説明

防湿段ボール箱

【課題】防湿性が確保された収納空間で収納物が収納できるようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱の提供を目的とする。
【解決手段】金属または金属酸化物の蒸着薄膜層と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜とを少なくとも有する蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面に積層されている段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルム積層側が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性が確保された収納空間で収納物が収納できるようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、板紙や段ボールなどの紙類は通気性があり、防湿性がない。従って、このような紙類を利用して製函される紙箱や段ボール箱はその収納空間で防湿性を確保することができない。
【0003】
紙箱や段ボール箱に収納される収納物には種々のものがあり、その中には防湿性が確保された環境の下での収納を要求されるものが数多くある。
【0004】
このような状況に対処するため、段ボール原紙を防湿紙にしたり、ポリエチレンフィルムをラミネートする方法(例えば、特許文献1参照。)や、段数の多い段ボールとしたり生分解性層(PLA層)を設ける方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案され、防湿性を確保するための試みが種々なさてれている。
【0005】
しかしながら、このような提案に係る段ボール箱では満足した防湿性を確保することができず、より優れた防湿性がその収納空間で確保できるようにした段ボール箱の開発が強く望まれている。
【特許文献1】登録実用新案第3130190号公報
【特許文献2】登録実用新案第3132777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであり、防湿性が確保された収納空間で収納物が収納できるようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、金属または金属酸化物の蒸着薄膜層と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜とを少なくとも有する蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面に積層されている段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルム積層側が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の防湿段ボール箱において、前記蒸着プラスチックフィルムの金属または金属酸化物の蒸着薄膜層の厚みが5〜100nmであることを特徴とする。
【0009】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の防湿段ボール箱において、前記蒸着プラスチックフィルムにはさらにプラスチックフィルムが積層されていることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の防湿段ボール箱
において、金属または金属酸化物の蒸着薄膜層を少なくとも有する封緘テープにより封緘されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属または金属酸化物の蒸着薄膜層と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜とを少なくとも有する蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面に積層されている段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルム積層側が内面に位置するようにして製函されているので、優れた防湿性が確保でき、その収納空間に収納される収納物の吸湿による劣化を確実に防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1〜図3には本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体の概略の断面構成が示してある。
【0013】
図1に示す段ボール積層体10は、プラスチックフィルム基材11の一方の面に、金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜であるガスバリア性被膜層13とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム14が、段ボール15の片面に積層された構成のものである。
【0014】
一方、図2に示す段ボール積層体20は、プラスチックフィルム基材21の一方の面に、金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層22と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜であるガスバリア性被膜層23とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム24が、段ボール25の片面にプラスチックフィルム26を介して積層された構成のものである。
【0015】
そして、図3に示す段ボール積層体30は、プラスチックフィルム基材31の一方の面に、金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層32と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜であるガスバリア性被膜層33とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム34が、段ボール35の片面にプラスチックフィルム基材31を接するようにして積層され、さらに蒸着プラスチックフィルム34のガスバリア性被膜層33の上にプラスチックフィルム36がさらに積層された構成のものである。
【0016】
本発明の防湿ダンボール箱は、このような構成の段ボール積層体10、20、30を使用し、その蒸着プラスチックフィルム14、24、34の積層側が内面に位置するようにして製函することにより得ることができる。
【0017】
図4には、このようにして得られた防湿ダンボール箱40と、この防湿ダンボール箱40が金属または金属酸化物の蒸着薄膜層を有する防湿性の封緘テープ41により封緘されている状態を示している。
【0018】
蒸着プラスチックフィルム14、24、34を構成するプラスチックフィルム基材11、21、31は、後述する蒸着薄膜層12、22、32の透明性を生かすために透明であることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルムなどを挙げることができる。これらは、延伸されていても、未延伸であっても良いが、機械的強度や寸法安定性に優れるものが好ましい。これらの中では、耐熱性などの面から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。またこのプラスチックフィルム基材11、21、31の表面には、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などからなる薄膜を設けておいてもよいし、薄膜との密着性をよくするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、さらには薬品処理、溶剤処理などを施しておいてもよい。
【0019】
さらに、プラスチックフィルム基材11、21、31として用いられるポリエステルフィルムとしては、例えば、それを構成するジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを有するものが挙げられる。また、アルコール成分としてエチレングリコール、プロパンジオール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールおよびそれらの誘導体などを有するものも挙げられる。
【0020】
このような成分を有するポリエステルの中では、二軸延伸特性などの成膜性、湿度特性、耐熱性、耐薬品性、低コスト性などを考慮し、ポリエチレンテレフタレートを主体としたものが好ましく用いられる。また、ポリエチレンテレフタレートの優れた諸物性を保てる範囲内で、他のアルコール成分を重合段階で主鎖に取り込むように制御して共重合させることにより、分子鎖内に回転障害の小さいセグメント(ソフトセグメント)を形成させ、外部からの衝撃や折り曲げによる力を分子鎖内のソフトセグメントにより吸収し、耐衝撃性、屈曲性に優れるものとしたものも好ましく用いられる。さらに、ポリエステルのカルボン酸成分およびアルコール成分の各々の50モル%以上がテレフタル酸、エチレングリコール、およびそれらの誘導体である共重合ポリエステルも好ましく用いられる。
【0021】
これらのプラスチックフィルム基材11、21、31の厚みは1μm以上であることが好ましい。より具体的には、段ボール箱を構成する段ボール積層体としての適性、さらには他の層を積層する場合も在ること、また、後述する金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32やガスバリア性被膜層13、23、33を積層する場合の加工性などを考慮すると、実用的には5〜200μm程度の厚みが好ましい。また、蒸着プラスチックフィルムの製造に係る量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように長尺状とすることが望ましい。
【0022】
このようなプラスチックフィルム基材11、21、31と、後述する金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32との密着を向上させるために、ラジカルやイオンを利用してプラスチックフィルム基材11、21、31の表面に官能基を持たせたり、また、表面をイオンエッチングして不純物などを物理的に飛散させたり、平滑化させることが望ましい。その結果、プラスチックフィルム基材11、21、31と金属または金属
酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32との密着性を強化させることができ、ガスバリア性や防湿性を向上させ、蒸着薄膜層でのクラック発生を防止することができる。
【0023】
一方、金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32は、金属、例えばアルミニウム、銅、銀など、もしくは金属酸化物、例えばイットリウムタンタルオキサイド、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物などの蒸着薄膜からなり、酸素、水蒸気などに対して優れたガスバリア性を示す層であればよい。
【0024】
金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32の厚みは、5〜300nm程度の範囲にあることが望ましい。厚みが5nm未満であると均一な膜が得られなかったり、膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また厚みが300nmを越える場合には薄膜にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、成膜後に加わる折り曲げや引っ張りなどにより、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。より好ましくは、5〜100nm程度の厚みであればよい。
【0025】
このような金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32を、プラスチックフィルム基材11、21、31上に形成する方法としては、通常の真空蒸着法や、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを挙げることができる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。この際に使用する真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式などが好ましい。また、薄膜と基材の密着性及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着薄膜の質を変えるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0026】
他方、ガスバリア性被膜層13、23、33は、より高度なガスバリア性を付与するために、また蒸着薄膜層を物理的に保護するために、金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層12、22、32上に設けるものである。
【0027】
そのような目的を達成するため、このガスバリア性被膜層13、23、33は、Si(OR14およびR2Si(OR33(R1、R3はCH3、C25、C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液(コーティング液)からなる薄膜の加熱乾燥被膜とする。以下、コーティング液に含まれる各成分について記述する。
【0028】
2Si(OR33で表されるケイ素化合物において、R3は、CH3、C25、C24OCH3などの加水分解性基であり、R2は有機官能基であり、一般的にはシランカップリング剤として有機層と無機層との密着を向上させるために使用されている。上記した構成の蒸着プラスチックフィルムにおいても金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層とガスバリア性被膜層との密着性向上のためにガスバリア性被膜層の構成材料として用いる。中でも有機官能基(R2)がビニル基、エポキシ基、ウレイド基、イソシアネート基などの非水性官能基を有するものは、非水性であるために熱水に対する耐性を高め、さらにイソシアネート基が重合したイソシアヌレートは、ガスバリア性被膜液中での取り扱いが容易となり、コーティング液のゲル化も遅くなり、シランカップリング剤を添加することによるガスバリア性の低下も起こさずに密着を向上させることができるため、特に好ましく用いられる。
【0029】
上述した加水分解性基とは、酸性、塩基性もしくは中性条件下で水と反応させることによりヒドロキシル基に変換することが可能な基であって、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などを挙
げることができる。これらの中では、コーティング液安定性などの観点から、アルコキシ基が好ましく用いられる。アルコキシキ基の中では、炭素数1〜5の低級アルコキシ基がより好ましい。これらのアルコキシ基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。より好ましいのはメトキシ基およびエトキシ基である。
【0030】
またイソシアヌレートとは、3つのイソシアネート基が重合して環状になったものをいう。上記したコーティング液に用いられるイソシアヌレートとしては、イソシアネート基含有シランが3つ環状に重合したものが挙げられる。
【0031】
また、水酸基を有する水溶性高分子とは、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類を指す。特にポリビニルアルコール(以下PVAと表す)をコーティング液の成分として用いた場合にはガスバリア性が最も優れるようになる。ここで言うPVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化PVAまでを含んでいる。
【0032】
ガスバリア性被膜層13、23、33を構成するコーティング液は、例えば、加水分解したSi(OR14と水酸基をもつ水溶性高分子、R2Si(OR33をどの順番で混合して調製しても効果が発現するようになるが、Si(OR14とR2Si(OR33を別々に加水分解してから水溶性高分子に添加する方法はSiO2の微分散およびSi(OR14の加水分解効率を考慮すると望ましい方法である。
【0033】
このようなコーティング液へ、インキや接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止性等が付与されるように、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加剤などを、ガスバリア性や耐水性の発現を阻害しない範囲で添加することができる。
【0034】
このようなコーティング液からなる薄膜の加熱乾燥後の厚みは特に限定されるものではないが、厚みが50μmを越えるとクラックが生じやすくなる可能性があるため、0.01〜50μm程度とすることが望ましい。
【0035】
ガスバリア性被膜層の形成方法としては、例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット印刷法などを用いることができる。これらの薄膜形成方法を用いて蒸着薄膜層の上に前記したコーティング液からなる薄膜を形成した後、加熱乾燥してガスバリア性被膜層を設ければよい。
【0036】
この際の加熱乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射乾燥、赤外線照射乾燥、UV照射乾燥などが採用できる。これらの加熱乾燥方法によりコーティング液からなる薄膜に熱をかけ、水分子を飛ばして薄膜を加熱乾燥すればよい。また、これらの乾燥方法を2つ以上組み合わせて行ってもかまわない。
【0037】
薄膜の表面にかかる熱が200℃以上の高温であると、得られるガスバリア性被膜層のガスバリア性はさらに向上し、また耐湿性、耐水性も向上する。200℃以上の加熱処理を行うことにより、たとえ、このガスバリア性被膜層に液体内容物が作用したり、高温環境下におかれるようになったとしてもガスバリア性被膜層が劣化することがなく、高いバリア性および密着性を維持することができるようになる。これは、高温処理により、ガスバリア性被膜層中に含まれる加水分解金属アルコキシドの縮合が進み、水溶性高分子の脱水が十分に行われるようになるからである。
【0038】
200℃以上の高温加熱処理方法としては、一般的な熱風乾燥法、熱ロール乾燥法を用いればよい。また、ガスバリア性被膜表面を数千度の炎で加熱処理するフレーム処理法でも同様の効果が得られる。
【0039】
本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体10、20、30は、以上のような構成になる蒸着プラスチックフィルム14、24、34が段ボール15、25、35の少なくとも片面に積層されてなるものである(図1〜図3参照)。
【0040】
一般に段ボールは、「ライナー」と呼ばれる表裏側に位置する紙と、「中しん」と呼ばれる段をつける波型の部分が組み合わされてなるものである。そして、「ライナー」と「中しん」の組合せにより段ボールの種類が決定され、また、フルート(段)の数や重ね方によって厚さや強度が変わるが、蒸着プラスチックフィルム14、24、34を積層する段ボール15、25、35としてはいずれのものも用いることができる。
【0041】
このような段ボール15、25、35に蒸着プラスチックフィルム14、24、34を貼り合せるための接着剤としては、特に制限はないが、防湿性付与のための貼り合わせであることより、耐水性がありグラビアコーティング法などでコーティング可能である、ポリウレタン樹脂(溶剤系・エマルジョン系)接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂エマルジョン接着剤、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、α−オレフィン系接着剤などを適宜用いることができる。
【0042】
また蒸着プラスチックフィルムの積層に当たっては、蒸着プラスチックフィルムの金属または金属酸化物の蒸着薄膜層の物理的な保護や機械適正の付与などを目的として、前述したように段ボール15、25、35以外に、1枚以上のプラスチックフィルム26、36を貼り合わせるようにしても構わない(図2、図3参照)。
【0043】
この貼り合わせに用いるプラスチックフィルム26、36として、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルムなどが用いられる。これらは、延伸されたものでも、未延伸のものでもよい。また熱によって溶融し相互に融着する、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などの樹脂からなるフィルムを使用することもできる。厚みは用途によって適宜決められるが、好ましいのは10〜100μm程度である。
【0044】
このようなプラスチックフィルム26、36は、例えば、蒸着プラスチックフィルム)にラミネートさせ、さらにそれを段ボール25、35の片面に貼り合わせるようにして、段ボール積層体とすればよい。
【0045】
本発明の防湿段ボール箱は、以上のような構成になる段ボール積層体を使用し、製函することにより得られる。図4は、前述したように、このようにして得られた防湿段ボール箱40が封緘テープ41で封緘されている状態を示している。
【0046】
本発明の防湿段ボール箱にその収納空間に収納物を収納し、金属または金属酸化物の蒸着薄膜層を少なくとも有する封緘テープにより封緘することにより、収納空間の防湿性をより確実に確保できるようになる。
【0047】
封緘テープの粘着剤層を構成する粘着剤としては、周知のアクリル系、ポリエステル系、酢酸ビニル系、ゴム系、シリコン系の粘着剤が使用できる。
【0048】
これらの中では、耐熱性や耐候性に優れるアクリル系粘着剤が好ましく使用される。アクリル系粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステルとアクリル酸の共重合体を主成分として、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などを副成分とした粘着剤をより具体的な例として挙げることができる。
【0049】
架橋剤は、粘着剤層の耐熱性や耐クリープ性などを改善するために使用される。具体的には、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、有機金属系、キレート系、アミン系などの反応型架橋剤、または、ジアクリレート系、ジビニル系などの多官能ビニルモノマーである共重合体型架橋剤などが挙げられる。さらに粘着付与剤、可塑剤など他の副成分を、適宜、目的に応じて添加してもかまわない。
【0050】
粘着剤を封緘テープの基材にコーティングする方法としては公知のコーティング法でよい。粘着剤層の形成の際には、離型背面処理を施したり、あるいは離型紙または離型フィルムを貼り合わせるようにしてもよい。
【0051】
粘着剤層の厚みとしては、5〜100μm程度であればよい。より好ましくは10〜30μm程度である。
【0052】
以下、本発明の防湿段ボール箱を具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0053】
プラスチックフィルム基材として、厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、電子線加熱方式による真空蒸着装置によって、厚みが15nmの酸化アルミニウムからなる透明蒸着薄膜層を積層した。蒸着の際には、酸素ガスを導入した。
【0054】
次に、下記のようにしてA液、B液、C液、D液、E液、F液を調製した。
<A液>
テトラエトキシシラン(Si(OC254)20gとメタノール10gに塩酸(0.1N)70gを加え、30分間攪拌て加水分解させた加水分解溶液。
<B液>
ポリビニルアルコールの5%、水/メタノール=95/5水溶液。
<C液>
1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを水/IPA=1/1溶液で調製した加水分解溶液。
<D液>
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランとイソプロピルアルコール(IPA溶液)に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調製した加水分解溶液。
<E液>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調製
した加水分解溶液。
<F液>
ビニルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い調製した加水分解溶液。
【0055】
続いて、下記のようにしてガスバリア性被膜層形成用のコーティング液a、b、c、dを調製した。
<コーティング液a>
A液、B液、C液をA/B/C=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性のコーティング液aとした。
<コーティング液b>
A液、B液、D液をA/B/D=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性のコーティング液bとした。
<コーティング液c>
A液、B液、E液をA/B/E=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性のコーティング液cとした。
<コーティング液d>
A液、B液、F液をA/B/F=70/20/10(重量%)の割合で混合し、ガスバリア性のコーティング液dとした。
【0056】
そして、上記工程で得られた透明蒸着薄膜積層体の蒸着薄膜層の上に、上記したコーティング液a、b、c、dの薄膜をグラビアコート法でそれぞれ設け、しかる後に120℃で2分間乾燥させ、厚みが0.5μmのガスバリア性被膜層を形成し、蒸着プラスチックフィルムa〜dを得た。
【0057】
また、蒸着の際に酸素ガスを導入せず、アルミ蒸着を行ったこと以外は蒸着プラスチックフィルムaの製造方法と同様にして、蒸着プラスチックフィルムeを得た。
【0058】
さらに、蒸着薄膜層を酸化珪素からなるものとした以外は蒸着プラスチックフィルムaの製造方法と同様にして、蒸着プラスチックフィルムfを得た。
【0059】
さらにまた、ガスバリア性被膜層を設けなかったこと以外は蒸着プラスチックフィルムaの製造方法と同様にして、蒸着プラスチックフィルムgを得た。
【0060】
以上のようにして得られた蒸着プラスチックフィルムa〜gとプラスチックフィルム(厚みが60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)hのそれぞれと段ボールとを、ポリウレタン樹脂溶剤系接着剤を介して貼り合わせることにより、段ボール積層体a〜hを得た。続いて、これらの段ボール積層体a〜hを使用し、蒸着プラスチックフィルムa〜g側、あるいはプラスチックフィルムh側が内面に位置するようにして製函し、本発明に係る防湿段ボール箱a〜fと比較のための段ボール箱g、hを得た。この際、段ボールとしては、Aフルートの両面段ボールを用いた。
【0061】
なお、防湿性の程度を比較するため、蒸着プラスチックフィルムやプラスチックフィルムを貼り合わせていない、段ボールの水蒸気透過度も測定してみたが、測定不能であった。
<評価1>
上記のようにして得られた段ボール箱a〜hの一部を構成する段ボール積層体a〜hに対して、水蒸気透過度(g/m2・day)の測定を行い、防湿性を評価した。測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

本発明に係る防湿段ボール箱は、優れた防湿性を備えていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【図2】他の段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【図3】さらに他の段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。本発明の防湿段ボールを構成する積層体の部分断面図である。
【図4】本発明の防湿段ボール箱を封緘シールで封緘したときの様子を示す説明図である
【符号の説明】
【0064】
11、21、31 プラスチックフィルム基材
12、22、32 金属または金属酸化物からなる蒸着薄膜層
13、23、33 ガスバリア性被膜層
14、24、34 蒸着プラスチックフィルム
15、25、35 段ボール
26、36 プラスチックフィルム
40 段ボール箱
41 封緘テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属酸化物の蒸着薄膜層と、Si(OR14およびR2Si(OR33(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合した溶液からなる薄膜の加熱乾燥被膜であるガスバリア性被膜層とを少なくとも有する蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面に積層されている段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルム積層側が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱。
【請求項2】
前記蒸着プラスチックフィルムの金属または金属酸化物の蒸着薄膜層の厚みが5〜100nmであることを特徴とする請求項1記載の防湿段ボール箱。
【請求項3】
前記蒸着プラスチックフィルムにはさらにプラスチックフィルムが積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の防湿段ボール箱。
【請求項4】
金属または金属酸化物の蒸着薄膜層を少なくとも有する封緘テープにより封緘されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防湿段ボール箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−120645(P2010−120645A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293113(P2008−293113)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】