説明

防水通気フィルタ、防水通気部材および筐体

【課題】通気度、耐水圧および強度のすべてに優れる防水通気フィルタを提供する。
【解決手段】不織布等の基材3の一方の側に第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜1が、基材3の他方の側に第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2が積層されており、第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜1の厚みおよび平均孔径が、第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2の厚みおよび平均孔径よりも大きい防水通気フィルタ4とする。第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜1の厚みは50μm以上、平均孔径は1.0μm以上であり、かつ第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2の厚みは50μm未満、平均孔径は1.0μm未満であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)多孔質膜を用いた防水通気フィルタに関し、より詳しくは、自動車電装部品、家電製品、情報機器等の筐体に使用される防水通気フィルタに関する。また本発明は、当該防水通気フィルタを有する防水通気部材に関し、さらには、当該防水通気フィルタを有する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車電装部品、家電製品、情報機器等の筐体に通気性を持たせ、かつ水、塵埃等の異物の筐体内部への侵入を防止するために、防水通気フィルタが用いられている(例えば、特許文献1および2参照)。この防水通気フィルタは、防水通気フィルタを筐体の開口部に接着または溶着することにより、あるいは防水通気フィルタを有する支持体を筐体の開口部に装着することにより、筐体に取り付けられている。
【0003】
防水通気フィルタにおいて、PTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタが、その高い耐水性および防塵性により、広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。PTFE多孔質膜は、高い通気性と耐水性を併せ持っているが、単体では強度が低い。そのため、基材とラミネートした積層品として提供されることが多い。この基材には、通常、熱溶融性樹脂を含んだ不織布が用いられ、この基材はPTFE多孔質膜と熱接着される。
【特許文献1】特開2003−318557号公報
【特許文献2】特開2006−190655号公報
【特許文献3】特開平8−206422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記防水通気フィルタにおいて、PTFE多孔質膜の耐水圧が同じである場合、すなわちPTFE多孔質膜の孔径が同じである場合には、PTFE多孔質膜の厚みが小さい方が通気性は高くなる。従って、十分な通気性を得るためには、薄手のPTFE多孔質膜を用いることが有効である。しかし、薄手のPTFE多孔質膜は、膜そのものの強度が低くなるという問題を有している。強度が低いPTFE多孔質膜は、外力によって簡単にダメージを受けてしまう。一方、強度を上げるために厚手のPTFE多孔質膜を用いた場合には、耐水圧を確保すべくその孔径を小さくすると、通気度が低くなり、通気度を確保すべくその孔径を大きくすると、耐水圧が低くなってしまう。そのため、通気度、耐水圧および強度のすべてに優れる防水通気フィルタを得ることは困難であった。
【0005】
そこで本発明は、通気度、耐水圧および強度のすべてに優れる防水通気フィルタを提供することを目的とする。本発明はまた、当該防水通気フィルタを有する支持体および筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討した結果、厚みおよび平均孔径が相対的に大きいPTFE多孔質膜と、厚みおよび平均孔径が相対的に小さいPTFE多孔質膜とで基材をサンドイッチした構造の積層体が、通気度、耐水圧および強度のすべてに優れる防水通気フィルタとなり得ることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、基材の一方の側に第1のPTFE多孔質膜が、前記基材の他方の側に第2のPTFE多孔質膜が積層されており、前記第1のPTFE多孔質膜の厚みおよび平均孔径が、前記第2のPTFE多孔質膜の厚みおよび平均孔径よりも大きい防水通気フィルタを提供する。
【0008】
また本発明は、その別の側面から、前記防水通気フィルタと、それを支持する支持体とを有する防水通気部材を提供する。
【0009】
さらに本発明は、その別の側面から、前記防水通気フィルタを有する筐体であって、前記防水通気フィルタの第1のPTFE多孔質膜側が前記筐体の外部を向いた状態で、前記防水通気フィルタが前記筐体に取り付けられている筐体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用前の通気度が高く、使用中に水、オイル等が付着した後でも通気度が高く維持される防水通気フィルタが提供される。同時に、耐水圧の高い防水通気フィルタが提供される。さらに同時に、外力を受けてもダメージを受けにくい、強度に優れる防水通気フィルタが提供される。当該防水通気フィルタを有する防水通気部材は、筐体への取り付けに用いられるものであり、当該防水通気フィルタを有する筐体は、自動車電装部品、家電製品、情報機器等の筐体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に例示するように、本発明の防水通気フィルタ4は、基材3の一方の側に第1のPTFE多孔質膜1が、基材3の他方の側に第2のPTFE多孔質膜2が積層されており、第1のPTFE多孔質膜1の平均孔径および厚みが、第2のPTFE多孔質膜2の平均孔径および厚みよりも大きいことに特徴を有する。
【0012】
本発明の防水通気フィルタ4は、当該防水通気フィルタ4の筐体の外部を向く面(外側表面)が厚みおよび平均孔径の大きいPTFE多孔質膜1で構成され、筐体の内部を向く面(内側表面)が厚みおよび平均孔径の小さいPTFE多孔質膜2で構成されるように筐体に取り付けることができ、この場合に、防水通気フィルタは優れた通気性、耐水圧および強度を発揮する。
【0013】
なお、本発明において、防水通気フィルタの強度が優れるとは、防水通気フィルタが使用前の状態で通気度が高いということのみならず、使用中、水、オイル等が防水通気フィルタに付着した後でも通気度が高く保たれていることをいい、望ましくは、JIS P8117(ガーレー法)による通気量で、25秒/100mL以下である。また、防水通気フィルタの耐水圧が優れるとは、防水通気フィルタの耐水圧が高いことをいい、望ましくは、JIS L1092−B(高水圧法)による耐水圧で、150kPa以上である。防水通気フィルタの強度が優れるとは、主に防水通気フィルタが外力を受けた際に、ダメージを受け難いことをいう。
【0014】
従来は、通気性、耐水圧および強度が同時に優れる防水通気フィルタを得ることは困難であった。例えば、従来例として、耐水性と通気性を得るべく平均孔径の小さいPTFE多孔質膜と、強度を向上させるための基材とを用いた構成の防水通気フィルタがある。当該防水通気フィルタを用いた筐体は、基材が筐体の外側を向くように配置されるが、水やオイルと接触した際、水やオイルが基材に浸透して通気性を阻害する可能性があった。しかし、本発明の防水通気フィルタ4では、厚みおよび平均孔径の大きいPTFE多孔質膜(第1のPTFE多孔質膜1)が外側表面を構成することによって、水やオイルの基材への浸透を阻止することができ、また孔径が大きいために通気度を確保することができ、さらに厚みが大きいために強度を確保できる。そして、厚みおよび平均孔径の小さいPTFE多孔質膜(第2のPTFE多孔質膜2)が内側表面を構成することによって、孔径が小さいために耐水圧を確保することができ、またより微細な塵埃の侵入を阻止することができる。さらに厚みが小さいために通気性を確保することができ、さらに、内側表面に配置されているために、第2のPTFE多孔質膜2は、外部からダメージを受け難くなっている。
【0015】
第1のPTFE多孔質膜1には、強度確保の観点からいわゆる厚手品を用いるのがよく、その厚みとしては具体的には、50μm以上であり、60μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。ただし、厚みが大きくなりすぎると、防水通気フィルタ4のサイズの増大を招き、また十分な通気度を確保できないおそれがあるため、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0016】
また、第1のPTFE多孔質膜1には、通気度確保の観点から平均孔径の大きいものを用い、その平均孔径としては具体的に、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。ただし、平均孔径が大きくなりすぎると、十分な防水性、防塵性または強度を確保できないおそれがあるため、10μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましい。
【0017】
第2のPTFE多孔質膜2には、通気度確保の観点からいわゆる薄手品を用いるのがよく、その厚みとしては具体的に、50μm未満であり、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。ただし、厚みが小さくなりすぎると、十分な強度を確保できないおそれがあるため、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0018】
また、第2のPTFE多孔質膜2には、耐水圧確保の観点から平均孔径の小さなものを用い、その平均孔径としては具体的に、1.0μm未満が好ましく、0.6μm以下がより好ましい。ただし、平均孔径が小さくなりすぎると、十分な通気度を確保できないおそれがあるため、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
【0019】
PTFE多孔質膜の通気度は、防水通気フィルタとして十分な通気度が得られる限り特に限定はないが、JIS P8117に従い、ガーレー数で、第1のPTFE多孔質膜1については0.5〜3.0秒/100mLであることが好ましく、第2のPTFE多孔質膜2については4.0〜15秒/100mLであることが好ましい。
【0020】
PTFE多孔質膜の耐水圧は、防水通気フィルタとして十分な耐水性が得られる限り特に限定はないが、JIS L1092−Bに従い、第1のPTFE多孔質膜1については10〜100kPaであることが好ましく、第2のPTFE多孔質膜2については200〜500kPaであることが好ましい。
【0021】
撥水性、撥油性を高めるために、PTFE多孔質膜(特に第1のPTFE多孔質膜1)に、撥液処理を施してもよい。撥液剤としては、フッ素系、シリコーン系の撥液剤が多数市販されているが、PTFE多孔質膜を上回る撥液性能を発揮するためには、フッ素で飽和した炭化水素基(ペルフルオロアルキル基)を側鎖に有する化合物を成分とする必要がある。このような化合物で主鎖がアクリル系、メタクリル系、シリコーン系等である化合物を成分とする撥液剤が、各種市販されている。PTFE多孔質膜に撥液剤を塗布する方法としては、キスコーティング、グラビア塗工、スプレー塗工、浸漬等が挙げられる。
【0022】
PTFE多孔質膜は、公知方法に準じて製造することができ(例えば、PTFEファインパウダーからなるペースト押出物を延伸後焼成する方法)、また市販品として入手することもできる。
【0023】
基材3は、PTFE多孔質膜の取り扱い性を向上させ、組み立て時および使用時のダメージから防護するための保護材として機能する。基材3の材質および形態には特に限定はないが、PTFE多孔質膜1,2よりも強度および通気性に優れるものを選択するとよい。基材3の材質としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリアミド(脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、またはこれらの複合材料等を用いることができる。基材3の形態としては、フェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、多孔質体等が挙げられる。基材3が不織布である場合には、不織布を構成する一部または全部の繊維が、芯鞘構造の複合繊維であってよく、この場合は、芯成分の融点が鞘成分の融点よりも高いとよい。
【0024】
本発明の防水通気フィルタ4は、第1のPTFE多孔質膜1、基材3、第2のPTFE多孔質膜2を積層して製造することができる。積層の方法としては、基材3が第1のPTFE多孔質膜1および第2のPTFE多孔質膜2に挟まれた構造が得られる限り特に制限はない。例えば公知方法に準じ、圧着、融着または接着により積層することができ、一度に2枚のPTFE多孔質膜と基材を積層してもよいし、PTFE多孔質膜を1枚ずつ基材に積層してもよい。
【0025】
第1のPTFE多孔質膜1と第2のPTFE多孔質膜2との目視による区別を容易にするために、一方のPTFE多孔質膜を染色してもよく、また、両方のPTFE多孔質膜を異なる色で染色してもよい。また、基材の片面に印刷を施してもよいし、基材の両面に異なる模様を印刷してもよい。PTFE多孔質膜は、ある程度の透光性を有するため、PTFE多孔質膜を透かして支持体の模様を見ることも可能である。
【0026】
防水通気フィルタ4は、図2に例示するように、筐体または支持体への固定を容易にするために、その表面上に接着剤層5を有していてもよい。当該接着剤層5は、例えば、公知の接着剤を塗布・乾燥したものであってよく、両面テープであってもよい。接着剤層5は、図2では、第1のPTFE多孔質膜1側の表面上に設けられているが、使用形態に照らして適宜、第1のPTFE多孔質膜1側と第2のPTFE多孔質膜2側の一方の表面または両方の表面に設ければよい。また、通気性を確保するために、接着剤層5は、図2に例示するように、防水通気フィルタ4の周縁部に設けることが好ましい。
【0027】
本発明の防水通気フィルタ4は、防水通気フィルタの第1のPTFE多孔質膜1側が筐体6の外部を向いた状態で、筐体の開口部に取り付けられて使用される。防水通気フィルタ4は、直接筐体6に取り付けられてもよいし、防水通気フィルタ4を支持する支持体を介して取り付けられてもよい。具体的に、図3では、図2と同様の構成を有する防水通気フィルタ4が、第1のPTFE多孔質膜1側が筐体6の外部を向いた状態で、接着剤層5を介して直接筐体6に取り付けられている。
【0028】
防水通気フィルタ4を直接筐体6に取り付ける場合には、所定のサイズ、形状に打ち抜き、筐体6の開口部を覆うように、開口部に固定する。固定の方法としては、上記の接着剤層5等により接着する方法、熱溶着、超音波溶着等が挙げられる。
【0029】
防水通気フィルタを、支持体を介して筐体に取り付ける場合には、支持体の材質、形態には特に制限はない。支持体は、例えば、特許文献1に記載されたような、貫通孔を有する平板状の支持体であってよい。この場合、図4に例示するように、防水通気フィルタ4A(その多層構造は図4において省略する。第1のPTFE多孔質膜は図において上面に配置される。)が支持体7Aの貫通孔を覆うように、上記の接着剤層等による接着、熱溶着、超音波溶着等により防水通気フィルタ4Aを支持体7Aに固定して防水通気部材8Aとし(図4(a)および(b))、この防水通気部材8Aを、筐体の開口部に接着、溶着等により固定することができる(図4(c))。当該防水通気部材8Aを覆うように、保護カバー(図示せず)を設けてもよい。
【0030】
また、支持体は、例えば特許文献2に記載されたような、筒状の支持体であってもよい。この場合、図5に例示するように、筒状の支持体7Bの端面に防水通気フィルタ4B(その多層構造は図5において省略する。第1のPTFE多孔質膜は図において上面に配置される。)を接着、溶着等により固定して防水通気部材8Bとし、この防水通気部材8Bを、筐体6Bの開口部に挿入して固定することができる。このとき、防水通気部材8Bはさらに、防水通気フィルタ4Bを覆う保護カバー9を有していてもよい。
【0031】
なお、上記の防水通気部材において、防水通気フィルタのいずれの面を支持体に固定するかに関しては、防水通気部材を筐体に装着した場合に防水通気フィルタの第1のPTFE多孔質膜側が筐体の外部を向くように、防水通気フィルタを支持体に固定すべきである。
【0032】
このようにして、通気度、耐水圧および強度のすべてに優れる防水通気フィルタを有する筐体を得ることができる。当該筐体は、ヘッドランプ、リアランプ、フォグランプ、ターンランプ、バックランプ、モーターケース、圧力センサー、圧力スイッチ、ECU(Electrical Control Unit)等の自動車用電装部品;電気カミソリ、電動歯ブラシ、ランプ等の家電製品;携帯電話、カメラ等の情報機器などの筐体として有用である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。
【0034】
PTFE多孔質膜としては、日東電工社製の、表1に示す特性を有するものを使用した。表1において、通気量は、JIS P8117(ガーレー法)に従い求めた。この通気量は、一定圧力下において100mLの空気が流れるのに要する時間を示したものであり、値が小さいほど通気量が大きいことを示す。耐水圧は、JIS L1092−B(高水圧法)に従い求めた。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例1)
外層(外側表面側の層;第1のPTFE多孔質膜)にはNTF1133を、内層(内側表面側の層;第2のPTFE多孔質膜)にはNTF1026を、基材にはポリオレフィン不織布(ユニチカ社製エルベスT70、目付70g/cm2)を用いた。NTF1133、ポリオレフィン不織布およびNTF1026をこの順に重ね合わせ、温度160℃、線圧1kg/cm2のゴムロールを用いて接着して防水通気フィルタを得た。得られた防水通気フィルタの通気量は、16秒/100mL、耐水圧は240kPaであった。
【0037】
(実施例2)
外層にNTF1131、内層にNTF−VSを用いた以外は実施例1と同様にして防水通気フィルタを作製した。得られた防水通気フィルタの通気量は、18秒/100mL、耐水圧は240kPaであった。
【0038】
(比較例1)
外層にNTF1026を用い、内層を用いずに、実施例1と同様にして実施例1と同じ基材に接着を行い、防水通気フィルタを得た。得られた防水通気フィルタの通気量は、12秒/100mL、耐水圧は240kPaであった。
【0039】
(比較例2)
内層にNTF1026を用い、外層を用いずに、実施例1と同様にして実施例1と同じ基材に接着を行い、防水通気フィルタを得た。得られた防水通気フィルタの通気量は、12秒/100mL、耐水圧は240kPaであった。
【0040】
(比較例3)
外層にNTF1133を用い、内層にNTF1131を用いた以外は実施例1と同様にして防水通気フィルタを作製した。得られた防水通気フィルタの通気量は、6秒/100mL、耐水圧は120kPaであった。
【0041】
得られた防水通気フィルタに対し、以下の負荷試験を行った。防水通気フィルタの構成を表2に、試験結果を表3に示す。
【0042】
[膜破壊試験]
外側表面(外層の露出表面)に粘着テープ(日東電工社製ダンプロン)を貼り付け、当該テープを引剥がすことによって引張力を負荷した。テープを引剥がした後の表面を観察し、膜に破損がみられなかったものを○、破損がみられたものを×とした。
【0043】
[水浸透試験]
外層側から1分間、100kPaの水圧をかけた。その後、濡れた状態でJIS P8117(ガーレー法)に従い、通気量を測定した。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
表3からわかるように、比較例1では、外層に薄手のPTFE多孔質膜を使用したため、防水通気フィルタは、膜が破損しやすいものとなった。比較例2では、外層にPTFE多孔質膜を使用しなかったため、水浸透試験後の通気量が低下した。比較例3では、外層、内層共に厚手品を用いたため、耐水圧が低かった。一方、実施例1および2の防水通気フィルタは、良好な通気度、耐水圧、膜強度を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の防水通気フィルタは、防水通気フィルタまたは通気部材として、筐体に装着可能なものであり、本発明の防水通気フィルタを有する筐体は、自動車用電装部品、家電製品、情報機器などの筐体として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の防水通気フィルタの断面図である。
【図2】接着剤層を備えた本発明の防水通気フィルタの上面図および断面図である。
【図3】本発明の防水通気フィルタを有する筐体の断面図である。
【図4】(a)は、本発明の防水通気フィルタおよび支持体を有する通気部材の一例を示す斜視図、(b)は、当該通気部材の(a)のX−X’での断面図、(C)は、当該通気部材が装着された筐体の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の防水通気フィルタおよび支持体を有する通気部材が、筐体の開口部に装着された状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 第1のPTFE多孔質膜
2 第2のPTFE多孔質膜
3 基材
4,4A,4B 本発明の防水通気フィルタ
5 接着剤層
6,6A,6B 筐体
7A,7B 支持体
8A,8B 通気部材
9 保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の側に第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が、前記基材の他方の側に第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が積層されており、
前記第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みおよび平均孔径が、前記第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みおよび平均孔径よりも大きい防水通気フィルタ。
【請求項2】
前記第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みが50μm以上、平均孔径が1.0μm以上であり、かつ前記第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みが50μm未満、平均孔径が1.0μm未満である請求項1に記載の防水通気フィルタ。
【請求項3】
前記第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みが60〜500μm、平均孔径が1.0〜10μmであり、かつ前記第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚みが5〜30μm、平均孔径が0.05〜1.0μm未満である請求項2に記載の防水通気フィルタ。
【請求項4】
表面に接着剤層をさらに有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水通気フィルタと、それを支持する支持体とを有する防水通気部材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水通気フィルタを有する筐体であって、前記防水通気フィルタの第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜側が前記筐体の外部を向いた状態で、前記防水通気フィルタが前記筐体に取り付けられている筐体。
【請求項7】
自動車電装部品、家電製品または情報機器の筐体である請求項6に記載の筐体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−237949(P2008−237949A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77773(P2007−77773)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】