説明

防護マスク

【課題】吸気口を開閉するためのシャッタを備えた防護マスクの提供。
【解決手段】防護マスク1が面体2の外側から操作して吸気口20を開閉することのできるシャッタ30を備えている。シャッタ30は、シャッタ板31と、操作用シャフト32と、弾性パッキング33とを含む。弾性パッキング33は、環状のもので、シャッタ板31にその周縁部に沿って取り付けられていて、吸気口20の周縁部に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防毒マスクや防塵マスク等として使用するのに好適な防護マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
防毒マスクや防塵マスクであって、それを着用したときに空気漏れを生じることがないように面体が顔面に密着していることを確認するためのフィットチェック機能を有しているものは、従来公知である。
【0003】
例えば、実公昭60−41243号公報(特許文献1)に開示された防塵マスクは、吸気口を開閉することのできる弁体を有していて、マスクの外側からその弁体を操作する。マスクを着用した後に、弁体によって吸気口を閉じると、着用状態が良好で空気漏れを生じないときには、着用者が息苦しくなる。そのことによって、着用者は着用状態が良好であることを確認することができる。弁体は、ゴムで作られたり、ゴム等のパッキング材を貼り付けた板状のプラスチックで作られたりする。
【0004】
また、特開2007−181570号公報(特許文献2)に開示された防護マスクは、通気孔を開閉可能なシャッタープレートを有する。このマスクでは、それを着用した後にシャッタープレートで通気孔を閉じることによって、着用状態が良好であるか否かを知ることができる。
【特許文献1】実公昭60−41243号公報
【特許文献2】特開2007−181570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、防じんマスクの弁体を製作するときに、いかにすれば弁体の動きが軽快になるかということや、いかにすればパッキングを板状のプラスチックに簡単に取り付けることができるかということまでは開示されていない。例えば、板状のプラスチックの板面全体にパッキングを貼着することは困難なことではない。しかし、そのようにして得られる弁体は、吸気口を開閉するときに、パッキングと吸気口の周囲とが広い面積にわたってこすり合うので、弁体の動きは軽快なものになり難い。
【0006】
特許文献2における防護マスクでは、通気孔の周囲にゴム等の柔軟弾性材料で形成された環状のパッキングが取り付けられている。このマスクでは、シャッタープレートとパッキングとが広面積にわたってこすり合うという問題は解消するが、通気孔の周囲に取り付けられたパッキングによって、開口の面積がそのパッキングの分だけ減少して、通気孔においての通気抵抗が高くなる傾向にある。
【0007】
そこで、この発明は、フィットチェック機能を有する従来の防護マスクに対して、シャッタの操作を軽快なものにしたり、吸気口における通気抵抗の上昇を抑えたりすることができるように、改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、マスク着用者における顔面の少なくとも鼻孔と口許とを覆うことが可能であって吸気口と排気口とが形成されている面体を有し、前記吸気口の外側にはフィルタを着脱することができ、前記吸気口の内側と前記排気口の外側とには吸気用と排気用との逆止弁がそれぞれ取り付けられており、前記面体の外側から操作して前記吸気口を開閉することのできるシャッタを備え、前記シャッタで前記吸気口を一時的に閉じることによって、前記面体の前記顔面に対する密着状態の良否を判断することが可能な防護マスクである。
【0009】
かかる防護マスクにおいて、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記シャッタは、前記フィルタと前記吸気用逆止弁との間において前記吸気口を閉じることができるように前記吸気口よりも大きく形成されたシャッタ板と、前記シャッタ板から前記面体の外側にまで延びている操作用シャフトと、前記シャッタ板の周縁部に取り付けられていて前記吸気口の周囲に前記吸気口の外側から密着可能な弾性パッキングとを含む。前記パッキングは、前記シャッタ板の周縁部に沿って延びる環状のものである。
【0010】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記パッキングは、前記シャッタ板の径方向における断面が前記径方向の内側に向かってコの字型に開口する溝を有するものであり、前記シャッタ板の周縁部が前記溝に嵌合している。
【0011】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記シャッタ板は、前記吸気口と向かい合う内面とその反対面である外面とを有し、前記パッキングは、前記シャッタ板の内面に密着して前記周縁部を一周する環状部と、前記周縁部に沿って前記シャッタ板に間欠的に形成されている透孔において前記シャッタ板を前記内面から前記外面に向かって貫通するように前記環状部に形成されている突起部とを有している。
【0012】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記シャッタ板は、前記シャフトによって操作されると、前記面体における前記吸気口近傍の平坦面を摺動するものであり、その平坦面の一部分には前記シャッタ板と前記平坦面との接触面積を少なくすることが可能な凹部が形成されている。
【0013】
この発明の好ましい実施形態の他の一つにおいて、前記凹部は、前記平坦面を梨地加工することにより形成されている。
【0014】
この発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記シャフトは、前記面体を貫通して前記面体の外側にまで延びており、前記面体では潤滑剤を滲出させるブッシングが前記シャフトを貫通させる透孔の周縁部に使用されている。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る防護マスクでは、顔面に対するマスクの密着状態が良好であることを確認するためのシャッタがシャッタ板に環状の弾性パッキングを取り付けることによって形成されているから、シャッタを開閉するときにパッキングと吸気口の周囲とがこすり合う面積を小さく抑えて、シャッタの開閉操作を軽快なものにすることができる。また、そのパッキングがシャッタ板の周縁部に対して取り付けられていることによって、パッキングの存在で吸気口の開口面積が小さくなるという傾向が軽微になる。その結果として、吸気口における吸気抵抗の上昇を抑えることができる。環状のパッキングは、その断面形状がコの字形であることおよびシャッタ板に形成された透孔に挿入可能な突起部を有することのいずれかによって、シャッタ板の周縁部に対する取り付けが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面を参照してこの発明に係る防護マスクの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1は、防護マスク1の斜視図であって、防護マスク1の前後方向と、幅方向と、上下方向とが双頭矢印A,B,Cで示されている。防護マスク1における前後方向Aの後方向は防護マスク着用者の顔面と向かい合う方向であり、前方向とはその反対方向であって、顔面から遠ざかる方向である。防護マスク1は、顔面のうちの少なくとも鼻孔と口許とを覆うことのできる面体2と、面体2を顔面に密着させるための締紐3とを有するもので、面体2の前方にはフィルタ4が取り付けられている。面体2はまた、その前方ではあるがフィルタ4よりも後方に後記するシャッタ30の指当て部36を有し、後方に顔面に密着させる弾性接顔部6を有する。フィルタ4は、面体2から取り外すことのできるもので、防護マスク1の使用目的に応じて適宜の性能を有するものに交換することができる。なお、図1において締紐3は一部分のみが示されている。
【0018】
図2は、フィルタ4が外されている防護マスク1の斜視図である。防護マスク1の前方部分にはフィルタ取り付け部11が形成されている。そのフィルタ取り付け部11は、フィルタ4を着脱させるためのねじ溝12が形成されている環状周壁部13と、面体2の前面部分であって吸気口20が形成されている底部14を含んでいる。底部14には、フィルタ取り付け部11に取り付けられたフィルタ4の後面部分(図示せず)が気密状態で密着可能な環状パッキング16がある。吸気口20は、その内側が格子21によって区分けされていて、その格子21の後方には吸気用逆止弁22が設けられている。底部14の前方には、シャッタ30が設けられている。シャッタ30は、シャッタ板31と、操作用シャフト32と、パッキング33とを含んでいる。シャフト32は、上下方向Cへ延びていて、下端部34がフィルタ取り付け部11の内側にあり、上端部35が面体2の外側にあり、下端部34と上端部35との間がシャッタ取り付け部11に形成された透孔11aを貫通している(図4参照)。下端部34は、シャッタ板31に形成された部位31aにおいてシャッタ板31に取り付けられており、上端部35には指当て部36が形成されている。
【0019】
図3は、シャッタ板31が上昇して吸気口20を閉じている状態にある防護マスク1の斜視図である。図2において、シャッタ30の指当て部36を指先で押し上げるようにすると、シャッタ板31が上昇して、図3の如く吸気口20を密閉することができる。
【0020】
着用した図1の防護マスク1のシャッタ30が図3の状態にあり、接顔部6が顔面に密着した状態にあるときには、着用者が呼吸をしても、吸気となるべき空気はシャッタ板31に阻まれて吸気口20へ進入することがない。それゆえ、着用者は息苦しさを感じる。そのことは、着用した防護マスク1に空気漏れがなく、着用状態が良好であることを示している。このようにして、防護マスク1の着用状態が良好であることを確認した着用者は、図3の指当て部36を押し下げてシャッタ板31を図2の状態に戻し、防護マスク1の使用を開始することができる。
【0021】
図4は、図2のIV−IV線断面図であって、防護マスク1の内部構造が示され、フィルタ4が仮想線で示されている。面体2は、フィルタ取り付け部11における周壁部13と底部14とが硬質プラスチックによって一体的に形成されていて、底部14はシャッタ板31が上下方向Cへ動くときに摺動する平坦面41を有している(図3参照)。底部14に形成されている吸気口20の内側には格子21が形成され、格子21の幅方向Bと上下方向Cとの中央部には吸気用逆止弁22を開閉可能に支える支持部43が形成されている。フィルタ取り付け部11にはまた、シャフト32が面体2の外側へ延出する透孔11aが形成され、その透孔11aの周縁部には、シャフト32が上下してもフィルタ取り付け部11の内側を気密に保つことができるようにブッシング46が取り付けられている。好ましいブッシング46は、潤滑剤滲出型のものであって、シャフト32のブッシング46に対する摺動をスムーズにすることができる。フィルタ取り付け部11を形成している硬質プラスチックの材料は、上方向Cへ延びていて排気用逆止弁51を外側から保護するボンネット部52を形成している。面体2は、ボンネット部52の内側に弾性材料によって接顔部6と一体的に形成されている被覆部56を有し、被覆部56には吸気口20の他に排気口57が形成されていて、排気口57の外側には排気用逆止弁51が取り付けられている。排気用逆止弁51から排出された呼気は、スリット状の排気口53を通って防護マスク1の外へ出る(図1,2参照)。図4におけるシャッタ板31は、下降した状態にあり、シャッタ板31に取り付けられているパッキング33がシャッタ取り付け部11の底部14における平坦面41に圧接している。
【0022】
図5において、(a)はシャッタ板31とパッキング33とが分離した状態にあるシャッタ30の分解図であり、(b)はシャッタ板31とパッキング33とが一体になったシャッタ30の組立図であるが、いずれの図においてもシャッタ板31に取り付けられたシャフト32が仮想線で示されている。シャッタ板31は、吸気口20を覆うことができるように吸気口20よりも僅かに大きく作られていて、周縁部に沿ってパッキング取り付け用の透孔31cが間欠的に形成されている。シャッタ板31の前面58には、シャフト32を取り付けるための部位31aと、シャッタ板31の剛性を高めるためのリブ31bとが形成されている。シャッタ板31の後面59は平滑である。パッキング33はシャッタ板31の周縁部に沿って延びるように形成された環状部61を有するもので、その環状部61はシャッタ板31の後面59に当接する平滑な前面62を有し、前面62には透孔31cへ圧入するための弾性変形可能な突起部64が複数形成されている。突起部64では、長円形に形成された頭部64aの径が長円形の断面を有する軸部64bの径よりも大きく、頭部64aの径はまた透孔31cの径よりも大きい。パッキング33の後面63には、フィルタ取り付け部11の底部14における吸気口20の周囲に対してパッキング33が線接触し得るように、少なくとも一条の環状に延びるリブ66(図4参照)が形成されている。パッキング33は、突起部64をシャッタ板31の透孔31cに圧入することによって、また必要であるならば、パッキング33の前面62とシャッタ板31の後面59とを接着剤や粘着剤で接合することによって、シャッタ板31に取り付けることができる。ただし、パッキング33をシャッタ板31に対して交換可能なものにしたいときには、接着剤や粘着剤を使用することなくパッキング33をシャッタ板31に取り付けることができる。
【0023】
このようなシャッタ30を有する防護マスク1では、シャッタ板31が上昇・下降するときにフィルタ取り付け部11の底部14に対して摺動するものは環状のパッキング33のみであるから、例えばシャッタ板の後面の全体を底部14に対して摺動させる従来技術に比べると、この発明に係る防護マスク1ではパッキング33と底部14との接触面積が少なくて、指当て部36を使ってのシャッタ30の操作が軽快なものになる。また、図5に示されているように、パッキング33は、それに形成されている突起部64の頭部64aをシャッタ板31の透孔31cに圧入するだけでシャッタ板31に対する位置決めや取り付けを終えることができるので、防護マスク1におけるシャッタ30の組み立て作業が簡単になるという利点もある。さらにはまた、パッキング33を面体2の一部分であるフィルタ取り付け部11の底部14に取り付けるのではなくて、シャッタ板31に取り付けることによって、パッキング33の存在で吸気口20の開口面積が小さくなるという傾向を抑え、従来技術に比べて吸気口20の開口面積を大きくすることができるという利点もある。
【0024】
図6は、(a)と(b)との図によってその利点を説明しようとするものであって、(a)は、図4の部分拡大図であるが、吸気口20における吸気用逆止弁22とそれを支える支持部43とが仮想線で示されている。(b)は、(a)に示された防護マスク1と対比される従来例の防護マスク101についての(a)と同様な図である。防護マスク101において、防護マスク1の部位に対応する部位には、防護マスク1で使用した参照符号に100を加えて示してある。また、防護マスク1と防護マスク101とは、図に示された吸気口20,120とシャッタ板31,131とを除くと、同一の形状、構造を有している。例えば、フィルタ取り付け部11,111のそれぞれは直径が同じである円形の底部14,114を有しており、シャフト32,132に対しては同形、同大のブッシング46,146が使用されている。
【0025】
図6の(a)において、防護マスク1は、シャッタ板31が上昇して吸気口20を閉じている状態にある。そのシャッタ板31は、上限にまで上昇しているものであって、フィルタ取り付け部11における周壁部13の一部分13aに接触している。シャッタ板31には、周縁に沿ってパッキング33が取り付けられている。吸気口20は円形のものであって、周縁20aがシャッタ板31の径方向において、パッキング33のすぐ内側にある。吸気口20の内径はDであり、リブ部66の頂部で測定したときのパッキング33の内径はEである。発明者が試作した防護マスク1の具体例において、パッキング33に幅3.0mmのものを使用し、フィルタ取り付け部11にはABS樹脂の射出成形品であって底部14の直径が62.0mmのものを使用したときに、パッキング33の内径Eを最大で29.1mmに設定し、吸気口20の内径Dを最大で28.6mmに設定することができた。
【0026】
図6の(b)において、防護マスク101のシャッタ板131も吸気口120を閉じている状態にある。そのシャッタ板131は、上限にまで上昇しているものであって、フィルタ取り付け部111における周壁部113の一部分113aに接触している。パッキング133は、フィルタ取り付け部111の底部114に形成された溝部114aに嵌められている。シャッタ板131に接触しているパッキング133のリブ部166で測定したときのパッキング133は、内径Eを有し、その値はパッキング33の内径Eに同じである。溝部114aは、パッキング133を底部114に取り付けるときの位置決め手段になるとともに、パッキング133の取り付けを容易にし、取り付け後の状態を安定させるもので、パッキング133を底部114に取り付けるときには不可欠といえるものである。その溝部114aは、吸気口120の周縁部120aによって内壁部分114bが形成されていて、吸気口120は内径dを有している。内径dは、底部114に溝部114aが形成されていることによって、(a)における内径Dよりも小さな値のものになる。発明者が試作した防護マスク101の具体例において、パッキング133にパッキング33と同じ幅のものを使用し、フィルタ取り付け部111にABS樹脂の射出成形品であって底部114の直径が底部14の直径と同じであるものを使用したときに、パッキング133の内径Eを最大で29.1mmすることができ、吸気口120の内径dを最大で25.0mmにすることができた。
【0027】
試作した防護マスク1と防護マスク101とについて、同一の試験条件で吸気抵抗を測定したときの結果の一例では、防護マスク1の吸気抵抗が11Paであり、防護マスク101の吸気抵抗が13Paであった。このような吸気抵抗の比較によって明らかなように、内径dよりも大きな内径Dを有する防護マスク1では、吸気口20の開口面積が吸気口120の開口面積よりも大きいので、防護マスク1を着用したときには、防護マスク101を着用したときに比べて吸気抵抗が小さく、着用者にとって空気を吸い込むことが容易になる。また、吸気口20における吸気抵抗が小さいということによって、フィルタ4の設計の自由度が増すという効果も生じる。例えば、吸気抵抗が小さい分だけフィルタ4に使用するろ過材の量が多くなるようにフィルタ4を設計変更することが可能になる。
【0028】
図7の(a),(b)は、この発明の実施形態の一例を示す図5の(a),(b)と同様な図である。ただし、パッキング33は一部分が破断されている。図7の(a)におけるパッキング33もまた弾性材料で形成された環状のものではあるが、シャッタ板31の径方向における断面形状がコの字型となるような溝33aを有している。シャッタ板31は、薄肉の周縁部31dが溝33aに嵌合可能に作られている。シャッタ板31の周縁部31dは、パッキング33の弾性を利用して溝33aに容易に嵌合させることができ、それによって得られる(b)のシャッタ30は、図5のシャッタ30と同じような作用・効果を有する。
【0029】
図8もまた、この発明の実施形態の一例を示す図2と同様な図である。図8の防護マスク1において、フィルタ取り付け部11は図2のそれと同様に円形の底部14を有しているが、その底部14には長円形の吸気口20が形成され、シャッタ板31も楕円形に形成されている。図8の吸気口20において、上下方向Cへ延びる短径Fは図6の(a)における径Dと同じ寸法を有しているが、幅方向Bへ延びる長径Gは径Dよりも大きな寸法を有している。それゆえ、図示例の吸気口20では、開口面積が図2の吸気口20よりも大きくなる。
【0030】
図9は、実施形態の一例を示す図3と同様な図である。この防護マスク1における底部14の平坦面41は、パッキング33が摺動する範囲のうちで多数のドットで示されている一部分14aに対して梨地加工が施されている。梨地加工は、平坦面41に凹部(図示せず)を形成してその凹部ではパッキング33が平坦面41と接触することがないようにすることによって平坦面41とパッキング33との接触面積を少なくし、指先によるシャッタ30の上昇・下降操作を軽快にするための手段である。なお、梨地加工した部分のうちでパッキング33と接触する部位は、滑らかな凸曲面に仕上げられていることが好ましく、またその凸曲面の頂部はパッキング33に向かって平坦面41から突出していないことが好ましい。平坦面41における一部分14aにはまた、潤滑剤を塗布してパッキング33の摺動をスムーズなものにしておくこともできる。シャッタ30の上昇・下降操作を軽快にする手段として、シャフト32とブッシング46との摺動面のいずれか一方、より好ましくはシャフト32に対するブッシング46の摺動面46a(図4参照)に梨地加工が施されることもある。
【0031】
図10もまた、実施形態の一例を示す図9と同様な図である。図10の防護マスク1における平坦面41の一部分14aには、上下方向Cへ延びる複数条の溝69が形成されている。溝69の内側はパッキング33に接触することのない部位であり、溝69と溝69との間の筋状の部位71は平坦面41と同一平面上にあって、パッキング33に接触する。このような溝69もまた、平坦面41とパッキング33との接触面積を少なくして、シャッタ30の操作を軽快なものにする手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】フィルタが取り付けられている防護マスクの斜視図。
【図2】フィルタが外されている防護マスクの斜視図。
【図3】シャッタ板が上昇しているときの図2と同様な図。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】(a),(b)によって分解されたシャッタと組み立てられたシャッタと示す図。
【図6】(a),(b)によって吸気口の大きさを比較して示す図。
【図7】実施形態の一例を示す図5と同様な図。
【図8】実施形態の一例を示す図2と同様な図。
【図9】実施形態の一例を示す図3と同様な図。
【図10】実施形態の一例を示す図9と同様な図。
【符号の説明】
【0033】
1 防護マスク
2 面体
4 フィルタ
11a 透孔
20 吸気口
22 吸気用逆止弁
30 シャッタ
31 シャッタ板
32 シャフト
33 パッキング
33a 溝
41 平坦面
46 ブッシング
51 排気用逆止弁
57 排気口
58 外面
59 内面
61 環状部
64 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク着用者における顔面の少なくとも鼻孔と口許とを覆うことが可能であって吸気口と排気口とが形成されている面体を有し、前記吸気口の外側にはフィルタを着脱することができ、前記吸気口の内側と前記排気口の外側とには吸気用と排気用との逆止弁がそれぞれ取り付けられており、前記面体の外側から操作して前記吸気口を開閉することのできるシャッタを備え、前記シャッタで前記吸気口を一時的に閉じることによって、前記面体の前記顔面に対する密着状態の良否を判断することが可能な防護マスクであって、
前記シャッタが前記フィルタと前記吸気用逆止弁との間において前記吸気口を閉じることができるように前記吸気口よりも大きく形成されたシャッタ板と、前記シャッタ板から前記面体の外側にまで延びている操作用シャフトと、前記シャッタ板の周縁部に取り付けられていて前記吸気口の周囲に前記吸気口の外側から密着可能な弾性パッキングとを含み、
前記パッキングが前記シャッタ板の周縁部に沿って延びる環状のものであることを特徴とする前記防護マスク。
【請求項2】
前記パッキングは、前記シャッタ板の径方向における断面が前記径方向の内側に向かってコの字型に開口する溝を有するものであり、前記シャッタ板の周縁部が前記溝に嵌合している請求項1記載の防護マスク。
【請求項3】
前記シャッタ板は、前記吸気口と向かい合う内面とその反対面である外面とを有し、前記パッキングは、前記シャッタ板の内面に密着して前記周縁部を一周する環状部と、前記周縁部に沿って前記シャッタ板に間欠的に形成されている透孔において前記シャッタ板を前記内面から前記外面に向かって貫通するように前記環状部に形成されている突起部とを有している請求項1記載の防護マスク。
【請求項4】
前記シャッタ板は、前記シャフトによって操作されると、前記面体における前記吸気口近傍の平坦面を摺動するものであり、その平坦面の一部分には前記シャッタ板と前記平坦面との接触面積を少なくすることが可能な凹部が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の防護マスク。
【請求項5】
前記凹部は、前記平坦面を梨地加工することによって形成されている請求項4記載の防護マスク。
【請求項6】
前記シャフトは、前記面体を貫通して前記面体の外側にまで延びており、前記面体では潤滑剤を滲出させるブッシングが前記シャフトを貫通させる透孔の周縁部に使用されている請求項1〜5のいずれかに記載の防護マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−35602(P2010−35602A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198514(P2008−198514)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】