説明

除去効果測定システム

【課題】試験用ヨウ化メチルガスを使用してヨウ素ガス除去エアフィルタにおける放射性ヨウ素の除去効果を測定することができ、高い信頼性や高い信憑性でフィルタの放射性ヨウ素の除去効果を検証することができる除去効果測定システムを提供する。
【解決手段】除去効果測定システム10Aは、あらかじめ設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガス22をヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガス供給装置12と、試験用ヨウ化メチルガス22を供給した直後から所定時間が経過するまでの間、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の下流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を測定する光音響ガスモニタ14とから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の施設に設置されて空気中に含まれる放射性ヨウ素を除去する放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去効果を測定する除去効果測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設から放出される排気ガスに含まれる放射性ヨウ素をヨウ素吸着材によって除去するヨウ素フィルタの漏れを試験するリーク試験方法がある(特許文献1参照)。このリーク試験方法は、空気の組成を変化させる所定のガス成分を含ませた試験空気をヨウ素フィルタに流入させ、その試験空気がヨウ素フィルタの入口から出口に達したときの時間を検出することでヨウ素フィルタにおけるヨウ素の漏れの可能性を試験する。
【0003】
このリーク試験方法では、正常にヨウ素吸着材が設置されたヨウ素フィルタのガス成分の通過時間がガス成分の種類や濃度(流量)、ヨウ素吸着材の量(層厚)に依存することに着目し、空気の組成を変化させるガス成分を含ませた試験空気の正常なヨウ素フィルタにおける比較通過時間をあらかじめ事前の試験によって求めておく。ヨウ素フィルタにおける大気中のガス成分のリークがあると、そのガス成分がヨウ素吸着剤と吸着・脱着反応を起こさずにヨウ素フィルタ中を通過し、リークがない場合と比較して試験空気が早くヨウ素フィルタから出てしまう。ゆえに、リークがある場合のヨウ素フィルタにおける試験空気の通過時間はリークがない場合のヨウ素フィルタにおける試験空気の通過時間よりも早い。したがって、正常なヨウ素フィルタにおいてあらかじめ求めた試験空気の比較通過時間と試験対象のヨウ素フィルタにおける試験空気の通過時間とを比較することで、そのヨウ素フィルタにおけるリークの有無を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−148418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示のリーク試験方法は、ヨウ素とは異なるガス成分を含む試験空気をヨウ素フィルタにおけるヨウ素のリークの有無の試験に利用し、その試験空気がヨウ素フィルタの入口から出口に達したときの時間を検出することでヨウ素フィルタにおけるヨウ素のリークの有無を推定する。ゆえに、ヨウ素そのものを利用してヨウ素フィルタにおけるヨウ素のリークを試験するものではないから、そのヨウ素フィルタにおいてヨウ素そのもののリークがあるかの確証を得ることが難しく、試験結果に高い信頼性や信憑性を求めることはできない。また、このリーク試験方法は、ヨウ素フィルタの入口側に空気導入装置を設置し、ヨウ素フィルタの出口側にガス測定装置を設置するとともに、それら装置とヨウ素フィルタとの間を密閉する密閉機構を取り付け、試験空気の漏れを防止しつつ、試験空気の流速や流量を一定に保持する必要があり、試験に手間と時間とを要するのみならず、試験空気の流速や流量を一定に保持することができない環境下で使用されている使用中のヨウ素フィルタでは試験を行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、試験用ヨウ化メチルガスを使用して放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素の除去効果を測定することができ、高い信頼性や高い信憑性で放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素の除去効果を検証することができる除去効果測定システムを提供することにある。本発明の他の目的は、使用中にある放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定することができる除去効果測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、空気中に含まれる放射性ヨウ素を除去する放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去効果を測定する除去効果測定システムである。
【0008】
前記前提における本発明の特徴としては、除去効果測定システムが、あらかじめ設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガスを放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガス供給装置と、試験用ヨウ化メチルガスを供給した直後から所定時間が経過するまでの間、放射性ヨウ素除去装置の下流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定するガス濃度第1測定装置とから形成されていることにある。
【0009】
本発明の一例としては、除去効果測定システムが、放射性ヨウ素除去装置の上流側に供給された試験用ヨウ化メチルガスの供給量と放射性ヨウ素除去装置の下流側から検出された試験用ヨウ化メチルガスの検出量とから放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める。
【0010】
本発明の他の一例としては、除去効果測定システムが、試験用ヨウ化メチルガスの供給開始から供給終了までの間、放射性ヨウ素除去装置の上流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定するガス濃度第2測定装置を含む。
【0011】
本発明の他の一例としては、除去効果測定システムが、ガス濃度第1測定装置とガス濃度第2測定装置とを利用して放射性ヨウ素除去装置の上流側の試験用ヨウ化メチルガスの濃度と放射性ヨウ素除去装置の下流側の試験用ヨウ化メチルガスの濃度とを測定し、測定したそれら濃度から放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める。
【0012】
本発明の他の一例として、除去効果測定システムでは、ガス濃度第1測定装置によって測定された試験用ヨウ化メチルガスの濃度がガス濃度第1測定装置における試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値に達するまでの間、ガス濃度第1測定装置による試験用ヨウ化メチルガスの濃度の測定が継続される。
【0013】
本発明の他の一例として、放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガスの供給量は、放射性ヨウ素除去装置の試験用ヨウ化メチルガスに対する捕集効率とガス濃度第1測定装置における試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値とから求める。
【0014】
本発明の他の一例として、放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガスの供給時間は、放射性ヨウ素除去装置における試験用ヨウ化メチルガスの保持容量の1/100〜1/200の範囲で設定される。
【0015】
本発明の他の一例として、試験用ヨウ化メチルガスの放射性ヨウ素除去装置の上流側からの供給時では、放射性ヨウ素除去装置の周囲の空気の風量または風速が不均一である。
【0016】
本発明の他の一例として、除去効果測定システムでは、放射性ヨウ素を除去可能な使用中の状態にある放射性ヨウ素除去装置の除去効果が測定される。
【0017】
本発明の他の一例としては、ガス濃度第1測定装置とガス濃度第2測定装置とが試験用ヨウ化メチルガスの濃度を所定の時間間隔で間欠的に複数回測定することが可能な光音響ガスモニタである。
【0018】
本発明の他の一例としては、放射性ヨウ素除去装置が、原子力関連施設または放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置され、それら施設の空気中に含まれる放射性ヨウ素を吸着する放射性ヨウ素除去エアフィルタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる除去効果測定システムによれば、試験用ヨウ化メチルガスを使用し、放射性ヨウ素除去装置の下流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定することで、その放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定するから、放射性ヨウ素除去装置が設置された環境下の空気中に含まれる放射性ヨウ素に対する装置の除去効果を高い精度で測定することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素に対する除去効果を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。除去効果測定システムは、ガス濃度第1測定装置によって試験用ヨウ化メチルガスが検出された場合、放射性ヨウ素除去装置が劣化して放射性ヨウ素除去機能が低下していることを判定することができ、または、放射性ヨウ素除去装置やその設置器具に空気漏れ(リーク)等の構造的な欠陥があることを判定することができるから、除去効果の測定結果を参照しつつ、その放射性ヨウ素除去装置の交換時期を的確に判断することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置の設置器具の修理の必要性を判断することができる。除去効果測定システムは、それを利用することで放射性ヨウ素除去装置を適時に交換することができ、設置器具を適時に修理することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えた放射性ヨウ素除去装置を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素除去装置によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0020】
放射性ヨウ素除去装置の上流側に供給された試験用ヨウ化メチルガスの供給量と放射性ヨウ素除去装置の下流側から検出された試験用ヨウ化メチルガスの検出量とから放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置の現在における放射性ヨウ素除去効率を把握することができるから、放射性ヨウ素除去効率から放射性ヨウ素除去装置の使用限界を判断することができ、放射性ヨウ素除去装置の交換時期を的確に判断することができる。除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去効率に基づいて放射性ヨウ素除去装置を適時に交換することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えた放射性ヨウ素除去装置を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素除去装置によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0021】
試験用ヨウ化メチルガスの供給開始から供給終了までの間、放射性ヨウ素除去装置の上流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定するガス濃度第2測定装置を含む除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置の上流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定することで、試験用ヨウ化メチルガス供給装置からあらかじめ設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガスが確実に供給されたことを実証することができるから、放射性ヨウ素除去装置が設置された環境下の空気中に含まれる放射性ヨウ素に対する装置の除去効果を高い精度で測定することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素に対する除去効果を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。
【0022】
ガス濃度第1測定装置とガス濃度第2測定装置とを利用して放射性ヨウ素除去装置の上流側の試験用ヨウ化メチルガスの濃度と放射性ヨウ素除去装置の下流側の試験用ヨウ化メチルガスの濃度とを測定し、測定したそれら濃度から放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置の現在における放射性ヨウ素除去効率を把握することができるから、放射性ヨウ素除去効率から放射性ヨウ素除去装置の使用限界を判断することができ、放射性ヨウ素除去装置の交換時期を的確に判断することができる。除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去効率に基づいて放射性ヨウ素除去装置を適時に交換することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えた放射性ヨウ素除去装置を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素除去装置によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0023】
ガス濃度第1測定装置によって測定された試験用ヨウ化メチルガスの濃度がガス濃度第1測定装置における試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値に達するまでの間、ガス濃度第1測定装置による試験用ヨウ化メチルガスの濃度の測定が継続される除去効果測定システムは、ガス濃度第1測定装置によって試験用ヨウ化メチルガスが検出された場合、試験用ヨウ化メチルガスが検出されてからその濃度がガス濃度第1測定装置の測定下限値に達するまで濃度測定が継続されることで、放射性ヨウ素除去機能が低下していることや放射性ヨウ素除去装置やその設置器具に空気漏れ(リーク)等の構造的な欠陥があることを確実に判定することができ、その放射性ヨウ素除去装置の交換時期を的確に判断することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置の設置器具の修理の必要性を判断することができる。除去効果測定システムは、それを利用することで放射性ヨウ素除去装置を適時に交換することができ、設置器具を適時に修理することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えた放射性ヨウ素除去装置を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素除去装置によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0024】
放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガスの供給量を放射性ヨウ素除去装置の試験用ヨウ化メチルガスに対する捕集効率とガス濃度第1測定装置における試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値とから求める除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置の除去効率とガス濃度第1測定装置の測定下限値とから試験用ヨウ化メチルガスの放射性ヨウ素除去装置に対する供給量を求めることで、放射性ヨウ素除去装置に供給する試験用ヨウ化メチルガスの必要最小限の供給量を求めることができ、必要最小限の試験用ヨウ化メチルガスを使用して除去効果を測定することができる。除去効果測定システムは、必要最小限の供給量の試験用ヨウ化メチルガスを使用して放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定することができるから、放射性ヨウ素除去装置にかかる負荷を最小限にすることがき、試験用ヨウ化メチルガスによる放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【0025】
放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガスの供給時間を放射性ヨウ素除去装置における試験用ヨウ化メチルガスの保持容量の1/100〜1/200の範囲で設定する除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置における試験用ヨウ化メチルガスの保持容量の1/100〜1/200の範囲で試験用ヨウ化メチルガスの供給時間を設定することで、放射性ヨウ素除去装置に供給する試験用ヨウ化メチルガスの必要最小限の供給時間を決定することができ、試験用ヨウ化メチルガスを必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができる。除去効果測定システムは、試験用ヨウ化メチルガスを必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができるから、放射性ヨウ素除去装置にかかる負荷を最小限にすることがき、試験用ヨウ化メチルガスによる放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【0026】
試験用ヨウ化メチルガスの放射性ヨウ素除去装置の上流側からの供給時において放射性ヨウ素除去装置の周囲の空気の風量または風速が不均一である除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去装置の実際の使用状態における空気の風量または風速が不均一である環境下で放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定することで、放射性ヨウ素除去装置の実際の使用環境に応じた除去効果を測定することができ、放射性ヨウ素除去装置の現実的な使用限界を判断することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置を交換する時期を具体的かつ的確に判断することができる。
【0027】
放射性ヨウ素を除去可能な使用中の状態にある放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定する除去効果測定システムは、実際に設置された使用中の放射性ヨウ素除去装置の除去効果を測定することで、使用中の状態にある放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去機能が低下していることや放射性ヨウ素除去装置やその設置器具に空気漏れ(リーク)等の構造的な欠陥があることを判定することができ、それによって使用中の放射性ヨウ素除去装置の使用限界を判断することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置を交換する時期を具体的かつ的確に判断することができ、設置器具の修理の必要性を判断することができる。除去効果測定システムは、使用中の状態にある放射性ヨウ素除去装置を適時に交換することができ、設置器具を適時に修理することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えた放射性ヨウ素除去装置を使用することができ、空気に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素除去装置によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0028】
ガス濃度第1測定装置とガス濃度第2測定装置とが試験用ヨウ化メチルガスの濃度を所定の時間間隔で間欠的に複数回連続して測定することが可能な光音響ガスモニタである除去効果測定システムは、試験用ヨウ化メチルガスの濃度を所定の時間間隔で間欠的に測定可能な光音響ガスモニタを使用することで、試験用ヨウ化メチルガスを所定時間連続して放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給したとしても、試験用ヨウ化メチルガスの濃度が光音響ガスモニタによって所定の時間間隔で間欠的に複数回測定されるから、放射性ヨウ素除去装置が設置された環境下の空気中に含まれる放射性ヨウ素に対する装置の除去効果を高い精度で測定することができるとともに、放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素に対する除去効果を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。
【0029】
光音響ガスモニタによって時系列に測定された複数の測定濃度データに基づいて、放射性ヨウ素除去装置の欠陥をその放射性ヨウ素除去機能の低下であるか、または、放射性ヨウ素除去装置やその設置器具の空気漏れであるかを分析する除去効果測定システムは、試験用ヨウ化メチルガスの時系列に測定された複数の測定濃度によって放射性ヨウ素除去装置の欠陥の種類を判断することができるから、欠陥の種類によって放射性ヨウ素除去装置の交換または放射性ヨウ素除去装置や設置器具の修理のいずれかの方法を選択することができる。
【0030】
放射性ヨウ素除去装置が原子力関連施設または放射性ヨウ素を取り扱う施設の空気中の放射性ヨウ素を吸着する放射性ヨウ素除去エアフィルタである除去効果測定システムは、フィルタの下流側に流れる空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定することで、原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置されたフィルタの除去効果を測定するから、フィルタが設置されたそれら施設の空気中に含まれる放射性ヨウ素に対するフィルタの除去効果や除去効率を高い精度で測定することができるとともに、フィルタの放射性ヨウ素に対する除去効果や除去効率を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。除去効果測定システムは、放射性ヨウ素除去エアフィルタの下流側において試験用ヨウ化メチルガスが検出された場合、原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置されたフィルタが劣化して放射性ヨウ素除去機能が低下していることを判定することができ、または、フィルタやその設置器具にリーク等の構造的な欠陥があることを判定することができるから、除去効果の測定結果を参照しつつ、アフィルタの交換時期を的確に判断することができるとともに、フィルタの設置器具の修理の必要性を判断することができる。除去効果測定システムは、それを利用することで原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置された放射性ヨウ素除去エアフィルタを適時に交換することができ、設置器具を適時に修理することができるから、それら施設において常に放射性ヨウ素の除去機能を備えたフィルタを使用することができ、それら施設の空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、フィルタによってその放射性ヨウ素をそれら施設の空気から確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一例として示す除去効果測定システムの構成図。
【図2】一例として示すヨウ素ガス除去エアフィルタの斜視図。
【図3】ディスプレイに表示された初期画面の一例を示す図。
【図4】測定条件設定画面の一例を示す図。
【図5】測定条件確認画面の一例を示す図。
【図6】供給量算出画面の一例を示す図。
【図7】供給時間算出画面の一例を示す図。
【図8】一例として示す除去効果測定のフローチャート。
【図9】フィルタ指定画面の一例を示す図。
【図10】グラフ表示画面の一例を示す図。
【図11】グラフ表示画面の他の一例を示す図。
【図12】グラフ表示画面の他の一例を示す図。
【図13】各データを表示したデータ表示画面の一例を示す図。
【図14】他の一例として示す除去効果測定システムの構成図。
【図15】測定条件設定画面の他の一例を示す図。
【図16】測定条件確認画面の他の一例を示す図。
【図17】各データを表示したデータ表示画面の他の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一例として示す除去効果測定システムの構成図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる除去効果測定システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、一例として示すヨウ素ガス除去エアフィルタ11の斜視図である。除去効果測定システム10Aは、原子力関連施設において放射性ヨウ素が発生するおそれがある箇所(放射性ヨウ素が発生するおそれがある環境下)に設置されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11(放射性ヨウ素除去装置)の放射性ヨウ素に対する除去効果や除去効率を測定する。
【0033】
原子力関連施設には、原子力発電所、中間貯蔵施設、再処理工場、MOX燃料工場、高速増殖炉、高速増殖炉用燃料工場、高速増殖炉用再処理工場、高レベル放射性廃棄物最終処分施設等がある。なお、この除去効果測定システム10Aは、原子力関連施設の他に、放射線を取り扱う施設(たとえば、病院や研究所等)に設置されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11の放射性ヨウ素に対する除去効果や除去効率の測定にも使用することができる。
【0034】
除去効果測定システム10Aは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11と、試験用ヨウ化メチルガス供給装置12と、空気第1サンプリングユニット13と、光音響ガスモニタ14(ガス濃度第1測定装置)と、流量計15と、コントローラ16とから形成されている。本実施の形態では放射性ヨウ素除去装置としてヨウ素ガス除去エアフィルタ11を例示しているが、放射性ヨウ素除去装置をヨウ素ガス除去エアフィルタ11に限定するものではなく、他のすべての放射性ヨウ素除去装置に対して除去効果測定システムを適用することができる。また、ガス濃度第1測定装置として光音響ガスモニタ14を例示しているが、ガス濃度第1測定装置を光音響ガスモニタ14に限定するものではなく、ガスクロマトグラフィー等の他のすべてのガス濃度測定装置を利用することができる。
【0035】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11は、原子力関連施設や放射線を利用する施設の空気の浄化に使用される。ヨウ素ガス除去エアフィルタ11には、セパレータ型エアフィルタやミニプリーツ型エアフィルタ等がある。ヨウ素ガス除去エアフィルタ11には、ガラス繊維や炭素繊維、合成樹脂繊維に活性炭を担持させたフィルタ、活性炭素繊維から作られたフィルタがあり、図2に示すように、フィルタ収納カートリッジ17(収納枠)に気密に収納されて使用される。ヨウ素ガス除去エアフィルタ11は、蛇腹状に折り畳まれた四角柱状の立体構造を有する。なお、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11には、立体構造を有するそれの他に、略扁平のそれも含まれ、さらに、円柱状や多角柱状のものも含まれる。
【0036】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11は、図1に示すように、通気ダクト18に設置器具(図示せず)を利用して着脱可能かつ気密に設置され、ダクト18を通る空気に含まれる放射性ヨウ素を除去し、清浄空気を施設内または施設外に放出する。通気ダクト18は、金属または合成樹脂から作られ、一方向へ略直状に延びる断面四角形の空気流路19を有する。通気ダクト18は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側に開口する空気取り入れ口20と、フィルタ11の下流側に開口する空気排気口21とを備えている。通気ダクト18には、図示はしていないが、その上流側と下流側との少なくとも一方に給気ファンや排気ファンが取り付けられている。それらファンは、施設内の空気を通気ダクト18内に強制的に流入させる。
【0037】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11は施設において実際に使用中のそれであり、このシステム10Aでは放射性ヨウ素を除去する使用中の状態にある中古品のフィルタ11の除去効果や除去効率が測定される。なお、システム10Aは、使用中のヨウ素ガス除去エアフィルタ11に限らず、使用する以前の新品のヨウ素ガス除去エアフィルタ11の除去効果や除去効率の測定に使用される場合もある。
【0038】
試験用ヨウ化メチルガス供給装置12は、通気ダクト18の空気取り入れ口20(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側)からダクト18内に設定量の試験用ヨウ化メチルガス22を設定時間だけ供給する。試験用ヨウ化メチルガス供給装置12は、圧縮された試験用ヨウ化メチルガス22を貯蔵したガスボンベ23と、ヨウ化メチルガス22の供給量を調節する質量流量計24(定風量装置)と、切替バルブ25(電磁弁)と、ヨウ化メチルガス22をダクト18内に噴霧する噴霧器(図示せず)とから形成されている。
【0039】
ガスボンベ23や質量流量計24、切替バルブ25、噴霧器は、供給管路26を介して接続されている。質量流量計24や切替バルブ25は、インターフェイス27(有線または無線)を介してコントローラ16に接続されている。噴霧器は、通気ダクト18の空気取り入れ口20に配置されている。切替バルブ25は、その弁機構を開閉することで、試験用ヨウ化メチルガス22の供給管路26における流通をON/OFFする。質量流量計24は、供給管路26を通る試験用ヨウ化メチルガス22を一定量に保持し、ガスボンベ23内のヨウ化メチルガス22の一定量を切替バルブ25に向かって流入させる。
【0040】
空気第1サンプリングユニット13は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の下流側における通気ダクト18(フィルタ11の出口とダクト18の空気排気口21との間に延びるダクト18)に着脱可能に設置され、フィルタ11の下流側に流れる空気を採集する。空気第1サンプリングユニット13は、通気ダクト18の空気流路19を通る空気を採集する採集口28と、採集した空気をダクト18の空気流路19に戻す放出口29と、吸引ポンプ30と、流量計付き調節バルブ31(電磁弁)および切替バルブ32,33(電磁弁)とから形成されている。採集口28や放出口29は、通気ダクト18の空気流路19に配置されている。採集口28や放出口29、吸引ポンプ30、流量計付き調節バルブ31、切替バルブ32,33はサンプリング管路34を介して接続されている。空気第1サンプリングユニット13では、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の出口側から採集口28、吸引ポンプ30、流量計付き調節弁31、切替バルブ32、切替バルブ33、放出口29の順に並んでいる。
【0041】
吸引ポンプ30は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。吸引ポンプ30は、その出力が一定に保持され、通気ダクト18の空気流路19を流れる空気を採集口28からサンプリング管路34に強制的に流入させる。流量計付き調節バルブ31は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。流量計付き調節バルブ31は、サンプリング管路34を通るサンプル空気を一定量に保持し、吸引ポンプ30が吸引したサンプル空気の一定量を各切替バルブ32,33に向かって流入させる。切替バルブ32,33は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。切替バルブ33は、その弁機構を開閉することで、サンプル空気のサンプリング管路34における流通をON/OFFする。切替バルブ32は、その弁機構を開閉することで、サンプル空気の光音響ガスモニタ14への流通をON/OFFする。
【0042】
光音響ガスモニタ14は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。光音響ガスモニタ14は、サンプリング管路34に流れるサンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を所定の時間間隔で間欠的に複数回連続して測定し、測定したヨウ化メチルガス22の複数の濃度をコントローラ16に出力する。光音響ガスモニタ14は、その接続端子(図示せず)がサンプリング管路34に接続されている。流量計15は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。流量計15は、通気ダクト18の空気流路19を流れる空気の流量を計測し、計測した流量をコントローラ16に出力する。
【0043】
コントローラ16は、中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリと大容量ハードディスクとを有するコンピュータである。コントローラ16には、キーボード35やマウス36、ディスプレイ37、プリンタ(図示せず)等の入出力装置(図示せず)がインターフェイスを介して接続されている。コントローラ16のメモリには、後記する各種手段をコントローラ16の中央処理部に実行させるための除去効果測定アプリケーションが格納されている。
【0044】
コントローラ16は、試験用ヨウ化メチルガス22の供給量の指示信号を質量流量計24に出力するとともに、切替バルブ25の弁機構を開放し、設定量のヨウ化メチルガス22を噴霧器から通気ダクト18の空気流路19に供給する。コントローラ16は、サンプル空気のサンプリング量の指示信号を流量計付き調節バルブ31に出力し、切替バルブ33の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ32の弁機構を開放し、流量計付き調節バルブ31から切替バルブ32に達したサンプル空気の一定量を光音響ガスモニタ14に流入させる。コントローラ16は、設定量のサンプル空気が設定時間(測定時間)光音響ガスモニタ14に流入すると、切替バルブ32の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ33の弁機構を開放し、サンプル空気のガスモニタ14への流入を停止しつつ、採集したサンプル空気を放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出する。
【0045】
コントローラ16の中央処理部は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリから除去効果測定アプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、以下の各手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11のフィルタ名をハードディスクに格納するフィルタ名格納手段を実行する。
【0046】
コントローラ16の中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の捕集効率と光音響ガスモニタ14における試験用ヨウ化メチルガス22の測定下限値とからヨウ化メチルガス22の供給量を算出するガス供給量算出手段を実行する。具体的には、式:x=a÷{(100−b)÷100}によって算出する。ここで、xは、試験用ヨウ化メチルガス22の供給量(ppm)、aは、光音響ガスモニタ14の測定下限値(ppm)、bは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の捕集効率(%)である。たとえば、測定下限値が0.3(ppm)、捕集効率が99(%)の場合は、0.3÷{(100−99)÷100}=30(ppm)となり、測定下限値が0.03(ppm)、捕集効率が99.9(%)の場合、0.03÷{(100−99.9)÷100}=30(ppm)となる。中央処理部は、算出した試験用ヨウ化メチルガス22の供給量または入力されたヨウ化メチルガス22の供給量をバードディスクに格納するガス供給量格納手段を実行する。
【0047】
コントローラ16の中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11における試験用ヨウ化メチルガス22の保持容量の1/100〜1/200の範囲においてヨウ化メチルガス22の供給時間を算出(設定)するガス供給時間算出手段を実行する。具体的には、t={(m×θ)÷(x×n÷1000000)}によって算出する。ここで、tは、試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間(sec)、mは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11におけるヨウ化メチルガス22の保持容量(L)であり、θは、係数(1/100〜1/200の範囲)である。xは、通気ダクト18の空気流路19を流れる空気の風量(L/sec)であり、nは、ヨウ化メチルガス22の供給量(ppm)である。たとえば、保持容量が100(リットル)、θが(1/100)、空気の風量が500(リットル/sec)、供給量が30(ppm)の場合は、{(100×1/100)÷(500×30÷1000000)}=66(sec)となり、保持容量が100(リットル)、θが(1/200)、空気の風量が500(リットル/sec)、供給量が30(ppm)の場合は、{(100×1/200)÷(500×30÷1000000)}=33(sec)となる。中央処理部は、算出した試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間または入力されたヨウ化メチルガス22の供給時間をバードディスクに格納するガス供給時間格納手段を実行する。
【0048】
コントローラ16の中央処理部は、光音響ガスモニタ14における試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定時間をハードディスクに格納する濃度測定時間第1格納手段を実行し、光音響ガスモニタ14におけるサンプル空気の濃度測定時間間隔をハードディスクに格納する濃度測定時間間隔第1格納手段を実行する。中央処理部は、試験用ヨウ化メチルガス供給装置12を利用して試験用ヨウ化メチルガス22をその設定された量だけダクト18の空気取り入れ口20(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側)から供給するガス供給手段を実行する。なお、ガス供給手段における試験用ヨウ化メチルガス22の供給時では、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11が原子力関連施設において実際に使用中であり、通気ダクト18の空気取り入れ口20から取り入れられた空気の風量や風速が一定ではなく、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の周囲の空気流路19の空気の風量または風速が不均一である。
【0049】
コントローラ16の中央処理部は、空気第1サンプリングユニット13を利用して通気ダクト18の空気流路19(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の下流側)に流れる空気をその設定された量だけ採集するサンプル空気第1採集手段を実行し、採集されたサンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を光音響ガスモニタ14を利用して測定するガス濃度第1測定手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の下流側に流れる空気の試験用ヨウ化メチルガス22の濃度の測定日時をバードディスクに格納する濃度測定日時第1格納手段を実行し、光音響ガスモニタ14が測定した濃度をバードディスクに格納する測定濃度データ第1格納手段を実行する。中央処理部は、試験用ヨウ化メチルガス22の測定濃度データを出力する測定濃度データ出力手段を実行し、ヨウ化メチルガス22の測定濃度データを時系列に表示したグラフを生成するグラフ生成手段を実行する。中央処理部は、生成したグラフを格納するグラフ格納手段を実行し、そのグラフを出力するグラフ出力手段を実行する。
【0050】
コントローラ16の中央処理部は、通気ダクト18の空気取り入れ口20(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側)から供給した試験用ヨウ化メチルガス22の供給量とフィルタ11の下流側から検出されたヨウ化メチルガス22の検出量とからフィルタ11における現在の放射性ヨウ素除去効率を算出する除去効率算出手段を実行し、算出した除去効率をバードディスクに格納する除去効率格納手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の現在の放射性ヨウ素除去効率を出力する除去効率出力手段を実行する。
【0051】
コントローラ16の中央処理部は、光音響ガスモニタ14によって時系列に測定された複数の測定濃度データに基づいて、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の欠陥をその放射性ヨウ素除去機能の低下であるか、または、フィルタ11やその設置器具の空気漏れ(リーク)であるかを分析する欠陥分析手段を実行し、その分析結果をバードディスクに格納する欠陥分析結果格納手段を実行する。中央処理部は、その分析結果を出力する欠陥分析結果出力手段を実行する。中央処理部は、フィルタ11の現在の放射性ヨウ素除去効率とフィルタ11の除去効率の下限値とを比較し、そのフィルタ11の継続使用または交換を判定するフィルタ状態判定手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の継続使用または交換の判定結果をハードディスクに格納するフィルタ判定結果格納手段を実行し、フィルタ11の継続使用または交換の判定結果を出力するフィルタ判定結果出力手段を実行する。
【0052】
図3は、ディスプレイ37に表示された初期画面の一例を示す図であり、図4は、測定条件設定画面の一例を示す図である。図5は、測定条件確認画面の一例を示す図であり、図6は、供給量算出画面の一例を示す図である。図7は、供給時間算出画面の一例を示す図であり、図8は、一例として示す除去効果測定のフローチャートである。図3〜図7では、各入力エリアや各表示エリアに表示されるデータの図示を省略している。
【0053】
図8のフローチャートに基づいて、このシステム10Aにおける除去効果測定手順の一例を説明すると、以下のとおりである。除去効果測定システム10Aを起動すると、試験用ヨウ化メチルガス供給装置12、空気第1サンプリングユニット13、光音響ガスモニタ14、流量計15、コントローラ16が稼動する。さらに、ダクト18に設置された給気ファンや排気ファンを別途起動させる。給気ファンや排気ファンを起動させると、図1に矢印L1で示すように、施設内の空気がダクト18の空気取り入れ口20からダクト18の空気流路19に進入し、その空気がヨウ素ガス除去エアフィルタ11を通ってダクト18の空気排気口21から排気される。ダクト18の空気流路19に進入した空気に放射性ヨウ素が含まれている場合、その放射性ヨウ素がヨウ素ガス除去エアフィルタ11によって吸着・除去される。
【0054】
システム10Aを起動した後、コントローラ16は、図3に示す初期画面をディスプレイ37に表示する。初期画面には、測定条件設定ボタンA1、測定開始ボタンA2、グラフ表示ボタンA3、測定データ表示ボタンA4、ログアウトボタンA5が表示される。ログアウトボタンA5をクリックすると、コントローラ16は、除去効果測定アプリケーションを終了する。システム10Aを利用した除去効果測定を継続する場合、最初に測定条件を設定する(S−1)。測定条件設定ボタンA1をクリックすると、コントローラ16は、図4に示す測定条件設定画面をディスプレイ37に表示する。測定条件設定画面には、フィルタ名入力エリアB1、濃度測定時間入力エリアB2、濃度測定時間間隔入力エリアB3、ガス供給量入力エリアB4、ガス供給時間入力エリアB5、ガス供給量算出ボタンB6、ガス供給時間算出ボタンB7、実行ボタンB8、キャンセルボタンB9、クリアボタンB10が表示される。
【0055】
キーボード35やマウス36等の入力装置を利用し、フィルタ名入力エリアB1に測定対象フィルタを特定する名称(番号や記号、仮称を含む)を入力(フィルタ名入力エリアB1のプルダウンリストからフィルタの名称を選択)し、濃度測定時間入力エリアB2に光音響ガスモニタ14における濃度測定時間を入力(濃度測定時間入力エリアB2のプルダウンリストから濃度測定時間を選択)(たとえば、5分、10分、30分等で任意に設定可能)する。濃度測定時間間隔入力エリアB3に光音響ガスモニタ14におけるサンプル空気の濃度測定時間間隔を入力(濃度測定時間間隔入力エリアB3のプルダウンリストから濃度測定時間間隔を選択)(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔等で任意に設定可能)する。
【0056】
ガス供給量入力エリアB4に試験用ヨウ化メチルガス22の供給量を入力(ガス供給量入力エリアB4のプルダウンリストから供給量を選択)(たとえば、5ppm、10ppm、30ppm等で任意に設定可能)し、ガス供給時間入力エリアB5に試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間を入力(ガス供給時間入力エリアB5のプルダウンリストから供給時間を選択)(たとえば、20秒、30秒、50秒等で任意に設定可能)する。
【0057】
それら入力エリアB1〜B5に測定条件データを入力した後、実行ボタンB8をクリックすると、コンピュータ16は、図5に示す測定条件確認画面をディスプレイ37に表示する。なお、キャンセルボタンB9をクリックすると、図3の初期画面が表示される。クリアボタンB10をクリックすると、入力エリアB1〜B5に入力された各データがクリアされ、入力エリアB1〜B5に測定条件データを再入力する。測定条件確認画面には、フィルタ名表示エリアC1、濃度測定時間表示エリアC2、濃度測定時間間隔表示エリアC3、ガス供給量表示エリアC4、ガス供給時間表示エリアC5、条件確認ボタンC6、戻るボタンC7が表示される。
【0058】
それら表示エリアC1〜C5に表示された各データの変更がなければ条件確認ボタンC6をクリックし、各データの変更がある場合は戻るボタンC7をクリックする。戻るボタンC7をクリックすると、図4の測定条件設定画面が表示され、各入力エリアB1〜B5に測定条件データを再入力する。図5に示す測定条件確認画面において条件確認ボタンC6をクリックすると、コントローラ16は、入力エリアB1に入力(選択)されたフィルタ名を特定するフィルタ識別子を生成し、フィルタ名(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(フィルタ名格納手段)、入力(選択)されたガス供給量(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給量格納手段)。
【0059】
さらに、入力(選択)されたガス供給時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(ガス供給時間格納手段)、入力(選択)された濃度測定時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納するとともに(濃度測定時間第1格納手段)、濃度測定時間間隔(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間間隔第1格納手段)(S−2)。コントローラ16は、それらデータを格納すると、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。コントローラ16のハードディスクには、光音響ガスモニタ14の測定下限値(ppm)が格納されている。
【0060】
図4の測定条件設定画面において、ガス供給量入力エリアB4に供給量を入力せずにガス供給量をコントローラ16に算出させる場合、ガス供給量算出ボタンB6をクリックする。ガス供給量算出ボタンB6をクリックすると、コントローラ16は、図6に示すガス供給量算出画面をディスプレイ37に表示する。ガス供給量算出画面には、測定下限値入力エリアD1、捕集効率入力エリアD2、計算実行ボタンD3、クリアボタンD4、戻るボタンD5が表示される。クリアボタンD4をクリックすると、入力エリアD1,D2に入力されたデータがクリアされ、入力エリアD1,D2にデータを再入力する。戻るボタンD5をクリックすると、図4の測定条件設定画面が表示される。
【0061】
測定下限値入力エリアD1に測定下限値(光音響ガスモニタ14における試験用ヨウ化メチルガス22の測定下限値)を入力(測定下限値入力エリアD1のプルダウンリストから測定下限値を選択)し、捕集効率入力エリアD2に捕集効率(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の捕集効率)を入力(捕集効率入力エリアD2のプルダウンリストから捕集効率を選択)し、計算実行ボタンD3をクリックする。計算実行ボタンD3をクリックすると、コントローラ16は、前記式:x=a÷{(100−b)÷100}によって試験用ヨウ化メチルガス22の供給量を算出する(ガス供給量算出手段)。
【0062】
図4の測定条件設定画面において、ガス供給時間入力エリアB5に供給時間を入力せずにガス供給時間をコントローラ16に算出させる場合、ガス供給時間算出ボタンB7をクリックする。ガス供給時間算出ボタンB7をクリックすると、コントローラ16は、図7に示すガス供給時間算出画面をディスプレイ37に表示する。ガス供給時間算出画面には、供給量表示エリアE1、保持容量入力エリアE2、係数入力エリアE3、風量入力エリアE4、計算実行ボタンE5、クリアボタンE6、戻るボタンE7が表示される。クリアボタンE6をクリックすると、各入力エリアE2〜E4に入力された各データがクリアされ、入力エリアE2〜E4にデータを再入力する。戻るボタンE7をクリックすると、図4の測定条件設定画面が表示される。
【0063】
供給量表示エリアE1には、供給量入力エリアB4に入力された供給量または供給量算出手段によって算出された供給量が表示される。保持容量入力エリアE2に保持容量(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11における試験用ヨウ化メチルガス22の保持容量)を入力(保持容量入力エリアE2のプルダウンリストから保持容量を選択)し、係数入力エリアE3に係数(1/100〜1/200の範囲)を入力(係数入力エリアE3のプルダウンリストから係数を選択)するとともに、風量入力エリアE4に風量(通気ダクト18の空気流路19を流れる空気の風量)を入力(風量入力エリアE4のプルダウンリストから風量を選択)し、計算実行ボタンE5をクリックする。計算実行ボタンE5をクリックすると、コントローラ16は、前記式:t={(m×θ)÷(x×n÷1000000)}によって試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間を算出する(ガス供給時間算出手段)。
【0064】
供給量と供給時間とを算出した後、コントローラ16は、図5の測定条件確認画面をディスプレイ37に表示する。図5の測定条件確認画面において条件確認ボタンC6をクリックすると、コントローラ16は、フィルタ名入力エリアB1に入力(選択)されたフィルタ名を特定するフィルタ識別子を生成し、フィルタ名(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(フィルタ名格納手段)、算出したガス供給量(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給量格納手段)。
【0065】
さらに、算出したガス供給時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(ガス供給時間格納手段)、入力(選択)された濃度測定時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納するとともに(濃度測定時間第1格納手段)、濃度測定時間間隔(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間間隔第1格納手段)(S−2)。コントローラ16は、それらデータを格納すると、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。
【0066】
測定条件の設定が終了した後、測定を開始する場合は、図3の初期画面において測定開始ボタンA2をクリックする。測定開始ボタンA2をクリックすると、コントローラ16は、ヨウ素ガス除去フィルタ11を透過した空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を行う。コントローラ16は、設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガス22の供給指示信号を質量流量計24に出力するとともに、切替バルブ25の弁機構を開放し、設定量のヨウ化メチルガス22を噴霧器から通気ダクト18の空気流路19に供給する(ガス供給手段)(S−3)。
【0067】
噴霧器から空気流路19に供給された試験用ヨウ化メチルガス22は、空気取り入れ口20から流入する施設内の空気と混合されながらヨウ素ガス除去エアフィルタ11に達する。空気は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を透過し、空気流路19を通って空気排気口21から施設内または施設外に排気される。なお、通気ダクト18には図示しない給気ファンや排気ファンを介し、施設内の風量または風速が不均一な空気が強制的に流入している。
【0068】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11が試験用ヨウ化メチルガス22の十分な除去機能を有する場合、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11に吸着・除去され、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11を透過することはなく、または、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11から徐々に漏出することはない。逆に、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の試験用ヨウ化メチルガス22に対する除去機能が低下し、または、除去機能を喪失している場合、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11に吸着されず、ヨウ化メチルガス22が空気とともにフィルタ11を透過し、または、ヨウ化メチルガス22が空気とともにフィルタ11から徐々に漏出する。また、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11にピンホールや破損等の不具合が生じていたり、フィルタ11の設置器具(フィルタ収納カートリッジ17やパッキン、締め付け螺子等)に隙間や破損等の不具合が生じていると、ヨウ化メチルガス22が空気とともにフィルタ11や設置器具を透過する。
【0069】
コントローラ16は、設定されたサンプリング量のサンプル空気の採集指示信号を流量計付き調節バルブ31に出力し、吸引ポンプ30を稼動させ、切替バルブ33の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ32の弁機構を開放し、流量計付き調節バルブ31から切替バルブ32に達したサンプル空気の一定量を光音響ガスモニタ14に流入させる(サンプル空気第1採集手段)。コントローラ16は、光音響ガスモニタ14に濃度測定指示信号を出力し、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度をガスモニタ14に測定させる(ガス濃度第1測定手段)(S−4)。さらに、コントローラ16は、測定した濃度データの転送指示信号を光音響ガスモニタ14に出力する。コントローラ16は、通気ダクト18の空気流路19に流れる空気の風量の測定指示信号を流量計15に出力し、測定した風量データの転送指示信号を流量計15に出力する。
【0070】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を透過した空気は、フィルタ11の下流側においてその一部(サンプル空気)が採集口28からサンプリング管路34に進入し、吸引ポンプ30から流量計付き調節バルブ31を通って光音響ガスモニタ14に流入し、ガスモニタ14から再びサンプル管路34を通って放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出される。光音響ガスモニタ14は、コントローラ16からの濃度測定指示にしたがって、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を設定された時間間隔(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔)で間欠的に測定し、転送指示にしたがって、測定した複数の濃度データを設定された時間間隔でコントローラ16に随時出力する(S−5)。コントローラ16は、図示はしていないが、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度の測定中に測定中メッセージをディスプレイ37に表示する。流量計15は、コントローラ16からの風量測定指示にしたがって、通気ダクトの空気流路に流れる空気の風量を測定し、転送指示にしたがって、測定した風量データをコントローラ16に出力する。
【0071】
コントローラ16は、光音響ガスモニタ14から出力された試験用ヨウ化メチルガス22の測定濃度データに基づいて、ヨウ化メチルガス22の濃度がガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値に達したかを判断する(S−6)。濃度が光音響ガスモニタ14における試験用ヨウ化メチルガス22の測定下限値に達していない場合、コントローラ16は、ステップ4(S−4)に戻り、ヨウ化メチルガス22の測定を継続して行う。濃度が光音響ガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値に達した場合、コントローラ16は、設定された濃度測定時間が経過したかを判断する(S−7)。濃度測定時間が経過していない場合、コントローラ16は、ステップ4(S−4)に戻り、試験用ヨウ化メチルガス22の測定を継続して行う。
【0072】
ステップ7(S−7)において濃度測定時間が経過と判断した場合、コントローラ16は、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を一時停止する(S−8)。コントローラ16は、切替バルブ32の弁機構を閉じ、サンプル空気の光音響ガスモニタ14への流入を停止し、切替バルブ33の弁機構を開け、サンプル空気を放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出する。次に、切替バルブ33の弁機構を閉じ、ポンプ30を停止してサンプル空気の採集を停止する。
【0073】
試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を一時停止した後、コントローラ16は、濃度測定を終了するかを判断する(S−9)。コントローラ16は、図示はしていないが、第1回測定完了メッセージ、濃度測定終了ボタン、濃度測定継続ボタンをディスプレイ37に表示する。濃度測定終了ボタンをクリックすると、コントローラ16は、濃度測定が終了したと判断し、光音響ガスモニタ14から出力された測定濃度データをハードディスクに格納した後(S−10)、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。濃度測定継続ボタンをクリックすると、コントローラ16は、第2回目の濃度測定を実施すると判断し、測定濃度データをハードディスクに格納した後(S−11)、図3の初期画面をディスプレイ37に表示し、ステップ1(S−1)からの手順を実行する。測定濃度データの格納においてコントローラ16は、光音響ガスモニタ14から出力された測定濃度データをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(測定濃度データ第1格納手段)、測定日時データをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定日時第1格納手段)。
【0074】
図9は、フィルタ指定画面の一例を示す図であり、図10は、グラフ表示画面の一例を示す図である。図11は、グラフ表示画面の他の一例を示す図であり、図12は、グラフ表示画面の他の一例を示す図である。図10〜図12のグラフG2,H2,I2では、縦軸に測定した濃度が表示され、横軸に経過時間が表示されている。図10〜図12のグラフG2,H2,I2では、濃度測定時間内の経過時間における測定濃度の変化を表している。濃度測定が終了した後、コントローラ16は、横軸の時間軸に、測定濃度を設定された時間間隔で表示し、それら濃度どうしを線分で結ぶことによって図10〜図12の折れ線グラフG2,H2,I2を生成する(グラフ生成手段)。コントローラ16は、生成したグラフG2,H2,I2をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(グラフ格納手段)。
【0075】
図3の初期画面においてグラフ表示ボタンA3をクリックすると、コントローラ16は、図9に示すフィルタ指定画面をディスプレイ37に表示する。図9のフィルタ指定画面には、フィルタ名入力エリアF1、グラフ表示ボタンF2、データ表示画面F3、クリアボタンF4、キャンセルボタンF5が表示される。フィルタ名入力エリアF1にグラフ表示をするフィルタ名を入力(フィルタ名入力エリアF1のプルダウンリストからフィルタ名を選択)し、グラフ表示ボタンF2をクリックする。なお、クリアボタンF4をクリックすると、入力エリアF1に入力されたデータがクリアされ、入力エリアF1にフィルタ名を再入力する。キャンセルボタンF5をクリックすると、図3の初期画面が表示される。
【0076】
グラフ表示ボタンF2をクリックすると、コントローラ16は、指定されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11に対応する図10〜図12のグラフG2,H2,I2をディスプレイ37に表示する(グラフ出力手段)。なお、図10〜図12のグラフG2,H2,I2は、プリンタを介して出力することができる。図10に示すグラフ表示画面には、フィルタ名が表示されたフィルタ名表示エリアG1、グラフG2、印刷ボタンG3、閉じるボタンG4が表示される。
【0077】
図10のグラフG2は、試験用ヨウ化メチルガス22が検出されなかった場合のグラフG2であり、指定されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11がヨウ化メチルガス23の十分な除去機能を有し、また、フィルタ11にピンホールや破損等の不具合がなく、フィルタ11の設置器具(フィルタ収納カートリッジ17やパッキン、締め付け螺子等)に隙間や破損等の不具合(リーク)がない場合である。図10のグラフG2に示す濃度測定結果では、試験用ヨウ化メチルガス22がヨウ素ガス除去エアフィルタ11に吸着・除去され、ヨウ素メチルガス22がフィルタ11を透過することはなく、そのフィルタ11が放射性ヨウ素の十分な除去機能を有し、フィルタ11の交換の必要はなく、設置器具の修理の必要はない。
【0078】
図10のグラフ表示画面を確認することで、その表示画面に表示されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11が試験用ヨウ化メチルガス22(放射性ヨウ素)の十分な除去機能を有するとともに、フィルタ11に不具合がなく、フィルタ11の設置器具に不具合がないことを把握することができ、フィルタ11の交換不要を判断することができるとともに、フィルタ11の設置器具の修理不要を判断することができる。
【0079】
図11に示すグラフ表示画面には、フィルタ名が表示されたフィルタ名表示エリアH1、グラフH2、印刷ボタンH3、閉じるボタンH4が表示される。図11のグラフH2は、試験用ヨウ化メチルガス22が検出された場合のグラフH2であり、指定されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11にピンホールや破損等の不具合がある場合やフィルタ11の設置器具に隙間や破損等の不具合(リーク)がある場合である。図11のグラフH2に示す濃度測定結果では、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度が短時間に急激に上昇し、その後、急激に下降している。これは、試験用ヨウ化メチルガス22が瞬時にヨウ素ガス除去エアフィルタ11を通過し、または、ヨウ化メチルガス22が瞬時に設置器具を通過したことを表している。図11のグラフH2に示す濃度測定結果では、試験用ヨウ化メチルガス22がヨウ素ガス除去エアフィルタ11に吸着・除去されず、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11や設置器具を透過し、そのフィルタ11が放射性ヨウ素の十分な除去機能を有さず、フィルタ11の交換が必要となり、設置器具の修理が必要となる。
【0080】
図11のグラフ表示画面を確認することで、その表示画面に表示されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11が試験用ヨウ化メチルガス22(放射性ヨウ素)の除去機能を有さず、フィルタ11に不具合があり、または、フィルタ11の設置器具に不具合があることを把握することができ、フィルタ11の交換必要を判断することができるとともに、フィルタ11の設置器具の修理必要を判断することができる。
【0081】
図12に示すグラフ表示画面には、フィルタ名が表示されたフィルタ名表示エリアI1、グラフI2、印刷ボタンI3、閉じるボタンI4が表示される。図12のグラフI2は、図11と同様に、試験用ヨウ化メチルガス22が検出された場合のグラフI2であり、指定されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11のヨウ化メチルガス22に対する除去機能が低下している場合やフィルタ11のヨウ化メチルガス22に対する除去機能が喪失している場合である。図12のグラフI2に示す濃度測定結果では、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度が短時間に急激に上昇し、その後、ヨウ化メチルガス22がフィルタ11から徐々に漏出し、ヨウ化メチルガス22の濃度が徐々に下降している。これは、試験用ヨウ化メチルガス22が一旦ヨウ素ガス除去エアフィルタ11に吸着された後、フィルタ11に吸着したヨウ化メチルガス22を保持する機能が低下または喪失していることを表している。
【0082】
図12のグラフI2に示す濃度測定結果では、試験用ヨウ化メチルガス22がヨウ素ガス除去エアフィルタ11から次第に放出され、そのフィルタ11がヨウ化メチルガス22(放射性ヨウ素)の十分な除去機能を有さず、フィルタ11の交換が必要になる。図12のグラフ表示画面を確認することで、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11のヨウ化メチルガス22に対する除去機能が低下し、または、フィルタ11のヨウ化メチルガス22に対する除去機能が喪失し、フィルタ11に不具合があることを把握することができ、フィルタ11の交換必要を判断することができる。
【0083】
図13は、各データを表示したデータ表示画面の一例を示す図である。図13では、各表示エリアに表示されるデータの図示を省略している。濃度の測定が終了した後、コントローラ16は、試験用ヨウ化メチルガス22の供給量とヨウ化メチルガス22の検出量とから濃度測定が終了したヨウ素ガス除去エアフィルタ11の除去効率を算出する(除去効率算出手段)。具体的には、式:η(%)=(h1/h2)×100={h1/(∫g×f)}×100によって算出する。ここで、ηは、除去効率、h1は、試験用ヨウ化メチルガス22の供給量であり、h2は、ヨウ化メチルガス22の検出量である。∫gは、光音響ガスモニタ14によって測定されたヨウ化メチルガス22の濃度の積分値であり、fは、流量計15から出力された風量である。コントローラ16は、算出した除去効率をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(除去効率格納手段)。
【0084】
コントローラ16は、算出したヨウ素ガス除去エアフィルタ11の現在の放射性ヨウ素除去効率(%)とフィルタ11の除去効率下限値(%)(フィルタ11の継続使用に必要な除去効率の下限値)とを比較し、そのフィルタ11の継続使用または交換を判定する(フィルタ状態判定手段)。コントローラ16は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の継続使用または交換の判定結果をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(フィルタ判定結果格納手段)実行する。
【0085】
コントローラ16は、図11,12のグラフH2,I2(光音響ガスモニタ14によって時系列に測定された複数の測定濃度データ)に基づいて、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の欠陥をその放射性ヨウ素除去機能の低下であるか、または、フィルタ11やその設置器具の空気漏れ(リーク)であるかを分析する(欠陥分析手段)。コントローラ16は、その分析結果(除去機能の低下またはリーク)をフィルタ識別子に関連付けた状態でバードディスクに格納する欠陥分析結果格納手段を実行する。
【0086】
図3の初期画面においてデータ表示ボタンA4をクリックすると、コントローラ16は、図9に示すフィルタ指定画面をディスプレイ37に表示する。フィルタ名入力エリアF1にデータ表示をするフィルタ名を入力し、データ表示ボタンF3をクリックする。データ表示ボタンF3をクリックすると、コントローラ16は、図13に示すデータ表示画面をディスプレイ37に表示する(測定濃度データ出力手段)。なお、図13のデータ表示画面に表示されたデータは、プリンタを介して出力することができる。図13のデータ表示画面には、フィルタ名表示エリアJ1、測定日時表示エリアJ2、ガス供給量表示エリアJ3、ガス供給時間表示エリアJ4、濃度測定時間表示エリアJ5、濃度測定時間間隔表示エリアJ6、除去効率表示エリアJ7、欠陥種類表示エリアJ8、フィルタ判定結果表示エリアJ9、印刷ボタンJ10、閉じるボタンJ11が表示される。
【0087】
フィルタ名表示エリアJ1には、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を特定するフィルタ名が表示され、測定日時表示エリアJ2には、測定日時が表示され、ガス供給量表示エリアJ3には、ガス供給量が表示される。ガス供給時間表示エリアJ4には、ガス供給時間が表示され、濃度測定時間表示エリアJ5には、濃度測定時間が表示され、濃度測定時間間隔表示エリアJ6には、濃度測定時間間隔が表示される。除去効率表示エリアJ7には、除去効率が表示され(除去効率出力手段)、欠陥種類表示エリアJ8には、欠陥種類(除去機能の低下またはリーク)が表示され(欠陥分析結果出力手段)、フィルタ判定結果表示エリアJ9には、フィルタ11の継続使用または交換の判定結果が表示される(フィルタ判定結果出力手段)。
【0088】
除去効果測定システム10Aは、試験用ヨウ化メチルガス22を使用し、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11(放射性ヨウ素除去装置)の下流側に流れる空気に含まれるヨウ化メチルガス22の濃度を測定することで、そのフィルタ11の除去効果を測定するから、原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置されたフィルタ11の使用状態における空気中に含まれる放射性ヨウ素に対するフィルタ11の除去効果を高い精度で測定することができるとともに、フィルタ11の放射性ヨウ素に対する除去効果を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。
【0089】
除去効果測定システム10Aは、光音響ガスモニタ14(ガス濃度第1測定装置)によって試験用ヨウ化メチルガス22が検出された場合、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11が劣化して放射性ヨウ素除去機能が低下していることを判定することができ、または、フィルタ11やその設置器具に空気漏れ(リーク)等の構造的な欠陥があることを判定することができるから、除去効果の測定結果を参照しつつ、そのフィルタ11の交換時期を的確に判断することができるとともに、フィルタ11の設置器具の修理の必要性を判断することができる。
【0090】
除去効果測定システム10Aは、試験用ヨウ化メチルガス22の供給量とヨウ化メチルガス22の検出量とからヨウ素ガス除去エアフィルタ11における放射性ヨウ素除去効率を算出するから、フィルタ11の現在における放射性ヨウ素除去効率を把握することができ、除去効率から原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設において使用中のフィルタ11の使用限界を判断することができるとともに、フィルタ11の交換時期を的確に判断することができる。システム10Aは、欠陥種類に基づいて除去機能の低下またはリークのいずれかを把握することができるとともに、除去効率に基づいてヨウ素ガス除去エアフィルタ11を適時に交換することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えたフィルタ11を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、フィルタ11によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0091】
除去効果測定システム10Aは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の試験用ヨウ化メチルガス22に対する捕集効率と光音響ガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値とからヨウ化メチルガス22のガス供給量を算出するから、フィルタ11に供給するヨウ化メチルガス22の必要最小限の供給量を求めることができ、必要最小限のヨウ化メチルガス22を使用して除去効果を測定することができる。システム10Aは、必要最小限の供給量の試験用ヨウ化メチルガス22を使用してヨウ素ガス除去エアフィルタ11の除去効果を測定することができるから、フィルタ11にかかる負荷を最小限にすることがき、ヨウ化メチルガス22によるフィルタ11の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【0092】
除去効果測定システム10Aは、試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間をヨウ素ガス除去エアフィルタ11におけるヨウ化メチルガス22の保持容量の1/100〜1/200の範囲で設定するから、フィルタ11に供給するヨウ化メチルガス22の必要最小限の供給時間を決定することができ、ヨウ化メチルガス22を必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができる。システム10Aは、試験用ヨウ化メチルガス22を必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができるから、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11にかかる負荷を最小限にすることがき、ヨウ化メチルガス22によるフィルタ11の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【0093】
図14は、他の一例として示す除去効果測定システム10Bの構成図である。除去効果測定システム10Bが図1のそれと異なるところは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側の空気を採集する空気第2サンプリングユニット38と、ユニット38が採集したサンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を測定する第2光音響ガスモニタ39(ガス濃度第2測定装置)とを有する点にあり、その他の構成は図1のシステム10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1のシステム10Aの説明を援用することで、このシステム10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。除去効果測定システム10Bは、図1のそれと同様に、原子力関連施設において放射性ヨウ素が発生するおそれがある箇所に設置されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11(放射性ヨウ素除去装置)の放射性ヨウ素に対する除去効果や除去効率を測定する。
【0094】
除去効果測定システム10Bは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11と、試験用ヨウ化メチルガス供給装置12と、空気第1サンプリングユニット13と、第1光音響ガスモニタ14(ガス濃度第1測定装置)と、空気第2サンプリングユニット38と、第2光音響ガスモニタ39(ガス濃度第2測定装置)と、流量計15と、コントローラ16とから形成されている。ヨウ素ガス除去エアフィルタ11は、図2のそれと同一であり、空気取り入れ口20と空気排気口21とを備えた通気ダクト18に着脱可能に設置される。試験用ヨウ化メチルガス供給装置12や空気第1サンプリングユニット13、第1光音響ガスモニタ14、流量計15、コントローラ16は、図1のシステム10Aにおいて説明したそれらと同一である。
【0095】
空気第2サンプリングユニット38は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側における通気ダクト18(ダクト18の空気取り入れ口20とヨウ素ガス除去エアフィルタ11の入口との間に延びるダクト18)に着脱可能に設置され、フィルタ11の上流側に流れる空気を採集する。空気第2サンプリングユニット38は、通気ダクト18の空気流路19を通る空気を採集する採集口40と、採集した空気をダクト18の空気流路19に戻す放出口41と、吸引ポンプ42と、流量計付き調節バルブ43(電磁弁)および切替バルブ44,45(電磁弁)とから形成されている。採集口40や放出口41は、通気ダクト18の空気流路19に配置されている。採集口40や放出口41、吸引ポンプ42、流量計付き調節バルブ43、切替バルブ44,45はサンプリング管路46を介して接続されている。空気第2サンプリングユニット38では、ダクト18の空気取り入れ口20の側から採集口40、吸引ポンプ42、流量計付き調節弁43、切替バルブ44、切替バルブ45、放出口41の順に並んでいる。
【0096】
吸引ポンプ42は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。吸引ポンプ42は、その出力が一定に保持され、通気ダクト18の空気流路19を流れる空気を採集口40からサンプリング管路46に強制的に流入させる。流量計付き調節バルブ43は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。流量計付き調節バルブ43は、サンプリング管路46を通るサンプル空気を一定量に保持し、吸引ポンプ42が吸引したサンプル空気の一定量を各切替バルブ44,45に向かって流入させる。切替バルブ44,45は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。切替バルブ45は、その弁機構を開閉することで、サンプル空気のサンプリング管路46における流通をON/OFFする。切替バルブ44は、その弁機構を開閉することで、サンプル空気の第2光音響ガスモニタ39への流通をON/OFFする。
【0097】
第2光音響ガスモニタ39は、インターフェイス27を介してコントローラ16に接続されている。光音響ガスモニタ39は、サンプリング管路46に流れるサンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を所定の時間間隔で間欠的に複数回連続して測定し、測定したヨウ化メチルガス22の複数の濃度をコントローラ16に出力する。光音響ガスモニタ39は、その接続端子(図示せず)がサンプリング管路46に接続されている。コントローラ16のメモリには、各種手段をコントローラ16や光音響ガスモニタ14,39に実行させるための除去効果測定アプリケーションが格納されている。
【0098】
コントローラ16は、設定量のヨウ化メチルガス22を噴霧器から通気ダクト18の空気流路19に供給し、流量計付き調節バルブ31から切替バルブ32に達したサンプル空気の一定量を第1光音響ガスモニタ14に流入させる。コントローラ16は、設定量のサンプル空気が設定時間(測定時間)第1光音響ガスモニタ14に流入すると、サンプル空気のガスモニタ14への流入を停止しつつ、採集したサンプル空気を放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出する。コントローラ16は、サンプル空気のサンプリング量の指示信号を流量計付き調節バルブ43に出力し、切替バルブ45の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ44の弁機構を開放し、流量計付き調節バルブ43から切替バルブ44に達したサンプル空気の一定量を第2光音響ガスモニタ39に流入させる。コントローラ16は、設定量のサンプル空気が設定時間(測定時間)第2光音響ガスモニタ39に流入すると、切替バルブ44の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ45の弁機構を開放し、サンプル空気のガスモニタ39への流入を停止しつつ、採集したサンプル空気を放出口41から通気ダクト18の空気流路19に放出する。
【0099】
コントローラ16の中央処理部は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリから除去効果測定アプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、図1のシステム10Aのコントローラ16が実行する各手段に加え、以下の手段を実行する。中央処理部は、第2光音響ガスモニタ39における試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定時間をハードディスクに格納する濃度測定時間第2格納手段を実行し、第2光音響ガスモニタ39におけるサンプル空気の濃度測定時間間隔をハードディスクに格納する濃度測定時間間隔第2格納手段を実行する。
【0100】
コントローラ16の中央処理部は、空気第2サンプリングユニット38を利用して通気ダクト18の空気流路19(ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側)に流れる空気をその設定された量だけ採集するサンプル空気第2採集手段を実行し、採集されたサンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を第2光音響ガスモニタ39を利用して測定するガス濃度第2測定手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側に流れる空気の試験用ヨウ化メチルガス22の濃度の測定日時をバードディスクに格納する濃度測定日時第2格納手段を実行し、第2光音響ガスモニタ39が測定した濃度をバードディスクに格納する測定濃度データ第2格納手段を実行する。中央処理部は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側における試験用ヨウ化メチルガス22の濃度とフィルタ11の下流側におけるヨウ化メチルガス22の濃度とからフィルタ11における現在の放射性ヨウ素除去効率を算出する除去効率算出手段を実行する。
【0101】
図15は、測定条件設定画面の他の一例を示す図であり、図16は、測定条件確認画面の他の一例を示す図である。図8のフローチャートを援用し、このシステム10Bにおける除去効果測定手順の一例を説明すると、以下のとおりである。除去効果測定システム10Bを起動すると、試験用ヨウ化メチルガス供給装置12、空気第1サンプリングユニット13、第1光音響ガスモニタ14、空気第2サンプリングユニット38、第2光音響ガスモニタ39、流量計15、コントローラ16が稼動する。さらに、ダクト18に設置された給気ファンや排気ファンを別途起動させる。給気ファンや排気ファンを起動させると、図14に矢印L1で示すように、施設内の空気がダクト18の空気取り入れ口20からダクト18の空気流路19に進入し、その空気がヨウ素ガス除去エアフィルタ11を通ってダクト18の空気排気口21から排気される。ダクト18の空気流路19に進入した空気に放射性ヨウ素が含まれている場合、その放射性ヨウ素がヨウ素ガス除去エアフィルタ11によって吸着・除去される。
【0102】
システム10Bを起動した後、コントローラ16は、図3に示す初期画面をディスプレイ37に表示する(図3援用)。システム10Bを利用した除去効果測定を継続する場合、最初に測定条件を設定する(S−1)。測定条件設定ボタンA1をクリックすると、コントローラ16は、図15に示す測定条件設定画面をディスプレイ37に表示する。測定条件設定画面には、フィルタ名入力エリアK1、ガス供給量入力エリアK2、ガス供給時間入力エリアK3、第1サンプリングユニット13における濃度測定時間入力エリアK4、光音響ガスモニタ14における濃度測定時間間隔入力エリアK5、第2サンプリングユニット38における濃度測定時間入力エリアK6、光音響ガスモニタ39における濃度測定時間間隔入力エリアK7、ガス供給量算出ボタンK8、ガス供給時間算出ボタンK9、実行ボタンK10、キャンセルボタンK11、クリアボタンK12が表示される。
【0103】
フィルタ名入力エリアK1に測定対象フィルタを特定する名称(番号や記号、仮称を含む)を入力(フィルタ名入力エリアK1のプルダウンリストからフィルタの名称を選択)し、ガス供給量入力エリアK2に試験用ヨウ化メチルガス22の供給量を入力(ガス供給量入力エリアK2のプルダウンリストから供給量を選択)(たとえば、5ppm、10ppm、30ppm等で任意に設定可能)する。ガス供給時間入力エリアK3に試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間を入力(ガス供給時間入力エリアK3のプルダウンリストから供給時間を選択)(たとえば、20秒、30秒、50秒等で任意に設定可能)する。
【0104】
濃度測定時間入力エリアK4に第1光音響ガスモニタ14における濃度測定時間を入力(濃度測定時間入力エリアK4のプルダウンリストから濃度測定時間を選択)(たとえば、5分、10分、30分等で任意に設定可能)し、濃度測定時間間隔入力エリアK5に光音響ガスモニタ14におけるサンプル空気の濃度測定時間間隔を入力(濃度測定時間間隔入力エリアK5のプルダウンリストから濃度測定時間間隔を選択)(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔等で任意に設定可能)する。
【0105】
濃度測定時間入力エリアK6に第2光音響ガスモニタ39における濃度測定時間を入力(濃度測定時間入力エリアK6のプルダウンリストから濃度測定時間を選択)(たとえば、5分、10分、30分等で任意に設定可能)し、濃度測定時間間隔入力エリアK7に光音響ガスモニタ39におけるサンプル空気の濃度測定時間間隔を入力(濃度測定時間間隔入力エリアK7のプルダウンリストから濃度測定時間間隔を選択)(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔等で任意に設定可能)する。
【0106】
それら入力エリアK1〜K7に測定条件データを入力した後、実行ボタンK10をクリックすると、コンピュータ16は、図16に示す測定条件確認画面をディスプレイ37に表示する。図16の測定条件確認画面には、フィルタ名表示エリアL1、ガス供給量表示エリアL2、ガス供給時間表示エリアL3、光音響ガスモニタ14における濃度測定時間表示エリアL4、光音響ガスモニタ14における濃度測定時間間隔表示エリアL5、光音響ガスモニタ39における濃度測定時間表示エリアL6、光音響ガスモニタ39における濃度測定時間間隔表示エリアL7、条件確認ボタンL8、戻るボタンL9が表示される。
【0107】
それら表示エリアL1〜L7に表示された各データの変更がなければ条件確認ボタンL8をクリックする。条件確認ボタンL8をクリックすると、コントローラ16は、フィルタ名入力エリアK1に入力(選択)されたフィルタ名を特定するフィルタ識別子を生成し、フィルタ名(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(フィルタ名格納手段)、入力(選択)されたガス供給量(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給量格納手段)。さらに、入力(選択)されたガス供給時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給時間格納手段)。
【0108】
コントローラ16は、入力(選択)された第1光音響ガスモニタ14における濃度測定時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間第1格納手段)。第1光音響ガスモニタ14における濃度測定時間間隔(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間間隔第1格納手段)(S−2)。さらに、入力(選択)された第2光音響ガスモニタ39における濃度測定時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間第2格納手段)。第2光音響ガスモニタ39における濃度測定時間間隔(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間間隔第2格納手段)(S−2)。コントローラ16は、それらデータを格納すると、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。
【0109】
図15の測定条件設定画面において、ガス供給量入力エリアK2に供給量を入力せずにガス供給量をコントローラ16に算出させる場合、ガス供給量算出ボタンK8をクリックする。ガス供給量算出ボタンK8をクリックすると、コントローラ16は、図6に示すガス供給量算出画面をディスプレイ37に表示する(図6援用)。コントローラ16は、式:x=a÷{(100−b)÷100}によって試験用ヨウ化メチルガス22の供給量を算出する(ガス供給量算出手段)。
【0110】
図15の測定条件設定画面において、ガス供給時間入力エリアK3に供給時間を入力せずにガス供給時間をコントローラ16に算出させる場合、ガス供給時間算出ボタンK9をクリックする。ガス供給時間算出ボタンK9をクリックすると、コントローラ16は、図7に示すガス供給時間算出画面をディスプレイ37に表示する(図7援用)。コントローラ16は、式:t={(m×θ)÷(x×n÷1000000)}によって試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間を算出する(ガス供給時間算出手段)。
【0111】
供給量と供給時間とを算出した後、コントローラ16は、図16の測定条件確認画面をディスプレイ37に表示する。図16の測定条件確認画面において条件確認ボタンL8をクリックすると、コントローラ16は、フィルタ名入力エリアK1に入力(選択)されたフィルタ名を特定するフィルタ識別子を生成し、フィルタ名(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(フィルタ名格納手段)、算出したガス供給量(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給量格納手段)。さらに、算出したガス供給時間(格納日時を含む)をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(ガス供給時間格納手段)。
【0112】
コントローラ16は、入力(選択)された第1光音響ガスモニタ14における濃度測定時間(格納日時を含む)と濃度測定時間間隔(格納日時を含む)とをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間第1格納手段、濃度測定時間間隔第1格納手段)(S−2)。さらに、入力(選択)された第2光音響ガスモニタ39における濃度測定時間(格納日時を含む)と濃度測定時間間隔(格納日時を含む)とをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定時間第2格納手段、濃度測定時間間隔第2格納手段)(S−2)。コントローラ16は、それらデータを格納すると、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。
【0113】
測定条件の設定が終了した後、測定を開始する場合は、図3の初期画面において測定開始ボタンA2をクリックする。測定開始ボタンA2をクリックすると、コントローラ16は、ヨウ素ガス除去フィルタ11を透過した空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を行う。コントローラ16は、設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガス22の供給指示信号を質量流量計24に出力するとともに、切替バルブ25の弁機構を開放し、設定量のヨウ化メチルガス22を噴霧器から通気ダクト18の空気流路19に供給する(ガス供給手段)(S−3)。
【0114】
噴霧器から空気流路19に供給された試験用ヨウ化メチルガス22は、空気取り入れ口20から流入する施設内の空気と混合されながらヨウ素ガス除去エアフィルタ11に達する。空気は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を透過し、空気流路19を通って空気排気口21から施設内または施設外に排気される。なお、通気ダクト18には図示しない給気ファンや排気ファンを介し、施設内の風量または風速が不均一な空気が強制的に流入している。
【0115】
コントローラ16は、設定されたサンプリング量のサンプル空気の採集指示信号を流量計付き調節バルブ31に出力し、吸引ポンプ30を稼動させ、切替バルブ33の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ32の弁機構を開放し、流量計付き調節バルブ31から切替バルブ32に達したサンプル空気の一定量を光音響ガスモニタ14に流入させる(サンプル空気第1採集手段)。コントローラ16は、光音響ガスモニタ14に濃度測定指示信号を出力し、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度をガスモニタ14に測定させる(ガス濃度第1測定手段)(S−4)。さらに、コントローラ16は、測定した濃度データの転送指示信号を光音響ガスモニタ14に出力する。コントローラ16は、通気ダクト18の空気流路19に流れる空気の風量の測定指示信号を流量計15に出力し、測定した風量データの転送指示信号を流量計15に出力する。
【0116】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を透過した空気は、フィルタ11の下流側においてその一部(サンプル空気)が採集口28からサンプリング管路34に進入し、吸引ポンプ30から流量計付き調節バルブ31を通って光音響ガスモニタ14に流入し、ガスモニタ14から再びサンプル管路34を通って放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出される。光音響ガスモニタ14は、コントローラ16からの濃度測定指示にしたがって、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を設定された時間間隔(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔)で間欠的に測定し、転送指示にしたがって、測定した複数の濃度データを設定された時間間隔でコントローラ16に随時出力する(S−5)。流量計15は、コントローラ16からの風量測定指示にしたがって、通気ダクトの空気流路に流れる空気の風量を測定し、転送指示にしたがって、測定した風量データをコントローラ16に出力する。
【0117】
コントローラ16は、設定されたサンプリング量のサンプル空気の採集指示信号を流量計付き調節バルブ43に出力し、吸引ポンプ42を稼動させ、切替バルブ45の弁機構を閉鎖するとともに、切替バルブ44の弁機構を開放し、流量計付き調節バルブ43から切替バルブ44に達したサンプル空気の一定量を光音響ガスモニタ39に流入させる(サンプル空気第2採集手段)。コントローラ16は、光音響ガスモニタ39に濃度測定指示信号を出力し、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度をガスモニタ39に測定させる(ガス濃度第2測定手段)(S−4)。さらに、コントローラ16は、測定した濃度データの転送指示信号を光音響ガスモニタ39に出力する。
【0118】
ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側に流れる空気は、フィルタ11の上流側においてその一部(サンプル空気)が採集口40からサンプリング管路46に進入し、吸引ポンプ42から流量計付き調節バルブ43を通って光音響ガスモニタ39に流入し、ガスモニタ39から再びサンプル管路46を通って放出口41から通気ダクト18の空気流路19に放出される。光音響ガスモニタ39は、コントローラ16からの濃度測定指示にしたがって、サンプル空気に含まれる試験用ヨウ化メチルガス22の濃度を設定された時間間隔(たとえば、10秒間隔、20秒間隔、30秒間隔)で間欠的に測定し、転送指示にしたがって、測定した複数の濃度データを設定された時間間隔でコントローラ16に随時出力する(S−5)。コントローラ16は、図示はしていないが、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度の測定中に測定中メッセージをディスプレイ37に表示する。
【0119】
コントローラ16は、光音響ガスモニタ14から出力された試験用ヨウ化メチルガス22の測定濃度データに基づいて、ヨウ化メチルガス22の濃度がガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値に達したかを判断する(S−6)。濃度が光音響ガスモニタ14における試験用ヨウ化メチルガス22の測定下限値に達していない場合、コントローラ16は、ステップ4(S−4)に戻り、ヨウ化メチルガス22の測定を継続して行う。濃度が光音響ガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値に達した場合、コントローラ16は、設定された光音響ガスモニタ14,39の濃度測定時間が経過したかを判断する(S−7)。濃度測定時間が経過していない場合、コントローラ16は、ステップ4(S−4)に戻り、試験用ヨウ化メチルガス22の測定を継続して行う。
【0120】
ステップ7(S−7)において濃度測定時間が経過と判断した場合、コントローラ16は、試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を一時停止する(S−8)。コントローラ16は、切替バルブ32の弁機構を閉じ、サンプル空気の光音響ガスモニタ14への流入を停止し、切替バルブ33の弁機構を開け、サンプル空気を放出口29から通気ダクト18の空気流路19に放出する。次に、切替バルブ33の弁機構を閉じ、ポンプ30を停止してサンプル空気の採集を停止する。コントローラ16は、切替バルブ44の弁機構を閉じ、サンプル空気の光音響ガスモニタ39への流入を停止し、切替バルブ45の弁機構を開け、サンプル空気を放出口41から通気ダクト18の空気流路19に放出する。次に、切替バルブ45の弁機構を閉じ、ポンプ42を停止してサンプル空気の採集を停止する。
【0121】
試験用ヨウ化メチルガス22の濃度測定を一時停止した後、コントローラ16は、濃度測定を終了するかを判断する(S−9)。コントローラ16は、第1回測定完了メッセージ、濃度測定終了ボタン、濃度測定継続ボタンをディスプレイ37に表示する。濃度測定終了ボタンをクリックすると、コントローラ16は、濃度測定が終了したと判断し、光音響ガスモニタ14,39から出力された測定濃度データをハードディスクに格納した後(S−10)、図3の初期画面をディスプレイ37に表示する。濃度測定継続ボタンをクリックすると、コントローラ16は、第2回目の濃度測定を実施すると判断し、光音響ガスモニタ14,39から出力された測定濃度データをハードディスクに格納した後(S−11)、図3の初期画面をディスプレイ37に表示し、ステップ1(S−1)からの手順を実行する。測定濃度データの格納においてコントローラ16は、光音響ガスモニタ14,39から出力された測定濃度データをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納し(測定濃度データ第1格納手段、測定濃度データ第2格納手段)、測定日時データをフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(濃度測定日時第1格納手段、濃度測定日時第2格納手段)。
【0122】
濃度測定が終了した後、コントローラ16は、横軸の時間軸に、測定濃度を設定された時間間隔で表示し、それら濃度どうしを線分で結ぶことによって図10〜図12に示す折れ線グラフG2,H2,I2を生成する(グラフ生成手段)(図10〜図12援用)。コントローラ16は、生成したグラフG2,H2,I2をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(グラフ格納手段)。図3の初期画面においてグラフ表示ボタンA3をクリックすると、コントローラ16は、図9のフィルタ指定画面をディスプレイ37に表示する。図9のフィルタ指定画面においてフィルタ名入力エリアF1にグラフ表示をするフィルタ名を入力し、グラフ表示ボタンF2をクリックする。グラフ表示ボタンF2をクリックすると、コントローラ16は、指定されたヨウ素ガス除去エアフィルタ11に対応する図10〜図12のグラフG2,H2,I2をディスプレイ37に表示する(グラフ出力手段)。
【0123】
図17は、各データを表示したデータ表示画面の他の一例を示す図である。濃度の測定が終了した後、コントローラ16は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側における試験用ヨウ化メチルガス22の濃度とフィルタ11の下流側におけるヨウ化メチルガス22の濃度とから濃度測定が終了したフィルタ11の除去効率を算出する(除去効率算出手段)。具体的には、式:η(%)={(t1×f×g1)/(t2×f×g2)}×100によって算出する。ここで、ηは、除去効率、t1は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側における試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間、t2は、フィルタ11の下流側におけるヨウ化メチルガス22の供給時間であり、fは、流量計15から出力された風量である。g1は、フィルタ11の上流側におけるヨウ化メチルガス22の測定濃度であり、g2は、フィルタ11の下流側におけるヨウ化メチルガス22の測定濃度である。なお、ヨウ化メチルガス22の供給時間と風量とがフィルタ11の上流側と下流側とで同一の場合、除去率η(%)=(g1/g2)×100によって算出する。コントローラ16は、算出した除去効率をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(除去効率格納手段)。
【0124】
コントローラ16は、グラフH2,I2(光音響ガスモニタ14によって時系列に測定された複数の測定濃度データ)に基づいて(図11,12援用)、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の欠陥をその放射性ヨウ素除去機能の低下であるか、または、フィルタ11やその設置器具の空気漏れ(リーク)であるかを分析する(欠陥分析手段)。コントローラ16は、その分析結果(除去機能の低下またはリーク)をフィルタ識別子に関連付けた状態でバードディスクに格納する欠陥分析結果格納手段を実行する。
【0125】
コントローラ16は、算出したヨウ素ガス除去エアフィルタ11の現在の放射性ヨウ素除去効率とフィルタ11の除去効率下限値とを比較し、そのフィルタ11の継続使用または交換を判定する(フィルタ状態判定手段)。コントローラ16は、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の継続使用または交換の判定結果をフィルタ識別子に関連付けた状態でハードディスクに格納する(フィルタ判定結果格納手段)実行する。
【0126】
図3の初期画面においてデータ表示ボタンA4をクリックすると、コントローラ16は、図9に示すフィルタ指定画面をディスプレイ37に表示する。フィルタ名入力エリアF1にデータ表示をするフィルタ名を入力し、データ表示ボタンF3をクリックする。データ表示ボタンF3をクリックすると、コントローラ16は、図17に示すデータ表示画面をディスプレイ37に表示する(測定濃度データ出力手段)。なお、図17のデータ表示画面に表示されたデータは、プリンタを介して出力することができる。図17のデータ表示画面には、フィルタ名表示エリアM1、測定日時表示エリアM2、ガス供給量表示エリアM3、ガス供給時間表示エリアM4、第1ガスモニタ濃度測定時間表示エリアM5、第1ガスモニタ濃度測定時間間隔表示エリアM6、第2ガスモニタ濃度測定時間表示エリアM7、第2ガスモニタ濃度測定時間間隔表示エリアM8、除去効率表示エリアM9、欠陥種類表示エリアM10、フィルタ判定結果表示エリアM11、印刷ボタンM12、閉じるボタンM13が表示される。
【0127】
フィルタ名表示エリアM1には、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11を特定するフィルタ名が表示され、測定日時表示エリアM2には、測定日時が表示され、ガス供給量表示エリアM3には、ガス供給量が表示される。ガス供給時間表示エリアM4には、ガス供給時間が表示され、第1ガスモニタ濃度測定時間表示エリアM5には、第1ガスモニタの濃度測定時間が表示され、第1ガスモニタ濃度測定時間間隔表示エリアM6には、第1ガスモニタの濃度測定時間間隔が表示される。第2ガスモニタ濃度測定時間表示エリアM7には、第2ガスモニタの濃度測定時間が表示され、第2ガスモニタ濃度測定時間間隔表示エリアM8には、第2ガスモニタの濃度測定時間間隔が表示される。除去効率表示エリアM9には、除去効率が表示され(除去効率出力手段)、欠陥種類表示エリアM10には、欠陥種類(除去機能の低下またはリーク)が表示され(欠陥分析結果出力手段)、フィルタ判定結果表示エリアM10には、フィルタ11の継続使用または交換の判定結果が表示される(フィルタ判定結果出力手段)。
【0128】
除去効果測定システム10Bは、試験用ヨウ化メチルガス22を使用し、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11(放射性ヨウ素除去装置)の下流側に流れる空気に含まれるヨウ化メチルガス22の濃度を測定することで、そのフィルタ11の除去効果を測定するから、原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置されたフィルタ11の使用状態における空気中に含まれる放射性ヨウ素に対するフィルタ11の除去効果を高い精度で測定することができるとともに、フィルタ11の放射性ヨウ素に対する除去効果を高い信頼性および高い信憑性で検証することができる。
【0129】
除去効果測定システム10Bは、光音響ガスモニタ14(ガス濃度第1測定装置)によって試験用ヨウ化メチルガス22が検出された場合、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11が劣化して放射性ヨウ素除去機能が低下していることを判定することができ、または、フィルタ11やその設置器具に空気漏れ(リーク)等の構造的な欠陥があることを判定することができるから、除去効果の測定結果を参照しつつ、そのフィルタ11の交換時期を的確に判断することができるとともに、フィルタ11の設置器具の修理の必要性を判断することができる。
【0130】
除去効果測定システム10Bは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の上流側における試験用ヨウ化メチルガス22の濃度とフィルタ11の下流側におけるヨウ化メチルガス22の濃度とからフィルタ11における放射性ヨウ素除去効率を算出するから、フィルタ11の現在における放射性ヨウ素除去効率を把握することができ、除去効率から原子力関連施設や放射性ヨウ素を取り扱う施設において使用中のフィルタ11の使用限界を判断することができるとともに、フィルタ11の交換時期を的確に判断することができる。システム10Bは、欠陥種類に基づいて除去機能の低下またはリークのいずれかを把握することができるとともに、除去効率に基づいてヨウ素ガス除去エアフィルタ11を適時に交換することができるから、常に放射性ヨウ素の除去機能を備えたフィルタ11を使用することができ、空気中に放射性ヨウ素が含まれたとしても、フィルタ11によってその放射性ヨウ素を空気から確実に除去することができる。
【0131】
除去効果測定システム10Bは、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11の試験用ヨウ化メチルガス22に対する捕集効率と光音響ガスモニタ14におけるヨウ化メチルガス22の測定下限値とからヨウ化メチルガス22のガス供給量を算出するから、フィルタ11に供給するヨウ化メチルガス22の必要最小限の供給量を求めることができ、必要最小限のヨウ化メチルガス22を使用して除去効果を測定することができる。システム10Bは、必要最小限の供給量の試験用ヨウ化メチルガス22を使用してヨウ素ガス除去エアフィルタ111の除去効果を測定することができるから、フィルタ11にかかる負荷を最小限にすることがき、ヨウ化メチルガス22によるフィルタ11の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【0132】
除去効果測定システム10Bは、試験用ヨウ化メチルガス22の供給時間をヨウ素ガス除去エアフィルタ11におけるヨウ化メチルガス22の保持容量の1/100〜1/200の範囲で設定するから、フィルタ11に供給するヨウ化メチルガス22の必要最小限の供給時間を決定することができ、ヨウ化メチルガス22を必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができる。システム10Bは、試験用ヨウ化メチルガス22を必要最小限の時間だけ供給することで除去効果を測定することができるから、ヨウ素ガス除去エアフィルタ11にかかる負荷を最小限にすることがき、ヨウ化メチルガス22によるフィルタ11の放射性ヨウ素除去機能の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0133】
10A 除去効果測定システム
10B 除去効果測定システム
11 ヨウ素ガス除去エアフィルタ(ヨウ素ガス除去装置)
12 試験用ヨウ化メチルガス供給装置
13 空気第1サンプリングユニット
14 光音響ガスモニタ(ガス濃度第1測定装置)
15 流量計
16 コントローラ
18 通気ダクト
19 空気流路
22 試験用ヨウ化メチルガス
38 空気第2サンプリングユニット
39 光音響ガスモニタ(ガス濃度第2測定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる放射性ヨウ素を除去する放射性ヨウ素除去装置の放射性ヨウ素除去効果を測定する除去効果測定システムにおいて、
前記除去効果測定システムが、あらかじめ設定された供給量の試験用ヨウ化メチルガスを前記放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する試験用ヨウ化メチルガス供給装置と、前記試験用ヨウ化メチルガスを供給した直後から所定時間が経過するまでの間、前記放射性ヨウ素除去装置の下流側に流れる空気に含まれる前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定するガス濃度第1測定装置とから形成されていることを特徴とする除去効果測定システム。
【請求項2】
前記除去効果測定システムが、前記放射性ヨウ素除去装置の上流側に供給された前記試験用ヨウ化メチルガスの供給量と該放射性ヨウ素除去装置の下流側から検出された該試験用ヨウ化メチルガスの検出量とからその放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める請求項1記載の除去効果測定システム。
【請求項3】
前記除去効果測定システムが、前記試験用ヨウ化メチルガスの供給開始から供給終了までの間、前記放射性ヨウ素除去装置の上流側に流れる空気に含まれる前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度を測定するガス濃度第2測定装置を含む請求項1または請求項2に記載の除去効果測定システム。
【請求項4】
前記除去効果測定システムが、前記ガス濃度第1測定装置と前記ガス濃度第2測定装置とを利用して前記放射性ヨウ素除去装置の上流側の前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度と該放射性ヨウ素除去装置の下流側の該試験用ヨウ化メチルガスの濃度とを測定し、測定したそれら濃度から前記放射性ヨウ素除去装置における放射性ヨウ素除去効率を求める請求項3記載の除去効果測定システム。
【請求項5】
前記除去効果測定システムでは、前記ガス濃度第1測定装置によって測定された前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度が該ガス濃度第1測定装置における該試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値に達するまでの間、前記ガス濃度第1測定装置による前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度の測定が継続される請求項1ないし請求項4いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項6】
前記放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する前記試験用ヨウ化メチルガスの供給量は、前記放射性ヨウ素除去装置の前記試験用ヨウ化メチルガスに対する捕集効率と前記ガス濃度第1測定装置における該試験用ヨウ化メチルガスの測定下限値とから求める請求項1ないし請求項5いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項7】
前記放射性ヨウ素除去装置の上流側から供給する前記試験用ヨウ化メチルガスの供給時間は、前記放射性ヨウ素除去装置における前記試験用ヨウ化メチルガスの保持容量の1/100〜1/200の範囲で設定される請求項1ないし請求項6いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項8】
前記試験用ヨウ化メチルガスの前記放射性ヨウ素除去装置の上流側からの供給時では、前記放射性ヨウ素除去装置の周囲の空気の風量または風速が不均一である請求項1ないし請求項7いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項9】
前記除去効果測定システムでは、前記放射性ヨウ素を除去可能な使用中の状態にある前記放射性ヨウ素除去装置の除去効果が測定される請求項1ないし請求項8いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項10】
前記ガス濃度第1測定装置と前記ガス濃度第2測定装置とが、前記試験用ヨウ化メチルガスの濃度を所定の時間間隔で間欠的に複数回測定することが可能な光音響ガスモニタである請求項3ないし請求項9いずれかに記載の除去効果測定システム。
【請求項11】
前記除去効果測定システムでは、前記光音響ガスモニタによって時系列に測定された複数の測定濃度データに基づいて、前記放射性ヨウ素除去装置の欠陥をその放射性ヨウ素除去機能の低下であるか、または、前記放射性ヨウ素除去装置やその設置器具の空気漏れであるかを分析する請求項10記載の除去効果測定システム。
【請求項12】
前記放射性ヨウ素除去装置が、原子力関連施設または前記放射性ヨウ素を取り扱う施設に設置され、それら施設の空気中に含まれる前記放射性ヨウ素を吸着する放射性ヨウ素除去エアフィルタである請求項1ないし請求項11いずれかに記載の除去効果測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−103119(P2012−103119A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252129(P2010−252129)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 日本原子力学会 2010年原子力学会秋の大会 主催者名 社団法人日本原子力学会 会長 辻倉 米蔵 開催日 平成22年9月15日〜9月17日
【出願人】(000153100)株式会社日本環境調査研究所 (30)
【Fターム(参考)】