説明

防音部材

【課題】防音部材の防音効果を向上する。
【解決手段】防音部材20は、カバー本体22の端部に設けられ、該カバー本体22と車体12のフレーム14との間を塞ぐ遮蔽部30を有している。遮蔽部30は、カバー本体22の端部にインテグラルヒンジ36を介して連設され、インテグラルヒンジ36を支点として内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部32と、この当接壁部32に凸状に膨出形成され、当接壁部32との間に空間を画成した当接吸音部34とを備えている。遮蔽部30は、インテグラルヒンジ36を支点として当接壁部32を外側に折り曲げて、当接壁部32の上端縁をフレーム14に当接させると共に、当接吸音部34をフレーム14に押し当てるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、騒音発生源の周りに配置して車体に取り付けられる防音部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のエンジンルームには、エンジンや各種補器類が配設されており、これらエンジンおよび補器類は騒音を発生する所謂騒音発生源となっている。このため、車両の車体には、エンジンルームの上方に位置するボンネットの下面や車体のエンジンルームの下方に、騒音発生源から放射される音漏れを抑制する防音部材が装着されている(特許文献1参照)。このうち、車体のエンジンルーム下方に配設される防音部材は、一般的に「エンジンアンダーカバー」と称されており、騒音を抑制する機能と共に、走行中に車体下方へ流入する空気の流れを整える整流機能も兼備している。
【0003】
図7〜図9に示すように、防音部材80は、多くがブロー成形によって製造されたものであって、外面を平滑な板状壁部82で形成すると共に、エンジンルーム16側となる内面に板状壁部82から凸状に膨出形成された中空の吸音小室84が複数画成されている。各吸音小室84は、エンジンルーム16に臨む頂部が平坦面となった立方体形状に形成されている(図8または図9参照)。そして、防音部材80は、エンジンルーム16の周りを仕切ることで、エンジン等の騒音発生源Eの音が外方へ漏れないように遮音を図っている。また、防音部材80は、吸音小室84の頂部が騒音発生源Eからの音波により振動することで吸音するようになっており、遮音作用と吸音作用との両方により防音している。
【0004】
前記車両10は、車種や仕様あるいは部材の精度や取り付け誤差の関係で、防音部材80の取り付け位置と車体12のフレーム14との位置がずれることがあるので、防音部材80をフレーム14に突き当てるように設定するのが難しい。このため、車両10では、防音部材80の端部とフレーム14との間に隙間Sを設け、この隙間によって防音部材80の位置ずれを吸収するようになっている。しかし、防音部材80の端部とフレーム14との隙間Sから音が漏れてしまうので、防音部材80の端部に、弾力性を有するゴム製の板状片86をリベットやボルト等の締結具で取り付けて、板状片86をフレーム14に当接させることで隙間Sを塞いでいる(図7〜図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平10−504406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の如く、板状片86は、防音部材80に別途取り付ける必要があるので、部品点数が増加すると共に、取り付け手間がかかる難点がある。また、板状片86は、自身の弾力性のみによってフレーム14との当接関係を保つ構成であるので、経年的な劣化により弾力性が低くなると、フレーム14との間に隙間Sが生じてしまうおそれがある。しかも、板状片86は、防音部材80とフレーム14との隙間Sを塞いで遮音できるものの、吸音作用がなく、吸音小室84を有する防音部材80で仕切られた部位と比べて防音効果が低い欠点がある。
【0007】
すなわち本発明は、従来の技術に係る防音部材に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、車体との間を適切に塞ぐことができ、防音効果に優れた防音部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の防音部材は、
騒音発生源の周りに配置して車体に取り付けられる防音部材において、
板状の本体壁部およびこの本体壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該本体壁部との間に空間を画成する本体吸音部からなるカバー本体と、
前記カバー本体における前記本体壁部の端部に設けられ、該カバー本体と前記車体との間を塞ぐ遮蔽部とを有し、
前記遮蔽部は、
前記本体壁部の端部に亘ってインテグラルヒンジを介して連設され、該インテグラルヒンジを支点として前記騒音発生源側の内側と該騒音発生源から離間する外側との内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部と、
前記当接壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該当接壁部との間に空間を画成し、弾性変形可能な当接吸音部とを備え、
前記遮蔽部は、前記インテグラルヒンジを支点として前記当接壁部を外側に折り曲げて、前記当接吸音部より突出する該当接壁部の端縁を前記車体に当接させると共に、当接部位が圧縮変形するように該当接吸音部を該車体に押し当てることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、車体と防音部材との間の位置ずれを内外方向に折り曲げ変形可能な遮蔽部で吸収して、防音部材を車体に対して隙間なく当接させることができる。また、遮蔽部は、カバー本体と一体形成されているので、取り付けに手間がかからず、部品点数の増加も招かない。そして、当接吸音部は、カバー本体の本体吸音部と同様に吸音作用を有しているので、車体に当接して隙間を塞ぐ当接壁部の遮音作用と相まって、遮音部全体として優れた防音効果を有している。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記当接吸音部は、該当接吸音部の頂部側において前記車体に沿って延在する角縁辺が該車体に当接されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、当接吸音部を車体に均等に当接させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記遮蔽部は、前記当接壁部の端縁を、前記本体壁部の端部から前記車体に向かう鉛直線より外側で車体に当接させると共に、前記当接吸音部を前記鉛直線より内側で車体に当接させるよう構成したことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、車体との当接により圧縮変形した当接吸音部の反発力が、当接壁部の端縁を車体に向けて押し付けるように作用するので、車体と当接壁部との当接状態を適切に保持できる。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項4に係る発明の防音部材は、
騒音発生源の周りに配置して車体に取り付けられる防音部材において、
板状の本体壁部およびこの本体壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該本体壁部との間に空間を画成する本体吸音部からなるカバー本体と、
前記カバー本体における前記本体壁部の端部に設けられ、該カバー本体と前記車体との間を塞ぐ遮蔽部とを有し、
前記遮蔽部は、
前記本体壁部の端部に亘ってインテグラルヒンジを介して連設され、該インテグラルヒンジを支点として前記騒音発生源側の内側と該騒音発生源から離間する外側との内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部と、
前記当接壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該当接壁部との間に空間を画成し、弾性変形可能な当接吸音部とを備え、
前記遮蔽部は、前記インテグラルヒンジを支点として前記当接壁部を内側に折り曲げて、前記当接吸音部より突出する該当接壁部の端縁を前記車体に当接させると共に、前記インテグラルヒンジを挟んで前記本体壁部における騒音発生源側に突設された受部に対し、当接部位が圧縮変形するように該当接吸音部を押し当てることを特徴とする。
請求項4に係る発明によれば、車体と防音部材との間の位置ずれを内外方向に折り曲げ変形可能な遮蔽部で吸収して、防音部材を車体に対して隙間なく当接させることができる。また、遮蔽部は、カバー本体と一体形成されているので、取り付けに手間がかからず、部品点数の増加も招かない。そして、当接吸音部は、カバー本体の本体吸音部と同様に吸音作用を有しているので、車体に当接して隙間を塞ぐ当接壁部の遮音作用と相まって、遮音部全体として優れた防音効果を有している。
【0012】
請求項5に係る発明では、前記受部は、前記本体壁部に前記当接吸音部に隣り合って設けられた前記本体吸音部であることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、本体吸音部は、内部に空間を有して撓み易くなっているので、当接吸音部との当接下に撓んだ本体吸音部の反発力によって、当接壁部の端縁を車体により強く押し付けることができる。
【0013】
請求項6に係る発明では、前記当接吸音部は、該当接吸音部の頂部側において前記受部に沿って延在する角縁辺が該受部に当接されることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、当接吸音部を受部に均等に当接させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る防音部材によれば、車体との間の位置ずれを調整して両者の間を適切に塞ぐことができると共に、防音効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施例1に係る防音部材を取り付けた車両の一部を示す側断面図である。
【図2】実施例1の防音部材を一部破断して示す概略斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】実施例1の防音部材を車体に取り付けた状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】実施例2の防音部材の一部を示す縦断面図である。
【図6】実施例2の防音部材を車体に取り付けた状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】従来の防音部材を取り付けた車両の一部を示す側断面図である。
【図8】従来の防音部材を示す概略斜視図である。
【図9】従来の防音部材の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る防音部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に示すように、実施例1の防音部材20は、車両10の車体12に取り付けられて、車両10におけるエンジンルーム16の下方および側方を覆うように配設されている。防音部材20は、エンジン等の騒音発生源Eが配設されたエンジンルーム16の下方に延在する下覆部22Aおよびエンジンルーム16の側方に延在する側覆部22Bからなるカバー本体22と、側覆部22Bの上端部に設けられ、車体12の側部に延在するフレーム14と側覆部22Bとの間を塞ぐ遮蔽部30とを備えている。防音部材20は、カバー本体22および遮蔽部30が一体形成されており、カバー本体22に対して遮蔽部30が騒音発生源E側に傾く内側と騒音発生源Eから離間する側に傾く外側との内外方向へ折り曲げ変形可能に接続されている(図2または図3参照)。防音部材20は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂製であって、カバー本体22および遮蔽部30を一度に成形することができるブロー成形によって製造するのが好適である。
【0018】
前記カバー本体22は、板状の本体壁部24と、この本体壁部24における騒音発生源E側の面に凸状に膨出形成され、本体壁部24との間に中空の吸音空間(空間)を画成する本体吸音部26とから構成されている(図2または図3参照)。カバー本体22は、エンジンルーム16に臨む内面が複数の本体吸音部26が並ぶ凸凹形状である一方、外方に臨む本体壁部24の外面が滑らかに形成されて、空気の整流機能を発現し得るようになっている。カバー本体22には、本体吸音部26と本体吸音部26との間に延在して本体壁部24を薄肉化した所謂インテグラルヒンジからなる変形部28が設けられ、この変形部28で折り曲げることで、下覆部22Bの両側に側覆部22B,22Bが立ち上がった形状となる(図3参照)。
【0019】
図2または図3に示すように、本体吸音部26は、本体壁部24から立ち上がった側壁面26aとこの側壁面26aの頂部を塞ぐ振動板面26bとからなる立方体形状に形成され、四方の側壁面26a、振動板面26bおよび本体壁部24とによって中空の吸音空間を画成している。なお、カバー本体22は、隣り合う本体吸音部26,26の吸音空間同士が連通しても、各吸音空間を夫々独立して形成しても何れの態様であってもよい。カバー本体22は、本体吸音部26の側壁面26aおよび振動板面26bが、本体壁部24より薄くなるよう形成されている。なお、本体吸音部26は、立方体形状に限定されず、円柱形状や多角柱形状や裁頭多角錐形状等、様々な形状を選択し得る。
【0020】
前記遮蔽部30は、側覆部22Bにおける本体壁部24の上端部に亘ってインテグラルヒンジ36を介して連設され、インテグラルヒンジ36を支点として該本体壁部24に対して内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部32を備えている(図2または図3参照)。また、遮蔽部30は、当接壁部32における騒音発生源E側の面に凸状に膨出形成され、当接壁部32との間に中空の吸音空間を画成する当接吸音部34を備えている。防音部材20は、少なくとも当接吸音部34が材質または構造的に弾力性を有するように構成され、当接吸音部34が弾性変形可能になっている。ここで、実施例1の防音部材20は、比較的軟らかいポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂で形成することで、全体的に弾力性を有している。実施例1の当接吸音部34は、合成樹脂からなる材料の柔軟性だけでなく、当接壁部32より薄肉で、かつ中空に形成されているので、当接壁部32より撓み易くなっている。インテグラルヒンジ36は、本体壁部24と当接壁部32との接続部位を該本体壁部24より薄肉化して形成され、防音部材20を構成する合成樹脂材料の柔軟性により折り曲げ変形可能になっている。
【0021】
前記遮蔽部30は、当接壁部32の上端縁(当接対象となるフレーム14に臨む端縁)が当接吸音部34の上面(当接対象となるフレーム14に臨む面)より突出するよう形成される(図3参照)。遮蔽部30は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間に画成される位置ずれ調節用の隙間の最大寸法よりも、インテグラルヒンジ36と当接壁部32の上端縁との間の寸法が大きくなるよう設定される。また、遮蔽部30は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間に画成される隙間の最大寸法よりも、インテグラルヒンジ36と当接吸音部34においてインテグラルヒンジ36から最も遠い部位との間の寸法が大きくなるよう設定される。すなわち、遮蔽部30は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間の位置ずれに影響されずに、当接壁部32の上端縁と当接吸音部34におけるインテグラルヒンジ36から最も遠い部位との2箇所がフレーム14に当接するようになっている(図4参照)。ここで、実施例1の防音部材20では、当接吸音部34の頂部における上側角縁辺がインテグラルヒンジ36から最も遠くなり、当該部位がフレーム14への当接部位となっている。
【0022】
前記遮蔽部30では、当接壁部32が側覆部22Bの上端部の全体に亘って上方へ延長するように設けられている(図2参照)。実施例1の遮蔽部30では、複数の当接吸音部34が当接壁部32の延在方向に1列に並べて設けられている。なお、遮蔽部30は、1つの当接吸音部を当接壁部の延在幅に亘ってまたは延在幅より小さい幅で設けても、あるいは複数の当接吸音部を当接壁部の延在方向に離間して配置してもよく、吸音作用や後述するフレーム14への当接時の反発力等に応じて適宜設定される。
【0023】
図3に示すように、当接吸音部34は、当接壁部32から立ち上がった側壁面34aとこの側壁面34aの頂部を塞ぐ振動板面34bとからなる立方体形状に形成され、四方の側壁面34a、振動板面34bおよび当接壁部32とによって中空の吸音空間を画成している。遮蔽部30では、当接吸音部34の側壁面34aおよび振動板面34bが、当接壁部32より薄くなるよう形成されている。
【0024】
前記遮蔽部30は、当接壁部32がインテグラルヒンジ36を支点として外側に折れ曲がって、当接壁部32の上端縁をフレーム14の下面に当接させると共に、当接部位が圧縮変形するように当接吸音部34をフレーム14の下面に押し当てるよう構成される(図4参照)。また、遮蔽部30は、当接壁部32の上端縁が、側覆部22Bの上端部からフレーム14に向かう鉛直線より外側に当接すると共に、当接吸音部34が前記鉛直線より内側に当接するよう構成されている。すなわち、遮蔽部30は、側覆部22Bの上端部を挟んで外および内側部位の2箇所でフレーム14に当接される。当接吸音部34は、立方体形状において当接壁部32に対して平行で、かつフレーム14側に延在する角縁辺(上面をなす上側壁面34aと振動板面34bとがなす角縁辺)がフレーム14に当接し、該当接吸音部34の角隅部分が圧縮変形されるようになっている。遮蔽部30は、当接壁部32の上端縁および当接吸音部34における上側壁面34aと振動板面34bとがなす角縁辺が、フレーム14の下面(当接面)に対して平行または略平行な関係で延在するよう形成されている。従って、遮蔽部30は、当接壁部32の上端縁および当接吸音部34の当接部位とがフレーム14に対して均等に当接し得るようになっている。
【0025】
実施例1の防音部材20は、前述の如くブロー成形によって製造される。筒形のパリソンを平坦な成形面を有する第1の型と、凹凸形状の成形面を有する第2の型との間に挟み、第2の型の凹凸形状の成形面に合わせてパリソンを膨らませることで、本体壁部24の一面に本体吸音部26が画成されると共に当接壁部32の一面に当接吸音部34が画成される。なお、インテグラルヒンジ36および変形部28は、例えば第1の型の成形面に突条を設けることで、簡単に薄肉化することができる。このように、ブロー成形によれば、中空の本体吸音部26および当接吸音部34を有する防音部材20を、一度の成形工程で簡単に一体形成することができる。また、防音部材20は、ブロー成形により製造することで、当接吸音部34の角縁辺が側壁面34aおよび振動板面34bの中央部位と比べて薄くなり、当接吸音部34においてフレーム14への当接部位となる角縁辺を変形し易くすることができる。
【0026】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1に係る防音部材20の作用について説明する。実施例1の防音部材20は、フレーム14に当接して該フレーム14と側覆部22Bの上端部との間を塞ぐ遮蔽部30が、側覆部22Bに対してインテグラルヒンジ36を支点として折り曲げ変形可能であるので、遮蔽部30の折り曲げ角度を調節することで、側覆部22Bの上端部からの突出寸法を変えることができる(図3参照)。すなわち、防音部材20は、フレーム14と側覆部22Bの上端部との隙間に合わせて遮蔽部30の傾斜角度を調節することで、フレーム14との適切な当接状態を維持することができる(図4参照)。このように、実施例1の防音部材20によれば、フレーム14と防音部材20との位置関係が、車種や仕様あるいは部材精度や取り付け誤差等により変わっても、遮蔽部30を傾動変位することで、両者の位置ずれを吸収し得るから、防音部材20とフレーム14との間に隙間ができず、エンジンルーム16を適切に防音することができる。しかも、実施例1の防音部材20は、遮蔽部30がカバー本体22に一体形成されているので、従来例で説明した板状片86のような隙間を塞ぐ部材を後付けする必要がなく、部品点数や取り付け手間の増加を回避できる。
【0027】
前記防音部材20は、フレーム14に対して遮蔽部30の当接吸音部34を圧縮変形するように当接させる構成であるので、一部潰れるように弾性変形した当接吸音部34が元の形状に戻ろうとする反発力によって当接吸音部34および当接壁部32の上端縁をフレーム14に強く当接させることができる。これにより、防音部材20は、フレーム14に当接した当接壁部32により側覆部22Bとフレーム14との間を塞ぐので、エンジンルーム16と外方とを隙間なく仕切り、エンジンルーム16の騒音発生源Eからでた音を遮断することができる。しかも、防音部材20は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間を塞ぐ遮蔽部30についても、カバー本体22と同様に当接吸音部34が騒音発生源Eに臨ませて設けられているので、騒音発生源Eからでた音を、当接吸音部34の振動板面34bを振動させるエネルギーに変えて吸音させることができる。すなわち、防音部材20は、遮蔽部30がカバー本体22と同様の遮音性能および吸音性能を有しており、全体として漏れなく防音することができる。
【0028】
前記防音部材20は、遮蔽部30が内外方向に離間した2箇所でフレーム14に当接して位置決めされている。ここで、防音部材20は、インテグラルヒンジ36を支点とする当接壁部32の上端縁および当接吸音部34の当接部位の円弧軌跡の何れもがフレーム14に干渉する構成である。このため、防音部材20は、遮蔽部30が内外方向へ変位しようとしても、当接壁部32の上端縁および当接吸音部34の当接部位のどちらかがフレーム14に突き当たるので、遮蔽部30をフレーム14からずれ難くすることができる。また、防音部材20は、当接吸音部34がフレーム14との当接下に当接部位が圧縮変形されて、フレーム14との当接面が広くなっているので(図4参照)、遮蔽部30が内外方向へずれるのが更に抑えられる。従って、防音部材20は、車両走行時の振動等による遮蔽部30のがたつきを回避することができる。
【0029】
前記防音部材20は、圧縮変形した当接吸音部34の反発力によって当接壁部32をフレーム14に向けて付勢する構成であるので、当接壁部32を当接吸音部34と比べて硬く設定することができ、当接壁部32自体の劣化による変形を抑えることができる。防音部材20は、フレーム14と側覆部22Bとの間全体を覆う当接壁部32がへたり難いので、当接壁部32のフレーム14への当接状態を長期間に亘って保持することができ、エンジンルーム16の遮音を長期間に亘ってより確実に実施できる。実施例1の遮蔽部30は、フレーム14に対し、当接壁部32の上端縁が側覆部22Bにおける本体壁部24の上端部からフレーム14に向かう鉛直線より外側に当接すると共に、当接吸音部34を前記鉛直線より内側に当接させている。すなわち、当接吸音部34に作用する反発力は、インテグラルヒンジ36を支点としてフレーム14から離間する方向(実施例では下方)に向けて働き、これに伴って当接壁部32の上端縁に対してフレーム14に近づく方向(実施例では上方)に向けて力が作用する。これにより、当接壁部32の上端縁は、フレーム14に強く押し付けられるので、当接壁部32のフレーム14への当接状態を適切に保持することができ、エンジンルーム16の遮音をより確実に実施できる。
【実施例2】
【0030】
実施例1の防音部材20は、遮蔽部30を外側に折り曲げて、当接壁部32の上端縁と当接吸音部34とをフレーム14に当接する構成であるが、図5および図6に示す実施例2の防音部材40のように、遮蔽部50を内側に折り曲げて、当接壁部52の上端縁をフレーム14に当接させる一方、当接吸音部54をカバー本体22に設けた受部26に当接させる構成であってもよい。ここで、実施例2では、受部として、カバー本体22の本体壁部24にインテグラルヒンジ36を挟んで当接吸音部54に隣り合って設けられた本体吸音部26が用いられている。実施例2の防音部材40は、カバー本体22および遮蔽部50の基本的構成が実施例1の防音部材20と同様であるので、実施例1と同じ符号を使用して説明を省略し、異なる部分のみ以下に説明する。
【0031】
図5または図6に示すように、実施例2の遮蔽部50は、実施例1と同様に、当接壁部52の上端縁(当接対象となるフレーム14に臨む端縁)が当接吸音部54の上面より突出するよう形成されている。遮蔽部50は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間に画成される位置ずれ調節用の隙間の最大寸法よりも、インテグラルヒンジ36と当接壁部52との間の寸法が大きくなるよう設定される。また、遮蔽部50は、当接壁部52のフレーム14に合わせた傾動変位範囲において、当接吸音部54がインテグラルヒンジ36を挟んで隣り合う受部26に干渉するように設定されている。すなわち、遮蔽部50は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との位置ずれに影響されずに、当接壁部52の上端縁がフレーム14に当接すると共に、当接吸音部54の頂部における受部26側(下側)の角縁辺が該受部26に当接するようになっている。なお、実施例2の遮蔽部50には、複数の当接吸音部54がフレーム14の延在方向に並べて配置されている。
【0032】
実施例2の遮蔽部50は、当接壁部52がインテグラルヒンジ36を支点として内側に折れ曲がって、当接壁部52の上端縁をフレーム14の下面に当接させると共に、当接部位が圧縮変形するように当接吸音部54を受部26の上面に押し当てるよう構成される(図6参照)。また、遮蔽部50は、当接壁部52の上端縁が、側覆部22Bの上端部からフレーム14に向かう鉛直線より内側に当接するようになっている。更に、遮蔽部50は、当接壁部52のフレーム14への当接部位から受部26に向かう鉛直線よりも、当接吸音部54と受部26との当接部位がインテグラルヒンジ36側に位置するように設定される。当接吸音部54は、立方体形状において当接壁部52に対して平行で、かつ受部26側に延在する角縁辺(下面をなす下側壁面54aと振動板面54bとがなす角縁辺)が受部26に当接し、該当接吸音部54の角隅部分が圧縮変形されるようになっている。
【0033】
前記遮蔽部50は、当接壁部52の上端縁が、フレーム14の下面(当接面)に対して平行または略平行な関係で延在するよう形成されている。遮蔽部50は、当接吸音部54における下側壁面54aと振動板面54bとがなす角縁辺が、受部26の上面(当接面)に対して平行または略平行な関係で延在するよう形成されている。従って、遮蔽部50は、当接壁部52の上端縁がフレーム14に対して均等に当接し得ると共に、当接吸音部54の当接部位が受部26に対して均等に当接し得るようになっている。
【0034】
〔実施例2の作用〕
次に、実施例2に係る防音部材40の作用について説明する。実施例2の防音部材40は、フレーム14に当接して該フレーム14と側覆部22Bの上端部との間を塞ぐ遮蔽部50が、側覆部22Bに対してインテグラルヒンジ36を支点として折り曲げ変形可能であるので、遮蔽部50の折り曲げ角度を調節することで、側覆部22Bの上端部からの突出寸法を変えることができる。すなわち、防音部材40は、フレーム14と側覆部22Bの上端部との隙間に合わせて遮蔽部50の傾斜を調節することで、フレーム14との適切な当接状態を維持することができる。このように、実施例2の防音部材40によれば、フレーム14と防音部材40との位置関係が、車種や仕様あるいは部材精度や取り付け誤差等により変わっても、遮蔽部50を傾動変位することで、両者の位置ずれを吸収し得るから、防音部材40とフレーム14との間に隙間ができず、エンジンルーム16を適切に防音することができる。しかも、実施例2の防音部材40は、遮蔽部50がカバー本体22に一体形成されているので、従来例で説明した板状片86のような隙間を塞ぐ部材を後付けする必要がなく、部品点数や取り付け手間の増加を回避できる。
【0035】
前記防音部材40は、受部26に対して遮蔽部50の当接吸音部54を圧縮変形するように当接させる構成であるので、一部潰れるように弾性変形した当接吸音部54が元の形状に戻ろうとする反発力によって当接壁部52の上端縁をフレーム14に強く当接させることができる。しかも、受部は、当接吸音部54と同様に中空に形成されて弾性変形可能な本体吸音部26であるので、当接吸音部54との当接下に撓んだ受部26の反発力によって当接吸音部54が押し返されるから、当接壁部52の上端縁をフレーム14により強く当接させることができる。これにより、防音部材40は、フレーム14に当接した当接壁部52により側覆部22Bとフレーム14との間を塞ぐので、エンジンルーム16と外方とを隙間なく仕切り、エンジンルーム16の騒音発生源Eからでた音を遮断することができる。しかも、防音部材40は、側覆部22Bの上端部とフレーム14との間を塞ぐ遮蔽部50についても、カバー本体22と同様に当接吸音部54が騒音発生源Eに臨ませて設けられているので、騒音発生源Eからでた音を、当接吸音部54の振動板面54bを振動させるエネルギーに変えて吸音させることができる。すなわち、防音部材40は、遮蔽部50がカバー本体22と同様の遮音性能および吸音性能を有しており、全体として漏れなく防音することができる。
【0036】
実施例2の防音部材40は、遮蔽部50がフレーム14と受部26との間に挟まれて位置決めされている。ここで、防音部材40は、インテグラルヒンジ36を支点とする当接壁部52の上端縁の円弧軌跡がフレーム14に干渉すると共に、当接吸音部54の当接部位の円弧軌跡が受部26に干渉する構成である。このため、防音部材40は、遮蔽部50が内外方向へ変位しようとしても、当接壁部52の上端縁および当接吸音部54の当接部位のどちらかがフレーム14または受部26に突き当たるので、遮蔽部50が位置ずれし難い。また、防音部材40は、当接吸音部54が受部26との当接下に当接部位が圧縮変形されて、受部26との当接面が広くなっているので、遮蔽部50が内外方向へずれるのが更に抑えられる。従って、防音部材40は、車両走行時の振動等による遮蔽部50のがたつきを回避することができる。
【0037】
前記防音部材40は、圧縮変形した当接吸音部54の反発力によって当接壁部52をフレーム14に向けて付勢する構成であるので、当接壁部52を当接吸音部54と比べて硬く設定することができ、当接壁部52自体の劣化による変形を抑えることができる。防音部材40は、フレーム14と側覆部22Bとの間全体を覆う当接壁部52がへたり難いので、当接壁部52のフレーム14への当接状態を長期間に亘って保持することができ、エンジンルーム16の遮音を長期間に亘ってより確実に実施できる。実施例2の遮蔽部50は、当接壁部52の上端縁が、側覆部22Bにおける本体壁部24の上端部からフレーム14に向かう鉛直線より内側でフレーム14に当接すると共に、当接壁部52の上端縁から受部26に向かう鉛直線より外側(インテグラルヒンジ36側)で当接吸音部54を受部26に当接させている。すなわち、当接吸音部54に作用する反発力は、インテグラルヒンジ36を支点として受部26から離間する方向(実施例では上方)に向けて働き、これに伴って当接壁部52の上端縁に対してフレーム14に近づく方向(実施例では上方)に向けて力が作用する。これにより、当接壁部52の上端縁は、フレーム14に強く押し付けられるので、当接壁部52のフレーム14への当接状態を適切に保持することができ、エンジンルーム16の遮音をより確実に実施できる。
【0038】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、本願発明に係る防音部材をエンジンルームに適用する例を挙げたが、乗員室と荷室との間等のその他の部位に配設してもよい。
(2)防音部材は、騒音発生源の三面を囲う構成でなく、一面または二以上の複数面を塞ぐ構成であってもよい。
(3)車体における当接対象と防音部材の遮蔽部との当接関係についても、車体における当接対象の下方から遮蔽部が当接する構成に限定されず、車体における当接対象の上方または車体における当接対象の側方から当接する構成であっても本願発明に係る防音部材を採用できる。
(4)防音部材は、カバー本体および遮蔽部を一度に成形することができるブロー成形によって製造するのが好適であるが、インジェクション成形等によって成形した半体を組み合わせて構成してもよい。
(5)実施例では、当接吸音部の1つの角縁辺が車体における当接対象または受部に当接する構成を挙げたが、当接吸音部の当接部位を階段状に形成し、各段の角縁辺を車体における当接対象または受部に当接する構成も採用できる。すなわち、当接吸音部の複数の角縁辺を車体における当接対象または受部に当接させることで、より位置ずれし難くすることができる。
(6)遮蔽部には、当接吸音部以外に当接壁部との間に吸音空間を画成するように膨出形成され、当接吸音部の当接対象である車体または受部に当接しない別の凸部を設けてもよい。
(7)遮蔽部は、隣り合う当接吸音部の吸音空間同士が連通しても、各吸音空間を夫々独立して形成しても何れの態様であってもよい。遮蔽部に複数の当接吸音部を並べて設けることで、車体と当接吸音部との当接圧を高めることができるだけでなく、吸音効果を向上することができる。
(8)当接吸音部は、立方体形状に限定されず、円柱形状や多角柱形状や裁頭多角錐形状等、様々な形状を選択し得る。
(9)実施例の遮蔽部の当接対象は、フレームに限定されず、車体を構成するパネルやその他の部材に当接してもよい。
(10)実施例2では、インテグラルヒンジを挟んで隣り合う本体吸音部に対して当接吸音部が当接するよう構成したが、本体壁部に本体吸音部とは別に立設された板状の受部に対して当接吸音部が当接する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
12 車体,22 カバー本体,24 本体壁部,26 本体吸音部(受部),
30,50 遮蔽部,32,52 当接壁部,34,54 当接吸音部,
36 インテグラルヒンジ,E 騒音発生源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音発生源の周りに配置して車体に取り付けられる防音部材において、
板状の本体壁部およびこの本体壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該本体壁部との間に空間を画成する本体吸音部からなるカバー本体と、
前記カバー本体における前記本体壁部の端部に設けられ、該カバー本体と前記車体との間を塞ぐ遮蔽部とを有し、
前記遮蔽部は、
前記本体壁部の端部に亘ってインテグラルヒンジを介して連設され、該インテグラルヒンジを支点として前記騒音発生源側の内側と該騒音発生源から離間する外側との内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部と、
前記当接壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該当接壁部との間に空間を画成し、弾性変形可能な当接吸音部とを備え、
前記遮蔽部は、前記インテグラルヒンジを支点として前記当接壁部を外側に折り曲げて、前記当接吸音部より突出する該当接壁部の端縁を前記車体に当接させると共に、当接部位が圧縮変形するように該当接吸音部を該車体に押し当てる
ことを特徴とする防音部材。
【請求項2】
前記当接吸音部は、該当接吸音部の頂部側において前記車体に沿って延在する角縁辺が該車体に当接される請求項1記載の防音部材。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記当接壁部の端縁を、前記本体壁部の端部から前記車体に向かう鉛直線より外側で車体に当接させると共に、前記当接吸音部を前記鉛直線より内側で車体に当接させるよう構成した請求項1または2記載の防音部材。
【請求項4】
騒音発生源の周りに配置して車体に取り付けられる防音部材において、
板状の本体壁部およびこの本体壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該本体壁部との間に空間を画成する本体吸音部からなるカバー本体と、
前記カバー本体における前記本体壁部の端部に設けられ、該カバー本体と前記車体との間を塞ぐ遮蔽部とを有し、
前記遮蔽部は、
前記本体壁部の端部に亘ってインテグラルヒンジを介して連設され、該インテグラルヒンジを支点として前記騒音発生源側の内側と該騒音発生源から離間する外側との内外方向へ折り曲げ変形可能な当接壁部と、
前記当接壁部における前記騒音発生源側に凸状に膨出形成され、該当接壁部との間に空間を画成し、弾性変形可能な当接吸音部とを備え、
前記遮蔽部は、前記インテグラルヒンジを支点として前記当接壁部を内側に折り曲げて、前記当接吸音部より突出する該当接壁部の端縁を前記車体に当接させると共に、前記インテグラルヒンジを挟んで前記本体壁部における騒音発生源側に突設された受部に対し、当接部位が圧縮変形するように該当接吸音部を押し当てる
ことを特徴とする防音部材。
【請求項5】
前記受部は、前記本体壁部に前記当接吸音部に隣り合って設けられた前記本体吸音部である請求項4記載の防音部材。
【請求項6】
前記当接吸音部は、該当接吸音部の頂部側において前記受部に沿って延在する角縁辺が該受部に当接される請求項4または5記載の防音部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121421(P2011−121421A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279129(P2009−279129)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】