説明

防振装置

【課題】エンジンやボデー等が発する振動エネルギーを、部品点数の少ない簡単な構造によって効率的に電力に変換可能とされた防振装置を提供する。
【解決手段】振動伝達系を構成する振動部材たるパワーユニット10と制振対象部材たる車両ボデー12の間に本体ゴム弾性体14を設けた防振装置において、振動入力方向(図1中の上下方向)で対向配置された第一の支持部材18と第二の支持部材20を設けて、それら支持部材18,20の対向面間で本体ゴム弾性体14に圧縮引張方向(図1中の上下方向)の振動が及ぼされるようにすると共に、それら支持部材18,20の1つの対向面22に圧電素子26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行時に発生する振動を利用し、その振動エネルギーを圧電素子を用いて効率的に電力に変換することができる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車におけるパワーユニットやボデー等の振動部材(制振対象部材)において問題となる振動を低減する方法として、様々な防振装置が報告されている。例えば、特許文献1(特開2006−273156号公報)に示されているのは、自動車のパワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるエンジンマウント、およびエンジンマウントを用いたパワーユニットの車両ボデーに対する防振支持構造に関するものである。
【0003】
また、特許文献2(特開2010−54032号公報)に示されているのは、特にサブフレームやディファレンシャル装置の防振用として好適なダイナミックダンパに関するものである。
【0004】
さらに、特許文献3(特許3932025号)には、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振装置の一種として、インナ軸部材の径方向外方にアウタ筒部材を離隔配置すると共に、それらインナ軸部材とアウタ筒部材の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を配設してインナ軸部材とアウタ筒部材に加硫接着することにより、インナ軸部材とアウタ筒部材を弾性連結せしめた構造の防振ブッシュが示されている。
【0005】
ところで、昨今の省エネルギー化への要求の高まりを背景として、振動を低減するだけに留まらず、現在捨てられているこのような振動エネルギーを電気に変換して利用することも必要となってきている。
【0006】
ところが、特許文献1等に記載された従来構造の防振装置においては、そのようなエネルギーの有効利用までは検討されていなかったのである。
【0007】
なお、振動部材の振動エネルギーを電気に変換するには、振動伝達経路上に圧電素子を単に介在させることも考えられる。しかし、圧電素子を振動伝達経路上に直接に介在させるだけでは、大きな振動 (例えば自動車が段差を乗り越えるときに発生する衝撃等) の入力により、圧電素子が損傷するおそれがある。また、特に自動車等においては、大きさだけでなく、周波数の相違する多様な振動が発生している。それ故、大きな振動入力に際しての損傷を回避しつつ、振動レベルや振動周波数の異なる多種類の振動に対して、その振動エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することが極めて困難であるという問題があった。それ故、特に自動車等の分野では、未だに振動エネルギーを電気に変換する装置が実用化に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−273156号公報
【特許文献2】特開2010−54032号公報
【特許文献3】特許3932025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、パワーユニットやボデー等の振動部材(制振対象部材)が発生する振動エネルギーを、部品点数の少ない簡単な構造によって効率的に電力に変換可能とする防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
本発明の第1の態様は、振動伝達系を構成する部材間に配設される本体ゴム弾性体を含んで構成された防振装置において、振動入力方向で対向配置された複数の支持部材を設けて、それら支持部材の対向面間で前記本体ゴム弾性体に圧縮引張方向の振動が及ぼされるようにすると共に、該支持部材の少なくとも1つの対向面に圧電素子を設けたことを特徴とする。
【0012】
本態様の防振装置では、振動伝達系を構成する部材間に及ぼされる振動が本体ゴム弾性体を介して圧電素子に及ぼされることから、例えば、衝撃的荷重の入力時に圧電素子に及ぼされる歪のレベルや加速度の最大値が緩和される。しかも、衝撃的荷重の入力時には、本体ゴム弾性体の弾性により衝撃をストロークで受けることができ、瞬間的に作用する過大な衝撃波による圧電素子の損傷を回避しつつ、経時的に作用する圧力による圧電素子の発電効果を享受することが可能となる。
【0013】
また、振動入力方向に対向配置した支持部材の対向面間で本体ゴム弾性体に圧縮引張方向の振動荷重が及ぼされることから、支持部材の対向面に設けられた圧電素子には、発電に好適な、厚さ方向に圧縮引張方向となる振動荷重(歪)が及ぼされる。しかも、圧電素子に対する振動入力が、本体ゴム弾性体を介して行われることから、たとえ元の入力振動において支持部材の対向面に平行な振動成分があっても、本体ゴム弾性体内で分散・減衰されることにより、圧電素子への悪影響が軽減乃至は回避され得る。
【0014】
さらに、圧電素子への振動入力経路上に介在する本体ゴム弾性体の減衰作用も発揮されることから、共振を伴う振動入力に際しても、圧電素子に作用する入力のピークレベルを抑えつつ広い周波数域に亘って効率的な入力が実現可能となり、圧電素子にとって発電に好適な振動入力とすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された防振装置において、前記支持部材によって前記圧電素子の一方の電極が構成されているものである。
【0016】
第2の態様によれば、支持部材によって圧電素子の一方の電極が構成されるので、構成を簡略化することができ、製造コストを低減できると共にスペース効率の向上が図られ得る。またこのような構成とすることにより、電極の断線というような事態を防止して耐久性を大幅に向上させることができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された防振装置において、前記圧電素子の外周縁部の少なくとも一部が、前記本体ゴム弾性体から外部に延び出した端子部とされているものである。
【0018】
第3の態様によれば、本体ゴム弾性体から延び出した端子部を利用して圧電素子の電極への通電部を構成することが出来る。これにより、リード線等を本体ゴム弾性体の内部に配線する必要がなくなって製造も容易となる。なお、かかる端子部において、圧電素子の両方の電極への通電部を構成することも可能であるが、例えば前述の第2の態様と本態様を組み合わせて採用しても良い。第2の態様と組み合わせることにより、圧電素子の一方の電極の取り出しに支持部材を利用すると共に、圧電素子の他方の電極の取り出しに端子部を利用することが出来る。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記本体ゴム弾性体における振動入力方向の一方の端部に固着されて、前記振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる取付部材によって、前記支持部材の少なくとも一つが構成されているものである。
【0020】
第4の態様によれば、本体ゴム弾性体は支持部材たる取付部材の表面に対して加硫接着等で固着されることによって、支持部材と一体として扱うことができるので、部品点数の減少による構造の簡略化が図られると共に、取り付け時の位置決めを含む取り扱いが容易となるという利点がある。
【0021】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記本体ゴム弾性体における振動入力方向の中間部分に固着された保持部材によって、前記支持部材の少なくとも一つが構成されているものである。
【0022】
第5の態様によれば、保持部材を含む支持部材に圧電素子を設けることができ、それらの圧電素子を相互に接続することにより、より多くの電力を効率的に取り出すことができるようになる。また、振動を効率的に電力に変換することにより、副次的効果として、振動が低減されることになる。
【0023】
加えて、支持部材たる保持部材の両面に対して、それぞれ、圧電素子とゴム部材とを何れも大きな領域に亘って設けることができ、スペース効率の向上が図られ得る。
【0024】
なお、中間部分に固着された保持部材の両面に圧電素子を設けた場合、第2の態様を組み合わせること等によって、両面に設けた圧電素子の電極を保持部材で共有化して構造の簡略化を図ることも可能である。複数の圧電素子を並列的に接続する場合には、保持部材の両面に設けた圧電素子として、同一のものを支持部材に対して対称に配置する等して起電力を略同じにすることが好ましい。また、保持部材の両面に重ね合わされる面の電極を相互に同一としたり異ならせたりすることで、保持部材の両面に設けられる圧電素子を並列的に接続したり直列的に接続したりすることも可能となる。
【0025】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記圧電素子の表面に対して前記本体ゴム弾性体が固着されているものである。
【0026】
第6の態様によれば、本体ゴム弾性体は圧電素子の表面に対して加硫接着等で固着される。本体ゴム弾性体で圧電素子を覆うことにより、砂利等の異物の打ち当り等から圧電素子を保護する保護材としても、本体ゴム弾性体が機能し得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、振動伝達系を構成する部材間に本体ゴム弾性体を設ける構造とすることにより、入力振動に対して適当な弾性と減衰が及ぼされるようにしたうえで、支持部材を振動入力方向に対向配置し、それら支持部材の対向面に圧電素子を設けると共に、本体ゴム弾性体に圧縮引張方向の振動が及ぼされるようにした。その結果、衝撃的荷重の入力時における圧電素子に及ぼされる歪のピークレベルや加速度を緩和し、圧電素子の耐久性を向上すると共に、圧電素子において発電に好適である厚さ方向での圧縮引張方向の振動(歪)が及ぼされ得るように為し得たのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態としての防振装置を示す縦断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態としての防振装置を示す縦断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態としての防振装置を示す縦断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態としての防振装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1には、本発明に従う構造とされた防振装置の第1の実施形態として、自動車のパワーユニット10と車両ボデー12とを本体ゴム弾性体14で防振連結する防振装置16が示されている。この防振装置16は、互いに対向配置された第一の支持部材18と第二の支持部材20を有しており、それらの対向面間に本体ゴム弾性体14が配設されている。そして、振動伝達系を構成する振動部材たるパワーユニット10と制振対象部材たる車両ボデー12との主たる振動入力方向となる図1中の上下方向での対向面22,24間に、防振装置16が装着されている。また、かかる装着状態下、パワーユニット10と車両ボデー12が防振装置16で連結されることによって構成された振動伝達系では、主たる振動が、第一及び第二の支持部材18,20の対向面間で本体ゴム弾性体14に対して圧縮引張方向の振動荷重として及ぼされるようになっている。
【0031】
より詳細には、本体ゴム弾性体14は、円形や多角形等の適当な断面形状で図1中の上下方向に延びるブロック状とされている。なお、本体ゴム弾性体14の材質は特に限定されるものでなく、NR(天然ゴム)やCR(クロロプレンゴム),NBR(ニトリルゴム),SBR(スチレンゴム),EPDM(エチレンプロピレンゴム)など、公知の防振ゴム材料が、要求される環境や荷重等の条件を考慮して適宜に採用され得る。
【0032】
また、本体ゴム弾性体14は、その弾性主軸の一つが主たる振動入力方向に設定されており、図1中の上下方向に延びている。そして、この主たる振動入力方向の両端面(図1中の上端面と下端面)に対して、第一の支持部材18と第二の支持部材20が重ね合わされて固着されている。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体14の上下方向両端面に第一の支持部材18と第二の支持部材20が加硫接着された一体加硫成形品とされている。
【0033】
さらに、第一及び第二の支持部材18,20は、何れも、金属等の剛性材で形成されており、例えば平板形状とされている。また、これら第一及び第二の支持部材18,20には、外方に突出する固定ボルト28,30が設けられている。
【0034】
そして、第一の支持部材18が、固定ボルト28でパワーユニット10に固定される一方、第二の支持部材20が、固定ボルト30で車両ボデー12に固定されることにより、防振装置16が、それらパワーユニット10と車両ボデー12との間に装着されている。
【0035】
一方、第一の支持部材18には、第二の支持部材20との対向面22に対して圧電素子26が重ね合わされて取り付けられている。
【0036】
この圧電素子26は、外力による歪で電圧を生ずる各種材料からなる素子で構成され得る。具体的には、例えばBaTiO2 ,PbZrO3 ,PbTiO3 等の圧電セラミックの他、フッ化ビニリデン(VDF)を中核とした共重合体などの高分子化合物を利用した圧電ポリマーなども採用可能である。特に圧電ポリマーを用いることにより、本体ゴム弾性体との界面に発生する変形剛性の相違による応力を低減することができる。
【0037】
また、圧電素子26は、シート形状とされており、第一の支持部材18の対向面22に対して、例えば複数箇所で固着される他、接着等で全面に亘って固着して配設しても良い。更にまた、予め成形された膜状又は板状の圧電素子26を第一の支持部材18の対向面22に重ねて装着する他、圧電素子26の成形材料(圧電材料)を、第一の支持部材18の対向面22に塗布等で付着させて焼成や重合(加硫)等で成形と同時に表面固着することも可能である。
【0038】
なお、圧電素子26は、要求される電力を得るのに充分な大きさで構成されることとなり、好適には、第一の支持部材18の対向面22における本体ゴム弾性体14の被着領域の略全面に亘って配設される。尤も、第一の支持部材18に固定ボルト28が設けられている場合には、かかる固定ボルト28の下や近くを避けて設けることが望ましく、例えば平面的にはドーナッツ形状等が採用され得る。固定ボルト28の周囲を避けることで、圧電素子26の損傷等の問題をより効果的に回避することが可能となる。
【0039】
また、圧電素子26には、その起電力を生ずる表裏両面に対してそれぞれ図示しないリード線等の通電部材が接続されて、圧電素子26で生ぜしめられた電力が通電部材を通じて送電されることとなる。その際、圧電素子26の一方の面(図1中の上面)を第一の支持部材18の対向面22に対して通電状態で密着させることにより、一方の通電部材を支持部材18で構成することも可能である。
【0040】
上述の如き構造とされた本実施形態の防振装置16では、パワーユニット10と車両ボデー12との間で振動が及ぼされた際、かかる振動が、本体ゴム弾性体14を介して圧電素子26に作用せしめられる。その際、主たる振動入力方向である図1中の上下方向の振動が、本体ゴム弾性体14の圧縮引張方向の弾性変形を伴って、圧電素子26に対して厚さ方向の圧縮力変動として及ぼされることとなる。
【0041】
このように、防振装置16に及ぼされる振動が、圧電素子26において起電力を発生するのに有効な圧縮力変動として及ぼされて、起電力を得ることができるのである。
【0042】
ここにおいて、防振装置16に及ぼされる振動は、本体ゴム弾性体14を介して圧電素子26に及ぼされることから、本体ゴム弾性体14のばねと減衰力の作用に基づいて、入力振動を一層効率的に電力に変換することが可能となるのである。
【0043】
例えば、自動車の段差乗超え時等に過大な衝撃力が瞬間的に入力されると、本体ゴム弾性体14の弾性変形によるストロークで受けて経時的な運動エネルギーに変換されて圧電素子26に対する圧力変化として及ぼされることとなる。その結果、過大な衝撃波による圧電素子26の損傷を回避しつつ、優れた発電効果を得ることが可能となる。
【0044】
また、共振を伴う振動入力に際しても、本体ゴム弾性体14の減衰力の作用により振動レベルの最大値の低下と周波数のブロード化が図られる。その結果、圧電素子26への過大な振動荷重の作用を回避しつつ、広い周波数域に亘って効率的な振動荷重の作用による優れた発電効率が実現可能となる。
【0045】
しかも、防振装置16への主たる振動入力方向では、本体ゴム弾性体14において高ばね特性となる圧縮引張変形を伴い、圧電素子26に対して発電に好適な圧縮力の変動荷重が効率的に及ぼされる一方、それに直交する振動入力方向では、本体ゴム弾性体14が低ばね特性となる剪断変形することから、圧電素子26に伝達される剪断方向の荷重が軽減される。これにより、圧電素子26の損傷が一層効果的に防止されて耐久性の更なる向上が図られ得る。
【0046】
更にまた、圧電素子26は、その略全体の面が本体ゴム弾性体14で覆われることから、砂利等の異物の打ち当り等から圧電素子26を保護する保護材としても、本体ゴム弾性体14が機能し得る。しかも、第一の支持部材18において、圧電素子26の配設領域を、本体ゴム弾性体14の被着領域と重ねて設定することが出来、圧電素子26の配設領域を確保するために第一の支持部材18を大型化する必要もない。
【0047】
なお、本実施形態では、振動伝達系を構成する部材として、図1では「パワーユニット(エンジンや電気モータ等の駆動力発生源を含む)と車両ボデー」を挙げたが、その他に例えば、「懸架系を構成するサスペンション部材と車両ボデー」等のように加振源部材と被加振部材、制振対象部材となるハンドルに装着されたダイナミックダンパにおいて共振現象で振動変位する「マス部材」とハンドル(制振対象部材)のようなものも、振動伝達系を構成するものであって、本発明が同様に適用可能である。
【0048】
また、第一及び第二の支持部材18,20や、本体ゴム弾性体14の具体的形状や大きさ等は、防振装置16に要求される取付構造や性能等に応じて適宜に変更可能であり、何等限定されるものでない。圧電素子26も、必要に応じて複数に分割されて配設されても良い。更にまた、第一の支持部材18の対向面22に代えて又は加えて、第二の支持部材20の対向面24に対して圧電素子26を設けることも可能である。
【0049】
以下、本発明の別の実施形態について説明するが、以下の実施形態では、第1の実施形態と同様な構造とされた部材や部位について、第1の実施形態と同一の符合を図中に付することにより、それらの詳細な説明を割愛すると共に、第1の実施形態と同様に発揮される作用効果に関しては、重複した説明を省略する。
【0050】
図2には、本発明の第2の実施形態としての防振装置32が示されている。
【0051】
本実施形態の防振装置32では、圧電素子26の外周縁部の少なくとも一部が、本体ゴム弾性体14から外部に延び出した端子部34とされている。本実施形態では、かかる端子部34が、本体ゴム弾性体14の外周面において、部分的に外方に突出しており、第一の支持部材18の対向面22上で延び出している。
【0052】
なお、この端子部34は、円環板形状とされた圧電素子26の外周部分が部分的に外方に突出して形成されていても良いし、本体ゴム弾性体14が周上で部分的に抉られて圧電素子26の外周部分が部分的に露出されることによって形成されていても良い。
【0053】
このような第2の実施形態の防振装置32では、圧電素子26の一方の面(図2中の上側の面)36が、第一の支持部材18の対向面22に対して通電状態で重ね合わされることにより、圧電素子26の一方の電極への通電部材が第一の支持部材18で構成されている。また、圧電素子26の他方の面(図2中の下側の面)38によって構成される他方の電極が、端子部34において本体ゴム弾性体14の外部に露呈されていることから、かかる端子部34においてリード線等を接続することにより他方の電極への通電部材を容易に構成することが可能となる。
【0054】
図3には、本発明の第3の実施形態としての防振装置40が示されている。
【0055】
本実施形態の防振装置40では、振動入力方向の本体ゴム弾性体42の中間部分に支持部材たる保持部材44が本体ゴム弾性体42に略埋設状態で固着されて設けられている。この保持部材44は、主たる振動入力方向に対して略直交して広がる略平板形状とされている。かかる保持部材44が埋設固着されていることにより、本体ゴム弾性体42の主として高さ方向のばね特性が硬く調節されると共に、耐久性の向上が図られている。
【0056】
さらに、保持部材44には、主たる振動入力方向での第一及び第二の支持部材18,20への対向面46,48に対して、それぞれ、圧電素子50,52が設けられている。なお、保持部材44は、少なくとも本体ゴム弾性体42よりも剛性が大きい金属や合成樹脂等によって形成されたプレート状部材が好適に採用される。
【0057】
このように保持部材44に設けられた圧電素子50,52にあっても、振動入力時には、第一の支持部材18に設けられた圧電素子26と同様に、入力振動に対して本体ゴム弾性体42の弾性や減衰による作用により、衝撃的な荷重作用を回避しつつ発電に有効な圧縮力変動が及ぼされることとなり、効率的な起電力の発生が実現され得るのである。
【0058】
しかも、本実施形態の防振装置40では、圧電素子50,52の配設部材として保持部材44を利用することにより、防振装置40の大型化を回避しつつ、圧電素子26,50,52の有効量(有効面積)を大きくすることが可能となることから、起電力の更なる向上も容易に実現可能となる。
【0059】
なお、本実施形態では、複数の圧電素子26,50,52の配設が容易に実現可能となる。その際、それら複数の圧電素子26,50,52を、適宜に並列接続したり、直列接続したりすることも可能である。そのような接続形態を適宜に選択することにより、要求される電圧や電流のレベルを調節することもできるのである。
【0060】
特に、保持部材44には、その両面に圧電素子50,52が設けられていることから、保持部材44を通電部材として利用することで、両面に設けられた圧電素子50,52を、保持部材44により相互に導通することも可能である。
【0061】
図4には、本発明の第4の実施形態としての自動車用の防振ブッシュ54が示されている。
【0062】
かかる防振ブッシュ54は、インナ軸部材56の径方向外方にアウタ筒部材58が離隔配置されていると共に、それらインナ軸部材56とアウタ筒部材58とが、本体ゴム弾性体60で弾性連結された構造とされている。そして、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との一方が、図示しない車両ボデーに取り付けられると共に、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との他方が、図示しないサスペンションアームに取り付けられることにより、自動車のサスペンション機構における振動伝達経路上に配設されるようになっている。
【0063】
より詳細には、インナ軸部材56は、ストレートな円筒形状を有しており、鉄鋼等の金属材で形成されている。一方、アウタ筒部材58は、インナ軸部材56よりも大径のストレートな円筒形状を有しており、インナ軸部材56と同様に適当な金属材で形成されている。そして、アウタ筒部材58がインナ軸部材56に外挿されており、アウタ筒部材58がインナ軸部材56の径方向外方に所定距離だけ離隔して略同一中心軸上に配設されている。
【0064】
また、本体ゴム弾性体60は、略厚肉円筒形状を有しており、インナ軸部材56とアウタ筒部材58の径方向対向面間に跨がって配設されている。また、本体ゴム弾性体60の内外周面は、インナ軸部材56の外周面62とアウタ筒部材58の内周面64に対してそれぞれ加硫接着されており、それによって、インナ軸部材56とアウタ筒部材58が、本体ゴム弾性体60によって弾性連結されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体60が、インナ軸部材56とアウタ筒部材58を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0065】
そして、防振ブッシュ54の車両への装着状態下、防振すべき主たる振動が、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との間で、本体ゴム弾性体60に対して軸直角方向(径方向)に及ぼされることとなる。なお、本実施形態では、互いに直交する2つの径方向のばね特性を異ならせることで、車両操縦安定性と乗り心地との両立が図られている。具体的には、本体ゴム弾性体60において、図4中の上下方向の対向部分に一対のすぐり部66,66が形成されている。これにより、主たる振動入力方向となる図1中の左右方向では、それに直交する図1中の上下方向に比して、大きなばね定数が設定されてばね特性が硬くされている。
【0066】
さらに、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との、主たる振動入力方向となる図1中の左右方向での径方向対向面68,70には、その一方の側(本実施形態では、アウタ筒部材58の対向面64である内周面)70において、圧電素子72が設けられている。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体60において、すぐり部66,66が設けられていない中実部分を介して径方向でインナ軸部材56に対して対向位置する領域を周方向の略全体に亘って覆うようにして、アウタ筒部材58の内周面70に対して圧電素子72が配設されている。
【0067】
このようにして配設された圧電素子72には、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との間に軸直角方向の振動が入力された際、振動荷重が、アウタ筒部材58の法線方向に及ぼされることで、圧電素子72の厚さ方向での圧縮力変動として作用せしめられる。その結果、圧電素子72において効率的な発電作用が発揮されるのである。
【0068】
しかも、かかる圧電素子72に及ぼされる振動荷重は、本体ゴム弾性体60のばねと減衰の作用を伴うことから、第1の実施形態と同様に、圧電素子72の耐久性を確保しつつ、効率的な発電効果が実現され得る。
【0069】
なお、本実施形態においても、アウタ筒部材58の対向面70に代えて又は加えて、インナ軸部材56の対向面(外周面)68に圧電素子72を設けても良い。
【0070】
また、インナ軸部材56とアウタ筒部材58との径方向対向面間の中間部分に位置して、略同じ曲率中心をもって周方向に所定長さで広がる保持部材を設け、かかる保持部材の内周面と外周面の少なくとも一方の面に圧電素子を設けることも可能である。
【0071】
更にまた、インナ軸部材56の外周面62やアウタ筒部材58の内周面64において、周方向の全周に亘って広がる圧電素子72を設けることも可能である。
【0072】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10:パワーユニット、12:車両ボデー、14,42:本体ゴム弾性体、16:防振装置、18:第一の支持部材、20:第二の支持部材、22:対向面、26:圧電素子、34:端子部、44:保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動伝達系を構成する部材間に配設される本体ゴム弾性体を含んで構成された防振装置において、
振動入力方向で対向配置された複数の支持部材を設けて、それら支持部材の対向面間で前記本体ゴム弾性体に圧縮引張方向の振動が及ぼされるようにすると共に、該支持部材の少なくとも1つの対向面に圧電素子を設けたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記支持部材によって前記圧電素子の一方の電極が構成されている請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記圧電素子の外周縁部の少なくとも一部が、前記本体ゴム弾性体から外部に延び出した端子部とされている請求項1又は2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記本体ゴム弾性体における振動入力方向の一方の端部に固着されて、前記振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる取付部材によって、前記支持部材の少なくとも一つが構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体における振動入力方向の中間部分に固着された保持部材によって、前記支持部材の少なくとも一つが構成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の防振装置。
【請求項6】
前記圧電素子の表面に対して前記本体ゴム弾性体が固着されている請求項1〜5の何れか1項に記載の防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237413(P2012−237413A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107795(P2011−107795)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】