説明

陽イオン感受性層を含む複合品

複合品は、表面を有する基板、基板表面に配置された陽イオン感受性物質を含む陽イオン感受性層、および基板と陽イオン感受性層との間に配置されたシリコーン層を含んでいる。陽イオンは、基板表面上の原子の全原子量の基づいて少なくとも0.1原子量パーセントの量で基板表面に存在する。シリコーン層は、陽イオンの基板から陽イオン感受性層への移動を妨げるために硬化シリコーン組成物を含む。陽イオン感受性層と基板の間へのシリコーン層の挿入は、物質中の陽イオンの過剰量での存在により過去使用できなかった基板用物質の使用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して陽イオン感受性層を含む複合品に関する。具体的には、本発明は、基板上に配置され、有機発光層となり得る陽イオン感受性層を含む複合品に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は当技術分野で広く知られている。OLEDは、画像表示や通信用途での使用と同様に従来の光源の実行可能な代替品として期待されている。OLEDは通常、もっとも基本形状で、基板、基板上に配置された陽極、陽極上に配置された正孔注入層、正孔注入層の上に配置された有機発光層、有機発光層の上に配置された陰極、および陰極の上に配置される金属、ガラスまたは他のガラス質材から形成されるバリヤー層からなる。少なくとも1個の基板およびバリヤー層は、発光層から発光された光をOLEDから漏らすために、ガラスまたは他のガラス質材から形成されている。陽極および陰極の少なくとも1個はまた透明である。
【0003】
OLEDの商品化の障害の一つに、OLEDの耐用年数の延長がある。特に、有機発光層を形成する有機発光物質は、湿気、酸素およびその他環境汚染物に曝されると、それらに敏感であり、分解してしまう。ガラスが伝統的に基板として使われてきた。ガラスは湿気、酸素およびその他環境汚染物に対し優れた不浸透性を示すが、従来のガラスはその中に存在する高レベルの陽イオンを有する。ガラスが高温および/または他の環境状態に曝されると、陽イオンは通常ガラスから浸出し、ガラスの表面上に局在化する。陽イオンは、大体ガラス表面上の原子の全原子量に基づいて約3.5原子量パーセントの量でガラス表面上に存在する。最近、特に有機発光物質は従来のガラス中に存在する陽イオンに敏感であり、そして有機発光物質の陽イオンへの感受性が有機発光物質の発光の低下を加速することがわかっている。さらに、陽イオンが例えば陽極や陰極などの導電層をショートすることがわかっている。そのようなものとして、ゼロから低レベルの陽イオンを有する高品質ガラスのみが基板のために過去使われていた。高品質ガラスは、高レベルの陽イオンを含む従来ガラスと比べて非常に高価であり、またガラス中の陽イオンの欠乏の結果、より高い融点により加工の困難性を示す。それにより、高品質ガラスの代わりに従来ガラスを使うことは費用および生産性の観点から非常に望まれるところである。
【0004】
ガラスは優れた環境障壁として機能するが、ガラス基板は、多くの場合、OLEDをより柔軟性にできるポリマー基板に代替されている。ポリマー基板は湿気、酸素およびその他環境汚染物に対し不十分な不浸透性を与える。追加の環境障壁が、例えばグラッフらにより米国特許第6,570,325号で説明されるように使われなければならない。グラッフらは、分離層(decoupling layer)を含む環境障壁を開示しているが、分離層に加えて、バリヤー層もまた必要である。これは、単に一つの層から他の層への欠陥の伝搬を妨害する分離層の使用によるためである。金属、金属酸化物、またはその他の金属ベース化合物から形成されたバリヤー層が、湿気、酸素およびその他環境汚染物に対し十分な不浸透性を有する環境障壁を提供するために必要である。陽極は環境障壁上に配置され、有機発光物質と一緒に環境から密閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,570,325号
【特許文献2】米国特許第3,419,593号
【特許文献3】米国特許第4,766,176号
【特許文献4】米国特許第5,017,654号
【特許文献5】米国特許第4,510,094号
【特許文献6】米国特許第5,496,961号
【特許文献7】米国特許第4,530,879号
【特許文献8】米国特許第4,087,585号
【特許文献9】米国特許第5,194,649号
【特許文献10】米国特許第4,324,901号
【特許文献11】米国特許第4,276,424号
【特許文献12】米国特許第4,324,901号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemistry of Materials,1998,10,531−536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠陥のため、例えばOLEDなどの陽イオン感受性層を含む複合品を提供する好機であり、それはさらに基板表面上の原子の全原子量に基づいて少なくとも0.1原子量パーセントの量で基板表面上の陽イオンを含有する基板、例えばこれまでにガラス質の物質を使用することにより経験されてきた付随する欠陥なしに、従来ガラスなど、を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面を有する基板、陽イオン感受性物質を含有し基板表面上に配置された陽イオン感受性層、および基板と陽イオン感受性層との間に配置されたシリコーン層を含んでいる複合品を提供する。陽イオンは、基板表面の原子の全原子量に基づいて少なくとも0.1原子量パーセントの量で基板表面上に存在する。シリコーン層は陽イオンの基板から陽イオン感受性層への移動を妨げるために硬化シリコーン組成物を含む。
【0009】
シリコーン層の陽イオン感受性層と基板との間への封入は、これまで物質中の陽イオン過剰量の存在により使われなかった基板用物質を使用可能にする。さらに硬化シリコーン組成物は、例えば基板表面での欠陥形成を防御するなどの他の特性を与えることができ、このようにして基板の強度を改良することとなる。硬化シリコーン組成物は、表面の形態に従い、また平坦化機能にも役立つ。本発明の複合品は、バッチ法よりも効率のいい連続法にて形成することができ、それにより複合品の製造の時間と費用を減少ことができる。最後に、シリコーン層を含有することにより、ガラスまたは他の比較的に割れやすい物質を含んでいる基板の厚さを、基板の虚弱のために以前実行可能であった厚さ以下の最小限にすることができる。シリコーン層の存在は、また最小限の厚さの基板を、複合品の柔軟性を要求する用途において有用な、初期の曲げ半径を超えて曲げることをも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の他の利点は、発明を添付の図に関連して熟考した際には、下記の詳細な記述を参照することによってより理解可能となるので、容易に理解されるであろう、ここで:
【0011】
【図1】本発明の複合品の断面側面図である;
【図2】本発明の複合品の別の実施態様の断面側面図である;
【図3】ソーダ石灰ガラスおよびソーダ石灰ガラスと各種の硬化シリコーン組成物含有シリコーン層を含む複合品について、シリコーン組成物の硬化後の各種深さで得られた二次イオン質量分析データを示すグラフである;
【図4】ソーダ石灰ガラスおよびソーダ石灰ガラスと各種の硬化シリコーン組成物含有シリコーン層を含む複合品について、シリコーン組成物の硬化後かつ窒素雰囲気中約300℃の温度で約60分間複合品のアニーリング(annealing)後の各種深さで得られた二次イオン質量分析データを示すグラフである;そして
【図5】本発明の複合品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照したとき、同じ数表示はいくつもの図をとおして対応する部分を示しており、複合品10は全般的に図1では10で表示される。複合品10は、基板表面に陽イオンを含有する基板12、基板12上に配置された陽イオン感受性層14、および基板12と陽イオン感受性層14との間に配置されたシリコーン層16を含んでいる。陽イオン感受性層14は、陽イオンに曝されると性能低下に悩まされている物質であり得る陽イオン感受性物質を含む。シリコーン層16は陽イオンの基板12から陽イオン感受性層14への移動を効果的に妨げる。そして、シリコーン層16は、先行技術の高品質ガラス中に存在する陽イオンの量に匹適する、ゼロまたは低水準の陽イオンを含んでいる。基板12から陽イオン感受性層14への陽イオンの移動が、これまで、陽イオン感受性層14とともに使用することから陽イオンを含む基板12の使用を妨げてきた。本発明の複合品10は、図5に示されているとおり有機発光ダイオード(OLED)としての使用に特に適しており、下記の複合品10のさらなる記述に関連して理解されることである。しかしながら、複合品10は、基板12、陽イオン感受性層14、およびそれら間に配置されるシリコーン層16を含む任意の物品であると理解されることになる。
【0013】
基板12はより具体的には陽イオンを含む物質からなる。陽イオンは、本明細書で使われている用語として、正電気を帯びた任意の原子または原子団である。基板12に存在する一般的な陽イオンには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、硫黄、スズ、マグネシウム、そしてアルミニウムが含まれる。陽イオンは物質全体にわたり、ひいては基板12全体にわたり存在するけれど、陽イオン感受性層14に移動する傾向にある陽イオンであるので、測定される基板12の表面上の陽イオンである。陽イオンは通常、基板12の表面上の原子の全原子量に基づいて少なくとも0.1原子量パーセントの量で、基板12の表面上に存在し、特に窒素雰囲気中300から500℃の温度で約60分間基板12をアニーリングした後は、基板12の表面上の原子の全原子量に基づいて約15原子量パーセントの量に達っし得る。実質的に、物質は、陽イオン感受性層14上の陽イオンの影響のために過去受け入れられなかった量で存在する陽イオンを有することができる。そのような高水準の陽イオンは、複合品10中のシリコーン層16の存在により本発明の複合品10中に存在可能であり、シリコーン層が陽イオンの基板12から、特に基板12表面から陽イオン感受性層14への移動を妨げるのである。
【0014】
該物質はガラス、金属、およびそれらの組合せの群から選択してもよい。基板12は、通常透明であり、かつ湿気、酸素、およびその他環境汚染物に対し優れた不浸透性を与えるガラスから通常形成される。適するガラスの具体例はソーダ石灰ガラス、ボロフロートガラス(Borofloat glass)、アルミナケイ酸ガラス、およびそれらの組合せの群から選択してもよい。しかしながら基板12はまた金属、例えばスチールまたはアルミニウムなどでもよい。
【0015】
該物質は通常陽イオンを除去するための特別な処理をされることなく、製造されている。陽イオンを除去するために過去から使われてきた特別な処理とは、高価であり、物質に、特に物質がガラスであるときは、望ましくない特性を与えてしまう。さらに具体的には、陽イオンを除去する処理に従ったガラスの融点が、処理に従っていないガラスの融点よりも、通常非常に高くなり、大体400F以上となる。特別な処理に従ったガラスのより高い融点は、基板12を所望の形状に成形または形成させるために複合品10を形成する間、より高温を必要とし、それにより、複合品10の製造費用を増大させることになる。
【0016】
基板12の厚さは対象とする用途に依存する。例えば比較的に厚い、約1ミリメートルを超える基板12は、複合品10の重量または相対柔軟性が重要でない用途で使われ得る。他の用途では、基板12の厚さは1ミリメートル以下、通常は100ミクロン未満であってよく、そのような厚さの基板は、ガラスに起因する優れた不浸透性を維持しながら、複合品10の最少重量でかつ最大柔軟性が望まれる用途に対して要望されている。1ミリメートル未満の厚さを有する相応しい基板12の具体例は、米国ニューヨーク州コーニングのコーニング社から商標名Microsheet(登録商標)で市販されており、それは約75ミクロンの厚さを有する。Microsheet(登録商標)基板12は、多くの用途の使用には不十分に薄く、壊れやくい、0.05mmほどの薄い厚さを有する。しかしながら、複合品10中に本発明のシリコーン層16が存在するために、シリコーン層16は基板12の強度を補強しかつ増強するのに役立ち、基板が使用できなかった多くの用途においてそのような薄い基板を実現可能にする。
【0017】
本発明の複合品10はさらに基板12上に配置されたシリコーン層16を含む。通常シリコーン層16は動作可能なように基板12とつながっている。シリコーン層16は、シリコーン層16を形成するために使われるシリコーン組成物中に存在する少なくとも1個の官能基の存在を介して動作可能なように基板12とつながっていてもよく、または接着層18を介して動作可能なように基板12とつながっていてもよく、両者とも下記にさらに詳細に記述される。
【0018】
シリコーン層16は硬化シリコーン組成物からなり、さらに繊維強化材を含むことができる。繊維強化材は、用いられるときは、硬化シリコーン組成物で含浸されていてよく、すなわちシリコーン層16は繊維強化材および硬化シリコーン組成物を含む単一層であってよい。しかしながら、繊維強化材は任意であり、多くの用途では省略可能であると理解される。繊維強化材をシリコーン層16に組み入れる方法は当技術分野で周知である。
【0019】
一つの実施態様では、硬化シリコーン組成物はさらにヒドロシリル化硬化シリコーン組成物として定義される。ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は、(A)シリコーン樹脂と(B)シリコーン樹脂を硬化するに十分な量の、分子あたり平均で少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物を含む。当技術分野で知られているヒドロシリル化硬化シリコーン組成物のどれでも本発明の目的に適し得る;しかし、あるヒドロシリル化硬化シリコーン組成物が他よりも適している。より具体的には、あるシリコーン樹脂(A)が他よりも適し得る。
【0020】
シリコーン樹脂(A)は通常ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を有する。シリコーン樹脂(A)は通常、RSiO1/2単位、すなわちM単位および/またはRSiO2/2単位、すなわちD単位と組み合わせて、RSiO3/2単位、すなわちT単位および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を含む共重合体であり、ここで、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、およびRはR、アルケニル基、または水素である。例えば、シリコーン樹脂はDT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂またはMDQ樹脂であり得る。本明細書で用いられる場合、用語「脂肪族不飽和を含まない」は、ヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基が脂肪族炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含まないことを意味する。
【0021】
で表わされるCからC10のヒドロカルビル基およびCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基は、より一般的には1から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基は分岐状または非分岐状構造を有し得る。Rで表わされるヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルやデシルなど;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルやメチルシクロヘキシルなど;アリール基、例えばフェニルやナフチルなど;アルカリール基、例えばトリルやキシリルなど;およびアラルキル基、例えばベンジルやフェネチルなどが挙げられる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、そして2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられる。
【0022】
シリコーン樹脂内で同じでも異なっていてもよい、Rで表わされるアルケニル基は、通常2から約10個の炭素原子、あるいは2から6個の炭素原子を有し、以下に限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、そしてオクテニルによって例示される。一つの実施態様で、Rは大部分がアルケニル基である。この実施態様では、通常、シリコーン樹脂中Rで表わされる基の、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%がアルケニル基である。ここで用いられる、R中のアルケニル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合アルケニル基のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。他の実施態様では、Rは大部分が水素である。この実施態様では、通常、シリコーン樹脂中Rで表わされる基の、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%が水素である。R中の水素のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合水素のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。
【0023】
最初の実施態様によれば、シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2)x(RSiO3/2(SiO4/2 (I)
ここで、RおよびRは上で記述され例示されているとおりであり、w、x、y、およびzはモル分率である。式(I)で表わされるシリコーン樹脂は分子あたり平均で少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する。より具体的には、下付き文字wは通常0から0.9、あるいは0.02から0.75、あるいは0.05から0.3までの値を有する。下付き文字xは通常0から0.9、あるいは0から0.45、あるいは0から0.25までの値を有する。下付き文字yは通常0から0.99、あるいは0.25から0.8、あるいは0.5から0.8までの値を有する。下付き文字zは通常0から0.85、あるいは0から0.25、あるいは0から0.15までの値を有する。また、比y+z/(w+x+y+z)は通常0.1から0.99、あるいは0.5から0.95、あるいは0.65から0.9である。さらに、比 w+x/(w+x+y+z)は通常0.01から0.90、あるいは0.05から0.5、あるいは0.1から0.35である。
【0024】
が大部分アルケニル基であるときは、式(I)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、そして (ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字は、式(I)で上述したw、x、yまたはzのいずれかに相当するモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0025】
が大部分水素であるときは、式(I)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(HMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(HMeSiO2/20.3(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.1、そして(MeSiO1/20.1(HSiO2/20.1(MeSiO3/20.4(PhSiO3/20.4
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0026】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂は、500から50,000、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(Mn)を有し、ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって測定される。
【0027】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂の25℃での粘度は、通常0.01から100,000Pa・s、あるいは0.1から10,000Pa・s、あるいは1から100Pa・sである。
【0028】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂は通常、29Si NMR測定で、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含む。
【0029】
式(I)で表わされるシリコーン樹脂の製造方法は当技術分野で広く知られており;これらの樹脂の多くは市販されている。式(I)で表わされるシリコーン樹脂は通常、例えばトルエンなどの有機溶剤中で、クロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより製造される。例えば、RSiO1/2単位およびRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式 RSiClを有する第一化合物と式 RSiCl(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)を有する第二化合物とをトルエン中で共加水分解して、塩酸水および第一と第二化合物の加水分解物であるシリコーン樹脂を形成することにより製造される。当技術分野で知られているように、塩酸水とシリコーン樹脂は分離され、シリコーン樹脂は水で洗浄して残渣の酸を除去し、シリコーン樹脂は温和な縮合触媒の存在下で加熱されてシリコーン樹脂を所望の粘度に“ボディー化(body)”する。
【0030】
必要なら、シリコーン樹脂はさらに有機溶剤中縮合触媒で処理され、ケイ素結合ヒドロキシ基の含量を減らすことができる。あるいは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH、−OC(O)CH、−N(CH、−NHCOCH3、そして−SCHなどを含有する第一または第二化合物が共加水分解してシリコーン樹脂を生じることもできる。シリコーン樹脂の特性は、第一と第二化合物のタイプ、第一と第二化合物のモル比、縮合の程度、そして製法条件に依存する。
【0031】
有機ケイ素化合物(B)は分子あたり平均で少なくとも2個のケイ素結合水素原子、あるいは分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する。一般に、シリコーン樹脂(A)中の分子あたりのアルケニル基の平均数と有機ケイ素化合物(B)中の分子あたりケイ素結合水素原子の平均数との合計が4より大きいと、架橋は起こると理解されている。硬化する前に、有機ケイ素化合物(B)はシリコーン樹脂(A)を硬化するに十分な量で存在する。
【0032】
有機ケイ素化合物(B)はさらにオルガノ水素シラン、オルガノ水素シロキサンまたはそれらの組合せとして定義されてもよい。有機ケイ素化合物(B)の構造は直鎖状、分岐状、環状、または樹脂状である。非環式ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は末端位、側鎖位または末端と側鎖の両方位に位置する。シクロシランおよびシクロシロキサンは通常3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。
【0033】
該オルガノ水素シランはモノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。Rが大部分アルケニル基であるときは、本発明の目的に適したオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、そしてポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられる。Rが大部分水素であるときは、本発明の目的に適したオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、そしてPhSi(CHCH=CH
ここでMeはメチルであり、Phはフェニルであり、およびViはビニルである。
【0034】
該オルガノ水素シランはまた以下の式を有し得る:
HRSi−R−SiRH (II)
ここで、Rは上述され例示されているとおりであり、およびRは脂肪族不飽和を含まない、次の構造から選ばれる式を有するヒドロカルビル基である:
【0035】
【化1】

【0036】
ここで、gは1から6である。
【0037】
式(II)(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)を有するオルガノ水素シランの具体例として、以下に限定されないが、次の構造から選ばれる式を有するオルガノ水素シランが挙げられる:
【0038】
【化2】

【0039】
該オルガノ水素シランの製造方法は当技術分野では知られている。例えば、オルガノ水素シランはグリニャール試薬とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応より製造される。特に、式HRSi−R−SiRHを有するオルガノ水素シランは、式Rを有するアリールジハライドをエーテル中マグネシウムで処理して相当するグリニャール試薬を製造し、そして該グリニャール試薬を、式HR2SiClを有するクロロシランで処理することにより製造される。ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである。
【0040】
該オルガノ水素シロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンである。Rが大部分水素であるときの有機ケイ素化合物(B)として使用に適するオルガノシロキサンの例には、以下に限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、そしてPhSi(OSiMeH)
ここで、Meはメチルであり、そしてPhはフェニルである。
【0041】
が大部分アルケニル基であるときに本発明の目的に適するオルガノ水素シロキサンの具体例として、以下に限定されないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、そしてHMeSiO1/2単位、MeSiO1/2単位とSiO4/2単位(ここで、Meはメチルである)を含む樹脂が挙げられる。
【0042】
該オルガノ水素シロキサンはまたオルガノ水素ポリシロキサン樹脂でもよい。オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は通常、RSiO1/2単位、すなわちM単位および/またはRSiO2/2単位、すなわちD単位と組み合わせて、RSiO3/2単位、すなわちT単位、および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を含有する共重合体である(ここで、Rは上述され例示されているとおりである)。例えば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂はDT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂である。
【0043】
で表わされる基はRまたは少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基のいずれかである。Rで表わされるオルガノシリルアルキル基の例として、以下に限定されないが、次の構造から選ばれる式を有する基が挙げられる:
【0044】
【化3】

【0045】
―CHCHSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMePhH、−CHCHSiMePhH、−CHCHSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiMeH、−CHCHSiMePhOSiMePhH、そして−CHCHSiMePhOSiPh(OSiMePhH)
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、および下付き文字nは2から10までの値を有する。通常、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂中においてRで表わされる基の少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基である。ここで用いられている、R中のオルガノシリルアルキル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素結合オルガノシリルアルキル基のモル数の該樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を乗じたものとして定義される。
【0046】
該オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は通常次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2)x(RSiO3/2(SiO4/2 (III)
ここで、R、R、w、x、y、およびzはそれぞれ上述され例示されているとおりである。
【0047】
上記の式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、そして
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、および括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式において、単位の順序は本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0048】
オルガノ水素ポリシロキサン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、そして
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、および括弧の外の下付き数字はモル分率を示す。前述の式において、単位の順序は本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0049】
式(III)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、(a)上記式(I)で表わされる式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
を有するシリコーン樹脂および(b)分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子かつ1,000未満の分子量を有する有機ケイ素化合物を含む反応混合物を、(c)ヒドロシリル化触媒および任意に(d)有機溶剤の存在下で、反応させて製造することができる。ここで、R、R、w、x、y、そしてzはそれぞれ上述され例示されているとおりであり、ただしシリコーン樹脂(a)は分子あたり平均で少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、(b)中のケイ素結合水素原子の(a)中のアルケニル基に対するモル比が1.5から5までである。シリコーン樹脂(a)は、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物を形成するための成分(A)として用いられる具体的なシリコーン樹脂と同じでも、異なっていてもよい。
【0050】
上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子を有する。あるいは、有機ケイ素化合物(b)は分子あたり平均で2から3個のケイ素結合水素原子を有する。また上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は通常1,000未満、あるいは750未満、あるいは500未満の分子量を有する。有機ケイ素化合物(b)はさらに、Rについて上述され例示されている、ヒロドカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基(いずれも脂肪族不飽和を含まない)の群から選ばれるケイ素結合有機基を含む。
【0051】
有機ケイ素化合物(b)はオルガノ水素シランまたはオルガノ水素シロキサンであり、それぞれ上記で詳細に定義されかつ例示されている。有機ケイ素化合物(b)はさらに、単一有機ケイ素化合物または2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物でもよく、各ケイ素化合物は上述のとおりである。例えば、有機ケイ素化合物(B)は単一オルガノ水素シラン、二つの異なるオルガノ水素シランの混合物、単一オルガノ水素シロキサン、二つの異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物である。有機ケイ素化合物(b)中ケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(a)中のアルケニル基に対するモル比は通常、1.5から5まで、あるいは1.75から3まで、あるいは2から2.5までである。
【0052】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムそしてイリジウム)または白金族金属含有化合物を含む周知の任意のヒドロシリル化触媒であってよい。好ましくは、白金族金属はヒドロシリル化反応での高活性度に基づいて、白金である。
【0053】
(c)に適する具体的ヒドロシリル化触媒として、米国特許第3,419,593号でウィリングにより開示されたクロロ白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が挙げられる。該米国特許は参照することによりここに援用される。このタイプの触媒はクロロ白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0054】
ヒドロシリル化触媒はまた、白金族金属を表面に有する固体担体を含む担持型ヒドロシリル化触媒でもよい。担持触媒は、好都合なことに式(III)によって表されるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂から、例えば反応混合物をろ過することにより、分離することができる。担持触媒の例として、以下に限定されないが、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウム、そしてアルミナ上のルテニウムが挙げられる。
【0055】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。通常、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との組み合せた重量に基づいて、0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは1から500ppmの白金族金属、あるいは5から150ppmの白金族金属を与えるのに十分な濃度である。白金族金属0.1ppm以下では、反応速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属の使用は、反応速度の相当な増加をもたらすことはなく、よって非経済的である。
【0056】
有機溶剤(d)は少なくとも1種の有機溶剤である。有機溶剤(d)は、本方法の条件下でシリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、または得られたオルガノ水素ポリシロキサン樹脂とは反応することなく、かつ成分(a)、(b)およびオルガノ水素ポリシロキサンと混和性である、任意の非プロトン性または両性非プロトン性有機溶剤であってよい。
【0057】
本発明の目的に適する有機溶剤(d)の例として、以下に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンやドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンやシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;そしてハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンやクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤(d)は、単一有機溶剤または2種以上の異なる有機溶剤を含む混合物でもよく、各有機溶剤は上述のとおりである。有機溶剤(d)の濃度は、反応混合物の合計量に基づいて、通常0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0058】
式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を形成する反応は、ヒドロシリル化反応に適する任意の標準反応器で行うことができる。適する反応器にはガラスまたはテフロン(登録商標)・ライニング・ガラス反応器が挙げられる。好ましくは、反応器には撹拌機などの攪拌手段が備え付けられている。また、好ましくは、反応は湿分の不存在下窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中で行われる。
【0059】
シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、ヒドロシリル化触媒(c)、そして、任意に、有機溶剤(d)は任意の順序で混合される。通常、有機ケイ素化合物(b)とヒドロシリル化触媒(c)が、シリコーン樹脂(a)および任意で有機溶剤(c)を導入する前に、混合される。該反応は通常0から150℃までの温度、あるいは室温(約23±2℃)から115℃までの温度で行われる。温度が0℃未満であると、反応速度は通常非常に遅い。反応時間は、例えばシリコーン樹脂(a)や有機ケイ素化合物(b)の構造および温度などの複数因子に依存する。反応時間は、室温(約23±2℃)から150℃までの温度で、通常1から24時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。基板上でのシリコーン層の形成中に、シリコーン組成物が、典型的には、各種の公知の方法によって基板に塗布され、その後、反応が上記に説明したとおり行われると理解されることになる。
【0060】
式(III)で表わされるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は単離または精製せずに使用することができ、またオルガノ水素ポリシロキサン樹脂はほとんどの有機溶剤(d)から蒸発の従来法により分離することができる。例えば、反応混合物は減圧下で加熱される。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述された担持触媒であれば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は反応混合物をろ過することにより、ヒドロシリル化触媒(c)から容易に分離することができる。しかしながら、ヒドロシリル化触媒はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と混ざって残存することもあり、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することができる。
【0061】
有機ケイ素化合物(B)は単一有機ケイ素化合物または2種以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であり、各有機ケイ素化合物は上述されたとおりである。例えば、有機ケイ素化合物(B)は単一オルガノ水素シラン、二種の異なるオルガノ水素シランの混合物、単一オルガノ水素シロキサン、二種の異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物である。特に、有機ケイ素化合物(B)は、有機ケイ素化合物(B)の合計重量に基づいて、少なくとも0.5%(w/w)、あるいは少なくとも50%(w/w)、あるいは少なくとも75%(w/w)の量で式(III)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と、さらにオルガノ水素シランおよび/またはオルガノ水素シロキサン(後者はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と異なる)を含む有機ケイ素化合物(B)とを含む混合物でもよい。
【0062】
有機ケイ素化合物(B)の濃度はシリコーン樹脂(A)を硬化(架橋)するために十分な濃度である。有機ケイ素化合物(B)の正確の量は、所望の硬化程度に依存する。有機ケイ素化合物(B)の濃度は通常、シリコーン樹脂(A)中のアルケニル基の1モルあたり、0.4から2モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.8から1.5モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.9から1.1モルのケイ素結合水素原子を提供するに十分な濃度である。
【0063】
ヒドロシリル化触媒(C)には、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)との反応を促進する少なくとも1種のヒドロシリル化触媒が挙げられる。一つの実施態様では、ヒドロシリル化触媒(C)はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を製造するための上述のヒドロシリル化触媒(C)と同じであってよい。さらに、ヒドロシリル化触媒(C)はまた、熱可塑性樹脂中に封止された白金族金属を含むマイクロカプセル化白金族金属含有触媒でもある。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびそれの製造方法は、米国特許第4,766,176号、その明細書で引用されている参考文献および米国特許第5,017,654号で例示されているとおり、当技術分野では広く知られている。ヒドロシリル化触媒(C)は単一触媒または2種以上の異なる触媒(少なくとも一つの特性、例えば構造、形、白金族金属触媒、錯体の配位子、そして熱可塑性樹脂などで異なる)を含む混合物である。
【0064】
他の実施態様では、ヒドロシリル化触媒(C)は少なくとも1種の光活性化ヒドロシリル化触媒であってよい。光活性化ヒドロシリル化触媒は、150から800nmの波長を有する放射に曝されると、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)のヒドロシリル化を触媒することのできる任意のヒドロシリル化触媒である。光活性化ヒドロシリル化触媒は、周知の白金族金属または白金族金属含有化合物を含む任意のヒドロシリル化触媒であってよい。白金族金属には白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムが含まれる。通常白金族金属は、ヒドロシリル化反応での高活性化に基づいて、白金である。本発明のシリコーン組成物で使用される格別の光活性化ヒドロシリル化触媒の適合性は、所定の実験により容易に決定され得る。
【0065】
本発明の目的に適する光活性化ヒドロシリル化触媒の具体例として、以下に限定されないが、白金(II)β−ジケトナート錯体、例えば白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘキサンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘプタンジオアート)、白金(II)ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオアート)、白金(II)ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオアート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオアート)、など;(η−シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、例えば(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ−Cp)トリメチル白金や(トリメチルシリル−Cp)トリメチル白金など、ここでCpはシクロペンタジエニルを表す;トリアゼンオキシド−遷移金属錯体、例えばPt[CNNNOCH、Pt[p−CN−CNNNOC11、Pt[p−HCOCNNNOC11、Pt[p−CH(CH−CNNNOCH、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CN−C4NNNOC11、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CHO−CNNNOCH、[(CP]Rh[p−CN−CNNNOC11]、そしてPd[p−CH(CHNNNOCHなど(ここで、xは1,3,5,11または17である);(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体、例えば(η−1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η−1,3,5,7−シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η−2,5−ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−ジメチルアミノフェニル)白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−アセチルフェニル)白金、そして(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−トリフルオロメチルフェニル)白金などが挙げられる。好ましくは、光活性化ヒドロシリル化触媒は白金(II)β−ジケトナート錯体であり、そして、より好ましくは、触媒は白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)である。ヒドロシリル化触媒(C)は単一光活性化ヒドロシリル化触媒または2種以上の異なる光活性化ヒドロシリル化触媒を含む混合物である。
【0066】
光活性ヒドロシリル化触媒を製造する方法は当技術分野では広く知られている。例えば、白金(II)β−ジケトナートの製造法はグオらによって報告されている(Chemistry of Materials,1998,10,531−536)。(η−シクロペンタジエニル)−トリアルキル白金錯体の製造法は米国特許第4,510,094号で開示されている。トリアゼンオキシド−遷移金属錯体の製造法は米国特許第5,496,961号で開示されている。そして、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体の製造方法は米国特許第4,530,879号で教示されている。
【0067】
ヒドロシリル化触媒(C)の濃度はシリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)の付加反応を触媒するために十分な濃度である。ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)と有機ケイ素化合物(B)の合わされた重量に基づいて、通常0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは0.5から100ppmの白金族金属、あるいは1から25ppmの白金族金属を与えるに十分な濃度である。
【0068】
任意に、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は、さらに(D)次の群から選ばれる式を有するシリコーンラバーを含む:
(i)RSiO(RSiO)SiR;および
(ii)RSiO(RSiO)SiR
ここで、RおよびRは上記に定義され例示されているとおりであり、RはRまたは−Hであり、下付き文字aおよびbは、それぞれは1から4まで、2から4まで、または2から3までの値を有し、かつw、x、y、およびzもまた上記で定義され例示されているとおりであり、ただしシリコーン樹脂とシリコーンラバー(D)(i)それぞれは分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(ii)は分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有し、およびシリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比が0.01から0.5である。
【0069】
成分(D)(i)として使用に適するシリコーンラバーの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
ViMeSiO(MeSiO)SiMeVi、ViMeSiO(PhSiO)SiMeVi、そしてViMeSiO(PhMeSiO)SiMeVi、
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字aは1から4までの値を有する。シリコーンラバー(D)(i)は単一シリコーンラバーまたは2種以上の異なるシリコーンラバーを含む混合物で、各シリコーンラバーは(D)(i)の式を満す。
【0070】
シリコーンラバー(D)(ii)として使用に適するシリコーンラバーの具体的例として、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
HMeSiO(MeSiO)SiMeH、HMeSiO(PhSiO)SiMeH、HMeSiO(PhMeSiO)SiMeH、そしてHMeSiO(PhSiO)(MeSiO)SiMeH、
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ下付き文字bは1から4までの値を有する。成分(D)(ii)は単一シリコーンラバーまたは2種以上の異なるシリコーンラバーを含む混合物であってよく、各シリコーンラバーは(D)(ii)の式を満たす。
【0071】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01から0.5、あるいは0.05から0.4、あるいは0.1から0.3である。
【0072】
シリコーンラバー(D)が(D)(i)であるときは、有機ケイ素化合物(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(i)中のケイ素結合アルケニル基のモル数の合計に対する有機ケイ素化合物(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が通常0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となるほどである。さらに、シリコーンラバー(D)が(D)(ii)であるときは、有機ケイ素化合物(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基のモル数に対する有機ケイ素化合物(B)およびシリコーンラバー(D)(ii)中のケイ素結合水素原子の合計モル数の比が通常0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となるほどである。
【0073】
ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を含有するシリコーンラバーの製造法は当技術分野では広く知られており;それら化合物の多くは市販されている。
【0074】
本発明の他の実施態様では、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は(A’)ラバー変性シリコーン樹脂と(B)有機ケイ素化合物との、(C)ヒドロシリル化触媒の触媒量の存在下での反応生成物を含む。ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、シリコーン樹脂(A)と次の式を有するシリコーンラバー(D)(iii):
SiO(RSiO)SiR、RSiO(RSiO)SiR
(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりであり、cおよびdはそれぞれ4から1000まで、あるいは10から500まで、あるいは10から50までの値を有する)とを、ヒドロシリル化触媒(c)および任意に有機溶剤の存在下で反応させることにより製造してもよい。ただし、シリコーン樹脂(A)が分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(iii)が分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有し、かつシリコーン樹脂(A)中ケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5である。有機溶剤が存在するときは、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は有機溶剤に混和し、沈澱や懸濁を形成しない。
【0075】
シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)、ヒドロシリル化触媒(c)および有機溶剤は任意の順序で混合してもよい。通常、シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)および有機溶剤が、ヒドロシリル化触媒(c)の導入前に混合される。
【0076】
該反応は、通常、室温(約23±2℃)から150℃まで、あるいは室温から100℃までの温度で行われる。反応時間は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(iii)の構造ならびに温度を含むいくつかの因子に依存する。該成分は、通常、ヒドロシリル化反応を完了するに十分な時間の間反応させられる。このことは、シリコーンラバー(D)(iii)中にあらかじめ存在するケイ素結合水素原子の少なくとも95モル%、あるいは少なくとも98モル%、あるいは少なくとも99モル%がヒドロシリル化反応で消費されるまで、該成分が典型的には反応するのが可能となることを意味し、それは、FTIRスペクトロメトリーによって測定される。反応時間は通常、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で、0.5から24時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。基板上でのシリコーン層の形成中に、シリコーン組成物は通常各種の公知の方法にて基板に塗布され、その後、反応が上記に説明したとおり行われると理解される。
【0077】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01から0.5まで、あるいは0.05から0.4まで、あるいは0.1から0.3までである。
【0078】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度はシリコーン樹脂(A)のシリコーンラバー(D)(iii)への付加反応を触媒するに十分な濃度である。通常ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は該樹脂と該ラバーの合わさった重量に基づいて、0.1から1000ppmの白金族金属を提供するに十分な濃度である。
【0079】
有機溶剤の濃度は通常、反応混合物の合計量に基づいて、0から95%(w/w)、あるいは10から75%(w/w)、あるいは40から60%(w/w)である。
【0080】
ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、単離または精製せずに使用することができ、またラバー変性シリコーン樹脂(A’)はほとんどの溶剤から従来的な蒸発方法により分離することができる。例えば、反応混合物は減圧下で加熱されてもよい。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述した担持触媒である場合、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)は、反応混合物をろ過することにより容易にヒドロシリル化触媒(c)から分離することができる。しかしながら、ラバー変性シリコーン樹脂(A’)がラバー変性シリコーン樹脂(A’)を製造するために使われたヒドロシリル化触媒(c)から分離されないときは、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することもできる。
【0081】
本発明のヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は当技術分野で知られている追加成分を含むことができる。追加成分の例としては、以下に限定されないが、ヒドロシリル化触媒抑制剤、例えば3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン、そしてトリフェニルホスフィンなど;接着促進剤、例えば米国特許第4,087,585号および同第5,194,649号で教示されている接着促進剤など;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤;流動調節添加剤;および希釈剤、例えば有機溶剤や反応性希釈剤などが挙げられる。抑制剤は、基板上のシリコーン層を形成する間シリコーン組成物中で特に有用である。抑制剤は、樹脂、有機ケイ素化合物、および触媒が一緒に混合された後シリコーン組成物の硬化を制御することを可能にする。抑制剤は、シリコーン組成物がゲル化または最終的に硬化する前に、基板に塗布することができるのに十分な作業時間を可能にする。
【0082】
ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物の代替として、縮合硬化シリコーン組成物もまた本発明のシリコーン組成物に適している。
【0083】
縮合硬化シリコーン樹脂組成物は、通常、ケイ素結合ヒドロキシ基またはケイ素結合加水分解性基を有するシリコーン樹脂(A”)、および任意にケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤(B’)、および任意に縮合触媒(C’)の反応生成物を含む。シリコーン樹脂(A”)は、通常、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、Tおよび/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0084】
縮合硬化シリコーン組成物は当技術分野で知られている任意の縮合硬化シリコーン組成物であってよい。しかしながら、特定の縮合硬化シリコーン組成物は特に本発明の目的に適している。一つの実施態様によれば、シリコーン樹脂(A”)は次式を有する:
(RSiO1/2w’(RSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’ (IV)
(ここで、Rは上で定義され例示されているとおりであり、RはR、−H、−OH、または加水分解性基であり、かつw’は0から0.8、好ましくは0.02から0.75、そしてより好ましくは0.05から0.3であり、x’は0から0.95、好ましくは0.05から0.8、そしてより好ましくは0.1から0.3であり、y’は0から1、好ましくは0.25から0.8、そしてより好ましくは0.5から0.8であり、およびz’は0から0.99、好ましくは0.2から0.8、そしてより好ましくは0.4から0.6であり、かつシリコーン樹脂(A”)は分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有する)。本明細書で使われている、用語「加水分解性基」とは、ケイ素結合基が室温(約23±2℃)から100℃までの任意の温度で、数分、例えば30分以内で、触媒の不存在下、水と反応してシラノール(Si−OH)基を形成することを意味する。Rで表わされる加水分解性基の例としては、以下に限定されないが、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、そして−ONH、(ここで、RはCからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビル基である)が挙げられる。
【0085】
で表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は通常1から8個の炭素原子、あるいは3から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐状または非分岐状構造を有する。Rで表わされるヒドロカルビル基の例として、以下に限定されないが、非分岐状または分岐状アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、そしてオクチルなど;シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、そしてメチルシクロヘキシルなど;フェニル;アルカリール、例えばトリルそしてキシリルなど、アラルキル、例えばベンジルそしてフェネチルなど;アルケニル、例えばビニル、アリル、そしてプロペニルなど;アリールアルケニル、例えばスチリルなど;そしてアルキニル、例えばエチニルそしてプロピニルなどが挙げられる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、そしてジクロロフェニルなどが挙げられる。
【0086】
通常、シリコーン樹脂中の基Rの少なくとも5モル%、あるいは少なくとも15モル%、あるいは少なくとも30モル%は、水素、ヒドロキシまたは加水分解性基である。ここで使われている、R中の基のモル%とは、シリコーン樹脂(A”)中のR基の全モル数に対するシリコーン樹脂(A)中のケイ素結合基のモル数の比に、100を乗じたものと定義される。
【0087】
シリコーン樹脂(A”)から形成される硬化シリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する硬化シリコーン樹脂が挙げられる:
(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(MeSiO1/20.8(SiO4/20.2、(MeSiO3/20.67(PhSiO3/20.33、(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.40(PhSiO2/20.1(PhMeSiO2/20.05、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、そして(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.5
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示し、下付き文字nはシリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有するようになる値である。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【0088】
上記で説明したとおり、式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)は通常500から50,000までの数平均分子量(M)を有する。あるいは、シリコーン樹脂(A”)は少なくとも300、あるいは1,000から3,000のMを有してもよい。ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって測定される。
【0089】
シリコーン樹脂(A”)の25℃での粘度は通常0.01Pa・sから固体、あるいは0.1から100,000Pa・s、あるいは1から1,000Pa・sである。
【0090】
式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)の製造方法は当技術分野で広く知られており;それら樹脂の多くが市販されている。式(IV)で表わされるシリコーン樹脂(A”)は通常、例えばトルエンなどの有機溶剤中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することにより製造される。例えば、RSiO1/2単位およびRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式RSiClを有する第一化合物と式RSiClを有する第二化合物とをトルエン中で共加水分解することにより製造できる(ここで、RおよびRは上述され例示されているとおりである)。共加水分解プロセスは、ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物に関して上に記載されている。共加水分解反応物はさらに架橋可能基の量および粘度を制御するために所望の程度にボディー化することができる。
【0091】
式(IV)のQ単位はシリコーン樹脂(A”)中でバラバラの粒子形状であってよい。粒経は通常1nmから20μmである。これらの粒子の例として、限定されないが、直径15nmのシリカ(SiO4/2)粒子が含まれる。
【0092】
縮合硬化シリコーン組成物はさらに無機充填剤、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、そしてマイカなどを含有することができる。複合品の使用対象に依存して、充填剤は好ましくは可視光の波長以下の粒経を有する。さらに、充填剤が使用されるとき、好ましくはシリコーン組成物を基板に塗布する間またはシリコーン組成物を硬化する間に粒子の凝集を防ぐための適切な措置が講じられる。
【0093】
他の実施態様では、縮合硬化シリコーン組成物はラバー変性シリコーン樹脂(A”’)および他の任意成分との反応生成物を含む。ラバー変性シリコーン樹脂(A”’)は、(i)式 (RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 を有するシリコーン樹脂および(ii)上記(i)の加水分解性前駆体から選ばれる有機ケイ素化合物と、(iii)式 RSiO(RSiO)SiR を有するシリコーンラバーとを、水、(iv)縮合触媒および(v)有機溶剤の存在下で反応させることにより製造させてもよく、ここで、RおよびRは上で定義され例示されているとおりであり、RはRまたは加水分解性基であり、mは2から1,000まで、あるいは4から500まで、あるいは8から400までであり、w、x、yおよびzは上で定義され例示されているとおりであり、かつ、シリコーン樹脂(i)は分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基を有し、シリコーンラバー(iii)は分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合加水分解性基を有し、そしてシリコーン樹脂(i)中のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンラバー(iii)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01から1.5、あるいは0.05から0.8、あるいは0.2から0.5である。
【0094】
通常、シリコーン樹脂(i)中の基Rの少なくとも5モル%、あるいは少なくとも15モル%、あるいは少なくとも30モル%がヒドロキシまたは加水分解性基である。
【0095】
シリコーン樹脂(i)は通常少なくとも300、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(M)を有する。ここで分子量は、低角度レーザー光散乱検知器、または屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いたゲル透過性クロマトグラフィーによって測定される。
【0096】
シリコーン樹脂(i)から形成される硬化シリコーン樹脂の具体例として、以下に限定されないが、次の式を有する硬化シリコーン樹脂が挙げられる:
(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、そして(PhSiO3/20.3(SiO4/20.1(MeSiO2/20.2(PhSiO2/20.4
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外の下付き数字はモル分率を示し、下付き文字nはシリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有するようになる値である。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。シリコーン樹脂(i)は単一シリコーン樹脂または2種以上の異なるシリコーン樹脂を含むる混合物であってよく、各シリコーン樹脂は指定の式を有する。
【0097】
ここで使われている、用語「加水分解性前駆体」は、シリコーン樹脂(i)の製造用の開始物質(前駆体)として使用に適する加水分解性基含有シランを示す。加水分解性前駆体(ii)は式 RSiX、RSiX、RSiX、そしてSiX(ここで、R、R、およびXは上で定義され例示されているとおりである)によって表わされてよい。
【0098】
加水分解性前駆体(ii)の具体例として、以下に限定されないが、式: MeViSiCl、MeSiCl、MeSi(OEt)、PhSiCl、MeSiCl、MeSiCl、PhMeSiCl、SiCl、PhSiCl、PhSi(OMe)、MeSi(OMe)、PhMeSi(OMe)、そしてSi(OEt) (ここで、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルである)を有するシランが挙げられる。
【0099】
シリコーンラバー(iii)の具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
(EtO)SiO(MeSiO)55Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)16Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)386Si(OEt)、そして(EtO)MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)(ここで、Meはメチルであり、Etはエチルである)。
【0100】
該反応は、通常、室温(約23±2℃)から180℃まで、あるいは室温から100℃までの温度で行われる。
【0101】
反応時間は、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)の構造ならびに温度などを含むいくつかの因子に依存する。該成分は通常縮合反応を完了するに十分な時間の間反応させられる。このことは、シリコーンラバー(iii)中に元々存在するケイ素結合加水分解性基の少なくとも95モル%、あるいは少なくとも98モル%、あるいは少なくとも99モル%が、縮合反応で消費されるまで、該成分が反応することが可能であることを意味し、それは、29Si NMRスペクトロメトリーによって測定される。反応時間は通常、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で、1から30時間である。最適な反応時間は所定の実験により決定され得る。基板上でのシリコーン層の形成中に、シリコーン組成物は通常各種の公知の方法にて基板に塗布され、その後、反応が上記に説明したとおり行われると理解される。
【0102】
適する縮合触媒(iv)は下記に詳細に記述され、適する有機溶剤(v)は上記のラバー変性シリコーン樹脂(A’)との関連で上述されている。縮合触媒(iv)の濃度はシリコーン樹脂(i)とシリコーンラバー(iii)との縮合反応を触媒するに十分は濃度である。通常、縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)の重量に基づいて、0.01から2%(w/w)、あるいは0.01から1%(w/w)、あるいは0.05から0.2%(w/w)である。有機溶剤(v)の濃度は、通常、反応混合物の合計重量に基づいて、10から95%(w/w)、あるいは20から85%(w/w)、あるいは50から80%(w/w)である。
【0103】
反応混合物中の水の濃度は有機ケイ素化合物中の基Rの性質およびシリコーンラバー中のケイ素結合加水分解性基の性質に依存する。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含有するときは、水の濃度はシリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)中の加水分解性基の加水分解をもたらすに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、通常、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)組合せ中の加水分解性基1モルあたり、0.01から3モル、あるいは0.05から1モルまでである。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含有しないときは、ほんの微量の、例えば、100ppmの水が反応混合物に要求される。微量の水は通常は反応物および/または溶剤中に存在している。
【0104】
上記に説明されたとおり、縮合硬化シリコーン組成物はさらに架橋剤(B’)の反応生成物を含む。架橋剤(B’)は式 RSiX4−q (ここで、RはCからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基、そしてqは0または1である)を有する。Rで表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基、ならびにXで表わされる加水分解性基は、上述され例示されているとおりである。
【0105】
架橋剤(B’)の具体例として、以下に限定されないが、アルコキシシラン、例えばMeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、そしてSi(OCなど;有機アセトキシシラン、例えばCHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、そしてCH=CHSi(OCOCHなど;有機イミノキシシラン、例えばCHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCH、そしてCH=CHSi[O−N=C(CH)CHCHなど;有機アセトアミドシラン、例えばCHSi[NHC(=O)CHそしてCSi[NHC(=O)CHなど;アミノシラン、例えばCHSi[NH(s−C)]そしてCHSi(NHC11など;有機アミノキシシランが挙げられる。
【0106】
架橋剤(B’)は単一シランまたは2種以上の異なるシランの混合物でもよく、各シランは上述されたとおりである。また、トリ−およびテトラ−官能性シランの製造方法はこの技術分野では広く知られており;それらシランの多くは市販されている。
【0107】
架橋剤(B’)が使われるときは、縮合硬化シリコーン組成物の形成前のその濃度は、縮合硬化性シリコーン樹脂を硬化(架橋)するに十分な濃度である。架橋剤(B’)の正確な量は所望の硬化度に依存し、その硬化度は、一般に、シリコーン樹脂(A”)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基のモル数に対する、架橋剤(B’)中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比率が増すにつれて、増加する。通常、架橋剤(B’)の濃度は、シリコーン樹脂(A”)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基1モルに対し、0.2から4モルのケイ素結合加水分解性基を与えるに十分な濃度である。架橋剤(B’)の最適量は所定の実験で容易に決定され得る。
【0108】
縮合触媒(C’)は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進して、Si−O−Si結合を形成するに通常使用されている任意の縮合触媒であってよい。縮合触媒の例としては、以下に限定されないが、アミンそしてカルボン酸との鉛、スズ、亜鉛および鉄の錯体がある。特に、縮合触媒(C’)は、スズ(II)およびスズ(IV)化合物、例えばスズジラウラート、スズジオクトエート、そしてテトラブチルスズなど;およびチタニウム化合物、例えばチタニウムテトラブトキシドなどから選択してもよい。
【0109】
縮合触媒(C’)が存在するときは、その濃度は、通常、シリコーン樹脂(A”)の合計重量に基づいて、0.1から10%(w/w)、あるいは0.5から5%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0110】
縮合硬化シリコーン組成物が縮合触媒(C’)の存在下で形成されるときは、縮合硬化シリコーン組成物は通常シリコーン樹脂(A”)と縮合触媒(C’)とが別々のパーツにされている二液型組成物から形成される。シリコーン層を形成するには、シリコーン樹脂と触媒は好ましくは混ぜ合わせてシリコーン組成物を形成し、該シリコーン組成物を基板に塗布し、その他の縮合硬化性シリコーン組成物を硬化するために上記説明されたと同様な条件で硬化させる。
【0111】
本発明の縮合硬化シリコーン組成物は、当技術分野で知られている、かつヒドロシリル化シリコーン組成物用に上述されている、追加成分を含むことができる。
【0112】
さらに別の実施態様では、シリコーン組成物がフリーラジカル硬化シリコーン組成物である。フリーラジカル硬化シリコーン組成物の例として、過酸化物硬化シリコーン組成物、フリーラジカル光開始剤を含有する放射硬化シリコーン組成物および高エネルギー放射硬化シリコーン組成物が挙げられる。通常フリーラジカル硬化シリコーン組成物はシリコーン樹脂(A””)および任意で架橋剤(B”)および/またはフリーラジカル開始剤(C”)(例えば、フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物)の反応生成物からなる。
【0113】
シリコーン樹脂(A””)は、(i)フリーラジカル光開始剤の存在下シリコーン樹脂を150から800nmの波長を有する放射に曝す工程、(ii)有機過酸化物の存在下でシリコーン樹脂(A””)を加熱する工程、および(iii)電子線にシリコーン樹脂(A””)を曝す工程から選ばれる少なくとも一つの方法にて硬化(すなわち、架橋)される。シリコーン樹脂(A””)は、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、通常、Tシロキサン単位および/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0114】
例えば、シリコーン樹脂(A””)は次式を有する:
(RSiO1/2w”(RSiO2/2x”(RSiO3/2y”(SiO4/2z”
ここで、Rは上で定義され例示されているとおりであり、RはR、アルケニル、またはアルキニルであり、w”は0から0.99であり、x”は0から0.99であり、y”は0から0.99であり、およびz”は0から0.85であり、かつw”+x”+y”+z”=1である。
【0115】
で表わされるアルケニル基は同一でも異なっていてもよく、上記Rの記述で定義され例示されているとおりである。
【0116】
で表わされるアルキニル基は同一でも異なっていてもよく、通常2から10個の炭素原子、あるいは2から6個の炭素原子を有し、そして、以下に限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル、そしてオクチニルによって例示される。
【0117】
シリコーン樹脂(A””)は通常、少なくとも300、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(M)を有する。分子量は屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いてゲル透過クロマトグラフィーで測定される。
【0118】
シリコーン樹脂(A””)は、29Si NMRで測定される、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する。
【0119】
本発明の目的に適するシリコーン樹脂(A””)の具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、そして(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、そして括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す。前述の式における単位の順序が本発明の範囲を限定するものとみなされることはあってはならない。
【0120】
本方法のフリーラジカル硬化シリコーン組成物は、以下に限定されないが、シリコーンラバー;不飽和化合物;フリーラジカル開始剤;有機溶剤;紫外線安定剤;増感剤;酸化防止剤;充填剤、例えば補強用充填剤、増量用充填剤、そして伝導性充填剤など;そして接着促進剤を含む追加成分を含むことができる。上記に説明したとおり、充填剤が使用されるとき、充填剤は好ましくは可視光の波長以下の粒経を有し、粒子の凝集を防ぐ適切な措置が講じられる。
【0121】
フリーラジカル硬化シリコーン組成物は、(i)分子あたり少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物、(ii)分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1種の有機化合物、および(iii)該(i)および該(ii)を含む混合物から選ばれる不飽和化合物の反応生成物をさらに含むことができ、ここで不飽和化合物は500未満の分子量を有する。あるいは不飽和化合物は400未満または300未満の分子量を有する。また、不飽和化合物は直鎖状、分岐状または環状構造を有する。
【0122】
有機ケイ素化合物(i)はオルガノシランまたはオルガノシロキサンであってよい。オルガノシランはモノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。同様にオルガノシロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであってよい。シクロシランおおびシクロシロキサンは、通常、3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。非環式ポリシランおよびポリシロキサンでは、ケイ素結合アルケニル基は末端位、側鎖位または末端と側鎖両方位に位置し得る。
【0123】
オルガノシランの具体例として、以下に限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、そしてPhSi(CHCH=CH
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである。
【0124】
オルガノシロキサンの具体例としては、以下に限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeVi)、Si(OSiMeVi)、MeSi(OSiMeVi)、そしてPhSi(OSiMeVi)
ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである。
【0125】
該有機化合物は、分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を含有し、ただしシリコーン樹脂(A””)の、シリコーン樹脂膜形成のための硬化を抑制することのない、任意の有機化合物であってよい。有機化合物はアルケン、ジエン、トリエン、またポリエンである。さらに、非環式有機化合物では、炭素−炭素二重結合は末端位、側鎖位、または末端と側鎖両方位に位置し得る。
【0126】
該有機化合物は1個以上の、脂肪族炭素−炭素二重結合以外の官能基を含有する。適する官能基の例としては、以下に限定されないが、−O−、>C=O、−CHO、−CO−、−C≡N、−NO、>C=C<、−C≡C−、−F、−Cl、−Br、そして−Iが挙げられる。本発明のフリーラジカル硬化シリコーン組成物への使用で特定な不飽和有機化合物の適合性は、所定の実験で容易に決定され得る。
【0127】
該有機化合物は室温で液状または固体状態にある。また、該有機化合物は、硬化前のフリーラジカル硬化シリコーン組成物に、溶解し、部分的に溶解し、または溶解しない。該有機化合物の通常の沸点は、分子量、構造、そして化合物中の官能基の数と性質に依存し、広範囲にわたって変化している。好ましくは、有機化合物は組成物の硬化温度よりも通常高い沸点を有する。さもなければ、有機化合物の相当量が硬化中に蒸発によって除去されてしまう。
【0128】
脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物の例としては、以下に限定されないが、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ヘキサジエニルベンゼン、そして1,2−ジエテニルシクロブタンが挙げられる。
【0129】
該不飽和化合物は、単一不飽和化合物または2種以上の異なる不飽和化合物を含む混合物でもよく、各不飽和化合物は上述されたとおりである。例えば、不飽和化合物は単一のオルガノシラン、2種の異なるオルガノシランの混合物、単一のオルガノシロキサン、2種の異なるオルガノシロキサンの混合物、オルガノシランとオルガノシロキサンとの混合物、単一の有機化合物、2種の異なる有機化合物の混合物、オルガノシランと有機化合物との混合物、またはオルガノシロキサンと有機化合物との混合物である。
【0130】
該不飽和化合物の濃度は通常、硬化の前、フリーラジカル硬化シリコーン組成物の合計重量に基づいて、0から70%(w/w)、あるいは10から50%(w/w)、あるいは20から40%(w/w)である。
【0131】
ケイ素結合アルケニル基を含有するオルガノシランおよびオルガノシロキサンならびに脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物の製造法は当技術分野で広く知られており;これら化合物の多くは市販されている。
【0132】
フリーラジカル開始剤は通常フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物である。さらに、フリーラジカル光開始剤は、200から800nmの波長を有する放射に曝されるとシリコーン樹脂の硬化(架橋)を開始できる任意のフリーラジカル光開始剤である。
【0133】
フリーラジカル光開始剤の例としては、以下に限定されないが、ベンゾフェノン;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ハロゲン化ベンゾフェノン;アセトフェノン;α−ヒドロキシアセトフェノン;クロロアセトフェノン、例えばジクロロアセトフェノンやトリクロロアセトフェノンなど;ジアルコキシアセトフェノン、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノンなど;α−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンや1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;α−アミノアルキルフェノン、例えば2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンなど;ベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルやベンゾインイソブチルエーテルなど;ベンジルケタール、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなど;アシルホスフインオキシド、例えばジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなど;キサントン誘導体;チオキサントン誘導体;フルオレノン誘導体;メチルフェニルグリオキシラート;アセトナフトン;アントラキノン誘導体;芳香族化合物のスルホニルクロリド;そしてO−アシル α−オキシミノケトン、例えば1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
【0134】
フリーラジカル光開始剤はまた、ポリシラン、例えば米国特許第4,260,780号でウエストにより明示されたフェニルメチルポリシラン、該特許でのフェニルメチルポリシランに関する開示はここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,314,956号でベイニィ他により明示されたアミン化メチルポリシラン、該特許での開示はアミン化メチルポリシランに関してここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,276,424号でピーターソン他のメチルポリシラン、該特許の開示はメチルポリシランに関してここに参照することにより組み込まれる;米国特許第4,324,901号でウェスト他により明示されたポリシラスチレン、該特許での開示はポリシラスチレンに関してここに参照することにより組み込まれる;などである。
【0135】
フリーラジカル光開始剤は単一フリーラジカル光開始剤または2種以上の異なるフリーラジカル光開始剤の混合物でもよい。フリーラジカル光開始剤の濃度は通常、シリコーン樹脂(A””)の重量に基づいて、0.1から6%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0136】
フリーラジカル開始剤はまた有機過酸化物でもある。有機過酸化物の例としては、ジアロイルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジ−p−クロロベンゾイルペルオキシド、そしてビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなど;ジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシドそして2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)ヘキサンなど;ジアラルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシドなど;アラルキルペルオキシド、例えばt−ブチル−クミルペルオキシドそして1,4−ビス(t−ブチルぺルオキシイソプロピル)ベンゼンなど;アルキルアロイルペルオキシド、例えば過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、そしてt−ブチルペルオクトエートなどが挙げられる。
【0137】
該有機過酸化物は単一過酸化物または2種以上の異なる有機過酸化物を含む混合物でもよい。有機過酸化物の濃度は通常、シリコーン樹脂(A””)の重量に基づいて、0.1から5%(w/w)、あるいは0.2から2%(w/w)である。
【0138】
フリーラジカル硬化シリコーン組成物はさらに少なくとも1種の有機溶剤の存在下で形成される。有機溶剤は、シリコーン樹脂(A””)または追加成分と反応しない、かつシリコーン樹脂(A””)と混和性である任意の非プロトン性または双極非プロトン性有機溶剤である。有機溶剤の例としては、以下に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンそしてドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンそしてシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンそしてメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)そしてジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK);ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンそしてクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤は、単一有機溶剤または2種以上の異なる有機溶剤を含む混合物でもよく、各有機溶剤は上述されたとおりである。
【0139】
有機溶剤の濃度は通常、硬化前のフリーラジカル硬化シリコーン組成物の合計重量に基づいて、0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0140】
上述のフリーラジカル硬化シリコーン組成物が1種以上の追加成分、例えばフリーラジカル開始剤から形成されるときは、フリーラジカル硬化シリコーン組成物は、一つのパーツにシリコーン樹脂と任意成分を含んでいる一液性組成物、または二つ以上のパーツに該成分を含んでいる多液性組成物から形成されてもよい。
【0141】
シリコーン層16はバッチ法または連続法により形成される。例えば、シリコーン組成物は基板12に連続法、例えばスピンコート法、浸漬コート法、スプレー法、またははけ塗り法などにより塗布され、その後にシリコーン組成物は硬化されて硬化シリコーン組成物を含むシリコーン層16を形成する。硬化シリコーン組成物を形成するために、シリコーン組成物は、大気圧、大気よりも低い圧、または大気よりも高い圧で加熱される。シリコーン組成物は通常、大気圧下で室温(約23±2℃)から250℃、あるいは室温から200℃、あるいは室温から150℃の温度で加熱される。シリコーン組成物はシリコーン組成物を硬化(架橋)するのに十分な時間、加熱される。例えば、シリコーン組成物は通常150から200℃の温度で0.1から3時間加熱される。
【0142】
あるいは、シリコーン組成物は真空中100から200℃の温度かつ1,000から20,000Paの圧力で0.5から3時間加熱されて、シリコーン層16を形成することができる。シリコーン組成物は従来からの真空バッグ法を用いて真空中で加熱される。通常の方法で、ブリーダー(例、ポリエステル)が基板12上のシリコーン組成物の全体を覆って施され、ブリーザ(例、ナイロン、ポリエステル)がブリーダーの全体を覆って施され、真空ノズルを備え付けられた真空バッグフィルム(例、ナイロン)がブリーザの全体を覆って施され、組立物がテープで密封され、真空(例、1,000Pa)を密封された組立物に適用し、気体が抜かれたバッグを上述のとおりに加熱された。
【0143】
シリコーン層16の厚さは複合品10の対象とする用途に依存する。一般的には、シリコーン層16は少なくとも約0.1ミクロン、より一般的には0.50から10ミクロン、最も一般的には1から3ミクロンの厚さを有する。少なくとも約0.1ミクロンの厚さを有するシリコーン層16は、陽イオンの基板12から陽イオン感受性層14への移動を防ぐために有効である。さらに具体的には、図3および図4を参照すると、二次イオン質量分析(SIMS)結果が示されており、それらは試験された各種表面上または表面近くに存在するナトリウム陽イオンの量を、試験された表面上または表面近くに存在する陽イオンの数の代表的測定として、示している。SIMSは移動性陽イオンに非常に敏感であり、ppmレベルまでに至り、かつ3ミクロンまでの深さまでのイオンの深さ分布を測定することが可能である。SIMSの結果は試験表面上または近く、すなわち試験表面から3ミクロン以内に存在する陽イオンの相対数を示す。図3および図4を参照して、両図面中比較例1で示される基板12上に存在する陽イオンの量とは対照的に、実施例1c、1d、2a、2b、4a、4b、5aおよび5bで見られるように、実質的により少ない陽イオンが基板12に配置されたシリコーン層16の表面上または表面近くに存在していることが明白である。さらに具体的に言うと、1020以下のナトリウム陽イオンが各シリコーン層16の表面上または少なくとも1ミクロンの深さの表面近くに存在している。しかしその一方で、基板12はすべての深さで存在するナトリウム陽イオンを1021を上回って含んでいる。図3は基板12およびシリコーン層16がアニーリングされていないときの結果を示し、図4は基板12およびシリコーン層16が窒素雰囲気中約300℃の温度で約60分間アニーリングされたときの結果を示している。
【0144】
上で説明したとおり、シリコーン層16は基板12に隣接して配置される。さらに具体的には、シリコーン層16は基板12に接着されている。一つの実施態様では、図1に示されるとおり、シリコーン層16は直接基板12上に形成される。シリコーン層16は基板12にスピンコートされ、引き続き硬化されてもよい。この実施態様では、硬化シリコーン組成物は、硬化シリコーン組成物ひいてはシリコーン層16を基板12に接着するために、硬化する前、少なくとも1個の官能基を含んでいてもよい。少なくとも1個の官能基は、以下に限定されないが、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、そしてそれらの組合せの群から選ばれる。シリコーン層16を基板12上に形成するために、シリコーン組成物は液状で基板12に単に塗布され、その後、シリコーン組成物は硬化されてもよい。
【0145】
他の実施態様では、図2で示されるとおり、複合品10はさらにシリコーン層16と基板12の間に配置される接着層18をさらに含んでいる。さらに具体的には、シリコーン層16は接着層18と基板12に接着していてもよい。接着層18が使われるとき、それは通常シリコーンベース接着剤を含む;しかし、シリコーンをガラスに接着するために適する任意の接着剤が本発明の目的に適することが理解される。シリコーンベース接着剤は通常接着層18をシリコーン層16に接着するため、また接着層18を基板12に接着するために少なくとも1個の官能基を含有する。少なくとも1個の官能基は、以下に限定されないが、シラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、そしてそれらの組合せの群から選ばれる。シリコーンベース接着剤は当技術分野では知られている。シリコーンベース接着剤は一液系または多液系でもよい。
【0146】
上で説明したとおり、複合品10は陽イオン感受性層14を含有する。陽イオン感受性層14は陽イオン感受性物質から形成される。陽イオン感受性物質は通常、例えばオリゴマーまたはポリマーなどの有機発光物質である;しかしながら陽イオン感受性物質は陽イオンに対し感受性である当技術分野で知られている任意の種類の物質である。「感受性」とは、該物質が有する機能の一つまたはそれ以上の性能に陽イオンが逆行して影響を与えるという意味である。例えば、有機発光物質の発光は陽イオンで劣化し、それによりOLEDは長い間に発光不良となる。他の例では、陽イオン感受性層14は電気伝導性層、例えば電気回路網や電極などでありうる。陽イオンが電気伝導性層をショートさせることは知られている。
【0147】
陽イオン感受性層14は、図1で示すとおり、動作可能なようにシリコーン層に接続されている。あるいは、図2に示すとおり、複合品10はさらに、シリコーン層16と陽イオン感受性層14との間に配置された第一電極20、例えば陽極などを含む。これは特に複合品10がOLEDであるときの場合である。第一電極20は、当技術分野で電極に適するとして知られている任意の物質、例えば金属、金属酸化物、およびそれらの組合せなど、から形成されてもよい。好ましくは、第一電極20は透明な金属酸化物、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)などから形成される。しかしながら、他の透明な金属酸化物もまた当技術分野で知られているとおり、適していることは理解されることである。通常第一電極20は動作可能なようにシリコーン層16に接続される。「動作可能なように接続される」とは、第一電極がシリコーン層16に化学的または物理的のいずれかの接続を介して接続されることを意味する。第一電極20は当技術分野で知られている従来からの方法により形成してもよい。例えば、第一電極20は高密プラズマ・イオンプレーティング法によって形成される。この方法は、2−3例をあげると、早い蒸着速度、低成長温度、面内均一性、イオン損傷の削減およびスケールアップの可能性の利点を持っている。第一電極20の通常の厚さは、およそ100nmである。通常、第一電極20の抵抗は100オーム/cm以下、より一般では100オーム/cm以下で、もっとも一般では40オーム/cm以下である。通常、第一電極20は高度な透明性をも有する。さらに、絶縁層(図示されない)が第一電極20の上に形成されてもよい。絶縁層(図示されない)は公知の絶縁物質、例えばケイ素一酸化物など、から当技術分野で知られている方法によって形成してもよい。
【0148】
図2で示されるとおり、複合品10はまた通常、特に複合品10がOLEDであるときは、第一電極20と陽イオン感受性層14との間に配置された正孔注入層22を含有する。正孔注入層22は公知の正孔注入物質から形成され、公知の方法にて形成されてもよい。
【0149】
再度図2を参照すると、複合品10はさらに第二電極24を含む。第二電極24は陽イオン感受性層14に隣接しシリコーン層16から陽イオン感受性層14の反対側に配置される。第一電極20同様、第二電極24は電極に適する当技術分野で知られている物質、例えば金属、金属酸化物およびそれらの組合せなどから形成してもよい。第二電極24がまた透明金属酸化物から形成されているときは、第二電極24に使われる物質の種類は一部においては、複合品10の構造および複合品10の意図する用途に依存してもよい。例えば、複合品10がOLEDであり、基板12はガラスを含み、第一電極20は透明な金属酸化物から形成されるなら、第二電極24は、透明であろうとなかろうと、電極として適する任意の種類の物質から形成されてもよい。あるいは、複合品10がOLEDであり、基板12は金属を含み、および/または第一電極20は非透明性金属酸化物を含むときは、第二電極24は好ましくは透明性金属酸化物を含む。
【0150】
複合品10はさらに、陽イオン感受性層14に隣接し、シリコーン層16から陽イオン感受性層14の反対側に配置されたバリヤー層26を含んでいてもよい。さらに具体的には、図2を参照して、バリヤー層26は通常陽イオン感受性層14から第二電極24の反対側に第二電極24に隣接して配置される。バリヤー層26は、基板12に適する物質の同じ種類から形成され、基板12と同じ厚さを有してもよい。しかしながら、バリヤー層26は基板12に用いられたものと異なる物質からも形成されてもよく、また基板12の厚さと異なる厚さを有することもできると理解される。とにかく、バリヤー層26は好ましくは優れたバリヤー物質、例えばスチール、アルミニウム、またはガラスなどから形成される。さらに、第二シリコーン層(図示されない)は、バリヤー層26と第二電極24の間に配置されてもよい;しかしながら、第二シリコーン層は任意であり、バリヤー層26に用いられた物質に依存する。例えば、バリヤー層26がゼロか低いレベルの陽イオンを有する物質から形成されているのであれば、第二シリコーン層は必要としない。あるいは、バリヤー層26が基板12に使用されるのと同じ物質から形成されるのであれば、第二シリコーン層が好まれることになる。
【0151】
本発明の複合品10がOLEDである場合、上述の硬化シリコーン組成物の重要な利点は、それが基板12の強度を改善すること、また硬化シリコーン組成物を含むシリコーン層16が電気絶縁層としての機能することである。これらの特性は、上で述べられたもののように厚さ100マイクロメートル未満の非常に薄いガラス基板12上の曲げ性/柔軟性のあるOLEDの構造物に対し非常に有用である。そのようなガラス基板12は非常に割れやすく、扱いが非常に難しい。薄い基板12の低い厚みのため、薄い基板12は柔軟性があり、かつ曲げることが出来、そして曲げ性/柔軟性のあるOLED用の理想的な基板12となる可能性を示す。ガラスが基板12として使われる場合、それは陽イオン感受性層、つまり有機発光物質を水蒸気、酸素および湿気から保護し、さらに電極20および24を保護する。ガラスまたは金属バリヤー層26を有するガラス基板12上に作られたOLEDの製品有効期間は、受け入れ可能な長さである。従来からの物質は、OLEDの端をシールするために使われてもよい。
【0152】
基板12の強度の増加の測定は、シリコーン層16を含む基板12を基板12単独と比較した場合の、曲げ半径の増加によって示され得る。例えば、マイクロシート(登録商標)は通常直径1.67インチの円筒を亀裂が入ることなく包み込むことができ、一方、マイクロシート(登録商標)上にシリコーン層16が配置されて含有するマイクロシートは、通常、直径1インチの円筒を亀裂が入ることなく包み込むことができる。
【0153】
OLEDの構築には、通常、透明な導電陽極、通常ITOであってもよい第一電極20の蒸着が続く。ITOから形成された電極は良好な抵抗性と透明性を有する。硬化シリコーン組成物は、通常基板12の平坦な表面を複製し、かつ第一電極20が蒸着・結晶化後非常に平坦な表面を保持することを可能にする。第一電極の平坦な表面は、OLEDの正常な稼働を保証するために、正孔注入層22およびその上に有機発光層14を形成する次の段階の前では好ましい。よって、シリコーン組成物は、(a)薄いガラスの強度改善、(b)電子部品の構成要素への陽イオンの拡散の防止、および(c)ガラス基板での追加層のために平坦表面の維持に利点を与える。
【0154】
OLEDは、バリヤー層26と第二電極24との間に配置される硬化シリコーン組成物を含む第二シリコーン層とともに、他の薄いガラス層であってもよい、バリヤー層26を追加することにより完成され得る。バリヤー層26はOLEDの活性成分を挟み込むのに役立っている。得られるOLEDは150マイクロメートルほどの薄さであってよい。他の実施態様では、バリヤー層26はステンレス鋼(ステンレス・スチール)の薄層であってよく、バリヤー層26が他の薄いガラス層を含む場合、さらにより薄い上部発光OLEDを創り出してもよい。ステンレス鋼薄層および第二シリコーン層を含む、一部のステンレス鋼箔は25マイクロメートルほどの薄さである。例えば、OLEDはおよそ100マイクロメートル(0.1mm)の厚さであってよい。ステンレス鋼薄層および第二シリコーン層を含むバリヤー層26は、電気絶縁性とステンレス鋼の平坦化を与える。ステンレス鋼薄層および第二シリコーン層を含むバリヤー層26は、OLEDを曲げ性および柔軟性を残しながら、ガラスから形成される基板12へさらなる保護を与える。
【0155】
バリヤー層26におけるスチールまたはガラスのいずれかの使用はまた、生産性の利点を与える。例えば、連続または半連続方法はステンレス鋼薄層または他のガラス薄層を含むバリヤー層26を形成するため用いられる。ガラスがバリヤー層26に用いられる場合、バリヤー層26は、冷却されながらガラスフロートとして(または引き抜き塔(drawing tower)から降りてくる(come down)ガラスとして)形成され、適切な硬化温度に達したときにシリコーン組成物をガラスに塗布することが可能である。シリコーン組成物は高温(しばしば200℃より高い)、薄いガラスの冷却の末尾にあたるであろう、で硬化する。上で説明したとおり、繊維強化はシリコーン組成物に、特に第二シリコーン層を作るために用いられるシリコーン組成物に含められる。そのような構造物はバリヤー層26でガラスの機械的構造安定性を改善する。好ましくは、繊維強化の強化用繊維およびシリコーン組成物の屈折率を合わせるために適切な措置が講じられる。しかしながら、透明性のわずかな減少は、OLEDベースのディスプレー用途よりもむしろ、OLEDベースの照明用途では不利益とはならないときがある。
【0156】
以下の実施例は本発明を説明するためであり、本発明の範囲を限定するものとみなされることがあってはならない。
【実施例】
【0157】
シリコーン層を含む基板が製造された。複合品もまた本発明に従って製造された;しかし、最も関連する実験結果は基板とシリコーン層、もっと正確に言えば、基板からの陽イオンがそれらを経由して移動することを防ぐシリコーン層の能力に関連している。そのようなものとして、シリコーン層を含む基板の多数サンプルに関連する実験結果が最初に示され、製造された複合品の実例がそれに続いている。
【0158】
多数の異種基板が、多数の異種のシリコーン組成物と同様に使われた。物質の種類並びに各の基板およびシリコーン組成物の加工条件に関する詳細が以下の個々の実施例で述べられている。
【0159】
[実施例1]
直径約3インチ厚さ約0.028インチを有し、透明加工60/40−80/50スクラッチ/ディグ(scratch/dig)および2−3waves/inchの平面プロファイルを有するソーダ石灰ガラス基板が米国マサチューセッツ州シャーリーのバレイ・デザイン社から入手された。ソーダ石灰ガラス基板はイソプロパナールを適用し、基板を手で拭くことにより洗浄され、その後アセトンを基板上30秒間1000rpmでスピンさせた。シリコーン組成物がピペットで取り基板上に置かれ、その後1000rpmで30秒間スピンされた。この実施例のシリコーン組成物は、次の構造のシロキサンを含む樹脂Aを用いて製造された:
(MeSiO3/2
ここで、nは10から50、より具体的にはおよそ30である。樹脂Aは米国カリフォルニア州ガーデン・グローブのエスディシ―社から入手した。樹脂Aはさらにシリコーン組成物の合計重量に基づいて約20重量%の量で存在するコロイドシリカを含んでいる。樹脂Aはこの実施例の目的のシロキサン組成物である。
【0160】
基板上でシリコーン組成物を硬化する前に、被覆された基板が数片に分けられ、片上のシリコーン組成物が異なる条件で硬化された。基板上のシリコーン組成物を硬化するために、被覆された基板は、1.7℃/分のランプ速度を用いているフィッシャー・Isotemp強制空気オーブンに置かれた。空気中のアニーリングはフィッシャー・Isotempプログラム制御強制通風炉中で行われた。窒素中のアニーリングは、真空と高純度窒素洗浄のサイクルを4回した後、リンドバーグ炉中で行われた。4個の異なるサンプルが以下に述べるように製造された:
a.空気中100℃で2時間強制空気オーブンで硬化した。
b.空気中200℃で2時間強制空気オーブンで硬化した。
c.空気中350℃で2時間強制空気炉で硬化した。
d.空気中500℃で2時間強制空気炉で硬化した。
【0161】
[実施例2]
基板が実施例1で述べられたとおり入手され、準備された。基板は実施例1と、異なるシリコーン組成物が用いられたことを除けば、同じ方法でシリコーン組成物が塗布された。シリコーン組成物を製造するために、次式のシロキサンを含む樹脂Bが用いられた:
(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.4(PhSiO)0.1(PhMeSiO)0.05
3.98gの樹脂Bをトルエン12.02gと混合して24.9%のシロキサン溶液を製造した。3.2634gのシロキサン溶液が米国ミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング・コーポレーションから市販されているY−177触媒0.0187gと混合されて、シリコーン組成物を形成した。シリコーン組成物は0.2μm、次に0.1μmのワットマンフィルターを通して濾過された。濾過されたシリコーン組成物はガラス基板に適用され、上述のとおりスピンされた。実施例2aでは、シリコーン組成物は基板上で強制空気オーブン中100℃で1時間、その後160℃で1時間そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例2bでは、シリコーン組成物はさらに窒素中で300℃、1時間加熱熟成された。
【0162】
[実施例3]
基板が実施例1で述べられたとおり入手され、準備された。基板は実施例1と、異なるシリコーン組成物が用いられたことを除けば、同じ方法にてシリコーン組成物で被覆された。シリコーン組成物を製造するために、次の式のシロキサンを含む樹脂Cが用いられた:
(MeSiO3/2
ここで、nは10から50まで、より具体的には約30である。樹脂Cの29.5重量%MIBK溶液が用意され、15分間遠心分離機にかけ、その後0.2μmフィルターで濾過されて、シリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例3aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気炉中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例3bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0163】
[実施例4]
基板が実施例1で述べられたとおり入手され、準備された。基板は実施例1と、異なるシリコーン組成物が用いられたことを除けば、同じ方法にてシリコーン組成物で被覆された。シリコーン組成物を製造するために、次の式のシロキサンを含む樹脂Dが用いられた:
(PhSiO3/20.75(MeViSiO1/20.25
樹脂Dの25重量%のMIBK溶液が、5.02gの樹脂DをMIBK15.03gと混合することにより製造された。溶液3.4991gが、トルエン中の1000ppmの白金と4モル過剰のPhPを含む触媒0.0230gと混合された。溶液は0.2μmのフィルター、その後0.1μmフィルターで濾過してシリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例4aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気炉中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例4bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0164】
[実施例5]
基板が実施例1で述べられたとおり入手され、準備された。基板は実施例1と、異なるシリコーン組成物が用いられたことを除けば、同じ方法にてシリコーン組成物で被覆された。シリコーン組成物を製造するために、次の式のシロキサンを含む樹脂Eが用いられた:
(MeViSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1
樹脂Eの25重量%のトルエン溶液が、8.74gの樹脂Eをトルエン26.24gと混合することにより製造された。溶液3.6253gが、トルエン中の1000ppmの白金と4モル過剰のPhPを含む触媒0.0184gと混合された。溶液は0.2μmのフィルター、その後0.1μmフィルターで濾過してシリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例5aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例5bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0165】
[実施例6]
直径約3インチ厚さ約0.028インチを有し、透明加工60/40−80/50スクラッチ/ディグ(scratch/dig)および2−3waves/inchの平面プロファイルを有するボロフロートガラス基板が米国マサチューセッツ州シャーリーのバレイ・デザイン社から入手された。基板はイソプロパナールを適用し、基板を手で拭くことにより洗浄し、その後アセトンを基板上で30秒間1000rpmでスピンさせた。実施例1のシリコーン組成物をピペットでとり基板上に置いて、その後1000rpmで30秒間スピンさせた。
【0166】
実施例6aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例6bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中500℃で1時間加熱熟成された。
【0167】
[実施例7]
4インチx4インチのマイクロシート(登録商標)ガラス基板を米国ニューヨーク州コーニングのコーニング社から入手した。基板は実施例4で用いたのと同じシリコーン組成物で実施例4と同じ方法で被覆された。具体的には、樹脂Dの25重量%のMIBK溶液が樹脂D5.02gとMIBK15.03gを混合して製造された。溶液4.5454gが、トルエン中白金1000ppmと4モル過剰のPhPを含む触媒0.0145gと混合された。溶液は0.2μmのフィルター、その後0.1μmフィルターで濾過してシリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例7aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例7bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0168】
[実施例8]
4インチx4インチのマイクロシート(登録商標)ガラス基板が、実施例1での、樹脂Aを含むシリコーン組成物を用いて、シリコーン組成物で塗布された。しかし、シリコーン組成物は樹脂A8.75gとイソプロパノール8.76gとを混合して製造された。シリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例8aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例8bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0169】
[実施例9]
4インチx4インチのマイクロシート(登録商標)ガラス基板を、米国ニューヨーク州コーニングのコーニング社から入手した。基板は、実施例5で説明された樹脂Eから製造されたシリコーン組成物で塗布された。具体的には、樹脂Eの19.9重量%のトルエン溶液が、樹脂E5.43gをトルエン21.86gと混合して製造された。溶液4.5208gが、トルエン中の白金1000ppmと4モル過剰のPhPからなる触媒0.0132gと混合された。溶液は0.2μmのフィルター、その後0.1μmフィルターで濾過してシリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物は基板に適用され、上述のとおりにスピンされた。実施例9aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中で、100℃で1時間、その後160℃で1時間、そしてその後200℃で1時間硬化された。実施例9bでは、被覆されたガラス基板はさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0170】
[実施例10]
4インチx4インチのマイクロシート(登録商標)ガラス基板を、米国ニューヨーク州コーニングのコーニング社から入手した。基板は、実施例3で説明された樹脂Cから製造されたシリコーン組成物で塗布された。具体的には、樹脂Cの29.5重量%のMIBK溶液が製造され、溶液は0.45μmフィルターで濾過されて、シリコーン組成物を形成した。濾過されたシリコーン組成物約1mlが基板に適用され、1500rpmで30秒間スピンコートされた。実施例10aでは、基板上のシリコーン組成物が強制空気オーブン中200℃で3時間硬化された。実施例10bでは、被覆されたガラス基板がさらに窒素中300℃で1時間加熱熟成された。
【0171】
[比較例]
比較目的のために、シリコーン層を有さない基板もまた用意された。比較例1は、受取ったままの、未被覆ソーダ石灰ガラス基板である。比較例2は、空気中500℃で2時間加熱熟成された未被覆ソーダ石灰ガラス基板である。比較例3は、窒素中300℃で1時間加熱熟成された未被覆ソーダ石灰ガラス基板である。比較例4は、受取ったままの、未被覆ボロフロートガラス基板である。比較例5は、空気中500℃で2時間加熱熟成された未被覆ボロフロートガラス基板である。比較例6は、受取ったままの、未被覆マイクロシート(登録商標)である。比較例7は、空気中500℃で2時間強制空気炉で加熱熟成された未被覆マイクロシート(登録商標)である。比較例7は、空気中300℃で1時間強制空気炉中で加熱熟成された未被覆マイクロシート(登録商標)である。比較例8は、窒素中300℃で1時間強制空気炉で加熱熟成された未被覆マイクロシート(登録商標)である。
【0172】
[試験法]
二次イオン質量分析法(SIMS)が実施例1c、2a、4a、および5aに、そして比較例1についても行われ、それらの結果はナトリウム陽イオンの存在について、図3で示される。SIMSはまた実施例1d、2b、4b、そして5bについても行われ、それらの結果はナトリウム陽イオンの存在について図4で示される。SIMS技術は、移動性陽イオンについて、ppmレベルに至るまで非常に高感受性である。SIMSはまたバリヤー層を介してのおよそ3μmまでの深さまでイオンの深さプロファイルを可能にする。SIMS分析は、米国ニュージャージー州イースト・ウィンザーのエバンス・アナリティカル・グループにより、四重極質量分析装置を用いて完成された。表1は用いられた条件を強調している。
【0173】
【表1】

【0174】
ナトリウムおよびカリウムは、EAG標準“110”の同時解析を行うことにより定量化され、しかし一方カルシウムは概算の定量化が行われた。炭素、酸素、およびケイ素は定量化しなかった。この分析の検出限度はナトリウム、カリウムそしてカルシウムについては、1x1017原子/cmであった。
【0175】
化学的分析用電子分光法(ESCA)としても知られているX線光電子分光法(XPS)が各実施例について各比較例とともに行われた。この技術は約0.1原子量パーセントレベルのイオン濃度の検出を可能にする。ESCA分析は、120Wで動作する単色Al KaX線源を用いたKratos Analytical AXIS 165 ESCAを用いて行った。低エネルギー・エレクトロン・フラッド(electron flood)が表面電荷補償(surface charge compensation)のために用いられた。各実施例および比較例は三箇所で分析された。低解像度測量スペクトルおよび高解像度酸素1s、炭素1s、およびケイ素2pスペクトルが各分析地点で得られた。分析の面積は大体0.8mmx1.4mmであった。表面組成は原子量パーセントで与えられる。再現性は0.5原子量パーセントと推定された。下記の表2は、実施例1−6のESCAデータと比較例1−5のESCAデータを、試験された実施例での表面上のすべての原子の全原子量のパーセントとして、原子量パーセントを表す各種指定原子の下に示された値と共に示している。
【0176】
【表2A】

【0177】
【表2B】

【0178】
[結果]
図3および図4および上記の表2a及び表2bに示された結果に基づいて、本発明に従ってなされた実施例の表面上または近くには、比較例と比べて、より少ない陽イオンが存在することが明らかである。より具体的には、XPSおよびESCA結果は、シリコーン組成物が用いられたときは、陽イオンの検出は装置の限界値以下(0.1原子パーセント未満)であったことを示していた。SIMSデータは、裸ガラス基板に対し100倍から10000倍の陽イオンの低減(図3および図4を参照)を示していることによって、XPSおよびESCA結果を裏付けている。それ故、シリコーン層は、シリコーン層が配置された基板よりもシリコーン層の表面上または近くに、より少ない陽イオンを含んでいることが明らかである。さらに、あるシリコーン組成物は、他のシリコーン組成物から形成されたシリコーン層と比較すると、前者の組成物から形成されたシリコーン層の表面上または近くに、より少ない陽イオンを有することが明らかである。例えば、図4で示されているように、実施例4bで用いられたシリコーン組成物は、シリコーン組成物から形成され、窒素雰囲気中約300℃の温度で約60分間アニーリングした後のシリコーン層の表面上または近くのナトリウム陽イオンの存在に関し、より低いSIMS値を提示している。基板上の異なるシリコーン層の変厚は陽イオン濃度が上昇する可変の開始地点に関与している。
【0179】
[実施例11]
OLEDがマイクロシート(登録商標)ガラス基板上に本発明に従って製造される。正孔注入物質(HIM)、および日本国東京のサメイション株式会社から市販されている有機発光ポリマー(LEP)レッドH2が、ベルギー国ギールのアクロス・オーガニックス社から供給される電子グレード溶剤中で最初に準備される。より具体的には、2.0重量%のHIMがメチルイソブチルケトン中で準備され、かつ1.5重量%のLEPがキシレン中で用意される。HIMは,米国ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ社市販のチタニウム硬化促進剤、Ti(PrO)で、0.2重量%に相当する濃度までドープされた。LEPは、使用する前に適正な溶解を確実にするために少なくとも2時間リスト・アクション・シェーカーで混合した。
【0180】
シリコーン層がマイクロシート(登録商標)ガラス基板上に形成された。シリコーン層はヒドロシリル化タイプのシリコーン組成物から形成され、該組成物は架橋剤とヒドロシリル化触媒ともに作られている。樹脂組成物は (MeViSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10である。ITOを含む第一電極層がシリコーン層の上に蒸着された。ITOは高エネルギープラズマイオンメッキ法により蒸着された。ITOの厚さは100nmかつ抵抗は35Ω/cmと測定された。
【0181】
シリコーン層と第一電極を含む基板は、アクロス・オーガニックス社のp.a.グレードイソプロピルアルコール(IPA)をChemat KW−4Aスピン塗工機上、約750rpmの加速でもって2000rpmで20秒間、スピンキャスティング(Spin Casting)することにより清浄した。IPAは使用直前に0.1umテフロン(登録商標)・ワットマン・プラディスク・シリンジ・フィルタで濾過された。
【0182】
次に、絶縁層(図示されない)を第一電極層の上に、マスクを用い、2.0x10−6mbarの真空下シグマ・アルドリッチ社市販の99.99%の純度一酸化ケイ素(SiO)を100nm蒸着させることにより形成した。これは、BOCエドワーズ・オート306A蒸発器中で真空下モリブデンボートの中のSiOを加熱することにより成し遂げられた。
【0183】
基板は、第一電極上にHIMをスピンキャスティングする直前に第一電極の表面を酸素プラズマに5分間曝すことにより適する状態にされた。HIMのスピンキャスティングはISOクラス6クリーンルーム内Chematスピン塗工機で基板の支持物として無地ガラススライドを用いてなされた。基板はガラス支持物にその上にある小さい水滴でもって接着された。HIMは、0.1umテフロン(登録商標)・ワットマン・プラディスク・シリンジ・フィルタで事前濾過し、約750rpm加速をもって2000rpmで30秒間スピンされた。HIMは、空気中で40℃にセットされたフィッシャーIsotempオーブン中で、5分ごとに5℃増加で190℃まで上昇して硬化された。190℃に達したら、その温度が5分間保持され、その後基板をオーブンから取り出す前に100℃に下げられた。冷却工程におよそ20分かかった。硬化したとき、HIM層は約45−50nm厚さになると思われた。
【0184】
LEP溶液は、HIMと多少の相違のもとに同様な方法でスピンキャスティングされた。LEP溶液は0.2umポリプロピレン・ワットマン・プラディスク・シリンジ・フィルタで事前に濾過され、約750rpm加速で2250rpmで40秒間スピンされ、得られたLEP層は空気中フィッシャ−オーブンで100℃で30分間アニーリングされた。その他の全ての態様はHIM層の製造と同じであった。これらの条件下で、LEP層は約50−70nm厚と思われた。
【0185】
HIM層およびLEP層を含有するすべての複合品は、第二電極、すなわち陰極を蒸着し、複合品を密封するためにMBraun乾燥グローブ・ボックスに移された。バリウム・アルミニウム陰極がBOCエドワーズ・オート500真空蒸発器で各物品のLEP層の上に蒸着された。2.0x10−6mbarの真空下、バリウム10nmがタングステンボートから蒸着された。バリウムに続いて即座に、アルミニウム150nmがコイル状のアルミナ被覆タングステンフィラメントから蒸着された。物品は蒸着が行われる前に真空下30分間脱ガスされた。
【0186】
実施例11aは、マイクロシート(登録商標)ガラスの他のシートから形成された、ガラスと第二電極との間に配置された第二シリコーン層を有するバリヤー層で密封された。第二シリコーン層は上で用いられたのと同じシリコーン組成物から形成された。実施例11bは、スチールと第二電極との間に配置された第二シリコーン層をも有するステンレス・スチールバリヤー層で密封された。バリヤー層はエレクトロ‐ライト社のELC−2500透明エポキシ3滴を陰極バーの上で適用し、陰極上に第二シリコーン層が被覆されたステンレス・スチールまたはガラスのいずれかを取り付けることにより形成された。エポキシは365nm紫外線ランプで15分間硬化された。陰極の一部がなおも露出されており電気接触がなされられ得ることを防ぐ手段をとることに注意した。上述の方法に従って製造されたOLEDが図5に示されている。実施例11aの全体の厚さはおよそ150ミクロン;実施例11bの全体の厚さはおよそ100ミクロンであった。実施例11aおよび11bの両方とも定期的に試験され、ある時間を超えても機能しているか、または劣化されたかを観測した。両実施例とも40日(実施例11a)および9カ月(実施例11b)を超過しても機能し続けた。
【0187】
明らかに、上記の教示を踏まえて、本発明の多くの変更や変化は可能である。本発明は、添付の特許請求項の範囲内で具体的に記述されたものとは別の方法にて実施可能である。さらに、参照番号は単に便宜のためで、限定するかのように決して読まれてはならない

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に陽イオンを、前記基板の表面上の原子の全原子量に基づいて少なくとも0.1原子量パーセントの量で含有する基板;
陽イオン感受性物質を含み、前記基板の表面上に配置された陽イオン感受性層;および
前記基板と前記陽イオン感受性層の間に配置され、陽イオンの前記基板から前記陽イオン感受性層への移動を防ぐための硬化シリコーン組成物を含むシリコーン層;
を含んでなる複合品。
【請求項2】
前記硬化シリコーン組成物がさらにヒドロシリル化硬化シリコーン組成物と定義される、請求項1記載の複合品。
【請求項3】
前記ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物が、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒の存在下において、
(A)シリコーン樹脂;および
(B)分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有し、前記シリコーン樹脂を硬化するのに十分な量の有機ケイ素化合物;
の反応生成物を含んでなる、請求項2記載の複合品。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂が式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
(ここで、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニル基であり、wは0から0.9であり、xは0から0.9であり、yは0から0.99であり、zは0から0.85であり、w+x+y+z=1、y+z/(w+x+y+z)は0.1から0.99であり、およびw+x/(w+x+y+z)は0.01から0.9であり、ただし前記シリコーン樹脂は分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有する)
を有する、請求項3記載の複合品。
【請求項5】
前記硬化シリコーン組成物がさらに縮合反応硬化シリコーン組成物と定義される、請求項1記載の複合品。
【請求項6】
前記縮合反応硬化シリコーン組成物が、任意に(C’)触媒量の縮合反応用触媒の存在下において、
(A”)少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂;および
任意に(B’)ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤
の反応生成物を含んでなる、請求項5記載の複合品。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂(A”)が式:
(RSiO1/2w’(RSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’
(ここで、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはR、−H、−OHまたは加水分解性基であり、w’は0から0.8であり、x’は0から0.95であり、y’は0から1であり、z’は0から0.99であり、w’+x’+y’+z’=1、および前記シリコーン樹脂(A”)が分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素接合水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有する)
を有する、請求項6記載の複合品。
【請求項8】
前記シリコーン組成物がさらに微粒子型の無機充填剤を含む、請求項7記載の複合品。
【請求項9】
前記硬化シリコーン組成物がさらにフリーラジカル硬化シリコーン組成物と定義される、請求項1記載の複合品。
【請求項10】
前記フリーラジカル硬化シリコーン組成物が式
(RSiO1/2w”(RSiO2/2x”(RSiO3/2y”(SiO4/2z”
(ここで、RはCからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、いずれも脂肪族不飽和を含まず、RはR、アルケニル基、またはアルキニル基であり;w”は0から0.99であり;x”は0から0.99であり、y”は0から0.99であり、z”は0から0.85であり;およびw”+x”+y”+z”=1)、
を有するシリコーン樹脂から形成される、請求項9記載の複合品。
【請求項11】
前記シリコーン組成物が前記基板に前記シリコーン組成物を接着するため、硬化する前に、少なくとも1個の官能基を含む、請求項1から10のいずれか一項記載の複合品。
【請求項12】
前記少なくとも1個の官能基がシラノール基、アルコキシ基、エポキシ基、水素化ケイ素基、アセトキシ基、およびこれらの組合せの群から選ばれる、請求項1から11のいずれか一項記載の複合品。
【請求項13】
さらに、前記シリコーン層と前記基板との間に配置される接着層を含む、請求項1から10のいずれか一項記載の複合品。
【請求項14】
前記接着層がシリコーン・ベース接着剤を含む、請求項13記載の複合品。
【請求項15】
前記シリコーン層がさらに繊維強化材を含む、請求項1から14のいずれか一項記載の複合品。
【請求項16】
前記シリコーン層が少なくとも約0.1ミクロンの厚さを有する、請求項1から15のいずれか一項記載の複合品。
【請求項17】
前記基板がガラス、金属、およびこれらの組合せの群から選ばれる物質を含んでなる、請求項1から16のいずれか一項記載の複合品。
【請求項18】
前記ガラスがソーダ石灰ガラス、ボロフロートガラス、アルミナケイ酸ガラス、およびこれらの組合せの群から選ばれる、請求項17記載の複合品。
【請求項19】
前記基板が0.5mm以下の厚さである、請求項1から18のいずれか一項記載の複合品。
【請求項20】
前記陽イオン感受性物質がさらに有機発光物質と定義される、請求項1から19のいずれか一項記載の複合品。
【請求項21】
さらに、前記陽イオン感受性層と前記シリコーン層との間に配置される第一電極を含む請求項1から20のいずれか一項記載の複合品。
【請求項22】
前記第一電極が動作可能なように前記シリコーン層に接続される、請求項21記載の複合品。
【請求項23】
さらに、前記第一電極と前記陽イオン感受性層との間に配置される正孔注入層を含む、請求項21または22記載の複合品。
【請求項24】
さらに、前記シリコーン層から前記陽イオン感受性層の反対側に、前記陽イオン感受性層に隣接して配置されるバリヤー層を含む、請求項1から23のいずれか一項記載の複合品。
【請求項25】
前記バリヤー層が従来からのガラス質材料、金属およびこれらの組合せの群から選ばれる物質を含んでなる、請求項24記載の複合品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−514139(P2010−514139A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542916(P2009−542916)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/026030
【国際公開番号】WO2008/079275
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】