防塵機能を備えたロードポート装置及びミニエンバイロンメントシステム
【課題】ロードポート装置において、ポッドとの間でウエハの挿脱を行うために開口する開口部を略閉鎖するドアと該開口部との間に形成される隙間を通じて、ロードポート装置内部の室から外部に流出する気流の安定化を図る。
【解決手段】ロードポート装置における室を形成し且つ開口部を確定する室壁の開口部内周面と、ドアの外周面と、にて形成されるスリットにおいて、所定の領域で該スリットにおける室側の開口部におけるスリット幅を、当該スリットの長さ(奥行き)方向における他の領域のスリット幅よりも大きくする。
【解決手段】ロードポート装置における室を形成し且つ開口部を確定する室壁の開口部内周面と、ドアの外周面と、にて形成されるスリットにおいて、所定の領域で該スリットにおける室側の開口部におけるスリット幅を、当該スリットの長さ(奥行き)方向における他の領域のスリット幅よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれるポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うドア及びロボットアーム等が収容される微小清浄空間(ミニエンバイロンメント)を収容するFIMSシステムにおいて、該微小清浄空間内部への粉塵等の侵入を防止する機能を備えたロードポート装置、及び当該ロードポート装置及び半導体処理装置を有してなるミニエンバイロンメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前、半導体製造プロセスは、半導体ウエハを取り扱う部屋内部を高清浄化した所謂クリーンルーム内において行われていた。しかしウエハサイズの大型化への対処とクリーンルームの管理に要するコスト削減の観点から、近年では処理装置内部、ポッド(ウエハの収容容器)、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保つ手法が採用されるに至っている。
【0003】
ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、その一面にウエハ出し入れに用いられる開口部とを有する略立方体形状を有する本体部と、その開口部を閉鎖する蓋とから構成される。この開口部の形成面がポッドの鉛直下方ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に配置されたポッドは、FOUP(Front-opening unified pod)と総称され、本発明はこのFOUPを用いる構成を主たる対象としている。
【0004】
上述した微小空間(ミニエンバイロンメント)は、ポッド開口部と向かい合う第一の開口部と、第一の開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた第二の開口部と、第一の開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に第二の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。また、当該微小空間を形成する構成は、同時にドア正面にポッド開口部が正対するようポッドを支持する載置台を有している。
【0005】
載置台上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットと、が配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口よりその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、第一の開口部、ドアの開閉機構、第一の開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、FIMS(front-opening interface mechanical standard)システム或いはロードポート装置と総称される。また、当該ロードポート装置、ポッド、及び当該ロードポート装置が取り付けられる半導体処理装置本体を含めて、ミニエンバイロンメントシステム総称される。
【0006】
ここで、通常、当該微小空間内部への周囲空間(以下外部空間と称する。)からの粉塵等の侵入を防止するために、該微小空間内部の圧力を外部空間の圧力より高めに設定している。即ち、上記第一の開口部を開口した状態において、微小空間内部からは外部空間に向かう気流を発生させ、該気流によって粉塵等が外部空間方向に常に流される形態としている。また、ドアの開閉に伴って、第一の開口部周囲に気流の乱れを発生し、この気流の乱れによって微小空間内部への粉塵の侵入が生じる恐れもある。このような気流の乱れを防止するために、ドアが第一の開口部を閉鎖する位置に存在する時点においてドア周囲に微小空間内部と外部空間とを連通させる隙間を保持する構成を設けたロードポート装置が特許文献1或いは2に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−373927号公報
【特許文献2】特許3581310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した微小空間内部の圧力は、一般的には該空間の上部に配置されたファンを用いて外部空間からの気体の導入を行うことにより高めている。ここで、微小空間内部と外部空間との圧力差があまり大きくなるとポッド内部への気体の流入、或いは余計な気流のかく乱等が生じる恐れがあるため、該圧力差は僅かなものとして維持されることが好ましく、更にはこの微差圧を維持しつつ且つ微小空間から気体の流出も一定の状態に保持することが好ましい。ここで、半導体製造工程においては近年ウエハサイズの大径化が進められており、300mm径のウエハが処理対象となりつつある。このため、微小空間の内容積も大きくなり、ファンを用いた構成の場合には気体の流れの上流と下流において上記した微差圧及び一定量の気流の維持が困難となる恐れがある。特に、特許文献1にも述べられるように、差圧を小さなものとした場合、該気流の上流側に形成されるドア上部の隙間と、下流側に形成されるドア下部の隙間とにおいては、気体の流出条件が異なる可能性が大きい。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みて為されたものであり、第一の開口部を閉鎖した状態にあるドアの周囲に微小空間と外部空間とを連通させる隙間が形成されるタイプのロードポート装置において、微小空間と外部空間との差圧が微小となってもドア周囲から外部空間に流れる気流を一定量で安定させることを可能とする、防塵機能を備えたロードポート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、外部空間よりも高い圧力に維持される室と、室と外部空間とを連通させる室を構成する室壁によって画定される開口部と、開口部を略閉鎖する位置で停止可能な平板状のドアと、を有するロードポート装置であって、該ドアは開口部を略閉鎖する位置で停止した状態においてドアの平板外周面と室壁が開口部を画定する境界面である開口部の内周面との間において隙間を維持し、隙間において、ドアの室側の面或いは室壁の室内面と同一の平面において開口する隙間の開口の面積は当該平面と平行な平面にて隙間を切断した際の隙間の断面積に対して大きいことを特徴としている。
【0011】
或いは上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、外部空間よりも高い圧力に維持される室と、室と外部空間とを連通させる室を構成する室壁によって画定される開口部と、開口部を略閉鎖する位置で停止可能な直方平板状のドアと、を有する、半導体処理装置に付随するウエハ挿脱用のロードポート装置であって、該ドアは開口部を略閉鎖する位置で停止した状態においてドアの平板外周面と室壁が開口部を画定する境界面である開口部の内周面との間において隙間を維持し、ドアの平板外周面と開口部における室壁の内周面との間であって、少なくともドアの直方平板形状の一辺では該一辺に沿った所定の幅以上の領域において、隙間の室側の開口のスリット幅が領域外のスリット幅よりも大きいことを特徴としている。
【0012】
なお、上述したロードポート装置において、所定の幅は120mmであること、或いは、ウエハの径の40%の幅であることが好ましい。さらに、該室側の開口から外部空間側の開口への隙間のスリット幅の変化は連続的であることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るミニエンバイロンメントシステムは、半導体処理装置と、ウエハを収容して一側面に蓋を用いて開閉可能な開口を有するポッドと、上述したロードポート装置であって、ポッドの開口が開口部に正対させて載置可能なドッキングプレートを有し、ドアが蓋を保持してポッドの開口の開閉を行うドアシステムからなるロードポート装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微小空間と外部空間とにおける圧力差が微小となった場合であっても、ドア周囲において該微小空間から該外部空間へ流出する気体の流れを安定して維持することが可能となる。即ち、当該気流における流速を維持し且つ流量も安定して維持することが可能となる。
【0015】
また、気流の流れに対して垂直に形成されたスリットに気体を流そうとする場合スリットのエッジ部分によって気流の乱れが生じ、結果としてスリットを流れる気体の流量等が不安定となることが考えられる。ロードポート装置においては微小空間上部に設けられたファンによって該微小空間の上方から下方に向かう気流を発生させている。ドア周囲に設けられる隙間において、ドアの上方及び下方の隙間は該気流に対して垂直なスリットとなる。しかし、本発明によれば、当該スリットのエッジ部分をテーパ状として、スリットに対する気流の流入部分におけるエッジ部分の角度を実質的に気体の流れ方向に対して小さなものとしている。このため、該スリットに流入する気体が乱流となる可能性を低減することが可能となり、当該隙間から流出する気体における流量等をより安定化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロードポート装置1の概略構成を示す該システムの側断面図である。該ロードポート装置1は、微小空間3を構成する筐体5及び筐体5に隣接して配置されるポッド載置部21を有する。筐体5は、更にファン7、ロボット9、第一の開口部11、第二の開口部13、ドアシステム15を有する。ファン7は筐体5によって微小空間3の上部に配置され、筐体5の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入する。筐体5の下部には気流が流出可能となるような構造が配置されており、微小空間3内部で発生する粉塵等は当該気流に運ばれて筐体5の下部から外部空間に排出される。ロボット9におけるロボットアーム9aは、第一の開口部11及び第二の開口部13を介して微小空間の外部に突出可能となっている。第一の開口部11はドアシステム15におけるドア15aにより略閉鎖可能となっているが、ドア15a及び第一の開口部11に関しては後に更に詳しく説明する。第二の開口部13は、ウエハ処理装置17の内部と接続されているが、当該ウエハ処理装置17の詳細に関しては本発明と直接の関係を有さないために本明細書における説明は省略する。
【0017】
ポッド載置部21は、ドッキングプレート23、ポッド固定システム25、及びドッキングプレート駆動システム27を有する。ドッキングプレート23の上面は略平面とされており、該上面にはポッド固定システム27の一部が配置される。背景技術において説明したポッド31は、ドッキングプレート23の上面に載置され、ポッド固定システム27の当該一部がポッド31の下面に配置された不図示の被係合部と係合することによりドッキングプレート23上の所定位置に固定される。なお、ドッキングプレート23は、その上面に載置されたポッド31における開口31aが前述した第一の開口部11と正対するよう配置されている。ドッキングプレート駆動システム27は、不図示のガイドレール及び駆動シリンダを用いて、ドッキングプレート23と共に該所定位置に固定されたポッド31を該第一の開口部11に向かう方向及び離間する方向に駆動する。
【0018】
ドア15aの外部空間側面(ポッド31と対向する面)にはラッチ機構15e(図2A及び2B参照)が設けられている。当該ラッチ機構15eはポッド31の蓋33の表面に設けられた不図示の被ラッチ部と係合し回転することによって、当該蓋33をポッド31に対して着脱することを可能とする。吸着パッド15kは該蓋33と当接した状態で不図示の配管を通じて負圧を供給することにより該蓋33を吸着し、当該蓋33をドア15aによって保持することを可能とする。ドアシステム15は、ドアアーム15b、ドア開閉アクチュエータ15c及びドア上下機構15dを有する。ドアアーム15bは棒状の部材からなり、一端においてドア15aを支持し、他端においてドア開閉アクチュエータ15cと連結されており、中間部の適当な位置において当該位置を中心に回転可能に軸支されている。ドア開閉アクチュエータ15cによって該回転中心を軸としてドアアーム15bは回転し、該ドアアーム15bの一端及びここに支持されるドア15aは第一の開口部11に対して接近或いは離間の動作を行う。ドア上下機構15dは、ドア開閉アクチュエータ15cを支持し、上下動用アクチュエータによって上下方向に延在するガイドに沿って当該アクチュエータ及びこれに支持されるドアアーム15b及びドア15aを上下方向に駆動する。
【0019】
ここで、実際にウエハ処理作業を行う際の当該ロードポートシステム1の動作について説明する。ウエハ処理作業において、所定枚数のウエハを収容し内部が清浄気体によって満たされたポッド31がドッキングプレート23上に載置される。ドッキングプレート23を載置する際に、ポッド固定システム25が動作してドッキングプレート23に対するポッド31の載置位置を所定のものとする。続いてドッキングプレート駆動システム27が動作し、ポッド31を第一の開口部11に向けて駆動する。その際、ドア15aは第一の開口部11を略閉鎖する位置で停止している。当該駆動動作は、ポッド31の蓋33がドア15aの当接面と当接し、ドッキングプレート23と第一の開口部11と所定の位置関係となった段階手終了する。この時、ラッチ機構15eが蓋33表面の被ラッチ部と係合され回転することによって蓋33をポッド31に対して着脱可能な状態とすると同時に、吸着パッド15kが蓋33を吸着し、蓋33がドア15aによって保持された状態となる。
【0020】
当該状態からドア開閉アクチュエータ15cが動作を開始し、ドアアーム15bが回動して蓋33を保持するドア15aを第一の開口部11から微小空間3の内部方向に運ぶ。ドアアーム15bが所定角度で回動を停止した後、ドア上下機構15dが動作を開始し、ドア開閉アクチュエータ15cと共にドア15aを下方に移動させる。当該動作によって第一の開口部11は全開状態となり、微小空間3は第一の開口部11を介してポッド31の内部と連通した状態となる。この状態においてロボット9が動作を開始し、ロボットアーム9aによってウエハ35をポッド31の内部から第二の開口部13を介してウエハ処理装置17に搬送する。また、この状態を維持して、当該ロボット9は、更にウエハ処理装置17内部において所定の処理が施されたウエハをポッド31内部へも搬送する。
【0021】
以上に述べた構成からなるロードポート装置1において、本発明の特徴について以下図面を参照して更に詳述する。図2Aは図1において説明したロードポート装置1に関して、第一の開口部11をドア15aが略閉鎖した状態における第一の開口部11周辺を拡大して模式的に示す図である。なお、当該状態において。ドッキングプレート駆動システム27はポッド33を載置した直後であって、第一の開口部11方向への駆動を行っていない。図2Bは、図2Aに示す状態にある第一の開口部11をポッド33が存在する方向から見た状態を示している。従って、ドア15aにおけるポッド側表面に存在するラッチ機構15eが示される。また、図2Cは、図2Aに示す状態にある第一の開口部11を微小空間3の側から見た状態を示している。従って、微小空間3の内部に配置されるドアアーム15bが示される。
【0022】
ここで、略直方平板形状からなるドア15aの略平板領域の投影面積は第一の開口部11の開口面積よりも小さく、且つドア15aの投影形状が第一の開口部11の形状よりも一回り小さい形状となっている。従って、ドア15aが第一の開口部11を略閉鎖する位置に存在するときに、ドア15aの周囲には微小空間3から外部空間に連通する隙間11aが形成される。当該隙間は、筐体5が第一の開口部11を構成する開口部の内周面5a(筐体5の壁即ち室壁が開口部を確定する境界面)とドア15aの外周面とにより、筐体5の壁厚さ及びドア15aの厚さによって長さが定義されるスリット状となる。なお、従来構成においては、第一の開口部11を構成する開口内周面5aとドア15aの外周面とは平行に配置されている。本発明においては、少なくとも第一の開口部11を構成する開口内周面5aとドア15aの外周面との何れかの特定の領域において、微小空間3と繋がる部分でスリット幅を大きくし、且つ該微小空間3から外部空間に向かうに従って該スリットの幅を減じる形状からなる部分を有している。なお、ここで述べるスリット幅は、ドア外周面15fから開口部内周面5aの間の距離を示している。
【0023】
図2A〜2Cに示す実施形態においては、スリットの上辺及び下辺の略中央部分に該スリットの幅変化領域11bが設けられている。当該スリットの形成に際しては、筐体5において第一の開口部11が形成された筐体壁5bの微小空間内側面5cと開口部内周面5aとが繋がる領域においてエッジ部分を略45°の角度で該筐体壁5bの内側面5c及び開口部内周面5aに繋がるテーパ面5dによって削除している(図6A参照)。また、ドア15aにおいても、ドアの外周面15fとドア15の微小空間内側面15gとが繋がる領域においてエッジ部分を略45°の角度で該外周面15fとドア内側面15gとに繋がるテーパ面15hによって削除している(図6A参照)。ロードポート装置においては、微小空間3内部にはスリットの形成方向に対して垂直(図中上下に向かう方向)な気流が存在する。本発明においては、本実施形態に示したように、該気流の存在する側のスリット開口が大きくなる領域を設けることで、本来は該気流からは直接的には得にくかったスリット開口からスリット奥方向に向かう分岐した気体の流れを容易に得ることを可能となる。また、気流の分岐を得る領域において元の気流の流れ方向に対して分岐流の分岐方向が垂直とならないことから、分岐時においてスリットエッジにおける乱流の発生を抑制することも可能となる。従って、これまで生じ得る可能性のあったスリットエッジでの乱流に基づいた気流の変動がなくなり、安定した分岐気流を得ることも可能となる。
【0024】
図3〜図5を用い、本発明の一実施形態に係るロードポート装置の具体的な形状上の特徴について以下に詳述する。図3Aは、図2Aに示した構成を説明容易化のために簡略化して示す図である。図3Bは、ドア15aが第一の開口部11を略閉鎖する図3Aに示す状態において、ポッド33が存在する側から隙間11aを見た際に、ドア15のポッド側面表面と同一平面上に開口するであろう隙間11aの状態を想定して示している。ドア15の周囲には略均一幅となる隙間11aが存在している。図3Cは図3Aに示す状態において、微小空間3側から隙間11a等を見た際に、ドア内側面15gと同一平面上に開口するであろう隙間11a等の状態を想定して示している。図3Cに示すように、幅W(開口或いは平板状のドアの各辺に沿った長さによって定義される幅)となるスリット幅変化領域11bが存在し、当該領域において隙間(スリット)の幅が大きくなっている。
【0025】
即ち、本発明においては、ロードポート装置における第一の開口部を平板状のドアによって略閉鎖状態とした際に、該ドアのポッド側表面と同一の平面内に開口する隙間の面積に対して、該ドアの微小空間側表面と同一平面に開口する隙間の面積が大きくなるように設定されている。また、より詳細には、後述する図7Bに示す実施形態を含め、第一の開口部を平板状のドアによって略閉鎖状態とした際に、該ドアの微小空間側表面或いは該室における開口部を画定する室壁における室内側面と同一平面に開口する隙間の総面積が、当該平面と平行な平面にて該隙間を切断した断面において得られる該隙間の総面積より大きく設定されている。このように、微小空間内部側の隙間の開口面積を大きくすることにより、ポッド側に開口する隙間から流出する気体の流量及び流速を安定して維持することが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、隙間11aの間隔、即ちドア15の外周面15fと筐体壁5bの開口部内周面5aとの間隔を2〜3mmとし、テーパ面5d、15hの形成角度を45°としている。間隔に関しては、気流の分岐の容易さという観点からは、大きく保ったほうが気流を安定化させることが容易であり好ましいと考えられる。しかし、あまり大きくした場合には微差圧の保持が困難となること、更にはファンの異常発生時には周囲の気体等が微小空間3内部に侵入する可能性が高くなることから当該間隔を採用している。また、加工の容易さの観点からテーパ角度が決定されている。しかしながら、本発明の実施形態は当該数値に限定されるものではなく、上記面積上の条件を満たすものであれば本発明特有の上記効果が得られるものであり、種々の間隔及びテーパ角度からなる構成も含まれるものである。
【0027】
また、本発明の実施形態は、図3A等に示したように、スリット幅変化領域11bをドア15の上辺及び下辺に均等に設ける場合に限定されない。図4A〜4Cはスリット幅変化領域11bを変化させた実施形態について、図3Cと同じ様式にてこれら実施形態を示すものである。図4Aは、ドア15aの上辺部分にのみスリット幅変化領域11bを設けた実施形態を示すものである。例えば、ロードポート装置の外部に発塵可能性を有するものが存在する場合等、ポッドの上部により安定した清浄気体からなるエアカーテン状のものを形成したい場合に、当該構成は効果的と考えられる。図4Bは、ドア15aの下辺部分にのみスリット幅変化領域11bを設けた実施形態を示すものである。ドア15aの下辺の隙間11aは、ファン7から最も離れた領域に形成されており、左右両辺の隙間11aと異なり隙間の延在方向も気流の形成方向に対して垂直となっている。このため、微差圧環境下での該下辺の隙間11aからの気体流出は生じにくくなっている。本実施形態に示す構成とすることにより、このような下辺の隙間への気体流入を容易とすることが可能となり、最も気体流量が安定しにくい領域において気体流出の流量及び流速の安定化を図ることが可能となる。図4Cは、隙間11aを全域に渡ってスリット幅変化領域11bとして構成を示している。当該構成とすることにより、隙間11aの全域において気体流出の流量及び流速の安定化を図ることが可能となる。
【0028】
なお、例えば図4A或いは4Bに示すように、特定(特にドア15aの上辺及び下辺)の部分の一部にスリット幅変化領域11bを配置することで、微小空間3から外部空間への気体の流れを安定化させてポッド内部のウエハに対する塵の付着量を低減することが確認されている。しかしながら、実際の装置構成において、このスリット幅変化領域11bの形成幅(図3Cにおける幅W)の最低値を知る必要がある。そこで、実際に300mm径のシリコンウエハを用い、幅Wを変化させた場合のウエハ上の塵の付着率を検討し、必要最低限の形成幅Wを求めた。当該結果を図5に示す。
【0029】
図5において、横軸はドア15aの下辺中心に設けられたスリット幅変化領域11bの幅Wの寸法、或いは対象となるウエハに対する当該幅の割合を示す。また、縦軸はスリット幅変化領域11bがゼロ(W=0)の際の塵の付着率を100%として場合の実際の付着率を示している。同図によれば、Wの値の増加に伴って塵の付着率は減少し、W=120mm或いはW=40%で塵の付着率が20%となり、W=220mm或いはW=73%で塵の付着率は10%となっている。即ち、Wの増加によって清浄な微小空間3からの気流の吹き出しが安定的に得られ、ウエハ表面に対する塵の付着の抑制効率を向上させることが可能となる。ここで、塵の付着率が20%以下であれば、実際の半導体製造工程における製品歩留まりは大幅に向上される。即ち、300mmウエハを対象とする場合、Wを120mm以上、より好適には220mm以上とすることにより、隙間11aを介してポッド側に流出する気体の流量及び流速の安定度を大きく向上可能であることが理解される。また、第一の開口部11の大きさ或いはドア15aの大きさはウエハサイズに依存して変更されるが、この場合、Wの値をウエハサイズの40%以上、より好適には73%以上とすることにより、同様の効果が得られることも理解される。
【0030】
なお、先にも簡単に述べたように、ドア15aの左右両辺に配置される隙間11aはファン7によって生成される気体の流れ方向に延在している。このため、当該隙間11aは深さがある程度以上あったとしても、比較的容易にファン生成の気流から該隙間11aを通過する気流を得ることが可能である。また、ドア15aの上辺に配置される隙間11aに関しては、隙間の深さ方向がファン生成の気体の流れに対して垂直となることから、当該隙間11aを通過する気流を得る点では比較的不利である。しかし、ファン7の配置に対して最も近傍に配置されるため、見かけ上隙間11aの上流と下流とに差圧を生成することが容易であり、ある程度差圧を維持できれば気流の安定化は可能と考えられる。しかしながら、ドア15aの下辺に配置される隙間11aは、隙間の深さ方向及びファン7との距離何れに関しても他の部分の隙間11aに対して不利な条件を有するために、気流の安定化が最も困難と考えられる。以上のことを勘案した場合、スリット幅変化領域11bはドア15aの下辺側に最も形成されるべきであり、続いて上辺側、更に必要であれば左右両辺側に順次付加されることが望ましいと考えられる。
【0031】
また、以上の実施形態においては、スリット幅の変化様式として、図6Aに示すように、筐体内壁5cと第一の開口部内周面5aとの接続部及びドア15aの微小空間内側面15gとドア外周面15fとの接続部に対して、各々所定の角度で交錯するテーパ面5d、15hを形成している。なお、図6Aは図3Aに示すように、スリット幅変化領域についての該隙間の延在面に対して垂直に交差する平面で切断した際の断面形状を示す6A領域を拡大して示すものである。しかしながら、本発明の実施形態は当該様式に限定されない。例えば、図6Aと同様の様式にてスリット幅の変化様式を示す図6Bに示されるように、筐体内壁5cと第一の開口部内周面5aとを滑らかに接続する曲面5e、及び接続部及びドア15aの微小空間内側面15gとドア外周面15fとを滑らかに接続する曲面15iとから構成されることとしても良い。
【0032】
また、図6Aと同様の様式からなる図7Aに示すように、テーパ面5d及びテーパ面15hを、各々複数の平面から構成される様式としても良い。当該実施形態の場合、テーパ面5dを第一の開口部内周面5aと平行な複数の面及び筐体内壁5cと平行な複数の面とを交互に配置することにより、また、テーパ面15hをドア外周面15fと平行な複数の面及びドア内側面15gと平行な複数の面とを交互に配置することに湯折構成することとしている。また、同様の様式からなる図7Bにしめすように、第一の開口部内周面と5aと筐体の外壁との接続部、及びドア外周面15fとドア外側面との接続部に、外側テーパ部5f、15jを各々設けることとしても良い。
【0033】
微小空間3は、ドア15aの開閉操作に係らず略一定の圧力条件下に維持されることが好ましいと考えられること等種々の要件からドア閉鎖状態においても外部空間と繋がっており、通常はスリット(隙間11a)の上流と下流との圧力差は微差に維持されている。ここで、通常スリットを流れる気体の流量は、スリットの上流側と下流側との圧力差と当該スリットの排気抵抗との積によって決定される。本発明が対象とするロードポート装置の場合には、塵等のウエハへの接近をスリットから流出する気流によって防止しようとする観点から、当該スリットから流出する気体の流量を大きくすることが好ましいと考えられる。従って、隙間11a、特に大流量で気体を流出させることが困難な領域の隙間11aの排気抵抗を下げることが好ましい。排気抵抗を低下させる簡便な方法として、スリット幅を広げる或いはスリット幅が狭くなる部分の長さを短くすることが考えられる。図7A或いは図7Bに示すように、第一の開口部内周面5aとドア外周面15fによって隙間11aを定義する領域の長さを短くすることで、このようなスリット幅変化領域の排気抵抗を適宜調整することが可能となる。即ち、ドア15aの上辺及び下辺、及び左右辺、更には左右辺の上方と下方とにおいて図6Aに示す様式と図7A或いは図7Bに示す様式とを適宜組み合わせることによって、ドア15aの全周においてより均一な気体の流出条件を確立することが可能となる。
【0034】
また、以上の実施形態においては、筐体壁5及びドア15aの両者にテーパ面等を形成することとしているが、本発明の実施形態は当該形態に限定されない。具体的には、図6Aと同様の様式からなる図8Aに示すように、筐体壁5b側にのみ上述したテーパ面5dを設けることとしても良い。或いは同様式からなる図8Bに示すようにドア15a側にのみ上述したテーパ面15hを設けることとしても良い。即ち、隙間11aの微小空間3側の開口幅をテーパ等によって広くし、隙間の最も狭くなる長さを小さくすることにより。上述した本発明の効果は十分に得られると考えられる。開口幅をテーパ等によって広げることによって開口部がファン生成の気流に対して鋭角的に開くことによってより気流が入りやすくなる。また、隙間の最も狭くなる領域をテーパ等によって小さくすることで、当該隙間の排気抵抗を下げ該隙間から流れ出す気体の流量を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2A】図1に示すロードポート装置においてドア及び第一の開口部周辺に配置される構成を拡大して模式的に示す図である。
【図2B】図2Aに示す状態にあるドア及び第一の開口部をポッドが配置される方向から見た状態を示す図である。
【図2C】図2Aに示す状態にあるドア及び第一の開口部を微小空間の内部から見た状態を示す図である。
【図3A】図2Aに示すドア及び第一の開口部周辺に配置される構成を簡略化して示す図である。
【図3B】図3Aにおいて矢印3B方向から隙間を見た状態を模式的に示す図である。
【図3C】図3Aにおいて矢印3C方向から隙間を見た状態を模式的に示す図である。
【図4A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの上辺に配置した状態を模式的に示す図である。
【図4B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの下辺に配置した状態を模式的に示す図である。
【図4C】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの全周に配置した状態を模式的に示す図である。
【図5】図4Bに示す市にスリット幅変化領域を配置した場合であって、当該変化領域の範囲を変化させた場合のウエハに対する塵の付着度の変化を示す図である。
【図6A】図3Aに示す領域6Aを拡大して示す図である。
【図6B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図7A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図7B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図8A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図8B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1:ロードポート装置、 3:微小空間、 5:筐体、 7:ファン、 9:ロボット、 11:第一の開口部、 13:第二の開口部、 15:ドアシステム、 17:ウエハ処理装置、 21:ポッド載置部、 23:ドッキングプレート、 25:ポッド固定システム、 27:ドッキングプレート駆動システム、 31:ポッド、 33:蓋、 35:ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれるポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うドア及びロボットアーム等が収容される微小清浄空間(ミニエンバイロンメント)を収容するFIMSシステムにおいて、該微小清浄空間内部への粉塵等の侵入を防止する機能を備えたロードポート装置、及び当該ロードポート装置及び半導体処理装置を有してなるミニエンバイロンメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前、半導体製造プロセスは、半導体ウエハを取り扱う部屋内部を高清浄化した所謂クリーンルーム内において行われていた。しかしウエハサイズの大型化への対処とクリーンルームの管理に要するコスト削減の観点から、近年では処理装置内部、ポッド(ウエハの収容容器)、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保つ手法が採用されるに至っている。
【0003】
ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、その一面にウエハ出し入れに用いられる開口部とを有する略立方体形状を有する本体部と、その開口部を閉鎖する蓋とから構成される。この開口部の形成面がポッドの鉛直下方ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に配置されたポッドは、FOUP(Front-opening unified pod)と総称され、本発明はこのFOUPを用いる構成を主たる対象としている。
【0004】
上述した微小空間(ミニエンバイロンメント)は、ポッド開口部と向かい合う第一の開口部と、第一の開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた第二の開口部と、第一の開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に第二の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。また、当該微小空間を形成する構成は、同時にドア正面にポッド開口部が正対するようポッドを支持する載置台を有している。
【0005】
載置台上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットと、が配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口よりその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、第一の開口部、ドアの開閉機構、第一の開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、FIMS(front-opening interface mechanical standard)システム或いはロードポート装置と総称される。また、当該ロードポート装置、ポッド、及び当該ロードポート装置が取り付けられる半導体処理装置本体を含めて、ミニエンバイロンメントシステム総称される。
【0006】
ここで、通常、当該微小空間内部への周囲空間(以下外部空間と称する。)からの粉塵等の侵入を防止するために、該微小空間内部の圧力を外部空間の圧力より高めに設定している。即ち、上記第一の開口部を開口した状態において、微小空間内部からは外部空間に向かう気流を発生させ、該気流によって粉塵等が外部空間方向に常に流される形態としている。また、ドアの開閉に伴って、第一の開口部周囲に気流の乱れを発生し、この気流の乱れによって微小空間内部への粉塵の侵入が生じる恐れもある。このような気流の乱れを防止するために、ドアが第一の開口部を閉鎖する位置に存在する時点においてドア周囲に微小空間内部と外部空間とを連通させる隙間を保持する構成を設けたロードポート装置が特許文献1或いは2に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−373927号公報
【特許文献2】特許3581310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した微小空間内部の圧力は、一般的には該空間の上部に配置されたファンを用いて外部空間からの気体の導入を行うことにより高めている。ここで、微小空間内部と外部空間との圧力差があまり大きくなるとポッド内部への気体の流入、或いは余計な気流のかく乱等が生じる恐れがあるため、該圧力差は僅かなものとして維持されることが好ましく、更にはこの微差圧を維持しつつ且つ微小空間から気体の流出も一定の状態に保持することが好ましい。ここで、半導体製造工程においては近年ウエハサイズの大径化が進められており、300mm径のウエハが処理対象となりつつある。このため、微小空間の内容積も大きくなり、ファンを用いた構成の場合には気体の流れの上流と下流において上記した微差圧及び一定量の気流の維持が困難となる恐れがある。特に、特許文献1にも述べられるように、差圧を小さなものとした場合、該気流の上流側に形成されるドア上部の隙間と、下流側に形成されるドア下部の隙間とにおいては、気体の流出条件が異なる可能性が大きい。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みて為されたものであり、第一の開口部を閉鎖した状態にあるドアの周囲に微小空間と外部空間とを連通させる隙間が形成されるタイプのロードポート装置において、微小空間と外部空間との差圧が微小となってもドア周囲から外部空間に流れる気流を一定量で安定させることを可能とする、防塵機能を備えたロードポート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、外部空間よりも高い圧力に維持される室と、室と外部空間とを連通させる室を構成する室壁によって画定される開口部と、開口部を略閉鎖する位置で停止可能な平板状のドアと、を有するロードポート装置であって、該ドアは開口部を略閉鎖する位置で停止した状態においてドアの平板外周面と室壁が開口部を画定する境界面である開口部の内周面との間において隙間を維持し、隙間において、ドアの室側の面或いは室壁の室内面と同一の平面において開口する隙間の開口の面積は当該平面と平行な平面にて隙間を切断した際の隙間の断面積に対して大きいことを特徴としている。
【0011】
或いは上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、外部空間よりも高い圧力に維持される室と、室と外部空間とを連通させる室を構成する室壁によって画定される開口部と、開口部を略閉鎖する位置で停止可能な直方平板状のドアと、を有する、半導体処理装置に付随するウエハ挿脱用のロードポート装置であって、該ドアは開口部を略閉鎖する位置で停止した状態においてドアの平板外周面と室壁が開口部を画定する境界面である開口部の内周面との間において隙間を維持し、ドアの平板外周面と開口部における室壁の内周面との間であって、少なくともドアの直方平板形状の一辺では該一辺に沿った所定の幅以上の領域において、隙間の室側の開口のスリット幅が領域外のスリット幅よりも大きいことを特徴としている。
【0012】
なお、上述したロードポート装置において、所定の幅は120mmであること、或いは、ウエハの径の40%の幅であることが好ましい。さらに、該室側の開口から外部空間側の開口への隙間のスリット幅の変化は連続的であることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るミニエンバイロンメントシステムは、半導体処理装置と、ウエハを収容して一側面に蓋を用いて開閉可能な開口を有するポッドと、上述したロードポート装置であって、ポッドの開口が開口部に正対させて載置可能なドッキングプレートを有し、ドアが蓋を保持してポッドの開口の開閉を行うドアシステムからなるロードポート装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微小空間と外部空間とにおける圧力差が微小となった場合であっても、ドア周囲において該微小空間から該外部空間へ流出する気体の流れを安定して維持することが可能となる。即ち、当該気流における流速を維持し且つ流量も安定して維持することが可能となる。
【0015】
また、気流の流れに対して垂直に形成されたスリットに気体を流そうとする場合スリットのエッジ部分によって気流の乱れが生じ、結果としてスリットを流れる気体の流量等が不安定となることが考えられる。ロードポート装置においては微小空間上部に設けられたファンによって該微小空間の上方から下方に向かう気流を発生させている。ドア周囲に設けられる隙間において、ドアの上方及び下方の隙間は該気流に対して垂直なスリットとなる。しかし、本発明によれば、当該スリットのエッジ部分をテーパ状として、スリットに対する気流の流入部分におけるエッジ部分の角度を実質的に気体の流れ方向に対して小さなものとしている。このため、該スリットに流入する気体が乱流となる可能性を低減することが可能となり、当該隙間から流出する気体における流量等をより安定化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロードポート装置1の概略構成を示す該システムの側断面図である。該ロードポート装置1は、微小空間3を構成する筐体5及び筐体5に隣接して配置されるポッド載置部21を有する。筐体5は、更にファン7、ロボット9、第一の開口部11、第二の開口部13、ドアシステム15を有する。ファン7は筐体5によって微小空間3の上部に配置され、筐体5の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入する。筐体5の下部には気流が流出可能となるような構造が配置されており、微小空間3内部で発生する粉塵等は当該気流に運ばれて筐体5の下部から外部空間に排出される。ロボット9におけるロボットアーム9aは、第一の開口部11及び第二の開口部13を介して微小空間の外部に突出可能となっている。第一の開口部11はドアシステム15におけるドア15aにより略閉鎖可能となっているが、ドア15a及び第一の開口部11に関しては後に更に詳しく説明する。第二の開口部13は、ウエハ処理装置17の内部と接続されているが、当該ウエハ処理装置17の詳細に関しては本発明と直接の関係を有さないために本明細書における説明は省略する。
【0017】
ポッド載置部21は、ドッキングプレート23、ポッド固定システム25、及びドッキングプレート駆動システム27を有する。ドッキングプレート23の上面は略平面とされており、該上面にはポッド固定システム27の一部が配置される。背景技術において説明したポッド31は、ドッキングプレート23の上面に載置され、ポッド固定システム27の当該一部がポッド31の下面に配置された不図示の被係合部と係合することによりドッキングプレート23上の所定位置に固定される。なお、ドッキングプレート23は、その上面に載置されたポッド31における開口31aが前述した第一の開口部11と正対するよう配置されている。ドッキングプレート駆動システム27は、不図示のガイドレール及び駆動シリンダを用いて、ドッキングプレート23と共に該所定位置に固定されたポッド31を該第一の開口部11に向かう方向及び離間する方向に駆動する。
【0018】
ドア15aの外部空間側面(ポッド31と対向する面)にはラッチ機構15e(図2A及び2B参照)が設けられている。当該ラッチ機構15eはポッド31の蓋33の表面に設けられた不図示の被ラッチ部と係合し回転することによって、当該蓋33をポッド31に対して着脱することを可能とする。吸着パッド15kは該蓋33と当接した状態で不図示の配管を通じて負圧を供給することにより該蓋33を吸着し、当該蓋33をドア15aによって保持することを可能とする。ドアシステム15は、ドアアーム15b、ドア開閉アクチュエータ15c及びドア上下機構15dを有する。ドアアーム15bは棒状の部材からなり、一端においてドア15aを支持し、他端においてドア開閉アクチュエータ15cと連結されており、中間部の適当な位置において当該位置を中心に回転可能に軸支されている。ドア開閉アクチュエータ15cによって該回転中心を軸としてドアアーム15bは回転し、該ドアアーム15bの一端及びここに支持されるドア15aは第一の開口部11に対して接近或いは離間の動作を行う。ドア上下機構15dは、ドア開閉アクチュエータ15cを支持し、上下動用アクチュエータによって上下方向に延在するガイドに沿って当該アクチュエータ及びこれに支持されるドアアーム15b及びドア15aを上下方向に駆動する。
【0019】
ここで、実際にウエハ処理作業を行う際の当該ロードポートシステム1の動作について説明する。ウエハ処理作業において、所定枚数のウエハを収容し内部が清浄気体によって満たされたポッド31がドッキングプレート23上に載置される。ドッキングプレート23を載置する際に、ポッド固定システム25が動作してドッキングプレート23に対するポッド31の載置位置を所定のものとする。続いてドッキングプレート駆動システム27が動作し、ポッド31を第一の開口部11に向けて駆動する。その際、ドア15aは第一の開口部11を略閉鎖する位置で停止している。当該駆動動作は、ポッド31の蓋33がドア15aの当接面と当接し、ドッキングプレート23と第一の開口部11と所定の位置関係となった段階手終了する。この時、ラッチ機構15eが蓋33表面の被ラッチ部と係合され回転することによって蓋33をポッド31に対して着脱可能な状態とすると同時に、吸着パッド15kが蓋33を吸着し、蓋33がドア15aによって保持された状態となる。
【0020】
当該状態からドア開閉アクチュエータ15cが動作を開始し、ドアアーム15bが回動して蓋33を保持するドア15aを第一の開口部11から微小空間3の内部方向に運ぶ。ドアアーム15bが所定角度で回動を停止した後、ドア上下機構15dが動作を開始し、ドア開閉アクチュエータ15cと共にドア15aを下方に移動させる。当該動作によって第一の開口部11は全開状態となり、微小空間3は第一の開口部11を介してポッド31の内部と連通した状態となる。この状態においてロボット9が動作を開始し、ロボットアーム9aによってウエハ35をポッド31の内部から第二の開口部13を介してウエハ処理装置17に搬送する。また、この状態を維持して、当該ロボット9は、更にウエハ処理装置17内部において所定の処理が施されたウエハをポッド31内部へも搬送する。
【0021】
以上に述べた構成からなるロードポート装置1において、本発明の特徴について以下図面を参照して更に詳述する。図2Aは図1において説明したロードポート装置1に関して、第一の開口部11をドア15aが略閉鎖した状態における第一の開口部11周辺を拡大して模式的に示す図である。なお、当該状態において。ドッキングプレート駆動システム27はポッド33を載置した直後であって、第一の開口部11方向への駆動を行っていない。図2Bは、図2Aに示す状態にある第一の開口部11をポッド33が存在する方向から見た状態を示している。従って、ドア15aにおけるポッド側表面に存在するラッチ機構15eが示される。また、図2Cは、図2Aに示す状態にある第一の開口部11を微小空間3の側から見た状態を示している。従って、微小空間3の内部に配置されるドアアーム15bが示される。
【0022】
ここで、略直方平板形状からなるドア15aの略平板領域の投影面積は第一の開口部11の開口面積よりも小さく、且つドア15aの投影形状が第一の開口部11の形状よりも一回り小さい形状となっている。従って、ドア15aが第一の開口部11を略閉鎖する位置に存在するときに、ドア15aの周囲には微小空間3から外部空間に連通する隙間11aが形成される。当該隙間は、筐体5が第一の開口部11を構成する開口部の内周面5a(筐体5の壁即ち室壁が開口部を確定する境界面)とドア15aの外周面とにより、筐体5の壁厚さ及びドア15aの厚さによって長さが定義されるスリット状となる。なお、従来構成においては、第一の開口部11を構成する開口内周面5aとドア15aの外周面とは平行に配置されている。本発明においては、少なくとも第一の開口部11を構成する開口内周面5aとドア15aの外周面との何れかの特定の領域において、微小空間3と繋がる部分でスリット幅を大きくし、且つ該微小空間3から外部空間に向かうに従って該スリットの幅を減じる形状からなる部分を有している。なお、ここで述べるスリット幅は、ドア外周面15fから開口部内周面5aの間の距離を示している。
【0023】
図2A〜2Cに示す実施形態においては、スリットの上辺及び下辺の略中央部分に該スリットの幅変化領域11bが設けられている。当該スリットの形成に際しては、筐体5において第一の開口部11が形成された筐体壁5bの微小空間内側面5cと開口部内周面5aとが繋がる領域においてエッジ部分を略45°の角度で該筐体壁5bの内側面5c及び開口部内周面5aに繋がるテーパ面5dによって削除している(図6A参照)。また、ドア15aにおいても、ドアの外周面15fとドア15の微小空間内側面15gとが繋がる領域においてエッジ部分を略45°の角度で該外周面15fとドア内側面15gとに繋がるテーパ面15hによって削除している(図6A参照)。ロードポート装置においては、微小空間3内部にはスリットの形成方向に対して垂直(図中上下に向かう方向)な気流が存在する。本発明においては、本実施形態に示したように、該気流の存在する側のスリット開口が大きくなる領域を設けることで、本来は該気流からは直接的には得にくかったスリット開口からスリット奥方向に向かう分岐した気体の流れを容易に得ることを可能となる。また、気流の分岐を得る領域において元の気流の流れ方向に対して分岐流の分岐方向が垂直とならないことから、分岐時においてスリットエッジにおける乱流の発生を抑制することも可能となる。従って、これまで生じ得る可能性のあったスリットエッジでの乱流に基づいた気流の変動がなくなり、安定した分岐気流を得ることも可能となる。
【0024】
図3〜図5を用い、本発明の一実施形態に係るロードポート装置の具体的な形状上の特徴について以下に詳述する。図3Aは、図2Aに示した構成を説明容易化のために簡略化して示す図である。図3Bは、ドア15aが第一の開口部11を略閉鎖する図3Aに示す状態において、ポッド33が存在する側から隙間11aを見た際に、ドア15のポッド側面表面と同一平面上に開口するであろう隙間11aの状態を想定して示している。ドア15の周囲には略均一幅となる隙間11aが存在している。図3Cは図3Aに示す状態において、微小空間3側から隙間11a等を見た際に、ドア内側面15gと同一平面上に開口するであろう隙間11a等の状態を想定して示している。図3Cに示すように、幅W(開口或いは平板状のドアの各辺に沿った長さによって定義される幅)となるスリット幅変化領域11bが存在し、当該領域において隙間(スリット)の幅が大きくなっている。
【0025】
即ち、本発明においては、ロードポート装置における第一の開口部を平板状のドアによって略閉鎖状態とした際に、該ドアのポッド側表面と同一の平面内に開口する隙間の面積に対して、該ドアの微小空間側表面と同一平面に開口する隙間の面積が大きくなるように設定されている。また、より詳細には、後述する図7Bに示す実施形態を含め、第一の開口部を平板状のドアによって略閉鎖状態とした際に、該ドアの微小空間側表面或いは該室における開口部を画定する室壁における室内側面と同一平面に開口する隙間の総面積が、当該平面と平行な平面にて該隙間を切断した断面において得られる該隙間の総面積より大きく設定されている。このように、微小空間内部側の隙間の開口面積を大きくすることにより、ポッド側に開口する隙間から流出する気体の流量及び流速を安定して維持することが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、隙間11aの間隔、即ちドア15の外周面15fと筐体壁5bの開口部内周面5aとの間隔を2〜3mmとし、テーパ面5d、15hの形成角度を45°としている。間隔に関しては、気流の分岐の容易さという観点からは、大きく保ったほうが気流を安定化させることが容易であり好ましいと考えられる。しかし、あまり大きくした場合には微差圧の保持が困難となること、更にはファンの異常発生時には周囲の気体等が微小空間3内部に侵入する可能性が高くなることから当該間隔を採用している。また、加工の容易さの観点からテーパ角度が決定されている。しかしながら、本発明の実施形態は当該数値に限定されるものではなく、上記面積上の条件を満たすものであれば本発明特有の上記効果が得られるものであり、種々の間隔及びテーパ角度からなる構成も含まれるものである。
【0027】
また、本発明の実施形態は、図3A等に示したように、スリット幅変化領域11bをドア15の上辺及び下辺に均等に設ける場合に限定されない。図4A〜4Cはスリット幅変化領域11bを変化させた実施形態について、図3Cと同じ様式にてこれら実施形態を示すものである。図4Aは、ドア15aの上辺部分にのみスリット幅変化領域11bを設けた実施形態を示すものである。例えば、ロードポート装置の外部に発塵可能性を有するものが存在する場合等、ポッドの上部により安定した清浄気体からなるエアカーテン状のものを形成したい場合に、当該構成は効果的と考えられる。図4Bは、ドア15aの下辺部分にのみスリット幅変化領域11bを設けた実施形態を示すものである。ドア15aの下辺の隙間11aは、ファン7から最も離れた領域に形成されており、左右両辺の隙間11aと異なり隙間の延在方向も気流の形成方向に対して垂直となっている。このため、微差圧環境下での該下辺の隙間11aからの気体流出は生じにくくなっている。本実施形態に示す構成とすることにより、このような下辺の隙間への気体流入を容易とすることが可能となり、最も気体流量が安定しにくい領域において気体流出の流量及び流速の安定化を図ることが可能となる。図4Cは、隙間11aを全域に渡ってスリット幅変化領域11bとして構成を示している。当該構成とすることにより、隙間11aの全域において気体流出の流量及び流速の安定化を図ることが可能となる。
【0028】
なお、例えば図4A或いは4Bに示すように、特定(特にドア15aの上辺及び下辺)の部分の一部にスリット幅変化領域11bを配置することで、微小空間3から外部空間への気体の流れを安定化させてポッド内部のウエハに対する塵の付着量を低減することが確認されている。しかしながら、実際の装置構成において、このスリット幅変化領域11bの形成幅(図3Cにおける幅W)の最低値を知る必要がある。そこで、実際に300mm径のシリコンウエハを用い、幅Wを変化させた場合のウエハ上の塵の付着率を検討し、必要最低限の形成幅Wを求めた。当該結果を図5に示す。
【0029】
図5において、横軸はドア15aの下辺中心に設けられたスリット幅変化領域11bの幅Wの寸法、或いは対象となるウエハに対する当該幅の割合を示す。また、縦軸はスリット幅変化領域11bがゼロ(W=0)の際の塵の付着率を100%として場合の実際の付着率を示している。同図によれば、Wの値の増加に伴って塵の付着率は減少し、W=120mm或いはW=40%で塵の付着率が20%となり、W=220mm或いはW=73%で塵の付着率は10%となっている。即ち、Wの増加によって清浄な微小空間3からの気流の吹き出しが安定的に得られ、ウエハ表面に対する塵の付着の抑制効率を向上させることが可能となる。ここで、塵の付着率が20%以下であれば、実際の半導体製造工程における製品歩留まりは大幅に向上される。即ち、300mmウエハを対象とする場合、Wを120mm以上、より好適には220mm以上とすることにより、隙間11aを介してポッド側に流出する気体の流量及び流速の安定度を大きく向上可能であることが理解される。また、第一の開口部11の大きさ或いはドア15aの大きさはウエハサイズに依存して変更されるが、この場合、Wの値をウエハサイズの40%以上、より好適には73%以上とすることにより、同様の効果が得られることも理解される。
【0030】
なお、先にも簡単に述べたように、ドア15aの左右両辺に配置される隙間11aはファン7によって生成される気体の流れ方向に延在している。このため、当該隙間11aは深さがある程度以上あったとしても、比較的容易にファン生成の気流から該隙間11aを通過する気流を得ることが可能である。また、ドア15aの上辺に配置される隙間11aに関しては、隙間の深さ方向がファン生成の気体の流れに対して垂直となることから、当該隙間11aを通過する気流を得る点では比較的不利である。しかし、ファン7の配置に対して最も近傍に配置されるため、見かけ上隙間11aの上流と下流とに差圧を生成することが容易であり、ある程度差圧を維持できれば気流の安定化は可能と考えられる。しかしながら、ドア15aの下辺に配置される隙間11aは、隙間の深さ方向及びファン7との距離何れに関しても他の部分の隙間11aに対して不利な条件を有するために、気流の安定化が最も困難と考えられる。以上のことを勘案した場合、スリット幅変化領域11bはドア15aの下辺側に最も形成されるべきであり、続いて上辺側、更に必要であれば左右両辺側に順次付加されることが望ましいと考えられる。
【0031】
また、以上の実施形態においては、スリット幅の変化様式として、図6Aに示すように、筐体内壁5cと第一の開口部内周面5aとの接続部及びドア15aの微小空間内側面15gとドア外周面15fとの接続部に対して、各々所定の角度で交錯するテーパ面5d、15hを形成している。なお、図6Aは図3Aに示すように、スリット幅変化領域についての該隙間の延在面に対して垂直に交差する平面で切断した際の断面形状を示す6A領域を拡大して示すものである。しかしながら、本発明の実施形態は当該様式に限定されない。例えば、図6Aと同様の様式にてスリット幅の変化様式を示す図6Bに示されるように、筐体内壁5cと第一の開口部内周面5aとを滑らかに接続する曲面5e、及び接続部及びドア15aの微小空間内側面15gとドア外周面15fとを滑らかに接続する曲面15iとから構成されることとしても良い。
【0032】
また、図6Aと同様の様式からなる図7Aに示すように、テーパ面5d及びテーパ面15hを、各々複数の平面から構成される様式としても良い。当該実施形態の場合、テーパ面5dを第一の開口部内周面5aと平行な複数の面及び筐体内壁5cと平行な複数の面とを交互に配置することにより、また、テーパ面15hをドア外周面15fと平行な複数の面及びドア内側面15gと平行な複数の面とを交互に配置することに湯折構成することとしている。また、同様の様式からなる図7Bにしめすように、第一の開口部内周面と5aと筐体の外壁との接続部、及びドア外周面15fとドア外側面との接続部に、外側テーパ部5f、15jを各々設けることとしても良い。
【0033】
微小空間3は、ドア15aの開閉操作に係らず略一定の圧力条件下に維持されることが好ましいと考えられること等種々の要件からドア閉鎖状態においても外部空間と繋がっており、通常はスリット(隙間11a)の上流と下流との圧力差は微差に維持されている。ここで、通常スリットを流れる気体の流量は、スリットの上流側と下流側との圧力差と当該スリットの排気抵抗との積によって決定される。本発明が対象とするロードポート装置の場合には、塵等のウエハへの接近をスリットから流出する気流によって防止しようとする観点から、当該スリットから流出する気体の流量を大きくすることが好ましいと考えられる。従って、隙間11a、特に大流量で気体を流出させることが困難な領域の隙間11aの排気抵抗を下げることが好ましい。排気抵抗を低下させる簡便な方法として、スリット幅を広げる或いはスリット幅が狭くなる部分の長さを短くすることが考えられる。図7A或いは図7Bに示すように、第一の開口部内周面5aとドア外周面15fによって隙間11aを定義する領域の長さを短くすることで、このようなスリット幅変化領域の排気抵抗を適宜調整することが可能となる。即ち、ドア15aの上辺及び下辺、及び左右辺、更には左右辺の上方と下方とにおいて図6Aに示す様式と図7A或いは図7Bに示す様式とを適宜組み合わせることによって、ドア15aの全周においてより均一な気体の流出条件を確立することが可能となる。
【0034】
また、以上の実施形態においては、筐体壁5及びドア15aの両者にテーパ面等を形成することとしているが、本発明の実施形態は当該形態に限定されない。具体的には、図6Aと同様の様式からなる図8Aに示すように、筐体壁5b側にのみ上述したテーパ面5dを設けることとしても良い。或いは同様式からなる図8Bに示すようにドア15a側にのみ上述したテーパ面15hを設けることとしても良い。即ち、隙間11aの微小空間3側の開口幅をテーパ等によって広くし、隙間の最も狭くなる長さを小さくすることにより。上述した本発明の効果は十分に得られると考えられる。開口幅をテーパ等によって広げることによって開口部がファン生成の気流に対して鋭角的に開くことによってより気流が入りやすくなる。また、隙間の最も狭くなる領域をテーパ等によって小さくすることで、当該隙間の排気抵抗を下げ該隙間から流れ出す気体の流量を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2A】図1に示すロードポート装置においてドア及び第一の開口部周辺に配置される構成を拡大して模式的に示す図である。
【図2B】図2Aに示す状態にあるドア及び第一の開口部をポッドが配置される方向から見た状態を示す図である。
【図2C】図2Aに示す状態にあるドア及び第一の開口部を微小空間の内部から見た状態を示す図である。
【図3A】図2Aに示すドア及び第一の開口部周辺に配置される構成を簡略化して示す図である。
【図3B】図3Aにおいて矢印3B方向から隙間を見た状態を模式的に示す図である。
【図3C】図3Aにおいて矢印3C方向から隙間を見た状態を模式的に示す図である。
【図4A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの上辺に配置した状態を模式的に示す図である。
【図4B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの下辺に配置した状態を模式的に示す図である。
【図4C】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化領域の配置をドアの全周に配置した状態を模式的に示す図である。
【図5】図4Bに示す市にスリット幅変化領域を配置した場合であって、当該変化領域の範囲を変化させた場合のウエハに対する塵の付着度の変化を示す図である。
【図6A】図3Aに示す領域6Aを拡大して示す図である。
【図6B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図7A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図7B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図8A】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【図8B】本発明の他の実施形態に係るスリット幅変化部の断面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1:ロードポート装置、 3:微小空間、 5:筐体、 7:ファン、 9:ロボット、 11:第一の開口部、 13:第二の開口部、 15:ドアシステム、 17:ウエハ処理装置、 21:ポッド載置部、 23:ドッキングプレート、 25:ポッド固定システム、 27:ドッキングプレート駆動システム、 31:ポッド、 33:蓋、 35:ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間よりも高い圧力に維持される室と、
前記室と前記外部空間とを連通させる前記室を構成する室壁によって画定される開口部と、
前記開口部を略閉鎖する位置で停止可能な平板状のドアと、を有するロードポート装置であって、
前記ドアは前記開口部を略閉鎖する位置で停止した状態において前記ドアの平板外周面と前記室壁が前記開口部を画定する境界面である前記開口部の内周面との間において隙間を維持し、
前記隙間において、前記ドアの前記室側の面或いは前記室壁の室内面と同一の平面において開口する前記隙間の開口の面積は前記平面と平行な平面にて前記隙間を切断した際の前記隙間の断面積に対して大きいことを特徴とするロードポート装置。
【請求項2】
外部空間よりも高い圧力に維持される室と、
前記室と前記外部空間とを連通させる前記室を構成する室壁によって画定される開口部と、
前記開口部を略閉鎖する位置で停止可能な直方平板状のドアと、を有する、半導体処理装置に付随するウエハ挿脱用のロードポート装置であって、
前記ドアは前記開口部を略閉鎖する位置で停止した状態において前記ドアの平板外周面と前記室壁が前記開口部を画定する境界面である前記開口部の内周面との間において隙間を維持し、
前記ドアの平板外周面と前記開口部における前記室壁の内周面との間であって、少なくとも前記ドアの直方平板形状の一辺では前記一辺に沿った所定の幅以上の領域において、前記隙間の前記室側に位置する開口のスリット幅が前記外のスリット幅よりも大きいことを特徴とするロードポート装置。
【請求項3】
前記所定の幅は120mmであることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項4】
前記所定の幅は前記ウエハの径の40%の幅であることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項5】
前記室側の開口から前記外部空間側の開口への前記隙間のスリット幅の変化は連続的であることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項6】
前記半導体処理装置と、
前記ウエハを収容し、一側面に蓋を用いて開閉可能な開口を有するポッドと、
請求項2乃至5に記載のロードポート装置であって、前記ポッドの開口が前記開口部に正対させて載置可能なドッキングプレートを有し、前記ドアが前記蓋を保持して前記ポッドの開口の開閉を行うドアシステムからなるロードポート装置と、を有することを特徴とするミニエンバイロンメントシステム。
【請求項1】
外部空間よりも高い圧力に維持される室と、
前記室と前記外部空間とを連通させる前記室を構成する室壁によって画定される開口部と、
前記開口部を略閉鎖する位置で停止可能な平板状のドアと、を有するロードポート装置であって、
前記ドアは前記開口部を略閉鎖する位置で停止した状態において前記ドアの平板外周面と前記室壁が前記開口部を画定する境界面である前記開口部の内周面との間において隙間を維持し、
前記隙間において、前記ドアの前記室側の面或いは前記室壁の室内面と同一の平面において開口する前記隙間の開口の面積は前記平面と平行な平面にて前記隙間を切断した際の前記隙間の断面積に対して大きいことを特徴とするロードポート装置。
【請求項2】
外部空間よりも高い圧力に維持される室と、
前記室と前記外部空間とを連通させる前記室を構成する室壁によって画定される開口部と、
前記開口部を略閉鎖する位置で停止可能な直方平板状のドアと、を有する、半導体処理装置に付随するウエハ挿脱用のロードポート装置であって、
前記ドアは前記開口部を略閉鎖する位置で停止した状態において前記ドアの平板外周面と前記室壁が前記開口部を画定する境界面である前記開口部の内周面との間において隙間を維持し、
前記ドアの平板外周面と前記開口部における前記室壁の内周面との間であって、少なくとも前記ドアの直方平板形状の一辺では前記一辺に沿った所定の幅以上の領域において、前記隙間の前記室側に位置する開口のスリット幅が前記外のスリット幅よりも大きいことを特徴とするロードポート装置。
【請求項3】
前記所定の幅は120mmであることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項4】
前記所定の幅は前記ウエハの径の40%の幅であることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項5】
前記室側の開口から前記外部空間側の開口への前記隙間のスリット幅の変化は連続的であることを特徴とする請求項2に記載のロードポート装置。
【請求項6】
前記半導体処理装置と、
前記ウエハを収容し、一側面に蓋を用いて開閉可能な開口を有するポッドと、
請求項2乃至5に記載のロードポート装置であって、前記ポッドの開口が前記開口部に正対させて載置可能なドッキングプレートを有し、前記ドアが前記蓋を保持して前記ポッドの開口の開閉を行うドアシステムからなるロードポート装置と、を有することを特徴とするミニエンバイロンメントシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2007−324302(P2007−324302A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151570(P2006−151570)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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