説明

防汚シート及びその製造方法

【課題】 汚れの除去容易性と汚れの非付着性の二つの防汚機能を持たせ、防汚性を飛躍的に高める。使用済ペットボトル等の廃材の再利用(リサイクル)を促進させるとともに、大幅なコストダウンを実現する。
【解決手段】 廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合し、かつ溶融混練することにより樹脂組成物を得るとともに、この樹脂組成物を、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形することにより、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有する防汚シート1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃材となるPET樹脂の再利用により壁紙や建材等を得るための防汚シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、汚れの付着しにくい防汚シートは知られているが、汚れが付着しにくいという防汚性には、汚れが付着しても容易に除去できる汚れの除去容易性と本来的に汚れが付着しない汚れの非付着性が含まれる。この場合、汚れの除去容易性は、主に防汚シートの表面構造が影響し、汚れの非付着性は、主に防汚シートにおける静電気の有無が影響するものと考えられ、防汚シートには、汚れの除去容易性を考慮したタイプと汚れの非付着性を考慮したタイプが存在する。
【0003】
従来、汚れの除去容易性を考慮したタイプに属する防汚シートとしては、特許文献1〜3が知られており、特許文献1には、食品や落書きによる汚れを容易に拭き取れる防汚機能を有する壁紙であって、揮発性有機化合物を吸着する吸着剤を含み、厚さが少なくとも5μmのフィルムまたは塗着層をポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル等から選択した防汚性およびガスバリアー性を有する機能性層として表面に備える壁紙が開示され、また、特許文献2には、防汚,抗菌,防カビ等の効果を有する光触媒担持フィルムがラミネート加工された樹脂構造体であって、高分子樹脂フィルムに、硬化剤としてシランカップリング剤が添加された接着層塗布液を塗布・乾燥した後、この接着層に光触媒層塗布液を塗布・乾燥して、高分子樹脂フィルム上に接着層を介して光触媒層を担持した光触媒担持フィルムを調製し、この光触媒担持フィルムを加熱加圧処理によって、樹脂基体(PET樹脂)の表面にラミネート加工してなる樹脂構造体が開示され、さらに、特許文献3には、防汚性に優れた化粧フィルムであって、変性または非変性のポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体とのブレンド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる一の樹脂あるいは二以上の樹脂の混合物からなる基材樹脂層上に、接着性フッ素樹脂層を積層させた化粧フィルムが開示されている。
【0004】
他方、汚れの非付着性を考慮したタイプに属する防汚シートとしては、特許文献4及び5が知られており、特許文献4には、静電気防止材などとして利用できる炭素フィブリル含有紙であって、セルロース繊維100重量部に対し、直径3.5〜75nm微細糸状、チューブ形態の炭素フィブリルが絡み合った凝集体粒子0.3〜400重量部を含有してなる炭素フィブリル含有紙が開示され、また、特許文献5には、炭粉とエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と水を混合して、汚れない炭層を設けることができる静電気防止炭剤を得、様々な材料に塗工して静電気防除に使用するものであり、シート上に炭層を成形した得た静電気防止炭シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−81159号公報
【特許文献2】特開平11−138686号公報
【特許文献3】特開2005−14607号公報
【特許文献4】特開平7−97789号公報
【特許文献5】特開2009−238716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来における防汚シートは、次のような問題点があった。
【0007】
第一に、防汚シートには、汚れの除去容易性を考慮した防汚シートと汚れの非付着性を考慮した防汚シートの二つのタイプが存在するが、望ましくは汚れの除去容易性と汚れの非付着性の双方の機能を有していれば、より防汚性の高い理想的な防汚シートを得ることができる。しかし、ポリエチレン等の樹脂素材を用いた場合には、基本的に静電気を帯び易い性質を有することから、汚れの除去容易性と汚れの非付着性の二つの機能を持たせることは相反する問題を解決することになり、防汚性を高めるには限界がある。
【0008】
第二に、いずれの防汚シートも廃プラスチックの活用(再利用)については考慮しておらず、防汚シートの分野においては必ずしも廃プラスチックのリサイクル促進が図られてるとは言えない。即ち、比較的大量に流通し、回収率の高い樹脂製品として、いわゆるペットボトルが存在するが、通常、ペットボトルをリサイクルする場合、分子量の著しい低下及び加熱溶融に伴う粘度不足を来たすため、リサイクル分野が限られ、それ故に、防汚シートの分野においてもペットボトルのリサイクル化が促進されているとは言えない。
【0009】
第三に、防汚シート自体の構造が積層構造であったり他の素材と組合わせるなどにより構成されるため、全体のシート構造が複雑化する傾向にある。したがって、素材(原料)コスト及び製造コスト面の双方においてコストアップを強いられ、適用する製品も高価に成らざるを得ない。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した防汚シートの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る防汚シート1は、上述した課題を解決するため、廃材を再利用する50〜80重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)に対して、少なくとも20〜50重量部のポリエチレン(PE)系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有するとともに、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形してなることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明に係る防汚シートの製造方法は、上述した課題を解決するため、廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合し、かつ溶融混練することにより樹脂組成物を得るとともに、この樹脂組成物を、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形することにより、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有する防汚シート1を得るようにしたことを特徴とする。
【0013】
ところで、上述した樹脂組成物を、インフレーションフィルムとして成形した場合、このフィルムは、機械的強度或いはシール強度の高い優れた物性を有することが、特開2010−163617号公報で開示される回収ポリエチレンテレフタレートを使用したインフレーションフィルム及びその製造方法で知られており、それ故に、このインフレーションフィルムは、ごみ袋やレジ袋等の袋類に用いて最適となる。
【0014】
一方、本発明者は、実験(試験)により、この樹脂組成物を、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形した際に、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有する、防汚性能に優れた防汚シートが得られることを見い出した。本発明は、このような防汚性能に着目した製品応用化を図るものであり、本発明は、このような観点から成された用途発明に該当する。
【0015】
図2及び図3に、廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有するとともに、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形して場合の防汚性能の確認実験の結果を示す。この確認実験は、図2に示すように、オフィスビルにおける通常の会議室Mの中の壁面Wsと床面Fsに、本発明に係る防汚シート1と一般的な防汚性を有するビニルクロス製の壁紙Xrを同一面積にしたものをピンで固定し、一週間放置後、ATP拭き取り検査を行うことにより汚染物質量(ATP量)を測定したものである。なお、会議室Mの広さは、床面3.65×4.35〔m〕,高さ2.4〔m〕である。また、ATP拭き取り検査は、厚生労働省監修の「食品衛生検査指針 微生物編」に収載されている、清浄度検査方法であり、ATP量を高感度に測定することができる。測定装置には、キッコーマン株式会社製の「ルミテスターPD20」及び「ルシパック」を使用した。
【0016】
この結果、ATP量は、防汚シート1の場合、壁面Wsの上部で8〔RLU〕,壁面Wsの中間部で31〔RLU〕,床面Fsで72〔RLU〕となった。他方、一般的な壁紙Xrの場合、壁面Wsの上部で62〔RLU〕,壁面Wsの中間部で745〔RLU〕,床面Fsで2246〔RLU〕となった。したがって、一般的な壁紙Xrに対して防汚シート1の減少率は、壁面Wsの上部で87〔%〕,壁面Wsの中間部で95.8〔%〕,床面Fsで96.8〔%〕となる。RLU単位で示すATP量は、数値が大きいほど汚れが大きいことを示している。
【0017】
図3において、Piは防汚シート1におけるATP量の分布データ、Prは一般的な壁紙XrにおけるATP量の分布データをグラフ表示したものであり、本発明に係る防汚シート1は、一般的な壁紙Xrに対して圧倒的な防汚性能を有している。防汚シート1は、廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、所定の厚さとなるシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形するため、このシート状体(又はフィルム状体)Rsを利用する防汚シート1は、基本的に、表面(Rsf)が合成樹脂表面(プラスチック表面)となることに加え、表面(Rsf)は、適度な親水性を有し、かつシルク状態様となる。
【0018】
廃材を再利用するPET樹脂の場合、分子量の著しい低下及び加熱溶融に伴う粘度不足を来たすとともに、この廃材を再利用するPET樹脂を高い配合割合により含ませ、かつ混練するようにしたため、シート状体(又はフィルム状体)Rsの表面(Rsf)に、微細なPET樹脂粒が生じ、これにより、表面(Rsf)がシルク状態様になるとともに、適度な親水性を有するものと考えられる。
【0019】
表面(Rsf)がシルク状態様になることから、この表面(Rsf)は汚れが付着しにくい表面構造となる。また、適度な親水性を有する表面は、防汚効果の発現作用のあることが光触媒分野の研究等で知られており、例えば、アクリル樹脂であっても適度な親水性を付与することで長期間防汚性能を維持することがウォータエバー実験等でも確認されている。親水性を有する表面は、光触媒のような汚濁物質を分解する作用は生じないが、静電気の発生が抑制され、カビ類の栄養源となる汚染物(有機物)が付着しにくいため、カビ類の発生が抑制されるとともに、花粉が付着したとしても花粉は発芽してアレルギー源では無くなる。
【0020】
一方、少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有することは、防汚シート1…同士を重ね合わせても容易に引き離せることから確認できる。この防汚シート1では、少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有する物性を生じ、このことは、図2及び図3の確認実験からも裏付けられる。
【0021】
なお、本発明は、好適な態様により、樹脂組成物には、所定量の抗菌剤を配合することができる。また、シート状体(又はフィルム状体)Rsの、一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなる壁紙Pwとして構成することもできるし、シート状体(又はフィルム状体)Rsの、一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなるとともに、裏面Rsrを他の建築用基材Baに貼付け可能な建材被覆シート(又は建材被覆フィルム)Bsとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明に係る防汚シート1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0023】
(1) 廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質(物性)を有するとともに、所定の厚さを有するシート状体(又はフィルム状体)Rsに成形してなるため、汚れの除去容易性と汚れの非付着性の二つの防汚機能を持たせることができ、防汚シート1における防汚性を飛躍的に高めることができる。
【0024】
(2) 比較的高配合率となる50〜80重量部のPET樹脂を使用できるため、このPET樹脂には、比較的大量に流通し、回収率の高い樹脂製品となる、使用済のペットボトル等の廃材を再利用(リサイクル)することができる。
【0025】
(3) 廃材を再利用するPET樹脂,PE系樹脂及び増粘剤を配合してなる樹脂組成物を成形するのみで防汚シート1を得ることができるため、防汚シート1自体の構造が単純化、即ち、従来のように、積層構造であったり他の素材と組合わせるなどの構成は不要となり、全体のシート構造の単純化に伴う素材(原料)コスト及び製造コストの大幅なコストダウンを図れるとともに、廉価な製品を提供できる。
【0026】
(4) 好適な態様により、樹脂組成物に、所定量の抗菌剤を配合すれば、防汚シート1における抗菌剤に基づく抗菌力を付加できることに加え、本来の物性である汚れの除去容易性及び汚れの非付着性との相乗効果により、より防汚性を高めることができる。
【0027】
(5) 好適な態様により、シート状体(又はフィルム状体)Rsの、一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなる壁紙Pwとして構成すれば、埃,雑菌,ハウスダスト,カビ,花粉,その他の汚物が付着しないため、汚れの無い奇麗な壁面状態を長期にわたって維持できる理想的な壁紙Pwを得ることができる。
【0028】
(6) 好適な態様により、シート状体(又はフィルム状体)Rsの、一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなるとともに、裏面Rsrを他の建築用基材Baに貼付け可能な建材被覆シート(又は建材被覆フィルム)Bsとして構成すれば、埃,雑菌,ハウスダスト,カビ,花粉,その他の汚物が付着しないため、汚れの無い奇麗な表面状態を長期にわたって維持できる理想的な建材を得ることができる。また、この際、シート状体(又はフィルム状体)Rsを透明にすれば、所定の建材の有する各種木目や一般的な壁紙等の表面形態を生かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適実施形態及び変更実施形態に係る防汚シートを適用した製品の一部を示す斜視図、
【図2】本発明の好適実施形態に係る防汚シートにおける防汚性能の確認実験の実験方法説明図、
【図3】同防汚シートにおける防汚性能の確認実験のATP量の分布データを示すグラフ、
【図4】同防汚シートの製造方法を説明するための製造工程図、
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0031】
まず、本実施形態に係る防汚シート1について、図1(a)及び図4を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態として例示する防汚シート1は、図1(a)に示す壁紙Pwである。
【0032】
最初に、壁紙Pw(防汚シート1)の製造方法の一例について、図4に示す製造工程図に従って説明する。壁紙Pwを製造するに際しては、成形材料となる樹脂組成物、即ち、廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)に対して、20〜50重量部のPE(ポリエチレン)系樹脂,2〜18重量部の増粘剤及び所定量の抗菌剤を配合した樹脂組成物を用意する。
【0033】
なお、この樹脂組成物は、特開2010−163617号公報で開示される回収ポリエチレンテレフタレートを使用したインフレーションフィルムの製造方法に準じて製造することができる。即ち、まず、原料を準備する(ステップS1)。原料には、廃材を再利用するPET樹脂,PE系樹脂,増粘剤及び抗菌剤を用いる。この場合、廃材を再利用するPET樹脂には、使用後のペットボトル等が含まれる。また、PE系樹脂には、エチレン単独重合体,エチレン・α−オレフィン共重合体,エチレンとビニルモノマーとの共重合体,エチレン単位を主な繰り返し単位とする重合体,特に、メタロセン触媒により重合されたポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン等)が含まれるとともに、メタロセン触媒により重合されたポリエチレンと溶液重合法で重合されたポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン等)との混合物が含まれる。さらに、増粘剤には、エポキシ基(オキシラン基),エポキシ基(オキシラン基)を含有する化合物、特に、分子中にエポキシ基を持つエポキシ基含有ポリエステル樹脂,エポキシ基或いはグリシジル基を含有した共重合体等が含まれる。
【0034】
そして、廃材を再利用するPET樹脂は50〜80重量部、PE系樹脂は20〜50重量部、増粘剤は2〜18重量部、にそれぞれ対応する配合量を計量するとともに、抗菌剤は使用する抗菌剤の仕様に応じた適量(所定量)を用意する。なお、必要に応じて、他の添加剤、例えば、エラストマー樹脂,相溶化剤,他の熱可塑性樹脂,酸化防止剤,スリップ剤,安定剤,着色剤等を必要に応じて使用(添加)可能である。なお、所定量の抗菌剤を配合した場合には、防汚シート1における抗菌剤に基づく抗菌力を付加できることに加え、本来の物性である汚れの除去容易性及び汚れの非付着性との相乗効果により、より防汚性を高めることができる。
【0035】
各原料を準備したなら使用する全ての原料を配合(混合)する(ステップS2)。そして、配合した原料は、二軸押出成形機に供給し、二軸押出成形機を運転することにより原料を溶融混練するとともに、さらに、ペレット化することにより目的の樹脂組成物を生成する(ステップS3)。
【0036】
他方、得られたペレット状の樹脂組成物は、シート成形機に供給し、所定の厚さを有するシート状体Rsとなるように成形する(ステップS4)。このシート状体Rsは、壁紙の生地となり、シート状体Rsの一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなるため、このシート状体Rsに対して所定の印刷を施す(ステップS5)。この場合、印刷は、おもて面Rsfに施すことも可能であるが、裏面Rsrに施すことにより、おもて面Rsfが印刷による影響を受けないメリットがある。また、予め、樹脂組成物を着色し、印刷の代わりに、凹凸模様等を型により設けてもよい。これにより、基本的な壁紙Pwを得ることができる。なお、二軸押出成形機から得られる樹脂組成物を直接シート状体Rsに成形することも可能である。
【0037】
この後、必要により、裏面Rsrには粘着剤(接着剤)をコーティングすることにより接着面を形成するとともに(ステップS6)、さらに、保護シート(剥離紙)を貼り合わせることができる(ステップS7)。また、必要な長さ(規定寸法)にカッティングするとともに(ステップS8)、外観検査等の必要な品質検査を行うことにより(ステップS9)、最終的な製品となる壁紙Pw(防汚シート1)を得ることができる(ステップS10)。
【0038】
以上の製造工程を経て、図1(a)に示す壁紙Pwを得ることができる。即ち、廃材を再利用する50〜80重量部のPET樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のPE系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、表面(Rsf)が、少なくともPET樹脂の単体シート又はPE系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくともPET樹脂の単体シート及びPE系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有するとともに、所定の厚さを有するシート状体Rsに成形してなる防汚シート1を適用した壁紙Pwを得ることができる。
【0039】
特に、防汚シート1は、汚れの除去容易性と汚れの非付着性の二つの防汚機能を持たせることができ、防汚シート1における防汚性を飛躍的に高めることができる。また、比較的高配合率となる50〜80重量部のPET樹脂を使用できるため、このPET樹脂には、比較的大量に流通し、回収率の高い樹脂製品となる、使用済のペットボトル等の廃材を再利用(リサイクル)することができる。さらに、廃材を再利用するPET樹脂,PE系樹脂及び増粘剤を配合してなる樹脂組成物を成形するのみで防汚シート1を得ることができるため、防汚シート1自体の構造が単純化、即ち、従来のように、積層構造であったり他の素材と組合わせるなどの構成は不要となり、全体のシート構造の単純化に伴う素材(原料)コスト及び製造コストの大幅なコストダウンを図れるとともに、廉価な製品を提供できる。しかも、例示のように、防汚シート1を壁紙Pwに適用すれば、埃,雑菌,ハウスダスト,カビ,花粉,その他の汚物が付着しないため、汚れの無い奇麗な壁面状態を長期にわたって維持できる理想的な壁紙Pwを得ることができる。
【0040】
他方、図1(b)及び(c)は、本発明の変更実施形態に係る防汚シート1を示す。変更実施形態として例示する防汚シート1は、図1(b)及び(c)に示す建材被覆シート(又は建材被覆フィルム)Bsである。
【0041】
図1(b)に示す防汚シート1は、シート状体Rsの、一方の面がおもて面Rsfとなり、かつ他方の面が裏面Rsrとなるとともに、裏面Rsrを他の建築用基材Baに貼付け可能な建材被覆フィルムBsとして構成したものである。したがって、建材被覆フィルムBsの裏面Rsrを他の建築用基材Baの表面に接着剤Cj等により貼付けることにより所定の建材Cpを得ることができる。この場合、建築用基材Baには、柱材,合板,難燃材,家具等をはじめとする各種建築用基材Baが含まれるとともに、建築用基材Baの素材は、木製,金属製,プラスチック製など、任意である。また、シート状体Rsには、各種木目等を印刷することができる。これにより、埃,雑菌,ハウスダスト,カビ,花粉,その他の汚物が付着しないため、汚れの無い奇麗な表面状態を長期にわたって維持できる理想的な建材Cpを得ることができる。
【0042】
図1(c)に示す防汚シート1は、特に、厚さの薄いフィルム状体Rsとし、かつ透明に形成したものであり、例示の場合、紙製或いは合成樹脂製の一般壁紙Pwoの表面に透明接着剤Cj等を用いて貼付けたものであり、これにより、一般壁紙Pwoにおける模様や形状等の表面形態、或いは無垢板の木目等をそのまま生かせる建材Cpを得ることができる。
【0043】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、廃材を再利用するPET樹脂とは、ペットボトルをはじめ様々な使用済商品におけるPET樹脂を利用できるとともに、工場等における加工屑であってもよい。シート状体とはプレート状体を含む概念である。また、壁紙Pwとは壁紙類の概念であり、例えば、天井紙や襖紙等も含まれる。さらに、樹脂組成物には、所定量の抗菌剤を配合する場合を示したが、抗菌剤は必ずしも配合することを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る防汚シート1は、例示した壁紙Pw,建材被覆フィルム(又は建材被覆シート)Bsをはじめ、防汚性が要求される各種対象物、例えば、ハウス農業等の壁面を構成する結露防止シート,アスベストを封じ込めるアスベスト対策シート等の各種対象物に対して直接又は間接的に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1:防汚シート,Rs:シート状体(又はフィルム状体),Rsf:シート状体(又はフィルム状体)のおもて面(表面),Rsr:シート状体(又はフィルム状体)の裏面,Ba:建築用基材,Bs:建材被覆シート(又は建材被覆フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃材を再利用する50〜80重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のポリエチレン系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合してなる樹脂組成物を、表面が、少なくとも前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の単体シート又は前記ポリエチレン系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくとも前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の単体シート及び前記ポリエチレン系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有するとともに、所定の厚さを有するシート状体又はフィルム状体に成形してなることを特徴とする防汚シート。
【請求項2】
前記樹脂組成物には、所定量の抗菌剤を配合してなることを特徴とする請求項1記載の防汚シート。
【請求項3】
前記シート状体又はフィルム状体の、一方の面がおもて面となり、かつ他方の面が裏面となる壁紙として構成することを特徴とする請求項1又は2記載の防汚シート。
【請求項4】
前記シート状体又はフィルム状体の、一方の面がおもて面となり、かつ他方の面が裏面となるとともに、当該裏面を他の建築用基材に貼付け可能な建材被覆シート(又は建材被覆フィルム)として構成することを特徴とする請求項1又は2記載の防汚シート。
【請求項5】
前記シート状体又はフィルム状体は透明であることを特徴とする請求項5記載の防汚シート。
【請求項6】
廃材を再利用する50〜80重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂に対して、少なくとも20〜50重量部のポリエチレン系樹脂と2〜18重量部の増粘剤を配合し、かつ溶融混練することにより樹脂組成物を得るとともに、この樹脂組成物を、所定の厚さを有するシート状体又はフィルム状体に成形することにより、表面が、少なくとも前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の単体シート又は前記ポリエチレン系樹脂の単体シートと略同一又はそれ以上となる汚れの除去容易性を有し、かつ少なくとも前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の単体シート及び前記ポリエチレン系樹脂の単体シートよりも汚れの非付着性の高い性質を有する防汚シートを得ることを特徴とする防汚シートの製造方法。
【請求項7】
前記ポリエチレン系樹脂及び前記増粘剤に加えて所定量の抗菌剤を配合することを特徴とする請求項6記載の防汚シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−140733(P2012−140733A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−589(P2011−589)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(511005479)
【出願人】(511005480)合同会社日本技術振興 (1)
【出願人】(504133291)株式会社ヒューネット・ジャパン (9)
【出願人】(511005491)日本企画調査株式会社 (1)
【Fターム(参考)】