説明

防水コネクタ

【課題】防水栓の損傷がより確実に抑制され防水機能が確保される防水コネクタを提供する。
【解決手段】ホルダー40と絶縁ハウジング20との間に弾性変形した状態で挟み込まれる防水栓30を、第一防水層31と、第三防水層33と、この第一防水層31と第三防水層33との間に介在しこれら第一防水層31と第三防水層33とにそれぞれ接着されるとともに第一防水層31および第三防水層よりも低い硬度を有する第二防水層32とで構成するとともに、これら各防水層31〜33を貫通する端子挿通孔34を形成し、防水栓30を前記絶縁ハウジング20の後面26aと前記ホルダー40との間で挟むことにより、前記端子挿通孔34のうち少なくとも前記第二防水層32を貫通する部分の内周面と電線1との外周面とを密着させ、防水栓30の外周面と絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bとを密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が接続された端子が挿入される端子収容室内への浸水を防止する防水栓を備えた防水コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ワイヤハーネス等に適用されるコネクタとしては、防水性能を有したいわゆる防水コネクタが各種開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電線が接続される端子と、この端子を保持する絶縁ハウジングと、ホルダーと、この絶縁ハウジングとホルダーとの間に挟み込まれる弾性部材からなる防水栓とを備える防水コネクタが開示されている。前記絶縁ハウジングには、前記端子が挿入可能な端子収容室と、この端子収容室が開口する後面から後方に延びて前記防水栓を収容する収容壁とが設けられており、前記防水栓には、前記端子収容室に対応する位置に前記端子を挿通可能な端子挿通孔が形成されている。
【0004】
この防水コネクタでは、前記端子は、前記防水栓が前記絶縁ハウジングと前記ホルダーとの間で弾性変形した状態で、前記端子挿通孔を拡径しつつ当該端子挿通孔に挿通される。端子挿通孔に挿通された端子は、さらに前記端子収容室に挿入され、当該端子収容室にて前記絶縁ハウジングに保持される。このとき、前記端子挿通孔の内周面と前記端子に接続された電線の外周面とが密着することで、この電線の周囲から端子収容室への浸水が抑止され、防水栓の外周面と前記絶縁ハウジングの収容壁の内周面とが密着することで、この防水栓と収容壁との隙間から端子収容室への浸水が抑止される。また、前記端子は、前記絶縁ハウジングに保持された状態から、前記端子挿通孔を拡径しつつ当該端子挿通孔に挿通された後、外部に抜出される。
【特許文献1】特開2000−82529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような従来の防水コネクタでは、前記端子は、前記端子収容室への挿入時あるいは前記端子収容室からの抜出時において、前記端子挿通孔を拡径しつつこの端子挿通孔に挿通されるので、この挿通初期において端子がこじられるようにして挿通され易い。そして、端子がこじられるようにして挿通されると、端子の角部等が前記防水栓を損傷してしまうおそれがあり、防水性能のさらなる向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、端子の挿入や抜出時等における防水栓の損傷をより確実に抑え、防水性能を確保することのできる防水コネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、電線が接続される端子と、この端子の軸方向に沿って当該端子が後方から挿入される端子収容室を有するとともに、この端子収容室内に挿入された前記端子を保持する端子保持部を有する絶縁ハウジングと、前記端子収容室の後方の位置で前記絶縁ハウジングに固定されるホルダーと、前記ホルダーと前記絶縁ハウジングとにより前後から挟みこまれる防水栓とを備え、前記絶縁ハウジングは、前記端子収容室の端子挿入口が開口する後面よりも後方に延びて前記防水栓をその内側に収容する収容壁を有し、前記防水栓は、弾性部材からなり前記絶縁ハウジングの後面に接触する第一防水層と、弾性部材からなり前記ホルダーの前面に接触する第三防水層と、前記第一防水層と前記第三防水層との間に介在し、これら第一防水層と第三防水層とにそれぞれ接着されるとともに、当該第一防水層の硬度および第三防水層の硬度よりも低い硬度を有する弾性部材からなる第二防水層とを備え、この防水栓において、前記端子収容室に対応する位置に、前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とを貫通し、前記端子により拡径されつつ当該端子を挿通可能な端子挿通孔が形成されるとともに、当該防水栓は、前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とが前記絶縁ハウジングの後面と前記ホルダーの前面とに挟まれて前記収容壁の内側で弾性変形することにより、前記端子挿通孔のうち少なくとも前記第二防水層を貫通する部分の内周面と当該端子挿通孔に挿通された前記端子に接続される電線の外周面とが密着し、かつ、少なくとも前記第二防水層の外周面と前記絶縁ハウジングの収容壁の内周面とが密着する形状を有することを特徴とする防水コネクタを提供する(請求項1)。
【0008】
このような構造によれば、前記端子収容室へ端子を挿入する場合あるいは前記端子収容室から端子を抜出する場合に、端子が前記防水栓の端子挿通孔にこじられるようにして挿通されても、前記防水栓のうち前記第一防水層と第三防水層とに挟まれた第二防水層は損傷し難いので、この第二防水層が電線の周囲から前記端子収容室への浸水を抑制する機能は確保される。
【0009】
すなわち、本防水コネクタでは、前記端子挿通孔への端子挿通時に損傷を受け易い防水栓の前端部分および後端部分にそれぞれ第三防水層と第一防水層とが設けられる一方、これら防水層の間に別途第二防水層が設けられている。そして、この第二防水層は前記第一防水層および第三防水層に接着されており、第一防水層および第三防水層と一体に変形することができる。すなわち、前記端子挿通孔のうち第二防水層に形成された部分は、前記端子挿通孔のうち前記第一防水層あるいは第三防水層に形成された部分が拡径するに伴って拡径する。そのため、前記端子は、前記端子挿通孔の挿通口である前記第三防水層あるいは前記第一防水層に形成された部分にこじいれられたとしても、前記第二防水層に形成された部分には、この部分が予め拡径していることで、スムーズに挿通されることになる。このことは、第二防水層と前記端子との接触抵抗を小さく抑え、第二防水層の端子による損傷を抑制する。しかも、本防水コネクタでは、前記第二防水層の硬度が低く設定されており、この第二防水層が端子に対して柔軟に変形することでこの第二防水層と前記端子との接触抵抗がより一層小さく抑えられる。
【0010】
また、本防水コネクタでは、前記第一防水層の硬度と第三防水層の硬度とが高く設定されているため、防水栓全体の変形量を小さく抑えながら、この第一防水層と第三防水層とに挟まれた前記第二防水層の弾性変形量を十分に確保することができる。
【0011】
すなわち、前記第二防水層は、第一防水層と第三防水層とに挟まれており、前記絶縁ハウジングとホルダーとの間で挟みこまれることでこれら第一防水層と第三防水層とに生じる弾発力を受けて弾性変形する。そして、前記第一防水層と第三防水層とは、その硬度が高く設定されており、小さな変形量で十分な弾発力を作用させることができるよう構成されている。従って、この第一防水層と第三防水層の変形量、ひいては、防水栓全体の変形量が小さくとも、前記第二防水層には前記第一防水層および第三防水層から十分な弾発力が作用することになる。このことは、第二防水層の弾性変形量を確保し、前記のように端子挿通孔のうちこの第二防水層に形成された部分の内周面と電線の外周面との密着性および前記第二防水層の外周面と前記絶縁ハウジングの収容壁の内周面との密着性を高め、防水機能を高める。
【0012】
また本発明において、前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とは、多色成形により互いに一体に形成されるのが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構造によれば、前記第二防水層は前記第一防水層および第三防水層の変形に伴って容易に変形することが可能となる。すなわち、前記端子の端子収容室への挿入開始時あるいは当該端子の端子収容室からの抜出開始時において、この第二防水層における前記端子挿通孔がより確実に拡径することができる。このことは、端子と第二防水層との接触抵抗をより確実に低減し、第二防水層の損傷を抑制する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、防水栓の損傷をより確実に抑止し防水性能が確保された防水コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る防水コネクタの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る防水コネクタの分解断面図である。この図に示すように、本防水コネクタ10は、電線1が接続される金属製の端子2と、樹脂等からなる絶縁ハウジング20およびホルダー40と、弾性部材からなる防水栓30とを有している。
【0017】
前記端子2は、図1に示すように、相手側端子金具と接続される電気接触部2dと、電線1に圧着されるバレル2eと、後述する絶縁ハウジング20の端子保持部22と係合する被係止部2fとを有している。電線1は、前記バレル部2eが電線1に圧着されることで端子2に固定される。
【0018】
前記絶縁ハウジング20は、前記電線1が接続された端子2を相手方コネクタと接続可能なように保持するためのものである。この絶縁ハウジング20には、複数の端子収容室24と、収容壁26とが設けられている。
【0019】
前記端子収容室24は、前記端子2を収容するためのものであり、この端子収容室24には、端子2がその軸方向に沿って後方から挿入される。この端子収容室24の下方にはそれぞれ端子保持部22が設けられている。そして、この端子収容室24に挿入された端子2は、その下方に設けられた前記被係止部2fと前記端子保持部22とが係合することによりこの絶縁ハウジング20に保持される。
【0020】
前記収容壁26は、その内側に前記防水栓30およびホルダー40を収容するためのものである。この収容壁26は、前記端子収容室24の端子挿入口24aが開口する後面26aよりも後方に延びる略筒状を有している。この収容壁26の下方には、後述するホルダー40のホルダー被係止突起42cと係合するホルダー係止孔26cが設けられている。そして、前記ホルダー40は、このホルダー被係止突起42cとホルダー係止孔26cとの係合によって、その前面42aで前記防水栓30を前記収容壁26の後面26aに押圧した状態で絶縁ハウジング20に固定される。
【0021】
前記防水栓30は、前記端子収容室24内への浸水を抑止するためのものである。この防水栓30は、図2(a),(b)に示すように、第一防水層31と、第二防水層32と、第三防水層33とからなる。
【0022】
前記第一防水層31は、前記防水栓30のうち、当該防水栓30が前記収容壁26の内側に収容された状態で前記絶縁ハウジング20の後面26aに接触する部分である。また、前記第三防水層33は、前記防水栓30のうち、前記収容壁26に収容された状態で、前記ホルダー40に接触する部分である。そして、前記第二防水層32は、この第一防水層31と第三防水層33との間に介在する部分である。
【0023】
これら各防水層31〜33は、いずれも1.5mmの厚みを有する略板状のシリコーンゴムからなる弾性部材である。各防水層31〜33の外周面には、それぞれリップ部31a,32a,33aが設けられており、後述するように各防水層31〜33の外周面が前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bと密着した際に、その密着性を高めるように構成されている。また、本実施形態では、各防水層31〜33は、より確実に一体変形できるように、多色成形等により互いに一体に形成されている。
【0024】
ただし、前記第二防水層32の硬度は、前記第一防水層31および第三防水層33の硬度よりも低く設定されている。具体的には、前記第一防水層31の硬度と第三防水層33の硬度とは、それぞれ30〜50度の範囲で互いにほぼ同一の値に設定されており、これら第一防水層31と第三防水層33とは、その変形量が小さくとも十分な弾発力を生じるよう構成されている。一方、前記第二防水層32の硬度は、前記第一防水層31および第三防水層33の硬度よりも低い20度に設定されており、この第二防水層32は、前記第一防水層31等に比べて外力に対して柔軟に変形することができるよう構成されている。
【0025】
ここで、本発明では、第一防水層31の硬度と第三防水層33の硬度に比べて第二防水層の硬度が低ければよく、各硬度の具体的な値は前記に限らない。また、第一防水層31の硬度と第三防水層33の硬度とが異なっていてもよい。また、本実施形態では、各防水層31〜33の材質としてシリコーンゴムを挙げたが、弾性部材であればこれに限らない。また、各防水層31〜33の厚みも前記に限らない。
【0026】
前記のような第一防水層31、第二防水層32、第三防水層33とで構成された防水栓30は、全体として前記収容壁26の内側に収容可能な形状を有している。また、この防水栓30は、前記絶縁ハウジング20の後面26aとホルダー40との間で挟まれて弾性変形することで、その外周面が前記収容壁26の内周面26bに密着するような形状を有している。そして、この防水栓30は、この密着によって、その外周面と前記収容壁26の内周面26bとの隙間から前記端子収容室24に水が浸入するのを抑止する。
【0027】
また、前記防水栓30には、前記電線1が接続された端子2が挿通可能な複数の端子挿通孔34が、前記端子収容室24に対応する位置に複数設けられている。これら端子挿通孔34は、前記第一防水層31、第二防水層32、第三防水層33を貫通する状態で設けられている。各端子挿通孔34の端子2の挿通口部分すなわち前記第一防水層31および第三防水層33に形成された部分には、前記端子2の挿通時に端子2をこの端子挿通孔34に案内するテーパ状の誘い込み部34dが形成されている。また、各端子挿通孔34の孔径は、少なくとも前記防水栓30が前記絶縁ハウジング20とホルダー40との間で弾性変形した状態にて、電線1および端子2の外径よりも小さくなるような大きさであり、この孔径を拡大させつつ端子2および電線1が挿通されることで、前記端子挿通孔34の内周面と電線1の外周面とが密着するようになっている。そして、この防水栓30は、この密着により端子挿通孔34の内周面と電線1の外周面との隙間から前記端子収容室24に水が浸入するのを抑止する。
【0028】
具体的には、前記防水栓30が前記絶縁ハウジング20とホルダー40との間で弾性変形した状態では、前記第一防水層31が、前記絶縁ハウジング20の後面26aからの押圧力を受けて絶縁ハウジング20の後面26aと第二防水層32との間で弾性変形し、第三防水層33が、前記ホルダー40の本体部42の前面42aからの押圧力を受けて、この本体部42の前面42aと第二防水層32との間で弾性変形し、前記第二防水層32が、第一防水層31の前記押圧力に対する弾発力と前記第三防水層33の前記押圧力に対する弾発力を受けて弾性変形している。そして、各防水層31〜33が弾性変形することで、各防水層31〜33の外周面が、前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bに密着し、防水栓30と前記収容壁26の内周面26bとの隙間からの浸水が抑止される。また、前記端子挿通孔34のうち各防水層31〜33に形成された部分がそれぞれ電線1に密着し、前記端子挿通孔34の内周面と電線1との隙間からの浸水が抑止される。
【0029】
ここで、前述のように、第一防水層31と第三防水層33とは、その硬度がそれぞれ高く設定されており、小さな変形量で十分な弾発力を作用させることができるよう構成されている。そのため、この第一防水層31および第三防水層33の弾性変形量を大きくしなくとも、前記第二防水層32に十分な弾発力を作用させ、この第二防水層32の外周面と前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bとを十分に密着させることができる。同時に、前記端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分と電線1とを十分に密着させることができる。そこで、本防水コネクタ10では、例えば前記第一防水層31および第三防水層33が前記第二防水層32と同一の硬度に設定された場合に比べて、前記防水栓30全体の弾性変形量を小さく抑えるように構成し、前記密着性を保って防水栓30による防水機能を確保しつつ、防水栓30の過度の圧縮を回避している。
【0030】
前記ホルダー40は、前記防水栓30を絶縁ハウジング20の後面26aとの間で弾性変形した状態で保持するためのものである。このホルダー40は、前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内側に収容されるような形状を有しており、本体部42と、ホルダー被係止突起42cとを有している。
【0031】
前記本体部42は、前記防水栓30を後方から覆うような略板状部材であり、その前面42aで防水栓30の後端面、すなわち、前記第三防水層33の後端面を押圧している。この本体部42には、防水栓30の前記端子挿通孔34と対応する位置に、電線1が接続された端子2が挿通可能な複数のホルダー側端子挿通孔44が形成されている。
【0032】
前記ホルダー被係止突起42cは、前記絶縁ハウジング20に設けられたホルダー係止孔26cと係合する部分であり、前記本体部42の下方に設けられている。そして、前記防水栓30は、このホルダー係止孔26cとホルダー被係止突起42cとが係合することで、前記本体部42の前面42aと絶縁ハウジング20の後面26aとの間で弾性変形した状態で保持される。
【0033】
ここで、前記ホルダー係止突起42cと前記ホルダー係止孔26cの係合位置は、前記防水栓30の弾性変形量を決定するものであるが、本防水コネクタ10では、前述のように、防水栓30による防水機能を確保しつつ防水栓30の過度の圧縮が回避されるように調整されている。
【0034】
次に、以上の構成要素を組み付ける方法について説明する。
【0035】
まず、図3に示すように、前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内側に、前記防水栓30および前記ホルダー40を収容し、前記ホルダー40のホルダー被係止突起42cと前記収容壁26のホルダー係止孔26cとを係合する。このとき、前記防水栓30は、前記絶縁ハウジング20の後面26aと前記ホルダー40の前面42aとにより挟まれて、前記収容壁26の内側で、その外周面が前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bに密着した状態で弾性変形する。
【0036】
このとき、前記第一防水層31は、前記絶縁ハウジング20の後面26aからの押圧力を受けて絶縁ハウジング20の後面26aと第二防水層32との間で弾性変形し、第三防水層33は、前記ホルダー40の本体部42の前面42aからの押圧力を受けて、この本体部42の前面42aと第二防水層32との間で弾性変形し、前記第二防水層32は、第一防水層31の前記押圧力に対する弾発力と前記第三防水層33の前記押圧力に対する弾発力を受けて弾性変形する。そして、弾性変形した各防水層31〜33の外周面が、前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面26bに密着する。
【0037】
次に、図4の(a)に示すように、電線1が接続された端子2を、ホルダー40のホルダー側端子挿通孔44に挿通する。
【0038】
次に、前記ホルダー側端子挿通孔44に挿入された端子2を、図4の(b)に示すように、その前端部分で、前記端子挿通孔34のうち前記第三防水層33に形成された部分を徐々に拡径しつつ、前記誘い込み部34dに沿ってこの端子挿通孔34に挿通する。このとき、前記第三防水層33と一体に形成された第二防水層32は、第三防水層33の変形に伴い変形し、端子挿通孔34のうち前記第三防水層33に形成された部分が拡径するに伴って、前記端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分が拡径する。
【0039】
次に、前記端子2をさらに図4の(c)に示すような位置まで前方に挿通する。すなわち、端子2を端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分に挿通する。前述のように、この端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分は、前記第三防水層33の変形に伴って既に拡径している。従って、端子2と第二防水層32との接触抵抗は小さく、端子2はこの第二防水層32に形成された部分にスムーズに挿通されていく。また、前述のように、前記第二防水層32は、その硬度が低く端子2の挿通に伴って容易に変形することができる。そのため、前記端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分では、端子2による前記第二防水層32への損傷が小さく抑えられた状態でこの端子2が挿通されていくことになる。
【0040】
端子2を端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分に挿通した後は、さらにこの端子2を前方に移動させて、図5に示すように、端子2の前記被係止部2fが前記端子保持部22に保持されるまで端子収容室24に挿入する。
【0041】
このように端子2が前記端子収容室24に挿入され前記端子保持部22に保持された状態では、前記防水栓30の端子挿通孔34に端子2に接続される電線1が挿通されている。そして、前記防水栓30の各防水層31〜33は、その復元力により前記端子挿通孔34を縮径する方向に変形しており、端子挿通孔34の内周面は、この端子挿通孔34に挿通された電線1の外周面に密着している。このようにして前記電線1の周囲が密閉されれば、この電線1の周囲から前記端子収容室24への浸水は抑止される。また、各防水層31〜33の外周面は、前記絶縁ハウジング20の収容壁26の内周面に密着している。このように各防水層31〜33の外周面と前記収容壁26との隙間とが密閉されれば、この隙間から前記端子収容室24への浸水は抑止される。
【0042】
ここで、端子2の前記端子挿通孔34への挿通初期、すなわち、端子2を前記端子挿通孔34のうち前記第三防水層33に形成された部分に挿通する際には、前記端子挿通孔34が十分に拡径していないため、端子2をこじ入れねばならない場合がある。そして、端子2をこじ入れる場合には、端子2の角部等で前記第三防水層33を損傷してしまう可能性が高い。しかしながら、本防水コネクタ10では、前述のように、前記第二防水層32に対しては端子2による損傷が小さく抑えられた状態で端子2が挿通されていくため、前記第三防水層33が損傷したとしてもこの第二防水層32が電線1の外周面に密着し、前記端子収容室24への浸水を抑制する。特に、前述のように、前記第二防水層32には前記第一防水層31および第三防水層33から十分な弾発力が作用しており、前記端子挿通孔34のうちこの第二防水層32に形成された部分の内周面と電線1の外周面との密着性は高い状態で維持されている。そのため、この第二防水層32によって前記端子収容室24への浸水が抑制される。
【0043】
また、端子2が前記端子保持部22に保持された状態ではホルダー40のホルダー側端子挿通孔44から電線1が外側に延びており、この電線1が前記防水栓30と電線1との密着を解除するような曲げ方向に変位することが考えられる。しかしながら、本防水コネクタ10では、前記防水栓30の後端側に設けられた前記第三防水層33の硬度が高く設定されており、この第三防水層33が前記電線1の変位を規制するため、防水栓30と電線1との密着性は確保される。
【0044】
次に、前記のようにして端子収容室24に収容された端子2を抜出する方法について説明する。
【0045】
まず、前記端子保持部22と端子2の被係止部2fの係合状態を所定の治具を用いて解除する。次に、端子2に接続される電線1を後方に引っ張る。
【0046】
接続された電線1が引っ張られた端子2は、端子収容室24の内周面に沿うようにして後方に移動する。端子2は、まず、前記端子挿通孔34のうち前記第一防水層31に形成された部分に、前記誘い込み部34dに沿ってこの部分を拡径しつつ挿通される。このとき、前記第一防水層31と一体に形成された第二防水層32は、第一防水層31の変形に伴い変形し、端子挿通孔34のうち前記第一防水層31に形成された部分が拡径するに伴って、前記端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分が拡径する。
【0047】
次に、前記端子2は、第二防水層32側の端子挿通孔34に案内され、この第二防水層32の位置に移動する。前述のように、この端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分は、前記第一防水層31の変形に伴って既に拡径している。従って、端子2と第二防水層32との接触抵抗は小さく、端子2はこの第二防水層32に形成された部分にスムーズに挿通されていく。また、前述のように、前記第二防水層32は、その硬度が低く端子2の挿通に伴って容易に変形することができる。そのため、前記端子挿通孔34のうち前記第二防水層32に形成された部分では、端子2による前記第二防水層32への損傷が小さく抑えられた状態でこの端子2が挿通されていくことになる。
【0048】
さらに前記電線1を引っ張ると、端子2は、前記第三防水層33に形成された端子挿通孔34およびホルダー40に設けられたホルダー側端子挿通孔44を通って外部に抜出される。
【0049】
ここで、前記端子2を端子収容室24に挿入する場合と同様に、端子2を抜出する際にも、端子2の前記端子挿通孔34への挿通初期には、端子2をこじらねばならない場合がある。そして、この場合には、端子2の角部等で前記第一防水層31を損傷してしまう可能性が高い。しかしながら、本防水コネクタ10では、前述のように、前記第二防水層32に対しては端子2による損傷が小さく抑えられた状態で端子2が移動していく。そのため、第一防水層31が損傷しても、第二防水層32による防水機能は確保されることになる。
【0050】
このように、本防水コネクタ10によれば、前記端子収容室24へ端子2を挿入する場合あるいは前記端子収容室24から端子2を抜出する場合に、端子2が前記端子挿通孔34にこじられるようにして挿通されても、前記第二防水層32の損傷が小さく抑えられることで、少なくともこの第二防水層32による防水機能が確保されることになる。
【0051】
ここで、本発明は、前記第一防水層31、第二防水層32、第三防水層33が多色成形により一体に形成される場合に限らず、各防水層31〜33が接着剤等により接着されている場合も含む。ただし、前記のように、前記第一防水層31と第二防水層32と第三防水層33とを多色成形により一体に形成すれば、前記第二防水層32が前記第一防水層31および第三防水層33の変形に伴ってより確実に変形することが可能となるので、第二防水層32における前記端子挿通孔34の拡径が促進され、端子2と第二防水層32との接触抵抗がより確実に低減する。
【0052】
また、各防水層31〜33の具体的構成、材質、硬度、大きさ等は前記に限らない。
【0053】
また、前記防水栓30を前記絶縁ハウジング20の後面26aと前記ホルダー40の前面42aとにより挟み込む前、すなわち、この防水栓30を弾性変形させる前に、前記端子挿通孔34に端子2を挿通するようにしてもよい。このようにすれば、端子2の挿通時にこの端子2によって前記端子挿通孔34の孔径を容易に拡径することができ、防水栓30の損傷をより一層確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る防水コネクタの分解断面図である。
【図2】(a)図1に示す防水コネクタに設けられる防水栓の正面図である。(b)(a)に示す防水栓の断面図である。
【図3】図1に示す絶縁ハウジングと防水栓とホルダーとを組み付けた状態で示す防水コネクタの分解断面図である。
【図4】(a)端子挿通孔への端子の挿通過程を示す断面図である。(b)端子挿通孔への端子の挿通過程を示す断面図である。(c)端子挿通孔への端子の挿通過程を示す断面図である。
【図5】図1に示す防水コネクタを組み立てた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電線
2 端子
10 防水コネクタ
20 絶縁ハウジング
22 端子保持部
24 端子収容室
24a 端子挿入口
26 収容壁
26a 後面
26c ホルダー係止孔
30 防水栓
31 第一防水層
32 第二防水層
33 第三防水層
34 端子挿通孔
40 ホルダー
42c ホルダー被係止突起
44 ホルダー側端子挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続される端子と、
この端子の軸方向に沿って当該端子が後方から挿入される端子収容室を有するとともに、この端子収容室内に挿入された前記端子を保持する端子保持部を有する絶縁ハウジングと、
前記端子収容室の後方の位置で前記絶縁ハウジングに固定されるホルダーと、
前記ホルダーと前記絶縁ハウジングとにより前後から挟みこまれる防水栓とを備え、
前記絶縁ハウジングは、前記端子収容室の端子挿入口が開口する後面よりも後方に延びて前記防水栓をその内側に収容する収容壁を有し、
前記防水栓は、弾性部材からなり前記絶縁ハウジングの後面に接触する第一防水層と、弾性部材からなり前記ホルダーの前面に接触する第三防水層と、前記第一防水層と前記第三防水層との間に介在し、これら第一防水層と第三防水層とにそれぞれ接着されるとともに、当該第一防水層の硬度および第三防水層の硬度よりも低い硬度を有する弾性部材からなる第二防水層とを備え、
この防水栓において、前記端子収容室に対応する位置に、前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とを貫通し、前記端子により拡径されつつ当該端子を挿通可能な端子挿通孔が形成されるとともに、
当該防水栓は、前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とが前記絶縁ハウジングの後面と前記ホルダーの前面とに挟まれて前記収容壁の内側で弾性変形することにより、前記端子挿通孔のうち少なくとも前記第二防水層を貫通する部分の内周面と当該端子挿通孔に挿通された前記端子に接続される電線の外周面とが密着し、かつ、少なくとも前記第二防水層の外周面と前記絶縁ハウジングの収容壁の内周面とが密着する形状を有することを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の防水コネクタであって、
前記第一防水層と第二防水層と第三防水層とは、多色成形により互いに一体に形成されることを特徴とする防水コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−43443(P2009−43443A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204416(P2007−204416)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】