説明

限流器

【課題】高電圧の応用技術に適しており、スペースを節約した配置を可能にすると共に、安全に動作可能な、超伝導要素を利用する限流器を提供する。
【解決手段】1または複数の限流ユニット1には、1または複数の超伝導要素2が設けられている。標準化された限流ユニット1および標準化されたモジュラ絶縁ハウジングを、限流器のモジュラ設計に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の応用技術に特に最適化された限流器(電流リミッタ)における超伝導要素の改良された配置に関する。さらに、本発明は、所定の電圧レベルの高電圧応用技術のように、特定の応用技術の特定の要件に容易に適合されることができる限流器に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導体は、通常の動作において、高速で効率的な限流、自動リカバリ、および無視可能なインピーダンスを可能にする抵抗型限流器として大きな可能性を持っている。これらは特に、高電圧技術における他の超伝導技術、たとえば超伝導ケーブルを実現するための技術となる。
【0003】
典型的に、超伝導の限流器は、クライオスタット(cryostat)のような絶縁ハウジングに収容される1または複数の超伝導要素を備える。ここで、クライオスタットのような絶縁ハウジングは、超伝導特性を示す臨界温度Tc以下に該超伝導要素を冷やすための冷却媒体で満たされている。該臨界温度は、超伝導材料に依存している。適切な冷却媒体は、たとえば、液体状態の窒素、ヘリウム、ネオン、水素、またはこれらの混合物である。好ましい超伝導材料は、67Kおよび110Kの範囲内において臨界温度を持つBSCCO(bismuth-strontium-calcium-copper-oxide)およびYBCO(yttrium-barium-copper-oxide)のような、高温超伝導体である。これらの材料について、液体窒素を、コストの観点から好ましい冷却媒体として用いることができる。
【0004】
限流器の設計において、2つの具体的なパラメータを考慮する必要がある。第1のパラメータは、システムを動作させる定格電流、および該システムが電流を制限する制限レベルである。すなわち、超伝導要素は、その許容電流の観点ならびにその制限特性の観点から選択されなければならない。これらの要件を満たすため、1つの超伝導要素および、電気的に並列に接続された2つ以上の超伝導要素、のどちらかを必要とすることができる。
【0005】
第2のパラメータは、限流器を動作させる電圧レベルである。該電圧レベルにより、電気的に直列に接続される超伝導要素の必要な数が決定される。
【0006】
任意の特定の応用技術についてこれらのパラメータを満たすため、限流器は、個々に設計されなければならない。こうして、特定の応用技術の特定の要件に限流器を容易に適合可能な標準化された設計が必要とされている。
【0007】
さらに、中ないし高電圧レベルにおいて動作することになる限流器において、数百キロボルト(kV)までの電圧が発生することがある。損傷を回避するため、このような高い電圧のピークにおいてさえ、限流器の個々の構成要素間において、たとえば、1または複数の超伝導要素と、通常は接地されているクライオスタットのハウジングのジャケットとの間で、フラッシュオーバが生じないことが必要とされる。
【0008】
冷却媒体として通常用いられる液体窒素はまた、非常に良好な絶縁特性を有しており、よって、限流器内に電気絶縁を提供するのに役立つ。
【0009】
しかしながら、問題がある。すなわち、故障発生時において、超伝導要素は、熱的に、周囲の液体窒素の沸騰温度を超えた温度にまで熱せられる。結果として、ガス状(気体)の窒素、すなわち気泡が、クライオスタット内で形成される。しかしながら、ガス状の窒素の電気絶縁特性は、液体窒素のものよりも、かなり低下する。さらに、ガス状の窒素は、液体窒素に比べて、絶縁破壊の強さが小さいだけでなく、気泡によって液体窒素が変位される領域での電界の低下につながる。この両方の要因は、フラッシュオーバのリスクを強める。従って、電圧のフラッシュオーバを回避するため、クライオスタットにおける構成要素間の距離は、液体窒素の場合よりも大きくなるよう選択される必要がある。結果として、限流器のためのスペースが、より限られたものとなる。
【0010】
下記の特許文献1および2は限流器に関するものであり、ここで、超伝導要素を含む第1の閉じられた冷却浴が第2の閉じられた冷却浴に収容され、温度の上昇によって第1の冷却浴内に泡が形成されるのを抑制するため、第1の冷却浴に加わる圧力は、周囲の第2の冷却浴に加わるものより高い。
【0011】
また、下記の特許文献3は、超伝導要素の周囲の冷却浴からの熱エネルギーの放散の問題に関する。この問題のため、2つの分離した冷却回路が設けられ、これらは、熱交換器によって熱的に結合される。第1の冷却回路は、超伝導要素を冷却するよう動作する。生成される熱は、熱交換器を介して第2の冷却回路に導かれる。第2の冷却回路は、熱交換器によって周囲に熱的に結合されており、これにより、該周囲に熱を導く。第1の冷却浴では、ネオン(〜27K)が用いられ、第2の冷却浴では、液体窒素(〜77K)が用いられる。
【0012】
また、下記の特許文献4は、超伝導要素を冷却するための第1の冷却浴および温度が上昇した場合に第1の冷却浴の熱を放散させるための第2の冷却浴を備える限流器に関する。第2の冷却浴は、第1の冷却浴の媒体よりも低い沸点を持つ媒体を備える冷却槽として動作する。結果として、両方の冷却浴および超伝導は、第2の冷却浴の沸点よりも低い温度にまで冷却される。温度が上昇した場合、両方の冷却浴の沸騰温度の違いから生じる温度の緩衝帯が存在する。
【0013】
下記の特許文献5は、既知の限流器に関し、ここで、プレート状の複数の限流素子が直列に接続され、冷却媒体で満たされたクライオスタット20に浸される。気化した冷却媒体K1は、液化のために冷却器21に放出され、液体冷却媒体K2としてクライオスタット20に提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0204632号明細書
【特許文献2】特開平04−193024号公報
【特許文献3】国際公開第WO2005/006455号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1217708号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19520205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、高電圧の応用技術に適しており、スペースを節約した配置を可能にすると共に、安全に動作可能な、超伝導要素を利用する限流器の必要性がなお存在する。
【0016】
さらに、異なる応用技術の特定の要件および条件に容易に適合することができる限流器の設計の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によると、この問題は、少なくとも1つの限流ユニットを備える限流器によって解決される。該限流ユニットは、絶縁ハウジングの内部に配置される。限流ユニットは、1つまたは複数の超伝導要素を備える。限流ユニットは、絶縁ハウジングの内部周囲から超伝導要素を空間的に分離する筐体を形成する。限流器は、限流ユニット内の超伝導要素を冷却するための第1の冷却媒体回路と、絶縁ハウジングの内部周囲を供給するための第2の冷却媒体回路とを備える。
【0018】
さらに、本発明は、1つまたは複数の超伝導要素を収容する限流ユニット、および限流器のモジュラ設計のための当該限流ユニットの使用に関する。
【0019】
本発明の第1の側面は、限流器内の超伝導要素に必要な冷却および高電圧絶縁に必要な絶縁材料の分離に基づいている。さらに、本発明の設計においては、付加的な構成を必要とするような、異なる周囲条件下で、たとえば異なる圧力下で、第1および第2の冷却媒体の維持を必要としない。本発明の第2の側面では、本発明は、異なる応用技術の特定の要件のための限流器の容易な適合および設計を可能にする、標準化された限流ユニットおよびモジュールによって可変に設計されることのできる限流器に関する。
【0020】
本発明において、原則的に、限流器の分野に適した任意の超伝導要素を使用することができる。好ましくは、超伝導要素は、上記のような高温超伝導材料から作られる。さらに、超伝導要素の形状は、限流器の使用に適していれば、特に制限されない。好ましくは、超伝導要素は、バルク材からなることができ、たとえば、焼結法または溶融鋳造法(melt-casting)によって取得可能な超伝導要素であることができる。さらに、超伝導要素は、たとえば、基板上に薄膜の超伝導材料が設けられた被覆導体として既知のように、基板上に堆積された超伝導層からなることができ、典型的には、物理蒸着、化学蒸着または化学溶液堆積等によって金属から作られることができる。
【0021】
好ましくは、超伝導要素は、ロッド、管(チューブ)、またはコイルのような円筒形状を持ち、あるいは、板(プレート)形状を持つことができる。
【0022】
本発明によると、超伝導要素は、周囲から、典型的にはクライオスタットのような絶縁ハウジングの内部から、該超伝導要素を分離する限流ユニット内に配置される。
【0023】
さらに、電流供給部が、限流ユニット内の超伝導要素をグリッドに接続するよう設けられる。本発明によると、電流供給部は、冷却媒体を限流ユニットに供給するのと該ユニットから放出するのとに同時に使用される。このため、電流供給部は、管のように、内部に中空を有する。電流供給部は、限流ユニットを介して、該限流ユニットの内部から超伝導要素に伸長する。限流ユニット内にある電流供給部の端部において、限流ユニットの内部に対して冷却媒体の交換を可能にするため、開口が設けられる。
【0024】
従って、本発明によると、電流供給部6a、bは、超伝導要素を冷却するよう動作する第1の冷却媒体回路の部分を形成する。
【0025】
典型的には、超伝導要素は、その反対の端部において、電流供給部に接続される。
【0026】
限流ユニット内に存在する1または複数の超伝導要素は、ホルダ内に配置されることができる。2以上の超伝導要素の場合、好ましくは、該ホルダは、互いに電気的に並列に超伝導要素を接続するよう適合される。同時に、該ホルダにより、電気的に並列に接続された超伝導要素の配置が、当該システム内において電気的に直列に接続される。
【0027】
本発明の限流ユニットの筐体を、非導電性の材料によって形成することができる。
【0028】
好ましい実施形態によると、該筐体は、超伝導要素を囲むシールド電極から形成されることができ、開口がある場合、電気的に非導電性カバーまたは同様のもので閉じられる。限流ユニットの外側表面は、本質的になめらかであり、フラッシュオーバを誘起するような電荷の蓄積を回避するため、角ばったエッチやスパイクのようなものをなくして、本質的に丸い形状を持つ。
【0029】
好ましくは、限流ユニット内において、超伝導要素は、互いに、実質的に同じである(等しい)。
【0030】
本発明の限流ユニットは、クライオスタット内の標準化された限流ユニットの数を変更することにより、意図した応用技術の特定の要件に容易に適合されることができる標準化された限流器を設計するための標準化構成要素として使用されることができる。このため、必要に応じて、限流ユニットの数は、クライオスタット内で調整され、たとえば、個々の限流ユニットに接続された電流供給部により、電気的に直列に接続される。
【0031】
本発明の限流ユニットにより、限流器の設計のための標準化構成要素が提供され、これにより、限流器の製造において、様々な変形形態のものを、容易に実現することができる。
【0032】
さらに、故障発生時には、ガス状の冷却媒体が、限流ユニット内のみに生じる。限流ユニットは、絶縁ハウジングの内部周囲から超伝導要素を空間的に分離する。したがって、絶縁ハウジングの内部周囲に気泡が逃げるのを防止することができる。絶縁ハウジングの内部周囲内に気泡が無いので、窒素のような冷却媒体の絶縁特性は影響されない。したがって、限流器の設計において、絶縁特性の低下に起因して必要なスペースを増大するという点を考慮する必要はない。こうして、容積全体にわたって気泡が発生しても、限流器の全体の寸法を、通常の限流器に比較して小さくすることができる。
【0033】
絶縁ハウジングの内部周囲に冷却媒体を供給するため(第2の冷却媒体回路)、当該分野で一般に知られている任意の従来からの供給システムを使用することができる。
【0034】
さらに、本発明の限流器において、第1および第2の冷却媒体を、同じ圧力下において、たとえば周囲圧力(ambient pressure)下において維持することができ、安全動作のために異なる温度を必要としない。これにより、設計を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の限流器の実施形態の長手方向の断面図である。
【図2】本発明の複数の限流器のモジュラアセンブリの長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を、図に示す好ましい実施形態を参照しつつ詳細に説明する。
【0037】
図1に示される限流ユニット1において、複数の超伝導要素2が、ホルダ3内に並列に配置されている。
【0038】
超伝導要素2を備えるホルダ3は、横方向に超伝導要素2を収めると共に、底部を形成するシールド電極4によって囲まれている。上部カバー5を設けることによって、筐体が形成され、該筐体は、ほぼ閉じられると共に、超伝導要素2を有するホルダ3を備える。
【0039】
シールド電極4を、金属のような導電性材料のシートから形成することができる。シールド電極およびその製造は、原則的に既知である。カバー5を備えるシールド電極4は、ほぼ円筒形状を有する少なくとも外側表面と共に、筐体を形成する。円筒状の本体の下部および上部のエッジを、周囲に沿って伸長する導電性材料のたとえば管7を設けることによって、丸みをつけることができる。好ましくは、管7(これは、「トロイド(toroid)」とも呼ばれる)は、シールド電極4と同じ材料から作られる。本質的に円筒形状の外側表面の形状により、およびトロイドを設けることにより、本質的に丸みのついた外側表面を、角ばったエッジの形成を回避するよう設けることができる。
【0040】
電気的な接続のため、管状の電流供給管6a、6bが設けられ、これらは、導電性材料から作られ、ホルダ3と電気的に接続される。電流供給管6a、6bは、限流ユニット1に対し、冷却媒体の供給と放出とを同時に行うよう動作する。このため、管6aおよび6bのそれぞれは、底部プレートとホルダ3の間および上部カバー5とホルダ3の間のそれぞれで伸長するその端部において、開口8を有する。開口8により、電流供給管6a、6bの中空内部と、シールド電極4およびカバー5によって形成されるチャンバとは、相互に連通する。
【0041】
超伝導要素2の同じ側のそれぞれの端部は、ホルダ3によって保持される。ホルダ3は、超伝導要素2のそれぞれの端部を保持するために、上部および下部のプレートまたはストライプによって構成されることができる。
【0042】
ホルダ3は、超伝導要素のそれぞれの端部を保持するよう設計されたストライプまたはプレートの形状を有する。このため、超伝導要素の端部の形状に適合する形状を持つよう、ホルダにくぼみを設けることができる。超伝導要素の端部は、たとえば半田付けまたは同様の手法で、ホルダに固定されることができる。さらに、当該端部を保持する部分を、クランプブッシュ(clamping bush)として機能するよう設計することができる。ホルダに適した設計は、超伝導要素を用いた限流器の分野において、一般に既知である。
【0043】
好ましくは、ホルダ3は、個々の超伝導要素を、電気的に並列に接続すると同時に、該超伝導要素2を、電流供給管6a、6bにそれぞれ電気的に接続するよう設計される。このため、ホルダ3、すなわちホルダ3の少なくともそれぞれの部分は、金属または金属の合金のような、導電性材料から作られる。
【0044】
底部プレートおよびカバー5において、開口が、電流供給管6aおよび6bの通路の配置を可能にするようそれぞれ設けられる。好ましくは、該電流供給管の該開口を通る通路は、冷却媒体すなわち気泡が周囲に漏れるのを回避するため、耐リーク性である。必要に応じて、適切なシーリングを設けることができる。
【0045】
本発明によると、故障電流発生時に形成される気泡は、限流ユニット1内で捕獲され、電流供給管6a、6b内の開口8を介してのみ該ユニットを去ることができる。
【0046】
限流ユニット全体を、参照符号9によって示されるように、クライオスタットのような絶縁ハウジングに収容することができる。
【0047】
図1に示される実施形態において、超伝導要素2は、好ましくは、テープ、管、ロッドまたは同様のもののように、伸長した形状を有する。好ましくは、ユニット1内の複数の超伝導要素2は、ほぼ同じである。
【0048】
該ユニット内に生じうる最大の電圧は、超伝導要素2に沿った電圧降下に対応し、超伝導要素2とシールド電極4の間で生成される。当該ユニットの全体の電位は、当該ユニットと、たとえばさらなるユニットや接地された絶縁ハウジングのような任意の隣接する導電性の構成要素と、の間の距離にわたって減じられる。
【0049】
当該ユニットと、絶縁ハウジングのジャケットとの間の領域(これは、「内部周囲(surrounding interior)」とも呼ばれる)においては、気泡が形成されず存在しないので、冷却媒体の絶縁効果は不変のままであり、減じられない。その結果、維持しなければならない距離は、気泡の形成を考慮しなければならない場合に比べ、非常に小さい。
【0050】
この領域と当該ユニット1の内部との間に、本質的に気体ないし液体の交換が存在しえないという事実により、絶縁ハウジングの内部には、液体窒素のような均質の絶縁材料が設けられる。限流器の設計において気泡の形成を考慮しなくてよいので、コンパクトな省スペースの配置が可能である。冷却媒体のために2つの異なる回路を設けることにより、高電圧に適した設計を簡単にすることができる。
【0051】
さらに、当該ユニット内で期待される電圧は、超伝導要素の長さが制限されていると共に、シールド電極4が、超伝導要素の一端と同じ電位を有するので、小さい。
【0052】
したがって、本発明によると、当該ユニット内の低電圧降下および当該ユニットの冷却媒体と絶縁ハウジングの内部周囲との異なる回路により、高電圧分野についてさえ、電流リミッタ設計に必要な寸法を非常に小さくすることができる。したがって、限流器を維持しつつコンパクトなスペースを構成することが可能となる。
【0053】
本発明の限流ユニットを、或る応用分野の特定の要件に適合するよう、標準化されたモジュラ限流器の設計で有利に用いることができる。
【0054】
そのようなモジュラ限流器の一例が、図2に示されており、ここで、本発明の複数の限流ユニットは、所望の限流器を形成するよう結合されている。
【0055】
個々の限流ユニットは、これら限流ユニットの内部に冷却媒体を供給するよう同時に動作する電流供給管6a、6bによって、電気的に直列に接続されている。
【0056】
図2に示される実施形態において、2つの絶縁ハウジング10(以下、「モジュラ絶縁ハウジング」とも呼ばれる)が、上部ドッキングサイト13を介して互いに結合される。図2に示される絶縁ハウジング10はまた、さらなるモジュラ絶縁ハウジング(図示せず)を結合するために下部ドッキングサイト14を備える。
【0057】
各絶縁ハウジング10内の限流ユニットは、上部および下部の電気接続部11および12によって電気的に接続されている。電気接続部11および12は、電流供給管6a、6bのように、好ましくは、限流ユニットに対して冷却媒体を伝えることを可能にする管状の形状を有する。
【0058】
上部および下部の電気接続部11および12は、電流供給管6aおよび6bに接続される。図2に示されるように、個々のモジュラ絶縁ハウジング10を電気的に直列に接続するため、上部電気接続部11は、上部ドッキングサイト13を介して結合された絶縁ハウジング10のそれぞれの上端限流ユニットの上端電流供給管6aに接続され、下部の電気接続部12は、下部ドッキングサイト14を介して結合された絶縁ハウジング10のそれぞれの下端限流ユニットの下端電流供給管6bに接続される(図2において、下部のドッキングサイト14を介して接続されたさらなる絶縁ハウジングは示されていない)。
【0059】
個々のモジュラ絶縁ハウジング10は、標準化モジュラ構成要素を形成し、直列に配置されるその数は、必要に応じて選択される。
【0060】
一番端のモジュール10において、空いている電気接続部11または12(すなわち、さらなるモジュールに接続されていない電気接続部11または12)を、外部のグリッドに当該配置を接続するのに使用することができる。このため、それぞれのドッキングサイトは、適切な、好ましくは脱着可能な閉塞部材によって、きつく閉じられる。
【0061】
代替的に、一番端のモジュールを、自由な電気接続部11、12およびそれぞれのドッキングサイトを省略し、一連のモジュール10の端部において(電流供給が接続されていない)、電流供給管6aおよび6bを外部のグリッドに接続することにより、当該配置を変更することができる。
【0062】
第1の冷却回路からのガス状の冷却媒体、すなわち気泡を放出するため、少なくとも1つの放出導管15を設けることができる。該少なくとも1つの放出導管15を、任意の適切な位置で、第1の冷却媒体回路に接続することができる。好ましくは、放出導管は、図2に示されるような第1の冷却媒体回路の最上部の位置に設けられる。図2によると、各モジュラ絶縁ハウジング10は、放出導管15と共に設けられ、該放出導管15は、最上部の電流供給管6aの上端に接続される。放出導管15が最上位置に設けられるので、上昇する気泡を容易に放出することができる。放出導管15は、非導電性材料から作られる。モジュラ絶縁ハウジング10の外側には、放出導管15が、バルブ等のような放出口17と共に設けられ、これにより、ガス状の冷却媒体は逃げることが可能になると共に、第1の冷却回路への外部からのアクセスを回避することができる。
【0063】
冷却媒体は、たとえば、任意の空いている端部において、または放出導管15を介して、電気接続部11、12を通って第1の冷却媒体回路に供給されることができる。
【0064】
図2に示されるように、クライオスタットのハウジング10内の液体冷却媒体の最上レベルは、上部ドッキングサイト13の上端に少なくとも達し、ドッキングサイトおよびそこにある電気接続の冷却をより確実に行う。
【0065】
隣接したモジュール10の内部は、個々のモジュール10間の、液体および圧力等の補償を可能にする補償管16を介して連結されることができる。
【0066】
相互に結合されることのできるモジュール10の数には特に制限は無い。こうして、たとえば電圧レベルの観点から、特定の応用技術に必要な限り多くのモジュールを、互いに結合することが可能である。
【0067】
本発明のさらに有利な点は、一のモジュール10から隣接するモジュール10へのドッキングサイト13、14を介した連結により、冷却状態での接続を可能にすることである。こうして、連続した絶縁ハウジングが、冷却内部の外側に伸びる暖気接続を介して接続された場合に生じうる熱エネルギーの損失を回避することができる。
【0068】
本発明の、標準化することができる限流ユニットおよびモジュールの設計は、標準化モジュラ構成が可能となるので、限流器の製造において、多くの変形形態を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 限流ユニット
2 超伝導要素
3 ホルダ
4 シールド電極
5 カバー
6a,b 電流供給管
7 トロイド
8 開口
9 絶縁ハウジング
10 モジュラ絶縁ハウジング
11 上部電気接続部
12 下部電気接続部
13 上部ドッキングサイト
14 下部ドッキングサイト
15 冷却媒体供給部
16 補償管
17 放出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの限流ユニット(1)を備える限流器であって、該限流ユニットは、絶縁ハウジング(9,10)の内部に配置されており、該限流ユニットは、1つまたは複数の超伝導要素(2)を有しており、該限流ユニットは、該絶縁ハウジングの内部周囲から該超伝導要素を空間的に分離する筐体を形成し、該限流ユニットは、該限流ユニット内の前記超伝導要素を冷却するための第1の冷却媒体回路と、該絶縁ハウジングの内部周囲を供給するための第2の冷却媒体回路とを備える、限流器。
【請求項2】
前記限流ユニットの筐体は、選択的に残された開口面をカバー(5)により閉じつつ、シールド電極(4)により形成される、請求項1に記載の限流器。
【請求項3】
個々の前記超伝導要素は、ホルダ(3)により保持される、請求項1または2に記載の限流器。
【請求項4】
前記限流ユニット内の個々の前記超伝導要素は、電気的に並列に接続される、請求項3に記載の限流器。
【請求項5】
前記絶縁ハウジング内の前記限流ユニットは、電流供給管(6a,6b)によって電気的に直列に接続される、請求項1から4のいずれかに記載の限流器。
【請求項6】
少なくとも1つの前記超伝導要素は、電流供給管(6a,6b)に電気的に接続されており、該電流供給管は、前記限流ユニット内の少なくとも1つの前記超伝導要素を冷却するために、前記第1の冷却媒体回路内の前記限流ユニットに対して冷却媒体を供給および放出するよう動作する、請求項5に記載の限流器。
【請求項7】
第1の冷却媒体および第2の冷却媒体は、圧力および温度に関して等しい条件下で維持される、請求項1から6のいずれかに記載の限流器。
【請求項8】
前記絶縁ハウジングは、該絶縁ハウジングを、少なくともさらなる絶縁ハウジングに結合するのに適した少なくとも1つのドッキングサイト(13,14)を備える、請求項1から7のいずれかに記載の限流器。
【請求項9】
連続する前記絶縁ハウジングの内部は、補償管(16)により物理的に接続される、請求項1から8のいずれかに記載の限流器。
【請求項10】
少なくとも1つの導管(15)が、ガス状の冷却媒体の放出を可能にするよう前記第1の冷却媒体回路に接続される、請求項1から9のいずれかに記載の限流器。
【請求項11】
1つまたは複数の超伝導要素(2)および該超伝導要素をさらなる限流ユニット(1)および外部のグリッドのいずれかに電気的に接続するための電流供給管(6a,6b)を備える限流ユニット(1)であって、周囲から前記超伝導要素を空間的に分離する筐体を形成する、限流ユニット。
【請求項12】
前記筐体は、選択的に残された開口面をカバー(5)により閉じつつ、シールド電極(4)により形成される、請求項11に記載の限流ユニット。
【請求項13】
前記電流供給管は、冷却媒体を前記限流ユニットの内部に供給すると同時に放出するための管状形状を有する、請求項11または12に記載の限流ユニット。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の絶縁ハウジングおよび限流ユニットのいずれかの、限流器のモジュラ設計における使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−16368(P2010−16368A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−139099(P2009−139099)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】