説明

防汚性道路用構造物、車両用防護柵、歩行者自転車用柵、道路用防音・遮音壁及びフェンス

【課題】塗膜中に有機金属を含有せず、塗り重ねの厚膜部分と薄膜部の外観肌に違いが無く仕上がり外観が均一良好で、防汚性に優れた防汚性道路用構造物を提供すること。
【解決手段】防汚性塗料による防汚層が表面に形成された防汚性道路用構造物において、
該防汚性塗料が、
バインダー樹脂(A)、
硬化剤(B)、
(C−1)下記式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、nは0〜1)
(C−2)下記式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子、Rは炭素数1〜40の有機基、nは2〜30)
の部分置換化合物であって、アセトンに対する水トレランスが300%以上である部分置換化合物(C)、及び
アクリル系ブロック共重合体(D)
を含有する防汚性道路用構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性能を有する塗装物に関し、詳しくは防汚性に優れた塗膜が表面に形成された防汚性道路用構造物の用途としての車両用防護柵、歩行者自転車用柵、道路用防音・遮音壁及びフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
車道や歩道等に設置されている道路用構造物について、車両から排出される排気ガスや粉塵等の汚染物質が道路用構造物の表面に付着・堆積することによる汚れが景観上の美観を損なうとして問題となっている。表面に付着・堆積した汚染物質を除去する清掃作業には、車線制限等の交通規制を要するので円滑な道路交通を阻害するとともに、清掃作業員の危険も伴う。
【0003】
そこで、車道等に設置される道路用構造物に防汚性塗膜を形成することによって、清掃回数を低減する技術が開示されている(特許文献1、2)。それらは塗料成分としてシリコーンを含有し、シリコーンの加水分解による水酸基によって親水性を高め、防汚性を付与するものである。このようにシリコーン樹脂やシリケートを溶剤系塗料に用いることによって防汚性が付与できることは一般的に知られているが、下記に記載の環境保全の問題が残されていた。
【0004】
従来からの塗装方法として有機溶剤(VOC)を用いた塗布が行われてきたが、環境保護の観点から有機溶剤の大気中への放出は大きな問題になっており、各業界においてもVOC規制強化の流れと共に脱溶剤化(脱VOC)への流れが活発になっている。塗料業界においても従来の溶剤型塗料に代わり得るものとして、VOCを全く含まず、排気処理はもちろん廃水処理も必要としない環境適応塗料として粉体塗料への期待が高まっている。
【0005】
一方粉体塗料には塗膜の硬化を促進するために有機金属を含有する触媒を使用していることが多いが、降雨時や洗浄液を用いた清掃時に塗膜中の有機金属が溶出して周辺土壌を汚染するおそれもあった。
【0006】
そこで近年、環境適応塗料として有機溶剤・有機金属を全く含まない粉体塗料へ期待が高まっている。
【0007】
粉体塗料にシリケート化合物を添加して、塗膜表面の親水性を高めることにより防汚性を付与した防汚性粉体塗料が開発されている。しかし、粉体塗料にシリケート(液体)を混ぜ合わせると、シリケートの水酸基成分が粉体塗料中の樹脂成分の水酸基と反応して期待した防汚性能が得られない場合があり、またシリケートの添加量によっては塗膜物性が低下し、塗装後の簡単な加工や道路構造物設置後に小石等の衝突により塗膜が剥がれやすい傾向があり、問題となっていた。
【0008】
粉体塗料、溶剤系塗料に関わらず防汚性塗料を用いて塗装して形成される塗膜は、塗膜厚が大きくなると塗膜がゆず肌になり、しいては肌荒れや割れを生じたり、薄膜での塗膜のレベリングが充分では無く下地隠蔽性が劣る問題や、厚膜部と薄膜部で肌外観の均一性が劣る問題があった。
【0009】
防護柵の中でも特にガードレールは塗装面積が広いので、塗装効率を上げるために複数の塗装ガンを同時に使用して塗装することが一般的である。例えば幅350mm×長さ4330mm×厚さ2.3mmのガードレール用ビーム(波板形状)を、ビームの長手方向を縦に吊りさげて、例えば塗装ガンを4箇所使用して粉体塗料で塗装する場合に、隣り合う塗装ガンとの間の3箇所で塗り重ね部分が生じることになる。この塗り重ね部分は数cm〜数10cm幅になる。一方ガードレールは形状が凹凸になっており、凹部は帯電した粉体塗料の回り込みが悪くなるため、一般部特に凸部に比べ膜厚が薄くなる。この塗り重ねにより生じる厚膜部と凹部形状による薄膜部の膜厚差は約2倍から場合によっては(塗装ラインによっては)約5倍近くにもなる。膜厚により表面肌外観すなわち光沢度や鮮映性(ゆず肌度)が違う場合、それ自体問題ないレベルのゆず肌であっても塗り重ね部(厚膜部)が薄膜部との外観肌の違いによって不均一に見えてしまい、外観上の不良の原因となっていた。被塗物面積が小さい場合には全面が均一な膜厚であるので問題ないが、広い面積の被塗物、あるいは長い塗装物では均一膜厚を得ることが困難なために特に外観不良となってしまう。
【0010】
また従来から防汚性機能の無いガードレール等の粉体塗料には塗装焼き付け時の塗膜のゆず肌防止として親油性のレベリング剤が添加されている。しかしながら防汚性を有する粉体塗料に親油性のレベリング剤を添加すると防汚機能が十分に発揮できなくなってしまうため、従来から使用されている親油性のレベリング剤を用いることができなかった。
【特許文献1】特開2001−64922号公報
【特許文献2】特開2004−100391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、塗膜中に有機金属を含有しない環境に配慮した塗料を用い、得られた塗装物が防汚機能を有しかつ塗膜物性に優れ、更に塗り重ねの厚膜部分の塗膜の肌外観が薄膜部分(粉体塗装の場合、一般的には20〜30μm)と同様に仕上がり表面外観の均一な防汚性道路用構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従って、防汚性塗料による防汚層が表面に形成された防汚性道路用構造物において、
該防汚性塗料が、
バインダー樹脂(A)、
硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物であって、アセトンに対する水トレランスが300%以上である部分置換化合物(C)、及び
アクリル系ブロック共重合体(D)
を含有することを特徴とする防汚性道路用構造物が提供される。
【0013】
また、バインダー樹脂(A)、
硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物であって、アセトンに対する水トレランスが300%以上である部分置換化合物(C)、及び
アクリル系ブロック共重合体(D)
を含有する粉体塗料を基材表面に静電塗装し、焼き付け硬化することにより防汚性塗膜層を表層に有することを特徴とする防汚性道路構造物が提供される。
【0014】
また、本発明に従って、上記に記載の防汚性道路用構造物が車両用防護柵であり、該車両用防護柵の表面に上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を有する防汚性車両用防護柵が提供される。
【0015】
また、本発明に従って、歩行者自転車用柵として、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とする防汚性歩行者自転車用柵が提供される。
【0016】
また、本発明に従って、道路用防音・遮音壁として、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とする防汚性道路用防音・遮音壁が提供される。
【0017】
また、本発明に従って、フェンスとして、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とするフェンスが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、塗膜中に有機金属を含有せず、防汚性を発揮するのに充分な水酸基を有しながら塗膜物性、特に塗装後加工性の良好な防汚性道路用構造物を提供することが可能となった。特に道路用構造物等の大物塗装材であっても塗り重ねの厚膜部分と薄膜部との肌外観差を生じず、全体仕上がり外観が均一で良好な防汚性道路用構造物を提供することが可能となった。
【0019】
また、上記防汚性道路用構造物の用途としての車両用防護柵、歩行者自転車用柵、道路用防音・遮音壁及びフェンスを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明における道路用構造物としては、例えば、車両用防護柵や歩行者自転車用柵や道路用防音・遮音壁又はフェンス等が挙げられる。具体的には、車両用防護柵は、ガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、ボックスビーム及び橋梁用防護柵等が挙げられ、歩行者自転車用柵は横断防止柵及び転落防止柵(高欄を含む)が挙げられ、フェンスとしては、ネットフェンス、目隠しフェンス等挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
道路用構造物の基材としては、金属や有機樹脂が挙げられるが、耐久性や時には車両が衝突して大きな負荷が掛かることから金属であることが一般的である。金属は、主として鉄鋼であるが長期耐食性が必要な構造物の場合には溶融亜鉛めっき鋼板や亜鉛めっきの後合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いるのが良い。基材の表面は耐食性及び塗膜との密着性向上のためリン酸亜鉛処理により化成処理することが好ましい。なお、重防食の観点からリン酸亜鉛処理後、更に下地塗料としてエポキシ樹脂を主成分としたプライマーを塗装することが可能である。
【0023】
本発明で用いるバインダー樹脂(A)としては、従来から粉体塗料の製造に用いられている各種の樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル−β−ヒドロキシルアルキルアミド硬化系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂、ポリエステル−メラミン硬化系樹脂等が挙げられ、これら樹脂を単独又は2種以上組み合わせで使用することができる。
【0024】
それらのなかでも、耐候性、機械的強度に優れたバランスのとれた塗膜を形成する粉体塗料のバインダー樹脂(A)としてはポリエステル樹脂が好ましく、特にはカルボン酸と多価アルコールとを通常の方法で反応させたものであって、水酸基価が20〜80mgKOH/gのものが好ましく、特には30〜60mgKOH/gの範囲のものが好適である。このように水酸基価を限定するのは、20mgKOH/gよりも低いと、塗膜に十分な機械的物性が得難いからであり、80mgKOH/gよりも高いと、それに見合う量の硬化剤を配合すればコストの上昇が大きくなり、また、それに見合うだけの塗膜性能の向上も期待できないからである。
【0025】
また、ここで用いるカルボン酸の例を挙げると、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、β−オキシプロピオン酸等があり、多価アルコールの例を挙げると、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等がある。
【0026】
本発明で用いる硬化剤(B)としては、熱硬化性樹脂に通常使用される硬化剤を特に制限なく各種使用することができる。このような硬化剤としては、例えば、アミド化合物や、酸無水物、二塩基酸、グリシジル化合物、アミノプラスト樹脂、ブロックイソシアネート等があり、代表的なものにジシアンジアミド、酸ヒドラジド、トリグリシジルイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートブロック体等が挙げられる。例えば、二塩基酸としては、アジピン酸や、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−エイコサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フタル酸、シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0027】
上記バインダー樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合の硬化剤(B)としてはブロックポリイソシアネートが好ましく、特には23℃〜25℃の室温条件下で固体のものが好ましい。該イソシアネートの例を挙げると、脂肪族、芳香族、及び芳香脂肪族のジイソシアネートと、活性水素を有する低分子化合物とを反応させて得たポリイソシアネートを、ブロック剤と反応させ、マスキングすることにより製造したものであって、その製造は容易である。
【0028】
また、ここで用いるジイソシアネートの例を挙げると、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等がある。
【0029】
また活性水素を有する低分子化合物の例を挙げると、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン等の他に、更に、イソシアヌレート、ウレチジオン、ヒドロキシル基を含有する低分子量ポリエステル、ポリカプロラクトン等がある。
【0030】
また、ブロック剤の具体例を挙げると、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、フェノール、クレゾーン等のフェノール類、カプロラクタム、ブチロラクタム等のラクタム類、シクロヘキサノン、オキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類がある。
【0031】
これらのブロックイソシアネートは、その軟化温度が10℃〜120℃、特に、40℃〜100℃であることが好ましい。軟化温度が10℃未満になると、粉体塗料が室温〜40℃の環境で硬化したり、粒状の塊が出来て好ましくない。また、逆に120℃を超えると粉体塗料を製造する際、ブロックイソシアネートを塗料中に均質に分散させることが難しくなり、得られた塗膜の平滑性、塗膜強度、耐湿性等の性能が損なわれる。
【0032】
これら硬化剤(B)のブロックポリイソシアネートは、バインダー樹脂(A)のポリエステル樹脂の水酸基に対してイソシアネート基が0.5〜1.5当量、特に0.8〜1.2当量となるように配合するのが好ましい。このように限定するのは、イソシアネート基が0.5当量未満の場合、塗料の硬化度が不足し、密着性、塗膜硬度、耐薬品性等の塗膜性能が低くなり、1.5当量を超えると、塗膜が脆くなり、しかも、過剰のイソシアネート化合物の影響で、耐熱性、耐薬品性、耐湿性等が劣ると共に、ブロックイソシアネート自身が高価なため、コスト的にも不利になるからである。
【0033】
本発明で用いる部分置換化合物(C)は、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
との部分置換したものである。
【0034】
以下に、(C−1)と(C−2)について説明する。
【0035】
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物
Si(OR4−n (1)
式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である。
【0036】
上記一般式(1)において、Rの炭素数1〜8の有機基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基等を挙げることができる。このアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が1〜4個のものである。シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0037】
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
【0038】
の炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が1〜3個のものであり、同一でも、異なっていてもよい。
【0039】
上記式(1)で示されるシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、トリエトキシメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられるが、好ましくは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランである。これらのシラン化合物は、一種単独で使用することも、二種以上混合して使用することもできる。
【0040】
また、シラン化合物としては、以上説明したシラン化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。該部分加水分解縮合物の縮合度は、水トレランス値、相溶性の観点から2〜25であることが好ましく、特には5〜20が適当である。縮合度が2より小さい場合は、水トレランス値が小さくなり、水との相溶性が上がるため、ブロッキング等の安定性が劣り、25より大きい場合は、バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)との相溶性が劣る。シラン化合物の部分加水分解縮合物は、珪素原子に結合した−OH基や−OR基を1個以上、好ましくは、3〜50個有するものが適当である。
【0041】
このような縮合物の市販品としては、例えば、商品名は「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上三菱化学(株)製)、「エチルシリケート40」「エチルシリケート48」(以上コルコート(株)製)、「SR2402」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「KR−211」、「KR−212」、「KR−213」、「KR−214」、「KR−216」、「KR−218」(以上信越化学工業(株)製)、「TSR−145」、「TSR−160」、「YR−3187」(以上東芝GEシリコーン(株)製)等が挙げられる。
【0042】
(C−2)下記一般式(2)の化合物
HO(CHRCHO) (2)
式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である。
【0043】
上記一般式(2)の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノベンジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリプロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノベンジルエーテル、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0044】
前記部分置換化合物(C)は、アセトンに対する水トレランスが300%以上であることが必須であり、400%以上であることが好ましい。水トレランスが300%未満であると水との相溶性が下がるため、得られる塗膜の防汚性が劣る。
【0045】
水トレランスとは、樹脂1g当たりに対する水の溶解率である。この水トレランスは、次の方法によって測定することができる。すなわち、樹脂1gを100ミリリットルの三角フラスコに秤量し、アセトン10mlを添加し、樹脂を溶解させて試料溶液を作製する。三角フラスコの下に9ptの大きさの文字を書いた紙を置き、試料溶液の温度を25℃に保ち撹拌しながら水を滴下してゆき、樹脂水溶液が白く濁り上から文字が読めなくなったところを終点とし、滴下した水の量を測定する。そして、水トレランスは、水トレランス(%)=(水の量÷樹脂量)×100で、表すことができる。
【0046】
本発明の粉体塗料は、バインダー樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計100重量部に対して、部分置換化合物(C)を1〜5重量部含有することが好ましい。部分置換化合物(C)が1重量部未満では、防汚性の持続性に問題が生じ易く、逆に5重量部を超えると、ブロッキング等の粉体塗料の安定性を損うことになり好ましくない。
【0047】
本発明におけるアクリル系ブロック共重合体(D)は、アニオン重合により疎水性又は親水性の2種以上のアクリルモノマーの添加順序を調整することで得られたものである。ランダム共重合体と比較して、分子配列が制御されたブロック共重合体の親水性部位が親水化剤との相溶性をより向上させ、かつ、疎水性部位が焼付時のレベリングを向上させる。結果として、防汚性能を損なわれず、焼付時のレベリング性の向上が可能となった。
【0048】
アクリル系ブロック共重合体(D)は、バインダー樹脂(A)、硬化剤(B)及び部分置換化合物(C)の合計100重量部に対して、0.5〜5重量部含有することが好ましく、より好ましくは1〜3重量部含有することである。アクリル系ブロック共重合体(D)が0.5重量部未満であると塗り重ねの厚膜部分において肌荒れ解消の効果が得られ難く、5重量部を超えると塗膜の防汚性能を低下させ易い。
【0049】
また、アクリル系ブロック共重合体(D)のガラス転移温度は−20℃〜0℃が好ましい。ガラス転移温度が−20℃未満であると、塗膜の耐湿性低下という不具合が生じ易く、0℃を超えると、防汚性の低下という不具合が生じ易い。更に、数平均分子量は、塗料用樹脂との相溶性を考慮すると2000〜8000が好ましい。数平均分子量が2000未満であると塗り重ねの厚膜部分において肌荒れ解消の効果が得られ難く、8000を超えると塗膜のレベリング性の低下、すなわち、塗膜外観に影響を及ぼす。ガラス転移温度は示差走査熱量法により測定し、数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定できる。
【0050】
疎水性アクリルモノマーとしては、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ノルマルプロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸ノルマルブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸ターシャリーブチルエステル、アクリル酸ノルマルオクチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸イソノニルエステル等が挙げられ、前記のメタクリレート化合物も使用できる。
【0051】
親水性アクリルモノマーとしては、日本油脂株式会社から市販されているポリエチレングリコールモノメタクリレートであるPE−90(付加モル数2)、PE−200(付加モル数4〜5)、PE−350(付加モル数7〜9);メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであるPME−100(付加モル数2)、PME−200(付加モル数4)、PME−400(付加モル数9);ポリエチレングリコールモノアクリレートであるAE−350(付加モル数6〜8)、或いは、大阪有機化学工業株式会社から市販されているビスコート#190(エチルカルビトールアクリレート)、等が挙げられる。
【0052】
アクリル系ブロック共重合体(D)の製造方法は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合の付加重合系が挙げられ、分子量、分散そして構造を制御するにはリビングアニオン重合が適している。
【0053】
また、本発明にかかる粉体塗料は、必要に応じてレベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、垂れ防止剤、表面調整剤、架橋促進触媒、脱泡剤等の各種添加剤を配合することができる。粉体塗料の平均粒径は10〜60μmが好ましく、より好ましくは15〜45μmである。
【0054】
本発明にかかる粉体塗料は、従来の粉体塗料の塗装の場合と同様に、静電スプレーガン、流動浸漬、摩擦帯電ガン、インモールド等を使用して被塗物、例えば、鋼板等の被塗物に塗装し、熱風炉、赤外炉、誘導加熱炉等で焼付けることにより、塗膜を形成することができる。車両用防護柵へ塗布する方法としては、塗着効率の点から静電塗装法を用いることが好ましい。静電塗装法は、コロナ帯電方式とトリボ帯電方式を挙げることができる。焼付硬化条件としては、基材の温度が180〜220℃で10〜40分間保持されることが好ましい。
【0055】
塗料膜厚は要求される耐食性性能や構造物種類により決定する。粉体塗装の作業性、経済性を考慮すると20〜150μmが好ましい。ガードレールの場合については20〜200μmが好ましい。平均膜厚としては30〜60μmであることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。なお、製造例、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、重量を基準としている。
【0057】
(合成例1・・・部分置換化合物の合成)
反応器に、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物[縮合度5、「エチルシリケート40」(コルコート社製商品名)]を80部と、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル[「ノイゲンXL−140」、(第一工業製薬(株)製商品名)]を20部とを加え、混合した後、反応触媒として1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7[「DBU」(サンアプロ(株)製商品名)]を0.15部加え120℃で8時間、生成したエタノールを除去しながら加熱攪拌した。反応終了後、精製し部分置換化合物(1)を得た。得られた部分置換化合物(1)の水トレランスは510%であった。なお、水トレランスは3回測定し、その平均値である。
【0058】
(合成例2・・・アクリル系ブロック共重合体1の合成)
250mlの三つ口フラスコに乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mlを加え、30min乾燥窒素を通じ、液温を0〜3℃に調整する。これに、n−ブチルリチウム0.5mol、THF溶液10mlを加え、メタクリル酸ブチル15mlを加え、3時間攪拌する。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであるPME−400(付加モル数9)を20ml加え、3時間攪拌し、少量のメタノールを添加し、反応を停止させた。エバポレーターにて、80℃に加温しながら、THF、残存モノマーを留去し、アクリル系ブロック共重合体1を得た。収率は92%、ガラス転移点は−13℃、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は4100であった。
【0059】
(合成例3・・・アクリル系ブロック共重合体2の合成)
合成例2のメタクリル酸ブチル15mlを8ml、PME−400(付加モル数9)20mlを10mlに変更して、同様にしてアクリル系ブロック共重合体2を合成した。収率は91%、ガラス転移点は−12℃、数平均分子量は2200であった。
【0060】
(合成例4・・・アクリル系ブロック共重合体3の合成)
合成例2のメタクリル酸ブチル15mlを30ml、PME−400(付加モル数9)20mlを37mlに変更して、同様にしてアクリル系ブロック共重合体3を合成した。収率は95%、ガラス転移点は−11℃、数平均分子量は7600であった。
【0061】
(合成例5・・・アクリル系ブロック共重合体4の合成)
合成例2のメタクリル酸ブチル15mlを50ml、PME−400(付加モル数9)20mlを64mlに変更して、同様にしてアクリル系ブロック共重合体4を合成した。収率は93%、ガラス転移点は−9℃、数平均分子量は13500であった。
【0062】
(合成例6・・・アクリル系ブロック共重合体5の合成)
合成例2のメタクリル酸ブチル15mlを39ml、PME−400(付加モル数9)20mlを10mlに変更して、同様にしてアクリル系ブロック共重合体5を合成した。収率は96%、ガラス転移点は4℃、数平均分子量は3900であった。
【0063】
(合成例7・・・アクリル系ランダム共重合体1の合成)
250mlの三つ口フラスコに乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mlを加え、30min乾燥窒素を通じ、液温を0〜3℃に調整する。これに、n−ブチルリチウム0.5mol、THF溶液10mlを加え、メタクリル酸ブチル15ml及びPME−400(付加モル数9)20mlを加え、4時間攪拌する。少量のメタノールを添加し、反応を停止させた。エバポレーターにて、80℃に加温しながら、THF、残存モノマーを留去し、アクリル系ランダム共重合体1を得た。収率は90%。ガラス転移点は−7℃、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は4600であった。
【0064】
(合成例8・・・アクリル系ランダム共重合体2の合成)
合成例7のメタクリル酸ブチル15mlを50ml、PME−400(付加モル数9)20mlを64mlに変更して、同様にしてアクリル系ブロック共重合体2を合成した。収率は95%、ガラス転移点は−6℃、数平均分子量は14600であった。
【0065】
(実施例1)
バインダー樹脂(A)として水酸基価31mgKOH/gの熱硬化性ポリエステル樹脂[「ユピカコートGV500」(日本ユピカ社製商品名)]55部に、硬化剤(B)としてIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]10部、部分置換化合物(C)として合成例1の化合物を2部、アクリル系ブロック共重合体(D)として合成例2のアクリル系ブロック共重合体1を1部、脱泡剤としてベンゾイン0.2部、酸化チタン30部を混練、粉砕し200メッシュで分級を行い、平均粒径30μmの粉体塗料1を作製した。
【0066】
板厚2.3mm×幅350mm×長さ4330mmのZ27亜鉛めっき鋼板をガードレールの形状に成形後、ガードレールの長手方向を縦に吊りさげて、リン酸亜鉛処理により化成処理後、塗装ガンを5箇所使用して、隣り合う塗装ガンとの間の4箇所での塗り重ね部分が生じるような粉体塗装機を用いて粉体塗料1を静電塗装し、熱風乾燥炉内で190℃で20分間焼き付け処理し、平均膜厚が50μmとなるように塗膜を形成した。
【0067】
(実施例2〜5)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例2のアクリル系ブロック共重合体1の含有量を2部、0.5部、3部及び3.4部に代えた以外は、同様にしてそれぞれ粉体塗料2〜5を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0068】
(実施例6)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例3のアクリル系ブロック共重合体2に代えた以外は、同様にして粉体塗料6を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0069】
(実施例7)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例4のアクリル系ブロック共重合体3に代えた以外は、同様にして粉体塗料7を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0070】
(実施例8)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例2のアクリル系ブロック共重合体1の含有量を0.3部に代えた以外は、同様にして粉体塗料8を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0071】
(実施例9)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例5のアクリル系ブロック共重合体4に代えた以外は、同様にして粉体塗料9を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0072】
(実施例10)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例6のアクリル系ブロック共重合体5に代えた以外は、同様にして粉体塗料10を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0073】
(実施例11)
粉体塗料1において、硬化剤(B)としてIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]の添加量を7.7部、部分置換化合物(C)として合成例1の化合物の添加量を1部に代えた以外は、同様にして粉体塗料11を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0074】
(実施例12)
粉体塗料1において、硬化剤(B)としてIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]の添加量を11.6部、部分置換化合物(C)として合成例1の化合物の添加量を3部に代えた以外は、同様にして粉体塗料12を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0075】
(比較例1)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例7のアクリル系ランダム共重合体1に代えた以外は、同様にして粉体塗料13を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0076】
(比較例2)
粉体塗料1において、アクリル系ブロック共重合体(D)を合成例8のアクリル系ランダム共重合体2に代えた以外は、同様にして粉体塗料14を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0077】
(比較例3)
粉体塗料13において、硬化剤(B)としてIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]の添加量を7.7部、部分置換化合物(C)として合成例1の化合物の添加量を1部に代えた以外は、同様にして粉体塗料15を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0078】
(比較例4)
粉体塗料13において、硬化剤(B)としてIPDI(イソホロンジイソシアネート)ε−カプロラクタムブロックのポリイソシアネート樹脂[「ベスタゴンB−1530」(HULS社製商品名)]の添加量を11.6部、部分置換化合物(C)として合成例1の化合物の添加量を3部に代えた以外は、同様にして粉体塗料16を作製し、実施例1と同様にしてガードレールに塗膜を形成した。
【0079】
<塗膜外観>
塗膜外観を目視にて評価した。
○:仕上がり外観肌は均一で良好
△:塗り重ね部での肌外観違いがやや見られる
×:塗り重ね部分で肌荒れを生じ、仕上がり外観は不良
【0080】
<塗り重ね部分の塗膜厚>
4箇所の塗り重ね部分でそれぞれ2点、計8点で膜厚を測定した値の平均値である。
【0081】
<光沢>
JIS K 5600−4−7に準拠して測定した。
【0082】
<防汚性>
塗膜の防汚性は2種類の評価方法すなわち(1)静的水接触角の測定及び(2)水性カーボン汚染試験によって評価した。
【0083】
以下に、各条件における各試験方法を説明する。
【0084】
1.静的水接触角の測定
上記実施例で作製した塗料を塗装し、焼き付けた試験板を、湿度95%以上及び温度50±1℃に保った環境下で24時間放置後に、共和界面科学社製CBVP−A3型接触角測定装置を用いて、塗膜表面の水接触角を測定した。この水接触角が80°未満であれば、塗膜表面が十分に親水化されており、防汚性に優れていると評価できる。
【0085】
更に、同じ試験片をサンシャインウェザー−オーメーターにより400時間加速試験を行い同様に静的水接触角を測定した。
【0086】
2.水性カーボン汚染試験
上記実施例で作製した塗料を塗装し、焼き付けた試験板を、前処理として、湿潤処理(温度50±1℃、相対湿度95%以上)を24時間行った後、恒温恒湿(温度23±2℃、相対湿度50±5%)で3日間乾燥を行う。その後、その試験片に、デグサ社製顔料用カーボンブラックFW−200P[商品名]5部、脱イオン水95部からなる懸濁液を、エアスプレー(エア圧0.4〜0.5Mpa)で、表面が均一に隠蔽するまで塗布する。そして、試験片を直ちに熱風乾燥炉にて60℃×1時間の条件で強制乾燥させ、室温まで放冷する。そして、流水下にて汚染面の汚れ物質をガーゼで落としながら洗浄し、室温で3時間乾燥させた後、汚染面の明度(L)をミノルタ(株)製色彩計CR−300[商品名]によって測定した。測定箇所は汚染面の上部、中央部、下部の3点とし、3点の平均を取る。汚れの程度は下式によって求める;
明度差(ΔL)=試験後の平均明度(L)−試験前の平均明度(L
【0087】
この明度差(ΔL)が7.00以下であれば、防汚性を有すると評価される。本発明者らは更に厳しい4.00未満の場合を特に防汚性優れていると評価した。
【0088】
更に、同様の試験片をサンシャインウェザー−オーメーターにより400時間加速試験を行い同様に水性カーボン汚染試験をした。
【0089】
<耐カッピング性試験>
日本テストパネル(株)製サーフダインセレクト1000(0.8×70×150mm)に粉体塗装機を用いて静電塗装を行い、熱風乾燥炉内で190℃で20分間焼き付け処理し、平均膜厚が50μmとなるように塗膜を形成した。得られた試験片をJIS K 5600−5−2に従って耐カッピング性試験を行った。倍率×10のレンズを用いても塗膜の剥がれ、割れ、ヒビの無い限界押し込み深さをカッピング値とした。
【0090】
【表1】

【0091】
(参考例1)
実施例2で得られた塗料を膜厚が170μmになるようにガードレール全面に塗装した。
【0092】
塗膜の状態を目視で評価しても、全面に渡って塗膜の肌が均一であり、仕上がり外観に問題は無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚性塗料による防汚層が表面に形成された防汚性道路用構造物において、
該防汚性塗料が、
バインダー樹脂(A)、
硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物であって、アセトンに対する水トレランスが300%以上である部分置換化合物(C)、及び
アクリル系ブロック共重合体(D)
を含有することを特徴とする防汚性道路用構造物。
【請求項2】
バインダー樹脂(A)、
硬化剤(B)、
(C−1)下記一般式(1)で示される化合物、その部分加水分解縮合物の一方又は両方と、
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、nは0〜1である)
(C−2)下記一般式(2)で示される化合物と
HO(CHRCHO) (2)
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜40の有機基であり、nは2〜30である)
の部分置換化合物であって、アセトンに対する水トレランスが300%以上である部分置換化合物(C)、及び
アクリル系ブロック共重合体(D)
を含有する粉体塗料を基材表面に静電塗装し、焼き付け硬化することにより防汚性塗膜層を表層に有することを特徴とする防汚性道路用構造物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂(A)、前記硬化剤(B)及び部分置換化合物(C)の合計100重量部に対して、前記アクリル系ブロック共重合体(D)を0.5〜5重量部含有する請求項1又は2に記載の防汚性道路用構造物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂(A)、前記硬化剤(B)及び部分置換化合物(C)の合計100重量部に対して、前記アクリル系ブロック共重合体(D)を1〜3重量部含有する請求項3に記載の防汚性道路用構造物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防汚性道路用構造物が車両用防護柵であり、該車両用防護柵の表面に上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を有する防汚性車両用防護柵。
【請求項6】
前記防汚性車両用防護柵がガードレールである請求項5に記載の防汚性車両用防護柵。
【請求項7】
歩行者自転車用柵として、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とする防汚性歩行者自転車用柵。
【請求項8】
道路用防音・遮音壁として、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とする防汚性道路用防音・遮音壁。
【請求項9】
フェンスとして、上記防汚性塗料を塗装することにより防汚性塗膜層を表面に有することを特徴とするフェンス。

【公開番号】特開2009−68165(P2009−68165A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234116(P2007−234116)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】