説明

除湿用シート

【課題】本発明の課題は、無機除湿剤を担持した除湿用シートにおいて、除湿再生を繰り返した際に高い除湿量を示す除湿用シートを提供することにある。
【解決手段】無機除湿剤が基材に担持されてなる除湿用シートにおいて、無機除湿剤が、比表面積500〜800g/m、細孔径が2〜7nmであり、5質量%水溶液のpH4.0〜7.0のシリカゲルであることを特徴とする除湿用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿再生を繰り返す除湿用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機除湿剤を用いた除湿用シートが開発されている。無機除湿剤は、有機除湿剤と違い、水分を吸着した際の寸法安定性がある。また、塩等とは違い、潮解性がないという特徴があり、安価であるために、デシカントロータ基材を始め、包装材料、押し入れやタンス用の除湿材料、壁紙や床材等の内装材料、調湿建材等に用いるのに便利な材料である。
【0003】
しかし、無機除湿剤の中で、吸湿速度の速いゼオライトは高温で再生しなければ一度吸湿した水分を吐き出すことができないという問題点があった。高温でしか再生できない除湿剤は、再生する際のエネルギーを沢山要し、コスト面・環境面において良いとは言えない(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その他の無機除湿剤であるシリカゲルはゼオライト等に比べ比較的低温で再生することができるが、除湿速度が速く、かつ短時間に除湿再生を繰り返した際の除湿量が多いことを特徴とする除湿剤は今まで開発されてこなかった(例えば、特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−48722号公報
【特許文献2】特許第4534587号公報
【特許文献3】特開2001−104744号公報
【特許文献4】特開2003−221223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、無機除湿剤を担持した除湿用シートにおいて、除湿再生を繰り返した際に高い除湿量を示す除湿用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、無機除湿剤が基材に担持されてなる除湿用シートにおいて、無機除湿剤が、比表面積500g/m以上800g/m未満、5質量%水溶液のpH4.0〜7.0のシリカゲルであることを特徴とする除湿用シートによって、解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の除湿シートでは無機除湿剤の比表面積が大きいことで、より効率的に除湿を行うことができ、また細孔径が小さいことにより短時間で空気中の多くの水分を除湿することができる。また5質量%水溶液のpHが4.0〜7.0の酸性側であることによって、除湿量が多いシートを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例及び比較例作製で作製した除湿用シートにおいて、20℃、相対湿度70%で除湿、80℃、相対湿度15%で再生した際の除湿用シートの除湿量である。無機除湿剤1gあたり1時間の除湿量を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、無機除湿剤はシリカゲルである。無機除湿剤の比表面積は500〜800g/mであり、より好ましくは600〜800g/mである。比表面積が500g/m未満の場合、所望の除湿量が得られない。比表面積が800g/m超の場合、耐久性という点で問題が発生する場合がある。なお、本発明における比表面積とは、BET法により測定された比表面積である。
【0011】
無機除湿剤の細孔径は2〜7nmであり、より好ましくは2〜5nmである。細孔径が7nmを超える場合、除湿速度が遅くなり、除湿量が低下する。細孔径が2nm未満の場合、100℃以下の低温で再生しにくいという問題が発生する。細孔径は、BET法で測定する。
【0012】
無機除湿剤の5質量%水溶液のpHは4.0〜7.0であり、より好ましくは4.0〜6.5である。pHが4.0〜7.0の場合、除湿量が多い効果が得られる。無機除湿剤の5質量%水溶液のpHは、無機除湿剤の粉体を水中に5質量%懸濁させて測定される数値を指す。
【0013】
無機除湿剤の細孔容積は、好ましくは0.3〜1.0ml/gであり、より好ましくは0.3〜0.6ml/gである。細孔容積が0.3ml/g未満の場合、空気中の水分を十分に除湿できないという問題が発生する場合がある。細孔容積が1.0ml/g超の場合、除湿速度が遅いという問題が発生する場合がある。なお、本発明において、細孔容積は、BET法で測定する。
【0014】
無機除湿剤の平均粒径は、好ましくは3〜10μmであり、より好ましくは3〜8μmである。平均粒径が10μm超になると、除湿用シートからの脱離が起きやすくなる場合がある。平均粒径が3μm未満の場合、抄紙法での担持時には歩留まりが悪くなるという問題が発生する場合がある。平均粒径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0015】
無機除湿剤の吸油量は、好ましくは80〜140g/100gであり、より好ましくは80〜90g/100gである。
【0016】
本発明の除湿用シートについて、無機除湿剤の含有量は、除湿用シートの30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がさらに好ましい。含有量が30質量%未満であると、十分な除湿量が得られない場合がある。90質量%を超えると除湿用シートから無機除湿剤が脱離する場合や、あるいは、シート形成が難しくなる場合がある。
【0017】
本発明の除湿用シートには、無機除湿剤を含有するほかに、吸湿性塩を塗工あるいは含浸しても良い。吸湿性塩としては、具体的に、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のハロゲン化金属塩、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛などの金属硫酸塩、酢酸カリウム等の金属酢酸塩、ケイ酸ナトリウム等の金属ケイ酸塩、塩酸ジメチルアミンなどのアミン塩類、オルトリン酸などのリン酸化合物、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等を挙げることができる。
【0018】
本発明の除湿用シートにおける吸湿性塩の含有量は、無機除湿剤に対して0〜100質量%が好ましい。100質量%を超えると、液だれを起こす場合がある。
【0019】
本発明の除湿用シートの製造方法は、
(I)無機除湿剤を含有する除湿用シートを形成する方法
(II)基材に無機除湿剤を塗工する方法
を挙げることができる。
【0020】
製造方法(I)において、無機吸着剤を含有する除湿用シートを作製する方法としては、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。湿式法とは、希釈した構成材料を水中に低濃度で分散させて、これを抄きあげる方法で、均一性が高い製造が可能な手法である。具体的には無機吸着剤と繊維を主体としたスラリーを調整し、これに填料、分散剤、増粘材、消泡剤、紙力増強剤、サイズ剤、凝集剤、着色材、定着剤、pH調整剤を適宜添加して抄紙機で湿式抄造して湿紙を得る。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種又は異種の抄紙機を組み合わせてなるコンビネーション抄紙機等を用いることができる。エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドライヤー、赤外方式ドライヤー等を用いて、湿紙を乾燥し、シートを得ることができる。シートの厚さを調整するためにスーパーカレンダー、熱カレンダー等を用いてもよい。
【0021】
製造方法(II)において、用いることができる基材としては、金属板、紙、板紙、多孔質フィルム、非多孔質フィルム等のフィルム、織布、乾式不織布、湿式不織布、編物等の布帛などがある。これらは単独で用いても良いし、貼り合わせ等によって積層複合化して用いても良い。またプリーツ加工、コルゲート加工、積層加工、ロールコア加工、ドーナツ加工等から選ばれる少なくとも1つの成型加工法を用いたフィルター加工が施されていてもよい。
【0022】
フィルムとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂から構成されるフィルムやアルミニウム箔、銅箔等の金属箔を使用することができる。また、多孔質フィルムとしては、パンチングメタルシート、発泡金属シート、有機粒子や無機粒子の凝集体フィルムといった無機多孔質フィルムを使用することもできる。
【0023】
製造方法(I)で使用される繊維、紙や布帛を構成する繊維としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂よりなる繊維を使用することができる。また、木材パルプ、楮、三椏、藁、ケナフ、竹、リンター、バガス、エスパルト、サトウキビ等の植物繊維、あるいはこれらを微細化したものを用いることができ、さらにセルロース再生繊維であるレーヨン繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂系繊維、シリコーン樹脂系繊維等を用いることができる。ステンレスやニッケルウール等の金属繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維等の無機繊維も用いることができる。
【0024】
本発明の除湿用シートは単層構造であっても良いし、多層構造であってもよい。
【0025】
本発明の除湿用シートの目付は、25〜300g/mであることが好ましく、40〜150g/mであることがより好ましく、50〜120g/mであることがさらに好ましい。目付が25g/m未満の場合、空気中の水分を十分除湿できないという問題が発生する場合がある。目付が300g/mを超えた場合、シートの厚みが厚くなりすぎるという問題が発生する場合がある。また、除湿用シートの厚みは30〜420μmが好ましく、さらには、40〜300μmがより好ましい。厚みが30μm未満の場合、引っ張り強度あるいは引き裂き強度が弱いという問題が発生する場合がある。厚みが420μmを超えた場合、除湿剤1gあたりの除湿量の効率が悪くなるという問題が発生する場合がある。なお、目付は除湿用シートを90℃で2時間乾燥した後の質量を測定する。
【0026】
本発明の除湿用シートは、そのまま用いてもよいが、シート強度を高めるために、別種の紙、フィルム、布帛等の基材と積層複合化させても構わない。また、カレンダー処理等によって、表面平滑性を向上させたり、厚みを調整したりしてもよい。
【0027】
本発明の除湿用シートを用いて、次のような成型加工によって、デシカントロータを製造することができる。まず、除湿用シートからハニカム状積層構造体を製造する。ハニカム状積層構造体とは、開孔を有するセル壁からなる積層構造体であって、片面段ボールからなるコルゲートハニカム状積層構造体、六角形セルからなるヘキサゴンハニカム状積層構造体、正方形セルからなるハニカム状積層構造体、三角形セルからなるハニカム積層構造体及び中空円筒状セルを集合してなるハニカム状積層構造体などが挙げられる。ここで、六角形や正方形などのセル形状は必ずしも正多角形である必要はなく、各が丸みを帯びる、辺が曲がっているなどの異形であっても構わない。片面段ボールはJIS Z 1516に記載の「外装用段ボール」に準拠して作製することができる。次いで、ハニカム状積層構造体を型抜きなどの方法で円筒型ロータ状に切りぬく方法で、デシカントロータが得られる。また、除湿用シート成仏から得られた片面段ボールを渦巻状に巻きあげて円筒型ロータ状に成型加工する方法によっても、デシカントロータを製造することができる。また、紙、布帛、フィルム、金属板等のシート基材を円筒型ロータ状に成型加工した後に、無機除湿剤を塗工する方法でも、デシカントロータを製造することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない場合、部数、百分率、比率は質量基準である。
【0029】
表1記載の無機除湿剤を使用した。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
無機除湿剤50質量部、ポリエステル繊維(商品名:テピルス(登録商標)TM04PN、帝人ファイバー株式会社製、繊度0.1dtex、繊維長3mm)26質量部及びポリエステル繊維(商品名:テピルス(登録商標)TJ04CN、帝人ファイバー株式会社製、繊度1.1dtex、繊維長5mm)17質量部、セルロース系フィブリル化繊維(商品名;セリッシュ(登録商標)KY−100G、ダイセル化学工業株式会社製)7質量部を混合し、固形分濃度1質量%のスラリーとした。抄紙機を用いて抄紙後、乾燥し、60g/mの除湿用シートを得た。
【0032】
測定法は以下の方法である。この得られた除湿用シート(20cm×15cm)を20℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿器に2分吊した後取り出し、すぐに質量を測る。その後、80℃、相対湿度15%に設定した恒温恒湿器に1分吊し、すぐに質量を測る。この操作を5回程繰り返し、その質量差をシートの除湿量とする。単位は1時間あたり、1mあたりの除湿量である。この除湿量を図1に示した。
【0033】
図1からわかるように、無機除湿剤が基材に担持されてなる除湿用シートにおいて、無機除湿剤が、比表面積500〜800g/m、細孔径2〜7nm、5質量%水溶液のpH4.0〜7.0のシリカゲルである実施例1〜4は、比表面積は500〜800g/mであるが、5質量%水溶液がpH7.0超のシリカゲルを使用している比較例1及び5質量%水溶液がpH4.0〜7.0であるが、細孔径が7nm超であるシリカゲルを使用している比較例2と比べ、除湿量が多いという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の除湿用シートは除湿量が多く、低温再生することができるのでデシカント空調機のデシカントロータとして使用できるほか、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿機用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水常散素子、全熱交換素子等の調湿素子にも利用可能である。また、包装材料、押し入れやタンス用の除湿材料、壁紙や床材等の内装材料、調湿建材にも利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機除湿剤が基材に担持されてなる除湿用シートにおいて、無機除湿剤が、比表面積500〜800g/m、細孔径が2〜7nmであり、5質量%水溶液のpH4.0〜7.0のシリカゲルであることを特徴とする除湿用シート。
【請求項2】
無機除湿剤の比表面積が600〜800g/m、細孔径が2〜5nm、5質量%水溶液のpH4.0〜6.5である請求項1記載の除湿用シート。
【請求項3】
無機除湿剤の細孔容積が0.3〜1.0ml/gである請求項1又は2記載の除湿用シート。
【請求項4】
無機除湿剤の平均粒径が3〜10μmである請求項1又は2記載の除湿用シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−200644(P2012−200644A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65881(P2011−65881)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】