、そのスライス画像の撮像方向や解像度が、予めシステムに設定されている条件に適合しているか否かをチェックする。撮像方向には、図2に示したaxial(transverse):横断面の他に、図示しないsagittal:矢状断面(側面からの縦切り)やcoronal:冠状断面(正面からの縦切り)がある。
【0031】
以上のように、MRI脳画像が、設定条件に適合していることが確認された場合には、位置合わせ処理を行なう。
【0032】
この処理は、入力された脳画像を、後述する処理において、標準的な脳画像テンプレートと比較する際の精度を上げるために、線形変換(アフィン変換)によって空間的位置と角度の補正を行なっていることに相当する。
【0033】
以上の位置合わせが終了した後、特定組織の一つである灰白質の抽出処理を行なう。
【0034】
通常、T1強調MRI脳画像では、神経細胞に対応する灰色の灰白質、それより明るい神経繊維に対応する白質、黒に近い脳脊髄液の3種類の組織が含まれている。そこで、痴呆性疾患の診断では灰白質組織に着目して、該組織を抽出する処理を行なう。
【0035】
以上のように灰白質組織が抽出された脳画像に対して、画像のS/N比を向上させ、次の解剖学的標準化に用いるテンプレート画像とsmoothnessが等しくなるようにすることを目的として、3次元ガウシアンカーネルによって第1の画像平滑化を行なう。
【0036】
具体的な処理としては、3次元的脳画像と、3次元ガウシアン関数の3次元的な畳み込み(コンボリューション)を行なう。これは、x、y、z各方向における1次元の畳み込みを逐次的に行なうことで可能である。
【0037】
以上のように灰白質脳画像のsmoothnessを調整した後、解剖学的標準化と呼ばれる処理を行なう。これは、個人の間に存在する脳画像の解剖学的な違いを吸収するために、脳全体の大きさに対する大局的な補正と、部分的な大きさに対する局所的な補正を行なうことにより、標準化された脳画像(臓器画像)を作成するものである。
【0038】
具体的には、図3に処理の特徴を概念的に示すように、線形変換と非線形変換を用いて、標準的な灰白質脳画像テンプレートとの誤差の平方和が最小になるように画像処理を行なう。ここで用いる灰白質脳画像テンプレートは、多くの健常者から灰白質組織を抽出した脳画像から得られている平均画像である。この解剖学的標準化処理では、初めに線形変換による位置や大きさ、角度の大局的な補正を行ない、次に非線形変換によって局所的な凹凸等の形状の補正を行なう。
【0039】
以上のように解剖学的標準化を施した灰白質脳画像(標準脳画像)に対して、第2の画像平滑化の処理を行なう。
【0040】
これは、上記標準脳画像のS/N比を向上させると共に、後に比較を行なう画像群と画像のsmoothnessを等しくするための処理であり、前記第1の平滑化と同様に3次元ガウシアンカーネルを使用して行なう。
【0041】
以上のように第2の画像平滑化を行なった標準脳画像に対して、濃度値補正を行なう。ここでは、ボクセルを単位とした画素値に相当するボクセル濃度値の補正を行なう。
【0042】
これは、後に比較を行なう際に標準として使用する健常者の画像群におけるボクセル値の分布に合わせる処理であり、脳全体のボクセル値を補正する。具体的には、図4に濃度値補正の特徴を示すように、全ボクセルについて以下の変換式により濃度値の補正を行なう。
【0043】
x’=(MEANnormal/MEANsubject)・x …(1)
但し、x:補正前の濃度値
x’:補正後の濃度値
MEANnormal:健常者画像群の全ボクセル濃度値の平均
MEANsubject:処理対象画像の全ボクセル濃度値の平均
【0044】
以上の脳画像に対する標準化等の処理は、前記特許文献2と同様に行なうことができる。
【0045】
次に、本実施形態において実行される、データ入力から関心領域の決定するまでの基本的な処理手順を図5に示す。
【0046】
まず、ユーザは、統計処理が可能な数の健常者及び患者について前述した標準化処理が施されたMRI脳画像(図では“脳”を省略)群D1〜D5をデータとして入力し、所定のメモリーに保存する(ステップ0)。
【0047】
データ入力に際しては、ステップS1の2群間検定処理で使用するD1およびD2と、ステップ2の統計的比較処理で使用するD3およびD4の指定を行う。ここで入力される画像群は、複数の健常者および患者の3次元画像を標準座標系に変換し、前述した位置合わせ、特定組織の抽出、平滑化などを行ってあるものとする。
【0048】
入力方法は、図6に、2群間検定処理で用いる画像と診断性能比較で使用する画像を明確に区別した場合の、ユーザインターフェース10の画像入力機能12による実装例を示すように、入力する画像を2群間検定に用いるものと診断性能比較に用いるものを明確に分けた上で、それぞれ健常者と患者の振り分けを行う。但し、ユーザは健常者と患者の振り分けのみを行い、2群間検定に用いるか診断性能比較に用いるかはシステムがランダムに選択する方式としてもよい。
【0049】
D5は、ステップ2においてD3およびD4の画像群に対して比較対照とされる健常者画像群であり、後述する図10の左側で示される健常者群に相当する。この画像も3次元画像を標準座標系に変換させた画像である。
【0050】
このD5の画像は、2群間検定処理で使用するD1を利用する形態としても、システムにあらかじめ実装してある図1の健常者画像データベース31を使用する形態としてもよく、更にはステップ0におけるデータの入力時に2群間検定処理で用いる画像および診断性能比較で使用する画像とは別に入力する形態としてもよい。ただし、D1、D2、D3、D4、D5を作成するまでの過程である標準化処理およびその他の画像処理は統一することが望ましい。
【0051】
本実施形態においては、前記ステップ0で、ユーザが健常者と患者の両方を含んでいる標準化済み臓器画像群を入力すると、入力された画像群の一部に対して、前記2群間検定機能21により複数の有意水準に関する2群間検定処理を行ない(ステップ1)、各有意水準に対応する関心領域D7を作成する。又、入力された画像群の一部に対して、前記統計比較処理機能22により健常者画像群との統計的比較処理を行い(ステップ2)、その統計的比較処理の結果に対して、前記関心領域内評価機能23により複数の関心領域に関する関心領域内の評価処理を行い(ステップ3)、複数の関心領域内の評価処理結果に関して、前記診断性能算出機能24により関心領域内診断性能算出処理を行い(ステップ4)、前記重畳画像作成処理機能25によりある有意水準の関心領域と、データベース部30から読み出した標準臓器画像との重畳画像を作成する処理を行い(ステップ5)、ユーザインターフェース10の関心領域確認機能11により、作成された標準臓器画像と関心領域の重畳画像および有意水準別の関心領域内診断性能が画面表示される(ステップ6)。
【0052】
ユーザは、その表示を見ながら関心領域が決定するまで(ステップ7)、有意水準の入力を行い(ステップ8)、入力された有意水準に対応してステップ5で作成され、ステップ6で画面上に繰り返し表示される画像を確認することにより、関心領域を決定することができるようになっている。
【0053】
このフローチャートでステップ1〜5の各処理は、コンピュータからなる前記画像・統計処理部20においてプログラムにより実施可能になっている。
【0054】
上記図5の基本的処理フローについて、以下に詳細に説明する。
【0055】
疾患別に設定される関心領域(疾患特異的関心領域)を、入力された健常者画像群D1と患者画像群D2を用いて、ステップ1の2群間検定により作成する。
【0056】
関心領域は、次の統計的解析処理により作成される。例えば、ある特定の疾患の関心領域を作成するためには、図7にイメージを示すように、ある疾患の患者画像群と健常者画像群(図では“画像”を省略)とについて、ボクセル単位で2群間の有意差を統計的に検定する2標本t検定を行なうことにより求める。この検定によって有意差が認められたボクセルを、その疾患における特徴的なボクセルとみなし、その座標の集合をその疾患に対応する関心領域とする。
【0057】
このt検定により算出されるt値は、2群の分散が等しい場合は次の式により求められる。
【0058】
【数1】
【0059】
なお、2群の等分散性が疑わしい場合は、Welchの方法によるt検定を行ってもよい。
【0060】
関心領域の決定をt値で行ってもよいが、より一般的なp値による表現を使用してもよい。t値とp値の関係は、自由度と検定の手法によって多少変化するが、t値が大きくなるとp値も大きくなるという関係は変わらない。このことについては、T.D.V.Swinscow(著), M.J.Campbell(著), 折笠 秀樹(監訳)「はじめて学ぶ医療統計学, 総合医学社, 71-87, 2003.」に詳しい。
【0061】
自由度は、健常者群の人数をN1、患者群の人数をN2とした場合、N1+N2−2で与えられる。例えば、健常者が8人、患者が8人の場合の自由度は14となる。
【0062】
検定の手法には、両側検定と片側検定とがある。通常は両側検定を採用するが、健常者と患者の画像において同一座標のボクセルのボクセル値が、常に一方が低い値であることがわかっている場合には片側検定を採用してもよい。
【0063】
図8には、自由度14のt分布の例を示す。自由度14において両側検定を行った場合は、5%の有意水準での棄却域は、t値が−2.145以下および2.145以上である。この範囲内(図中網掛け部分)に収まっている場合は、有意水準5%で有意に差があるとされる。この有意水準がp値である。
【0064】
t値からp値を求めるときは多重検定であることを考慮した補正を行ってもよい。次に代表的な補正方法であるBonferroni補正を使用した例を示す。
【0065】
全ボクセルの有意水準をαとする場合、各ボクセルの有意水準βはαをボクセル数で割った値とする。Bonferroni補正は、全ボクセルの有意水準をαにするために、各ボクセルの有意水準βをp値として使用するものである。
【0066】
例えば、自由度が14、ボクセル数が106、全ボクセルの有意水準を5%とした場合は、各ボクセルの有意水準は5×10-6%である。この場合、各ボクセルの棄却域は、t値が−10.515以下および10.515以上となる。
【0067】
各ボクセルのt値またはp値の算出結果から、図9(A)にイメージを示すような臓器全体についてのt値マップまたはp値マップを作成することができる。
【0068】
図9(A)に示したマップに対して、t値またはp値が一定の閾値以上である領域を関心領域とする閾値処理を施すことにより、同図(B)にイメージを示すような関心領域D7が作成される。
【0069】
診断性能比較をグラフで表示するため、複数種類の閾値について関心領域D1を作成する。例えば、p値の場合は対数間隔で10パターン等といったものにする。
【0070】
上記閾値処理以外に、t値またはp値が一定の値以上であるボクセルが一定の数以上繋がった領域のみを関心領域とする閾値処理を行ってもよい。
【0071】
以上のステップ1の2群間検定処理による関心領域D7の作成と共に、同様に標準化処理が行われている複数の画像群に対して、ステップ2の統計的比較処理を行う。
【0072】
ここでは、ステップ0において入力された標準化処理が行われているD3とD4の健常者および患者の各画像群に関して、同じく標準化処理が行われているD5の健常者画像群との比較処理を行う。D5の健常者画像群の年齢構成は、診断性能向上のためにD3およびD4の各画像群の年齢に近いもので構成されていることが望ましい。
【0073】
ここで行なう統計的比較処理の具体例のイメージを図10に示す。左側の健常者画像群はD5であり、右側の診断性能比較用データはD3又はD4の一つを代表させたものである。D3およびD4の全ての診断性能比較用画像群(データ)に関して、図10で示されるように、健常者画像群とボクセル単位で1:N(NはD5の健常者画像の総数)の比較検定を行い、統計的に有意な差が見られる、即ち異常と推定されるボクセルを検出する。
【0074】
そのために、まず、全てのボクセルについて、それぞれ次式で表わされるZスコアを算出する。
【0075】
【数2】
【0076】
このように、Zスコアは、診断性能比較用画像のボクセル値と、健常者画像群の対応するボクセルのボクセル値平均との差を、標準偏差でスケーリングした値であり、これは灰白質容積の相対的低下の度合を示すものである。
【0077】
次に、適当な臨界値Z’を定め、Zスコアが
Z’<Z …(4)
となるようなボクセルを求め、統計的に有意な差が見られるボクセルとする。臨界値には、約95%以上の確率で異常と推定できるZ’=2や、低下部位を全て示すためのZ’=0などを用いる。
【0078】
又、この関心領域決定システムにおいては、収集したこれらの健常者画像を、例えば5歳毎又は10歳毎というように年代別に分類し、それぞれの群について算出した平均値と標準偏差を記憶装置に保存しておくことにより、Zスコアによる検定を行なうことができる。
【0079】
又、その際には、診断性能比較者の年齢を中心とした一定の年齢幅に区切って、例えば診断性能比較者の年齢が76歳の場合であれば、それを中心とした74〜78歳(幅を5歳とした)の範囲の健常者画像を収集し、比較するようにしてもよい。
【0080】
なお、このようにZスコアを使用する場合には、ボクセル毎に上記平均値と標準偏差のデータだけを持っていればよいので、データ作成後は画像データ自体を保存しておく必要がないという利点もある。
【0081】
図11は、有意水準として設定した閾値の違いによる関心領域(ROI)D7と、ステップ3による関心領域内の評価処理を示す概念図である。
【0082】
ここでは、まず、この図11にイメージを示すように、閾値A〜Cの閾値別の関心領域が用意されている場合を例として、診断性能比較者がある閾値Aの疾患を罹患しているか否かを判別する方法を説明する。なお、この方法に適用する各関心領域と、その判別に用いる閾値等の取得方法については後述する。
【0083】
前記ステップ2で診断性能比較用図像(データ)を用いて統計的比較処理を行なった結果得られた、前記(4)式を満たすために異常と推定されたボクセルの脳座標上の分布であるZスコアマップを作成し、閾値Aに対応する関心領域について、以下の値を算出する。
【0084】
kROI…関心領域部分において式(4)を満たすボクセルの数
MEANROI…関心領域部分において式(4)を満たすボクセルのZスコアの平均
【0085】
このように、閾値Aの関心領域におけるZスコアの平均等に基づいて罹患の程度を評価することができる。
【0086】
次に、ステップ4の診断性能算出処理について説明する。病態識別値(カットオフ値)の決定は、その疾患について、一般的なROC(Receiver Operating Characteristic)解析によって行なう。ROC解析とは、ある検査方法について、疾患を検出する能力を定量的に解析するための一般的な手法である。
【0087】
各関心領域に関してROC解析を行なってROC曲線を求め、求められたROC曲線について、ROC曲線より下の面積Az(ROC曲線を0≦x≦1で積分した値)、感度=特異度となるときの正診率とを求め、診断性能とする。
【0088】
このROC解析については、白石順二:診断能の評価−ROC解析の実験方法.日本放射線技術学会誌.55(4),362−368,1999.に説明がある。
【0089】
次に、一例として、以下にkROIをパラメータPとし、該パラメータPとそのカットオフ値coPによって疾患の有無を識別する場合について、カットオフ値coPを求める方法について説明する。
【0090】
P>coPのとき陽性、P≦coPのとき陰性となる検査を考え、多数のサンプルについて、検査による陽陰性と、実際の疾患の有無についてその組合せを調べると、図12の表に示すような、TP(真陽性),FP(偽陽性),FN(偽陰性),TN(真陰性)の各数値が得られる。更にこれらの値から、真陽性率(TPF:患者を正しく患者と判別した割合)、偽陽性率(FPF:健常者を誤って患者と判定した割合)が次式のように表わされる。
【0091】
TPF=TP/(TP+FN)
FPF=FP/(FP+TN)
【0092】
ある1つのcoPに対して、(TPF,FPF)の組が1つ求まるが、このカットオフ値をさまざまに変えることによって得られる(TPF,FPF)をプロットした一例が、図13に示すROC曲線である。
【0093】
図14に示す値の頻度分布から直接ROC曲線を作成すると、この図13のような不規則なROC曲線が得られる。このままカットオフ値coPを求めてもよいが、頻度分布を図15に示すように正規分布に近似させて、図16のようなROC曲線にすることにより境界線を求めてもよい。なお、図14、図15で横軸はボクセル数又はZスコア平均である。
【0094】
検査においては、TPFが高く、FPFが低くなることが望ましいが、ROC曲線においては最も左上の点がそれに対応する。この図16で言えば、点Dに対応するカットオフ値を採用するのが良いということになる。
【0095】
これを、パラメータと疾患有無の観点から考えると、パラメータが1つの場合は、図15に示すように、疾患有りの分布と疾患無しの頻度分布とを、最も良く(誤りなく)分ける境界線が、ここで求められたカットオフ値に対応している。
【0096】
次に、ステップ5の重畳画像作成処理について説明する。図17は、ステップ6で関心領域確認表示を行なうユーザインターフェース10の関心領域確認機能11による表示例を示す概念図である。この確認機能11は、画面左上の診断性能表示A、左下の閾値の変更機能(スライダー)B、右側の画像表示Cに分かれている。
【0097】
この例ではスライダーBを操作することにより、p値およびt値が変更され、画像表示Cが対応する関心領域の状態に更新される。
【0098】
診断性能表示Aにはp値と正診率の関係がグラフで表示され、スライダーBで選択されているp値に対応した正診率を確認できるようになっている。
【0099】
有意水準を表わす閾値として、スライダーBで選択中のp値とt値の値が表示される。但し、この値に直接入力してスライダーの状態を変更できるようにしてもよい。また、p値またはt値に関心領域を作成していない値が指定された場合は、関心領域の作成および診断性能の算出を追加で行ったのち、診断性能表示と画像表示を更新するようにしてもよい。閾値の表示および入力方法としては、t値とp値の両方であってもよいし、いずれか一方であってもよい。
【0100】
又、画像表示Cには、標準臓器画像と関心領域の重畳画像が表示される。
【0101】
図17の例では、前述した3方向の表示により、3次元の画像を確認可能とした場合である。但し、3方向の表示においてカーソル位置を変更することで別の面を表示できるようにしてもよい。
【0102】
3方向の表示ではなく、1方向の断面を表示してスライス位置を指定できるようにしてもよいし、投影画像を作成して脳表上で関心領域を確認できるようにしてもよく、ある方向のスライスが一覧で表示されるようにしてもよい。
【実施例】
【0103】
アルツハイマー型痴呆(AD)の関心領域を作成するために、MRIで患者群と健常者群の脳のT1強調画像を撮像し、各画像を、DICOMフォーマットとして保持しておく。DICOMフォーマットは、1ファイルにヘッダ部と画像データ部を含む医療画像で一般的に用いられる画像フォーマットであり、画像撮影時のパラメータや診断情報を保存しておくことができる。通常、DICOM画像ファイル1つが1枚のスライス画像の情報を有し、複数枚のDICOM画像によって、3次元的な脳画像を表現する。DICOM画像はDICOMサーバに保管され、必要に応じて引き出すことができる。
【0104】
DICOM画像ファイルは複数枚によって脳全体の3次元的情報を表現するが、DICOMファイルのヘッダ部のみ、及び画像データ部のみを連結した形式に変換する。
【0105】
脳画像の画像処理を行なうためのツールをソフトウェアに実装したものとして、SPM(Statistical Parametric Mapping)等が知られている。本実施例における入力画像の作成には、このSPMを適用した。
【0106】
以上の条件の下、入力したMRI脳画像群に対して、前記図5のステップ1〜8の各処理を行なった。
【0107】
前述した如く、脳には組織として、灰白質、白質、脳脊髄液があるが、アルツハイマー型認知症(痴呆)の診断には、灰白質を対象とすることが有効であることが知られている。そのため、SPMを用いて、解剖学的標準化の前に脳画像から灰白質を抽出した。
【0108】
灰白質の抽出に使用する灰白質画像のテンプレートとしては、SPMで用いられる、151人の健常者画像から得られた灰白質、白質、脳脊髄液の事前生起(存在)確率を計算したもので、1ボクセルサイズが2mm四方で、FWHM(半値幅)=8mmのガウシアンフィルタをかけたものを用いた。
【0109】
解剖学的標準化では、上記健常者画像から得られた灰白質画像をテンプレートとして用いることにより標準化を行なった。
【0110】
また、健常者群80例とアルツハイマー型認知症群61例のSPMによるグループ解析により、有意水準がp値で10-1〜10-13の範囲内となるように13通りの関心領域を作成した。
【0111】
次いで、健常者群41例とアルツハイマー型認知症群30例において、個々のアルツハイマー型認知症例に対して健常者群80例と脳局所ボクセル毎にZ検定を行い、13通りの関心領域における臨界値を0としたZスコア平均値を算出した。個々の健常者に対しても、健常者群80例との間でZ検定を行い、同様に関心領域における臨界値を0としたZスコア平均値を算出した。
【0112】
更に、13通りの関心領域に関して、ROC解析により診断性能を算出した。その結果、p値に対する、Azと正診率の関係が図18のような結果が得られた。
【0113】
この図18の結果では、p値が10-12から10-8の場合の正診率が高い値を示している。また、p値が10-7から10-4にかけて徐々に正診率が減少しているが、p値10-3において再び正診率が増加していることがわかった。
【0114】
図19は3種類のp値に関しての関心領域の例であり、白い箇所が関心領域である。
【0115】
正診率が最も高かったp値は10-12の場合であり、関心領域が海馬付近となっていた。アルツハイマー型認知症では海馬が萎縮していることが経験的に知られていることから、経験的な知識と一致していることがわかる。なお、図中MNI座標系は、SPMで使用されている標準脳の座標系である。
【0116】
又、図18に示すように、p値が10-4と10-3では10-3の方が高い正診率となっているが、図19に示すとおり、後者の関心領域となる範囲が脳の外側に広くなっていることが分る。この結果からは、若年のアルツハイマー型痴呆の患者には、脳の側頭頭頂葉に萎縮が見られるという報告があり、その点と関係があるのではないかということが示唆される。
【0117】
以上のように、複数のp値を有意水準とした関心領域どうしを比較することは有効であり、本実施形態のように図17のようなユーザインタフェースを採用することにより、その比較を容易に可能とすることができる。
【0118】
図18、図19のような例の場合、図17に示すユーザインタフェースを使用する手順としては、次のような流れが考えられる。
【0119】
前記図5のフローチャートでステップ4が終了した後、ステップ5において、D6の標準臓器画像と、D7の複数種類作成された関心領域のうちステップ8で有意水準(閾値)として入力されたp値に対応する関心領域との重畳画像が作成される。ただし、p値の初期値としては、一例として最も正診率が高くなる10-12が採用される。
【0120】
初期値であるp値が10-12に対応する関心領域と標準臓器画像の重畳画像が作成された後ち、ステップ6において図17に示すような関心領域確認表示が実行される。診断性能表示Aには、図18に示すグラフが表示され、スライダーBはp値10-12を指し示す。その際、画像表示Cには、標準臓器画像と、図19のp値10-12の関心領域との重畳画像が表示され、海馬付近に関心領域が生成されたことをユーザが確認できる。
【0121】
又、ステップ7の分岐により、関心領域を決定する前に、ユーザは図18に示す診断性能表示のグラフの形状から、p値が10-4と10-3の場合の関心領域の形状の確認を実施したいと考え、ステップ8の手順としてスライダーBを10-4に移動させる。
【0122】
すると、ステップ5の重畳画像作成処理の後、ステップ6の関心領域確認表示における画像表示Cがp値10-4の場合に切り替わる。更に、p値が10-3の関心領域も確認するため、ステップ8の手順としてユーザによりスライダーBがp値10-3に変更され、S5の重畳画像作成処理後、ステップ6による画像表示がp値10-3の場合に切り替わる。
【0123】
この操作の後、ユーザはステップ7の分岐により、関心領域は最初に確認したp値10-12の場合が最適であるとして、それを関心領域とすることに決め、関心領域の決定作業を終了する。
【0124】
このように、2群間検定を用いて関心領域を作成する場合、複数の有意水準を設定したそれぞれの場合における関心領域の形状と正診率の情報が、関心領域を作成する上での重要な支援情報であることがわかる。
【0125】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0126】
例えば、前記実施形態では、脳画像について説明したが、心臓や肺等の他の臓器画像を対象としてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る一実施形態の関心領域決定装置の概要を示すブロック図
【図2】脳のスライス画像とボクセルの特徴を模式的に示す概念図
【図3】解剖学的標準化の特徴を模式的に示す概念図
【図4】ボクセル濃度値の補正処理の特徴を示す概念図
【図5】本実施形態による関心領域決定の基本処理フローを示すフローチャート
【図6】画像入力機能を示す概念図
【図7】2群間検定処理の特徴を示す概念図
【図8】t分布の特徴を示す概念図
【図9】2群間検定処理結果データに対する閾値処理の概念図
【図10】ボクセル毎の比較検定の特徴を示す概念図
【図11】関心領域内の評価処理の特徴を示す概念図
【図12】検査の陽陰性と疾患の有無の関係を示す図表
【図13】ROC曲線の一例を示す線図
【図14】標本の頻度分布と閾値の関係を示す概念図
【図15】正規化された頻度分布頻度分布と閾値の関係を示す概念図
【図16】正規化されたROC曲線の一例を示す線図
【図17】関心領域確認表示器脳を示す概念図
【図18】閾値と診断性能の関係を示す線図
【図19】閾値と関心領域との関係を示す説明図
【符号の説明】
【0128】
10…ユーザインタフェース
20…画像・統計処理部
30…データベース部
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心領域決定装置に係り、特にMRI(Magnetic Resonance Imaging)等により脳を含む臓器を複数の患者と健常者について撮像し、得られた各画像を標準化処理した標準臓器画像を入力し、これら画像群に対する統計処理等を通してユーザが疾患別に適切な関心領域を決定する場合の支援を行なう際に適用して好適な関心領域決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来により、脳の機能低下に起因する痴呆性疾患の患者が年々増加している。痴呆性疾患には様々な種類があり、診断においてはそれらを区別して、疾患に応じた適切な処置を施すことが必要である。
【0003】
一方、このような要請に応えるべく、近年、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(Positron Emission Tomography)等の核医学検査や、CT(Computerized Tomography)やMRIによって脳の状態に関する情報が取得可能になってきている。
【0004】
その結果、脳の特定部位の血流が低下したり、組織が萎縮したりする現象が、疾患によって異なることが明らかになってきており、これらに対する定量的な評価方法が求められている。
【0005】
例えば、脳の局所的な部位の血流低下は、SPECTやPETの画像によって比較することにより検定することができる。
【0006】
又、組織の萎縮に関しては、MRI画像によって特定部位の容積を求め、その相対的な大きさを比較することにより異常の有無を判別できる。
【0007】
このような脳画像を用いて異常の有無を判別する場合には、画像上に所定の大きさの関心領域(regions of interest:ROI)を設定する関心領域法が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。これは、脳画像上において、特定の疾患に関係するとして注目されている特定部位に所定の大きさの関心領域を設定して比較を行なうものである。
【0008】
このような関心領域を設定して画像診断を行う手法は、脳だけに限られるものではなく胸部や肺などの画像診断にも用いられる。例えば、超音波診断装置による心臓の断層像に対する関心領域の設定について、特許文献1に記載されている。そこで、ここでは臓器に脳が含まれるものとして説明する。
【0009】
ところが、上記のような従来の関心領域法は、オペレータが画像上で対応する部位の輪郭を入力装置を使って手動で描いて目的の関心領域を設定していることから、その精度に視覚や経験の差による人為的な誤差が入り込むことになり、そのために客観的なデータに基づく診断支援ができないという問題があった。
【0010】
そこで、最近のアルツハイマー型認知症(痴呆)に関する研究では、健常者とアルツハイマー型認知症患者の画像群に関する2群間解析を行い、統計的に有意に萎縮している領域を関心領域とする手法が採用されるようになっている(例えば、非特許文献2参照)。
【0011】
このように、経験上得られる情報を利用する手動による特定部位の指定方法ではなく、数学的に導かれる情報を利用する2群間解析による手法を採用することにより、関心領域を客観的な評価に基づいて設定する技術が、特許文献2に開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開平8−66399号公報
【特許文献2】特開2005−237441号公報
【非特許文献1】松田博史:SPECTの統計学的画像解析.アルツハイマー型痴呆の画像診断,メジカルビュー社:pp.76−86(2001).
【非特許文献2】Hirata Y, Matsuda H, Nemoto K, et al.: Voxel-based morphometry to discriminate early Alzheimer’s disease from controls.Neurosci Lett, 382, 269-274, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、2群間解析において統計的に有意であることの判断は、有意水準の設定に基づいており、有意水準の設定の仕方により、関心領域の形状も診断性能に関しても異なったものとなる。
【0014】
その上、例えば、アルツハイマー型認知症(痴呆)であれば海馬が萎縮することが経験的に知られており、従って2群間解析により得られた関心領域が、海馬と一致しているかどうかにも注目しなければ、正確な診断に結びつけることができない。
【0015】
本発明は、前記従来の問題点を解決すべくなされたもので、健常者の臓器画像と患者の臓器画像とを比べて統計的に有意な異常がある部位を関心領域として設定する上で、有意水準の設定による関心領域の相違を考慮すると共に、経験に基づいた適切な関心領域を決定する際の支援を行うことができ、その結果ユーザに対して客観的な診断結果を提示することができるようになる関心領域決定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、関心領域決定装置において、標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に2群間検定処理を行なって、複数の有意水準に対応する関心領域をそれぞれ作成する2群間検定機能と、標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に統計的比較処理を行なって、統計的に有意な差があるボクセルを検出して診断用比較結果を作成する統計的比較処理機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域内の診断用比較結果をそれぞれ評価する関心領域内評価機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域に関して、該関心領域内の評価結果を基に診断性能をそれぞれ算出する診断性能算出機能と、前記有意水準に対応する複数の関心領域と標準臓器画像との重畳画像を作成し、対応する診断性能と併せて画面上に表示させる重畳画像作成処理機能と、前記有意水準を設定変更する機能とを有していることにより、前記課題を解決したものである。
【0017】
本発明においては、前記有意水準を、p値及びt値の少なくとも一方で設定するようにしてもよい。
【0018】
又、本発明においては、前記統計的比較処理を、関心領域を構成するボクセルのZスコアを算出して行なうようにしてもよい。
【0019】
又、本発明においては、前記関心領域内の評価を、該関心領域内の全ボクセルのZスコアの平均値、及び、統計的に有意な差があるボクセルの数の少なくとも一方を算出して行なうようにしてもよい。
【0020】
又、本発明においては、前記診断性能を、ROC解析により行なうようにしてもよい。その場合、前記ROC解析により算出される診断性能を、設定される有意水準に対応する正診率、及び、前記ROC解析により得られるROC曲線を0≦x≦1で積分した値を表わすAzの少なくとも一方のグラフとして画面表示するようにしてもよい。
【0021】
本発明は、又、前記関心領域決定装置をコンピュータで実現するためのコンピュータ読取可能なプログラムとしたものである。
【0022】
本発明は、更に、上記コンピュータ読取可能なプログラムが格納された記録媒体としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユーザが2群間解析における有意水準別の診断性能を確認する機能と、ユーザが有意水準を設定変更する機能とを有し、有意水準の変更と同時に、その閾値に対応した関心領域を標準臓器画像に重畳した画像を表示できるようにすると共に、有意水準に対応した診断性能を表示できるようにしたので、ユーザは経験に基づく診断性能を確認しながら関心領域を決定することができるため、ユーザに対して関心領域の決定の支援を行うことができる。その結果、ユーザに対して客観的で適切な診断結果を提示することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、便宜上、ここでは臓器画像として脳画像を取り挙げる。
【0025】
図1は、本発明に係る一実施形態である関心領域決定装置(システム)を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態の診断支援システムは、ユーザインタフェース10、画像・統計処理部20及びデータベース部30を備えている。ユーザインタフェース10は入力画像としてMRI画像を入力する画像入力機能11と、処理部20で作成された関心領域と標準臓器画像との重畳画像を表示する関心領域確認機能12とを有している。
【0027】
又、この処理部20はユーザインタフェース10から入力されたMRI画像について、後に詳述する2群間検定を行って関心領域を抽出する2群間検定機能21と、統計的比較処理機能22と、関心領域内評価機能23と、診断性能算出機能24と、重畳画像作成処理機能25とを有している。又、データベース部30には、処理部20による後述する処理に使用する健常者画像データベース31及び標準脳画像を含む標準臓器画像32等が保存されている。
【0028】
まずは、本実施形態の関心領域決定装置に入力される標準化された脳画像、即ち標準脳画像(標準臓器画像)について、灰白質を抽出した灰白質脳画像を例に説明する。
【0029】
予め多数の健常者及び患者からMRI脳画像を取得し、取得した各MRI脳画像の前処理を行なっておく。具体的には、図2に脳全体とその一部を切り出したスライス画像のイメージを示すように、被検者の脳全体を含むように所定厚さのスライス状に撮像した、例えば100〜200枚のT1強調MRI画像とする。又、各スライス画像におけるボクセル(voxel)の各辺の長さを予め等しくなるようにスライス画像のリサンプリングを行なっておく。ここでボクセルは、「厚さ」を持つ画像の座標単位であり、2次元画像におけるピクセルに相当する。
【0030】
このような前処理を行なった後、そのスライス画像の撮像方向や解像度が、予めシステムに設定されている条件に適合しているか否かをチェックする。撮像方向には、図2に示したaxial(transverse):横断面の他に、図示しないsagittal:矢状断面(側面からの縦切り)やcoronal:冠状断面(正面からの縦切り)がある。
【0031】
以上のように、MRI脳画像が、設定条件に適合していることが確認された場合には、位置合わせ処理を行なう。
【0032】
この処理は、入力された脳画像を、後述する処理において、標準的な脳画像テンプレートと比較する際の精度を上げるために、線形変換(アフィン変換)によって空間的位置と角度の補正を行なっていることに相当する。
【0033】
以上の位置合わせが終了した後、特定組織の一つである灰白質の抽出処理を行なう。
【0034】
通常、T1強調MRI脳画像では、神経細胞に対応する灰色の灰白質、それより明るい神経繊維に対応する白質、黒に近い脳脊髄液の3種類の組織が含まれている。そこで、痴呆性疾患の診断では灰白質組織に着目して、該組織を抽出する処理を行なう。
【0035】
以上のように灰白質組織が抽出された脳画像に対して、画像のS/N比を向上させ、次の解剖学的標準化に用いるテンプレート画像とsmoothnessが等しくなるようにすることを目的として、3次元ガウシアンカーネルによって第1の画像平滑化を行なう。
【0036】
具体的な処理としては、3次元的脳画像と、3次元ガウシアン関数の3次元的な畳み込み(コンボリューション)を行なう。これは、x、y、z各方向における1次元の畳み込みを逐次的に行なうことで可能である。
【0037】
以上のように灰白質脳画像のsmoothnessを調整した後、解剖学的標準化と呼ばれる処理を行なう。これは、個人の間に存在する脳画像の解剖学的な違いを吸収するために、脳全体の大きさに対する大局的な補正と、部分的な大きさに対する局所的な補正を行なうことにより、標準化された脳画像(臓器画像)を作成するものである。
【0038】
具体的には、図3に処理の特徴を概念的に示すように、線形変換と非線形変換を用いて、標準的な灰白質脳画像テンプレートとの誤差の平方和が最小になるように画像処理を行なう。ここで用いる灰白質脳画像テンプレートは、多くの健常者から灰白質組織を抽出した脳画像から得られている平均画像である。この解剖学的標準化処理では、初めに線形変換による位置や大きさ、角度の大局的な補正を行ない、次に非線形変換によって局所的な凹凸等の形状の補正を行なう。
【0039】
以上のように解剖学的標準化を施した灰白質脳画像(標準脳画像)に対して、第2の画像平滑化の処理を行なう。
【0040】
これは、上記標準脳画像のS/N比を向上させると共に、後に比較を行なう画像群と画像のsmoothnessを等しくするための処理であり、前記第1の平滑化と同様に3次元ガウシアンカーネルを使用して行なう。
【0041】
以上のように第2の画像平滑化を行なった標準脳画像に対して、濃度値補正を行なう。ここでは、ボクセルを単位とした画素値に相当するボクセル濃度値の補正を行なう。
【0042】
これは、後に比較を行なう際に標準として使用する健常者の画像群におけるボクセル値の分布に合わせる処理であり、脳全体のボクセル値を補正する。具体的には、図4に濃度値補正の特徴を示すように、全ボクセルについて以下の変換式により濃度値の補正を行なう。
【0043】
x’=(MEANnormal/MEANsubject)・x …(1)
但し、x:補正前の濃度値
x’:補正後の濃度値
MEANnormal:健常者画像群の全ボクセル濃度値の平均
MEANsubject:処理対象画像の全ボクセル濃度値の平均
【0044】
以上の脳画像に対する標準化等の処理は、前記特許文献2と同様に行なうことができる。
【0045】
次に、本実施形態において実行される、データ入力から関心領域の決定するまでの基本的な処理手順を図5に示す。
【0046】
まず、ユーザは、統計処理が可能な数の健常者及び患者について前述した標準化処理が施されたMRI脳画像(図では“脳”を省略)群D1〜D5をデータとして入力し、所定のメモリーに保存する(ステップ0)。
【0047】
データ入力に際しては、ステップS1の2群間検定処理で使用するD1およびD2と、ステップ2の統計的比較処理で使用するD3およびD4の指定を行う。ここで入力される画像群は、複数の健常者および患者の3次元画像を標準座標系に変換し、前述した位置合わせ、特定組織の抽出、平滑化などを行ってあるものとする。
【0048】
入力方法は、図6に、2群間検定処理で用いる画像と診断性能比較で使用する画像を明確に区別した場合の、ユーザインターフェース10の画像入力機能12による実装例を示すように、入力する画像を2群間検定に用いるものと診断性能比較に用いるものを明確に分けた上で、それぞれ健常者と患者の振り分けを行う。但し、ユーザは健常者と患者の振り分けのみを行い、2群間検定に用いるか診断性能比較に用いるかはシステムがランダムに選択する方式としてもよい。
【0049】
D5は、ステップ2においてD3およびD4の画像群に対して比較対照とされる健常者画像群であり、後述する図10の左側で示される健常者群に相当する。この画像も3次元画像を標準座標系に変換させた画像である。
【0050】
このD5の画像は、2群間検定処理で使用するD1を利用する形態としても、システムにあらかじめ実装してある図1の健常者画像データベース31を使用する形態としてもよく、更にはステップ0におけるデータの入力時に2群間検定処理で用いる画像および診断性能比較で使用する画像とは別に入力する形態としてもよい。ただし、D1、D2、D3、D4、D5を作成するまでの過程である標準化処理およびその他の画像処理は統一することが望ましい。
【0051】
本実施形態においては、前記ステップ0で、ユーザが健常者と患者の両方を含んでいる標準化済み臓器画像群を入力すると、入力された画像群の一部に対して、前記2群間検定機能21により複数の有意水準に関する2群間検定処理を行ない(ステップ1)、各有意水準に対応する関心領域D7を作成する。又、入力された画像群の一部に対して、前記統計比較処理機能22により健常者画像群との統計的比較処理を行い(ステップ2)、その統計的比較処理の結果に対して、前記関心領域内評価機能23により複数の関心領域に関する関心領域内の評価処理を行い(ステップ3)、複数の関心領域内の評価処理結果に関して、前記診断性能算出機能24により関心領域内診断性能算出処理を行い(ステップ4)、前記重畳画像作成処理機能25によりある有意水準の関心領域と、データベース部30から読み出した標準臓器画像との重畳画像を作成する処理を行い(ステップ5)、ユーザインターフェース10の関心領域確認機能11により、作成された標準臓器画像と関心領域の重畳画像および有意水準別の関心領域内診断性能が画面表示される(ステップ6)。
【0052】
ユーザは、その表示を見ながら関心領域が決定するまで(ステップ7)、有意水準の入力を行い(ステップ8)、入力された有意水準に対応してステップ5で作成され、ステップ6で画面上に繰り返し表示される画像を確認することにより、関心領域を決定することができるようになっている。
【0053】
このフローチャートでステップ1〜5の各処理は、コンピュータからなる前記画像・統計処理部20においてプログラムにより実施可能になっている。
【0054】
上記図5の基本的処理フローについて、以下に詳細に説明する。
【0055】
疾患別に設定される関心領域(疾患特異的関心領域)を、入力された健常者画像群D1と患者画像群D2を用いて、ステップ1の2群間検定により作成する。
【0056】
関心領域は、次の統計的解析処理により作成される。例えば、ある特定の疾患の関心領域を作成するためには、図7にイメージを示すように、ある疾患の患者画像群と健常者画像群(図では“画像”を省略)とについて、ボクセル単位で2群間の有意差を統計的に検定する2標本t検定を行なうことにより求める。この検定によって有意差が認められたボクセルを、その疾患における特徴的なボクセルとみなし、その座標の集合をその疾患に対応する関心領域とする。
【0057】
このt検定により算出されるt値は、2群の分散が等しい場合は次の式により求められる。
【0058】
【数1】
【0059】
なお、2群の等分散性が疑わしい場合は、Welchの方法によるt検定を行ってもよい。
【0060】
関心領域の決定をt値で行ってもよいが、より一般的なp値による表現を使用してもよい。t値とp値の関係は、自由度と検定の手法によって多少変化するが、t値が大きくなるとp値も大きくなるという関係は変わらない。このことについては、T.D.V.Swinscow(著), M.J.Campbell(著), 折笠 秀樹(監訳)「はじめて学ぶ医療統計学, 総合医学社, 71-87, 2003.」に詳しい。
【0061】
自由度は、健常者群の人数をN1、患者群の人数をN2とした場合、N1+N2−2で与えられる。例えば、健常者が8人、患者が8人の場合の自由度は14となる。
【0062】
検定の手法には、両側検定と片側検定とがある。通常は両側検定を採用するが、健常者と患者の画像において同一座標のボクセルのボクセル値が、常に一方が低い値であることがわかっている場合には片側検定を採用してもよい。
【0063】
図8には、自由度14のt分布の例を示す。自由度14において両側検定を行った場合は、5%の有意水準での棄却域は、t値が−2.145以下および2.145以上である。この範囲内(図中網掛け部分)に収まっている場合は、有意水準5%で有意に差があるとされる。この有意水準がp値である。
【0064】
t値からp値を求めるときは多重検定であることを考慮した補正を行ってもよい。次に代表的な補正方法であるBonferroni補正を使用した例を示す。
【0065】
全ボクセルの有意水準をαとする場合、各ボクセルの有意水準βはαをボクセル数で割った値とする。Bonferroni補正は、全ボクセルの有意水準をαにするために、各ボクセルの有意水準βをp値として使用するものである。
【0066】
例えば、自由度が14、ボクセル数が106、全ボクセルの有意水準を5%とした場合は、各ボクセルの有意水準は5×10-6%である。この場合、各ボクセルの棄却域は、t値が−10.515以下および10.515以上となる。
【0067】
各ボクセルのt値またはp値の算出結果から、図9(A)にイメージを示すような臓器全体についてのt値マップまたはp値マップを作成することができる。
【0068】
図9(A)に示したマップに対して、t値またはp値が一定の閾値以上である領域を関心領域とする閾値処理を施すことにより、同図(B)にイメージを示すような関心領域D7が作成される。
【0069】
診断性能比較をグラフで表示するため、複数種類の閾値について関心領域D1を作成する。例えば、p値の場合は対数間隔で10パターン等といったものにする。
【0070】
上記閾値処理以外に、t値またはp値が一定の値以上であるボクセルが一定の数以上繋がった領域のみを関心領域とする閾値処理を行ってもよい。
【0071】
以上のステップ1の2群間検定処理による関心領域D7の作成と共に、同様に標準化処理が行われている複数の画像群に対して、ステップ2の統計的比較処理を行う。
【0072】
ここでは、ステップ0において入力された標準化処理が行われているD3とD4の健常者および患者の各画像群に関して、同じく標準化処理が行われているD5の健常者画像群との比較処理を行う。D5の健常者画像群の年齢構成は、診断性能向上のためにD3およびD4の各画像群の年齢に近いもので構成されていることが望ましい。
【0073】
ここで行なう統計的比較処理の具体例のイメージを図10に示す。左側の健常者画像群はD5であり、右側の診断性能比較用データはD3又はD4の一つを代表させたものである。D3およびD4の全ての診断性能比較用画像群(データ)に関して、図10で示されるように、健常者画像群とボクセル単位で1:N(NはD5の健常者画像の総数)の比較検定を行い、統計的に有意な差が見られる、即ち異常と推定されるボクセルを検出する。
【0074】
そのために、まず、全てのボクセルについて、それぞれ次式で表わされるZスコアを算出する。
【0075】
【数2】
【0076】
このように、Zスコアは、診断性能比較用画像のボクセル値と、健常者画像群の対応するボクセルのボクセル値平均との差を、標準偏差でスケーリングした値であり、これは灰白質容積の相対的低下の度合を示すものである。
【0077】
次に、適当な臨界値Z’を定め、Zスコアが
Z’<Z …(4)
となるようなボクセルを求め、統計的に有意な差が見られるボクセルとする。臨界値には、約95%以上の確率で異常と推定できるZ’=2や、低下部位を全て示すためのZ’=0などを用いる。
【0078】
又、この関心領域決定システムにおいては、収集したこれらの健常者画像を、例えば5歳毎又は10歳毎というように年代別に分類し、それぞれの群について算出した平均値と標準偏差を記憶装置に保存しておくことにより、Zスコアによる検定を行なうことができる。
【0079】
又、その際には、診断性能比較者の年齢を中心とした一定の年齢幅に区切って、例えば診断性能比較者の年齢が76歳の場合であれば、それを中心とした74〜78歳(幅を5歳とした)の範囲の健常者画像を収集し、比較するようにしてもよい。
【0080】
なお、このようにZスコアを使用する場合には、ボクセル毎に上記平均値と標準偏差のデータだけを持っていればよいので、データ作成後は画像データ自体を保存しておく必要がないという利点もある。
【0081】
図11は、有意水準として設定した閾値の違いによる関心領域(ROI)D7と、ステップ3による関心領域内の評価処理を示す概念図である。
【0082】
ここでは、まず、この図11にイメージを示すように、閾値A〜Cの閾値別の関心領域が用意されている場合を例として、診断性能比較者がある閾値Aの疾患を罹患しているか否かを判別する方法を説明する。なお、この方法に適用する各関心領域と、その判別に用いる閾値等の取得方法については後述する。
【0083】
前記ステップ2で診断性能比較用図像(データ)を用いて統計的比較処理を行なった結果得られた、前記(4)式を満たすために異常と推定されたボクセルの脳座標上の分布であるZスコアマップを作成し、閾値Aに対応する関心領域について、以下の値を算出する。
【0084】
kROI…関心領域部分において式(4)を満たすボクセルの数
MEANROI…関心領域部分において式(4)を満たすボクセルのZスコアの平均
【0085】
このように、閾値Aの関心領域におけるZスコアの平均等に基づいて罹患の程度を評価することができる。
【0086】
次に、ステップ4の診断性能算出処理について説明する。病態識別値(カットオフ値)の決定は、その疾患について、一般的なROC(Receiver Operating Characteristic)解析によって行なう。ROC解析とは、ある検査方法について、疾患を検出する能力を定量的に解析するための一般的な手法である。
【0087】
各関心領域に関してROC解析を行なってROC曲線を求め、求められたROC曲線について、ROC曲線より下の面積Az(ROC曲線を0≦x≦1で積分した値)、感度=特異度となるときの正診率とを求め、診断性能とする。
【0088】
このROC解析については、白石順二:診断能の評価−ROC解析の実験方法.日本放射線技術学会誌.55(4),362−368,1999.に説明がある。
【0089】
次に、一例として、以下にkROIをパラメータPとし、該パラメータPとそのカットオフ値coPによって疾患の有無を識別する場合について、カットオフ値coPを求める方法について説明する。
【0090】
P>coPのとき陽性、P≦coPのとき陰性となる検査を考え、多数のサンプルについて、検査による陽陰性と、実際の疾患の有無についてその組合せを調べると、図12の表に示すような、TP(真陽性),FP(偽陽性),FN(偽陰性),TN(真陰性)の各数値が得られる。更にこれらの値から、真陽性率(TPF:患者を正しく患者と判別した割合)、偽陽性率(FPF:健常者を誤って患者と判定した割合)が次式のように表わされる。
【0091】
TPF=TP/(TP+FN)
FPF=FP/(FP+TN)
【0092】
ある1つのcoPに対して、(TPF,FPF)の組が1つ求まるが、このカットオフ値をさまざまに変えることによって得られる(TPF,FPF)をプロットした一例が、図13に示すROC曲線である。
【0093】
図14に示す値の頻度分布から直接ROC曲線を作成すると、この図13のような不規則なROC曲線が得られる。このままカットオフ値coPを求めてもよいが、頻度分布を図15に示すように正規分布に近似させて、図16のようなROC曲線にすることにより境界線を求めてもよい。なお、図14、図15で横軸はボクセル数又はZスコア平均である。
【0094】
検査においては、TPFが高く、FPFが低くなることが望ましいが、ROC曲線においては最も左上の点がそれに対応する。この図16で言えば、点Dに対応するカットオフ値を採用するのが良いということになる。
【0095】
これを、パラメータと疾患有無の観点から考えると、パラメータが1つの場合は、図15に示すように、疾患有りの分布と疾患無しの頻度分布とを、最も良く(誤りなく)分ける境界線が、ここで求められたカットオフ値に対応している。
【0096】
次に、ステップ5の重畳画像作成処理について説明する。図17は、ステップ6で関心領域確認表示を行なうユーザインターフェース10の関心領域確認機能11による表示例を示す概念図である。この確認機能11は、画面左上の診断性能表示A、左下の閾値の変更機能(スライダー)B、右側の画像表示Cに分かれている。
【0097】
この例ではスライダーBを操作することにより、p値およびt値が変更され、画像表示Cが対応する関心領域の状態に更新される。
【0098】
診断性能表示Aにはp値と正診率の関係がグラフで表示され、スライダーBで選択されているp値に対応した正診率を確認できるようになっている。
【0099】
有意水準を表わす閾値として、スライダーBで選択中のp値とt値の値が表示される。但し、この値に直接入力してスライダーの状態を変更できるようにしてもよい。また、p値またはt値に関心領域を作成していない値が指定された場合は、関心領域の作成および診断性能の算出を追加で行ったのち、診断性能表示と画像表示を更新するようにしてもよい。閾値の表示および入力方法としては、t値とp値の両方であってもよいし、いずれか一方であってもよい。
【0100】
又、画像表示Cには、標準臓器画像と関心領域の重畳画像が表示される。
【0101】
図17の例では、前述した3方向の表示により、3次元の画像を確認可能とした場合である。但し、3方向の表示においてカーソル位置を変更することで別の面を表示できるようにしてもよい。
【0102】
3方向の表示ではなく、1方向の断面を表示してスライス位置を指定できるようにしてもよいし、投影画像を作成して脳表上で関心領域を確認できるようにしてもよく、ある方向のスライスが一覧で表示されるようにしてもよい。
【実施例】
【0103】
アルツハイマー型痴呆(AD)の関心領域を作成するために、MRIで患者群と健常者群の脳のT1強調画像を撮像し、各画像を、DICOMフォーマットとして保持しておく。DICOMフォーマットは、1ファイルにヘッダ部と画像データ部を含む医療画像で一般的に用いられる画像フォーマットであり、画像撮影時のパラメータや診断情報を保存しておくことができる。通常、DICOM画像ファイル1つが1枚のスライス画像の情報を有し、複数枚のDICOM画像によって、3次元的な脳画像を表現する。DICOM画像はDICOMサーバに保管され、必要に応じて引き出すことができる。
【0104】
DICOM画像ファイルは複数枚によって脳全体の3次元的情報を表現するが、DICOMファイルのヘッダ部のみ、及び画像データ部のみを連結した形式に変換する。
【0105】
脳画像の画像処理を行なうためのツールをソフトウェアに実装したものとして、SPM(Statistical Parametric Mapping)等が知られている。本実施例における入力画像の作成には、このSPMを適用した。
【0106】
以上の条件の下、入力したMRI脳画像群に対して、前記図5のステップ1〜8の各処理を行なった。
【0107】
前述した如く、脳には組織として、灰白質、白質、脳脊髄液があるが、アルツハイマー型認知症(痴呆)の診断には、灰白質を対象とすることが有効であることが知られている。そのため、SPMを用いて、解剖学的標準化の前に脳画像から灰白質を抽出した。
【0108】
灰白質の抽出に使用する灰白質画像のテンプレートとしては、SPMで用いられる、151人の健常者画像から得られた灰白質、白質、脳脊髄液の事前生起(存在)確率を計算したもので、1ボクセルサイズが2mm四方で、FWHM(半値幅)=8mmのガウシアンフィルタをかけたものを用いた。
【0109】
解剖学的標準化では、上記健常者画像から得られた灰白質画像をテンプレートとして用いることにより標準化を行なった。
【0110】
また、健常者群80例とアルツハイマー型認知症群61例のSPMによるグループ解析により、有意水準がp値で10-1〜10-13の範囲内となるように13通りの関心領域を作成した。
【0111】
次いで、健常者群41例とアルツハイマー型認知症群30例において、個々のアルツハイマー型認知症例に対して健常者群80例と脳局所ボクセル毎にZ検定を行い、13通りの関心領域における臨界値を0としたZスコア平均値を算出した。個々の健常者に対しても、健常者群80例との間でZ検定を行い、同様に関心領域における臨界値を0としたZスコア平均値を算出した。
【0112】
更に、13通りの関心領域に関して、ROC解析により診断性能を算出した。その結果、p値に対する、Azと正診率の関係が図18のような結果が得られた。
【0113】
この図18の結果では、p値が10-12から10-8の場合の正診率が高い値を示している。また、p値が10-7から10-4にかけて徐々に正診率が減少しているが、p値10-3において再び正診率が増加していることがわかった。
【0114】
図19は3種類のp値に関しての関心領域の例であり、白い箇所が関心領域である。
【0115】
正診率が最も高かったp値は10-12の場合であり、関心領域が海馬付近となっていた。アルツハイマー型認知症では海馬が萎縮していることが経験的に知られていることから、経験的な知識と一致していることがわかる。なお、図中MNI座標系は、SPMで使用されている標準脳の座標系である。
【0116】
又、図18に示すように、p値が10-4と10-3では10-3の方が高い正診率となっているが、図19に示すとおり、後者の関心領域となる範囲が脳の外側に広くなっていることが分る。この結果からは、若年のアルツハイマー型痴呆の患者には、脳の側頭頭頂葉に萎縮が見られるという報告があり、その点と関係があるのではないかということが示唆される。
【0117】
以上のように、複数のp値を有意水準とした関心領域どうしを比較することは有効であり、本実施形態のように図17のようなユーザインタフェースを採用することにより、その比較を容易に可能とすることができる。
【0118】
図18、図19のような例の場合、図17に示すユーザインタフェースを使用する手順としては、次のような流れが考えられる。
【0119】
前記図5のフローチャートでステップ4が終了した後、ステップ5において、D6の標準臓器画像と、D7の複数種類作成された関心領域のうちステップ8で有意水準(閾値)として入力されたp値に対応する関心領域との重畳画像が作成される。ただし、p値の初期値としては、一例として最も正診率が高くなる10-12が採用される。
【0120】
初期値であるp値が10-12に対応する関心領域と標準臓器画像の重畳画像が作成された後ち、ステップ6において図17に示すような関心領域確認表示が実行される。診断性能表示Aには、図18に示すグラフが表示され、スライダーBはp値10-12を指し示す。その際、画像表示Cには、標準臓器画像と、図19のp値10-12の関心領域との重畳画像が表示され、海馬付近に関心領域が生成されたことをユーザが確認できる。
【0121】
又、ステップ7の分岐により、関心領域を決定する前に、ユーザは図18に示す診断性能表示のグラフの形状から、p値が10-4と10-3の場合の関心領域の形状の確認を実施したいと考え、ステップ8の手順としてスライダーBを10-4に移動させる。
【0122】
すると、ステップ5の重畳画像作成処理の後、ステップ6の関心領域確認表示における画像表示Cがp値10-4の場合に切り替わる。更に、p値が10-3の関心領域も確認するため、ステップ8の手順としてユーザによりスライダーBがp値10-3に変更され、S5の重畳画像作成処理後、ステップ6による画像表示がp値10-3の場合に切り替わる。
【0123】
この操作の後、ユーザはステップ7の分岐により、関心領域は最初に確認したp値10-12の場合が最適であるとして、それを関心領域とすることに決め、関心領域の決定作業を終了する。
【0124】
このように、2群間検定を用いて関心領域を作成する場合、複数の有意水準を設定したそれぞれの場合における関心領域の形状と正診率の情報が、関心領域を作成する上での重要な支援情報であることがわかる。
【0125】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に示したものに限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0126】
例えば、前記実施形態では、脳画像について説明したが、心臓や肺等の他の臓器画像を対象としてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る一実施形態の関心領域決定装置の概要を示すブロック図
【図2】脳のスライス画像とボクセルの特徴を模式的に示す概念図
【図3】解剖学的標準化の特徴を模式的に示す概念図
【図4】ボクセル濃度値の補正処理の特徴を示す概念図
【図5】本実施形態による関心領域決定の基本処理フローを示すフローチャート
【図6】画像入力機能を示す概念図
【図7】2群間検定処理の特徴を示す概念図
【図8】t分布の特徴を示す概念図
【図9】2群間検定処理結果データに対する閾値処理の概念図
【図10】ボクセル毎の比較検定の特徴を示す概念図
【図11】関心領域内の評価処理の特徴を示す概念図
【図12】検査の陽陰性と疾患の有無の関係を示す図表
【図13】ROC曲線の一例を示す線図
【図14】標本の頻度分布と閾値の関係を示す概念図
【図15】正規化された頻度分布頻度分布と閾値の関係を示す概念図
【図16】正規化されたROC曲線の一例を示す線図
【図17】関心領域確認表示器脳を示す概念図
【図18】閾値と診断性能の関係を示す線図
【図19】閾値と関心領域との関係を示す説明図
【符号の説明】
【0128】
10…ユーザインタフェース
20…画像・統計処理部
30…データベース部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に2群間検定処理を行なって、複数の有意水準に対応する関心領域をそれぞれ作成する2群間検定機能と、
標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に統計的比較処理を行なって、統計的に有意な差があるボクセルを検出して診断用比較結果を作成する統計的比較処理機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域内の診断用比較結果をそれぞれ評価する関心領域内評価機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域に関して、該関心領域内の評価結果を基に診断性能をそれぞれ算出する診断性能算出機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域と標準臓器画像との重畳画像を作成し、対応する診断性能と併せて画面上に表示させる重畳画像作成処理機能と、
前記有意水準を設定変更する機能とを有していることを特徴とする関心領域決定装置。
【請求項2】
前記有意水準を、p値及びt値の少なくとも一方で設定することを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項3】
前記統計的比較処理を、関心領域を構成するボクセルのZスコアを算出して行なうことを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項4】
前記関心領域内の評価を、該関心領域内の全ボクセルのZスコアの平均値、及び、統計的に有意な差があるボクセルの数の少なくとも一方を算出して行なうことを特徴とする請求項3に記載の関心領域決定装置。
【請求項5】
前記診断性能を、ROC解析により行なうことを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項6】
前記ROC解析により算出される診断性能を、設定される有意水準に対応する正診率、及び、前記ROC解析により得られるROC曲線を0≦x≦1で積分した値を表わすAzの少なくとも一方のグラフとして画面表示することを特徴とする請求項5に記載の関心領域決定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の関心領域決定装置をコンピュータで実現するためのコンピュータ読取可能なプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムが格納された記録媒体。
【請求項1】
標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に2群間検定処理を行なって、複数の有意水準に対応する関心領域をそれぞれ作成する2群間検定機能と、
標準化された健常者臓器画像群と患者臓器画像群とをボクセルを単位に統計的比較処理を行なって、統計的に有意な差があるボクセルを検出して診断用比較結果を作成する統計的比較処理機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域内の診断用比較結果をそれぞれ評価する関心領域内評価機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域に関して、該関心領域内の評価結果を基に診断性能をそれぞれ算出する診断性能算出機能と、
前記有意水準に対応する複数の関心領域と標準臓器画像との重畳画像を作成し、対応する診断性能と併せて画面上に表示させる重畳画像作成処理機能と、
前記有意水準を設定変更する機能とを有していることを特徴とする関心領域決定装置。
【請求項2】
前記有意水準を、p値及びt値の少なくとも一方で設定することを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項3】
前記統計的比較処理を、関心領域を構成するボクセルのZスコアを算出して行なうことを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項4】
前記関心領域内の評価を、該関心領域内の全ボクセルのZスコアの平均値、及び、統計的に有意な差があるボクセルの数の少なくとも一方を算出して行なうことを特徴とする請求項3に記載の関心領域決定装置。
【請求項5】
前記診断性能を、ROC解析により行なうことを特徴とする請求項1に記載の関心領域決定装置。
【請求項6】
前記ROC解析により算出される診断性能を、設定される有意水準に対応する正診率、及び、前記ROC解析により得られるROC曲線を0≦x≦1で積分した値を表わすAzの少なくとも一方のグラフとして画面表示することを特徴とする請求項5に記載の関心領域決定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の関心領域決定装置をコンピュータで実現するためのコンピュータ読取可能なプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムが格納された記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図19】
【公開番号】特開2008−237747(P2008−237747A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85737(P2007−85737)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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