説明

降車者の足下を照らすランプを備えた車両

【課題】一般的な四輪自動車のように車外と車内とを隔絶するドアを有していない構成であっても、降車時に降車者の足下を光により明るく照らし、降車者の降車の安全性を確保する。
【解決手段】電動車いす1におけるシート31の肘掛け部36に肘掛けランプ37を設け、主電源スイッチ17がオフとなり、かつ肘掛け部36が立ち上げ位置となったときに肘掛けランプ37を点灯させる。肘掛けランプ37の照射範囲は、電動車いす1のステップ部23およびシート31の側方の地面が含まれるように設定されているので、肘掛けランプ37の点灯により、降車者の足下を明るく照らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降車者の足下を照らすランプを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車外と車内とを隔絶するドアを有し、乗降時にドアを開閉する一般的な四輪自動車には、ドアを開けたときに降車者の足下を照らすランプがドアに設けられている場合が多い。
【0003】
一方、下記の特許文献1には、シートに設けられた肘掛けに方向指示灯を取り付けた小型電動車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4529629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暗所における車両からの降車の安全性を確保するためには、降車時に降車者の足下を照らすランプを車両に設けることが望ましい。
【0006】
ところが、電動車いすやオートバイ等は、一般的な四輪自動車のように車外と車内とを隔絶するドアを有していないため、降車者の足下を照らすランプをドアに設けるといった構成を採用することはできない。
【0007】
また、上記特許文献1の段落0026には、小型電動車両の肘掛け(アームレスト116)を跳ね上げたときに、肘掛けに取り付けられた方向指示灯(ウィンカ11)が高い位置で点灯するので、乗降時に高い安全性を確保することができる旨が記載されている。しかし、この記載から、当該方向指示灯により降車者の足下を明るく照らすことができるかどうかは不明である。また、上記特許文献1の段落0028には、小型電動車両の肘掛けに取り付けられた方向指示灯により夜間運転時において足下を照らすことができる旨が記載されている。しかし、この記載から、夜間において車両の運転を終えて車両から降りる者の足下を当該方向指示灯によって明るく照らすことができるかどうかは不明である。このように、上記特許文献1は、降車時に降車者の足下を明るく照らす点については示唆していない。
【0008】
また、車両の運転者は、車両の運転を終え、車両の主電源スイッチをオフにしてから車両から降りるのが通常である。この場合、主電源スイッチをオフにすることにより、フロントランプ、テールランプ、方向指示灯等はすべて消えてしまう。車両の運転を終えた時点が夜間であったり、車両の運転を終えた場所がガレージ内であった場合には、車両の主電源スイッチをオフにすることにより運転者の周囲が急に真っ暗になるため、その後の降車は危険を伴うことがある。
【0009】
この点、上記特許文献1に記載の小型電動車両の肘掛けに取り付けられているものは方向指示灯であるため、当該車両の主電源スイッチがオフになった後は消えてしまう。すなわち、上記特許文献1には、主電源スイッチをオフにした後に降車者の足下をランプで照らす点については何ら示唆されていない。
【0010】
また、暗所における車両に対する降車の安全性を確保するために、降車時に降車者の足下を照らすランプを車両に単に追加するだけでは例えば次のような問題がある。すなわち、降車時に降車者の足下を照らすランプを車両に単に追加するだけでは、当該ランプをオン、オフするための特別な操作が必要となるため車両の操作が煩雑になる。また、車両に設けるランプないし灯火器の個数が増加するため車両の製造コストが上昇する。また、当該ランプを稼働させるために消費電力が増加する。また、当該ランプの点けっぱなしにより周囲の者に迷惑をかけてしまうことがあり得る。
【0011】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、一般的な四輪自動車のように車外と車内とを隔絶するドアを有していない構成において、降車時に降車者の足下を光により明るく照らすことができる車両を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の課題は、一般的な四輪自動車のように車外と車内とを隔絶するドアを有していない構成において、降車時に降車者の足下を照らすランプのオン、オフの手間を軽減することができる車両を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第3の課題は、ランプないし灯火器の個数を増加させることなく降車時に降車者の足下を光により照らす機能を追加することができ、製造コストの上昇を抑制することができる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の車両は、車輪を有する車体と、前記車体に設けられ、前記車輪の回転動力を作り出す動力源と、前記車体に設けられ、オン時には前記動力源の駆動操作を可能にし、オフ時には前記動力源の駆動操作を不能にする主電源スイッチと、前記車体の前部に設けられたハンドルと、前記車体上において前記ハンドルの後方に設けられたシートと、前記シートの側方に配置された肘掛け部と、前記肘掛け部の長さ方向が略水平方向となる第1の位置と前記肘掛け部の長さ方向が略垂直方向となる第2の位置との間で前記シートに対して回動可能となるように前記肘掛け部を支持する肘掛け支持部と、前記肘掛け部に設けられた肘掛けランプと、前記肘掛けランプを制御するランプ制御手段とを備えた車両であって、前記主電源スイッチがオフになった後でも前記肘掛けランプに電力を供給することができる電力供給手段を備え、前記肘掛けランプは前記肘掛け部が前記第2の位置にあるときに下向きに光を発し、当該光の照射範囲には前記車体の前記側方の地面が含まれることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の車両によれば、肘掛け部を立ち上げさせて第2の位置にしたときに、肘掛けランプの光を車両側方の地面に照射することができる。これにより、降車者の足下を明るく照らすことができ、降車時における降車者による足下の状況確認を容易にすることができる。
【0016】
また、車両を運転していた者が運転を終えて主電源スイッチをオフにした後であっても、肘掛けランプをオンにすることができ、肘掛けランプにより降車者の足下を明るく照らすことができる。これにより、暗所にて車両の主電源スイッチをオフにしてしまったことにより車両のフロントランプやテールランプ等が消えてしまった後でも、肘掛けランプで足下を照らすことができるので、暗所における降車の安全性を確保することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第2の車両は、上述した本発明の第1の車両において、前記肘掛けランプの照射範囲には、前記シートにおいて当該シートに座っている者の尻が接触する座部の前記側方の地面が含まれることを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の車両によれば、例えば車両を運転していた者が運転を終えて車両から降りる際に、シートに座ったまま身体を90度回転させて車体側方(シート側方)の地面に両足を着いてから立ち上がる場合、当該降車者の足下を肘掛けランプにより明るく照らすことができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第3の車両は、上述した本発明の第1または第2の車両において、前記車体上において前記シートの前方には前記シートに座っている者が足を置くステップ部が設けられ、前記肘掛けランプの照射範囲には当該ステップ部の前記側方の地面が含まれることを特徴とする。
【0020】
本発明の第3の車両によれば、例えば車両を運転していた者が運転を終え、前方を向いてシートに座った状態のまま片足を車両側方(ステップ部側方)の地面に出すといった手順で、またはステップ部に両足を置いたままシートから立ち上がった後に片足を車両側方(ステップ部側方)の地面に出すといった手順で車両から降りる際に、当該降車者の足下を肘掛けランプにより明るく照らすことができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第4の車両は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの車両において、前記肘掛け部には、前記車体の前記側方であって当該車体から離れた位置にいる者が前記肘掛けランプの光を視認することができるように前記肘掛けランプの光を前記側方に拡散させる光拡散部材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の車両によれば、降車者の降車を周囲の者が容易に確認することができる。また、肘掛けランプの照射範囲が側方に拡がるので、降車者は車両の側方とその周囲の状況を広く確認することができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第5の車両は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの車両において、前記肘掛け部の位置を検出する肘掛け位置検出手段を備え、前記ランプ制御手段は、前記肘掛け位置検出手段により前記肘掛け部が前記第2の位置にあることが検出されたときに前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の車両によれば、肘掛け部を第2の位置にすれば肘掛けランプが自動的にオンになる。したがって、肘掛けランプをオンにするための特別な操作は不要であり、操作が煩雑化するのを防止することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第6の車両は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの車両において、前記肘掛け部の位置を検出する肘掛け位置検出手段を備え、前記ランプ制御手段は、前記肘掛け位置検出手段による検出結果に基づき、前記肘掛け部が前記第1の位置にある間に前記肘掛けランプをオンにしたときには前記肘掛けランプから第1の態様の光を発し、前記肘掛け部が前記第2の位置にある間に前記肘掛けランプをオンにしたときには前記肘掛けランプから第2の態様の光を発し、前記第1の態様と前記第2の態様とでは前記光の色が異なり、または前記第1の態様および前記第2の態様のうちの一方が前記光の点滅であり他方が前記光の点灯であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第6の車両によれば、肘掛けランプに複数の役割を兼用させることができ、車両に設けるランプないし灯火器の個数を減らすことができる。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の第7の車両は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの車両において、前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出されたときに前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする。
【0028】
本発明の第7の車両によれば、主電源スイッチをオフにすると肘掛けランプが自動的にオンになるので、降車する者は、主電源スイッチをオフにした後、肘掛け部を第2の位置にするだけで足下を肘掛けランプにより明るく照らすことができる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の第8の車両は、上述した本発明の第5または第6の車両において、前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出され、かつ前記肘掛け位置検出手段により前記肘掛け部が前記第2の位置にあることが検出されたときに、前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする。
本発明の第8の車両によれば、主電源スイッチをオフにして肘掛け部を第2の位置にすれば肘掛けランプが自動的にオンになる。したがって、肘掛けランプをオンにするための特別な操作は不要であり、操作が煩雑化するのを防止することができる。
【0030】
また、降車する者が主電源スイッチをオフにしても、肘掛け部を第2の位置にしなければ肘掛けランプが自動的にオンにはならないので、肘掛けランプによる不要な光の照射を防止することができる。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明の第9の車両は、上述した本発明の第1ないし第6のいずれかの車両において、前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出された時点から所定の時間が経過した後、前記肘掛けランプを自動的にオフにすることを特徴とする。
【0032】
本発明の第9の車両によれば、主電源スイッチがオフになった後に、肘掛けランプがオンになった状態で長時間放置されることを防止することができる。これにより、肘掛けランプによる不要な光の照射を抑制することができ、消費電力の削減、または夜間における光の照射による周囲の者への迷惑を軽減することができる。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の第10の車両は、上述した本発明の第1ないし第9のいずれかの車両において、前記動力源としてのモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリを充電する充電器と、前記充電器を外部電源と接続する接続手段とを備え、前記ランプ制御手段は、前記接続手段を前記外部電源と接続して前記充電器により前記バッテリの充電を行っているときには前記肘掛けランプを点灯または点滅させ、前記バッテリの充電を終えたときには前記肘掛けランプを消灯させることを特徴とする。
【0034】
本発明の第10の車両によれば、肘掛けランプを充電確認のためのランプとしても用いることができ、充電確認のための専用ランプを排除して、車両に取り付けるべきランプないし灯火器の個数を減らすことができる。
【0035】
上記課題を解決するために、本発明の第11の車両は、上述した本発明の第10の車両において、前記ランプ制御手段は、前記バッテリの充電を行っている期間において前記肘掛けランプから発せられる光の強度を、前記バッテリの充電を行っていない期間において前記肘掛けランプをオンにしたときに前記肘掛けランプから発せられる光の強度よりも低くすることを特徴とする。
【0036】
本発明の第11の車両によれば、降車時においては、降車者の足下を肘掛けランプにより明るく照らすことができる一方、充電時においては、肘掛けランプの点灯または点滅によって消費する電力を抑えながら、充電中であることの確認を可能にすることができる。
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の第12の車両は、上述した本発明の第10または第11の車両において、前記接続手段は充電コネクタを含み、前記シートの下側に収納され、前記肘掛けランプの照射範囲には、前記シートの下側に収納されている前記充電コネクタが含まれることを特徴とする。
【0038】
本発明の第12の車両によれば、充電を開始する際に、周囲が暗くても、利用者は充電コネクタを容易に見つけ出すことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、一般的な四輪自動車のように車外と車内とを隔絶するドアを有していない構成であっても、降車時に降車者の足下を光により明るく照らすことができ、降車者の降車の安全性を確保することができる。また、降車時に降車者の足下を照らすランプのオン、オフの手間を軽減することができる。また、ランプないし灯火器の個数を増加させることなく降車時に降車者の足下を光により照らす機能を追加することができ、製造コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態である電動車いすを側方から見た外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である電動車いすを上方から見た外観図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である電動車いすを後方から見た外観図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛け部の2通りの位置を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛け部の支持構造を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛け部の支持構造を拡大して示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおいて肘掛け部の位置を検出する構成を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛け部を示す説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの照射範囲を示す説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの照射範囲を示す説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの照射範囲を示す説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの照射範囲を示す説明図である。
【図14】本発明の第1の実施形態である電動車いすの電気的構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第1の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの制御処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施形態である電動車いすにおける肘掛けランプの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0042】
(第1の実施形態)
図1ないし図3は本発明の車両の第1の実施形態である電動車いすを示しており、図1が当該電動車いすを側方から見た図であり、図2が当該電動車いすを上方から見た図であり、図3が当該電動車いすを後方から見た図である。
【0043】
図1において、電動車いす1は、主として高齢者または歩行困難者向けの移動手段として用いられる電動式の車いすである。電動車いす1の車体は、その骨格を形成する車体フレーム11と、車体フレーム11の前部下側に回転可能に設けられた一対の前輪12と、車体フレーム11の後部下側に回転可能に設けられた一対の後輪13とを備えている。また、車体フレーム11の前部上側には上下方向に伸張したハンドル支持部14が設けられ、ハンドル支持部14の上端側にはハンドル15が回動可能に支持されている。また、ハンドル支持部14内には、ハンドル15の回動を各前輪12に伝達して各前輪12の向きを変えるステアリングシャフト(図示せず)が設けられている。
【0044】
また、ハンドル支持部14の側面には主電源スイッチ17が取り付けられている。主電源スイッチ17は、オン時には後述するモータ28の駆動操作を可能にし、オフ時にはモータ28の駆動操作を不能にするスイッチであり、電動車いす1のいわゆるメインスイッチである。また、図2に示すように、ハンドル支持部14の上端側には操作パネル18および一対のバックミラー19が取り付けられ、ハンドル支持部14の前側には、かご20およびフロントライト21が取り付けられている。
【0045】
また、車体フレーム11上においてハンドル支持部14の後方には、電動車いす1の運転者が運転時に両足を置くステップ部23が設けられている。また、車体フレーム11においてステップ部23の後方には機器収容部24が設けられ、機器収容部24内には、バッテリ25、充電器26、および電動車いす1を制御するための電気回路を備えたコントローラ27等が収容されている。また、図3に示すように、車体フレーム11の後部下側であって一対の後輪13の間には、動力源としてもモータ28が設けられている。モータ28は各後輪13を回転させる動力を作り出す。これにより、電動車いす1の走行が実現する。さらに、機器収容部24の後ろ側には一対の反射板29が設けられている。
【0046】
また、ハンドル15の後方であって機器収容部24の上側には、電動車いす1の運転者が運転時に座るシート31が設けられている。シート31は、当該シート31の下側に配置された上下方向に伸びるシート支持部32等を介して車体フレーム11側に固定されている。電動車いすの種類によっては、シート31がシート支持部32を軸として回転するものもあるが、本実施形態による電動車いす1におけるシート31はシート支持部32に回転不能に固定されている。
【0047】
シート31は、運転者が座ったとき運転者の尻が接触する座部33、および当該運転者が背中をもたせかける背もたれ部34を備えている。また、シート31は、その骨格を構成するシートフレーム35(図5参照)と、シートフレーム35において運転者の身体が接触する側(座部33の上側および背もたれ部34の前側)を覆うクッションと、シートフレーム35において運転者の身体が接触しない側(座部33の下側および背もたれ部34の後ろ側)を覆うカバー板等とから構成されている。
【0048】
また、シート31には、運転者が肘を置く一対の肘掛け部36が設けられている。一方の肘掛け部36はシート31の左方に配置され、他方の肘掛け部36はシート31の右方に配置されている。図3に示すように、電動車いす1を後方から見たとき、一方の肘掛け部36は電動車いす1の左端側に位置し、他方の肘掛け部36は電動車いす1の右端側に位置している。また、各肘掛け部36には肘掛けランプ37が設けられている。
【0049】
さらに、シート31の下側、具体的には機器収容部24とシート31との間には、図1に示すように、充電ケーブル(図示せず)および充電コネクタ(接続手段)としての充電プラグ56が設けられている。充電ケーブルの一端側は充電器26に接続され、充電ケーブルの他端側には充電プラグ56が接続されている。電動車いす1の走行中等は、充電ケーブルおよび充電プラグ56は、シート31の下面に取り付けられた充電ケーブル収容部58に収容されている。一方、充電器26に充電するときには、充電ケーブル収容部58から充電プラグ56および充電ケーブルを引き出し、充電プラグ56を例えばコンセントに接続する。
【0050】
図4ないし図7は、肘掛け部36に関する構成を示している。すなわち、図4は肘掛け部36の2通りの位置を示し、図5および図6は肘掛け支持構造を示し、図7は肘掛け部36の位置を検出する構成を示している。
【0051】
図4に示すように、各肘掛け部36は通常位置(第1の位置)と立ち上げ位置(第2の位置)との間でシート31に対して回動可能となるようにシート31に支持されている。通常位置は、図4(1)に示すように、肘掛け部36の長さ方向が略水平方向となる位置である。運転者がシート31に座って電動車いす1を走行させるときは、肘掛け部36を通常位置にする。これにより運転者は肘を肘掛け部36に置くことができる。一方、立ち上げ位置は、図4(2)に示すように、肘掛け部36の長さ方向が略垂直方向(例えば水平面に対して75度ないし100度程度)となる位置である。運転者が電動車いす1に乗るとき、または運転者が電動車いす1から降りるときには、肘掛け部36を立ち上げ位置にすることで、運転者の乗降を容易にし、また、乗降の安全性を高めることができる。
【0052】
図5に示すように、シートフレーム35のうち背もたれ部34の骨格を形成している部分の左部および右部には肘掛け支持部39がそれぞれ固定されている。各肘掛け部36は、その骨格を形成する肘掛けフレーム38が肘掛け支持部39に回動可能に支持されることによってシート31に取り付けられている。より具体的に説明すると、図6に示すように、各肘掛け支持部39には、シートフレーム35から外向きに突出する回動軸部41が設けられ、一方、各肘掛け部36の肘掛けフレーム38の後端部には挿入孔42が形成され、各肘掛けフレーム38は、挿入孔42に回動軸部41を挿入することにより矢示A方向に回動可能に肘掛け支持部39に支持されている。
【0053】
また、各肘掛けフレーム38には、当該肘掛けフレーム38からシートフレーム35側に突出する回動規制ピン43が設けられ、一方、各肘掛け支持部39には三日月状の長穴44が形成され、各肘掛けフレーム38が肘掛け支持部39に支持された状態で、回動規制ピン43の先端部が長穴44内に入り込む。これにより、図7中の矢示Bに示すように、肘掛けフレーム38の回動が、長穴44内を回動規制ピン43の先端部が移動し得る範囲に規制される。これにより、各肘掛け部36の回動が通常位置と立ち上がり位置との間に規制される。
【0054】
さらに、図7に示すように、各肘掛け支持部39には、肘掛け部36の位置を検出する肘掛け位置検出器45が取り付けられている。肘掛け部36が通常位置にあるときには、回転規制ピン43が図7中の実線で示すように長穴44内の上部に移動し、肘掛け位置検出器45の検出レバー46に接触し、検出レバー46を押し上げる。この結果、肘掛け位置検出器45がオンになる。一方、肘掛け部36が立ち上がり位置にあるときには、回転規制ピン43が図7中の点線で示すように長穴44内の下部に移動し、肘掛け位置検出器45の検出レバー46から離れる。この結果、肘掛け位置検出器45がオフになる。各肘掛け位置検出器45はコントローラ27に電気的に接続されており、当該肘掛け位置検出器45のオン、オフを示す検出信号をコントローラ27に出力する。コントローラ27は、各肘掛け位置検出器45から出力された検出信号に基づいて各肘掛け部36の位置を検出し、この検出結果を含む後述のいくつかの条件を満足するか否かを判断して各肘掛けランプ37のオン、オフを制御する。
【0055】
図8および図9は肘掛けランプ37に関する構成を示している。すなわち、図8は肘掛けランプ37が設けられた肘掛け部36を拡大して示し、図9は肘掛けランプ37の断面を拡大して示している。図10ないし図13は肘掛けランプ37の照射範囲を示している。
【0056】
肘掛けランプ37は、肘掛け部36が通常位置にある状態において、肘掛け部36の後端部下側に設けられている。図8に示すように、肘掛け部36が立ち上げ位置になると、肘掛けランプ37は、肘掛け部36の下端部前側に位置するようになる。肘掛けランプ37は、図9に示すように、通常位置にある肘掛け部36の後端部下側(立ち上げ位置にある肘掛け部36の下端部前側)に形成された凹状のランプ取付部51に取り付けられている。肘掛けランプ37は、ランプ取付部51に固定されたランプハウジング52と、ランプハウジング52内に取り付けられたランプユニット53と、ランプユニット53が取り付けられたランプハウジング52を外側から覆い、光を透過すると共に光を拡散させる光拡散部材としてのレンズ54とを備えている。ランプユニット53は、基板上に複数の発光ダイオード(LED)を配置することにより構成されている。ランプユニット53は、図示しないケーブルを介してコントローラ27に電気的に接続されている。ランプ取付部51およびランプハウジング52には当該ケーブルを通すための挿通孔51A、52Aが形成されている。
【0057】
また、図10ないし図13に示すように、左側の肘掛けランプ37の照射範囲は、肘掛け部36が立ち上げ位置にある状態において照射範囲R1となるように設定されている。すなわち、左側の肘掛けランプ37は、図10に示すように、左側の肘掛け部36が立ち上げ位置にあるときに前方斜め下向きに光を発し、当該光の照射範囲R1には、図11に示すように、電動車いす1の車体側方の地面が含まれる。より具体的には、照射範囲R1には、図12または図13に示すように、シート31の座部33の左方およびステップ部23の左方の地面が含まれる。
【0058】
照射範囲R1をこのように設定することにより、左側の肘掛け部36を立ち上げ位置にして電動車いす1からその左方に降りる運転者(降車者)の足下を明るく照らすことができ、降車時における運転者による足下の状況確認を容易にすることができる。
【0059】
特に、照射範囲R1にはシート31の座部33の左方の地面が含まれるので、図12に示すように、運転者Dが運転を終えて電動車いす1からその左方へ降りる際に、シート31に座ったまま身体を90度回転させてシート31の左方の地面に両足を着いてから立ち上がる場合、当該運転者Dの足下を肘掛けランプ37により明るく照らすことができる。また、肘掛けランプ37の光の照射方向が真下よりも前方に傾いており、これにより照射範囲R1にステップ部23の左方の地面が含まれる。したがって、図13に示すように、運転者Dが運転を終えて電動車いす1からその左方へ降りる際に、前方を向いてシート31に座った状態のまま片足をステップ部の左方の地面に出すといった手順で、またはステップ部23に両足を置いたままシート31から立ち上がった後に片足をステップ部23の左方の地面に出すといった手順で電動車いす1から降りる際に、当該運転者Dの足下を肘掛けランプ37により明るく照らすことができる。このように、肘掛けランプ37の照射範囲R1は、運転者の様々な降車手順を考慮し、通常考えられるあらゆる手順で降車しても足下を確実に照らすように設定されている。
【0060】
さらに、シート31の下側に収納されている充電プラグ56が、左側の肘掛けランプ37の照射範囲に含まれるように、照射範囲R1を図10中の照射範囲R2まで前方に拡げてもよい。これにより、左側の肘掛けランプ37により、充電ケーブル収容部58に収容された充電プラグ56を照らすことができるので、充電を開始する際に、周囲が暗くても、運転者または他の利用者は充電プラグ56を容易に見つけ出すことができる。
【0061】
また、肘掛けランプ37のレンズ54によって、ランプユニット53の複数の発光ダイオードから発せられる光を電動車いす1の左方に広く拡散させ、照射範囲R1を図11中の照射範囲R3まで左方に拡げ、電動車いす1の左方であって電動車いす1から離れた位置にいる者が肘掛けランプ37の光を視認することができるようにしてもよい。これにより、運転者の降車を周囲の者が容易に確認することができる。また、運転者は電動車いす1の左方とその周囲の状況を広く確認することができる。さらに、電動車いす1の周辺を広範にわたり照らすことができるので、充電を開始する際に、周囲が暗くても、運転者または他の利用者は充電プラグ56を差し込むACコンセントを容易に見つけ出すことができる。
【0062】
以上、図8ないし図13を参照しながら左側の肘掛けランプ37の構成および照射範囲について説明したが、右側の肘掛けランプ37の構成および照射範囲についても、左右が逆である点を除き、左側の肘掛けランプ37の構成および照射範囲と同じである。
【0063】
図14は、各肘掛けランプ37の制御に関する電気的構成を示している。機器収容部24内に収容されたコントローラ27には、図14に示すように、主電源スイッチ17、充電器26、左側の肘掛け位置検出器45、右側の肘掛け位置検出器45、左側の肘掛けランプ37および右側の肘掛けランプ37がそれぞれケーブルを介して接続されている。コントローラ27は、主電源スイッチ17がオンかオフかを示す検出信号を主電源スイッチ17から受け取る。また、コントローラ27は、充電動作を行っているか否かを示す検出信号を充電器26から受け取る。また、コントローラ27は、肘掛け部36が通常位置であるか立ち上げ位置であるかを示す検出信号を各肘掛け位置検出器45から受け取る。また、コントローラ27は、肘掛けランプ37の点灯、点滅、消灯を切り換える制御信号を各肘掛けランプ37に出力する。また、コントローラ27には、演算処理回路(CPU)、メモリ等が内蔵されており、また、コントローラ27はタイマ60としての機能を有している。また。コントローラ27は図示しないアクセルの状態、速度等を検出する機能や、モータ28、電磁ブレーキ、充電器26等を制御する機能をも備えている。なお、コントローラ27は、ランプ制御手段、電力供給手段、および主電源スイッチ検出手段の具体例であり、また、コントローラ27は、肘掛け位置検出器45と共に肘掛け位置検出手段の具体例である。
【0064】
コントローラ27は、主電源スイッチ17がオフになり、バッテリ25からモータ28、フロントライト21等への電力の供給が絶たれた後も、所定の時間内においては、バッテリ25からの電力の供給を受けて動作を継続することができる。そして、コントローラ27は、主電源スイッチ17がオフになった後も、一定の条件が充たされたとき、各肘掛けランプ37に電力を供給し、各肘掛けランプ37を点灯させることができる。
【0065】
すなわち、コントローラ27は、主電源スイッチ17から受け取った検出信号により主電源スイッチ17がオフであることを検出し、かつ肘掛け位置検出器45から受け取った検出信号により肘掛け部36が立ち上げ位置にあることを検出したとき、肘掛けランプ37を点灯させる制御信号を肘掛けランプ37に出力し、肘掛けランプ37を点灯させる。なお、このとき、コントローラ27は、左側の肘掛け位置検出器45から受け取った検出信号により左側の肘掛け部36が立ち上げ位置にあることを検出したときには、左側の肘掛けランプ37を点灯させ、右側の肘掛け位置検出器45から受け取った検出信号により右側の肘掛け部36が立ち上げ位置にあることを検出したときには、右側の肘掛けランプ37を点灯させる。これにより、電動車いす1の運転者は、電動車いす1の運転を終えて主電源スイッチ17をオフにした後であっても、降りようとする側の肘掛け部36を持ち上げて立ち上げ位置にすることにより、持ち上げた肘掛け部36に設けられた肘掛けランプ37を点灯させ、降車の際に足下を明るく照らすことができる。すなわち、運転者が電動車いす1を暗所に停めて主電源スイッチ17をオフにした場合には、フロントライト21が消灯して運転者の周りが真っ暗になるが、このような場合でも、運転者は、肘掛け部36を持ち上げるだけの簡単な操作で肘掛けランプ37を点灯させ、降車の際の運転者の足下を明るく照らすことができる。肘掛け部36を持ち上げる動作は、運転者が降車時に行うごく自然な動作であり、また、運転者はシート31に座った状態で肘掛け部36を見失うことはないので、周囲が真っ暗でも、運転者は容易にかつ確実に肘掛け部36を持ち上げて肘掛けランプ37を点灯させ、肘掛けランプ37により明るく照らされた足下を確認しながら、安全に降車することができる。
【0066】
また、コントローラ27は、肘掛けランプ37が点灯している状態において、肘掛け位置検出器45からの検出信号により、当該点灯している肘掛けランプ37が設けられた肘掛け部36が通常位置であることを検出したとき、肘掛けランプ37を消灯させる制御信号を当該点灯している肘掛けランプ37に出力し、当該肘掛けランプ37を消灯させる。これにより、運転者は、肘掛け部36を通常位置に戻すといった簡単な操作を行うだけで、肘掛けランプ37を消すことができる。
【0067】
また、コントローラ27は、主電源スイッチ17がオフであることを検出してから所定の時間(例えば5分〜10分程度)が経過した後に電動車いす1のシステム全体の電源を自動的に切断する。このとき肘掛けランプ37は、肘掛け部36が立ち上げ位置にあっても消灯する。これにより、運転者が肘掛け部36を通常位置に戻し忘れても、肘掛けランプ37が自動的に消灯する。したがって、肘掛けランプ37が点灯状態のまま長時間放置されることを防止することができ、消費電力の削減、または夜間における光の照射による周囲の者への迷惑を軽減することができる。
【0068】
図15は、コントローラ27による肘掛けランプ37の点灯、消灯を制御する処理の具体例を示している。図15において、運転者が電動車いす1の運転を終え、コントローラ27が、アクセルのオフを検出し(ステップS1:YES)、続いて速度がゼロであることを検出したとき(ステップS2)、コントローラ27は電磁ブレーキをオンにする(ステップS3)。
【0069】
続いて、コントローラ27は、主電源スイッチ17がオフであるか否かを検出し、主電源スイッチ17がオフであるときには(ステップS4:YES)、タイマ60により時間の計測を開始する(ステップS5)。
【0070】
続いて、コントローラ27は、肘掛け部36が立ち上げ位置か否かを検出し、肘掛け部36が立ち上げ位置であるときには(ステップS6:YES)、当該肘掛け部36に設けられた肘掛けランプ37を点灯させる(ステップS7)。
【0071】
続いて、コントローラ27は、ステップS5において時間の計測を開始した時点から所定の時間が経過したか否かを判断し、所定の時間が経過したときには(ステップS8:YES)、電動車いす1のシステム全体の電源を切断する。これにより肘掛けランプ37が点灯している場合には消灯する(ステップS9)。
【0072】
(第2の実施形態)
図16は、本発明の第2の実施形態の電動車いす1における肘掛けランプ37の点灯、点滅、消灯を制御する処理の具体例を示している。本発明の第2の実施形態の特徴は、肘掛けランプ37が、降車時に運転者の足下を照らすランプとしての機能だけでなく、走行時において電動車いす1が走行していることを示すランプとしての機能、および充電時において充電中であることを示すランプとしての機能を併せ持つ点にある。このように、各肘掛けランプ37に複数の機能を持たせることで、電動車いす1に設けるランプないし灯火器の個数を減らすことができる。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、概してコントローラ27の制御処理の内容が異なるだけなので、以下の説明において、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0073】
図16において、運転者が電動車いす1を運転し、電動車いす1が走行している期間は、コントローラ27は走行モードとなる。走行モードにおいて、コントローラ27は、肘掛けランプ37を点滅させる制御信号を、左側および右側のそれぞれの肘掛けランプ37に出力し、これら2つの肘掛けランプ37をそれぞれ点滅させる(ステップS11)。これにより、電動車いす1の走行中において各肘掛けランプ37は、電動車いす1が走行していることを示すランプとして機能する。
【0074】
運転者が電動車いす1の運転を終え、コントローラ27が、アクセルのオフを検出し(ステップS12:YES)、続いて速度がゼロであることを検出したとき(ステップS13)、コントローラ27は電磁ブレーキをオンにする(ステップS14)。続いて、コントローラ27は、主電源スイッチ17がオフであるか否かを検出し、主電源スイッチ17がオンであるときには(ステップS15:NO)、コントローラ27は停車モードとなる。停車モードにおいて、コントローラ27は、肘掛けランプ37を点滅させる制御信号の各肘掛けランプ37への出力を維持し、各肘掛けランプ37の点滅を継続させる(ステップS16)。
【0075】
一方、主電源スイッチ17がオフであるときには(ステップS15:YES)、コントローラ27はタイマ60により時間の計測を開始する(ステップS17)。続いて、コントローラ27は、肘掛け部36が立ち上げ位置か否かを検出し、肘掛け部36が立ち上げ位置であるときには(ステップS18:YES)、降車モードとなる(ステップS19)。降車モードにおいては、コントローラ27は、立ち上げ位置にある肘掛け部36に設けられた肘掛けランプ37を点灯させる。これにより、降車時において各肘掛けランプ37は、運転者の足下を照らすランプとして機能する。
【0076】
続いて、コントローラ27は、充電が開始されたか否かを検出し、充電が開始されていないときには(ステップS20:NO)、続いて、ステップS17において時間の計測を開始した時点から所定の時間(例えば5分ないし10分程度)が経過したか否かを判断する(ステップS21)。そして、所定の時間が経過したときには(ステップS21:YES)、駐車モードとなる(ステップS24)。駐車モードでは、コントローラ27は電動車いす1のシステム全体の電源を切断する。これにより各肘掛けランプ37は消灯する。
【0077】
一方、ステップS18において、肘掛け部36が通常位置であるときには(ステップS18:NO)、コントローラ27は駐車モードとなる(ステップS22)。駐車モードでは、コントローラ27は電動車いす1のシステム全体の電源を切断する。これにより各肘掛けランプ37は消灯する。
【0078】
他方、運転者が充電プラグ56をコンセントに接続して、充電を開始すると、コントローラ27は、充電器26からの検出信号に基づいて充電が開始されたことを検出し、充電モードとなる(ステップS23)。充電モードにおいて、コントローラ27は、各肘掛けランプ37を点灯させる。これにより、各肘掛けランプ37は、充電時において充電中であることを示すランプとして機能する。
【0079】
ここで、コントローラ27は、充電モードにおいては、各肘掛けランプ37から発せられる光の強度を、降車モードにおいて肘掛けランプ37から発せられる光の強度よりも低くする。これにより、降車時においては、運転者の足下を肘掛けランプ37により明るく照らすことができる一方、充電時においては、肘掛けランプ37の点灯によって消費する電力を抑えながら、充電中であることの確認を可能にすることができる。
【0080】
なお、上述した第2の実施形態において、走行モード、停車モード、降車モードおよび充電モードの間で、各肘掛けランプ37から発せられる光の色を変更してもよい。例えば、各肘掛けランプ37から発せられる光の色を、走行モードおよび停車モードでは橙色にし、降車モードでは白色にし、充電モードでは赤色にしてもよい。また、走行モードおよび停車モードにおいて、各肘掛けランプ37を方向指示灯として機能させてもよい。
【0081】
また、上述した各実施形態では、充電ケーブルおよび充電プラグ56をシート31の下側に収容する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、充電プラグのみをシート31の下側に取り付けてもよい。この場合には、各肘掛けランプ37の照射範囲に充電プラグが含まれるようにすることが望ましい。なお、この場合、充電の際には、電動車いす1と分離した充電ケーブルを用いて、充電プラグとコンセントとの間を接続する。
【0082】
また、上述した各実施形態において、コントローラ27は、各肘掛けランプ37の制御を専ら行うためのコントローラとしても設けてもよいし、電動車いす1の走行制御を行うコントローラの一部の機能として実現してもよい。
【0083】
また、上述した各実施形態では、各肘掛けランプ37の光源として複数の発光ダイオードを用いる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。各肘掛けランプ37の光源として単一または複数の電球を用いることもできる。
【0084】
また、上述した各実施形態では、主電源スイッチ17がオフとなり、肘掛け部36が立ち上げ位置となったときに肘掛けランプ37を点灯させる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。主電源スイッチ17がオフとなったときに直ちに肘掛けランプ37を点灯させてもよい。
【0085】
また、本発明の車両は、上記各実施形態で述べたような4輪で単一のシート31を有する電動車いす1に限らない。本発明は例えば二輪車や三輪車にも適用可能である。また、本発明は複数のシートを有する車両にも適用可能である。2以上のシートが左右方向に一列に並んでいる場合には、左端のシートの左方の肘掛け部に肘掛けランプを設け、右端のシートの右方の肘掛け部に肘掛けランプを設ける。2以上のシートが前後方向に一列に並んでいる場合には、前側のシートと後ろ側のシートの双方またはいずれか一方の両側の肘掛け部に肘掛けランプをそれぞれ設けてもよい。また、動力源がエンジンである車両にも本発明を適用することができる。例えば、クルーザータイプの自動二輪車には、肘掛け付きの座席を有しているものがあるが、このような車両の場合にも本発明を適用することができる。
【0086】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 電動車いす
11 車体フレーム
12 前輪
13 後輪
15 ハンドル
17 主電源スイッチ
23 ステップ部
25 バッテリ
26 充電器
27 コントローラ(ランプ制御手段、電力供給手段、主電源スイッチ検出手段、肘掛け位置検出手段)
28 モータ(動力源)
31 シート
33 座部
34 背もたれ部
36 肘掛け部
37 肘掛けランプ
39 肘掛け支持部
45 肘掛け位置検出器(肘掛け位置検出手段)
56 充電プラグ(接続手段)
58 充電ケーブル収容部
60 タイマ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する車体と、
前記車体に設けられ、前記車輪の回転動力を作り出す動力源と、
前記車体に設けられ、オン時には前記動力源の駆動操作を可能にし、オフ時には前記動力源の駆動操作を不能にする主電源スイッチと、
前記車体の前部に設けられたハンドルと、
前記車体上において前記ハンドルの後方に設けられたシートと、
前記シートの側方に配置された肘掛け部と、
前記肘掛け部の長さ方向が略水平方向となる第1の位置と前記肘掛け部の長さ方向が略垂直方向となる第2の位置との間で前記シートに対して回動可能となるように前記肘掛け部を支持する肘掛け支持部と、
前記肘掛け部に設けられた肘掛けランプと、
前記肘掛けランプを制御するランプ制御手段とを備えた車両であって、
前記主電源スイッチがオフになった後でも前記肘掛けランプに電力を供給することができる電力供給手段を備え、
前記肘掛けランプは前記肘掛け部が前記第2の位置にあるときに下向きに光を発し、当該光の照射範囲には前記車体の前記側方の地面が含まれることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記肘掛けランプの照射範囲には、前記シートにおいて当該シートに座っている者の尻が接触する座部の前記側方の地面が含まれることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車体上において前記シートの前方には前記シートに座っている者が足を置くステップ部が設けられ、
前記肘掛けランプの照射範囲には当該ステップ部の前記側方の地面が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記肘掛け部には、前記車体の前記側方であって当該車体から離れた位置にいる者が前記肘掛けランプの光を視認することができるように前記肘掛けランプの光を前記側方に拡散させる光拡散部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
前記肘掛け部の位置を検出する肘掛け位置検出手段を備え、
前記ランプ制御手段は、前記肘掛け位置検出手段により前記肘掛け部が前記第2の位置にあることが検出されたときに前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両。
【請求項6】
前記肘掛け部の位置を検出する肘掛け位置検出手段を備え、
前記ランプ制御手段は、前記肘掛け位置検出手段による検出結果に基づき、前記肘掛け部が前記第1の位置にある間に前記肘掛けランプをオンにしたときには前記肘掛けランプから第1の態様の光を発し、前記肘掛け部が前記第2の位置にある間に前記肘掛けランプをオンにしたときには前記肘掛けランプから第2の態様の光を発し、
前記第1の態様と前記第2の態様とでは前記光の色が異なり、または前記第1の態様および前記第2の態様のうちの一方が前記光の点滅であり他方が前記光の点灯であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、
前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出されたときに前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両。
【請求項8】
前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、
前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出され、かつ前記肘掛け位置検出手段により前記肘掛け部が前記第2の位置にあることが検出されたときに、前記肘掛けランプを自動的にオンにすることを特徴とする請求項5または6に記載の車両。
【請求項9】
前記主電源スイッチがオフであるか否かを検出する主電源スイッチ検出手段を備え、
前記ランプ制御手段は、前記主電源スイッチ検出手段により前記主電源スイッチがオフであることが検出された時点から所定の時間が経過した後、前記肘掛けランプを自動的にオフにすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両。
【請求項10】
前記動力源としてのモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを充電する充電器と、
前記充電器を外部電源と接続する接続手段とを備え、
前記ランプ制御手段は、前記接続手段を前記外部電源と接続して前記充電器により前記バッテリの充電を行っているときには前記肘掛けランプを点灯または点滅させ、前記バッテリの充電を終えたときには前記肘掛けランプを消灯させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の車両。
【請求項11】
前記ランプ制御手段は、前記バッテリの充電を行っている期間において前記肘掛けランプから発せられる光の強度を、前記バッテリの充電を行っていない期間において前記肘掛けランプをオンにしたときに前記肘掛けランプから発せられる光の強度よりも低くすることを特徴とする請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記接続手段は充電コネクタを含み、前記シートの下側に収納され、
前記肘掛けランプの照射範囲には、前記シートの下側に収納されている前記充電コネクタが含まれることを特徴とする請求項10または11に記載の車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−14296(P2013−14296A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150366(P2011−150366)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】