説明

防水スピーカ、電子機器、及び防水発音機器

【課題】スピーカに簡単な構成で防水機能を具備しながら、低音を発生できるようにする。
【解決手段】貫通孔を有する環状の磁石33と、当該環状の磁石33の内周側に離間して設けたボイスコイル35と、環状の磁石33に対し貫通孔の一方を覆って設けられ、ボイスコイル35に接触して発音する第1防水振動板36と、環状の磁石33に対し貫通孔の他方を覆って設けられ、第1防水振動板36に共振する第2防水振動板38と、を備える。さらに、環状の磁石33を保持する環状のフレーム31・32を備える。具体的には、環状のフレーム31は、ボイスコイル35の内周側に離間して位置する筒状部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低音域に対応した防水スピーカと、その防水スピーカを備える電子機器と、低音域に対応した防水発音機器に関する。
【背景技術】
【0002】
トランシーバのような通信端末において、そのスピーカ上部に防水が図られた二次振動板を設けるようにした技術がある(特許文献1参照)。
また、コードレス電話の子機において、ケースとレシーバとの間に、音の伝達性能の良好な防水膜を設けるようにした技術もある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−69472号公報
【特許文献2】特開平8−79865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、2のものは、ともにスピーカの上部に防水が図られた二次振動板を設けるようにしたものであり、防水を図ることはできるが、低音の発生はできない。
【0004】
本発明の課題は、スピーカに簡単な構成で防水機能を具備しながら、低音を発生できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、貫通孔を有する環状の磁石と、当該環状の磁石の内周側に離間して設けたボイスコイルと、前記環状の磁石に対し前記貫通孔の一方を覆って設けられ、前記ボイスコイルに接触して発音する第1防水振動板と、前記環状の磁石に対し前記貫通孔の他方を覆って設けられ、前記第1防水振動板に共振する第2防水振動板と、を備える防水スピーカを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水スピーカであって、前記環状の磁石を保持する環状のフレームを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の防水スピーカであって、前記環状のフレームは、前記ボイスコイルの内周側に離間して位置する筒状部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の防水スピーカを備える電子機器を特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、貫通孔を有する環状の磁石、当該環状の磁石の内周側に離間して設けたボイスコイル、前記環状の磁石に対し前記貫通孔の一方を覆って設けられ、前記ボイスコイルに接触して発音する第1防水振動板を備える防水スピーカと、当該防水スピーカを取り付ける発音口、当該発音口に連通する発音通路、当該発音通路に連通する放音口を備えるケースと、当該ケースの前記放音口に取り付けられ、前記防水スピーカの前記第1防水振動板に共振する第2防水振動板と、からなる防水発音機器を特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の防水発音機器であって、前記発音口と放音口は、前記ケースの同一面に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の防水発音機器であって、前記発音口と放音口は、前記ケースの異なる面に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれか一項に記載の防水発音機器であって、前記発音通路は、方向を変化させた屈曲部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スピーカに防水機能を持たせることが簡単な構成で実現でき、しかも、低音を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(電子機器の実施形態1)
図1(a)は本発明の防水スピーカを適用した実施形態1の構成としてバスレフ型発音機器を示したもので、図1(b)はそのバスレフ型発音機器を適用した電子機器の一例を示し、図2は図1(a)のバスレフ型発音機器を中央で縦断して示しており、1はケース、2は正面パネル、3は防水スピーカ、4はコード、6・7は筐体、8は表示部、9は操作部である。
【0015】
図示のように、ケース1と正面パネル2に防水スピーカ3が挟まれてネジにて固定されており、ケース1から防水スピーカ3のコード4が外部に露出している。また、コード4は防水を図りながらボイスコイル35と電気的に接続されている。すなわち、正面パネル2には、上部の発音口21と下部の低音放音口22が形成され、発音口21に防水スピーカ3が取り付けられる。そして、ケース1には、発音口21と低音放音口22とを連通する、緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を有するU字状の発音通路11が形成されている。この発音通路11は全断面で同一の断面形状となっている。
【0016】
防水スピーカ3は、図3及び図4に拡大して示すように、貫通孔を有する環状の第1フレーム31及び第2フレーム32、環状の磁石33、環状のトッププレート34、筒状のボイスコイル35、第1防水振動板36及びその外周のヨーク37、第2防水振動板38及びその外周のヨーク39から構成される。
【0017】
すなわち、環状の第1フレーム31及び第2フレーム32間に環状の磁石33とその端面に当接する環状のトッププレート34とを保持して、第1フレーム31と第2フレーム32が合体されている。なお、第1フレーム31は、ボイスコイル35の内周側に離間して位置する筒状部を有している。
【0018】
そして、環状の磁石33の内周側に離間して筒状のボイスコイル35が配置されている。このボイスコイル35に接触して発音する第1防水振動板36が、その外周に一体に有する弾性部材によるヨーク37で、第2フレーム32に接着されている。なお、第1防水振動板36は、軽量・高剛性の紙・樹脂・金属等からなる。
【0019】
また、第1フレーム31には、その内周側の筒状部内の空間を介して第1防水振動板36に共振する第2防水振動板38が、その外周に一体に有する弾性部材によるヨーク39で接着されている。なお、第2防水振動板38も、第1防水振動板36と同様に、軽量・高剛性の紙・樹脂・金属等からなる。
【0020】
以上の構成による防水スピーカ3が正面パネル2の発音口21にケース1との間に挟まれてネジにて固定されている。
そして、例えば図1(b)に示すように、第1の筐体6と第2の筐体7とをヒンジ結合した折り畳み式携帯電話において、第1の筐体6の表示部8を有する面にケース1を埋め込んで発音口21及び低音放音口22を露出するとともに、第2の筐体7の操作部9を有する面にもケース1を埋め込んで発音口21及び低音放音口22を露出することで、ステレオスピーカを構成する。
【0021】
以上、実施形態1の防水スピーカ3によれば、貫通孔を有する環状の磁石33の内周側に離間してボイスコイル35を設け、そのボイスコイル35に接触して発音する第1防水振動板36を環状の磁石33に対し貫通孔の一方を覆って設け、その第1防水振動板36に共振する第2防水振動板38を環状の磁石33に対し貫通孔の他方を覆って設けたので、スピーカに防水機能を持たせることが簡単な構成で実現しながら、特に、第1防水振動板36に共振する第2防水振動板38により低音を発生させることができる。
【0022】
従って、実施形態1のバスレフ型発音機器によれば、正面パネル2の発音口21に取り付けた防水スピーカ3の第2防水振動板38により発生させる低音が、ケース1の緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を有するU字状の発音通路11で共鳴し、正面パネル2の低音放音口22から放音されて、特に、発音通路11の予め通路長で設定された低周波数の音を強調できる。
以上により、小型ながらも臨場感溢れる低音の再現が可能となる。
【0023】
(電子機器の実施形態2)
図5は本発明の防水スピーカを適用した実施形態2の構成としてバスレフ型発音機器を示したもので、図6及び図7はそのバスレフ型発音機器を各所で破断して示しており、前述した実施形態1と同様、1はケース、2は正面パネル、21は発音口、22は低音放音口、3は防水スピーカ、4はコードであって、5は背面パネルである。
【0024】
実施形態2は、図示のように、正面パネル2に設ける低音放音口22の位置と、ケース1に設ける発音通路12の形状とが実施形態1と異なっている。
【0025】
すなわち、図示例において、正面パネル2には、上部の発音口21と下部で一側寄りの低音放音口22が形成されている。そして、ケース1には、発音口21と低音放音口22とを連通する、緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を二箇所有するS字状の発音通路12が形成されている。この発音通路12は、その断面形状が変化するものとなっていて、ケース1の背面に合体される背面パネル5に面して閉じられている。
【0026】
さらに、発音通路12の両端部には、音波を直角方向に反射させる反射面13・14が設けられている。具体的には、発音通路12の両端部において、発音口21の奥方に斜めの反射面13を設けて、低音放音口22の奥方にも斜めの反射面14を設けている。これら二箇所の反射面13・14は、背面パネル5に一体に形成されている。
【0027】
従って、実施形態2のバスレフ型発音機器によれば、正面パネル2の発音口21に取り付けた防水スピーカ3の第2防水振動板38により発生させる低音が、緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を二箇所有するS字状の発音通路12において、反射面13で反射して共鳴し、反射面14で反射して正面パネル2の低音放音口22から放音されて、発音通路12により通路長を優先させて、前述した実施形態1に比べより低音域の音を発生できる。
【0028】
また、断面形状が変化する発音通路12は、音波の干渉で特性が大きく変化する可能性があるが、その通路に沿った方向に対して振動板36・38、発音口21、低音放音口22が直角方向のため、通路両端の反射板13・14によって音波の干渉を避けることができる。
【0029】
(防水発音機器の実施形態1)
図8は本発明の防水発音機器の実施形態1の構成を示すもので、1はケース、11は発音通路、2は正面パネル、21は発音口、22は低音放音口、3は防水スピーカ、36は第1防水振動板、37はヨーク、38は第2防水振動板、39はヨーク、4はコードである。
【0030】
図示のように、正面パネル2の発音口21に取り付けた防水スピーカ3には第2防水振動板38を設けずに、正面パネル2の低音放音口22に第2防水振動板38を、その外周に一体に有する弾性部材によるヨーク39で接着して取り付けている。
【0031】
以上、実施形態1の防水発音機器によれば、正面パネル2の発音口21に取り付けた防水スピーカ3の第1防水振動板36により発生させる低音が、貫通孔を通り、ケース1の緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を有するU字状の発音通路11で共鳴し、その発音通路11の予め通路長で設定された低周波数の音を強調して、正面パネル2の低音放音口22に取り付けた第2防水振動板38により放音できる。
以上により、小型・防水でありながらも臨場感溢れる低音の再現が可能となる。
【0032】
(防水発音機器の実施形態2)
図9は本発明の防水発音機器の実施形態2の構成を示すもので、前述した(防水発音機器の実施形態1)と同様、1はケース、3は防水スピーカ、36は第1防水振動板、38は第2防水振動板である。
【0033】
すなわち、図示のように、ケース1には、その正面及び背面に開口する、緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を有するU字状の発音通路15が形成されている。この発音通路15は全断面で同一の断面形状となっている。そして、ケース1の正面に開口する発音口16に防水スピーカ3を取り付ける。この防水スピーカ3には第2防水振動板38を設けずに、ケース1の背面に開口する低音放音口18に第2防水振動板38を取り付けている。
【0034】
以上、実施形態2の防水発音機器によれば、ケース1正面の発音口16に取り付けた防水スピーカ3の第1防水振動板36により発生させる低音が、貫通孔を通り、ケース1の緩やかな曲率で方向を変化させた屈曲部を有するU字状の発音通路15で共鳴し、その発音通路15の予め通路長で設定された低周波数の音を強調して、ケース1背面の低音放音口18に取り付けた第2防水振動板38により放音できる。
【0035】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、円形のスピーカとしたが、スピーカ形状は円形に限らず、楕円形、四角形、三角形、その他どのような形状であってもよい。
また、小型スピーカに限らず大型スピーカであってもよく、またオーデオ機器用のスピーカに用いてもよい。
さらに、本発明は、実施形態の携帯電話に限らず、デジタルカメラ、ビデオカメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書など、スピーカを設けた機器すべてに用いることができる。
また、発音通路はどのような経路で引き回してもよく、その断面形状もどのようなものでもよい。
また、ケースの形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の防水スピーカを適用した実施形態1の構成を示すもので、バスレフ型発音機器を示した斜視図(a)と、そのバスレフ型発音機器を適用した電子機器の一例を示した斜視図(b)である。
【図2】図1(a)のバスレフ型発音機器を中央で縦断して示した図である。
【図3】図2の防水スピーカの拡大図である。
【図4】図3の防水スピーカの分解斜視図である。
【図5】本発明の防水スピーカを適用した実施形態2の構成を示すもので、バスレフ型発音機器を示した斜視図である。
【図6】図5のバスレフ型発音機器の内部を破断して示した図である。
【図7】図6の矢印A−A線に沿って破断して示した図(a)と同じく断面図(b)である。
【図8】本発明の防水発音機器の実施形態1の構成を示すもので、中央で縦断して示した斜視図である。
【図9】本発明の防水発音機器の実施形態2の構成を示す中央縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ケース
11 発音通路
12 発音通路
13 反射面
14 反射面
15 発音通路
16 発音口
18 放音口
2 正面パネル
21 発音口
22 放音口
3 防水スピーカ
31 第1フレーム
32 第2フレーム
33 磁石
34 トッププレート
35 ボイスコイル
36 第1防水振動板
37 ヨーク
38 第2防水振動板
39 ヨーク
4 コード
5 背面パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する環状の磁石と、
当該環状の磁石の内周側に離間して設けたボイスコイルと、
前記環状の磁石に対し前記貫通孔の一方を覆って設けられ、前記ボイスコイルに接触して発音する第1防水振動板と、
前記環状の磁石に対し前記貫通孔の他方を覆って設けられ、前記第1防水振動板に共振する第2防水振動板と、を備えることを特徴とする防水スピーカ。
【請求項2】
前記環状の磁石を保持する環状のフレームを備えることを特徴とする請求項1に記載の防水スピーカ。
【請求項3】
前記環状のフレームは、前記ボイスコイルの内周側に離間して位置する筒状部を有することを特徴とする請求項2に記載の防水スピーカ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の防水スピーカを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
貫通孔を有する環状の磁石、当該環状の磁石の内周側に離間して設けたボイスコイル、前記環状の磁石に対し前記貫通孔の一方を覆って設けられ、前記ボイスコイルに接触して発音する第1防水振動板を備える防水スピーカと、
当該防水スピーカを取り付ける発音口、当該発音口に連通する発音通路、当該発音通路に連通する放音口を備えるケースと、
当該ケースの前記放音口に取り付けられ、前記防水スピーカの前記第1防水振動板に共振する第2防水振動板と、からなることを特徴とする防水発音機器。
【請求項6】
前記発音口と放音口は、前記ケースの同一面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の防水発音機器。
【請求項7】
前記発音口と放音口は、前記ケースの異なる面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の防水発音機器。
【請求項8】
前記発音通路は、方向を変化させた屈曲部を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の防水発音機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−93485(P2010−93485A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260642(P2008−260642)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】