説明

除振装置

【課題】ユーザーの要求する性能を備えた、コンパクト且つ安価な除振装置を提供する。
【解決手段】定盤を支持するトッププレート11と、床に載置されるベースプレート21と、トッププレート11とベースプレート21との間でこれら両板に取り付けられ、精密機器の載置される定盤を床に対してコイルばね13により除振支持するばねユニット3と、を備えた除振装置1である。鉛直加速度センサ15と鉛直VCMとがモジュール化された鉛直ユニット5、及び/又は、水平加速度センサと水平VCMとがモジュール化された水平ユニット7を、トッププレート11とベースプレート21との間の空間に収まるように、トッププレート11に対して着脱することが可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子顕微鏡などの精密機器を床等の微少な振動から絶縁するために、ばね要素によって支持してなる除振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の除振装置としては、上面に機器の載置される定盤を、例えば空気ばねやコイルばねのように柔らかなばね要素によって支持してなる所謂パッシブタイプ(受動型)の除振台が周知である。
【0003】
また、例えば空気ばね(例えば、特許文献1)やコイルばね(例えば、特許文献2)を介して支持した除振対象物の振動や位置をセンサによって検出し、この検出信号をフィードバックしてアクチュエータを駆動することにより、当該除振対象物にその振動を減殺するような振動的な制御力を付加するようにしたアクティブタイプ(能動型)の除振装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3372975号公報
【特許文献2】特開2007−78122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のアクティブタイプの除振装置(以下、アクティブ除振装置ともいう)では、以下のような問題がある。すなわち、従来のアクティブ除振装置は、そのハウジング内に、ばね要素に加えて、通常、鉛直及び水平の二方向のためのセンサ及びアクチュエータをそれぞれ備えていることから、鉛直及び水平方向において極めて高い除振性能を得ることができる反面、非常に高価なものとなっている。
【0006】
ところが、ユーザーの中には、鉛直又は水平のうち一方向のみ高い除振性能を得たい人が存在するところ、このようなユーザーは、アクティブ除振装置よりも除振性能が劣る、比較的安価なパッシブタイプの除振装置を購入するか、又は、当該ユーザーにとっては不要な機能を有する高価なアクティブ除振装置を購入するかしか選択肢がないという問題がある。
【0007】
また、アクティブ除振装置では、ばね要素、各種センサ及びアクチュエータに加えて、定盤の高さ一定に保つ自動レベル調整のための電動モータや、これらの機器を制御するためのコントローラが、ハウジング内に内蔵されているものが多い。このため、アクティブ除振装置は、小さいものでも、通常、幅230mm以上、奥行き230mm以上、高さ180mm以上の寸法を有していることから、狭いスペースで能動型除振装置を利用したいというユーザーの要求に応えられないという問題もある。
【0008】
これらの問題を解決するために、ユーザーの希望する機能だけを備えたコンパクトなアクティブ除振装置を製作することも考えられるが、特注品では製造コストが嵩むという問題や、後日他の機能を付加する必要性が生じた場合、アクティブ除振装置自体の買い替えを余儀なくされるという問題や、コンパクトに製造されたハウジングを分解し、かかる他の機能を付加した後、大きなハウジング等に交換する必要があり、作業が繁雑になるという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザーの要求する性能を備えた、コンパクト且つ安価な除振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、上板及び下板を介して、定盤を基礎に対してコイルばねにより支持するパッシブタイプの除振装置を基本装置とし、当該パッシブタイプの除振装置の機能を拡張するための機能拡張装置である制御力付加装置を、振動センサとアクチュエータとをモジュール化したコンパクトな構造とするとともに、多様なユーザーの要求に応えられように、上板に対して着脱可能としている。
【0011】
具体的には、第1の発明は、定盤を支持する上板と、基礎に載置される下板と、当該上板と当該下板との間でこれら両板に取り付けられ、当該定盤に載置される機器を当該基礎に対してコイルばねにより除振支持する受動型除振装置と、を備えた除振装置を対象とする。
【0012】
そして、上記機器の鉛直方向の振動を検出するための第1振動センサと、上記機器に対して鉛直方向の制御力を付加するための第1アクチュエータと、がモジュール化された第1制御力付加装置、及び/又は、上記機器の水平方向の振動を検出するための第2振動センサと、上記機器に対して水平方向の制御力を付加するための第2アクチュエータと、がモジュール化された第2制御力付加装置を、上記上板と上記下板との間の空間に収まるように、当該上板に対して着脱することが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1の発明では、先ず、空気ばねに比して安価なコイルばねを採用した受動型除振装置を基本装置としている。これにより、高価なアクティブ除振装置を必要としないユーザーに対しては、上板と下板と受動型除振装置とからなる安価なパッシブタイプの除振装置を提供することができる。
【0014】
次いで、ユーザーが当該パッシブタイプの除振装置に鉛直又は水平方向の制御力を付加したい場合には、機能拡張装置である第1又は第2制御力付加装置を、受動型除振装置が取り付けられている上板に取り付けることによって、鉛直又は水平方向のフィードバック制御を行うことができる。これにより、鉛直及び水平方向のいずれか一方向のフィードバック制御のみを必要とするユーザーやこれらの制御が必要になったユーザーに対しては、必要とする性能に見合った価格で、アクティブタイプの除振装置を提供することができる。
【0015】
また、ユーザーが当該受動型除振装置に鉛直及び水平方向の制御力を付加したい場合には、第1及び第2制御力付加装置の両方を上板に取り付けることによって、鉛直及び水平方向のフィードバック制御を行うことが可能になる。
【0016】
そうして、第1及び第2制御力付加装置は、各々振動センサとアクチュエータとがモジュール化されていることにより、それら自体が上板と下板との間の空間に収まるようなコンパクトな構造となっていることから、これらの第1及び第2制御力付加装置を装着しても、除振装置全体を非常にコンパクトにできる。
【0017】
以上により、ユーザーの要求する性能を備えた、コンパクト且つ安価な除振装置を提供することが可能となる。
【0018】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記制御力付加装置を制御するための制御装置を、上記上板と上記下板との間の空間に収まるように、当該下板に対して着脱することが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第2の発明によれば、受動型除振装置を基本装置とする除振装置に、第1及び第2制御力付加装置に加えて、これらを制御するための制御装置をも付加できるとともに、かかる制御装置が上板と下板との間の空間に収まるように構成されていることから、従来の除振装置と同等の機能を有する除振装置を非常にコンパクトにすることができる。
【0020】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記第1制御力付加装置は、上記第1振動センサをその軸が鉛直方向を向いた状態で収容し、且つ、当該第1振動センサの下側に上記第1アクチュエータを収容するためのハウジングを有しており、上記第1アクチュエータは、上記ハウジングを介して上記上板に固定される固定子と、この固定子に対して鉛直方向に往復動して、上記下板に当接することによって上記機器に鉛直方向の制御力を付加する可動子とを有しており、上記固定子と上記可動子とがゴム弾性体で連結されていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明によれば、第1アクチュエータとして、固定子と可動子とがゴム弾性体で連結されている一体型のものを用いることから、基礎からの振動が可動子を介して固定子側に伝わるのをかかるゴム弾性体によって抑えることができるとともに、固定子と可動子とが別体型のもの(固定子が上板に、可動子が下板にそれぞれ取り付けられるもの)とは異なり、固定子が収容されたハウジングを上板に取り付けるだけで第1制御力付加装置を追加することができるので、取付作業が容易となる。
【0022】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記第2制御力付加装置は、上記第2振動センサをその軸が水平方向を向いた状態で収容し、且つ、当該第2振動センサの下側に上記第2アクチュエータを収容するためのハウジングを有しており、上記第2アクチュエータは、上記ハウジングを介して上記上板に固定される固定子と、この固定子に対し、当該第2振動センサの軸方向と平行に往復動して、上記受動型除振装置に当接することによって上記機器に水平方向の制御力を付加する可動子とを有しており、上記固定子と上記可動子とがゴム弾性体で連結されていることを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明によれば、第3の発明と同様、基礎(下板に取り付けられた受動型除振装置)からの振動が固定子側に伝わるのをゴム弾性体によって抑えることができるとともに、第2制御力付加装置を追加する際の取付作業が容易となる。
【0024】
ここで、振動センサとアクチュエータとは、正確な除振制御を行うために、通常、振動センサの軸とアクチュエータの進退軸とが一直線上に位置するように配置されるが、第4の発明では、第2制御力付加装置が上板と下板との間の空間に収まるように(水平方向に拡がり過ぎないように)、第2振動センサと第2アクチュエータとを上下に重ねて、換言すると、第2振動センサの軸と第2アクチュエータの進退軸とが平行になるように配置している。
【0025】
このように、第2振動センサと第2アクチュエータとを配置しても、除振装置自体をコンパクト化している本発明では、第2振動センサの軸と第2アクチュエータの進退軸との上下方向の間隔が狭いので、精度の高い除振制御を行うことができる。
【0026】
したがって、第2制御力付加装置のコンパクト化と、正確な水平方向の除振制御とを両立することが可能となる。
【0027】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記受動型除振装置と、上記第1及び第2制御力付加装置と、上記制御装置とが、上記上板と上記下板との間の空間に、平面的に2行2列に配設されていることを特徴とするものである。
【0028】
第5の発明によれば、4つの装置を、平面的に2行2列に配設することにより、上板と下板との間の空間を無駄なく利用して、除振装置をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る除振装置によれば、空気ばねに比して安価なコイルばねを採用した受動型除振装置を基本装置としていることから、アクティブ除振装置を必要としないユーザーには、上板と下板と受動型除振装置とを備える安価なパッシブタイプの除振装置を提供することができる一方、ユーザーが受動型除振装置に鉛直及び/又は水平方向の制御力を付加したい場合には、機能拡張装置である第1及び/又は第2制御力付加装置を、後から上板に取り付けることによって、鉛直及び/又は水平方向のフィードバック制御を行うことが可能なアクティブタイプの除振装置を提供することができる。
【0030】
そうして、第1及び第2制御力付加装置は、各々振動センサとアクチュエータとをモジュール化されていることにより、それら自体が上板と下板との間の空間に収まるようなコンパクトな構造になっていることから、これらの第1及び第2制御力付加装置を備えた除振装置全体を非常にコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る除振装置を示す斜視図である。
【図2】除振装置を用いて機器を床に対して除振支持している状態を模式的に説明する側面図である。
【図3】ばねユニットを単独で用いる場合を示す斜視図である。
【図4】ばねユニット、鉛直ユニット及びコントロールユニットを組み合わせた場合を示す斜視図である。
【図5】ばねユニット、水平ユニット及びコントロールユニットを組み合わせた場合を示す斜視図である。
【図6】除振装置の透視平面図である。
【図7】図6のA矢視側面図である。
【図8】図6のB矢視側面図である。
【図9】ばねユニットを示す斜視図である。
【図10】ばねユニットの縦断面図である。
【図11】鉛直ユニットを示す側面図である。
【図12】鉛直ボイスコイルモータの構造を模式的に示す縦断面図である。
【図13】水平ユニットを示す側面図である。
【図14】除振装置と、床振動を検出するための加速度センサ及び電源との接続を説明するための配線ブロック図である。
【図15】定盤を支持する際の除振装置の配置例を模式的に示す透視平面図である。
【図16】定盤を支持する際の除振装置の配置例を模式的に示す透視平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。なお、以下の各図では、図面を見易くするために、コントロールユニット9と、鉛直及び水平ユニット5,7とを電気的に接続する配線を図示省略している。
【0033】
図1は、本実施形態に係る除振装置を示す斜視図である。この除振装置1は、図2に示すように、例えば、半導体関連の製造装置、原子間力顕微鏡(AFM)、レーザ顕微鏡等の精密計測機器のように、振動の影響を受けやすい精密機器31を搭載して、それらを床(基礎)51の振動からできるだけ絶縁した状態で設置するためのものである。換言すると、図示の除振装置1は、精密機器31の載置される定盤41を床51に対して除振支持するようになっている。そして、かかる除振装置1では、定盤41及びこれに搭載される精密機器31が(厳密には以下に述べるトッププレート11なども含めて)除振対象物になる。
【0034】
この除振装置1は、定盤41を支持するトッププレート(上板)11と、床51に載置されるベースプレート(下板)21と、当該トッププレート11と当該ベースプレート21との間でこれら両プレート11,21に取り付けられて、精密機器31の載置される定盤41を床51に対してコイルばね13により除振支持するばねユニット(受動型除振装置)3と、を備えており、かかるばねユニット3を基本装置としている。
【0035】
すなわち、この除振装置1では、図3に示すように、後述する鉛直及び水平ユニット5,7等を取り外しても、トッププレート11及びベースプレート21と、ばねユニット3とからなるパッシブタイプの除振装置として、除振対象物を床51に対して除振支持することができるようになっている。
【0036】
そうして、この除振装置1では、精密機器31の鉛直方向の振動を検出するための鉛直加速度センサ(第1振動センサ)15と、精密機器31に対して鉛直方向の制御力を付加するための鉛直ボイスコイルモータ(第1アクチュエータ)25とがモジュール化された鉛直ユニット(第1制御力付加装置)5と、これを制御するためのコントロールユニット(制御装置)9とを、トッププレート11とベースプレート21との間の空間に収まるように、当該トッププレート11に対して着脱することが可能に構成されている。このように、鉛直ユニット5は、鉛直加速度センサ15と鉛直ボイスコイルモータ(以下、鉛直VCMという)25とをモジュール化したことにより、それ自体がコンパクトな構造になっている。
【0037】
そうして、鉛直方向におけるさらに大きな除振効果を得たい場合には、図4に示すように、鉛直ユニット5及びコントロールユニット9を、除振装置1の機能を拡張するための機能拡張装置として、当該除振装置1に取り付ければよく、かかる鉛直ユニット5を取り付けた状態では、コイルばね13で支持された精密機器31の鉛直方向における振動状態を鉛直加速度センサ15が検出し、それらをフィードバックして鉛直VCM25を駆動し、精密機器31の鉛直方向の振動を低減することが可能となる。
【0038】
また、この除振装置1では、精密機器31の水平方向の振動を検出するための水平加速度センサ(第2振動センサ)17と、精密機器31に対して水平方向の制御力を付加するための水平ボイスコイルモータ(第2アクチュエータ)27とがモジュール化された水平ユニット(第2制御力付加装置)7と、これを制御するためのコントロールユニット9とを、トッププレート11とベースプレート21との間の空間に収まるように、当該トッププレート11に対して着脱することが可能に構成されている。このように、水平ユニット7は、水平加速度センサ17と水平ボイスコイルモータ(以下、水平VCMという)27とをモジュール化したことにより、それ自体がコンパクトな構造になっている。
【0039】
そうして、水平方向におけるさらに大きな除振効果を得たい場合には、図5に示すように、水平ユニット7及びコントロールユニット9を、機能拡張装置として、当該除振装置1に取り付ければよく、かかる水平ユニット7を取り付けた状態では、精密機器31の水平方向における振動状態を水平加速度センサ17が検出し、それらをフィードバックして水平VCM27を駆動し、精密機器31の水平方向の振動を低減することが可能となる。
【0040】
さらに、鉛直及び水平方向共さらに大きな除振効果を得たい場合には、図1に示すように、鉛直及び水平ユニット5,7と、これらを制御するためのコントロールユニット9とを、機能拡張装置として、当該除振装置1に取り付ければよい。
【0041】
−各ユニットの配置−
次に、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9の配置及び取付構造について説明する。なお、以下の説明では、基本装置であるばねユニット3に、機能拡張装置である鉛直及び水平ユニット5,7と、これを制御するためのコントロールユニット9とを組み合わせた場合について説明するが、ばねユニット3を単独で用いる場合や、鉛直ユニット5又は水平ユニット7を組み合わせる場合の配置及び取付構造もほぼ同様である。
【0042】
この除振装置1では、図6に示すように、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9は、トッププレート11とベースプレート21との間の空間に、平面的に2行2列に配設されている。より詳しくは、ばねユニット3が図6の左上に配置され、鉛直ユニット5が当該ばねユニット3に隣接するように図6の右上に配置され、水平ユニット7が当該ばねユニット3に隣接するように図6の左下に配置され、コントロールユニット9が当該ばねユニット3に対して対角方向に位置するように図6の右下に配置されている。
【0043】
このように、4つのユニット3,5,7,9を、平面的に2行2列に配設することにより、トッププレート11とベースプレート21との間の空間を無駄なく利用して、除振装置1を平面的にコンパクトにすることができる。このことと、センサ15,17とVCM25,27とをモジュール化して鉛直及び水平ユニット5,7をコンパクトにしたこと等が相俟って、従来のアクティブタイプの除振装置が、小さいものでも、幅230mm以上、奥行き230mm以上、高さ180mm以上の寸法を通常有しているのに対し、本実施形態に係る除振装置1では、幅、奥行き及び高さをそれぞれ100mm以下に抑えたコンパクトな構造が可能となっている。
【0044】
ばねユニット3は、そのハウジング53の頂盤に形成された4つボルト孔53a,53a,…に上方(トッププレート11側)から螺合挿入された4本のボルト(図示せず)によって、トッププレート11に取り付けられている一方、そのベースブロック23に形成された4つのボルト孔(図示せず)に下方(ベースプレート21側)から螺合挿入された4本のボルトによって、ベースプレート21に取り付けられている。このように、ばねユニット3は、トッププレート11にもベースプレート21にも取り付けられていることから、かかるばねユニット3をパッシブタイプの除振装置として単独で用いる場合にも、トッププレート11とベースプレート21とが分離しないようになっている。
【0045】
また、鉛直ユニット5は、図6及び図7に示すように、その第1ハウジング35のフランジ部35c,35cに形成された2つのボルト孔35d,35dに下方から螺合挿入された2本のボルト36a,36aによって、トッププレート11に下側から取り付けられているとともに、当該第1ハウジング35を水平方向に貫通する(第1ハウジング35に形成された貫通孔35e,35eに挿通された)2本の長ボルト36b,36b,…(図6では図示省略)によって、ばねユニット3のハウジング53にも取り付けられている。このように、鉛直ユニット5は、トッププレート11に対して下側からボルト締結することができるので、パッシブタイプの除振装置に当該鉛直ユニット5を追加したい場合には、定盤41等を載置したまま当該鉛直ユニット5をトッププレート11に後付することが可能となっている。なお、鉛直ユニット5は、ベースプレート21に対しては固定されていない。
【0046】
一方、水平ユニット7は、図6及び図8に示すように、その第2ハウジング37のフランジ部に形成されたボルト孔37cに下方から螺合挿入されたボルト38aによって、トッププレート11に下側から取り付けられているとともに、当該第2ハウジング37を水平方向に貫通する4本の長ボルト38b,38b,…によって、ばねユニット3のハウジング53にも取り付けられている。このように、水平ユニット7は、トッププレート11に対して下側からボルト締結することができるので、鉛直ユニット5と同様、定盤41等を載置したまま当該水平ユニット7をトッププレート11に後付することが可能となっている。なお、水平ユニット7は、鉛直ユニット5と同様にベースプレート21に対しては固定されていない。
【0047】
コントロールユニット9は、図6に示すように、底板に形成された4つのボルト孔9a,9a,…に上方から螺合挿入された4本のボルトによって、ベースプレート21に上側から取り付けられている一方、トッププレート11に対しては固定されていない。
【0048】
なお、図6に示す例では、鉛直及び水平ユニット5,7をばねユニット3に隣接するように配置したが、後述の如くばねユニット3の当接壁部23cに当接部材70が当接する水平ユニット7以外のユニット(鉛直ユニット5、コントロールユニット9等)は、必ずしもばねユニット3に隣接させて配置する必要はない。
【0049】
次に、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9のそれぞれの構造について説明する。
【0050】
−ばねユニット−
ばねユニット3は、図9及び図10に示すように、ベースプレート21に取り付けられるベースブロック23と、上下方向軸まわりの回転に伴ってベースブロック23に対して上下に移動するレベリングブロック33と、ボールベアリングユニット63を介して当該レベリングブロック33に載置され、その上端がトッププレート11に常時接触しているコイルばね13と、下端部がベースブロック23に固定されるとともに上端にサージレスゴム73が取り付けられたセンターピン43と、コイルばね13を保護するためのハウジング53とを備えている。
【0051】
ベースブロック23は、平面視で正方形の一対の対角部を略円弧状に切り欠いたような形状を有する角柱部23aと、正方形板状のプレート部23bと、を上下に組み合わせたような形状に形成されている。このプレート部23bにおける角柱部23aの切欠部に対応する部分には上下方向に貫通する貫通孔23dが形成されており、切欠部に収容される浮上ストッパー83から上方に延びる軸部83aが、この貫通孔23dに挿入されている。
【0052】
このベースブロック23の中央部には、2つの貫通孔23d,23dに挟まれるように、これらの貫通孔23d,23dよりも大径の円形断面を有し且つ周壁にウォームねじの雌ねじが切られたネジ凹部23eが形成されている。そして、このネジ凹部23eの中央には、ベースブロック23を上下に貫通する挿通孔23fが形成されている。このネジ凹部23eには、レベリングブロック33のネジ部33aが螺合挿入される一方、この挿通孔23fにはセンターピン43が挿通されるようになっている。
【0053】
また、このベースブロック23の、切欠部が形成された一対の対角部と異なる一方の対角部には、水平ユニット7の水平VCM27の後述する当接部材70が当接する当接壁部23cが設けられている一方、他方の(ベースプレート21の1つのコーナーに位置する)対角部は、ベースプレート21を床51等に固定するためのボルト等を取り付けやすくするために、図6に示すように、平面視で略円弧状に切り欠かれている。
【0054】
上記レベリングブロック33は、その内方に上記コイルばね13の下端部が収容される有底筒状のハウジング部33bと、ウォームねじの雄ねじが切られた円柱状のネジ部33aと、を上下に組み合わせたような形状に形成されており、かかるネジ部33aをベースブロック23のネジ凹部23eに螺合挿入することで、当該ベースブロック23に回転自在に取り付けられている。
【0055】
このハウジング部33bの底部には、周方向に等間隔をあけて4つの挿入孔33c,33c,33c,33cが形成されており、かかる挿入孔33cに工具を挿入してレベリングブロック33を上下方向軸まわりに回転させると、当該レベリングブロック33がベースブロック23に対して上下に移動するようになっている。そうして、このレベリングブロック33に収容されるとともにその上端がトッププレート11に接触しているコイルばね13の弾性変形に応じて、レベリングブロック33を回転させてベースブロック23に対して上下に移動させると、コイルばね13の下端位置が調整されて、トッププレート11の高さが略一定に保たれるようになっている。このように、電動モータ等を用いた自動レベル調整ではなく、手動式のレベリング機構を採用していることも、本実施形態の除振装置1のコンパクト化に寄与している。
【0056】
なお、高さ調整は、定盤41に精密機器31が載置された状態、すなわち、コイルばね13に荷重がかかっている状態で行われるため、コイルばね13の下端とハウジング部33bの底部との摩擦が強くて手動ではレベリングブロック33を回転させ難いことから、コイルばね13の下端とハウジング部33bの底部との間には、これらの摩擦を低減してレベリングブロック33の円滑な回転を確保するために、上下一対の円環状の樹脂カバー63b,63bで複数の鋼製ボール63a,63a,…を挟み込んだボールベアリングユニット63が配設されている。また、レベリングブロック33(より正確にはハウジング部33bの底部及びネジ部33a)の中央部には、上下方向に貫通する挿通孔33dが形成されており、かかる挿通孔33dにセンターピン43が挿通されるようになっている。
【0057】
上記センターピン43は、上から、円環状のボールベアリングユニット63、レベリングブロック33の挿通孔33d、ベースブロック23の挿通孔23fの順に挿通されて、図9に示すように、その下端部に螺合されるナットによって、ベースブロック23に固定されている。また、センターピン43の上端部にはボルト頭部43aが形成されており、かかるボルト頭部43aに上記サージレスゴム73が取り付けられている。
【0058】
このサージレスゴム73は、略円筒状のゴムからなり、コイルばね13のループ内に嵌入されていて、上下方向に押圧されることによってばねループ内周面と接触し、これにより、コイルばね13の振動を減衰させたり、サージング(コイルばね13に伝わる外力振動数がばね自身の固有振動数に近付くと振幅が大きくなる現象)を抑えたりするものである。そして、このサージレスゴム73は、上述の如く、ベースブロック23に固定されたセンターピン43のボルト頭部43aに取り付けられているので、その高さが常に不変となっている。換言すると、レベリングブロック33を上下方向軸まわりに回転させることで、当該レベリングブロック33が上下に移動しコイルばね13の伸縮量が変化しても、サージレスゴム73の位置や形状(ばねループ内周面と接触状態)は何ら変化しないので、サージレスゴム73による一定の減衰量を維持することが可能となっている。
【0059】
なお、レベリングブロック33を上昇させ続けると、いずれはベースブロック23から外れて、レベリングブロック33とベースブロック23とが分離してしまうおそれがあるが、本実施形態の除振装置1では、レベリングブロック33が所定量を超えて上昇しようとすると、ボールベアリングユニット63がセンターピン43のボルト頭部43aに当接するように構成されているので、レベリングブロック33がベースブロック23から外れないようになっている。すなわち、センターピン43は、サージレスゴム73を支持するだけではなく、レベリングブロック33がベースブロック23から外れるのを抑える役割も果たしている。
【0060】
上記ハウジング53は、コイルばね13を保護するためのものであり、平面視で正方形状をなす一方、その内部に断面円形の空間を有する有頂角筒状に形成されていて、上述の如く、トッププレート11に取り付けられている。なお、ベースプレート21の1つのコーナーに位置するハウジング53の角部は、トッププレート11を定盤41に固定するためのボルト等を取り付けやすくするために、図9に示すように、平面視で略円弧状に切り欠かれている。
【0061】
このハウジング53の頂盤には、その中央に上下方向に貫通する貫通孔53bが形成されており、コイルばね13の上端部は当該貫通孔53bに挿入された状態でトッププレート11の下面に接触している。また、ハウジング53の内径はレベリングブロック33の外径よりも大きくなっていて、当該ハウジング53にその一部が収容されるレベリングブロック33の上下方向の移動を阻害しないように構成されている。換言すると、このハウジング53は、コイルばね13及びレベリングブロック33と無接触な状態で、コイルばね13によって支えられたトッププレート11の下面に取り付けられている。
【0062】
そして、ハウジング53は、上記浮上ストッパー83の軸部83aの上端部と連結されており、当該軸部83aは、定盤41に精密機器31が載置された状態では、ベースブロック23のプレート部の下面と、ベースブロック23の切欠部に収容された浮上ストッパー83との間に数ミリ程度の隙間が生じるような長さに設定されている。これにより、定盤41に精密機器31が載置された状態(コイルばね13が縮んだ状態)では、ハウジング53に連結された浮上ストッパー83とベースブロック23とが非接触であることから、コイルばね13の除振性能に何ら影響を及ぼさない一方、定盤41から精密機器31が取り除かれた状態(コイルばね13が伸びた状態)では、トッププレート11がコイルばね13によって上方に付勢されても、浮上ストッパー83がベースブロック23に当接するので、トッププレート11、ベースプレート21、ハウジング53及びベースブロック23が分離しないようになっている。
【0063】
−鉛直ユニット−
鉛直ユニット5は、精密機器31の鉛直方向の振動を検出するための鉛直加速度センサ15と、精密機器31に対して鉛直方向の制御力を付加するための鉛直VCM25と、これらを収容するための第1ハウジング35と、鉛直加速度センサ15及び鉛直VCM25を第1ハウジング35に固定するための円環状のブラケット45とを備えている。
【0064】
第1ハウジング35には、図11(a)に示すように、上方に開口する上側凹部35aと、かかる上側凹部35aの下側で下方に開口する下側凹部35bとが形成されている。図11(b)に示すように、鉛直加速度センサ15は、軸が鉛直方向を向いた状態で上側凹部35aに収納される一方、鉛直VCM25は、鉛直加速度センサ15の軸と当該鉛直VCM25の進退軸(可動子の往復動軸)とが一直線上に位置するように、下側凹部35bに収納されており、これにより、鉛直加速度センサ15と鉛直VCM25とが第1ハウジング35を介して一体化されている。このように、鉛直加速度センサ15と鉛直VCM25とが、鉛直加速度センサ15の軸と鉛直VCM25の進退軸とが一直線上に位置するように配置されているので、当該鉛直ユニット5は正確な除振制御を行うことが可能となっている。
【0065】
そうして、この鉛直加速度センサ15からトッププレート11の相対加速度(トッププレート11の振動状態)を示す信号が出力され、この信号を受けたコントロールユニット9から鉛直VCM25に制御信号が出力されて、図7に示すように、当接部材70がベースプレート21に当接することにより、除振対象物にその鉛直方向の振動を減殺するような制御力が付加される。
【0066】
次に、図12を参照して鉛直VCM25の構造を詳細に説明する。鉛直VCM25は、第1ハウジング35を介してトッププレート11に固定される固定子と、これに対し非接触状態で組み付けられて、電磁力により鉛直方向に駆動される可動子と、に分かれている。固定子は、ハウジングを兼ねて有頂円筒状に形成された下方に開口する鉄製のヨーク60と、その筒壁部60a内に同心状に収容されて、頂部60bにボルト84によってボルト留めされる円盤状の磁石64及びポールピース62と、から構成されている。
【0067】
このヨーク60の頂部60bには周方向に間隔を空けて4箇所にねじ穴が形成されていて、それぞれに軸端がねじ込まれたボルト74,74,…によって上記ブラケット45に連結されている。このブラケット45は、鉛直加速度センサ15の円筒状ケースの外周に突設されている鍔部15aと係合して、鉛直加速度センサ15をヨーク60に固定している。
【0068】
また、磁石64及びポールピース62は略同径でかつ同程度の厚みを有する比較的厚肉の円盤状とされている。ポールピース62の上端部には磁石64との間に周溝が形成されるよう段状に縮径部が形成されていて、この周溝に高減衰ゴムからなるゴム製のOリング76が嵌め込まれている。ポールピース62には、その下面略中央に開口するように円形断面の凹部62aが形成されていて、かかる凹部62aに可動子を構成するボビン78を下向きに付勢するコイルばね66が嵌挿されている。
【0069】
一方、可動子は、樹脂材からなる有底円筒状のボビン78と、その筒壁部78aに電線を巻き付けてなるコイル68と、ボビン78の底壁部78bに設けられた当接部材70と、から構成される。ボビン78は、上方に開口し、ヨーク60とは軸心が合致するように配置されていて、その筒壁部78aが磁石64及びポールピース62を非接触状態で取り囲む一方、ヨーク60の筒壁部60aによって非接触状態で取り囲まれている。
【0070】
こうして同軸状に配置されているボビン78の筒壁部78aの内周面には、ポールピース62の周溝に嵌め込まれているOリング76の外周が接触して、該ポールピース62や磁石64の外周面とボビン78の筒壁部78aの内周面との間隔を所定の大きさに保つとともに、そのボビン78の筒壁部78aの外周面とヨーク60の筒壁部60aの内周面との間隔も所定の大きさに保つようになっている。
【0071】
また、ボビン78の底壁部78bは、比較的厚肉の円盤状とされ、その下面の外周寄りの部位とヨーク60の筒壁部60aの下端面との間がシリコーンゴムのダイヤフラム(ゴム弾性体)80によって連繋されている。このダイヤフラム80は、ボビン78の底壁部78bとヨーク60の筒壁部60aとの間で全周が大きく撓むことにより、ボビン78の鉛直方向の相対移動を許容するとともに、該ボビン78を挟む両側部位が逆位相に撓むことによって、当該ボビン78の揺動を許容するようになっている。
【0072】
さらに、ボビン78の底壁部78bの上面には、ポールピース62の凹部62aに上部を嵌挿されたコイルばね66の下端が当接している。このコイルばね66は、外力の加わらない状態でもボビン78を下向きに押圧するように予圧縮されており、これにより、トッププレート11を押し上げるだけでなくそれを引き下げる向きにも制御力を発生できる。予圧縮量は、ポールピース62の下面とボビン78の底壁部78b上面との間隔で決まり、この実施形態では、レベリングブロック33によってトッププレート11の高さが略一定に保たれることから、予圧縮量も略一定に保たれるようになる。
【0073】
つまり、鉛直VCM25において可動子であるボビン78は、Oリング76及びダイヤフラム80によって固定子であるヨーク60等に対し非接触状態で保持されていて、電磁力により鉛直方向に往復動してベースプレート21とトッププレート11との間に上下方向の制御力を出力するとともに、水平方向には揺動可能に保持されている。
【0074】
また、鉛直方向に往復動するボビン78の底壁部78bには、その内周側の部位において下方に膨出するように円形の台座部78cが形成され、この台座部78cの下面略中央に開口する円形断面の凹部78dには、ベースプレート21に当接して制御力を伝えるための当接部材70が、出没可能に嵌挿されている。この当接部材70は、例えばMCナイロン等の樹脂材を円柱状に成形してその先端(図の下端)部を球面状の凸部とする一方、基端(図の上端)部には鍔部を形成したもので、その鍔部の外径が凹部78dの内径と略同径とされている。そして、台座部78cの下面には押さえ板82が重ね合わされ、これには鍔部を除いた当接部材70の外径と略同径の丸穴が空けられており、この丸穴の周縁部によって鍔部が押さえられることで、当接部材70の抜け止めがなされている。
【0075】
なお、凹部78dに配設されているコイルばね72は、ボビン78を下方に付勢するコイルばね66よりもかなりばね定数が高いことから、通常は殆ど撓まず、過大な外力によってポールピース62とボビン78が接触したときに初めて縮んで、それらがダメージを受けることを阻止するためのものである。
【0076】
以上のように、アクチュエータとして固定子と可動子とがシリコーンゴム製のダイヤフラム80で連結されている一体型の鉛直VCM25を用いることから、床51からの振動が可動子を介して伝わるのをダイヤフラム80によって抑えることができるとともに、固定子と可動子とが別体型のもの(固定子がトッププレート11に、可動子がベースプレート21にそれぞれ取り付けられるもの)とは異なり、固定子が収容された第1ハウジング35をトッププレート11に取り付けるだけで鉛直ユニット5を追加することができるので、取付作業が容易となる。
【0077】
−水平ユニット−
水平ユニット7は、精密機器31の水平方向の振動を検出するための水平加速度センサ17と、精密機器31に対して水平方向の制御力を付加するための水平VCM27と、これらを収容するための第2ハウジング37と、水平加速度センサ17を第2ハウジング37に固定するための円環状のブラケット47とを備えている。
【0078】
第2ハウジング37には、図13(a)に示すように、水平方向に開口する上側凹部37aと、かかる上側凹部37aの下側で、上側凹部37aと同じ方向に開口する下側凹部37bとが形成されている。図13(b)に示すように、水平加速度センサ17は、軸が水平方向を向いた状態で上側凹部37aに収納されて、その円筒状ケースの外周に突設されている鍔部17aと係合するブラケット47が第2ハウジング37にボルト締結されている一方、水平VCM27は、水平加速度センサ17の軸と水平VCM27の進退軸とが平行になるように、下側凹部37bに収納されて、第2ハウジング37にボルト締結されており、これにより、水平加速度センサ17と水平VCM27とが第2ハウジング37を介して一体化されている。
【0079】
そうして、この水平加速度センサ17からトッププレート11の相対加速度(トッププレート11の振動状態)を示す信号が出力され、この信号を受けたコントロールユニット9から水平VCM27に制御信号が出力されて、当接部材70がばねユニット3のベースブロック23の当接壁部23cに当接することにより、除振対象物にその水平方向の振動を減殺するような制御力が付加される。
【0080】
なお、水平VCM27は、水平VCM27のヨーク60を第2ハウジング37に固定するためのボルトが、水平加速度センサ17の円筒状ケースの外周に突設されている鍔部17aと係合するブラケット47と連結されていない点、及び、当接部材70がベースプレート21ではなくばねユニット3のベースブロック23の当接壁部23cに当接する点を除けば、鉛直VCM25とほぼ同様の構造なので説明を省略するとともに、水平VCM27を構成する各部材には鉛直VCM25を構成する各部材と同じ符合を用いている。
【0081】
ここで、振動センサとアクチュエータとは、正確な除振制御を行うために、通常振動センサの軸とアクチュエータの進退軸とが一直線上に位置するように配置されるが、本実施形態では、水平ユニット7が、トッププレート11とベースプレート21との間の空間に収まるように(水平方向に拡がり過ぎないように)、水平加速度センサ17と水平VCM27とを上下に重ねて(水平加速度センサ17の軸と水平VCM27の進退軸とが平行になるように)配置している。このように、水平加速度センサ17と水平VCM27とを配置しても、除振装置1自体をコンパクト化している本発明においては、水平加速度センサ17の軸と水平VCM27の進退軸との上下方向の間隔が狭いので、精度の高い除振制御を行うことが可能となっている。
【0082】
−コントロールユニット−
コントロールユニット9は、鉛直ユニット5を制御するための第1基盤19と、水平ユニット7を制御するための第2基盤29と、これらを保護するためのハウジング39とを備えている。
【0083】
各基盤19,29には、図14に示すように、除振装置1から独立した電源61と配線81を介して電気的に接続されており、かかる電源61から電力が供給されるようになっている。また、第1基盤19は鉛直加速度センサ15及び鉛直VCM25と、また、第2基盤29は水平加速度センサ17及び水平VCM27とそれぞれ不図示の配線を介して電気的に接続されている。そうして、第1基盤19は、電源61からの電力を鉛直加速度センサ15及び鉛直VCM25に供給する一方、鉛直加速度センサ15から除振対象物の鉛直方向の加速度に関する電気信号(具体的には電流値)が入力されるようになっている。同様に、第2基盤29は、電源61からの電力を水平加速度センサ17及び水平VCM27に供給する一方、鉛直加速度センサ15から除振対象物の水平方向の加速度に関する電気信号(具体的には電流値)が入力されるようになっている。
【0084】
これらの基盤19,29は、例えば、加速度フィードバックのアクティブ除振制御を行う場合には、各加速度センサ15,17から得られた除振対象物の加速度X′′にフィードバック制御ゲインGmを乗算し、加速度X′′を1回積分して得られる速度X′にフィードバック制御ゲインGcを乗算し、また、加速度X′′を2回積分して得られる変位Xにフィードバック制御ゲインGkを乗算して得られたフィードバック制御量Gm・X′′、Gc・X′、Gk・Xを、各ボイスコイルモータ25,27に出力するようになっている。
【0085】
また、より除振性能を高めたい場合には、図14に示すように、除振装置1から独立した、床51の振動状態を検出する第3加速度センサ(FFユニット)71を付加し、かかる第3加速度センサ71を各基盤19,29と配線91を介して電気的に接続し、そのセンサ信号に基づいて除振対象物への伝達振動を推定し、この伝達振動を打ち消すような制御振動を鉛直及び水平VCM25,27により付加するフィードフォワード制御を加えることも可能である。
【0086】
−使用形態−
以上のように構成された除振装置1を用いて、精密機器31を支持する場合、例えば、図15に示すように、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9を取り付けた除振装置1を4つ用意し、これらを用いて定盤41を4点支持するようにすれば、4つの鉛直VCM25によって鉛直方向の振動を低減するような制御力を付加することが可能となるとともに、2つ(図の左上及び右下)の水平VCM27,27によって、精密機器31のX方向の振動を低減するような制御力を、また、2つ(図の左下及び右上)の水平VCM27,27によって、精密機器31のY方向の振動を低減するような制御力それぞれを付加することが可能となる。
【0087】
また、水平方向の振動を低減する必要性が低いような場合には、例えば、図16に示すように、ばねユニット3のみの除振装置1を4つ用意し、これらを脚として用いて定盤41を4点支持するとともに、ばねユニット3、鉛直ユニット5及びコントロールユニット9を取り付けた除振装置1を中央に配置して、1つの鉛直VCM25によって鉛直方向の振動を低減するような制御力を付加することもできる。
【0088】
−効果−
本実施形態では、空気ばねに比して安価なコイルばね13を採用したばねユニット3を基本装置としていることから、高価なアクティブ除振装置を必要としないユーザーに対しては、トッププレート11とベースプレート21とばねユニット3とを備える安価なパッシブタイプの除振装置を提供することができる。
【0089】
また、ユーザーが当該ばねユニット3に鉛直又は水平方向の制御力を付加したい場合には、機能拡張装置である鉛直ユニット5又は水平ユニット7を、ばねユニット3が取り付けられているトッププレート11に取り付けることによって、鉛直又は水平方向のフィードバック制御を行うことができる。これにより、鉛直及び水平方向のいずれか一方向のフィードバック制御のみを必要とするユーザーやこれらの制御が必要になったユーザーに対しては、必要とする性能に見合った価格で、アクティブタイプの除振装置を提供することができる。
【0090】
さらに、ユーザーが当該ばねユニット3に鉛直及び水平方向の制御力を付加したい場合には、鉛直及び水平ユニット5,7の両方をトッププレート11に取り付けることによって、鉛直及び水平方向のフィードバック制御を行うことが可能になる。
【0091】
そうして、鉛直及び水平ユニット5,7は、各々加速度センサ15,17とVCM25,27とをモジュール化したことにより、それら自体がトッププレート11とベースプレート21との間の空間に収まるようなコンパクトな構造になっていることから、これらの鉛直及び水平ユニット5,7を装着しても、除振装置1全体を非常にコンパクトにできる。
【0092】
以上により、ユーザーの要求する性能を備えた、コンパクト且つ安価な除振装置1を提供することが可能となる。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0094】
上記実施形態では、トッププレート11、ベースプレート21、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9をボルト締結するようにしたが、所謂ワンタッチの嵌め込み式の連結構造を採用してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、除振装置1を4個以上用いて、精密機器31を除振支持する例を示したが、これに限らず、支持構造が不安定にならない限り、すなわち、除振装置1は3個以上であれば精密機器31を除振支持することが可能となる。
【0096】
さらに、上記実施形態では、鉛直ユニット5及び水平ユニット7とコントロールユニット9とを配線で接続したが、これに限らず、ワイヤレスとすることも可能である。
【0097】
また、上記実施形態では、ばねユニット3、鉛直ユニット5、水平ユニット7及びコントロールユニット9の4つのユニットを平面的に2行2列に配設したが、これに限らず、他のユニットを組み合わせてもよいし、組み合わせるユニットの数によっては、例えば、平面的に2行3列に配列してもよい。
【0098】
さらに、上記実施形態では、手動式のレベリング機構を採用したが、コンパクト化及び低コスト化を阻害しないのであれば、これに限らず、例えば、小型の電動モータ等を用いた自動レベル調整機構を採用してもよい。
【0099】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明は、機器の載置される定盤を基礎に対して除振支持するための除振装置等について有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 除振装置
3 ばねユニット(受動型除振装置)
5 鉛直ユニット(第1制御力付加装置)
7 水平ユニット(第2制御力付加装置)
9 コントロールユニット(制御装置)
11 トッププレート(上板)
13 コイルばね
15 鉛直加速度センサ(第1振動センサ)
17 水平加速度センサ(第2振動センサ)
21 ベースプレート(下板)
25 鉛直ボイスコイルモータ(第1アクチュエータ)
27 水平ボイスコイルモータ(第2アクチュエータ)
31 精密機器(機器)
35 第1ハウジング(ハウジング)
37 第2ハウジング(ハウジング)
41 定盤
51 床(基礎)
60 ヨーク(固定子)
62 ポールピース(固定子)
64 磁石(固定子)
68 コイル(可動子)
78 ボビン(可動子)
80 ダイヤフラム(ゴム弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤を支持する上板と、基礎に載置される下板と、当該上板と当該下板との間でこれら両板に取り付けられ、当該定盤に載置される機器を当該基礎に対してコイルばねにより除振支持する受動型除振装置と、を備えた除振装置であって、
上記機器の鉛直方向の振動を検出するための第1振動センサと、上記機器に対して鉛直方向の制御力を付加するための第1アクチュエータと、がモジュール化された第1制御力付加装置、及び/又は、上記機器の水平方向の振動を検出するための第2振動センサと、上記機器に対して水平方向の制御力を付加するための第2アクチュエータと、がモジュール化された第2制御力付加装置を、上記上板と上記下板との間の空間に収まるように、当該上板に対して着脱することが可能に構成されていることを特徴とする除振装置。
【請求項2】
請求項1記載の除振装置において、
上記制御力付加装置を制御するための制御装置を、上記上板と上記下板との間の空間に収まるように、当該下板に対して着脱することが可能に構成されていることを特徴とする除振装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の除振装置において、
上記第1制御力付加装置は、上記第1振動センサをその軸が鉛直方向を向いた状態で収容し、且つ、当該第1振動センサの下側に上記第1アクチュエータを収容するためのハウジングを有しており、
上記第1アクチュエータは、上記ハウジングを介して上記上板に固定される固定子と、この固定子に対して鉛直方向に往復動して、上記下板に当接することによって上記機器に鉛直方向の制御力を付加する可動子とを有しており、
上記固定子と上記可動子とがゴム弾性体で連結されていることを特徴とする除振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の除振装置において、
上記第2制御力付加装置は、上記第2振動センサをその軸が水平方向を向いた状態で収容し、且つ、当該第2振動センサの下側に上記第2アクチュエータを収容するためのハウジングを有しており、
上記第2アクチュエータは、上記ハウジングを介して上記上板に固定される固定子と、この固定子に対し、当該第2振動センサの軸方向と平行に往復動して、上記受動型除振装置に当接することによって上記機器に水平方向の制御力を付加する可動子とを有しており、
上記固定子と上記可動子とがゴム弾性体で連結されていることを特徴とする除振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の除振装置において、
上記受動型除振装置と、上記第1及び第2制御力付加装置と、上記制御装置とが、上記上板と上記下板との間の空間に、平面的に2行2列に配設されていることを特徴とする除振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−36924(P2012−36924A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174998(P2010−174998)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】