説明

防振装置の診断システム

【課題】防振装置の振動検出センサからの出力信号を取得し、その出力信号に基づいて振動検出が正常に行われるか否かを診断する防振装置の診断システムを提供する。
【解決手段】
レンズ10に内蔵又は外付けされる防振装置の制御部である防振部19において、振動検出センサ62の出力信号をCPU60で取得し、その信号をレンズ10のCPU20を介してパソコン16のCPU50に送信する。パソコン16のCPU50は、レンズ10を静止させた状態での振動検出センサの出力信号によりドリフトが正常か否かを診断し、また、レンズ10を左右や上下に振るようにオペレータに指示し、そのときの振動検出センサ62の出力信号により振動検出センサ62の取付方向等が正常か否かを診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置の診断システムに係り、特に防振装置の振動検出センサや周辺回路の診断を行う防振装置の診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラの防振(像振れ補正)装置として、撮影光学系に防振レンズを光軸と直交する面内で移動自在に配置し、カメラ(カメラの撮影光学系)に振動が加わると、その振動による像振れを打ち消すように防振レンズをアクチュエータで駆動して像振れを補正するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。このような防振装置では、カメラに加わった振動を検出する振動検出センサとして例えば角速度センサが用いられており、その角速度センサから得られた角速度信号を積分処理することによって像振れを打ち消すための防振レンズの位置(基準位置からの変位量)が求められてそれに従って防振レンズが駆動されるようになっている。現在、防振装置は、レンズ装置に内蔵されているものや、レンズ装置のアダプターとしてレンズ装置とカメラの間に装着するタイプのものがある。
【0003】
また、従来、レンズ装置やそのコントローラの各構成部に故障など不良箇所がないかを診断する診断システムが知られている。例えば、自己診断用の回路を実装した専用基板をレンズ装置に装着し、又は、レンズ装置にパソコンなどのコンピュータを接続し、自己診断用の回路やコンピュータで実行される診断プログラムによってレンズ装置やコントローラの各部に所定の動作を行わせると共に、診断に必要な情報をレンズ装置から取得して異常がないかどうかを判定する診断システムが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2001−142103号公報
【特許文献2】特開2003−107554号公報
【特許文献3】特開2003−298889号公報
【特許文献4】特開2003−298889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、防振装置に関して診断を行う診断システムは提案されていない。レンズ装置やコントローラに関するこれまでの診断システムでの診断対象と性質が異なる防振装置の診断対象としては振動検出センサがある。例えば、振動検出センサのドリフトが大きい場合、振動検出センサの信号線等が断線している場合、振動検出センサの取付向きが反対の場合のような振動検出センサに関する不良(異常)、又は、振動検出センサの周辺回路に関する異常は、従来の診断システムでは検出することができない。このような振動検出に関する異常があると、像振れ補正が正常に行われず、却って撮影映像を乱すことになるため使用前に診断できるようにしておくことが重要である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、振動検出が正常であるかどうかを診断することができる防振装置の診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の防振装置の診断システムは、光学系に加わった振動を振動検出センサによって検出し、該振動検出センサから出力された信号に基づいて前記光学系により結像される像の振れを防止する防振装置の診断システムであって、前記振動検出センサから出力される信号を取得し、該取得した信号に基づいて前記振動検出センサによる振動検出が正常に行われているか否かを診断する診断手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、防振装置の振動検出センサによって振動検出が正常に行われているか否かを診断することができる。
【0008】
請求項2に記載の防振装置の診断システムは、請求項1に記載の発明において、前記診断手段は、前記振動検出センサから出力される信号を取得し、該取得した信号に基づいて前記振動検出センサのドリフトが正常か否かを診断することを特徴としている。本発明によれば、振動検出センサのドリフトが正常か否かによって振動検出が正常に行われるか否かを診断することができる。
【0009】
請求項3に記載の防振装置の診断システムは、請求項1に記載の発明において、前記診断手段は、前記光学系を所定方向に振った際に前記振動検出センサから出力される信号を取得し、前記光学系を振った方向と前記取得した信号の値との関係から前記振動検出センサの取付方向が正常か否かを診断することを特徴としている。本発明によれば、振動検出センサの取付方向が正常か否かによって振動検出が正常に行われるか否かを診断することができる。
【0010】
請求項4に記載の防振装置の診断システムは、請求項1に記載の発明において、前記診断手段は、前記振動検出センサから直接出力される生信号と、前記振動検出センサから出力された後、所定の信号処理回路によって信号処理された処理信号とを取得し、前記生信号と前記処理信号との関係に基づいて前記信号処理回路が正常か否かを診断することを特徴としている。本発明によれば、振動検出センサの出力信号を処理する信号処理回路が正常であるか否かによって振動検出が正常に行われるか否かを診断することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る防振装置の診断システムによれば、振動検出センサによる振動検出が正常に行われるか否かを事前に診断することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下添付図面に従って本発明に係る防振装置の診断システムの好ましい実施の形態について詳述する。
【0013】
図1は、テレビカメラ用のレンズシステムであって、本発明が適用されるレンズシステムを構成する各装置の外観構成を示した図であり、図2は、本発明が適用されるレンズシステムの構成を示したブロック図である。図1に示すレンズシステムにおいて、テレビレンズ10は例えばEFPレンズと呼ばれるボックスタイプのレンズ装置であり、図示しないテレビカメラ本体にレンズマウントによって装着される。そのテレビレンズ10には、フォーカスコントローラ12、ズームコントローラ14、及び、パソコン(パーソナルコンピュータ)16等がケーブルにより接続できるようになっている。尚、本発明は、EFPレンズではなく、携帯用のENGレンズ等の他の種類のレンズを用いたレンズシステムについても適用できる。
【0014】
テレビレンズ10(以下、単にレンズ10という)には、テレビカメラ本体の撮像素子面に被写体像を結像する撮影レンズ(光学系)が装備されており、その撮影レンズを構成する可動の光学部材として、例えば、フォーカス調整用のフォーカスレンズ、ズーム調整用のズームレンズ、絞り調整用のアイリス、ズーム倍率を1倍から2倍又は2倍から1倍等に拡大・縮小するエクステンダー等が配置されている。
【0015】
また、同図に示すレンズ10は防振装置18を内蔵しているタイプを示しており、撮影レンズには光軸に対して直交する上下方向及び左右方向に移動可能な像振れ補正用の防振レンズが配置されている。尚、レンズ10が防振装置18を内蔵しないタイプの場合、防振アダプターと呼ばれる防振装置18´をレンズ10の後端側に装着することによって防振機能を追加することができる。本発明は防振装置がレンズ10に内蔵されている場合と、外付けされる場合のいずれでも適用できる。
【0016】
図2に示すようにレンズ10にはCPU20が搭載されると共に、上記各可動の光学部材(フォーカスレンズ、ズームレンズ、アイリス、防振レンズ等)をモータ駆動するための各駆動部22が搭載されている。各駆動部22は、CPU20や後述する防振部19の防振駆動回路66から与えられるコントロール信号に基づいてモータを駆動することによって上記各可動の光学部材を駆動する。尚、各駆動部22のうち、フォーカスレンズ駆動用、ズームレンズ駆動用、防振レンズ駆動用等のそれぞれの駆動部を識別している場合には、フォーカスレンズの駆動部、ズームレンズの駆動部、防振レンズの駆動部等というものとする。また、各駆動部22はレンズ10に着脱可能なサーボモジュールとよばれるモータ及びモータをサーボ制御するサーボ回路を搭載した装置によって構成される場合もある。
【0017】
また、レンズ10には、上記各可動の光学部材の位置を検出するための位置検出センサ(各位置検出センサ24)や、電源から各駆動部22に供給される電流や電圧を検出する電流・電圧検出回路26が設置されており、各位置検出センサ24の検出値(位置検出値)や、電流・電圧検出回路26での検出値がCPU20によって適宜読み取られるようになっている。また、レンズ10にはCPU20によって所要のデータが書込み、又は読出しされるメモリ28が備えられている。
【0018】
図2においてフォーカスコントローラ12とズームコントローラ14とは同一ブロックにより省略して示してあり、ズーム/フォーカスコントローラ12(14)としている。ズーム/フォーカスコントローラ12には、CPU30が搭載されており、図1のようにフォーカスコントローラ12やズームコントローラ14をケーブルによりレンズ10に接続すると、CPU30とレンズ10のCPU20との間で図示しないインターフェース回路を介して通信(双方向通信)による各種信号のやり取りが行えるようになっている。
【0019】
また、ズーム/フォーカスコントローラ12には、操作部32や各スイッチ34が設けられており、それらの操作部32や各スイッチ34からの情報がCPU30に与えられるようになっている。操作部32は、例えば、図1のフォーカスコントローラ12において、フォーカスリング12Aと、その回動位置を検出する位置検出センサを示すと共に、図1のズームコントローラ14において、サムリング14Aとその回動位置を検出する位置検出センサを示している。
【0020】
例えば、フォーカスコントローラ12によってレンズ10のフォーカス調整を行う場合、フォーカスコントローラ12のCPU30は、操作部32から取得したフォーカスリング12Aの設定位置(検出値)に基づいて、その設定位置に対応するフォーカス位置への移動を指令するコントロール信号をレンズ10のCPU20に送信する。レンズ10のCPU20ではフォーカスコントローラ12から受信したコントロール信号により各駆動部22のうちのフォーカスの駆動部を駆動する。これによってフォーカスレンズがフォーカスコントローラ12により指令されたフォーカス位置に移動する。
【0021】
また、フォーカスコントローラ12やズームコントローラ14には、各種スイッチが特定の機能を使用するために設置される場合があり、図2における各スイッチ34は、それらのスイッチを示している。各スイッチ34の設定状態はCPU30によって読み取られ、その設定状態に応じた処理をレンズ10のCPU20に実行させるためのコマンド信号等もズーム/フォーカスコントローラ12のCPU30からレンズ10のCPU20に送信されるようになっている。
【0022】
図1に示すパソコン16は、一般に市販されているもので、図2にはそのパソコン16の構成が簡単に示されている。図2に示すようにパソコン16は、CPU50、メモリ52(ハードディスク、RAM、ROM等)、入力手段54(キーボード、マウス等)、モニタ56、外部記憶読取装置58(CD−ROMドライバ、フロッピーディスクドライバ等)等から構成されている。
【0023】
パソコン16とレンズ10とは、例えば、RS232Cケーブルにより接続され、パソコン16のCPU50とレンズ10のCPU20との間では、RS232Cのインターフェースにより図示しないインターフェース回路を通じて通信(双方向通信)を行うことができるようになっている。また、詳細を後述するようにレンズ診断用のプログラムを実行するソフトウェアをパソコン16に事前にインストールしておくことによって、レンズ診断をパソコン16により行えるようになっている。
【0024】
図2において防振部19は、図1のレンズ10に内蔵された防振装置18(又は外付けの防振装置18´)の制御部の構成を示しており、防振部19は、CPU60、振動検出センサ62、信号処理回路64、防振駆動回路66、電流・電圧検出回路68等から構成されている。また、防振部19のCPU60とレンズ10のCPU20との間では図示しないインターフェース回路を介して通信(双方向通信)による各種信号のやり取りが行えるようになっている。
【0025】
ここで、像振れ補正を行う際の防振部19の各部の処理の概要について説明する。振動検出センサ62は、撮影レンズ(光学系)に加わった振動を検出するためのセンサであり、例えば、ジャイロセンサのような角速度センサを示している。尚、振動検出センサは角速度センサ以外にも加速度センサや変位センサ等の場合もある。
【0026】
また、振動検出センサ62は、光学系に加わった振動のうち上下方向(V方向)の振動を検出する振動検出センサ(V方向の振動検出センサ)と、左右(H方向)の振動を検出する振動検出センサ(H方向の振動検出センサ)の2つの振動検出センサを1つのブロックで示したものである。
【0027】
この振動検出センサ62からは、加わった振動に応じた信号(振れ信号)が出力され、その振れ信号が信号処理回路64に入力される。そして、信号処理回路64によって所要の信号処理(ノイズ等の不要な信号成分の除去、位相補償等)が施され、CPU60に入力される。尚、信号処理回路64に含まれる可能性があるものとしては、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、位相補償回路などがある。
【0028】
CPU60は、信号処理回路64から入力された振れ信号に対して積分処理や増幅処理などを施し、振動検出センサ62によって検出された振動を打ち消すための防振レンズの位置を算出する。尚、この処理の際に撮影レンズのズーム位置(焦点距離)の情報等が必要となるため、その情報をレンズ10のCPU20から取得している。また、振動検出センサ62が角速度センサの場合、信号処理回路64から入力される振れ信号は振動の角速度を示す角速度信号であり、その角速度信号を積分処理することによって振動によって光学系が変位した角度を示す角度信号となる。そして、その角度信号を所定の倍率に変換することによって振動により生じる像の変位を打ち消すための防振レンズの位置(基準位置からの変位量)を求めることができる。
【0029】
振動を打ち消すための防振レンズの位置を算出すると、CPU60は、その位置を目標移動位置とする位置信号を防振駆動回路66に出力する。防振駆動回路66はその位置信号によって与えられた目標移動位置へ防振レンズを移動させるためのコントロール信号をレンズ10の各駆動部22のうちの防振レンズの駆動部に出力する。これによって、防振レンズが目標移動位置に移動し、振動による像振れが補正される。
【0030】
尚、電流・電圧検出回路18は、電源から防振レンズの駆動部に供給される電流や電圧を検出する回路であり、その検出値がCPU60によって適宜読み取られるようになっている。また、コントローラ70は、像振れ補正のオン/オフや防振のモード等をオペレータが設定するスイッチ等を備えており、そのスイッチ等の設定状態が防振部19のCPU60に与えられ、CPU60がその設定状態に応じた処理を実行するようになっている。
【0031】
以上の如く構成されたレンズシステムにおいて、上記パソコン16のソフトウェア等によって構築されるレンズ診断システムの処理について説明する。尚、レンズ診断システムは、防振装置18の診断の他にもレンズ10やズーム/フォーカスコントローラ12等の診断を行う診断システムであるが、主に防振装置18の診断に関して説明する。
【0032】
パソコン16において、まず、予めインストールしておいたレンズ診断用のソフトウェアを起動すると、レンズ10(CPU20)とパソコン16(CPU50)とが通信可能に接続される。
【0033】
そして、そのソフトウェアでの選択可能な診断項目として、レンズ10の作動時間・負荷の診断、位置検出センサ(図2の各位置検出センサ24)の診断、コントローラ(図2のズームフォーカスコントローラ12及びコントローラ70)の診断、防振部の振動検出センサ(図2の防振部19の振動検出センサ62)のドリフト診断、防振部の振動検出センサ(図2の防振部19の振動検出センサ62)の出力診断などがあり、オペレータがいずれかの診断項目の実行を入力手段54によって指示すると、その診断項目に対応した処理が開始される。
【0034】
まず、防振部の振動検出センサのドリフト診断と防振部の振動検出センサの出力診断以外の診断項目について概要を説明すると、レンズ10の作動時間・負荷の診断の実行が指示された場合、パソコン16のCPU50からはレンズ10の動作を指令するコントロール信号がレンズ10のCPU20に与えられ、そのコントロール信号に基づいてレンズ10の各駆動部22におけるフォーカスレンズの駆動部、ズームレンズの駆動部、防振レンズの駆動部等が順に駆動される。また、各駆動部22が駆動されている間、レンズ10の各位置検出センサ24、電流・電圧検出回路26、防振部19の電流・電圧検出回路68の検出値等の診断に必要な情報がレンズ10のCPU20によって逐次読み取られる。尚、電流・電圧検出回路26は、フォーカスレンズやズームレンズ等の駆動部に供給されている電流値(又は電圧値)を検出値として検出する回路であり、防振部19の電流・電圧検出回路68は、防振レンズの駆動部に供給されている電流値(又は電圧値)を検出値として検出する回路である。また、防振部19の電流・電圧検出回路68の検出値は、防振部19のCPU60からレンズ10のCPU20に送信される。
【0035】
そして、パソコン16のCPU50は、各駆動部22を駆動している際にレンズ10のCPU20によって逐次読み取られた各位置検出センサ24、電流・電圧検出回路26、防振部19の電流・電圧検出回路68の検出値をCPU20から取得し、その情報に基づいて作動時間・負荷の診断を行う。尚、レンズ10のCPU20はリアルタイムでパソコン16に送信する必要のない検出値のデータはメモリ28に一時的に格納しておき、パソコン16のCPU50からの要求によってメモリ28に格納したデータをパソコン16のCPU50に送信する。
【0036】
パソコン16のCPU50は作動時間・負荷の診断を行うと、その診断結果をパソコン16のモニタ56に表示させる。
【0037】
例えば、レンズ10の作動時間・負荷の診断は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、防振レンズを順に各位置検出センサ24の検出値に基づいて一方の端から他方の端まで最高速度で移動させ(防振レンズの場合にはV方向とH方向のそれぞれについて行う)、その作動時間を計測すると共に、そのときにフォーカスレンズの駆動部、ズームレンズの駆動部、防振レンズの駆動部の各駆動部に供給される電流値を電流・電圧検出回路26、又は、防振部19の電流・電圧検出回路68の検出値によって取得する。これによって作動時間が正常か異常か、また、負荷が正常か異常かが診断される。
【0038】
位置検出センサの診断の実行が指示された場合、パソコン16のCPU50からレンズ10のCPU20にはレンズ10の動作を指令するコントロール信号が与えられ、そのコントロール信号に基づいてレンズ10の各駆動部22におけるフォーカスレンズの駆動部、ズームレンズの駆動部、防振レンズの駆動部等が順に駆動される。これによって、フォーカスレンズ、ズームレンズ、防振レンズ等が一方の端から他方の端まで駆動された後、中心に移動する。その移動の間に各位置検出センサ24の検出値がレンズ10のCPU20によって逐次読み取られ、パソコン16のCPU50に送信される。
【0039】
パソコン16のCPU50は、各位置検出センサ24によって検出された位置検出値の最大値と最小値が正常であるか否か等の診断を行い、その診断結果をモニタ56に表示させる。
【0040】
コントローラの診断の実行が指示された場合、パソコン16のCPU50は、ズーム/フォーカスコントローラ12に設けられている操作部32や各スイッチ34、及び、防振部19のコントローラ70に設けられている各スイッチのそれぞれに関して所定の操作を促す指示情報をモニタ56に表示させる。そして、それらの操作に対してズーム/フォーカスコントローラ12のCPU30又は防振部19のCPU60が検出した信号をレンズ10のCPU20を介して取得する。これによって、促した操作に対応した信号がズーム/フォーカスコントローラ12のCPU30や防振部19のCPU60において正常に検出されているか否かを診断し、その診断結果をモニタ56に表示させる。
【0041】
次に、防振部19の振動検出センサ62のドリフト診断の実行が指示された場合のパソコン16のCPU50の処理について図3のフローチャートを用いて詳説する。パソコン16のCPU50は、まず、「振動を与えないように注意」というオペレータへの指示情報をモニタ56に表示させる(ステップS10)。続いて、「数秒後に診断を開始」する旨の連絡情報をモニタ56に表示させる(ステップS12)。
【0042】
ここで、図2において防振部19の振動検出センサ62(H方向とV方向の振動検出センサの各々)の出力値(信号処理回路64を介した振れ信号の値)は、防振部19のCPU60によって逐次検出されてレンズ10のCPU20に送信されている。
【0043】
パソコン16のCPU50は、その振動検出センサ62から信号処理回路64を経由した後の出力値をレンズ10のCPU20から取得し、その出力値に対して像の変位を打ち消すための防振レンズの位置(位置変換値)を算出する。CPU50は、この処理を数秒間行い、その間の位置変換値の最大値と最小値をH方向とV方向の各々の振動検出センサに関して記憶する(ステップS14)。
【0044】
次に、CPU50は、予め作成されている基準データをメモリ52又は外部記憶読取装置58に装填されている記憶媒体から診断データとして読み込む(ステップS16)。尚、診断データ(基準データ)は、以下の診断において正常と判定する条件の判定値等のデータを事前に作成しておいたものである。
【0045】
CPU60は、その診断データに基づいて、ステップS14で記憶したH方向とV方向の各々の位置変換値の最大値と最小値が所定の基準値の範囲内か否かを判定する(ステップS18)。この判定処理においてYESと判定した場合にはドリフトは正常と診断し(ステップS20)、NOと判定した場合にはドリフトは異常と診断する(ステップS22)。そして、その診断結果をモニタ56に表示させる(ステップS24)。以上によって振動検出センサのドリフト診断が終了する。
【0046】
図4は、この振動検出センサのドリフト診断の際にモニタ56に表示される画面を例示した図である。尚、H方向又はV方向の振動検出センサのうち一方に関して表示される画面構成のみ示し他方に関しても同様に表示されるものとする。同図において、モニタ56の画面100にはグラフ表示領域102と、診断結果表示領域104とが配置されており、グラフ表示領域102には、振動検出センサ62の出力値に基づいて逐次算出された位置変換値のグラフPが表示される。また、グラフ表示領域102には、ステップS18の判定に使用される基準値の範囲の上限を示す基準最大値、基準値の範囲の下限を示す基準値最小値、及び、基準値の範囲の中心値のレベルを示すラインL1、L2、L3が表示される。位置変換値のグラフPが基準最大値と基準最小値の範囲内にあれば、振動検出センサのドリフトは正常と診断され、診断結果表示領域104において正常であることを示す正常表示部104Aが例えば背景色と異なる緑色に点灯する。このとき異常であることを示す異常表示部104Bは背景色で表示される。一方、位置変換値のグラフPが基準最大値と基準最小値の範囲を超えた場合には、振動検出センサのドリフトは異常と診断され、診断結果表示領域104において異常表示部104Bが例えば背景色と異なる赤色に点灯する。このとき正常表示部104Bは背景色で表示される。
【0047】
尚、上記形態では、ドリフト診断において振動検出センサ62から信号処理回路64を経由した後の出力信号から位置変換値を算出してその位置変換値に基づいてドリフトが正常か否かを診断したが、これに限らず信号処理回路64から直接出力された信号自体によってドリフトが正常か否かを診断するようにしてもよい。また、振動検出センサ62から直接出力された信号(生信号)によってドリフトが正常か否かを診断するようにしてもよい。
【0048】
次に、防振部19の振動検出センサ62の出力診断の実行が指示された場合のパソコン16のCPU50の処理について図5及び図6のフローチャートを用いて詳説する。図5のフローチャートにおいて、パソコン16のCPU50は、まず、「レンズを右に向けて下さい」というオペレータへの指示情報をモニタ56に表示させる(ステップS30)。オペレータはこの指示情報に従ってレンズ10を右に向ける。
【0049】
ここで、図2において振動検出センサ62(H方向とV方向の振動検出センサの各々)から直接得られる信号を生信号といい、その生信号が信号処理回路64に入力されて所要の処理が施されて信号処理回路64から出力される信号を処理信号というものとすると、振動検出センサ62の生信号と処理信号の値は、防振部19のCPU60によって逐次検出され、それぞれレンズ10のCPU20に送信される。パソコン16のCPU50はそれらのH方向とV方向の振動検出センサの生信号と処理信号の値をレンズ10のCPU20から取得している。また、振動検出センサが正常に取り付けられている場合、レンズ10を右方向に振るとH方向の振動検出センサの生信号は正方向に変化し、レンズ10を上方向に振るとV方向の振動検出センサの生信号は負方向に変化するものとする。
【0050】
パソコン16のCPU50は、ステップS30の指示情報をモニタ56に表示させた後、所定時間の間に検出されたH方向の振動検出センサの生信号と処理信号の値をレンズ10のCPU20から逐次取得し、その最大値を記憶する(ステップS32)。
【0051】
次に、CPU50は、「レンズを左に向けて下さい」というオペレータへの指示情報をモニタ56に表示させる(ステップS34)。オペレータはこの指示情報に従ってレンズ10を左に向ける。
【0052】
そして、CPU50は、上記指示情報を表示させた後、所定時間の間に検出されたH方向の振動検出センサの生信号と処理信号の値をレンズ10のCPU20から逐次取得し、その最小値を記憶する(ステップS36)。
【0053】
次に、CPU50は、「レンズを上に向けて下さい」というオペレータへの指示情報をモニタ56に表示させる(ステップS38)。オペレータはこの指示情報に従ってレンズ10を上に向ける。
【0054】
そして、CPU50は、上記指示情報を表示させた後、所定時間の間に検出されたV方向の振動検出センサの生信号と処理信号の値をレンズ10のCPU20から逐次取得し、その最大値を記憶する(ステップS40)。
【0055】
次に、CPU50は、「レンズを下に向けて下さい」というオペレータへの指示情報をモニタ56に表示させる(ステップS42)。オペレータはこの指示情報に従ってレンズ10を下に向ける。
【0056】
そして、CPU50は、上記指示情報を表示させた後、所定時間の間に検出されたV方向の振動検出センサの生信号と処理信号の値をレンズ10のCPU20から逐次取得し、その最小値を記憶する(ステップS44)。
【0057】
次に、CPU50は、予め作成されている基準データをメモリ52又は外部記憶読取装置58に装填された記憶媒体から診断データとして読み込む(ステップS46)。尚、診断データ(基準データ)は、以下の診断において正常と判定する条件の判定値等のデータを事前に作成しておいたものである。
【0058】
続いてCPU50は、図6のフローチャートにおいて、H方向とV方向の振動検出センサの各々に関して、生信号と、レンズ10を振った方向との関係があっているか否かを判定する(ステップS48)。例えば、レンズ10を右に振ったときのH方向の振動検出センサの生信号の最大値(ステップS32で記憶した最大値)が診断データによって適正とされる値の範囲となっていれば生信号とレンズ10を振った方向との関係があっていると判定され、そうでなければ、あっていないと判定される。レンズ10を左に振ったときのH方向の振動検出センサの生信号の最小値(ステップS36で記憶した最小値)が診断データによって適正とされる値の範囲となっていれば、生信号とレンズ10を振った方向との関係があっていると判定され、そうでなければ、あっていないと判定される。V方向に関しても同様に判定される。
【0059】
CPU50は、このようにH方向とV方向の各々の振動検出センサに関してステップS48の判定処理を行い、YESと判定した場合には振動検出信号は正常と診断し(ステップS50)、NOと判定した場合には振動検出信号は異常と診断する(ステップS52)。これによって、H方向とV方向の各々の振動検出センサの取付方向が反対になっていないかどうか等が分かる。
【0060】
次に、CPU50は、H方向とV方向の各々の振動検出センサに関して、生信号と処理信号との関係がそれぞれあっているか否かを判定する(ステップS54)。例えば、レンズ10を右に振った際に検出されたH方向の振動検出センサの生信号の最大値に対して、そのときに検出された処理信号の値が、診断データによって正常とされる条件を満たす値であれば、その生信号と処理信号の関係があっていると判定され、そうでなければ、あっていないと判定される。レンズ10を左に振った際に検出されたH方向の振動検出センサの生信号の最大値に対して、そのときに検出された処理信号の値が、診断データによって正常とされる条件を満たす値であれば、その生信号と処理信号の関係があっていると判定され、そうでなければ、あっていないと判定される。V方向に関しても同様に判定される。
【0061】
CPU50は、このようにH方向とV方向の各々の振動検出センサに関してステップS54の判定処理を行い、YESと判定した場合には信号処理回路64は正常と診断し(ステップS56)、NOと判定した場合には信号処理回路64は異常と診断する(ステップS58)。尚、信号処理回路64の内部においてH方向とV方向の各々の振動検出センサの出力信号を別々に処理する回路に分けられている場合には、この診断によって各々の回路に関して正常か異常かを判断することができる。
【0062】
以上の診断が終了すると、その診断結果をモニタ56に表示させ(ステップS60)、振動検出センサの出力診断の処理を終了する。
【0063】
図7は、この振動検出センサの出力診断の際にモニタ56に表示される画面を例示した図である。同図において、モニタ56の画面100には、H方向の振動検出センサに関するグラフ表示領域120Hと、V方向の振動検出センサに関するグラフ表示領域120Vと、レンズ10を右方向に振った際のH方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域130、132と、レンズ10を左方向に振った際のH方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域134、136と、レンズ10を上方向に振った際のV方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域140、142と、レンズ10を下方向に振った際のV方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域144、146とが配置される。
【0064】
グラフ表示領域120Hには、上記ステップS30〜ステップS36までの間にレンズ10を右方向及び左方向に振った際に得られたH方向の振動検出センサの生信号のグラフPと処理信号のグラフ(図示せず)が表示される。もし、そのグラフに変化が生じていなければ、H方向の振動検出センサの故障や出力信号線等の断線の可能性があることが分かる。同様に、グラフ表示領域120Vには、上記ステップS38〜ステップS44までの間にレンズ10を上方向及び下方向に振った際に得られたV方向の振動検出センサの生信号のグラフPと処理信号のグラフ(図示せず)が表示される。
【0065】
一方、診断結果表示領域130〜146には、上記ステップS48とステップS54での判定処理によって得られた診断結果が表示される。レンズ10を右方向に振った際のH方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域130、132について説明すると、レンズ10を右方向に振った際に上記ステップS32で得られたH方向の振動検出センサの生信号に対して上記ステップS48の判定処理によって得られた診断結果が正常(上記ステップS50)であった場合には、診断結果表示領域130の正常であることを示す正常表示部130Aが例えば背景色と異なる緑色に点灯する。このとき異常であることを示す異常表示部130Bは背景色で表示される。一方、上記ステップS48の判定処理によって得られた診断結果が異常(上記ステップS52)であった場合には、診断結果表示領域130の異常表示部130Bが例えば背景色と異なる赤色に点灯する。このとき正常表示部130Aは背景色で表示される。
【0066】
また、レンズ10を右方向に振った際に上記ステップS32で得られたH方向の振動検出センサの生信号と処理信号に対して上記ステップS54の判定処理によって得られた診断結果が正常(上記ステップS56)であった場合には、診断結果表示領域132の正常であることを示す正常表示部132Aが例えば背景色と異なる緑色に点灯する。このとき異常であることを示す異常表示部132Bは背景色で表示される。一方、上記ステップS54の判定処理によって得られた診断結果が異常(上記ステップS58)であった場合には、診断結果表示領域132の異常表示部132Bが例えば背景色と異なる赤色に点灯する。このとき正常表示部132Aは背景色で表示される。
【0067】
レンズ10を右方向に振った際のH方向の振動検出センサの生信号及び処理信号に関する診断結果表示領域130、132と同様に他の診断結果表示領域132、136、140、142、144、146において診断結果が表示される。
【0068】
これらの診断結果によって、H方向とV方向の振動検出センサに関してドリフトが正常かどうか、取付方向が正常かどうか、信号処理回路66は正常かどうか等、振動検出が正常に行われているか否かの判断が可能となる。
【0069】
以上、上記実施の形態ではレンズ10にパソコン16を接続してパソコン16により防振装置等の診断を行うようにしたが、パソコン16ではなく、診断用の専用基板をレンズ10内の所定箇所に装着して防振装置等の診断を行うようにしてもよいし、また、パソコン16以外の装置によって防振装置等の診断を行うようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、防振レンズを変位させることにより光学系の像を意図的に変位させる像変位手段によって振動による像振れを打ち消すようにしたが、この場合の他に、カメラの撮像素子を変位させて像を意図的に変位させる像変位手段によって、振動による像振れを打ち消すようにしたものや、光学的な像変位手段によって像振れを補正するのではなく、カメラの撮像素子によって撮像される撮影画像の範囲内から記録又は再生用の映像信号として切り出す範囲を変位させて像を意図的に変位させる電子的な像変位手段によって振動による像振れを打ち消すようにしたもの等であっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明が適用されるレンズシステムを構成する各装置の外観構成を示した図である。
【図2】図2は、本発明が適用されるレンズシステムの構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、パソコンのCPUにおける振動検出センサのドリフト診断の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】図4は、振動検出センサのドリフト診断の際にパソコンのモニタに表示される画面を例示した図である。
【図5】図5は、パソコンのCPUにおける振動検出センサの出力診断の処理手順を示したフローチャートである。
【図6】図6は、パソコンのCPUにおける振動検出センサの出力診断の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】振動検出センサの出力診断の際にパソコンのモニタに表示される画面を例示した図である。
【符号の説明】
【0072】
10…テレビレンズ(レンズ)、12…フォーカスコントローラ、14…ズームコントローラ、16…パソコン、18…防振装置、19…防振部、20、30、50、60…CPU、22…各駆動部、24…各位置検出センサ、26…電流・電圧検出回路、28、52…メモリ、32…操作部、34…各スイッチ、54…入力手段、56…モニタ、58…外部記憶読取装置、62…振動検出センサ、64…信号処理回路、66…防振駆動回路、68…電流・電圧検出回路、70…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系に加わった振動を振動検出センサによって検出し、該振動検出センサから出力された信号に基づいて前記光学系により結像される像の振れを防止する防振装置の診断システムであって、
前記振動検出センサから出力される信号を取得し、該取得した信号に基づいて前記振動検出センサによる振動検出が正常に行われているか否かを診断する診断手段を備えたことを特徴とする防振装置の診断システム。
【請求項2】
前記診断手段は、前記振動検出センサから出力される信号を取得し、該取得した信号に基づいて前記振動検出センサのドリフトが正常か否かを診断することを特徴とする請求項1の防振装置の診断システム。
【請求項3】
前記診断手段は、前記光学系を所定方向に振った際に前記振動検出センサから出力される信号を取得し、前記光学系を振った方向と前記取得した信号の値との関係から前記振動検出センサの取付方向が正常か否かを診断することを特徴とする請求項1の防振装置の診断システム。
【請求項4】
前記診断手段は、前記振動検出センサから直接出力される生信号と、前記振動検出センサから出力された後、所定の信号処理回路によって信号処理された処理信号とを取得し、前記生信号と前記処理信号との関係に基づいて前記信号処理回路が正常か否かを診断することを特徴とする請求項1の防振装置の診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−17636(P2006−17636A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197097(P2004−197097)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】