説明

防眩性反射防止フィルム

【課題】本発明は、LCD、CRT等の各種ディスプレイの表面に用いられる光学機能フィルムに関し、特に機械的耐久性に優れ、タッチパネル等のペン入力耐性が要求されるディスプレイに好適な防眩性反射防止フィルムの提供を目的とする。
【解決手段】透明基材上に直接または他の層を介して防眩層、反射防止層が順次積層された防眩性反射防止フィルムであって、防眩層が平均粒径0.001〜0.2μmの無機微粒子および平均粒径0.5〜10μmの微粒子および活性エネルギー線硬化型樹脂を含むことを特徴とする防眩性反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLCD、CRT等の各種ディスプレイの表面に用いられる光学機能フィルムに関する。特に、機械的耐久性に優れ、タッチパネル等のペン入力耐性が要求されるディスプレイにも好適な防眩性反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ディスプレイは、太陽光や蛍光灯からの光などの外部光が表面で正反射することにより、写り込みやギラツキが発生し、視認性を低下させることが本質的な問題として存在する。これに対する解決策として二つの手法が公知となっている。
【0003】
第一は、金属酸化物等からなる高屈折率層と低屈折率層の積層体、あるいは無機や有機フッ素化合物等の低屈折率層を反射防止層としてディスプレイ表面に設ける方法である。この方法は、光の干渉効果により外部光の反射を低下させ、外部光の写り込みを低減させるものであり、液晶表示装置等の表示体からの透過光量が増大しコントラストが向上する。しかしながら、全ての可視光波長領域で外部光を完全に打ち消すことは困難であるため、若干の外部光の写り込みは避けられないという欠点がある。
【0004】
第二は、透明な微粒子を含んだ微細な凹凸構造を有するコーティング層を防眩層としてディスプレイ表面に設ける方法である。この方法は表面微細凹凸構造により外部光を拡散反射させ、全反射光に対する正反射光の相対量を大きく減少させることで写り込みやギラツキを低減させるものである。この方法は、写り込み防止の点では前記の反射防止層を設ける方法より優れているが、液晶表示装置等の表示体からの透過光も拡散されるため、解像度が低下するという欠点がある。
【0005】
上記の2つの手法はそれぞれの長所と短所を有するが、これらを相補的に組み合わせることで、すなわち防眩層の上に反射防止層を積層することで、写り込み防止性と解像度およびコントラストのバランスに優れた光学部材が得られることが報告されている(特開平7−333404号公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、防眩層の上に反射防止層を積層することで、光学的特性のバランスに優れた光学部材、すなわち防眩性反射防止層が得られる。しかしながら、防眩性反射防止層は防眩層に由来する表面微細凹凸構造を有するため、機械的耐久性が低下するという問題が生じる。すなわち、表面に摩擦力などの外力が作用した場合、凸部分に外力が集中するため反射防止層の剥離が生じやすくなる傾向がある。本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、防眩層と反射防止層の密着性が良好であり、機械的耐久性に優れる防眩性反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために成されたものであり、請求項1の発明は、透明基材上に直接または他の層を介して防眩層、反射防止層を順次積層した防眩性反射防止フィルムであって、防眩層が平均粒径0.001〜0.2μmの無機微粒子および平均粒径0.5〜10μmの微粒子および活性エネルギー線硬化型樹脂を含むことを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記反射防止層が屈折率の異なる無機化合物を1層以上積層したものであることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0009】
さらにまた、請求項3の発明は、前記無機微粒子および前記微粒子が前記活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してそれぞれ1〜50重量部および2〜30重量部の含量であることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0010】
さらにまた、請求項4の発明は、前記無機微粒子がコロイド状無機微粒子であることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0011】
さらにまた、請求項5の発明は、前記無機微粒子がコロイド状無機酸化物微粒子であることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0012】
さらにまた、請求項6の発明は、前記コロイド状無機酸化物微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【0013】
さらにまた、請求項7の発明は、前記反射防止層上に撥水層が積層されていることを特徴とする防眩性反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩層に導入した無機微粒子の密着性向上効果により機械的耐久性に優れており、タッチパネル等にも好適に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の防眩性反射防止フィルムの一実施形態を図1に示し、以下に詳細に説明する。本発明の防眩性反射防止フィルム1は、基本的には、透明基材2上に直接または他の層を介して防眩層3、反射防止層4が順次積層されたものである。
【0016】
本発明における透明基材2は、特に限定されるものではなく適当な機械的剛性をもつ公知の透明プラスチックフィルムもしくはシートの中から適宜選択して用いることができる。具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート等のフィルムを挙げることができるが、本発明においては、トリアセチルセルロースおよび一軸延伸ポリエステルが透明性に優れ光学的に異方性が無い点で好ましい。
【0017】
この透明基材2上に、直接またはプライマー層、接着層等の他の層を介して積層された防眩層3は、無機微粒子7および微粒子8および活性エネルギー線硬化型樹脂を含む。
【0018】
無機微粒子7は平均粒径0.001〜0.2μmのものを用いることが可能だが、特に0.01〜0.1μmが望ましい。平均粒径が0.2μmを超えると、透過率が低下する傾向がある。この無機微粒子7の防眩層3への導入により、透明基材2や後述する反射防止層との密着性の向上や後述する微粒子8の沈降防止が図れる。無機微粒子の中でも、コロイド状に分散した無機微粒子や無機酸化物微粒子が特に好ましい。材料としてはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等が適用可能だが、屈折率、価格、密着性向上等を考慮するとコロイダルシリカが特に望ましい。
【0019】
防眩性を付与するために用いられる微粒子8は、粒径が小さいほど解像度に優れるが防眩性に劣る性質があるため、防眩性と解像度のバランスを考慮し平均粒径0.5〜10μmのものが好適に用いられる。粒径が0.5μm以下であると必要最低限の防眩性を与えることができず、10μm以上であると十分な解像度が得られない。この微粒子8の防眩層3への導入により、防眩層3の表面に防眩性を付与するために必要な微細な凹凸を形成することができる。また、微粒子8は特に限定されるものではなく、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、スチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子などが用いられる。
【0020】
無機微粒子7および微粒子8の含量は粒子の種類、粒径により異なるが、透過光量、解像度、コントラスト、防眩層3表面への所望の微細な凹凸の付与性等を考慮し、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してそれぞれ1〜50重量部および2〜30重量部とする。
【0021】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては特に限定されるものではなく、紫外線や電子線硬化によりJIS K5400において定義される鉛筆硬度H以上の塗膜を与える樹脂であれば任意に使用することができる。このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート樹脂等を挙げることができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じ使用することができる。
【0022】
本発明において、防眩層3形成時に使用する活性エネルギー線が紫外線である場合には、これらの樹脂に光増感剤(ラジカル重合開始剤)を添加する必要があり、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類等が用いられる。光重合開始剤の使用量は、樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0023】
防眩層3は、前記材料から適宜選択した樹脂組成物を必要に応じ溶剤に溶解した塗工液を塗工・硬化して形成する。塗工方法は任意であるが、生産段階ではロールコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、バーコータ等のいずれでも可能である。
【0024】
硬化方法は任意であるが、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線を利用する場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは、100〜300KeVのエネルギーを有する電子線が利用できる。
【0025】
一方、本発明における反射防止層4は所望の屈折率を有する一つ以上の層を、所望の層構成にて所望の光学的膜厚で積層させることで機能を発現する。一例を挙げると、防眩層上に所望の光学的膜厚の低屈折率層および高屈折率層を交互に計4層積層させたものである。高屈折率材料とはn>1.9のものであり、低屈折率材料とはn<1.6のものである。積層する層数は多いほど反射率が0.5%以下となる可視域での波長領域が広くなり、4〜5層積層させることが好ましい。材料は高屈折率材料としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化錫等、低屈折率材料としては、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等が用いられる。
【0026】
本発明においては、上述した各層の他、種々の層を設けても良い。例えば、本発明の防眩性反射防止層を保護し、かつ耐汚染性を付与する目的で、図1に示すように、反射防止層上に撥水層を設けても良い。撥水層の厚さは、光学特性への影響を最小限にするため好ましくは10nm以下である。材料としてはパーフルオロアルキルシラン等が挙げられ、材料に応じて蒸着等の物理的気相析出法、CVD等の化学的気相析出法を用いることができる。
【0027】
また、透明基材と防眩層、防眩層と反射防止層との接着性向上等の目的でプライマー層や接着層等を必要に応じて設けても良い。
【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例についてさらに具体的に説明する。
【0029】
[実施例1]
防眩層の塗工液として下記組成物(1)を調製した。この下記組成物(1)を厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム上に、硬化後の膜厚が5μmとなるようにバーコータを用い塗工し溶剤を蒸発乾燥後、高圧水銀灯を用いて400mJの紫外線照射により硬化させ防眩層を形成した。
○組成物(1)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 49重量部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 21重量部
・コロイダルシリカ(平均粒径30nm) 30重量部
・イルガキュア184(光重合開始剤) 5重量部
・シリカ(平均粒径1.5μm) 12重量部
・2−ブタノン(溶剤) 100重量部
次に、高屈折率層として酸化チタン(TiO)、また低屈折率層として酸化ケイ素(SiO)をそれぞれ選択し、防眩層の上に高屈折率層(nd=45nm)、低屈折率層(nd=55nm)、高屈折率層(nd=105nm)、低屈折率層(nd=140nm)の順にプラズマアシスト蒸着層法により形成し、反射防止層を形成した。続いて撥水層としてパーフルオロアルキルシランを真空蒸着法により5nm程度形成し、防眩性反射防止フィルムを得た。
【0030】
[実施例2]
実施例1記載の組成物(1)のシリカ重量部を18重量部とした以外は全て実施例1と同様の条件で防眩層、反射防止層および撥水層を形成し、防眩性反射防止フィルムを得た。
【0031】
[比較例1]
防眩層の塗工液として下記組成物(2)を調製した。この下記組成物(2)を実施例1と同様の条件で硬化させ防眩層を得た後、実施例1と同様の条件で反射防止層および撥水層を形成し、防眩性反射防止フィルムを得た。
○組成物(2)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70重量部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 30重量部
・イルガキュア184(光重合開始剤) 5重量部
・シリカ(平均粒径1.5μm) 12重量部
・2−ブタノン(溶剤) 100重量部
【0032】
[比較例2]
比較例1記載の組成物(2)のシリカ重量部を18重量部とした以外は全て比較例1と同様の条件で防眩層、反射防止層および撥水層を形成し、防眩性反射防止フィルムを得た。
【0033】
実施例および比較例を次の項目について評価した結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
(1)表面粗さRa
表面粗さ計(サーフコム製550AD)を用いJIS B0601に準じ各試料のRaを測定した。
(2)ヘイズ
ヘイズメータ(日本電色製NDH2000)を用いJIS K6714に準じ各試料のヘイズを測定した。
(3)ペン入力耐久性試験
ポリアセタール樹脂からなるペン先半径0.8mmのタッチペン、プロッタ(グラフテック製FP8300FC)を用い、加速度0.6G、筆圧250g、文字サイズ2cm角にて10万字の筆記を行った後、表面状態について目視評価を行った。判定基準を以下に示す。
○:キズおよびヘイズ変化が認められない。
×:キズおよびヘイズの変化が認められる。
なお、上記試験によるキズ、ヘイズ変化はそれぞれ反射防止層の剥離、表面凸部分の微粒子の脱落により生じる。
【0036】
表1の結果から、本発明の防眩性反射防止フィルムはペン入力耐性に優れ、これを用いたタッチパネルは機械的耐久性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による構成の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 防眩性反射防止フィルム
2 透明基材
3 防眩層
4 反射防止層
1 撥水層
7 無機微粒子
8 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に直接または他の層を介して防眩層、反射防止層が順次積層された防眩性反射防止フィルムであって、防眩層が平均粒径0.001〜0.2μmの無機微粒子および平均粒径0.5〜10μmの微粒子および活性エネルギー線硬化型樹脂を含むことを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止層が屈折率の異なる無機化合物を1層以上積層したものであることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項3】
前記無機微粒子および前記微粒子が前記活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してそれぞれ1〜50重量部および2〜30重量部の含量であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項4】
前記無機微粒子がコロイド状無機微粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項5】
前記無機微粒子がコロイド状無機酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項6】
前記コロイド状無機酸化物微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項5に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項7】
前記反射防止層上に撥水層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の防眩性反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−183674(P2007−183674A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74557(P2007−74557)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【分割の表示】特願2000−269983(P2000−269983)の分割
【原出願日】平成12年9月6日(2000.9.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】