説明

防除機の薬液散布装置

【課題】従来、作業中、所定の散布圧が異常に低下する不具合例として、ポンプと散布ノズル間の液圧経路内では、既存の流量センサによって不具合の発生要因が判断できるが、ポンプと薬液タンクとの間の吸圧経路内では流量低下による不具合の発生要因が容易に判断し難い問題がある。
【解決手段】本発明は、薬液を圧送するポンプ8と薬液を散布する散布ノズル11群との間における高圧吐水経路37中に、該吐水経路37内の流量を検出する第1流量センサ43を設けてある防除機において、薬液を貯留する薬液タンク5と該薬液タンク5内の薬液を吸送する前記ポンプ8との間における低圧吸水経路35内には、該低圧吸水経路35内の流量を検出する第2流量センサ45を設けてあることを特徴とする防除機の薬液散布装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防除機における薬液散布装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、薬液を圧送するポンプと薬液を散布する散布ノズル群との間の液圧経路中に、該経路内の流量を検出する流量センサを設けることにより、ポンプからの吐出量を制御するようにした構成のものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−1180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術のものでは、作業中、所定の散布圧が異常に低下する不具合例として、ポンプと散布ノズル間の液圧経路内では、上記従来技術に示された流量センサの存在によって不具合の発生要因が判断できるが、ポンプと薬液タンクとの間の吸圧経路内では流量低下による不具合の発生要因が容易に判断し難い問題がある。この発明はかかる問題点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、薬液を圧送するポンプ8と薬液を散布する散布ノズル11群との間における高圧吐水経路37中に、該吐水経路37内の流量を検出する第1流量センサ43を設けてある防除機において、薬液を貯留する薬液タンク5と該薬液タンク5内の薬液を吸送する前記ポンプ8との間における低圧吸水経路35内には、該低圧吸水経路35内の流量を検出する第2流量センサ45を設けてあることを特徴とする防除機の薬液散布装置としたものである。
【0005】
ポンプ8による薬液低圧吸水経路部に第2流量センサ45を設置することで、この部位の流量低下による散布圧低下が生じた場合、そこでの不具合診断箇所が限定されることになり、例えば、薬液タンクの残量不足などによる不具合に対し迅速に対処することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記第2流量センサ45は、薬液タンク5より下手側の低圧吸水経路35内に設置したサクションフィルタ44と前記ポンプ8との間に配置してあることを特徴とする請求項1記載の防除機の薬液散布装置としたものである。
【0007】
サクションフィルタ44とポンプ8間に流量センサ45を配置することで、薬液タンクの薬液残量不足或いはサクションフィルタの目詰まりなどによるいづれかの不具合診断箇所であることが素早く断定でき、トラブル解消が容易に行える。
【発明の効果】
【0008】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、ポンプによる薬液低圧吸水経路内にも流量センサを設置することで、この部位での流量低下による散布圧低下が生じた場合でも、不具合診断箇所がそこに限定されるので、薬液タンクの残量不足などによる不具合解消に迅速に対応できるようにな。
【0009】
請求項2の本発明によれば、サクションフィルタとポンプ間に流量センサを配置することで、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、薬液タンクの薬液残量不足のみならず、サクションフィルタの目詰まりなどによる不具合であることも素早く断定することができ、従来の問題点を解消することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型防除機を示すものであり、この車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。機体後部には薬液を収容しているタンク5が設置され、該薬液タンク5の上部に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により後述する散布ブ−ム9に設けられた散布ホ−ス10のノズル11から噴出されるようになっている。
【0011】
機体の左右両側には散布ブ−ムを収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるようになっている。
次に、散布ブ−ム9の構成について説明すると、中央の散布ブ−ム(センタブーム)9aは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブ−ム(サイドブーム)9b,9bは中央のそれよりも長さが長く構成されている。サイドブ−ム9bは、中央のセンターブ−ム9aに対し回動自在に連結され、サイドブ−ム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持させたり、或いは地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。なお、16は散布ブーム全体を昇降させるブーム昇降シリンダを示す。
【0012】
次に、乗用型防除機のブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布制御装置12について説明する。防除コントローラ20及びコントローラパネル21や、手動で開閉できる各ブーム9a,9bの噴霧コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置される。
【0013】
また、防除コントローラ20を備えたコントローラパネル21には、中央上部のディスプレイ22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量25、流量累計26等の表示部が表示されていて、ディスプレイ22の左端部に点灯される三角マークによって、このディスプレイに表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22右側には表示切替手段である表示切替ボタン28が設けられる。また、これらの下方には、自動押しボタン(スイッチ)29が設けられ、このONをパイロットランプ30で表示するようになっている。更に、散布設定ボタンスイッチ31、増減ボタンスイッチ32,33、累計リセットスイッチ34等が配置される。
【0014】
散布制御装置12の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5からポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、ポンプ8から流量制御弁36を経て各散布ブーム9a,9b間に至る高圧吐水経路37とからなり、ホース等で連結される。高圧吐水経路37には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁38を有した余水戻し経路40が設けられてタンク5に還元できるようになっている。また、このタンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、一部の薬液をタンク内へ常時噴出還元させて、このタンク5内の薬液を撹拌する。前記流量制御弁36と各ブーム9a,9bへの噴霧コックC1,C2,C3間における高圧吐水経路37には、この液圧を検出する圧力センサ42と、流量を検出する第1流量センサ43が設けられる。なお、流量制御弁36は制御モータ36Mによって開度が制御される。39はエアチャンバである。
【0015】
また、前記低圧吸水経路35には、薬液タンク5とポンプ8との間においてサクションフィルタ44が設けられ、更に、このサクションフィルタ44とポンプ8との間には吸水経路内の流量を検出する第2流量センサ45が設けられる。
【0016】
図6に示す実施例は、運転席6横側部に設置の防除コントローラ20のパネル表示とは別に、ステアリングハンドル7のセンターボックス50に流量表示させる流量表示手段(流量1,流量2)51を設けたもので、これにより、散布作業をしながら散布流量確認が容易にでき、散布状況を迅速にチェックすることができる。また、流量センサ43,45の流量表示をコントローラの液晶にて交互に点灯させるようにしておくと、流量低下による不具合箇所を容易に確認することができる。
【0017】
なお、ステアリングセンターボックス上の流量表示は、コントローラパネル21上の流量表示と連動させることが望ましい。また、流量表示「流量1」・「流量2」は、第1流量センサ43及び第2流量センサ45による流量を表示するものでありながら、「流量1」と「流量2」の切り替えは、ステアリングセンターボックス50に設けた表示切替ボタン28aによって切り替えできる構成としている。
【0018】
また、図7に示す実施例は、本機操作ボックス17上のメータパネル52上においても、上記のような流量表示手段51を設けるようにしたもので、これによっても、散布作業をしながら散布流量確認が容易にでき、散布状況を迅速にチェックすることができる。なお、ステアリングセンターボックスに設けた流量表示と本機メータパネル内に設けた流量表示は、ステアリングセンターに設けた表示切替ボタン28aにて連動させておくとよい。
【0019】
従来は、自動モードでは散布設定が優先表示され、手動散布時は圧力が優先して表示されるようになっている。特に、自動モードにおける不具合対応の遅れが目立つ。本例では、防除作業にあたり、本機を発進すると、自動モード、手動モードに関係なく、流量センサの流量表示が優先して表示されるように構成しておくことで、つまり、作業中は常に流量を表示させることで、流量低下による散布圧低下が生じた場合にも、素早く散布作業を中断でき、診断箇所が限定されるので迅速に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型防除機の側面図
【図2】同上要部の正面図
【図3】散布制御装置の配管系統図
【図4】防除コントローラボックスの平面図
【図5】散布制御ユニットの側面図
【図6】流量表示手段を備えたステアリングハンドル部平面図
【図7】流量表示手段を備えた本機メータパネル部の平面図
【符号の説明】
【0021】
5 薬液タンク 8 ポンプ
9 散布ブーム 11 散布ノズル
35 低圧吸水経路 36 流量制御弁
37 高圧吐水経路 43 第1流量センサ
44 サクションフィルタ 45 第2流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を圧送するポンプ(8)と薬液を散布する散布ノズル(11)群との間における高圧吐水経路(37)中に、該吐水経路(37)内の流量を検出する第1流量センサ(43)を設けてある防除機において、薬液を貯留する薬液タンク(5)と該薬液タンク(5)内の薬液を吸送する前記ポンプ(8)との間における低圧吸水経路(35)内には、該低圧吸水経路(35)内の流量を検出する第2流量センサ(45)を設けてあることを特徴とする防除機の薬液散布装置。
【請求項2】
前記第2流量センサ(45)は、薬液タンク(5)より下手側の低圧吸水経路(35)内に設置したサクションフィルタ(44)と前記ポンプ(8)との間に配置してあることを特徴とする請求項1記載の防除機の薬液散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−55292(P2008−55292A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233941(P2006−233941)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】