説明

防汚フィルム及び防汚フィルム適用部材

【課題】防汚性を必要とする各種フィルムの表面に防汚層を形成した防汚フィルム及び防汚性を必要とする各種被処理基材の表面に防汚層を形成した防汚フィルムを適用した防汚フィルム適用部材であって、従来品よりも安価で、製造効率の優れた防汚フィルム及び防汚フィルム適用部材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち、少なくとも一つを成分に持つ又は/及び共重合成分に持つ厚さ6μm以上の高分子基材1の少なくとも片面に、真空成膜法により成膜硬化させたフッ素系防汚層2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性を必要とする各種フィルムの表面に防汚層を形成した防汚フィルム、及び防汚性を必要とする各種被処理基材の表面に防汚層を形成した防汚フィルムを適用した防汚フィルム適用部材に関し、特に、光学部材(反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等)の表面や、壁紙、看板等の汚れ防止に適用する防汚フィルム及びその防汚フィルムを適用した防汚フィルム適用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品や、光学製品、事務用品、家具などの什器類、あるいは屋外の看板や家屋の内装壁面などには、人の手が触れたりする機会が多いために、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着したり、外界の塵や埃や水分が汚れとなって付着したりする場合が多い。
【0003】
特に、光学製品の部品として使用されている、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の光学部材や、壁紙、看板等の表面に付着した汚れは、光学性能や見栄えを低下させる要因となる。
【0004】
そのような汚れは、一旦付着すると除去することが容易ではなく、特に、反射防止膜付き光学部材等では、付着した汚れが目立つために問題となる。
【0005】
そこで、これら汚れの問題を解決する手段として、汚れが付着し難く、付着しても拭き取りやすい性能を持つ防汚層を光学部材の表面に形成する技術が種々提案されている。
【0006】
例えば、特開昭64−86101号公報には、基材の表面に、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜を設け、更にその表面に有機ケイ素置換基を含む化合物で処理した防汚性、耐擦傷性の反射防止物品が提案されている。
【0007】
また、特開平4−338901号公報には、同様に、基材表面に末端シラノール有機ポリシロキサンを被覆した防汚性、耐擦傷性のCRTフィルターが提案されている。また、特公平6−29332号公報には、プラスチック表面にポリフルオロアルキル基を含むモノ及びジシラン化合物、及びハロゲン、アルキル又はアルコキシのシラン化合物からなる反射防止膜を有する防汚性・低反射性プラスチックが提案されている。更に、特開平7−16940号公報には、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体を二酸化ケイ素を主とする光学薄膜上に形成した光学部材が提案されている。
【0008】
以下に、公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、防汚性を必要とする各種フィルムの表面に防汚層を形成した防汚フィルム、及び防汚性を必要とする各種被処理基材の表面に防汚層を形成した防汚フィルムを適用した防汚フィルム適用部材であって、従来品よりも安価で、製造効率の優れた防汚フィルム及び防汚フィルム適用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するためのものであり、請求項1に係る発明は、厚さ6μm以上の高分子基材の少なくとも片面に、真空成膜法により成膜硬化させたフッ素系防汚層を設けたことを特徴とする防汚フィルムである。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る防汚フィルムにおいて、前記高分子基材が、ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち、少なくとも一つを成分に持つ又は/及び共重合成分に持つ基材であることを特徴とする防汚フィルムである。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る防汚フィルムにおいて、前記高分子基材が、ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち、少なくとも一つを成分に持つ又は/及び共重合成分に持つ基材を積層した積層基材であることを特徴とする防汚フィルムである。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項2又は3に係る防汚フィルムにおいて、前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち、少なくとも一つ以上を成分に持つ又は/及び共重合成分に持つことを特徴とする防汚フィルムである。
【0014】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係る防汚フィルムにおいて、前記フッ素系防汚層が、付加重合性官能基を有するフッ素化合物を成分に持つことを特徴とする防汚フィルムである。
【0015】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項5に係る防汚フィルムにおいて、前記付加重合性官能基が、ビニル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを含むことを特徴とする防汚フィルムである。
【0016】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項1乃至6のいずれか1項に係る防汚フィルムにおいて、前記真空成膜法によるフッ素系防汚層の成膜硬化方法が、熱板、熱ロール、加熱用ランプのうちの一種以上の熱源による加熱をエネルギー源とする付加重合反応であることを特徴とする防汚フィルムである。
【0017】
本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1乃至6のいずれか1項に係る防汚フィルムにおいて、前記真空成膜法におけるフッ素系防汚層の成膜硬化方法が、放射線照射をエネルギー源とする付加重合反応であることを特徴とする防汚フィルムである。
【0018】
本発明の請求項9に係る発明は、上記請求項8に係る防汚フィルムにおいて、前記放射線照射が紫外線又は/及び電子線の照射であることを特徴とする防汚フィルムである。
【0019】
本発明の請求項10に係る発明は、上記請求項1乃至9のいずれか1項に係る防汚フィルムを用いて得られることを特徴とする防汚フィルム適用部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防汚フィルム及び防汚フィルム適用部材によれば、従来と同等の防汚力で防汚層の薄膜化ができ、且つ製造時の環境負荷及びコストを小さくして、防汚フィルム及びその防汚フィルムを用いた防汚フィルム適用部材を得ることができ、また、防汚フィルム適用部材として、防汚フィルムを反射防止層を備えた高分子基材に適用することにより光学反射防止用途にも対応することができ、また、本発明の防汚フィルム及び防汚フィルム適用部材は、防汚性を必要とする各種高分子基材やプラスチックフィルムの表面にフッ素系防汚層を形成した防汚フィルム、及び防汚性を必要とする各種被処理基材の表面にフッ素系防汚層を形成した防汚フィルムを適用した防汚フィルム適用部材を、従来品よりも安価で、製造効率良く提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の防汚フィルムの実施の形態を以下に詳しく説明すれば、本発明の防汚フィルムは、図1の側断面図に示すように、高分子基材1の少なくとも片面(又は両面でもよい)に、真空成膜法により成膜硬化させたフッ素系防汚層2を設けたことを特徴とするものである。
【0022】
上記高分子基材1は、厚さが6μm以上のプラスチックフィルムを用いることができ、ここで云うプラスチックフィルムとは、一般的に定義される高分子化合物と同義であり、ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち少なくとも一つを、成分に持つ、又は/及び、共重合成分に持つことが望ましい。取り分け、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムは、経済的な面で極めて好適であるが、必ずしも限定するものではない。
【0023】
実際的には、高分子基材1は、用途や要求物性により使用するプラスチックフィルムを適宜に選定をすることが望ましく、特に限定をするものではないが、壁紙や家具の天板等では、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリオレフィン、ナイロンなどがコスト的に用い易く、また、質感においても優れる。
【0024】
屋外で用いる看板や標識などの被覆用のプラスチックフィルムには、耐候性に優れるアクリル樹脂が高分子基材1として適している。ディスプレイ用途には、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなど、高い透明性を有する高分子基材1を用いることが望ましい。また、高分子基材1のフィルム厚みは限定するものではないが、用途に応じて9μm〜200μm程度が使用し易い。
【0025】
各種用途に応じて、これらプラスチックフィルムによる高分子基材1には、下引き層やハードコート層、反射防止層などを設けた積層体を用いても構わない。
【0026】
高分子基材1の少なくとも片面(又は両面)に設けるフッ素型防汚層2は、所謂、離型性層であり、これまでフッ素化合物を含む溶液をグラビアコーティング法により塗布するなどして形成されているが、本発明においては、高分子基材1の少なくとも片面(又は両面)に設けたフッ素系防汚層2は、真空成膜法により成膜硬化させて形成されているものであり、該フッ素系防汚層2は、図2の化学構造式に示すように、それぞれ付加重合性官能基を有するフッ素化合物(化合物1、2、3、なお、RFはパーフルオロアルキル鎖を
示す)のいずれかを成分に持つものであり、離型性層となるものである。
【0027】
ここで云う付加重合可能性官能基を有するフッ素化合物については、厳密に言えば、付加重合のほかに、縮重合などでも効果は見られるが、一般に付加重合は他の重合に比べて重合前後での体積変化、特に収縮が小さく、塗工時や使用時の各種の悪影響が小さいので推奨した。また、一般的にラジカルなどで開始される付加重合に比べて、縮重合では硬化反応速度が遅い傾向にある。
【0028】
よって、縮重合による硬化では、高分子基材1面に形成されたフッ素型防汚層2の硬化に時間が掛かり、ウェブフィルム状(長尺状)の高分子基材1面に形成される未硬化状態のフッ素型防汚層2がウエブフィルムガイドロールを汚染して高分子基材1面を汚損したり、該高分子基材1の裏面に移行したりする恐れがあるが、付加重合による硬化では、付加重合の硬化反応速度が縮重合の硬化反応速度に比べて速いために、そのような懸念が小さい。
【0029】
真空成膜法による付加重合の成膜硬化に際しては、付加重合可能性官能基を有するフッ素化合物を用い、ビニル基などをはじめ、ラジカル、カチオン、アニオンなどの反応開始種に対して反応性を示すものを用いる。特にアクリル基やメタクリル基を持つものは取り扱いも簡便で、また重合性に優れている上に、膜の硬度なども充分であることが多い。特に、作成中の皮膚刺激性を抑制したい、あるいは硬い被膜を得たい時にはメタクリル基のものを用いると良く、逆に柔らかい被膜を得たい、あるいは低エネルギー量で効率よく重合させたい際には、アクリル基の物を用いるなど適宜調整することができる。
【0030】
また、真空成膜法による付加重合の成膜硬化に際しては、粘度や組成に因る部分はあるものの、付加重合可能性官能基を有するフッ素化合物を減圧下(又は真空下)で加熱することにより、気化若しくは霧化させることが可能である。気化乃至霧化させるには、公知の加熱方式が適宜採用でき、限定するものではないが、例えば、熱樽内壁にスプレー式ノズルで噴霧するなどが簡便で効率も良い。
【0031】
そして、それら気化乃至霧化したモノマーを真空チャンバー中の高分子基材1面へ送ることで、付加重合可能性官能基を有するフッ素化合物をコーティング、成膜することができる。
【0032】
さらに、高分子基材1面に成膜されたフッ素化合物を、熱板、熱ロール、加熱用ランプのうちのいずれか1種の熱源を用いて加熱することにより付加重合反応が起き、高分子基材1面に成膜されたフッ素化合物の薄膜を硬化させることができる。
【0033】
一般に、真空下(減圧下)では、熱伝導性が著しく優れないものであるため、コーティング成膜された層を加熱するためには、高分子基材1の裏面より、該高分子基材1を介して熱板若しくは熱ロールで直接熱するか、加熱用ランプ光源からの輻射熱による方法が望ましい。
【0034】
実際のところ、減圧下で加熱硬化を行う際は、高分子基材1からの再蒸発が最も懸念される事柄である。よって、さらに推奨するのは、好ましくは紫外線や電子線を照射することで付加重合反応を開始する方法がよい。この場合、発生する重合熱はあるものの、一般的な加熱方式よりも遥かに低温で重合反応が進行する。
【0035】
電子線を用いた場合、多くの付加重合反応が容易に進行するが、高分子基材1が大きく帯電し、あるいは該基材1への付加が大きいなどの問題がある。一方、紫外線を用いる場合には、開始剤が必要であり、成膜後の残留開始剤ブリードが懸念されるものの、帯電の
問題は大きく解消される。しかしながら、これら放射線硬化法は、それぞれの欠点を補うに値する魅力がある重合法であって、用途やフッ素化合物の反応性を考慮して用いると良い。
【0036】
放射線を用いることによる低温域での重合反応実現には、さらに副次的に利点がある。即ち、重合反応を低温で進行させることは、ラジカル重合などにおける素反応の一つである連鎖移動反応の起こる割合を低減させ、即ち、分子量分布は全体的に高い方へシフトして、低分子量成分が減少する。これはブリーディングの防止に寄与し、また機械的強度も発現する。
【0037】
また、本発明における真空成膜法による付加重合の成膜硬化手法では、粘度や分子量に因るものの、一般に無溶媒で成膜が可能であり、且つ成膜硬化の高速化が図れるため、製造コストが安く、且つ環境付加の小さい防汚フィルムを得ることができる。
【0038】
実際の防汚フィルムとしての使用については、これまでの一般的な防汚フィルムと同様に取り扱うことができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の具体的実施例を説明する。
【0040】
<実施例1>
高分子基材1として厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、図2に示すアクリル基末端フッ素化合物(化合物1)を含む混合物を真空成膜法にてコーティングして成膜し、即座に、該成膜に対して20Mradの電子線を照射して硬化処理を行ってフッ素型防汚層2を形成し、本発明の防汚フィルムを作製した。フッ素型防汚層2の膜厚は約0.05μmであった。
【0041】
<実施例2>
実施例1において、図2に示すアクリル基末端フッ素化合物(化合物1)に市販のベンゾフェノン系UV硬化開始剤を1%添加し、電子線の代わりに、120KWのメタルハライドランプによる紫外線を照射して硬化処理を行った以外は、上記実施例1と同様にして本発明の防汚フィルムを作製した。
【0042】
<実施例3>
実施例1において、図2に示すアクリル基末端フッ素化合物(化合物1)に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加(微粉末分散)し、電子線の代わりに熱ロールを用いて硬化処理を行った以外は、上記実施例1と同様にして本発明の防汚フィルムを作製した。
【0043】
<実施例4>
実施例1において、図2に示すアクリル基末端フッ素化合物(化合物1)の代わりにメタクリル基末端フッ素化合物(化合物2)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして本発明の防汚フィルムを作製した。
【0044】
<実施例5>
実施例1において、図2に示すアクリル基末端フッ素化合物(化合物1)の代わりにビニル基末端フッ素化合物(化合物3)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして本発明の防汚フィルムを作製した。
【0045】
<実施例6>
実施例1において、高分子基材1を厚さ100μmのトリアセチルセルロース(TAC)とし、該高分子基材1として反射防止層(AR)を設けたものを用いた以外は、上記実施例1と同様にして、該反射防止層(AR)面にフッ素型防汚層2を形成して本発明の防汚フィルムを作製した。
【0046】
<比較例1>
実施例1において、フッ素型防汚層2を真空成膜法にてコーティングして成膜し、硬化処理を行って形成する代わりに、一般の防汚フィルム用フッ素樹脂をグラビアコーティング法により塗工して、膜厚約0.2μmの防汚層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例の防汚フィルムを作製した。塗工法(グラビアコーティング法)では、膜厚0.05μmの極薄の防汚層の形成は困難であった。
【0047】
<比較例2>
実施例6において、フッ素型防汚層2を真空成膜法にてコーティングして成膜し、硬化処理を行って形成する代わりに、一般の防汚フィルム用フッ素樹脂をグラビアコーティング法により塗工して、膜厚約0.2μmの防汚層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例の防汚フィルムを作製した。塗工法(グラビアコーティング法)では、膜厚0.05μmの極薄の防汚層の形成は困難であった。
【0048】
<比較例3>
実施例1〜5にて使用した高分子基材1(厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の片面にフッ素型防汚層2を全く形成せずに比較例のフィルムとした。
【0049】
<評価>
・接触角:濡れ接触角の測定(計測器:共和界面科学社製)、超純水を用いて防汚層面に対する濡れ接触角を計測
・油性ペン筆記性:ゼブラ社製 マッキー使用。
・指紋拭取性:鼻の脂を含んだ指紋を付け、キムワイプにて拭き取りを行った。
・初期タック:成膜直後のタックを評価
・反射防止性:実施例6及び比較例2のみ実施。蛍光灯の映り込みを目視評価。
【0050】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

表1によれば、実施例1〜6により得られた各々本発明の防汚フィルムと、比較例1〜2により得られた比較例の各々防汚フィルムの超純水による接触角は、比較例3を除いていずれも105度以上であり、撥水性があって、防汚フィルムとして物性、性能は良好であった。
【0052】
また、実施例1〜6により得られた各々本発明の防汚フィルムと、比較例1〜2により得られた比較例の各々防汚フィルムの油性ペン筆記性は、比較例3を除いて、インキを弾き、油性ペンに対する筆記性は無く、防汚フィルムとして物性、性能は良好であった。
【0053】
また、実施例1〜6により得られた各々本発明の防汚フィルムと、比較例1〜2により得られた比較例の各々防汚フィルムの指紋拭取性は、比較例3を除いて、3回程度の拭き取り操作によって容易に指紋を拭き取ることができ、従来の防汚コーティングとほぼ同等の防汚性能を有していると云える。
【0054】
また、実施例1〜6により得られた各々本発明の防汚フィルムと、比較例1により得られた比較例の防汚フィルムは、防汚層の成膜直後に硬化するため、初期タックがなく、取扱性が良好であった。
【0055】
また、実施例6により得られた本発明の防汚フィルムの反射防止性は、圧倒的に良好であった。これは実施例1〜6による本発明の防汚フィルムの作製においてフッ素系防汚層2の薄膜化が可能となったために、該フッ素系防汚層2下層の反射防止層による反射防止機能が損なわれないためである。
【0056】
また、防汚フィルムの作製材料費については、実施例1〜6が、比較例1〜3の防汚フィルム作製材料費の20分の1で済んだ。これは実施例1〜6によって、フッ素系防汚層が薄膜化できる点と、防汚層の成膜用の薬剤が安価に入手できることによる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の防汚フィルムの一例を説明する積層断面図。
【図2】本発明の防汚フィルムにおける各種フッ素系防汚層を形成するための化合物の化学構造式。
【符号の説明】
【0058】
1…高分子基材層 2…フッ素系防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ6μm以上の高分子基材の少なくとも片面に、真空成膜法により成膜硬化させたフッ素系防汚層を設けたことを特徴とする防汚フィルム。
【請求項2】
前記高分子基材が、ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち、少なくとも一つを成分に持つ又は/及び共重合成分に持つ基材であることを特徴とする請求項1記載の防汚フィルム。
【請求項3】
前記高分子基材が、ポリオレフィン、各種ビニル化合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールのうち、少なくとも一つを成分に持つ又は/及び共重合成分に持つ基材を積層した積層基材であることを特徴とする請求項1記載の防汚フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち、少なくとも一つ以上を成分に持つ又は/及び共重合成分に持つことを特徴とする請求項2又は3記載の防汚フィルム。
【請求項5】
前記フッ素系防汚層が、付加重合性官能基を有するフッ素化合物を成分に持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の防汚フィルム。
【請求項6】
前記付加重合性官能基が、ビニル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを含むことを特徴とする請求項5記載の防汚フィルム。
【請求項7】
前記真空成膜法によるフッ素系防汚層の成膜硬化方法が、熱板、熱ロール、加熱用ランプのうちの一種以上の熱源による加熱をエネルギー源とする付加重合反応であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の防汚フィルム。
【請求項8】
前記真空成膜法におけるフッ素系防汚層の成膜硬化方法が、放射線照射をエネルギー源とする付加重合反応であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の防汚フィルム。
【請求項9】
前記放射線照射が、紫外線又は/及び電子線の照射であることを特徴とする請求項8記載の防汚フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載の防汚フィルムを用いて得られることを特徴とする防汚フィルム適用部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28281(P2006−28281A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206876(P2004−206876)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】