説明

防滑性粘着シート

【課題】 滑り止め性能に優れ、外面に滑り止め性能を要求されるような敷物や袋などの包装資材について、生産性を低下させることなく防滑性を付与できる防滑性粘着シートを提供する。
【解決手段】 基材と、その片面に設けられ、発泡性マイクロカプセルと接着剤とを含む塗膜によって形成された防滑層と、他方の面に設けられた粘着層とを有することを特徴とする防滑性粘着シート。発泡性マイクロカプセルの平均粒子径は、未膨張の状態で1〜50μmに設定できる。接着剤には、酢酸ビニル系樹脂を用いるのが好ましい。粘着層の表面にはさらに剥離シート層を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑性を備えたシートに関し、特に裏面に粘着層を有する防滑性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の分野において防滑性が要求されている。それに応えるように、各種防滑性(滑り止め)シートが提案されている。このような防滑性シートは、実際に種々の用途、例えばランチョンマット、玄関マット、カーペットなどの各種敷物、人形、花瓶などの各種置物などの滑り止めや段ボール箱などの積荷の荷崩れ防止などに使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、変性ビニル系樹脂エマルジョンから形成された滑り止めシートを提案している。しかし、特許文献1記載の滑り止めシートでは、このシート上に物品を載置することで、確かにそれが当該物品の滑りを抑えることができるが、滑り止め効果はまだ十分とはいえない。
【0004】
また、外面に滑り止め性能を要求されるような前記の敷物や袋などの包装資材を製造する場合、当該敷物や包装資材の材料としてこのような滑り止めシートを用いると、その滑り止め性能から、当該シートの成形又は加工を行う一連の工程において種々のトラブルが生じる。このトラブルは、当該敷物や包装資材の生産性の低下を引き起こすことになる。
【特許文献1】実用新案登録3115849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑み、滑り止め性能に優れ、外面に滑り止め性能を要求されるような敷物や袋などの包装資材について、生産性を低下させることなく防滑性を付与できる防滑性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、本発明によれば、基材と、その片面に設けられ、発泡性マイクロカプセルと接着剤とを含む塗膜によって形成された防滑層と、他方の面に設けられた粘着層とを有することを特徴とする防滑性粘着シートによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防滑性粘着シートは、その片面に発泡性マイクロカプセルと接着剤とを組み合わせて防滑層を形成したので、防滑性が大きい、又は、すべり止めの対象が多岐に渡る等、従来品より優れた防滑性能を備える。また、このようにして得られる防滑性シートの他方の面に粘着層を設けることとしたので、袋状の成形加工物、段ボール箱、カーペットやマットなどのシート状物などの適宜の面または一部の部位に、任意の時期に効果的に優れた防滑性能を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の防滑性粘着シートは、防滑層、基材層および粘着層の少なくとも3層を順次積層して形成されたものである。本発明において、防滑層は、防滑性に優れる発泡性マイクロカプセルと接着剤との混合物で形成する。なお、発泡性マイクロカプセルはまた、熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれるが(これらは同義である)、本明細書では、「発泡性マイクロカプセル」を使用するものとする。
【0009】
[発泡性マイクロカプセル]
本発明における発泡性マイクロカプセルは、芯物質を外殻物質で包んだ微小粒径の球状体である。芯物質としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の低分子量炭化水素及びCClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン等のシラン化合物等の低沸点有機溶剤が例示される。特に好ましい低沸点有機溶剤はブテン、イソブタン、イソブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等、沸点−20〜50℃の低分子量炭化水素である。
【0010】
外殻物質としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸;それらのエステル類、アミド類、ニトリル類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等のビニル芳香族類;塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物、塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、ジビニルベンゼン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等のジエン類等の重合性単量体を重合することによって得られたポリマーなどが例示される。上記のうち特に好ましい重合性単量体は、(メタ)アクリル酸とそれらのエステル類、ニトリル類、ビニリデン化合物等、共重合物が熱可塑性でガスバリア性を有するものである。外殻物質に該重合成単量体を含有させてガスバリア性を付与することで、発泡性マイクロカプセル膨張後の芯物質の損失による収縮を効果的に防止できる。
【0011】
また、芯物質については、上記の低沸点有機溶剤と他の特定の性質(例えば、芳香性や害虫忌避性など)を備えた物質との混合物を用いることができる。芯物質にこのような物質を混合することで、当該物質またはその成分が外殻物質を透過して外部に徐放され、発泡マイクロカプセルに芳香性や害虫忌避性等の特定の性質を付与することができる。
【0012】
この発泡性マイクロカプセルは、加熱によりまず外殻物質が軟化し、それとともに内包されている芯物質がガス化し始める結果、内圧が上がり、膨張する性質を備えている。この膨張は、芯物質および外殻物質の種類、平均粒子径ならびに乾燥温度を変化させることで、その度合いを種々調整することができる。本発明においては、発泡性マイクロカプセルの平均粒子径は、未膨張の状態で1〜50μm、好ましくは5〜45μm、より好ましくは5〜30μmに設定するのがよい。この発泡性マイクロカプセルの平均粒径が前記範囲未満である場合、所望の防滑効果が得られず、また前記範囲よりも大きい場合には、これを用いた防滑性付与のための加工が困難になる。
【0013】
このような発泡性マイクロカプセルには、公知の市販品を用いることができる。市販品は、具体的には、マツモトマイクロスフェアー(登録商標)F−20、F−30、F−36、F−46、F−50、F−77,F−79、F−793、F−80S、F−82、F−100、F−102(松本油脂社製);エクスパンセル(登録商標)WU、DU、WUFの各シリーズ(日本フィライト社販売);アドバンセル(登録商標)EMシリーズ(積水化学工業社製)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは組み合わせて使用できる。例えば、膨張特性の異なる2種以上の発泡性マイクロカプセルを組み合わせる場合、一定条件で発泡させた発泡後のマイクロカプセルの粒径分布をブロードにでき、および/または使用温度範囲を大きくできる利点がある。
【0014】
[接着剤]
前記防滑層における接着剤としては、その硬化により前記発泡性マイクロカプセルを防滑層中に固定できる粘着剤や接着剤であれば特に限定されず、水性、非水性、電子線または紫外線硬化型などのいずれも使用できる。水性の接着剤としては、樹脂の水性エマルション(ラテックス系バインダー)や水溶性バインダーが使用でき,非水性としては油溶性バインダーが使用できる。また、電子線或いは紫外線硬化型は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー,オリゴマー或いはプレポリマーなどを使用することもできる。
【0015】
ラテックス系バインダーとしては、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス,メチルメタクリレート−ブタジエン系ラテックス,アクリル酸エステル系ラテックス,酢酸ビニル系ラテックス,塩化ビニル系ラテックス及びこれらにアクリル酸などの官能基を含有させたものが挙げられる。
【0016】
水溶性バインダーとしては、ゼラチン,カゼインなどのプロテイン類;エーテル化澱粉,エステル化澱粉,酸化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類;アルギン酸ソーダ,アラビヤゴムの多糖類などの水溶性天然高分子化合物;ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリビニルピロリドン,ポリアクリルアミド,マレイン酸共重合体などの水溶性合成高分子化合物が挙げられる。
【0017】
油溶性バインダーとしては、各種ロジン,コーパル,ダルマン等の天然樹脂;エチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,セルロースアセテートプロピオネート,重合ロジン,エステルガム等の半合成樹脂;フェノール樹脂,メラミン樹脂,キシレン樹脂,尿素樹脂,石油樹脂,アルキド樹脂,アクリル樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体,ポリアミド樹脂,ポリウレタン,エポキシ樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0018】
また、電子線或いは紫外線で硬化するエチレン性不飽和結合を有するモノマー,オリゴマー,プレポリマーとしては、各種単官能,多官能の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエステルアクリレート,ポリウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0019】
これらの接着剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。単独で接着剤を用いる場合、取り扱いが容易で、防滑性に優れることから、これらのうちでは酢酸ビニル系ラテックスを用いるのが好ましい。また、酢酸ビニル系ラテックスは、紙との接着性に優れるので、紙を基材として用いる場合にはより好適に使用できる。
【0020】
前記発泡性マイクロカプセルおよび接着剤以外にも、防滑層には各種の助剤を含有させることができる。このような助剤としては、例えばシリカ,水酸化アルミニウム,炭酸カルシウム,カオリン,酸化チタン,プラスチックピグメント等の顔料、シリコーンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の離型剤、再剥離粘着剤に使用される微粘着粒子、界面活性剤、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、着色剤、蛍光染料などが挙げられる。また、この助剤には、例えば常温で芳香剤や害虫忌避剤等の特定の薬液を所定量内包し、ブロックコポリマー分子が界面活性剤状に配位した所定の厚さの界面膜をもつエマルジョン液滴を含有するポリマー組成物を含めることができる。このようなポリマー組成物としては、例えば、特開2008−169258号公報において提案されているものが挙げられる。これらの助剤は、必要に応じて単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
[防滑剤塗料混合液の調製]
前記した発泡性マイクロカプセルおよび接着剤、必要に応じて助剤が所定量計量され、これらが混合されて混合組成液が調製される。混合は、必要に応じて溶融して得られた接着剤溶液中に発泡性マイクロカプセルとともに必要に応じて助剤を添加することにより行なうことができる。このとき、公知の混合機などを用いることができる。なお、接着剤溶液中に溶剤を含める必要がある場合には、当該溶剤が発泡性マイクロカプセルの外殻物質を溶解しないように、その種類などを確認した上で用いるようにする。
【0022】
前記発泡性マイクロカプセルと接着剤との混合比は、通常、前者5〜30重量%、後者70〜95重量%に設定される。また、助剤を添加する場合には、前記各原材料の混合比は、通常、全量を100重量%として、発泡性マイクロカプセル5〜20重量%、接着剤50〜80重量%、助剤残量に設定される。
【0023】
[基材]
本発明における基材としてはシート状の材料であれば特に制限なく、例えば上質紙、クラフト紙、ライナー紙、含浸紙、合成紙などの各種紙類;セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどのフィルム;ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂の繊維で、もしくはこれらに木質繊維を混合して製造される不織布や織布、またはこれらの複合体(ラミネート体を含む)をはじめ、従来公知の基材を適宜使用できる。基材の強度および防水性などの点からは不織布が好ましいが、これに限定されない。このように複数層からなるラミネート体とする場合には、そのうちの1層または2層以上に適宜特定の性能を付与させるようにしてもよい。なお、基材と防滑層の密着性が不充分となる場合には、基材表面に予めプライマー処理を施しておくことができる。
【0024】
この基材の厚さは、防滑性粘着シートの強度、その用途、薄型化などの要請などに応じて適宜設定することができる。基材の種類にもよるので一概には言えないが、20μm〜1mm、好ましくは40〜500μm、より好ましくは100〜300μmの範囲に設定することができる。基材の厚さが前記範囲未満の場合、後述する防滑層及び粘着層の形成が困難となり、出来上がる防滑性粘着シート自体の物理的強度も低下するので好ましくない。なお、基材の粘弾性体層や後記の粘着層を設ける面には、コロナ放電処理や火炎暴露などの適宜な密着力向上処理を施すことができる。
【0025】
[粘着層]
前記の粘着層は、常用される公知の粘着剤で形成することができる。粘着層は、適度なクッション性を付与しうる性質を備えていることが好ましい。この粘着剤の種類については特に制限されず、常用される公知のものをいずれも使用できる。例えば、接着強度の大小によって、粘着剤は強粘着タイプ,汎用タイプ,再剥離タイプ,微粘着タイプなどに分類されるが、本発明においてはいずれの種類の粘着剤をも使用可能である。
【0026】
粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)等の合成ゴム,或いは天然ゴムをベースとするゴム系粘着剤などを例示でき、更には上記粘着剤にイソシアネート系,エポキシ系等の架橋剤を添加したり、電子線照射により架橋させるようにしてもよい。アクリル系粘着剤は、粘着性の経時的安定性が優れる為より好ましく使用される。
【0027】
アクリル系粘着剤は、2−エチルヘキシルアクリレート,ブチルアクリレート,エチルアクリレート等を主成分として他の(メタ)アクリル酸エステル,(メタ)アクリル酸,ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,グリシジル(メタ)アクリレート等の官能基含有モノマー、更には、ビニル基を1コ以上有する単官能モノマー、多官能モノマーを、懸濁重合,乳化重合,溶液重合等の方法により共重合して得られる。
【0028】
本発明の防滑性粘着シートを防滑層と粘着層とが密着した状態で積み重ねて保管することが予想される場合には、そこから防滑性粘着シートを取り出す場合に、防滑層中の発泡性マイクロカプセルが破壊されてしまい、防滑性が低下する可能性があるため、防滑層に対して微粘着性および/または再剥離性を有する粘着剤を用いるのが好ましい。
【0029】
これらの粘着剤には必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤等の助剤が添加され、水性系、溶剤系、ホットメルト系の塗液として調整される。
【0030】
[防滑性粘着シートの調製]
上記防滑層塗料混合液の基材への塗布には、例えばバーコーター,エアーナイフコーター,グラビアコーター,ロールコーター等の塗工機や、グラビア,スクリーン,フレキソ等の印刷機が使用される。防滑層塗料混合液の塗布量は、一般には防滑効果とコストの面から乾燥後の塗布量が2〜30g/m程度、好ましくは5〜10g/mになるように調整される。
【0031】
その後、防滑層塗料混合液を塗布した基材は、防滑層の塗膜を乾燥させるために、乾燥工程を通される。当該工程を通過中に発泡性マイクロカプセルは加熱され、その結果、当該カプセルの発泡が生じる。発泡性マイクロカプセルは、場合によってはこの防滑剤塗膜の乾燥工程以外にも、コーター等による再加熱工程或いは印刷工程中の加熱によっても発泡させることができる。その際の加熱温度は、使用する発泡性マイクロカプセルにおける外殻物質のガラス転移点や処理時間等により変化するので一概に言えないが、前記市販のカプセルの場合には、その種類に応じて90〜200℃に設定するのが好ましい。加熱方法としては、熱風,熱ロール,赤外線ヒーター,マイクロ波等従来公知の方法を使用できる。この基材に防滑剤塗料混合液を直接塗布する方法は、製造効率に優れ、プラスチックフィルム等を基材とする場合などに好ましく適用することができる。
【0032】
また、前記の基材に直接塗布する方法に代えて、例えばセパレータを用い、その上に前記に準じて防滑剤塗料混合液を塗工し、それをマイクロカプセルが発泡しないように加熱乾燥してその乾燥層を基材の片面に密着させてセパレータを分離した後、加熱下にマイクロカプセルを発泡させる方法などを採用することもできる。この方法は、編布や織布、紙や不織布などの多孔性基材を基材とする場合に粘弾性体層の密着性などの点より好ましく適用することができる。
【0033】
こうして、基材の片面に防滑層が形成される。乾燥後の防滑層の厚さは、本発明の防滑性粘着シートの使用目的などに応じて適宜決定できる。薄型化やクッション性ないしソフトなタッチ感などの点を考慮した場合、この厚さは5〜500μm、好ましくは5〜200μm、より好ましくは5〜100μmの範囲に設定するのがよい。
【0034】
また、ベタツキ感の防止や強度等の点より好ましい防滑層は、発泡処理したマイクロカプセルが20〜70容量%、就中25〜65容量%、特に30〜60容量%占める状態にあるものである。
【0035】
粘着剤の塗工は通常ロールコーター、リップコーターなどの公知の塗工機、更にはスクリーン印刷機等を用いて行われ、塗布量は乾燥基準で通常2〜50g/m程度、好ましくは10〜25g/m程度である。
【0036】
また、粘着層は、前記粘着剤の塗布方式や押出成形方式、カレンダー成形方式などの適宜な方式で形成することができる。また基材の上への直接成形方式や、セパレータを介した移着方式などの適宜な方式で基材の上にラミネートすることができる。
【0037】
粘着層の厚さは粘着剤の種類などを考慮して適宜に決定できる。粘着層の厚さは、通常、100μm以下、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜25μmの範囲に設定される。塗布量が前記範囲未満であり、乾燥後の塗膜が薄い場合には、粘着力が小さくなり、所望の粘着力が得られない。前記範囲よりも大きく、乾燥後の塗膜が厚い場合には、凝集破壊が生じ、防滑層の表面が一定の向きとなるようにし、隣り合うもの同士の防滑層と粘着層とが密着した状態で本発明の防滑性粘着シートを複数枚積み重ねて保管した後に、そこから本発明の防滑性粘着シートを剥がし取る場合や、積み重ね保管と剥がし取りとを繰り返して再利用する場合などに粘着層が破壊されることになる。
【0038】
本発明の防滑性粘着シートは、その粘着層を物体の防滑性を付与したい面、あるいは当該面と接触させる相手方の面に粘着させることにより、広範な形態の物体の滑り止めに有用である。また、この物体の材質についても特に制限されず、特に各種の紙や金属;例えばポリエステルやポリエチレンなどのプラスチック;ガラスなどの材質の物体に対して好適に使用できる。
【0039】
そのため、本発明の防滑性粘着シートは、種々の用途に適用可能である。例えば、玄関マット、カーペットやランチオンマットなどの各種の敷物のずれ防止、地震の際の花瓶、置物などのインテリアの横ずれや転倒の防止、自動車車内のダッシュボードにあるグローブボックス内に収容する小物の走行中における横滑り防止、携帯電話の手からの滑り落ち防止などに使用できる。また、工業用途においても、例えば段ボール箱などの積荷の荷崩れ防止などに用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明の防滑性粘着シートについて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
[実施例1]
接着剤として準速乾・低粘度の酢酸ビニル系樹脂の水性エマルション(ライフボンドAP−504、日栄化工社製)を、また発泡性マイクロカプセルとして、マツモトマイクロスフェアーF−50(平均粒子径10〜20μm)を用いた。前者を80重量部、後者を20重量部をそれぞれ計量し、常温で混合して防滑剤塗料混合物を得た。
【0042】
この防滑剤塗料混合物を基材としての片艶晒クラフト紙(米坪量100g/m)の片面にロールコーターを用いて塗布するとともに、反対の面にアクリル樹脂系粘着剤(商品名:SKダイン701、綜研化学社製)を同様の方法で塗布した。この片艶晒クラフト紙を170℃の温度条件の熱風乾燥機中に入れ、恒量となるまで乾燥して片面に防滑層を、他方の面に粘着層を形成した本発明の防滑性粘着シートを得た。防滑剤塗料混合物およびアクリル系粘着剤の塗布量は、乾燥状態にてそれぞれ8g/mおよび15g/mであった。
【0043】
[比較例1]
従来より防滑剤として使用されていたアクリル樹脂系塗料(商品名:40H−NS、マイケルマン社製)をクラフトライナー(以下、Kライナーという。米坪量210g/m)の片面に塗布するとともに、他方の面に実施例1と同様のアクリル樹脂系粘着剤を塗布した。塗布には、いずれもロールコーターを用いた。この両面塗布後のKライナーを実施例1と同様の温度条件の熱風乾燥機中に入れ、恒量となるまで乾燥して片面に防滑層を、他方の面に粘着層を形成した比較例1の防滑性粘着シートを得た。防滑剤塗料混合物およびアクリル系粘着剤の塗布量は、乾燥状態にてそれぞれ4.5g/mおよび15g/mであった。
【0044】
[防滑性能の評価方法]
JIS P8147に規定されている滑り傾斜角測定装置の本体側に所定サイズに裁断された実施例1の防滑性粘着シートを防滑層の表面(以下、防滑面という。表1中の「測定面#1」。)が表になるように取り付けるとともに、おもりの表面に表1の「測定面#2(おもり用試験片)」に掲げた各素材の測定面が表になるように取り付けるなどし、同規格、3.2の傾斜方法に準拠し、それぞれの場合について測定面#1と測定面#2との間の滑り傾斜角を測定した。その結果と表2に示す。なお、表2中の滑り傾斜角が大きいほど、防滑性能は優れることを示している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表2によれば、実施例1の防滑性粘着シートは、それ自体の防滑面同士間のみならず、その防滑面と表1の「測定面#2」の他の素材の測定面のいずれとの間においても優れた防滑性能を示しており、これら他の素材の種類がその防滑性能に大きく影響しないことが明らかである。特に、実施例1の防滑性粘着シートの防滑面同士の場合には、防滑性能が著しく優れることが示された。
【0048】
それに対して、比較例1の防滑性粘着シートでは、その防滑面同士の間でも、当該防滑面と他の素材の測定面との間でも十分な防滑性能は得られないことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その片面に設けられ、発泡性マイクロカプセルと接着剤とを含む塗膜によって形成された防滑層と、他方の面に設けられた粘着層とを有することを特徴とする防滑性粘着シート。
【請求項2】
前記発泡性マイクロカプセルの平均粒子径は、未膨張の状態で1〜50μmである請求項1に記載の防滑性粘着シート。
【請求項3】
前記接着剤は、酢酸ビニル系樹脂である請求項1または2に記載の防滑性粘着シート。
【請求項4】
前記粘着層の表面にはさらに剥離シート層が設けられてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の防滑性粘着シート。

【公開番号】特開2010−43167(P2010−43167A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207143(P2008−207143)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】