説明

防湿紙

【課題】基紙層と防湿層とを人手により容易に剥がすことができ、基紙層と防湿層との両方を容易にリサイクルすることができる防湿紙の提供。
【解決手段】基紙層2と、この基紙層2の一方の面側に積層される合成樹脂製の防湿層3とを備える防湿紙1であって、上記防湿層3が押出ラミネート法により基紙層2に疑似接着状態で積層されており、上記基紙層2と上記防湿層3との剥離強度が0.02N/5cm以上5N/5cm以下であることを特徴とする。上記防湿層3の引張強さが、0.45kN/m以上1.5kN/m以下であるとよい。上記合成樹脂が、ポリプロピレンを含むとよい。上記合成樹脂のビカット軟化点が139℃以上155℃以下であるとよい。上記防湿層3の平均厚さが、10μm以上50μm以下であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿紙に関する。特にPPC(プレーンペーパーコピー)用紙等の包装に好適な防湿紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾式コピーに用いられるコピー用紙が吸湿すると摩擦係数が高くなり、コピーの際に複数枚のコピー用紙が重なってコピー機内に給紙される重送が生じてしまうことがある。そのため、コピー用紙は、防湿紙で包装され、流通・備蓄段階での吸湿が防止されている。かかるコピー用紙以外でも、例えば金属製品等の湿気を嫌う物品は同様に防湿紙で包装されている。
【0003】
かかる防湿紙としては、従来、基紙層上にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを防湿層としてラミネートしたものが用いられている。このような防湿紙は、ポリオレフィンの防湿層を有することにより防湿性に優れるものであるが、基紙層と防湿層とを容易に分離することができず、リサイクルが困難である。そこで、防湿層を水中又はアルカリ溶液中で容易に溶解又は離解することができる防湿紙が各種開発されている(特許4354661号公報、特開平9−67795号公報参照)。
【0004】
しかし、これらの溶解又は離解可能な防湿層を有する防湿紙をリサイクルする場合、基紙層表面に防湿層の成分が一部残っていると、再生紙の品質が悪化するため、充分にこれを除去しなくてはならず、そのために非常に手間がかかるという不都合がある。また、そのような防湿紙は、家庭やオフィス等では防湿層を分離することが困難であるという不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4354661号公報
【特許文献2】特開平9−67795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、基紙層から防湿層を容易に分離でき、基紙層と防湿層との両方を容易にリサイクルできる一方、包装時や運搬時には防湿層が剥がれにくい防湿紙を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
基紙層と、
この基紙層の一方の面側に積層される合成樹脂製の防湿層と
を備える防湿紙であって、
上記防湿層が押出ラミネート法により基紙層に疑似接着状態で積層されており、
上記基紙層と上記防湿層との剥離強度が0.02N/5cm以上5N/5cm以下であることを特徴とする防湿紙である。
【0008】
本発明の防湿紙は、防湿層が押出ラミネート法で基紙層に積層されることで、防湿性を高めることができる。基紙層と防湿層とが、剥離強度5N/5cm以下の疑似接着状態で積層されていることより、これらを人の手で引っ張って容易に分離することができ、基紙と防湿層の両方を効率良くリサイクルすることができる。また、分離した基紙層に防湿層が混入することを抑制できるため、リサイクルにより良質な再生紙を生産することができる。さらに、上記基紙層と上記防湿層との剥離強度を0.02N/5cm以上とすることで、被包装物の包装時及び搬送時に防湿層が基紙層から剥がれることを抑制することができる。
【0009】
上記防湿層の引張強さが、0.45kN/m以上1.5kN/m以下であることが好ましい。防湿層の引張強さが0.45kN/m以上であることで、例えば当該防湿紙が包装紙として用いられ、防湿層と基紙層とが接着剤により接着された部分を剥がして開梱する場合、防湿層は破れずに基紙層が破れるように剥がすことができ、接着剤の基紙層側への混入を抑制することができる。これにより基紙層を再生紙の原料とする場合に、この原料への接着剤の混入をより少なくすることができる。また、上記防湿層の引張強さを1.5kN/m以下とすると、防湿層が不必要に厚くならず防湿紙が折り曲げやすくなる。
【0010】
当該防湿紙を構成する合成樹脂がポリプロピレンを含むとよい。ポリプロピレンを防湿層に用いることで、当該防湿紙の防湿性をより向上させることができる。またポリプロピレンを用いることで防湿層をより裂けにくくして、基紙層側に接着剤が残ることをより抑えることができる。
【0011】
当該防湿紙においては、上記合成樹脂のビカット軟化点が139℃以上155℃以下であるとよい。ビカット軟化点が上記範囲の合成樹脂を防湿層に用いることで、基紙層と防湿層との剥離強度を適当な範囲にすることができ、人手で剥がしやすく、かつ使用時に防湿層が剥がれにくい防湿紙とすることができる。
【0012】
当該防湿紙においては、上記防湿層の平均厚さが、10μm以上50μm以下であるとよい。防湿層の厚さを10μm以上とすることで、防湿紙の防湿性及び強度をより高めることができる。上記防湿層の厚さを50μm以下とすることで、防湿層が必要以上に厚くならず、防湿紙が折り曲げやすくなる。
【0013】
当該防湿紙は、透湿度が20g/(m・24h)以上50g/(m・24h)以下であるとよい。透湿度が50g/(m・24h)以下でとすることで、高い防湿性を必要とするコピー用紙の包装紙として用いることができる。また、透湿度を20g/(m・24h)以上とすることで、防湿層が必要以上に厚くならず、防湿紙が折り曲げやすくなる。
【0014】
当該防湿紙は、上記防湿層の静摩擦係数が0.01以上0.8以下であるとよい。静摩擦係数を上記範囲とすることで、包装紙として用いる防湿紙と被包装物との摩擦による静電気の発生を抑えることができる。
【0015】
当該防湿紙においては、上記基紙層を構成する紙素材がクラフト紙であるとよい。基紙層をクラフト紙とすることで、当該防湿紙の強度をより高めることができる。
【0016】
当該防湿紙は、上記特性を有しているため、PPC用紙の包装用に好適に用いることができる。
【0017】
ここで「疑似接着状態」とは、基紙層と防湿層が通常の使用状態では接着しているが、両者を剥離させる場合には、人手で引っ張るのみで容易に剥離し、単に重ね合わせて押圧するのみでは再接着することができない状態を意味する。この「単に重ね合わせて押圧するのみでは、再接着できない状態」という点において、疑似接着状態は通常の粘着材による積層とは異なる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の防湿紙によれば、基紙層と防湿層とを人手により容易に剥離することができるため、基紙層と防湿層との両方を容易にリサイクルすることができる一方、包装時や、運搬時には基紙層から防湿層が剥がれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る防湿紙の断面模式図である。
【図2】本発明の防湿紙の製造方法の一実施例を示す工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態の防湿紙について説明する。本発明の防湿紙は高い防湿性を有するため、コピー用紙の包装紙等に好適に用いられる。図1に示すように防湿紙1は、基紙層2と、基紙層2の一方の面側に積層された防湿層3とから構成される。
【0021】
基紙層2として用いる紙は、特に限定されず、例えば、未晒クラフト紙、半晒クラフト紙、晒クラフト紙等のクラフト紙や上質紙、中質紙、純白ロール、グラシン紙、感熱紙、感圧紙、和紙、合成紙、トレーシングペーパー、各種コート紙、板紙、ライナー紙等が挙げられる。これらのうち、強度及び経済性の観点から、クラフト紙が好ましい。
【0022】
基紙層2としては、非再生紙又は再生紙のいずれも使用することができる。再生紙を使用する場合の基紙層2の古紙含有率は、経済性及び環境負荷の観点から5%以上が好ましく、30%以上が特に好ましい。一方、防湿紙1の強度を確保する観点から、基紙層2の古紙含有率は、50%以下であることが好ましい。
【0023】
基紙層2の坪量としては、特に限定されないが、防湿紙1の強度を確保する観点からは50g/m以上が好ましく、包装時の折り畳み易さ及び経済性を確保する観点からは、100g/m以下が好ましい。基紙層2として古紙含有率が5%以上50%以下の再生紙を用いる場合は、防湿紙の強度を確保する観点から、坪量は75g/m以上が好ましい。基紙層2として非再生紙を用いる場合は、経済性及び環境負荷の観点から、坪量は75g/m以下が好ましい。
【0024】
基紙層2上に被膜される防湿層3に用いる合成樹脂としては、特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル酸エチル樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、エチレン−アクリル酸メチル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル等が挙げられる。このうち、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が、防湿性の観点から好ましく、ポリプロピレンが、防湿紙の強度を確保する観点から、特に好ましい。
【0025】
防湿層3に用いられる合成樹脂のビカット軟化点としては、特に限定されないが、139℃以上155℃以下が好ましい。ビカット軟化点が139℃未満の合成樹脂を防湿層に用いると、基紙層と防湿層との剥離強度が高くなりすぎ、基紙層と防湿層とを人手で剥がせなくなくなるおそれがある。一方、ビカット軟化点が155℃を超える合成樹脂を防湿層に用いると、基紙層と防湿層との剥離強度が小さくなりすぎて、防湿紙の使用時に防湿層が剥がれるおそれがある。
【0026】
防湿層3に用いられる合成樹脂の市販品としては、ポリエチレンとして、「PES−20(商品名)」日本ユニカー(株)、「NUC−8505(商品名)」日本ユニカー(株)、「サンテックLDL1850A(商品名)」旭化成ケミカルズ(株)、「ヘドロセン342(商品名)」旭化成ケミカルズ(株)が挙げられ、ポリプロピレンとして「FW163(商品名)」チッソ(株)、「F3990(商品名)」チッソ(株)、「FW363A(商品名)」住友化学工業(株)、「LR510(商品名)」昭和電工(株)、「LR710−3(商品名)」昭和電工(株)、「LA221(商品名)」三井石油化学工業(株)、「FL25E(商品名)」三菱油化(株)、「FL25T(商品名)」三菱油化(株)、「MFW2971(商品名)」三井石油化学工業(株)等が挙げられ、エチレン−酢酸ビニルとして、「EVA530(商品名)」東ソー(株)、「EVA541(商品名)」東ソー(株)、「EVA625(商品名)」東ソー(株)、「EVA633(商品名)」東ソー(株)が挙げられる。これらの中でも、ビカット軟化点が139℃以上155℃以下である「FW163(商品名)」チッソ(株)、「F3990(商品名)」チッソ(株)、「FW363A(商品名)」住友化学工業(株)、「LR510(商品名)」昭和電工(株)、「LR710−3(商品名)」昭和電工(株)、「LA221(商品名)」三井石油化学工業(株)、「FL25E(商品名)」三菱油化(株)、「FL25T(商品名)」三菱油化(株)が好ましい。これらは単独でも2種以上を混合しても用いることができる。
【0027】
防湿層3の引張強さは、特に限定されないが、0.45kN/m以上が好ましく、0.50kN/m以上が、特に好ましい。防湿層の引張強さを0.45kN/m以上とすることで、例えば当該防湿紙が包装紙として用いられ、防湿層と基紙層とが接着剤により接着された部分を剥がして開梱する場合、防湿層は破れずに基紙層が破れるように剥がすことができ、接着剤の基紙層側への混入を抑制することができる。これにより基紙層を再生紙の原料とする場合に、この原料への接着剤の混入をより少なくすることができる。また、上記防湿層の引張強さは、1.5kN/m以下が好ましく、1.0kN/m以下が特に好ましい。上記引張強さを1.5kN/m以下とすることで、防湿層が厚くなりすぎることを抑制して、防湿紙を折り曲げやすくすることができる。
【0028】
防湿層3の引張強さは、JIS−P8113に基づいて、幅15mmの試験片を切り出し、引張試験を行ない、得られた最大引張荷重を幅1mに換算して求めた値である。
【0029】
防湿層3は、紫外線吸収剤を含有してもよい。これにより、当該防湿紙をコピー用紙の包装紙に使用した場合に、コピー用紙の紫外線による変色を抑制することができる。
【0030】
また、防湿層3は、帯電防止剤を含有しても良い。これにより、当該防湿紙をコピー用紙用包装紙に使用した場合に、コピー用紙が帯電することを防止でき、コピー機でコピー用紙を使用するときの重送を抑制することができる。
【0031】
防湿層3の引裂強さは、特に限定されないが、5N以上が好ましく、10N以上が特に好ましい。防湿層3の引裂強さが上記範囲であることで、防湿層3を基紙層2から引き剥がす途中で防湿層3が引裂けにくいため、防湿層3が基紙層2から剥がしやすくなる。また、防湿層3の引裂強さは20N以下が好ましく、15N以下が特に好ましい。防湿層3の引裂強さをこの範囲とすることで、防湿紙の経済性を確保し、防湿紙の厚みを押さえて包装をしやすくすることができる。
【0032】
防湿層3の引裂強さは、JIS−K7128−2に基づき、防湿層3から切り出した75mm×63mmの長方形の試験片の長辺中央に、この長辺と垂直に20mmの切り込みを入れたものを用いて、エルメンドルフ引裂試験機により測定した値である。
【0033】
防湿層3の平均厚さの下限としては、特に限定されないが、防湿紙として用いる場合の必要な強度や防湿性を確保する観点から、10μmとすることが好ましい。防湿層3の厚さの上限は、防湿紙を一定の厚みに押さえて包装のし易さを確保する観点及び経済性の観点から50μmとすることが好ましい。
【0034】
防湿層3の静摩擦係数は、特に限定されないが、0.01以上0.8以下が好ましく、0.01以上0.6以下が特に好ましい。静摩擦係数を上記範囲とすることで、包装紙として用いる防湿紙1と被包装物との摩擦による静電気の発生を抑えることができる。
【0035】
防湿層3の静摩擦係数は、防湿層3の表面同士を重ね合わせ、JIS−K7125の規定に準拠して測定した値である。
【0036】
基紙層2と防湿層3とは疑似接着状態とされている。基紙層2と防湿層3との剥離強度は、基紙層2から防湿層3を引き剥がしやすくする観点から、5N/5cm以下とすることを要し、4N/5cm以下とすることが好ましい。また、上記剥離強度は、包装時、搬送時に基紙層2から防湿層3を剥がれにくくする観点から、0.02N/5cm以上とすることを要し、0.05N/5cm以上とすることが好ましい。
【0037】
上記剥離強度の測定は、防湿紙1から幅50mm、長さ200mmの寸法に裁断し、JIS−P8111に準拠して調湿した試験片を用いて行う。この試験片の基紙層2側面を両面テープで金属板に粘着し、試験片の長さ方向が鉛直方向となるように金属板をセットし、試験片下側部分の防湿層3を剥離させて上方に巻き上げ、チャックする。このチャックした部分を上方に300mm/minで引っ張って剥離を進行させ、この間の応力を測定し、この応力の平均値を剥離強度とする。
【0038】
防湿紙1の透湿度は、特に限定されないが、20g/(m・24h)以上50g/(m・24h)以下が好ましい。透湿度が50g/(m・24h)以下であれば、高い防湿性を必要とするコピー用紙用包装紙として好適に用いることができ、その結果コピー機でコピー用紙を用いる場合に、コピー用紙の吸湿による重送を抑制することができる。また、透湿度を20g/(m・24h)以上とすることで、防湿層が必要以上に厚くならず、防湿紙が折り曲げやすくなる。
【0039】
当該防湿紙は、上述のように優れた防湿性及びリサイクル性を備え、各種製品の包装用途に用いることができる。当該防湿紙は、特に防湿性が要求され、かつ、使用量が多くリサイクルの要請が高いPPC用紙の包装用として好適に用いることができる。
【0040】
(当該防湿紙の製造方法)
当該防湿紙は、押出ラミネート法で製造される。良好な疑似接着状態を得るためには、押出ラミネート法により防湿層3を基紙層2に積層する。以下、図2を参照に当該防湿紙の製造方法を説明する。図2においてTダイ10の鉛直下方の両側に圧着ロール11と冷却ロール12とが対向して配設されている。繰り出しロール(図示せず)から、圧着ロール11と冷却ロール12との間に基紙層2が供給される。Tダイ10から押し出された溶融樹脂13が、基紙層2の上側に重なり合うように圧着ロール11と冷却ロール12の間に供給される。こうして基紙層2と溶融樹脂13とは、圧着ロール11と冷却ロール12との間で圧着されて疑似接着状態となり、防湿紙1を形成する。形成された防湿紙1は、案内ロール14を介して巻き取りロール(図示せず)へと巻き取られる。
【0041】
防湿層3の厚さは、溶融樹脂の押出温度や押出速度、基紙層2の送り速度、圧着ロール11と冷却ロール12との間に加えられる圧力等によって適宜調整することができる。
【0042】
また、防湿層3の剥離強度は主に溶融樹脂13の押出温度によって調整することができる。この押出温度は、特に限定されないが、より良好な疑似接着状態を得る観点から、180℃以上340℃以下が好ましい。防湿層3をポリエチレンとする場合は、180℃以上280℃以下が好ましく、190℃以上210℃以下が特に好ましい。防湿層3をポリプロピレンとする場合は、270℃以上340℃以下が好ましく、310℃以上330℃以下が特に好ましい。
【0043】
押出ラミネートの際に使用する冷却ロール12としては、特に限定されないが、基紙層2と防湿層3との疑似接着状態を得るために、冷却ロール12の表面にセミミラー仕上げを施したもの又はミラー仕上げを施したものを使用することが好ましく、ミラー仕上げを施した冷却ロール12を使用することがより好ましい。
【0044】
基紙層2と防湿層3との剥離強度の調整方法として、上述の冷却ロール12表面の仕上げの種類を選択する方法や、防湿層3の押出温度を調整する方法に限られず、各種の方法を用いることができる。例えば、押出す防湿層3用の樹脂と基紙層2との積層圧力を調節する方法や、防湿層3と基紙層2の材質を選択する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づき本発明を詳述する。
【0046】
(実施例1)
以下の条件にて押出ラミネート法により、基紙層上に防湿層を積層して、実施例1の防湿紙を作製した。防湿層の厚みが15μmになるように作製条件を設定した。
・基紙層:未晒クラフト紙(坪量70g/m
・防湿層素材:ポリプロピレン(チッソ(株)社製「FW163」)
・冷却ロール:ミラー仕上げ
・押出温度:340℃
【0047】
(実施例2〜5及び比較例1、2)
作製条件を表1に記載した通りとした以外は、実施例1と同様にして、押出ラミネート法により、実施例2〜5及び比較例1、2の防湿紙を得た。防湿層の平均厚さが表1に記載の数値になるように作製条件を設定した。なお、実施例4のポリエチレンには、日本ユニカー(株)社製「PES−20」を用い、実施例5のエチレン−酢酸ビニル樹脂には、東ソー(株)社製「EVA541」を用いた。
【0048】
(比較例3)
基紙層にドライラミネート法でポリエチレン製の防湿層を積層した市販のポリエチレンラミネート紙を、比較例3の防湿紙とした。
【0049】
(比較例4)
基紙層に水解離性の防湿層を塗工法により形成させた出願人商品「トケバリア(商品名)」を比較例4の防湿紙とした。
【0050】
<評価>
上記実施例及び比較例の防湿紙に対し、下記の各種評価を下記方法で行った。
【0051】
(防湿層の平均厚さ)
実施例1〜5及び比較例1〜3の防湿紙の断面を光学顕微鏡を用いて観察し、防湿層の厚さを10箇所にて測定し、その測定値の算術平均を防湿層の平均厚さとした。
【0052】
(基紙層と防湿層との剥離強度)
実施例1〜5及び比較例1、2の防湿紙から幅50mm、長さ200mmの試験片を裁断した。JIS−P8111に準拠して、この試験片を、室温23℃、湿度50%に調整した室内で24時間保持して、調湿した。この試験片の片側面を両面テープで金属板に粘着し、試験片の長さ方向が鉛直方向となるように金属板をセットし、試験片下側部分の防湿層を剥離させて上方に巻き上げ、チャックした。このチャックした部分を上方に300mm/minで引っ張って剥離を進行させ、この間の応力を測定した。この応力の平均値を剥離強度とした。
【0053】
(引張強さ)
実施例1〜5及び比較例1、2の防湿紙から剥がした防湿層からJIS−P8113に基づいて幅15mmの試験片を切り出し、引張試験を行った。得られた最大引張荷重を幅1mに換算した値を引張強さとした。
【0054】
(透湿性)
実施例1〜5及び比較例1〜4の防湿紙の透湿度を、JIS−Z0208のB法に基
づき、以下の手順で透湿性試験を行った。各防湿紙から直径70mmの円形試験片を切り出し、試験片中央の直径60mmの部分を測定範囲とした。これを防湿層を外側にして塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、周囲を封ロウ剤で密閉した。この透湿カップを恒温恒湿槽に入れて、温度40℃、湿度90%に調整して24時間保持した。室温23℃、湿度50%に調節した室内に透湿カップを取り出し、その質量を化学天秤で測定した。透湿カップを恒温恒湿槽へ戻し、さらに24時間保持した後、再度透湿カップの質量を測定した。この2度の質量測定から透湿カップの増加質量を算出し、下記式(1)から透湿度を算出した。
透湿度=240×M/(T×S)(単位:(g/m・24h)) ・・・(1)
S:透湿面積(cm
T:透湿カップを恒温恒湿槽内に保持した時間(=24h)
M:透湿カップ増加質量(mg)
【0055】
(静摩擦係数試験)
実施例1〜5及び比較例1、2の防湿紙から採取した試験片を用い、各防湿紙の静摩擦係数を、防湿層同士を重ね合わせて、JIS−K7175に基づいて測定した。
【0056】
(防湿層の分離容易性)
実施例1〜5及び比較例1、2の防湿紙から50cm×50cmに切り出した試験片を用いて、基紙層と防湿層とを人手により引き剥がし、防湿層の分離容易性を調べた。目視により基紙層又は防湿層の一方が他方側に残っていないことが確認できたものを「○」、基紙層又は防湿層の一方が少しでも他方側に残った場合は「×」とした。
【0057】
(運搬時の剥離耐性)
実施例1〜5及び比較例1、2の防湿紙から切り出したものを包装紙として用い、運搬時の剥離耐性を調べた。A4コピー用紙500枚を包装したものを、両手でつかんで上下左右に100回ずつ、勢いよく振動させた。このような振動後において、基紙層から防湿層が全く剥がれなかったと確認できたものを「○」、基紙層から防湿層が少しでも剥がれたものを「×」とした。
【0058】
(接着剤の除去容易性)
実施例1〜5及び比較例1、2から切り出した試験片の防湿層表面と基紙層表面とをコピー用紙包装用のホットメルト接着剤にて接着した。この接着部周囲の防湿層を引っ張り接着剤の基紙層からの除去容易性を調べた。基紙層が破れる等して接着剤が基紙層から剥がれたもの「○」、防湿層の方が破れて基紙層2に接着剤が残ったものを「×」とした。
【0059】
表1に、作製条件及び評価結果を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果から、押出ラミネート法による防湿層は、他の製法による防湿層に比べ、透湿度に優れることが示された。基紙層と防湿層との剥離強度は、包装した物品の運搬時に防湿層が基紙層から剥がれないようにするために一定値以上であること、人手により基紙層から防湿層を容易に剥がせるようにするために、一定値以下であることを要するといえる。接着剤を基紙層から除去容易とするためには、防湿層の引張強さも一定値以上であることが好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の防湿紙は、上述のように、基紙層と防湿層とを人手により容易に剥がすことができるため、基紙層と防湿層の両方を容易にリサイクルできるPPC用紙等の包装紙を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 防湿紙
2 基紙層
3 防湿層
10 Tダイ
11 圧着ロール
12 冷却ロール
13 溶融樹脂
14 案内ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙層と、
この基紙層の一方の面側に積層される合成樹脂製の防湿層と
を備える防湿紙であって、
上記防湿層が押出ラミネート法により基紙層に疑似接着状態で積層されており、
上記基紙層と上記防湿層との剥離強度が0.02N/5cm以上5N/5cm以下であることを特徴とする防湿紙。
【請求項2】
上記防湿層の引張強さが、0.45kN/m以上1.5kN/m以下である請求項1に記載の防湿紙。
【請求項3】
上記合成樹脂がポリプロピレンを含む請求項1又は請求項2に記載の防湿紙。
【請求項4】
上記合成樹脂のビカット軟化点が139℃以上155℃以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防湿紙。
【請求項5】
上記防湿層の平均厚さが、10μm以上50μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防湿紙。
【請求項6】
透湿度が20g/(m・24h)以上50g/(m・24h)以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防湿紙。
【請求項7】
上記防湿層の静摩擦係数が0.01以上0.8以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の防湿紙。
【請求項8】
上記基紙層を構成する紙素材がクラフト紙である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の防湿紙。
【請求項9】
PPC用紙の包装用である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の防湿紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−56197(P2012−56197A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201689(P2010−201689)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】