説明

防汚化合物およびその使用

本発明は、特に海洋環境での汚損を防止または低減する方法における、下記一般式(I)(式中、R1およびR2は、独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいC1〜C12アルキルおよびHから選択され;R3およびR4は、独立して、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1〜C6アルキル、置換されていてもよいフェニルおよびHから選択される)を有する化合物の使用に関する。本発明の化合物は、有効な防汚効果を得るために銅添加への依存が高い既存技術に対する有機代替品を防汚塗料市場に提供するという、注目に値する利点を有する。本発明者らが開発した本化合物は、金属を含有しないことで海洋環境における毒性が低減された添加剤を安価で容易に調製するのに使用することができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚活性および/または抗菌活性を示す小分子、ならびに海洋環境での細菌性フィルム(bacterial films)および生物増殖の制御におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の海洋抗菌剤および防汚剤に代わる薬剤の探索の必要性が引き続き増大している。
【0003】
2001年10月に、国際海事機関(IMO)は、海洋塗料(marine coatings)における防汚剤として有機スズ種の使用を禁止する、船舶の有害な防汚方法の規制に関する国際条約(AFS条約)を採択した(Harino, 2007)。これにより、2003年以後は、スズをベースとする塗料は、ほとんどの主要塗料会社で製造中止となっている。
【0004】
その後生成された海洋塗料は、高濃度の銅系殺生物剤および/または殺生物助剤(booster biocides)を含有していたが、前記薬剤は農業目的で開発された非常に有毒な農薬である場合が多い。またこれらの添加剤も有害な副次的悪影響が環境中に蓄積することがわかっており、現在、ヨーロッパの多くの地域では規制されている(Bellas, 2006)。実際、新しい様々な防汚殺生物助剤に関する環境影響調査により、これらの錯体分子は、港湾水中で検出可能であるようにその分解性は期待したよりも低いであろうということが示唆されている(Voulvoulis, 2006)。
【0005】
現在市販されている海洋塗料は、次の2種類:防汚塗料(antifouling)および汚損除去塗料(foul-release)に分類することができる。防汚塗料は、酸化により汚損生物(foulers)を死滅させる、すなわち、より一般的には毒性金属イオンへ曝露することにより死滅させる、広域スペクトルの殺生物剤を使用する。汚損除去塗料は、主として除去の容易なシリコンベースのポリマーであるが、これらの最適な塗料は、通常、生物を死滅させる添加剤および触媒も含有している。毒性防汚剤(例えば、塗料中のトリブチルスズなど)の環境上許容できない結果認識に基づく法案および協定は、環境上さほど有害ではない新規塗料の開発に着目することを要求してきた。
【0006】
特許文献1でTeoら(本出願の発明者)により報告されている提案は、防汚剤としての医薬品の使用である。それには、医薬品が汚損生物の変態を抑制することが記載されている。合成、化学特性ならびに脊椎動物およびヒトにおける主要な作用機構が知られている市販の医薬品を防汚剤の有望なスクリーニング源としてスクリーニングした。生物活性が見込まれる8種類の医薬品が報告されているが、これらの医薬品は海洋環境に蓄積する可能性があるという問題が残っている。さらに、これらの医薬品の一部は海水中での溶解度が低いために、送達上の問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 11/265,833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、十分に生物活性があるだけでなく、海水中での送達が可能であり、かつ蓄積を回避できるような分解性のある、海洋抗菌剤および防汚剤が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
化合物
本発明は、一般に、下記の一般式(I):
【化1】

【0010】
(式中、
R1およびR2は、独立して、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいC1〜C12アルキルおよびHから選択され;
R3およびR4は、独立して、ヒドロキシ、場合により置換されていてもよいC1〜C6アルキル、場合により置換されていてもよいフェニルおよびHから選択される)
を有する、本明細書で「防汚アミド化合物」と呼ばれる化合物の種類に関する。
【0011】
本発明は、殺生物性特性または静生物性特性(biostatic properties)を示す、かかる防汚アミド化合物に関する。したがって本防汚アミド化合物は、「殺生物性化合物」または「静生物性化合物」と呼ぶこともできる。
【0012】
第1の態様では、本発明は、汚損を防止または低減する方法における式(I)で表される防汚アミド化合物の使用を提供する。
【0013】
本発明者らは、アミドの窒素がピペリジン環の一部であるアミド官能基が防汚活性(抗菌活性および抗定着活性(anti-settlement activity)の一方または両方を含む)と、好ましくはその化合物が公知の防汚化合物の代わりとして有望とされる分解レベルとを提供することができることを見出した。特に、本発明者らが研究した医薬品ロペラミドは上述のアミド-ピペリジン官能基を含んでいないので、その測定された活性は驚きである。
【0014】
適切には、R1およびR2は、独立して、アリール、C1〜C10アルキルおよびHから、好ましくはアリール、C1〜C8アルキルおよびHから、さらに好ましくはアリール、C1〜C6アルキルおよびHから選択される。また、アルキルは少なくともC2、好ましくは少なくともC3アルキルであるのが好ましい。また、R1およびR2は、独立して、アリール、C3〜C10アルキルおよびHから選択されるのが特に好ましい。いずれの場合にも、アリールまたはアルキルは置換されていてもよく、これは、本明細書で後に記載するこれらの基に適用される。
【0015】
アリールは、存在する場合、好ましくはC5〜C30アリール、さらに好ましくはC5〜C20アリール、さらに好ましくはC5〜C15アリール、さらに好ましくはC5〜C12アリール、さらに好ましくはC5〜C10アリール、さらに好ましくはC5〜C8アリール、さらに好ましくはC5〜C7アリール、最も好ましくはC6アリールであり、場合により置換されていてもよい。
【0016】
アリールは、カルボアリールまたはヘテロアリールであってもよい。好ましいのはカルボアリールである。
【0017】
特に好ましいアリールは、フェニルである。
【0018】
好適には、アリールは非置換である。
【0019】
好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つの基は、C1〜C12アルキルであり、さらに好ましくはC1〜C10アルキル、さらに好ましくはC1〜C8アルキル、最も好ましくはC1〜C6アルキルである。本発明者らは、α炭素上のアルキル鎖の存在により防汚活性を提供することができることを見出した。一部の好ましい実施形態では、アルキルは不飽和アルキルである。特に、好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つの基は不飽和C1〜C12アルキルであり、好ましくは不飽和C1〜C10アルキル、好ましくは不飽和C1〜C8アルキル、最も好ましくは不飽和C1〜C6アルキルである。したがって、好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つの基はC2〜C12アルケニルであり、さらに好ましくはC2〜C10アルケニル、さらに好ましくはC2〜C8アルケニル、最も好ましくはC2〜C6アルケニルである。実際に、本発明者らは、不飽和の追加で飽和アルキルに匹敵する活性が提供できることを見出した。
【0020】
かかる実施形態においては、好ましくは、アルケニル中に1つの二重結合があり、例えば、C1〜C10アルケニル中に1つの二重結合があるか、C1〜C6アルケニル中に1つの二重結合がある。好適には、前記二重結合はアルケニル基の末端、すなわち、Cn炭素とCn-1炭素の間にある。他の実施形態では、2つの二重結合が存在する。C5アルケニルおよびC6アルケニルが好ましい。特に好ましいアルケニルはC6アルケニルであり、最も好ましくは、5-ヘキセニル(-CH2-(CH2)3-CH=CH2)である。さらなる好ましいアルケニルは、-CH=CH-CH=CH-CH3である。しかしながら、飽和アルキル基が好ましい。
【0021】
好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つの基はC3〜C5アルキルである。本発明者らは、3〜5個の炭素原子を有するα炭素上のアルキル基が防汚活性を提供するだけでなく、海水中での望ましい溶解性および分解性を示すのに特に有用であることを見出した。
【0022】
好ましくは、R1およびR2の少なくとも1つの基はC4アルキルであり、さらに好ましくはn-ブチルである。本発明者が実施した研究において、α炭素上のC4アルキル基、特にn-ブチルが驚いたことに高レベルの防汚活性を提供し、かつ適切な速度で分解されることを突き止めた。
【0023】
好適には、R1およびR2の1つの基はアリール(好ましくはC5〜C15アリール、さらに好ましくはフェニル)であり、もう1つの基はC1〜C12アルキル(好ましくはC2〜C6アルキル、さらに好ましくはn-ブチル)である。本発明者らが実施した試験において、この置換パターンで望ましい防汚活性レベルが可能となることが証明されている。
【0024】
R1およびR2の各基はHであってもよいが、R1およびR2がHでないことが好ましい。この点について、本発明者らは、α炭素での二置換が望ましいことを見出している。
【0025】
好ましくは、R1およびR2は同一である。最も好ましくは、R1およびR2は両方ともn-ブチルである。本発明者が実施した防汚試験では、α炭素でのn-ブチル二置換が優れた防汚活性を提供する。特に、広範囲の抗菌活性が抗定着活性とともに認められた。さらに、高い治療可能比(TR)値が得られたが、このことは、かかる化合物が有用な防汚効果は提供する一方で、毒性が比較的低レベルであることを示している。
【0026】
好ましくは、R1およびR2の1つまたは両方の基は非置換である。最も好ましくは、両方が非置換である。したがって、R1およびR2は置換可能であるが、本発明者らは、防汚効果および分解性の点での最高の包括的性能は置換なしで達成されると考える。特に、ハロゲン置換基が存在しないということが、特に本化合物の分解性の観点から極めて望ましいことが分かった。同様に、ヒドロキシ置換基が存在しないことも好ましい。
【0027】
好ましくは、R1およびR2の1つまたは両方の基は飽和である。最も好ましくは、両方の基が飽和である。
【0028】
他の好ましい実施形態では、R1およびR2は両方ともフェニルである。この置換パターンを有する化合物は、広範囲の細菌に対する抗菌活性および抗定着活性を示すことが分かった。この好ましい配置に関しては、毒性が比較的低レベルであることも確認されている。
【0029】
特定の好ましい実施形態では、R3およびR4の1つの基がヒドロキシルであり、他の基がHである。より一層好ましい実施形態では、R3およびR4は両方ともHである。
【0030】
他の好ましい実施形態では、R3およびR4の1つの基は置換C1〜C6アルキルである。特に好ましくはヒドロキシ-C1〜C6アルキルであり、好ましくは-CH2CH2OHである。好適には、R3およびR4の他の1つの基はHである。
【0031】
好ましくは、R3およびR4の1つまたは両方の基は非置換である。最も好ましくは、両方が非置換である。したがって、R1およびR2は置換可能であるが、本発明者らは、防汚効果および分解性の点で最高の包括的性能は置換なしで達成されると考える。特に、ハロゲン置換基が存在しないということが、特に本化合物の分解性の観点から極めて望ましいことが分かった。
【0032】
置換基の特に好ましい組み合わせは以下のとおりである:
(i) R1およびR2の少なくとも1つの基がn-ブチルである
(ii) R3およびR4の両方がHである。
【0033】
R1およびR2の1つの基だけがn-ブチルである場合のかかる好ましい組み合わせにおいて、他の1つの基はアリール、好ましくはC5〜C15アリール、さらに好ましくはフェニルであることが好ましい。
【0034】
最も好ましい化合物においては、置換基のいずれもがフェニルではなく、好ましくは、置換基のいずれもがアリールではない。
【0035】
好適には、本化合物は、化合物12.2、12.1、12.7、12.4、12.5、12.6、12.8、12.9、12.10、12.11、12.12、11.1、11.4、4.1、9.3、4.5、4.3、10.5、10.1、10.7、10.3および10.4から選択される。好ましくは、本化合物は、化合物12.2、12.1、12.7、12.4、12.5、12.8、12.9、12.10、12.11、12.12、11.1、11.4、4.1、9.3、4.5、4.3、10.5、10.1、10.7、10.3および10.4から選択される。さらに好ましくは、本化合物は、化合物12.2、12.1、12.7、12.4、12.8、12.9、12.10、12.11、12.12、11.1、11.4、4.1、9.3、4.5、4.3、10.5、10.1、10.7、10.3および10.4から選択される。特に好ましいのは、化合物12.2、12.1、12.7、12.4、12.8、12.9、4.1および10.4である。とりわけ好ましいのは、化合物12.1、12.2、12.4、12.7および12.8、さらに好ましくは、化合物12.1および12.2、最も好ましくは化合物12.2である。またとりわけ化合物4.1も好ましい。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、汚損を防止または低減する方法における、4.7、5.1、5.2、5.3、9.1、10.3、10.4、10.2、10.1、10.7、10.8、10.6、3.2、10.5、10.9、3.3、3.4、4.4、4.6、4.1、4.2、9.3、9.2、4.5、4.3、8.1、12.1、12.2、12.4、12.7、12.3、12.8、12.9、12.10、12.11、12.12、11.2、11.1、11.3および11.4から選択される化合物の使用を提供する。特に好ましいのは、化合物12.3および11.2、とりわけ化合物12.3である。実施形態において、本化合物は化合物11.1および11.3から選択される。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、汚損を防止または低減する方法における、化合物9.1、4.7、5.1、5.2、5.3、10.2、10.8、10.6、3.2、10.9、3.3、3.4、4.4、4.6、4.2、9.2、8.1、11.2および11.3から選択される化合物の使用を提供する。
【0038】
この態様では、化合物9.1、9.2、4.7、5.1、5.2、5.3、3.4、4.4、4.2および11.2が特に好ましい。とりわけ、化合物9.1、4.7、5.1、5.2、5.3および4.4が好ましい。
【0039】
さらなる態様では、本発明は新規化合物5.2を提供する。この化合物は、汚損を防止または低減する方法における適用を有する。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、基体(substrate)に本明細書に記載の防汚アミド化合物を適用するステップを含む、基体の汚損を防止または低減する方法を提供する。
【0041】
好適には、防汚アミド化合物は、汚損を防止または低減するのに有効な量と濃度で適用される。好ましくは、防汚アミド化合物は標準濃度で提供される。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む防汚組成物を提供する。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、防汚アミド化合物を含むコーティング組成物を提供する。好適には、塗料組成物は従来の添加剤、例えば結合剤を含む。好適には、コーティング組成物は塗料組成物(paint composition)である。例えば、前記組成物はアクリレート樹脂を含んでいてもよい。好適には、コーティング組成物は、自己研磨型ペイント剤、好ましくはアクリル系自己研磨型ペイント剤、またはシリコーン塗装剤である。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含むコーティング剤を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、コーティング剤が適用されている基体であって、コーティング剤が本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、前記基体を提供する。例えば、基体は船舶、例えばボートであってもよい。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、静菌性組成物を提供する。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、殺菌性組成物を提供する。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、殺生物性組成物を提供する。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、静生物性組成物を提供する。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の防汚アミド化合物を含む、防汚組成物を提供する。
【0051】
これらの任意の態様のオプションで好ましいいずれか1種または複数の特徴は、他の態様のいずれか1つに、単独で、または組み合わせて適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
化学用語
本明細書で使用されている「飽和」という用語は、いかなる炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合も有していない化合物および/または基を意味する。
【0053】
本明細書で使用されている「不飽和」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物および/または基を意味する。化合物および/または基は、部分的に不飽和であってもよいし、完全不飽和であってもよい。
【0054】
本明細書で使用されている「カルボ(carbo)」、「カルビル(carbyl)」、「ヒドロカルボ」および「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子および水素原子のみを有する化合物および/または基を意味する。
【0055】
本明細書で使用されている「ヘテロ」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、多価ヘテロ原子(これは環ヘテロ原子としても好適である)、具体的には、ホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、硫黄およびセレン(より一般的には窒素、酸素および硫黄)、並びに1価のヘテロ原子、具体的には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を有する化合物および/または基を意味する。
【0056】
本明細書で使用されている「置換されていてもよい」という句は、非置換であってもよいし、置換されていてもよい親基を意味する。
【0057】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される「置換(されている)」という用語は、1個または複数の置換基を有する親基を意味する。「置換基」という用語は、本明細書では従来の意味で使用されており、親基に共有結合で結合されているか、必要に応じて縮合されている化学成分を意味する。様々な置換基が知られており、それらの形成方法、および、様々な親基への導入方法もまた公知である。
【0058】
アルキル:本明細書で使用されている「アルキル」という用語は、(別段の定めがない限り)1〜20個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる1価の成分を意味し、それは脂肪族であっても、脂環式であってもよく、また飽和であっても不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)であってもよい。したがって、「アルキル」という用語には、以下に記載されている、サブ分類のアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルなどが含まれる。
【0059】
アルキル基に関して、接頭語(例えばC1〜C4、C1〜C5など)は、炭素原子数、または炭素原子数の範囲を示す。例えば、本明細書で使用されている「C1〜C4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキル基の群の例としては、C1〜C4アルキル(「低級アルキル」)およびC2〜C6アルキルが挙げられる。第1接頭語は他の限定により代わる可能性がある;例えば、不飽和アルキル基については、第1接頭語は少なくとも2でなければならず;環状および分岐アルキル基については、第1接頭語は少なくとも3でなければならないといったことに注意されたい。
【0060】
(非置換)飽和アルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)およびヘキシル(C6)が挙げられる。
【0061】
(非置換)飽和直鎖アルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)およびn-ヘキシル(C6)が挙げられる。
【0062】
(非置換)飽和分岐アルキル基の例としては、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)およびネオ-ペンチル(C5)が挙げられる。
【0063】
アルケニル:本明細書で使用されている「アルケニル」という用語は、1個または複数の炭素−炭素二重結合を有しているアルキル基に関する。アルケニル基の群の例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが挙げられる。
【0064】
(非置換)不飽和アルケニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)およびヘキセニル(C6)が挙げられる。
【0065】
ヒドロキシ-C1-C6アルキル:本明細書で使用されている「ヒドロキシC1-C6アルキル」という用語は、少なくとも1個の水素原子(例えば1、2、3個)がヒドロキシ基で置換されているC1-C6アルキル基を意味する。こうした基の例としては、これらに限定されるものではないが、-CH2OH、-CH2CH2OHおよび-CH(OH)CH2OHが挙げられる。
【0066】
水素:-H。特定位置の置換基が水素である場合、都合が良いのは、その位置で「非置換」である場合の化合物または基を表すと言ってよいことに注意されたい。
【0067】
アリール:本明細書に使用している「アリール」という用語は、(別段の定めがない限り)芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる1価の成分であって、その成分が3〜20個の環原子を有しているものを意味する。好ましくは、各環は5〜7個の環原子を有する。
【0068】
これに関して、接頭語(例えば、C3-20、C5-7、C5-6など)は、炭素原子またはヘテロ原子にかかわらず、環原子の数、または環原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書に使用されている「C5-6アリール」という用語は、5または6個の環原子を有するアリール基を意味する。アリール基の群の例としては、C3-20アリール、C5-20アリール、C5-15アリール、C5-12アリール、C5-10アリール、C5-7アリール、C5-6アリール、C5アリールおよびC6アリールが挙げられる。
【0069】
これらの環原子は、「カルボアリール(carboaryl)基」のように、全てが炭素原子であってもよい。カルボアリール基の例としては、C3-20カルボアリール、C5-20カルボアリール、C5-15カルボアリール、C5-12カルボアリール、C5-10カルボアリール、C5-7カルボアリール、C5-6カルボアリール、C5カルボアリールおよびC6カルボアリールが挙げられる。
【0070】
カルボアリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)およびピレン(C16)から誘導されるものが挙げられる。
【0071】
縮合環(その少なくとも1つは芳香族環である)を含むアリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、インダン(例えば2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)およびアセアントレン(C16)から誘導されるものが挙げられる。
【0072】
あるいは、これらの環原子は、「ヘテロアリール基」のように、1個または複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロアリール基の例としては、C3-20ヘテロアリール、C5-20ヘテロアリール、C5-15ヘテロアリール、C5-12ヘテロアリール、C5-10ヘテロアリール、C5-7ヘテロアリール、C5-6ヘテロアリール、C5ヘテロアリールおよびC6ヘテロアリールが挙げられる。
【0073】
ハロ(またはハロゲン):-F、-Cl、-Brおよび-I。
【0074】
ヒドロキシ:-OH。
【0075】
他の用語
本明細書では、「汚損(fouling)」という用語は、液体媒体(例えば、水性溶媒)に露出または浸漬されている基体への微生物および微小生物(small organisms)の付着および増殖、並びに、液体媒体のコンテナ(container)中の微生物および/または微小生物の数の増加を意味する。
【0076】
したがって、「汚損生物(foulers)」または「汚損微生物(microfoulers)」は同義で使用され、基体を汚損する生物を意味する。汚損は、真水および海水に露出または浸漬されている構造物で生じ得る。特に、この用語は、海水に露出または浸漬されている固体媒体または基体を意味するのに使用することもある。
【0077】
したがって、「防汚」という用語は、汚損を防止、低減および/または除去する効果を意味する。防汚剤(antifouling agents)または防汚化合物は、「防汚処理剤(antifoulants)」とも呼ばれる。
【0078】
防汚処理化合物は、通常、その目的に有効な濃度である標準濃度で適用される。したがって、標準濃度未満または以下の濃度は、単独で使用した場合に防汚処理に効果がない濃度である。
【0079】
本明細書で使用されている「基体(substrate)」という用語は、液体媒体に露出または浸漬されている構造物または船舶の表面などの固体媒体を意味する。液体媒体は真水または海水であってもよく、人工コンテナ(例えば、ボトル、プールまたはタンク)中の水そのものであり得るか、液体は、外海の海水など、いかなる人工コンテナにも収容されないものであり得る。
【0080】
本明細書で使用されている「構造物」とは、自然の地質構造物または人工構造物(例えば、桟橋または油田掘削装置)を意味し、「船舶」という用語は、ボートや船などの水中で使用される人工的乗船物を意味する。
【0081】
本明細書に記載されている「微生物」としては、ウイルス、細菌、真菌、藻類および原生動物などが挙げられる。本明細書で記載されている「微小生物」としては、一般に、真水または海水に露出または浸漬されている基体を汚損する生物が挙げられ、例えば、甲殻類、コケムシおよび軟体動物などの特に基体に付着するものである。かかる微小生物の例としては、フジツボおよびムラサキイガイならびにそれらの幼生が挙げられる。微小生物は、微小動物と呼ぶこともできる。したがって、本明細書に記載されている「生物」という用語は、そのように理解され、微生物および微小生物を含んでいる。
【0082】
本明細書で使用されている「海洋生物」という用語は、その自然生息地が海水である生物を意味する。したがって、「海洋微生物」および「海洋微小生物」という用語も理解されよう。
【0083】
さらに、「ミクロ汚損(microfouling)」という用語は、微生物による汚損を意味し、「マクロ汚損(macrofouling)」という用語は、微生物より大きな生物(例えば、上記で定義した微小生物)による汚損を意味する。
【0084】
「殺生物剤」または「殺生物性化合物」という用語は、微生物および微小生物を死滅させることによりそれらの増殖を阻害する化合物を意味する。「静生物性剤」または「静生物性化合物」という用語は、微生物または微小生物を必ずしも死滅させるのではなく、繁殖を防ぐことにより、それらの増殖を抑制する化合物を意味する。
【0085】
本明細書で使用されている「分解」という用語は、水(好ましくは海水)中での化合物の化学分解または化学修飾を意味する。
【0086】
本明細書で使用されている「増殖」という用語は、微生物および微小生物の数が増加すること、また、微小生物が幼生段階から成体段階まで成長することの両方を意味する。したがって、殺生物剤および静生物性剤は、液体そのものに、または基体表面に対する処理として施用し、微生物および微小生物の増殖を抑制することができる。そのため、殺生物剤および静生物性剤は防汚処理剤となり得て、バイオフィルム形成を防止、低減または除去することができる。
【0087】
したがって、「殺菌性」および「静菌性」という用語は、細菌に対する化合物の効果を意味する。
【0088】
本明細書で使用されている「生物活性」という用語は、生物、特に微生物または微小生物に対する所定の薬剤または化合物(例えば、殺生物性化合物または静生物性化合物)の効果を意味する。
【0089】
「バイオフィルム」とは、保護性および粘着性基質(matrix)の排出を特徴とする、微生物(通常は細菌または真菌)の複合凝集体である。またバイオフィルムは、表面付着、構造不均質性、遺伝的多様性、複合群生相互作用、および高分子物質の細胞外基質により特徴づけられる場合も多い。またバイオフィルムは、凝集していない細菌と比べると、基質が存在することで抗生物質に対する耐性が高い場合がある。
【0090】
使用、薬剤、化合物または組成物に関係する場合の「医薬(品)の」という用語は、ヒトまたは動物の疾患または障害の内科療法を意味する。したがって、医薬化合物は、ヒトまたは動物の疾患または障害の内科療法に使用される化合物である。
【0091】
本明細書では、抗汚損剤または化合物に関係する場合の「標準濃度」という用語は、その薬剤または化合物が単独で使用された場合に、対象とする微生物または微小生物に対する薬剤または化合物が有効である濃度を意味する。したがって、「有効な」という用語は所望の効果があることを意味し、「標準濃度未満の」という用語は、薬剤または化合物が単独で使用された場合に有効でない濃度を意味する。
【0092】
本発明者らは、US 11/265,833に記載した医薬化合物に関する構造・機能研究を実施した。本発明者らは、これらの分子を除去設計する(de-engineer)方法を開発し、これら研究から得られた構造活性関係に関する知見に基づき、親化合物に関するその防汚有効性が実質的または完全に保持されているか、それ以上となっており、それと同時に、水中での細菌分解が迅速になされるように化合物の構造がシンプル化されている、多数の化合物を合成した。
【0093】
具体的には、これら医薬品の構造・活性関係に関してより深い理解を得るため、本発明者らはそのうちの1つである塩酸ロペラミドを選択し、より詳しい研究を行った。
【0094】
塩酸ロペラミドは、水に対する可溶性はわずかであり、メタノール、イソプロピルアルコールおよびクロロホルムに可溶性である。これは分子量が513.51の白色〜黄色の粉末である。脊椎動物におけるその薬効は以下のとおりである:ロペラミドは腸壁のオピエート受容体に結合し、アセチルコリンおよびプロスタグランジンの放出を阻害する。またこれについては、急性および慢性下痢の対症コントロールが示唆されている(Kleemann, 2001; Budavari, 1996)。
【0095】
ロペラミドで確認された防汚効果に関与する薬理作用団の解明ができるように、構造誘導体の合成を行った。次いで、合成に関するさらなる研究から、コア構造の簡略化と、物理特性および化学特性の調整を実施した。
【0096】
本発明者らは、ロペラミドから誘導した30種以上の合成化合物を合成し、異なる3つのバイオアッセイを用いて、その抗菌活性および/または防汚活性について試験した。
【0097】
いくつかの合成化合物では、その化合物がロペラミドよりも有意に小型であり、それほど複雑でないにもかかわらず、抗菌活性および/または防汚活性が確認された。
【0098】
したがって、本発明はロペラミドを除去設計することにより誘導される多数の化合物であって、それらの化合物がロペラミドの生物活性の一部または全部を保持しているものを提供する。実際、驚いたことに、一部の化合物は、ロペラミド活性よりも高レベルを示す。
【0099】
さらに、本発明者らは、小さな構造上の変化が化合物の生物分解性を変える可能性があること、適切には環境中でこれらがより速く生物学的に分解される可能性が高くなることを見出した。
【0100】
このため、本発明者らにより同定された分子は、防汚剤または抗菌剤として使用が示唆されている既存の分子(医薬品を含む)とは異なり、生物活性だけでなく、構造上シンプル化されていて生物分解性である。したがって、これらの分子は、海洋生物増殖(marine growth)を防止するための様々な防汚用途において有用である。例えば、これらの分子は、添加剤として、海洋防汚コーティング剤、海水処理における殺生物剤、ならびに海水を使用する工程(例えば冷却塔)および脱塩における汚損の防止において使用することができる。
【0101】
さらに、いくつかの生物活性化合物は、ロペラミドと比較して水溶性も高かった。
【0102】
好ましい実施形態では、これらの分子は、早期の分解からは保護されるが、所定の目標時間で放出され、その後、環境中の細菌により分解されるように、コーティング剤に加えられる。当技術分野の読者は、用途の必要性に応じて、このように分子を送達する様々な方法がポリマー/コーティング化学の最新技術によって得られることを理解するであろう。
【0103】
好ましい実施形態では、これらの化合物は、海洋生物増殖の防止用防汚剤として従来の防汚コーティング剤へ加えられる。例えば、本化合物は既存のアクリレート系塗料へ混合することができ、したがって、現行のコーティングオプションに対する実際的な代替品である。特に、これらの化合物は、分解性の悪い既存の防汚殺生物剤の代替品として、既存のコーティング剤に含まれる既存の防汚殺生物剤の使用を減らし、かつ/または既存のコーティング剤を強化してパフォーマンスを改善するための環境的により安全な代替品として提案することができる。この点について、本化合物の多くは油性のものであり、コーティング(例えば、シリコンベースの汚損剥離コーティング)への混和に好適に適合する。実施形態において、この適合性がコーティングの有効性をさらに高め、その結果、コーティング基体の保護効果をますます高めることができる。
【0104】
さらに、これらの化合物は、従来の防汚コーティング中に存在する銅/金属を低減または置換し、それによって防汚コーティングの環境影響を低減させるように施用することができる。
【0105】
好適には、本化合物は、例えばバラスト水処理などの海水処理工程における海洋生物の除去において使用可能であり、また、冷却水および脱塩工程での海洋生物増殖をコントロールするために用いることができる。本化合物は、特に、環境汚染を防止するため、またコンプライアンス目的において活性剤の急速分解/除去が必要とされる方法に適する。
【0106】
抗菌活性および/または防汚活性を示す本化合物はすべてアミド類である。
【0107】
化合物の合成
本発明の化合物のいくつかの化学合成法を本明細書に記載する。これらの方法および/または他の公知の方法は、本発明の範囲内にあるさらなる化合物の合成を容易にするために変更可能であり、かつ/または公知の方法に適応される。
【0108】
本アミド類は、下記のようにアミドカップリング剤を使用して、対応するカルボン酸から非常に良好な収率で調製することができる。
【化2】

【0109】
あるいは、本アミド類は、塩基の存在下で対応する酸塩化物から調製することができる。
【化3】

【0110】
さらに、選択アミド類は、ジヒドロフラニニウム(dihydrofuraninium)塩の開環により合成した。
【化4】

【0111】
試験した本化合物の構造を下記に示す。
【表1】

【0112】

【0113】

【0114】

【0115】

【0116】

【0117】
これらの化合物は、細菌および/またはフジツボに対する生物活性について試験を行った。
【0118】
選択したアミド誘導体に関する合成方法およびデータ
化合物4.1 − 2,2-ジフェニル-1-(ピペリジン-1-イル)エタノン
【化5】

【0119】
アルゴン雰囲気下の新しい無水蒸留THF(10mL)中のカルボニルジイミダゾール(CDI)(0.35g、2.14mmol)の溶液に、ジフェニル酢酸(454mg、2.14mmol)を加えた。反応混合物を1時間室温で撹拌し、その後、0℃に冷却し、THF(5mL)中のピペリジン(0.2mL、1.98mmol)を加えた。反応混合物を撹拌しながら室温で16時間置いた。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)に注ぎ入れ、ジクロロメタン(25mL)を加えた。有機層を分離させ、水相をジクロロメタン(2×25mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。
【0120】
粗生成物をアセトンから再結晶させ、白色結晶として72%の収率で単離した。
【0121】
1H NMR (CDCl3 ):δ 6 1.20 (m, 2H, CH2); 1.48 (m, 4H, CH2); 3.33 (m, 2H, CH2); 3.55 (m, 2H, CH2); 5.15 (s, 1H, C(O)CH); 7.16-7.24 (芳香族CH)。
【0122】
13C NMR (CDCl3):δ 24.5 (ピペリジンCH2);25.6 (ピペリジンCH2);26.1 (ピペリジンCH2);43.4 (ピペリジンCH2);47.1 (ピペリジンCH2);54.8 (C(O)CH);126.9 (芳香族CH×2);128.4(四級芳香族C);128.5 (芳香族CH×4);129.0 (芳香族CH×4);139.7(四級芳香族C);170.0(四級CO)。
【0123】
EIMS: m/z 279 (4%, M+); 226 (3%); 167 (27%); 112 (43%); 68 (100%)。
【0124】
HREIMS: m/z M+ 279.1628 (C19H21NOの計算値 279.1623)
融点:119.6〜120℃。
【0125】
赤外線νmax (KBr): 1637 s, 1493 w, 1435 m, 1357 w, 1278 w, 1250 m, 1219 m, 1135 w, 1017 m, 757 m, 709 s, 622 m cm-1
【0126】
分析:C19H21NOの計算値:C, 81.68, H, 7.58, N, 5.01。実測値:C, 81.73, H, 7.31, N, 5.12。
【0127】
化合物12.1 − 2-フェニル-1-(ピペリジン-1-イル)ヘキサン-1-オン
【化6】

【0128】
0℃、アルゴン雰囲気下の新しい無水蒸留THF(10mL)中の2-フェニル-1-(ピペリジン-1-イル)エタノン(1g、4.92mmol)の溶液に、2.5Mのn-ブチルリチウム(3.94mL、9.84mmol)を加え、続いて、THF(5mL)中のブロモブタン(0.674g、.53mL、4.92mmol)の溶液を滴下添加した。反応混合物を室温で一晩まで加温した後、3Nの塩酸(10mL)およびジエチルエーテル(10mL)を添加し、分液漏斗を使用してそれらの層を分配した。水層を単離し、ジエチルエーテル(2×20mL)で洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で溶媒を除去して粗生成物を得た。
【0129】
表題生成物は、石油スピリット中2%〜10%の酢酸エチル溶媒勾配を使用するフラッシュシリカカラムクロマトグラフイーにより精製し、54%の収率で無色油状物として単離した。
【0130】
1H NMR (CDCl3):δ 0.86 (t, J=8Hz, 3H, 末端CH3); 0.99 (m, CH2); 1.16 (m, CH2); 1.18-1.46 (m, CH2); 1.51 (m, CH2); 1.60 (m, CH2); 1.69 (m, CH2);2.09 (m, CH2); 3.37 (t, J= 8Hz, N-CH2); 3.42 (m, 四級CH); 3.68 (m, CH2); 7.19-7.33 (m, 芳香族CH)。
【0131】
13C NMR (CDCl3):δ 14.0 (CH3); 22.7 (CH2); 24.6 (CH2); 25.5 (CH2); 26.0 (CH2); 30.1 (CH2); 34.8 (CH2); 43.1 (N-CH2); 46.6 (N-CH2); 48.8 (CH); 126.6(芳香族CH);127.8(芳香族CH);128.6(芳香族CH);140.9(四級芳香族C);171.3(カルボニルC)。
【0132】
ES+MS: m/z 260 (M + H, 67%); 282 (M + Na, 100%)。
【0133】
EIMS: m/z 259 (6%, M+); 216 (16%, M+-Pr); 203 (47%, M+-Bu); 112 (100%); 91 (30%); 69 (32%)。
【0134】
化合物12.2 − 2-ブチル-1-(ピペリジン-1-イル)ヘキサン-1-オン
【化7】

【0135】
アルゴン雰囲気下の新しい無水蒸留THF(20mL)中のジ-イソ-プロピルアミン(0.92mL、6.55mmol)の溶液に、-78℃で2.5Mのn-ブチルリチウム(2.62mL、6.55mmol)を加えた。反応混合物をこの温度で10分間撹拌した。この溶液に、1-(ピペリジン-1-イル)ヘキサン-1-オン(1.0g、5.46mmol)を加え、溶液を-78℃で1時間撹拌した。ブロモブタン(0.59mL、5.46mmol)を加え、溶液を-78℃で1時間撹拌した後、一晩かけて室温にした。3N 塩酸(10mL)をこの反応混合物に加え、その後、ジエチルエーテル(20mL)を添加し、分液漏斗を使用して各層を分配した。水層を単離し、ジエチルエーテル(2×20mL)で洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を得た。
【0136】
表題生成物をフラッシュシリカカラムクロマトグラフイー(石油スピリット中20%酢酸エチル、Rf 0.7)により精製し、48%の収率(回収した出発物質基準)で無色油状物を得た。
【0137】
1H NMR (CDCl3):δ 0 0.87 (t, 6H, J = 7Hz, 2 x CH3); 1.28 (m, CH2); 1.42 (m, CH2); 1.56 (m, CH2); l.65 (m, CH2); 2.63 (m, 1H, CH); 3.48 (t, 2H, J = 6Hz, NCH2); 3.6 (t, 2H, J =6Hz, NCH2)。
【0138】
13C NMR (CDCl3):δ 14.1 (2 x CH3); 22.9 (CH2); 24.8 (CH2); 26.0 (CH2); 26.9 (CH2); 29.9 (CH2); 32.9 (CH2); 40.7 (CH); 42.9 (N-CH2); 46.8 (N-CH2); 174.6(四級CO)。
【0139】
EIMS: mlz 239 (6%, M+); 224 (2%, M+-Me); 210 (7%); 196 (24%); 183 (63%); 154 (13%); 140 (100%); 127 (32%); 112 (24%)。
【0140】
HREIMS: mlz M+ 239.2219 (C15H29NOに関する計算値 239.2249)。
【0141】
化合物4.2 − 1-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2,2-ジフェニルエタノン
【化8】

【0142】
無水THF(15mL)中のCDI(0.77g、4.72mmol)の溶液に、ジフェニル酢酸(1g、4.71mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、0℃に冷却し、THF(10mL)中のN-メチルピペラジン(0.5mL)を加えた。この反応混合物を撹拌しながら室温に16時間置いた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)に注ぎ入れ、ジクロロメタン(25mL)を加えた。有機層を単離させ、水相をジクロロメタン(2×25mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。
【0143】
生成物をアセトンから再結晶させ、88%の収率で白色結晶として単離した。
【0144】
1H NMR (CDCl3):δ 1.79 (m, 2H, CH2); 2.06 (m, 2H, CH2); 2.18 (s, 3H, NCH3); 2.32 (m, 2H, CH2); 3.41 (m, 2H, CH2); 3.67 (m, 4H, CH2); 5.12 (s, 1H, C(O)CH); 7.14-7.34 (m, 10H, 芳香族H)。
【0145】
13C NMR (CDCl3):δ 42.1; 45.8; 54.5; 54.7; 54.9; 121.4; 126.5; 127.1; 128.4; 128.5; 128.6; 129.0; 134.9; 139.2; 170.5 (CO)。
【0146】
ESIMS: m/z 295 (100%, [M+H]+); 296 (22%); 363 (16%)。
【0147】
ElMS: m/z 294 (100%, M+); 251(15%); 165 (74%); 127 (85%)。
【0148】
HREIMS: m/z M+ 294.1731 (C19H22N20に関する計算値 294.1732)。
【0149】
融点:129.5〜130.7℃。
【0150】
赤外線 νmax (KBr): 1628 s, 1493 w, 1461 m, 1433 m, 1292 m, 1230 m, 1172 w, 1042 w, 745 w cm-1
【0151】
分析:C19H22N20に関する計算値:C, 77.52, H, 7.53, N, 9.52。実測値 C, 77.19, H, 7.23, N, 9.45。
【0152】
化合物9.1 − N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-4-(ピペリジン-1-イル)ブタンアミド
【化9】

【0153】
ピペリジン(0.12mL、1.25mmol)、ジヒドロ-N,N-ジメチル-3,3-ジフェニル-2(3H)-フラニニウム(furaninium)ブロミド(0.485g、1.4mmol)、炭酸ナトリウム(0.25g、2.35mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(12.5mL)の混合物を80℃で8時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却させ、さらに16時間アルゴン雰囲気下で撹拌した。溶媒を減圧下で除去した後、水(10mL)およびクロロホルム(10mL)を添加し、分液漏斗を使用して各層を分配した。水層を単離し、クロロホルム(2×20mL)で洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空で除去し、粗生成物を得た。
【0154】
表題生成物をメタノールから再結晶により精製し、50%の収率で浅黄色結晶を得た。
【0155】
1H NMR (CDCl3):δ 1.34 (m, CH2); 1.48 (m, CH2); 1.68 (s, CH2); 2.03 (m, CH2); 2.27 (m, CH2); 2.33 (m, CH2); 2.45 (m, CH2); 2.97 (s, 6H, N-CH3); 7.24-7.28 (m, 芳香族CH);7.33-7.41(芳香族CH)。
【0156】
13C NMR (CDCl3):δ 24.4 (CH2); 26.0 (CH2); 39.1 (CH2); 42.0 (CH2); 54.6 (CH2); 56.5 (CH2);59.7 (四級C);126.6 (芳香族CH);128.1 (芳香族CH);128.3 (芳香族CH);141.0(四級芳香族C);173.5(カルボニルC)。
【0157】
ESIMS: m/z 351 (100%, M + H)。
【0158】
HR ESIMS: m/z M + H 351.24243 (C23H31N2Oに関する計算値 351.24381)。
【0159】
融点:166.7〜167.8℃。
【0160】
赤外線 νmax (KBr): 3434 w, 3050 m, 2923 s, 2841 m, 1637 s, 1487 m, 1447 m, 1378 s, 1269 m, 1153 s, 1115 s, 1032 m, 859 w, 765 s, 741 m, 702 s, 639 s, 584 w, 471 w cm-1
分析:C23H30N2Oに関する計算値:C, 78.82, H, 8.63, N, 7.99。実測値 C, 78.75, H, 8.86, N, 8.07。
【0161】
化合物5.2 − N,O-ジメチルロペラミド
塩酸ロペラミド(250mg、mmol)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.1eq、18mg、0.049mmol)、20%aq、NaOH(10ml)を含むDCM(15ml)の混合物に、ヨウ化メチル(5eq、2.45mmol、152μl)を加えた。この混合物を室温で2時間アルゴン下にて撹拌し、1N HCl(20ml)、水(20ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。次いで、シリカゲルショートカラム(DCM中10%MeOH) により精製した。ESI-MS分析は、モノ-およびジメチル化生成物の混合物を示した。次いで、この混合物を6時間同一相間移動条件下の過剰ヨウ化メチル(10eq)中で撹拌した。次いで、これを1N HCl(20ml)、水(20ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。
【0162】
精製をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM中0〜10%MeOH)により行い、ヨウ化物塩として2種のシス-トランス異性体を得た。
【化10】

【0163】
化合物5.2a
化合物5.2a (135mg、44%):m.p. 152〜154℃:νmax (cm-1): 3455, 3055, 3030, 2943, 2830, 1626, 1492, 1450, 1391, 1261, 1141, 1066, 1011, 890, 827, 754, 730, 703:δH (MeOH-d4, 400 MHz):2.16-2.23 (2H, m, 2xCH-7β), 2.27-2.31 (2H, m, 2xCH-7α), 2.35 (3H, br s, アミド NCH3-α), 2.75-2.79 (2H, m, CH2-3), 2.92 (3H, s, OCH3), 3.01 (3H, br s, アミド NCH3-β), 3.01-3.05 (2H, m, CH2-4), 3.05 (3H, s, N5-CH3), 3.35-3.41 (4H, m, 2xCH2-6), 7.39-7.53 (14H, m, 芳香族H);δC (MeOH-d4, 100 MHz):28.3 (CH2-7), 36.0 (アミド NCH3-β), 36.9 (CH2-3), 38.2 (アミド NCH3-α), 42.8 (N5-CH3) 48.9 (OCH3), 56.9 (CH2-6), 59.5 (C2), 67.0 (CH2-4), 72.5 (C8), 127.4 (2xC11), 127.5 (2xC10), 127.9 (4xC14), 128.4 (2xC16), 128.7 (4xC15), 133.7 (C12), 138.6 (2xC13), 140.0 (C9), 173.1 (C=O):m/z (ESI): 505.6 (100%, [M]+), 437.5 (14%), 415.4 (8%), 301.4 (9%), 266.3 (33%), 242.5 (40%), 155.2 (38%):HRMS 実測値 [M]+ 505.2617、C31H38CIN2O2には[M]+ 505.2616が必要:分析実測値 C, 56.35, H 5.76, N 4.01、C31H38CIN2O2-1.5H2Oに関する計算値ではC, 56.41, H 6.26, N 4.24が必要。
【化11】

【0164】
化合物5.2b
化合物5.2b (42mg, 14%):m.p. 62〜64℃;νmax (neat, cm-1) 3438, 3029, 2932, 1624, 1492, 1449, 1393, 1256, 1159, 1069, 1012, 917, 826, 703;δH (MeOH-d4, 400 MHz): 1.80-1.88 (2H, m, 2xCH-7α), 2.07-2.11 (2H, m, 2xCH-β), 2.34 (3H, br s, アミド NCH3-α) 2.64-2.68 (2H, m CH2-3) 2.94 (3H, s, OCH3), 2.98 (3H, br s アミド NCH3-β), 3.08 (3H, s, N5-CH3), 3.09-3.14 (2H, m, CH2-4), 3.39-3.42 (2H, m 2xCH-6α), 3.48-3.54 (2H, m, 2xCH-6β), 7.31-7.52 (14H, m, 芳香族H);δC (MeOH-d4, 100 MHz):28.5 (CH2-7), 36.0 (アミド NCH3-β) 37.4 (CH2-3), 38.2 (アミド NCH3-α), 49.0 (OCH3), 51.5 (N5-CH3), 55.0 (CH2-4), 56.4 (CH2-6), 59.7 (C2) 72.1 (C8), 127.3 (2xC11), 127.5 (2xC10), 127.9 (4xC14), 128.4 (2xC16), 128.8 (4xC15), 133.7 (C12), 138.8 (2xC13) 140.0 (C9) 172.9 C=O) m/z(ESI): 505.6 (100%, [M]+) 415.4 (3%) 266.3 (21%), 169.2 (8%) 155.2 (14%);HRMS 実測値 [M]+ 505.2610、C31H38CIN202には[M]+ 505, 2616が必要。
【0165】
選択化合物に関するCAS登録番号は以下のとおりである:化合物9.1は95434-06-3;化合物4.7は251106-04-4;化合物5.1は217471-03-9;化合物5.3は296777-82-7;化合物4.4は4972-68-3;および化合物4.6は6653-07-2。
【0166】
残りの化合物は、出発物質を適宜変更しつつ、上記の内容に対応する方法により製造した。
【0167】
生物学的調査−方法
生物学的調査では、各化合物の抗菌活性、並びに、タテジマフジツボ(バラヌス・アンフィトリット(Balanus amphitrite))ノープリウス(nauplii)の生存に対する各化合物の効果(「フジツボ毒性」という)、およびタテジマフジツボ(バラヌス・アンフィトリット(Balanus amphitrite))キプリス(cyprids)の定着に対する各化合物の効果(「抗定着特性」という)に着目した。後者はこの調査目的において特に重要である。
【0168】
抗菌アッセイ
細菌は海洋環境に非常に数多く存在する。これらの多くは、固体表面(これは、船体または他の水中物体などであってもよい)でバイオフィルムを形成する。一度バイオフィルムが形成されると、フジツボ、フナクイムシといった汚損マクロ生物の付着特性を変化させる可能性がある(Makiら, 1988; O'Connor, 1996; Makiら, 2000; HuangおよびHadfield, 2003)。微生物汚損には、表面上に細菌細胞が付着し、バイオフィルムを形成することが含まれる。まず細胞が付着した後、複数の細胞層がこの層上に形成され、バイオフィルムが形成されることになる。バイオフィルム内の生物は、抗生物質および洗浄剤に対して耐性が高い。
【0169】
この環境で使用される化学物質においては、細菌に対する活性には2つの意味がある。1つには、細菌活性はコーティング中の防汚剤の分解の原因となることが多く、その結果、生物分解が起こり、機能が低下する。またミクロ汚損細菌は、膜および熱交換器表面の汚損において深刻な問題でもある。新しい種類の抗菌活性は、水処理系において重要な用途を有する。もう1つは、環境上の観点から、海洋環境中へ処理される化学薬剤の永続的かつ強力な抗菌活性は自然界ミクロフローラに影響を及ぼすとともに、耐性のより強い細菌株が出現する可能性が高い。
【0170】
ミクロ汚損バイオフィルムで見つかった海洋細菌に対する本化合物の効果を検討した。ディスク阻害アッセイを用いた。このアッセイは、抗菌化合物のスクリーニングに用いられ、抗菌化合物に対する感受性の程度を測定する、慣例的に用いられている従来法である。阻害域の直径は、細菌株の感受性の程度に比例する。シンガポール沿海の海水から単離した海洋細菌13株に対して本化合物を試験した。
【0171】
海洋細菌13株をシンガポール周囲の沿岸海水中に存在する汚損群落から単離した。これらの細菌はこれまでの研究で特性決定されており、Teoら(米国特許出願第11/265,833号)およびChoongら(近刊)により報告されている。表1は、このアッセイで使用した株のリストを示す。さらに、次の4種類の比較細菌株を試験に加えた:大腸菌(K12株、ATCC 15222)、大腸菌(DH5a株)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(LMG 12228株; ATCC 15692)、およびシュードモナス・プチダ(P. putida)(KT2440株; ATCC 47054)。これらの細菌全部を、次の5種類の抗生物質に対して試験した:アンピシリン(AMP)、テトラサイクリン(TETR)、エリスロマイシン(ERY)、クロラムフェニコール(CHL)およびストレプトマイシン(STREP)。
【表2】

【0172】
供試化合物を含むディスクは以下のように調製した。抗菌アッセイの純粋な化合物をDMSO中2mgml-1濃度に調製した。1枚のディスク当たり50μgの化合物となるように、この保存液25μLを6mmの各滅菌ディスク(Macherey-Nagel #484000)上にピペットで移した。対照については、等量のDMSOを用いて接種した。
【0173】
全てのディスク阻害アッセイに関し、細菌培養はマリンブロス(Pronadisa #1217.00)中で増殖させた。培養物に浸漬させた滅菌綿球を使用し、マリンアガープレートへ表面上にその培養物を塗ることにより細菌叢を接種した。プレートに接種した後、抗生物質、医薬品群または対照ブランクを含んだディスクを各プレート上に置いた。抗生物質または医薬品のそれぞれ濃度を2連で試験した。ディスクをアガー表面に置いた後、プレートを35℃の暗所で一晩インキュベートした。インキュベーション後、対照ディスクおよび処理ディスク周囲の阻害ゾーンまたは透明ゾーンについてプレートを調べた。ノギスを用いて全ての透明または阻害ゾーンの直径を測定した。1つの処理につき2連で行い、平均を得た。アッセイ全てにおいて、対照ブランクの周囲に阻害ゾーンはなかった。
【0174】
防汚アッセイ
純粋化合物をDMSO中に懸濁し、超音波処理してDMSO中50mg ml-1の保存溶液を得た。この保存溶液を4mLのアンバースクリューキャップバイアルに入れ-20℃で保存する。このバイオアッセイについては、ガラスシンチレーションバイアルに入れた濾過海水1μmに少量の保存溶液を加えた。次いで、この懸濁液を約10分間超音波処理した。連続稀釈を必要な濃度範囲まで行った。同量のDMSOを含む海水の連続希釈液を対照として用いた。
【0175】
使用したフジツボバイオアッセイ法は、Rittschofらにより最初に紹介された方法(1992)、および続いて他の著者により紹介された方法(Willemsenら, 1998)に従う。この方法は、現在、新規化合物の多くの防汚スクリーニングの標準実施法である。
【0176】
毒性アッセイは、Rittschofら(1992)の方法を変更した。試験で用いる第2期ノープリウス(naupliar)幼生は、シンガポールのクランジ(Kranji)マングローブで潮間帯の岩壁から収集したタテジマフジツボ(Balanus amphitrite)成体から得た。点光源への誘引により幼生を成体のコンテナから収集し、500mLの新しい海水に移した。次に、幼生を光ファイバー光線で再収集し、アッセイに加えた。
【0177】
1mLの濾過海水の入った2mLガラスバイアル(La Pha Pack(登録商標) PN 11-14-0544)中で、2連のアッセイを22〜24時間行った。確認のため、このアッセイを繰り返した。対照は、海水のみのチューブ3本からなるブランク対照と、化合物を含まないDMSOを入れた同一希釈系列からなるDMSO対照の2セットである。化合物については、各試験濃度についてそれぞれチューブ3本であった。アッセイは、海水50μLにフジツボノープリウス(naupliar)を加えることにより開始した。25〜27℃で22〜24時間インキュベーションした後、試験動物を入れた溶液をBogorovトレーに移し、生存または死滅として記録した。瀕死状態の幼生は死滅として記録した。アッセイを繰り返すりことにより結果を確認した。データをまとめ、50%致死率を引き起こす濃度(LD50)を、ベーシックコンピュータプログラムを使用してプロビット解析により計算した(Libermann, 1983)。データがプロビット解析に適していなかった場合、LD50はグラフ表示データから推定した。
【0178】
フジツボ定着アッセイは、Rittschofら(1992)が考案した方法に基づいた。現場収集した成体から得たフジツボ幼生を、1:1 v/vのテトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)およびカエトセロス・ムエレリ(Chaetoceros muelleri)の藻混合物上で、25℃にて1mL当たり約5×105細胞の密度で生育させた。この方法では、幼生が5日でキプリス(cyprids)に変態する。これらのキプリスを4℃で2〜3日間生育させ、24時間後には45〜70%が定着した(Willemsenら, 1998)。
【0179】
定着試験は、1ウェル当たり20〜40匹のキプリスを入れた、7mLニュートラルガラスバイアル(Samco(登録商標) T1 03N1)34mm×直径23mmで行った。試験液は、必要最終濃度に2回調製した。0.5mLの試験液を各ウェルへ加え、海水0.5mLを入れた各ウェルへキプリスを移した。アッセイは3連で行った。対照は、前に記載したように、海水のみのチューブ3本からなるブランク対照と、化合物を含まないDMSOを入れた同一希釈系列からなるDMSO対照の2セットであった。24時間後、付着し変態した幼生を数え、結果を定着率として示した。付着していない幼生は、定着無として記録した。このアッセイを繰り返し、50%定着阻害率を引き起こす濃度(ED50)を、ベーシックコンピュータプログラムを使用してプロビット解析により計算するか(Libermann, 1983)、グラフ表示データから推定した。
【0180】
致死量(LD50、毒性)および有効量(ED50、抗定着)の値を下記に示す。試験した最高濃度である50μg mL-1よりもLD50およびED50が共に大きかった化合物は下記の表には含まれておらず、これらは「不活性」と考えられる。
【0181】
治療可能比(すなわちLD50/ED50)は、その毒性と関連させて本化合物の有効性を判定するために用いられる。
【0182】
生物学的調査−結果
結果を表2(a)および(b)にまとめる。活性がある場合、ディスク周囲に透明域が認められる。認められた阻害域の幅が本化合物の有効性およびその溶解性(すなわち、ディスクから外への、またアガー培地中への本化合物の拡散程度)の作用である。本化合物はいずれもS14株に対してはいかなる活性も示さず、S1株に対してはただ1つの化合物(化合物5.2)が活性を有していた。大部分の菌株については、ロペラミドおよびイモジウム(Imodium)(登録商標)に検出される活性がある場合、化合物12.1、12.2に、また大抵の場合4.1に、またロペラミド類似体4.7、5.2、5.3にも活性が検出された。α炭素の分岐鎖を除去した場合(化合物3.2、10.5、11.1、11.2、11.3および11.4)、または両フェニル環をメチル置換基で置換した場合(化合物10.1および10.2)、S16株を除き、抗菌活性の消失が認められた。S16株は他の本化合物に比べて著しく異なる配置に影響を受けやすかった。これは異なる薬理作用団に応答している可能性があることを示唆している。他の全ての菌株とは異なり、S16は単一アルキル鎖を有する化合物(化合物11.1、11.2および11.4)の影響を受けやすかった。配列の結果からは、S16はシュードアルテルモナス属の種(Pseudoalteromonas sp.)に属する。
【0183】
本化合物全部について、比較細菌株に対する阻害は認められなかった。このことは、これらの化合物で確認された抗菌活性が従来の抗生物質よりも低い可能性があることを示唆している。しかし、従来の抗生物質よりも低い活性レベルでありながら、なお有用な結果を提供することができることから、これは特に重要視はされない。
【表3】

【表4】

【0184】
阻害域は各ディスク周囲の透明領域を表し、そこでは細菌増殖は認められない。
【0185】
(-) 阻害域は認められなかった。試験化合物は、ディスクアッセイにおいて細菌に対する活性を示さなかった。
【0186】
(+) 各ディスクの周囲に2〜5mmの阻害域が認められた。
【0187】
(++) 5〜10mmの阻害域が認められた。
【0188】
(+++) 10mmよりも大きい阻害域が認められた。
【0189】
LOP=ロペラミド純粋化合物;
IMD=50ug有効成分を含むようにDMSO中に懸濁されたイモジウム(登録商標)。
【0190】
さらに、従来の抗生物質5種類について試験した。結果を表2(c)に示す。概して、本化合物は試験した抗生物質ほどの作用はなく、活性のパターンも異なっていた。
【表5】

【0191】
REF 1:大腸菌(K12株; ATCC 15222)
REF 2:大腸菌(DH5a株)
REF 3:シュードモナス・エルギノーサ(LMG 12228株; ATCC 15692)
REF 4:シュードモナス・プチダ(KT2440株; BCRC 10459)
AMP = アンピシリン
TETR = テトラサイクリン
ERY = エリスロマイシン
CHL =クロラムフェニコール
STREP =ストレプトマイシン
本化合物に対するLD50値およびED50値を表3(a)に示す。一部の本化合物に関し、LD50およびED50が50μg/mL(これは試験した最高濃度)を超えており、それ故、活性は存在しているが、通常、それらの化合物にさらなる試験は実施しなかった。
【表6】

【0192】
* LD50、ED50が>50であった場合、公称値50を治療可能比(TR)の評価に割り当てた。従って、実際の治療可能比はその推定値よりも高いか低いと考えられる。実際、化合物4.1については、さらなる実験で、LD50が100であり、TRが42.55であることが明らかになった。また化合物11.3については、さらなる実験で、LD50が88.28であることが明らかとなった。残りの化合物の全てについては、活性は存在しているが、50を超えるLD50値およびED50値は、一般には表に含まれていない。
【0193】
# 試験した最高濃度は25μg/mlであった。
【0194】
さらに5種類の化合物に対して試験した結果を下記の表3(b)および3(c)に記載する。
【表7】

【0195】
抗定着試験に関し、下記の値は、24時間インキュベーションした後に定着しているキプリスの割合である(2連の試験の平均)。
【表8】

【0196】
結果考察
概念的には、化合物3.1および4.6は、ロペラミド親構造が2つに分割される場合に得られる2種の主要なフラグメントと見なすことができる。
【化12】

【0197】
化合物3.1および4.6の両方が検出可能な生物学的活性を維持したことをバイオアッセイが示しているので、生物学的効果は両フラグメント中にある。
【0198】
化合物4.6の治療可能比値は毒性を示す1未満であったが、化合物3.1のTRは1を超えていた。TR値が高い化合物は、それらが致死量以下の濃度で抗定着効果をもたらすので、防汚化合物としての優れた可能性を有していると考えられる。
【0199】
化合物3.1は、一般名がジフェナミド(商品名としてはDymid(商標)およびEnide(商標)が挙げられる)という公知の農薬であり、土壌中で微生物により促進されるその生物分解が報告されている(Avidov 1990; Avidov 1988)。Kuglerらは、既に、防汚組成物における様々な殺虫剤および除草剤(ジフェナミドを含む)の使用を含む特許を出願している(Kugler、米国特許第5,990,043号)。
【0200】
その望ましいTR値を前提として、化合物3.1から構造・機能の予備試験を実施し、それらの試験から様々な興味深い傾向が明らかとなった。
【化13】

【0201】
細菌毒性は、試験した全菌株に対する阻害菌株の数として記載している。フジツボ毒性は、タテジマフジツボ(バラヌス・アンフィトリット(Balanus amphitrite))の第2期ノープリウス(nauplii)に対する毒性についてLD50、24h(μg/mL)として記載している。抗定着活性は、バラヌス・アンフィトリットのキプリスの定着に対するED50, 24h(μg/mL)である。
【0202】
六員環(ピペリジン)構造にアミド窒素が組み入れられることにより、抗菌活性および抗定着活性が高まったのに対し(化合物3.1対化合物4.1)、N-メチルピペラジン環へ組み入れた場合には、細菌毒性は低下し、フジツボのノープリウス(naupliar)毒性は高まったが、抗定着挙動は除かれた(化合物4.2)。一方、ピペリジン環へのアルコール官能基の付加は、活性をさらに低下させた(化合物9.3)。
【0203】
化合物4.1は抗定着活性を示したが、顕著なノープリウス毒性はなく、それによりTR値が大きくなった。したがって、さらに構造をシンプル化するための先駆体として、化合物4.1を利用した。化合物4.1の活性および高TRは、驚いたことに、抗痙攣活性を示すことが明らかになっていることが報告されているが(Cheney, 1952)、それは本明細書に示した活性とは無関係である。
【化14】

【0204】
細菌毒性は、試験した全菌株に対する阻害菌株の数として記載している。フジツボ毒性は、タテジマフジツボ(バラヌス・アンフィトリット(Balanus amphitrite))の第2期ノープリウス(nauplii)に対する毒性についてLD50、24h(μg/mL)として記載している。抗定着活性は、バラヌス・アンフィトリットのキプリスの定着に対するED50, 24h(μg/mL)である。
【0205】
フェニル基の両方を1個のn-ブチル基(化合物11.1)または不飽和ブチル基(化合物11.4)および水素原子で置換すると、化合物の効力は低下する結果となった。概して、1個のフェニル基の除去によるα炭素の分岐鎖の除去(化合物3.2、10.5、11.1、11.2、11.3および11.4における場合)、あるいはメチル基による両方の置換(化合物10.1および10.2における場合)では、活性が最終的に失われたと考えられる。
【0206】
しかし、化合物4.1中のフェニル環の1つまたは両方をn-ブチル鎖で置換する場合(例えば、化合物12.1および12.2)には、活性の大きな低下はなかった。
【0207】
化合物12.3中のピペリジン環を除去した場合には、抗菌活性の低下はあったが、フジツボ幼生に対する生物活性は維持された。アルキル鎖に-OH基を付加した場合には、活性が低下した。アルキル鎖に二重結合を付加した場合は、12.1および12.2と比較して、活性に大きな変化はなかった。
【0208】
LD50およびED50が10μg/mL未満であり、TR値が1よりも大きい、この一連で最も有効な化合物は、化合物9.1、5.3、12.1、12.2、12.4、12.7および12.8である。
【0209】
また、化合物4.3および4.6のLD50およびED50は10μg/mL未満であったが、それらのTR値は1未満であった。これは、これらの化合物が忌避剤よりも有毒であることを示している。活性化合物のうち、化合物12.1(過去の合成についてはMarlensson, 1960を参照)、12.2、12.4、12.7および12.8が最も有望な抗菌剤および/または防汚剤であることを示す。
【0210】
フジツボに対して治療可能比が高い化合物のうち、化合物12.2、12.4および12.7が最も単純な化学形態を有している。また、これらの両分子は細菌に対しても活性があり、かつ、それらの活性はロペラミドに匹敵する(または優れている)。これらの化合物は、既存の大部分の防汚化合物よりも構造上はるかに小さくシンプルであり、いかなるハロゲン化構造および芳香族環構造も有していない。したがって、これらの化合物は環境に優しい防汚剤である。
【0211】
本発明の化合物は、有効な防汚効果を得るために銅添加への依存が高い既存技術に対する有機代替品を防汚コーティング市場に提供するという、注目に値する利点を有する。本発明者らが開発した本化合物は、金属を含有しないことで海洋環境における毒性が低減された添加剤を安価で容易に調製するのに使用することができる。特に、化合物12.2は、ハロゲン構造または芳香族環構造を有していない。
【0212】
本化合物は既存のアクリレート系塗料へ混合することができるため、現行のコーティングオプションの実際的な代替品である。さらに、本化合物は構造がシンプルであるため、海洋環境中の細菌手段により分解される好ましい候補であり、将来、健康上のリスクが増大したり、引き起こされることはないように思われる。その上、Diuron(登録商標)およびSea-Nine(登録商標)などの既存の有機殺生物剤は生物濃縮され、海洋環境での有害作用の原因となることを考えると、本発明の化合物は、従来の金属ベースの添加剤に代わる有用な代替品といえる。
【0213】
参考文献
本発明および本発明が関係する最新技術をより完全に記載し開示するために、多数の特許および刊行物を上記に引用している。これらの参考文献の完全な引用を下記に提供する。これらの各参考文献は、あたかもそのそれぞれの参考文献が詳細かつ個別に参照により組み入れられていることを示すのと同程度に、本明細書にその全体を参照により組み入れるものである。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚損を低減または防止する方法における式(I):
【化1】

(式中、
R1およびR2は、独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいC1〜C12アルキルおよびHから選択され;
R3およびR4は、独立して、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1〜C6アルキル、置換されていてもよいフェニルおよびHから選択される)
で表される化合物の使用。
【請求項2】
R1およびR2の少なくとも1つの基がC3〜C10アルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1およびR2の少なくとも1つの基がC3-5アルキルである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
R1およびR2の少なくとも1つの基がn-ブチルである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
R1およびR2の少なくとも1つの基がC5〜C15アリール、好ましくはフェニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
R1およびR2の1つの基がフェニルであり、他方の基がn-ブチルである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
R1およびR2がHでない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
R1およびR2が同一である、請求項1〜5および7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
R1およびR2が両方ともn-ブチルである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
R1およびR2が両方ともフェニルである、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
R1およびR2の1つまたは両方の基が非置換である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
R1およびR2の両方の基が非置換である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
R3およびR4の1つの基がヒドロキシルであり、他方の基がHである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
R3およびR4の両方がHである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
R3およびR4の1つまたは両方の基が置換C1-C6アルキルである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
R3およびR4の1つまたは両方の基がヒドロキシ-C1-C6-アルキルである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
R3およびR4の1つの基が-CH2CH2OHであり、R3およびR4の他の1つの基がHである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
化合物が、化合物12.2、12.1、12.7、12.4、12.8、12.9、12.10、12.11、12.12、11.1、11.4、4.1、4.3、9.2、9.3、4.5、10.5、10.1、10.7、10.3および10.4から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
汚損を防止または低減する方法が、ミクロ汚損またはマクロ汚損を防止または低減する方法である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
汚損を低減または防止する方法が、バイオフィルム形成を低減または防止する方法である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
汚損を低減または防止する方法が、1種または複数の細菌、真菌、藻類および原生動物によるバイオフィルム形成を低減または防止する方法である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
汚損を低減または防止する方法が、細菌によるバイオフィルム形成を低減または防止する方法である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
汚損を低減または防止する方法が、1種または複数の甲殻類、コケムシおよび軟体動物によるマクロ汚損を低減または防止する方法である、請求項19に記載の使用。
【請求項24】
汚損を低減または防止する方法が、1種または複数のフジツボおよびムラサキイガイならびにそれらの幼生によるマクロ汚損を低減または防止する方法である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
基体に請求項1〜18のいずれか1項に定義した化合物を適用するステップを含む、基体の汚損を防止または低減する方法。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか1項に定義した化合物を含む、防汚組成物。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか1項に定義した化合物を含む、コーティング組成物。

【公表番号】特表2011−520878(P2011−520878A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509447(P2011−509447)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000175
【国際公開番号】WO2009/139729
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(507335687)ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール (28)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【出願人】(510302331)
【Fターム(参考)】