説明

防寒衣服

【課題】伸縮性に優れ、かつ軽量で、ダウンプルーフ性にも優れた防寒衣服を提供する。
【解決手段】
合成繊維からなる表地と裏地と、その間に詰められた羽毛を含む充填材料とからなる防寒衣服であって、該表地または該裏地の少なくとも一方が該充填材料に接しており、該充填材料に接する表地または裏地の厚さが0.20mm以上、0.50mm以下であり、かつ生地目付が50g/m以上、175g/m以下であり、さらに伸長率が20%/14.7N/5cm巾以上、200%/14.7N/5cm巾以下であることを特徴とする防寒衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性布帛を用い、優れた保温性と伸長性を両立する防寒衣服に関するものである。さらに詳しくは、軽量かつ保温性、伸長性に富んだ防寒衣服に関し、特に運動用やレジャー用、ワーキング用のスカート、パンツ、ジャケット、ベスト、雨衣、帽子、靴下、手袋、インナーに最適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、伸縮性布帛を用いた防寒衣料としては、熱収縮率差5%以上を有する異収縮複合糸条で構成された防風性編地を用いた衣料が知られている(特許文献1参照)。しかし、従来の異収縮複合糸条で構成した防風性編地で羽毛や中綿入り衣服を提供した場合、一定量の防風性能はあるものの、編地の膨らみ感に伴う空隙が生地の伸縮効果により増減することから、羽毛や中綿の充填により構成されるデッドエアー層の保温効果が低下するとともに、ダウンプルーフ性が考慮されていないため、着用中などに羽毛や中綿が噴き出すのが実状であった。
【0003】
この改善として、合成樹脂がダイレクトコーティング加工されてなる伸縮性生地を用いた防風性衣服や、ポリエステル系熱可塑樹脂多孔体のシートで構成されたダウンジャケットが知られ、使用者の動き追従性と防寒性、並びにダウンプルーフ性を具備してなることが知られている(特許文献2から特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これら技術を適用した防寒衣服は、元々厚い編地にさらにコーティング加工するために重いという問題を有しており、伸縮性に優れ、かつ軽量で、ダウンプルーフ性にも優れた防寒衣服が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−170061号
【特許文献2】特許第2991615号
【特許文献3】特開2004−169211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、かかる上記従来の問題を解消することを課題とし、伸縮性に優れ、かつ軽量で、ダウンプルーフ性にも優れた防寒衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために以下のような構成を採用するものである。
(1) 合成繊維からなる表地と裏地と、その間に詰められた充填材料とからなる防寒衣服であって、該表地もしくは該裏地の少なくとも一方が該充填材料に接しており、かつ、該充填材料に接する表地または裏地の片面に合成樹脂皮膜が積層され、該充填材料に接する生地厚さが0.20mm以上、0.50mm以下であり、かつ生地目付が50g/m以上、175g/m以下であり、さらに伸長率が20%/14.7N/5cm巾以上、200%/14.7N/5cm巾以下であることを特徴とする防寒衣服。
(2) 該充填材料に接する生地が合成繊維マルチフィラメントを用いた編地であり、かつ、該編地の片面に合成樹脂皮膜が積層されていることを特徴とする上記1記載の防寒衣服。
(3) 後身頃における該表地と該裏地の面積比が、5%以上、20%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の防寒衣服。
(4) 通気量が5〜50cc/cm/secの裏地を衣服の衿部、胸部、腹部、腰部、袖部のいずれかに複数個所用いることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防寒衣服。
(5) スカート、パンツ、ジャケット、ベスト、雨衣、帽子、靴下、手袋および肌着から選ばれる防寒衣料であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の防寒衣服。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伸縮性に優れ、かつ軽量で、ダウンプルーフ性にも優れた防寒衣服を提供することができる。
【0009】
さらに、合成樹脂皮膜を設けた場合には、特にダウンプルーフ性に優れた防寒衣服とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明防寒衣服を前身頃方向から見た一例である。
【図2】本発明防寒衣服の断面の一例である。
【図3】本発明防寒衣服、後ろ身頃の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の防寒衣服についてさらに具体的に説明する。
【0012】
図1は本発明の防寒衣服を前身頃方向から見た一例である。1aは前身頃を示す。
【0013】
図2は本発明防寒衣服の断面の一例である。1は表地、2は裏地、3は充填材料、4は中地を示す。
【0014】
図3は本発明防衣服、後ろ身頃の一例である。
【0015】
本発明においては、表地あるいは裏地には合成繊維を用いた布帛が用いられる。布帛としては、織物、編物、不織布等が用いられる。
【0016】
防寒衣服としては、例えばジャケットやパンツ等、上衣、下衣のいずれであってもよい。
【0017】
また、合成繊維からなる表地と裏地と、その間に詰められた羽毛を含む充填材料とからなる部分が、後身頃のみ等その衣料を構成する一部分のみであっても構わない。
【0018】
充填材料には、ポリエステル繊維やナイロン繊維、アクリル繊維、またウールや綿、羽毛を単独もしくは混合したものが用いられる。
【0019】
本発明においては、充填材料に接する表地または裏地の厚みが0.20mm以上、0.50mm以下、かつ生地目付が50g/m以上、175g/m以下であり、さらに衣服を着用した際に実質的なストレッチ性とダウンプルーフ性を両立するよう、該生地は20%/14.7N/5cm以上、200%/14.7N/5cm以下の伸長率であることが必要である。
【0020】
厚みが0.20mm以上、0.50mm以下であり、かつ、生地目付が50g/m以上、175g/m以下であることにより、軽量性が確保される。
【0021】
また伸長率は、JIS L1018(カットストリップ法)に基づき、引張速度30cm/分で14.7Nまで伸ばした際の伸長率を意味する。20%未満では着用中に実感できる運動追従性を得がたく、200%を超えると羽毛充填やミシン縫製作業が困難となり更には衣服としての審美性が劣ることとなる。
【0022】
伸長率を20〜200%/14.7N/5cmとするためには、例えば、織物、編物、不織布等の布帛を構成する材料が、ポリトリメチレンテレフタレート糸、ポリエステルとポリトリメチレンテレフタレート糸のバイメタル糸やスパンデックス糸を含有したり、合繊異収縮混繊糸やケン縮加工糸等を含有することが好ましい。または、本発明では編地を使用することが、上記伸長率や生地厚、目付を得るための加工がしやすいことから好ましい。中でも、編物を用い片面にポリウレタンフィルムをラミネートした布帛を用いることは好ましい態様の一つである。
【0023】
本発明においては、特にダウンプルーフ性に優れた防寒衣服とするために、該裏地または表地の片面に合成樹脂皮膜が積層されている。
【0024】
合成樹脂皮膜は、樹脂からなるフィルムを接着剤でラミネートしたものや、樹脂をコーティングしたものが用いられる。
【0025】
合成樹脂皮膜は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等からなる微多孔皮膜、無孔皮膜、微多孔皮膜に無孔皮膜を積層した皮膜等が用いられる。なかでも皮膜にストレッチ性があり、積層した伸縮性布帛のストレッチ性の妨げにならないという観点から、ポリウレタンを主体とした微多孔皮膜または無孔皮膜であることが好ましく、あるいはポリウレタンを主体とした微多孔皮膜と無孔皮膜を積層した皮膜であることが好ましい。微多孔皮膜の製造方法の一例としては、ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、ナイフオーバーロールコーターで布帛にコーティングした後、水中に導き凝固させ、次いで乾燥させるという、いわゆる湿式凝固法にてポリウレタン微多孔皮膜を製造する方法が挙げられる。
【0026】
無孔皮膜の製造方法の一例としては、イソシアネートがキシリレンジイソシアネートであり、ソフトセグメントにポリテトラメチレングリコールを含むポリエーテル系ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンとの混合溶媒に溶解し、ポリウレタン樹脂溶液を調整した後、架橋剤としてシアヌル骨格を有するヘキサメチレンジイソシアネートを添加した塗工液をナイフコーター等で布帛に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。
【0027】
また、微多孔皮膜に無孔皮膜を積層した皮膜は、上述の湿式凝固法にて布帛にポリウレタン微多孔皮膜を積層した後、微多孔皮膜面に上述の無孔皮膜を作製した塗工液をナイフオーバーロールコーター等で積層塗工し、乾燥することで得られる。
【0028】
また、皮膜と伸縮性布帛との積層は、コーティング法にて直接編物または織物に塗布積層してもよく、または皮膜を予め離型紙の上に設けておき、その皮膜上にポリウレタン等から成る接着剤を点状または線状、または全面に塗り、次いで伸縮性布帛を積層して接着するラミネート法も採用できる。加工性、コスト、性能等によって積層方法を選択すればよく、一般的には低伸長率布帛の場合はコーティング法を用い、比較的伸長率の高い編地の場合はその伸度によるコーティング加工が困難なためラミネート法を用いるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、本発明の表地や裏地、充填材料には、抗菌防臭加工、蓄熱加工、撥水加工、吸水加工や帯電防止加工等、必要用途に応じて任意の加工することもできる。
【0030】
本発明の表地、裏地を構成する糸としては、総繊維繊度7dtex以上78dtex以下が好ましい。7dtexより小さくなると風合い面は好ましくなるが、製織性や編成性に劣ることから7dtex以上が好ましい。また、風合いや着用中の軽量感を考慮すると、56dtex以下あるいは30dtex以下といった細番手の糸を使用することがさらに好ましい。
【0031】
本発明の防寒衣服は、少なくとも表地と裏地、充填材料からなる部位を一部分に含んでなる。その構造は、表地/充填材料/裏地からなる生地2層構造でも、表地/中生地/充填材料や表地/充填材料/中生地/裏地といった生地4〜5層構造でも構わないが、表地あるいは裏地の少なくともいずれか一方が充填材料に接していることが必要である。中生地を設けることで充填材料とは接しない表地あるいは裏地を使用する場合、充填材料と接する表地や裏地と、接しない表地や裏地の面積比が、5%以上、20%以下であることが、衣服の審美性を高める意味で好ましい。例えば、表地/充填材料/中生地/裏地の3層構造の羽毛入りジャケットであり、表地が20〜200%の伸長率を有し、前記目付、生地厚さを有する場合、中生地や裏地は特に限定はなく、適時、機能や仕立て映え、運動追従性や保温性向上の観点から表地に対して5%から20%の面積比を有していることが好ましい。差寸が大きいほど衣服裏側のゆとりが大きく衣服着用中の動きに追従し圧迫感が軽減するものの、静止状態では大きなゆとりが衣服内部でだぶつくため審美性や着用快適性に劣ることから20%以下が好ましい。一方、5%未満では表地の伸長率に伴う運動追従性を阻害し圧迫感が増してしまうことから5%以上が好ましい。
【0032】
また、本発明の衣服を羽毛入りジャケットとして用いる場合、着用中の羽毛の片寄りを抑制するため、ヨコ方向あるいはバイヤス方向にキルトステッチを設けた製品とすることが好ましい。このヨコ方向あるいはバイヤス方向のキルトステッチに沿って、表地と裏地の身頃幅比を5%以上、20%以下とすることが好ましい。
【0033】
特に着用時両腕を前組みした際、背中肩甲骨部分の皮膚伸びは大きいことから肩甲骨周辺の巾方向、すなわち幅方向で5%以上、20%以下の面積比とすることが好ましい。
【0034】
次に、後身頃部分に、伸長率5〜200%の表地と、表地と裏地の面積比が5から20%の差を有する羽毛入りジャケットの製造方法の一例を挙げる。
【0035】
裏地2の型紙設計に於いて、図3の様に、後身頃の肩線SLの中点C(NPからSP間を結ぶ直線の中点)とウエストラインWLに沿って後身頃ウエスト巾を4等分した距離の位置のポイントEとを結ぶ直線で結び、基準線Xとする。基準線XからバストラインBL上で交点Dから身頃巾方向に5%から20%の範囲で拡大展開する。同様に、ウエストラインWL上で交点Eから身頃巾方向に5%から20%の範囲で拡大展開する。それら展開から得られるポイントa1、g1およびa2、g2からを通過する曲線を肩線中点Cから裾交点Fに向かってそれぞれ滑らかなカーブを得る。このカーブで得られる巾、例えばバスト位置ではA、ウエスト位置ではGの距離分をそれぞれバストポイントBP、ウエストポイントWPより衣服パターンを拡大し、これらの点SP〜BP〜WPを滑らかな線で結ぶことで、巾方向に面積を増した後身頃を得られ裏地2の後身頃面積を5から20%拡大できる。この時、肩先SPおよび胸巾アームホール下BPの上下位置は移動しないものとした方が前身頃や袖との縫製をスムーズに行えることから好ましい。
【0036】
裏地の通気量としては、通気量が5cc/cm2/sec以上、50cc/cm2/sec以下が好ましく、より好ましくは8から25cc/cm2/secである。5cc/cm2/sec未満であれば洗濯やクリーニング時の通水性や脱液性が悪く、洗濯や乾燥が困難となる場合がある。また、50cc/cm2/secを超えると着用中保温すべきデッドエアーが過度に入れ替わることで、保温性能が低下する傾向がある。更に、本裏地の使用部位としては、少なくとも衣服の衿部、胸部、腹部、腰部、袖部のいずれかに複数個所使用した場合、十分な洗濯性を有するため好ましい。
【0037】
本発明の防寒衣服は、用途をスカート、パンツ、ジャケット、ベスト、雨衣、帽子、靴下、手袋および肌着から選ばれた防寒衣服として好適に用いられる。
【実施例】
【0038】
次に本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
なお、実施例中の評価方法、測定方法は以下の方法を用いた。また、測定結果は、表1の通りである。
[伸長率(伸び率)]:JISL1018(カットストリップ法)に準じて測定した。
[保温性]:KES法に準じて測定した。
[生地厚さ]:JIS L1018に基づいて測定した。
[目付け(単位面積当たりの質量)]:JIS L1018に準じて測定した。
[通気性]:JIS L1018に基づいて測定した。
[洗濯]:JIS L0217(103法)に基づいて、洗濯を5回繰り返した。ただし、吊り干し乾燥とし、アイロン仕上げは行わなかった。
[運動追従性]:衣服着用状態で両腕を前で組み、背中と肘部分の着用感について、下記の5段階評価を実施した。
【0040】
◎ :非常に良い
○ :良い
△ :どちらともいえない
× :悪い
××:非常に悪い
[実施例1]
(表地の作製)
44dtex34フィラメントのナイロン糸を使用し、ウエル密度72ループ個数/2.54cm、コース密度72ループ個数/2.54cm、目付97g/mに仕上げた丸編み地を得た。次いで、予めポリエチレンテレフタレートタフタにシリコーン系撥水剤を用いて撥水処理を施しカレンダーロールを用いて190℃にて圧力をかけカレンダーリングを行なった離型布上にポリウレタン溶液を150g/m2の割合でナイフオーバーロールコーターを使用しコーティングした。次いでジメチルホルムアミド10重量%含有した水溶液を凝固層とする浴槽中に30℃にて3分間浸漬してポリウレタン塗布液を湿式凝固させ、次いで80℃の温湯にて10分間湯洗し、140℃にて熱風乾燥して、離型布上にポリウレタン微多孔皮膜を得た。
【0041】
このポリウレタン微多孔皮膜上にポリエステル系ポリウレタン樹脂(有効成分70重量%)100重量部、トリメチロールプロパン−トルイレンジイソシアネート(モル比1:3)付加物を15重量部および架橋促進剤5重量部をキシロール60重量部に溶解した接着剤液を30メッシュの格子状に彫刻したグラビアロールを用いて35g/m2塗布し、100℃にて熱風乾燥した。この接着剤塗布面に上述の編物を無張力の状態にて貼り合わせ、マングルにて軽くニップ後、100℃の熱風で10分間処理し、40℃で24時間熟成した後、離型布を剥離し上述の丸編み地に微多孔皮膜を積層したラミネート布帛を得た。
(裏地の作製)
55dtex24フィラメントの円断面のポリエステル長繊維をタテ糸に使用し、ヨコ糸に83dtex34フィラメントのポリエステル長繊維の仮ヨリ加工糸を用い、平織物を製織し、常法にて精練・リラックス後180℃にてプレセットした後、連続減量方法にて減量率10%で加工および染色加工を施し、帯電防止剤および柔軟剤を付与した後、190℃で30秒間仕上げセットを施しタテ糸密度110本/2.54cm、ヨコ糸密度80本/2.54cmの裏地用の織物を得た。
(中地の作製)
55dtex36フィラメントのポリエステル長繊維を経糸、緯糸としてそれぞれの織り密度が190本/2.54cm、140本/2.54cmの平組織の生機を得て、該生機をリラックス精練後、130℃でサーキュラ染色を行い乾燥後、上180度/下60度のカレンダー加工を行ない、中生地用の織物を得た。
(充填材料の作製)
ポーランドグースダウンをダウン混用率90%となるよう、洗浄乾燥後、精製加工し充填用の羽毛を得た。
【0042】
得られた表地/羽毛/表地を使用して、所謂、生地2層構造のダウンジャケットを縫製した。その際、ジャケット後身頃の衣服パターンを図3に示す通り、バスト巾方向に+6%、表地に対して裏地の寸法を増加し、結果、パターン面積比で約7%増やした後、縫製した。
【0043】
表地(ラミネートした編み地)は、生地厚が0.33mm、生地目付が117g/m、伸長率がタテ方向に25%、ヨコ方向に140%であった。表地の保温性、通気量の測定値は表1に示す。
【0044】
表2に示す如く、このダウンジャケットは、また外気側と肌側の両面に本発明の要件を満たす生地を使用したため、運動追従性は非常によく、かつ、表地の有する伸縮性からタイトなシルエットのデザインでも着用中の圧迫感をほとんど感じ得ないダウンジャケットであった。
[実施例2]
実施例1のダウンジャケットにおいて肌側に裏地を使用した、表地/羽毛/中生地/裏地の所謂、生地3層構造のダウンジャケットを縫製した。その際、ジャケット後身頃の衣服パターンを図3に示す通り、バスト巾方向に+12%、表地に対して裏地の寸法を増加し、結果、パターン面積比で約16%増やした後、縫製した。
【0045】
なお、表地(ラミネートした編み地)は、生地厚が0.33mm、生地目付が117g/m、伸長率がタテ方向に25%、ヨコ方向に140%と同様で、一方裏地の生地厚が0.09mm、生地目付けが69g/m、伸長率がタテ方向に1.1%、ヨコ方向に1.5%であった。表地に加え、裏地の保温性、通気量の測定値は表1に示す。
【0046】
表2に示す如く、このダウンジャケットは、衣服外側に設けた表地と衣服肌側に設けた裏地のゆとりが相まった効果で、運動追従性は非常によく、かつ、着用中の圧迫感をほとんど感じ得ないダウンジャケットであった。また、着用中、直立姿勢のような静止時においても衣服肌側にだぶつきや審美性を悪化させるようなことはなく、さらに洗濯をした際にも、洗濯液への沈降性や脱液性に問題なく、優れた運動追従性と洗濯乾燥性を有していた。
[比較例1]
実施例1のダウンジャケットにおいて、衣服外側から裏地織物/中生地織物/羽毛/中生地織物/裏地織物の構成で、所謂、4層構造のダウンジャケットを縫製した。裏地織物は、生地厚が0.09mm、生地目付が69g/m、伸長率がタテ方向に1.1%、ヨコ方向に1.5%であった。表地の保温性、通気量の測定値は表1に示す。
【0047】
表2に示す如く、このダウンジャケットは、また外側と肌側の両面に一般的な高密度織物を使用しているため、ダウンプルーフ性や着用防寒性に優れるものの、背中や袖部で圧迫感を感じるなど運動追従性に優れないものであった。
[比較例2]
実施例1の表地で衣服外側表地をラミネート加工する前の44dtex34フィラメントのナイロン糸を使用し、ウエル密度72ループ個数/2.54cm、コース密度72ループ個数/2.54cm、目付97g/mに仕上げた丸編み地を使用し、非ラミネート加工の丸編み表地を得た。得られた表地の伸長率はタテ方向に59%、ヨコ方向に212%と高い伸長率のため縫製や裁断加工時の取り扱いが困難で縫製品の品質は優れたものにならなかった。得られた表地(非ラミネート編地)/羽毛/表地(非ラミネート編地)を使用しダウンジャケットを着用した結果、運動追従性や洗濯性は秀逸なものの、衣服外側の表地面から多数の羽毛吹き出しが発生し、また、表地通気量が200cc/cm/secと高いことから製品着用時に保温感を得がたく、防寒衣としての機能を満たしていなかった。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【符号の説明】
【0050】
1 :表地
1a:前身頃
2 :裏地
3 :充填材料
4 :中地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維からなる表地と裏地と、その間に詰められた充填材料とからなる防寒衣服であって、該表地または該裏地の少なくとも一方が該充填材料に接しており、かつ、該充填材料に接する表地または裏地の片面に合成樹脂皮膜が積層され、該充填材料に接する表地または裏地の厚さが0.20mm以上、0.50mm以下であり、かつ生地目付が50g/m以上、175g/m以下であり、さらに伸長率が20%/14.7N/5cm巾以上、200%/14.7N/5cm巾以下であることを特徴とする防寒衣服。
【請求項2】
該充填材料に接する表地または裏地が合成繊維を用いた編地であることを特徴とする請求項1記載の防寒衣服。
【請求項3】
後身頃における該表地と該裏地の面積比が、5%以上、20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の防寒衣服。
【請求項4】
通気量が5〜50cc/cm2/secの裏地を衣服の衿部、胸部、腹部、腰部、袖部のいずれかに複数個所用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防寒衣服。
【請求項5】
スカート、パンツ、ジャケット、ベスト、雨衣、帽子、靴下、手袋および肌着から選ばれる防寒衣料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防寒衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−18941(P2010−18941A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−215369(P2009−215369)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】