説明

陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法と装置

【課題】マイクロバブルのマイナス帯電にて陽イオン金属や陽イオン化合物9吸着、分離しスケールが発生するのを抑制し、設備コスト、ランニングコストを低減する。
【解決手段】陽イオン金属または陽イオン化合物9を含む水処理水系1での処理対象水2をpH4以上に調整するpH調整工程3、処理対象水2にマイクロバブル7を供給するバブル供給5と、処理対象水2中の陽イオン金属または陽イオン化合物9を前記pH調整によりマイナスに帯電したマイクロバブル7の表面に付着させるとともに、この陽イオン金属または陽イオン化合物9を吸着しているマイクロバブル7を前記処理対象水2から比重の違いおよび/または粒径の違いにより分離する分離工程8と、を備えて、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン金属または陽イオン化合物(以下「陽イオン金属等」と呼ぶ)の分離方法と装置に関し、例えば、広く知られるRO膜を用い濃縮を図る水系や、イオン成分が凝縮した冷却水を冷熱媒体とする冷凍機熱交換器により熱交換を行う水系、風呂用の循環式水系などでの水中にスケールが発生するのを抑制する陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これら水中でのスケールの発生は、水処理分野や水利用分野で障害となることがある。例えば、RO膜を用いて濃縮を図る水系でのイオン濃縮によるスケールの発生は、RO膜表面への付着によるファウリング(汚れ)の原因になり、透過水量、膜寿命の早期低下を招く。また、イオン成分が凝縮した冷却水を冷熱媒体とする冷凍機熱交換器により熱交換を行う水系、風呂用の循環式水系などでのスケールの発生は、これの付着による腐食、狭窄、詰まりの原因になり、通水量、熱交換効率、設備機器寿命の低下を招く。
【0003】
このような水系でのスケールの代表である炭酸カルシウムは、次の反応式(1)によって生成する。
Ca2+ + 2HCO →CaCO + HO + CO ・・・・(1)
このような炭酸カルシウムを始めとするスケールの発生を防止する分散剤として、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、スルホン酸、クエン酸、フォスフォン酸などが知られている。
【0004】
例えば、下記化学式(1)のポリアクリル酸や下記化学式(2)のポリマイレン酸は、カルボキシル基(COOH)を持ち、このカルボキシル基に2価の金属イオンであるカルシウムイオンやマグネシウムイオンが吸着さるので、スケール化するのを抑制される。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
また、下記の特許文献1は、分散剤として、特定の組成を持つ共役ジエンのスルホン化合物1モルに対して、特定の組成を持つカルボルキシル基含有化合物0.1〜20モルおよび特定の組成を持つ化合物0.1〜10モルを共重合したスルホン酸基含有共重合体を提供し、リンを含まず排水によっても湖沼の富栄養化の問題がなく、かつ金属イオンとも不溶性塩を生じずスケール防止効果やその永続性に優れるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3018421号公報
【特許文献2】特開2008−36585号公報
【特許文献3】特表平8−511472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示の技術を含め、分散剤を用いるのでは分散剤の消費によりランニングコストが高くつく。また、特許文献1に開示の分散剤も同様に、スケール分散剤は押し並べて排水のCOD、りん等の環境負荷の問題がある。
【0010】
一方、液体中の懸濁物を空気の吹き込みで発生するバブル、マイクロバブルにより浮遊分離する技術が特開2008−36585号公報(特許文献2)で知られ、これがスケール化成分の除去に適用できればランニングコスト低下、環境負荷解消に貢献できる。
【0011】
特許文献2は特許文献3(特表平8−511472号公報)を課題として引用している。その特許文献3には、懸濁物を含む液体中に追加的にガスを導入しつつ、自然上昇するバブルの方向に対向するように0.3m/s以下の流速で導入された懸濁物を含む液体を流し、それらがガス処理された当該懸濁物を含む液体を底部から取り出し、さらに浮遊沈降装置に供給する液体中の懸濁物の分離方法が開示されている。
【0012】
この技術では多量の微粒子を浮上させるには導入する気泡をマイクロバブルとしなければならないが、引用文献2は、マイクロバブルは浮上速度が遅いため実用化はされていない旨を指摘し、これに対応するため、懸濁液内にマイクロバブル発生装置を用いて気泡径が1μmから100μmのマイクロバブルを分散させ、マイクロバブル表面に懸濁物を付着させ、このマイクロバブルを分散させた懸濁液に超音波発信器から周波数が20kHzから1MHzの超音波を照射することによりマイクロバブル同士の凝集を促し、懸濁物の浮遊分離を促進する技術を開示している。
【0013】
しかし、このような液中の懸濁物を吸着して浮遊分離させるマイクロバブルの挙動は、スケール化成分が凝集してスケール化するのを抑制する分散剤に代わる作用には相反し、スケール化の抑制には適合しない。
【0014】
本発明者は、スケール化成分が陽イオン金属等であること、マイクロバブルの表面電位はマイクロバブルの大きさに影響されないが、表面電位の極性をpHによって操作できることに着目し、陽イオン金属等をマイナスに帯電操作したマイクロバブルに吸着することで、凝集の発生を抑制し、膜分離する場合の膜表面へのファウリングや濃縮水でのスケールの発生を抑制できることを知見した。これは、マイクロバブルの浮上速度が特許文献2で指摘しているように遅い、つまり、水中での滞留時間の長いことを有利に活用したものである。
【0015】
本発明は、そのような新たな知見に基づき、マイクロバブルのマイナス帯電操作により陽イオン金属等をいち早く吸着して分離しスケールが発生するのを抑制でき、そのための設備コスト、ランニングコスト共に低減できる陽イオン金属等の分離方法と装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法は、陽イオン金属等を含む水処理水系での処理対象水をpH4以上に調整するpH調整工程と、この処理対象水にマイクロバブルを供給するバブル供給工程と、前記処理対象水中の陽イオン金属等を前記pH調整によりマイナスに帯電したマイクロバブルの表面に付着させるとともに、この陽イオン金属等を吸着しているマイクロバブルを前記処理対象水から比重の違いおよび/または粒径の違いにより分離する分離工程と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
このような構成では、陽イオン金属等を含む処理対象水をpH4以上に調整するのに併せて、処理対象水にマイクロバブルを供給するので、供給したマイクロバブルの表面電位をマイナスに操作することができる。結果、供給したマイクロバブルは、電位極性が反対である処理対象水中の陽イオン金属等を表面に吸着する電気的作用を有する。この電気的な吸着作用は、マイクロバブルの処理対象水中での浮上速度が遅く、滞留時間が長いので、十分な接触域と接触時間を確保して処理対象水中の陽イオン金属等の全体に及ぶ。また、個々のマイクロバブルは陽イオン金属等が表面に吸着しているためマイナスに帯電している。さらに陽イオン金属等が静電気力によりその周囲に引き寄せられて電気二重層を形成している。このため、マイクロバブル同士は、電気的反発力によって、分散剤などを添加しなくても、凝集しないで処理対象水中に存在する。そして、このような状態を利用して、陽イオン金属等を比重や粒径の違いを利用して分離させることができる。
【0018】
これを達成する本発明の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置としては、陽イオン金属等を含む水処理水系に、処理対象水をpH4以上に調整するpH調整手段と、このpHの調整と同時または異時に処理対象水にマイクロバブルを供給するバブル供給手段と、前記マイクロバブルを供給された処理対象水中の陽イオン金属等の前記pH調整によりマイナス帯電したマイクロバブル表面への吸着を伴い、この陽イオン金属等を吸着しているマイクロバブルを比重および/または粒径の違いを利用して前記処理対象水から分離する分離手段と、を備えたことを特徴として、上記の方法を自動的に達成する。
【0019】
上記方法において、さらに、分離工程は、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを、その粒径から透過しない分離膜により捕捉して処理対象水から分離する膜分離工程とすることができる。
【0020】
このような構成では、上記に加え、さらに、処理対象水中の微細な陽イオン金属等がマイクロバブルとの吸着単位径に増大しているのを利用して、分離膜によってスケール化することなく容易かつ確実に粒径分離することができる。
【0021】
それには、上記装置としては、分離手段に、導入した処理対象水中の陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを透過させず捕捉する分離膜を処理対象水の通過経路途中に設ければよい。
【0022】
上記方法において、さらに、膜分離工程において、マイクロバブルを供給し、分離膜に付着した陽イオン金属または陽イオン化合物を前記供給したマイクロバブルに吸着させて浮遊分離させることができる。
【0023】
このような構成では、上記に加え、さらに、処理対象水中の陽イオン金属または陽イオン化合物をマイクロバブルとの吸着単位で膜分離する過程で、陽イオン金属または陽イオン化合物が分離膜に付着することがあっても、そこに供給した新たなマイクロバブルによって吸着させて分離膜面から分離させられる。
【0024】
それには、上記装置としては、分離手段に、分離膜の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離側、つまり濃縮側にマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段を備えればよい。
【0025】
上記方法において、さらに、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを分離した濃縮水を、再度pH調整工程および/またはバブル供給工程の上流に返送することができる。
【0026】
このような構成では、上記に加え、さらに、濃縮水を再度pH調整工程および/またはバブル供給工程の上流に供給することで、マイクロバブルによる再度の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離処理に供することができる。
【0027】
それには、上記装置としては、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルが分離されて分離手段から送り出される濃縮水を、再度処理対象水として、分離手段より上流のpH調整手段またはバブル供給手段に返送する返送路を設ければよい。
【0028】
上記方法において、さらに、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着しているマイクロバブルを空中に放出して、濃縮する濃縮工程を、前記分離工程の下流側に備えることができる。
【0029】
このような構成では、上記に加え、さらに、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルの空中への放出によって、マイクロバブルはこれに対し容積比の極端に小さい陽イオン金属または陽イオン化合物を置き去りにして空中に自然発散するので、置き去りにされる陽イオン金属または陽イオン化合物は極度に濃縮され、大幅に減溶化する。
【0030】
それには、上記装置としては、分離手段から送り出される陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを導入して、マイクロバブルを空中に放出し、陽イオン金属または陽イオン化合物を濃縮する濃縮手段を設ければよい。
【0031】
上記方法において、さらに、濃縮工程は、超音波発生装置によってマイクロバブルに超音波を照射することにより、マイクロバブルを浮上させて空中への放出させるようにすることができる。
【0032】
このような構成では、上記に加え、さらに、マイクロバブルに超音波を照射すると、マイクロバブルを積極的に浮上させられるので、空中への放出を促進させられる。
【0033】
それには、上記装置としては、濃縮手段に、導入した陽イオン金属または陽イオン化合物に超音波を照射する超音波照射手段を設ければよい。
【0034】
上記方法において、さらに、濃縮工程の下流に、pH調整および/または凝集剤の投与により、濃縮された陽イオン金属または陽イオン化合物を凝集沈殿させて回収に供する凝集工程を備えることができる。
【0035】
このような構成では、上記に加え、さらに、濃縮工程後の陽イオン金属または陽イオン化合物を、pH調整および/または凝集剤の投与により凝集度を高めて、凝集沈澱させることで、さらなる減溶化を図って回収に供することができる。
【0036】
それには、上記装置としては、濃縮手段から送り出される濃縮後の陽イオン金属または陽イオン化合物を導入してpH調整手段によるpH調整および/または凝集剤供給手段による凝集剤の投与を行って陽イオン金属または陽イオン化合物の凝集沈殿を図る凝縮手段を設ければよい。
【0037】
本発明のそれ以上の課題および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り種々の組み合わせで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の本発明の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法と装置によれば、水処理水系において、pH4以上に調整した処理対象水にマイクロバブルを供給して、マイクロバブルの表面電位をマイナスに操作する結果、処理対象水に含まれる陽イオン金属または陽イオン化合物をマイクロバブル表面に電気的に吸着して、表面の陽イオン金属または陽イオン化合物同士の電気的反発によって凝集、スケール化を抑制する。そして、所定の期間、処理対象水に滞留ないしは随伴させて、陽イオン金属または陽イオン化合物をマイクロバブルとの吸着単位で、比重および/または粒径の違いを利用して処理対象水から効率よく分離するので、水処理水系でのスケール生成を抑制して、粒径分離するときの分離膜のファウリング、冷却水、お湯循環系での腐食、狭窄、詰まりといった問題を抑制することができる。また、処理が簡単で設備コストが安価な上、分散剤などの薬剤を使用しないので、環境負荷およびランニングコスト共に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施の形態の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置の1つの例を示す概略ブロック図。
【図2】本発明に係る実施の形態の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置の別の例を示す概略ブロック図。
【図3】マイクロバブル径と水中の上昇速度との関係を示すグラフ。
【図4】特定の条件でのマイクロバブル径とゼータ電位との関係を示すグラフ。
【図5】別の条件でのマイクロバブル径とゼータ電位との関係を示すグラフ。
【図6】他の条件でのマイクロバブル径とゼータ電位との関係を示すグラフ。
【図7】水溶液のpHとマイクロバブルのゼータ電位およびその性質(極性)との関係を示すグラフ。
【図8】理想溶液でのイオン成分とそれらのイオン伝導度を示すテーブル。
【図9】理想溶液でのNaClの濃度とそのゼータ電位との関係を示すグラフ。
【図10】理想溶液でのMgClの濃度とそのゼータ電位との関係を示すグラフ。
【図11】水中でのマイクロバブルの界面から水中への距離と表面電位分布との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法と装置の実施の形態について、図1〜図11を参照しながらいくつかの具体例について説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0041】
本発明の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法は、図1に例示する陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置100、図2に例示する陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置200を参照して、陽イオン金属または陽イオン化合物であるスケール化成分9を含む水処理水系1での処理対象水2を、pH調整工程部3でpH調整剤4を投入してpH4以上に調整するpH調整工程3と、バブル供給工程部5で処理対象水2に空気6で代表されるガスよりなるマイクロバブル7を供給するバブル供給工程5と、前記処理対象水2中の陽イオン金属または陽イオン化合物であるスケール化成分9を前記pH調整によりマイナスに帯電したマイクロバブル7の表面に付着させるとともに、この陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を前記処理対象水2から比重および/または粒径の違いを利用して分離する分離工程8と、を備えたことを基本構成としている。
【0042】
このように、陽イオン金属または陽イオン化合物であるスケール化成分9(以下単にスケール化成分9という)を含む処理対象水2をpH4以上に調整するのに併せて、この処理対象水2にマイクロバブル7を供給するので、供給するマイクロバブル7の表面電位を処理対象水2がpH4以上であることに依存してマイナスに操作することができる。結果、マイクロバブル7は図1、図2の分離工程8にて例示するように、電位が反対である処理対象水2中のスケール化成分9を表面に吸着する電気的作用を有する。この吸着の電気的作用は、マイクロバブル7の処理対象水2中での浮上速度が遅く、滞留時間が長い性質により、十分な接触域と接触時間を確保して処理対象水2中のスケール化成分9の全体に及ぶ。そして、個々のマイクロバブル7はスケール化成分9を表面に吸着したまま、吸着により電位がややマイナスで安定し、マイクロバブ7同士の電気的反発によって、分散剤がなくても、凝集することなく処理対象水2中に長期間安定して存在する。従って、マイクロバブル7に吸着した陽イオン等を比重および/または粒径の違いを利用して分離することができる。
【0043】
これは、既述したように、スケール化成分9が陽イオン金属、陽イオン化合物であること、マイクロバブル7の表面ゼータ電位はマイクロバブル7の大きさに影響されないが、電位の極性を陽イオン金属、陽イオンを含む水系1でのpHによって操作できることに着目したものである。このような特性は、JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY B,109−,pp.21858−21864、2005/11に掲載されたMasayoshi Takahashi(高橋正好)氏によるtheζPotential of Microbubbles in Aqueous Solutions --Electrical of the gas‐water interface-- と題する研究発表によって、その第72頁図1と共に説明されたマイクロバブルの供給装置(Microbubble aerator)の概要に併せ既に知られている(非特許文献1)。
【0044】
マイクロバブルは図3(非特許文献1第73頁の図2から)に見られるように、水中での上昇速度が100μm/sec以上と遅く、粒径が50μmでは1000μm/sec程度と10倍になる。本実施の形態ではマイクロバブル7によるスケール化成分9の吸着確率と、吸着による分離確率を満足する水中滞留時間を得るのに1000μm/sec〜100μm/sec程度の上昇速度が好ましく、この範囲で上昇速度は遅い程好適である
。それには、マイクロバブルの粒径は50μm程度以下が好ましく、この範囲で粒径は小さい程好適である。
【0045】
マイクロバブルの帯電につき、非特許文献1は、その第76頁において、電気泳動法にてゼータ電位を測定することで確認されるとし、図11(非特許文献1第82頁図12から)に見られる水中でのマイクロバブルと水との境界面から水中へ向けての距離の増大に伴う表面電位の分布を示している。そして、気泡と共に移動する水の層は極めて薄いため、図11に見られる滑り面でのゼータ電位の値で表面の電気的特性を議論して基本的に大きな問題がない旨指摘している。そこで、本実施の形態においてもマイクロバブル7の表面電位をゼータ電位ζとして取扱い説明する。このゼータ電位ζは図4〜図6(非特許文献第77頁図6、同第80頁図9、図10図から)に見られるように、バブルの大きさに左右されないので、前記滞留時間選択のための粒径の大きさの選択に支障はない。しかし、粒径が小さくなり過ぎると滞留中に消滅する確率が高くなるので、分離に必要な時間を確保する上で、ナノバブルオーダーの粒径を上回るのが好適である。
【0046】
また、図7(非特許文献1第81頁図11から)に見られるように、マイクロバブルの表面電位ζがマイナスに帯電するかプラスに帯電するかはpHによって依存する。従って、陽イオン金属等を吸着させるためにマイクロバブルの表面電位ζをマイナスに帯電させるには、処理対象水2を既述の通りpH4以上となるように調整するのが好適となる。
【0047】
一方、分離対象とするスケール化成分9は既述のように炭酸カルシウムで代表されるが、処理対象水2を理想溶液、25℃におけるイオン成分およびその極性と、1モル当たりのイオン伝導度は、図8(CRC Handbook of Chemistry and Physics,66th Edition,1985−1986,pp.167−168(非特許文献2) Teble7.3,10.3から)に見られる通りである。図8から、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンのイオン伝導度はそれぞれ50.1、106.0(Scm2/mol)であり、マグネシウムイオンのイオン伝導度はナトリウムイオンのそれのほぼ2倍である。
【0048】
ここで、図9、図10(非特許文献1図7、図8から)を見ると、NaCl、MgClを共に、10−2(mol/L)の濃度(consentration)としたときの、それぞれのゼータ電位ζは、20mv、3mvであり、濃度が10−5(mol/L)であるときのそれぞれのゼータ電位38mv、38mvからは、NaClで18mvの上昇、MgClで35mvの上昇となっている。ここに、NaCl、MgClは共に、元のゼータ電位ζが38mv程度あることから、プラスに帯電しているイオンに影響されるはずであるが、当実験結果中ではナトリウムとマグネシウムが関与していることで、塩化物イオンは影響していない。
【0049】
また、NaCl、MgClそれぞれのイオン伝導度は以下の通りである。
Nacl 10−2(mol/L)→50.1×10−2(Scm/L)
Mgcl 10−2(mol/L)→106.0×10−2(Scm/L)
つまり、マグネシウムイオンのイオン伝導度がナトリウムイオンのイオン伝導度の約2倍あることによって、それらが同モル濃度であるものの、ゼータ電位ζの上昇が約2倍になっている。
【0050】
ここに、ゼータ電位ζとは、水中の電荷の大きさと性質(極性)を示す値であり、マイナス同士、プラス同士では反発し、プラスとマイナスとではそれぞれのゼータ電位が互いの吸着により電気的に中和される。この中和作用によってイオン成分では結晶となり、汚泥成分に凝集剤を添加した場合などでは汚泥が凝集し合って沈殿する。既述した反応式1での、水中でスケール化成分の代表である炭酸カルシウムが生成する反応も、プラスのカ
ルシウムイオンとマイナスの重炭酸イオンとの表面電荷であるゼータ電位によって互いに吸着して中和されたことで電位が上昇し、電気的に安定した結果である。
【0051】
本実施の形態のマイクロバブル7の場合もその性質、極性による電気的作用は同様であり、マイナスの電荷を帯びるようpH調整により帯電電荷の性質、極性を操作していることで、プラスの電荷を帯びているスケール化成分9であるナトリウムイオン、マグネシウムイオンを吸着して、電気的に中和されることで電位が上昇し、電気的に安定する。換言すると、このような電気的中和を超える量のスケール成分の吸着、凝縮は生じないし、電気的に中和状態の各マイクロバブル7同士は、スケール化成分9によって電気的に中和され、ややマイナスに帯電しているため、マイクロバブル7同士の電気的な反発によって吸引、吸着し合うことはないし、マイクロバブル7同士の凝集も生じない。従って、スケール化成分9の凝集によるスケール化を抑制しながら、スケール化成分9をマイクロバブル7との吸着単位での比重および/または粒径の違いにより処理対象水2から個別に分離することができる。
【0052】
このような、本実施の形態の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法によれば、水処理水系1において、pH4以上に調整した処理対象水2にマイクロバブル7を供給して、マイクロバブル7の表面ゼータ電位ζをマイナスに操作する。結果、処理対象水2に含まれる陽イオン金属等であるスケール化成分9はマイクロバブル7表面に電気的に吸着する。そして、陽イオン金属または陽イオン化合物によって電気的に中和され、ややマイナスに帯電したマイクロバブル7は、マイクロバブル7同士の電気的反発によって、陽イオン金属等が、凝集、スケール化を抑制しながら長期間、処理対象水2に滞留する。
【0053】
マイクロバブルの滞留期間は長いので、陽イオン金属等は、マイクロバブル7との吸着単位で、比重および/または粒径の違いを利用して処理対象水から効率よく分離することができる。そして、水処理水系1でのスケール生成を抑制して、粒径分離するときの分離膜のファウリング、冷却水、風呂用の温水循環系での腐食、狭窄、詰まりといった問題を抑制することができる。また、処理が簡単で設備コストが安価な上、分散剤などの薬剤を使用しないので、環境負荷およびランニングコスト共に低減する。
【0054】
このような方法を達成するのに図1、図2に例示する陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置100、200は、それぞれ、スケール化成分9を含む水処理水系1に、処理対象水2にpH調整剤4を供給してpH4以上に調整するpH調整手段11と、このpHの調整と同時または異時に処理対象水2に空気6で代表されるガスによるマイクロバブル7を供給するバブル供給手段12と、前記マイクロバブル7を供給された処理対象水2中のスケール化成分9の前記供給されたマイクロバブル7表面へ吸着させ、この陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を比重および/または粒径の違いを利用して前記処理対象水2から分離する分離手段13と、を備えたものとしている。これにより上記の方法を自動的に連続して確実に達成することができる。
【0055】
ここで、上記方法における分離工程は、陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を、これが透過しない図1、図2に例示している分離膜21により捕捉して処理対象水から分離する膜分離工程とすることができる。これにより、処理対象水2中のスケール化成分9である微細な陽イオン金属または陽イオン化合物がマイクロバブル7との吸着単位径に増大しているのを利用して、通水抵抗のより少ない分離膜21により容易かつ確実に分離することができる。従って、上記したように、分離膜21の濃縮側13a表面にスケールが付着するファウリング、これによる早期の目詰まり、寿命の低下を招くのを抑制しながら、スケールの発生がないか、少なく、かつ、スケール化成分9の少ない透過側13bからの透過水22をその利用水系、具体的には既述した冷凍機熱交換器での冷却水系や風呂用の温水循環系でのスケールの発生とそれによる水系での腐食、狭窄
、詰まりを長期に防止することができる。
【0056】
また、これを達成するのに、上記装置100、200としては、分離手段13に、導入した処理対象水2中のスケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7をその粒径によって透過させず捕捉する分離膜21を処理対象水2の通過経路途中に設ければよい。
【0057】
具体的には、分離手段13を構成する分離槽24の処理対象水1の供給側と排出側の境界部分に分離膜21を配置する。このような配置した分離膜21による分離工程を説明すると、まず、処理対象水2が導入されたマイクロバブル発生槽23で、マイクロバブル供給手段pH調整手段11によるpH調整剤4の投入によるpH調整と、マイクロバブル供給手段12による空気6の吹き込みによるマイクロバブル7の供給を同時に行う。次にこのマイクロバブル発生槽23から十分にマイナス帯電し、スケール化成分9を中和状態にまで吸着したマイクロバブル7を含む処理対象水2を分離槽24に導入する。分離槽24中では、マイクロバブル7の長い滞留時間を利用して分離膜21により陽イオン金属等が付着したマイクロバブルを含む濃縮水2aと、透過水に分けられる。
【0058】
しかし、これに限られることはなく、pH調整手段11によるpH調整と、マイクロバブル供給手段12によるマイクロバブル7の供給とは、異時、つまり処理水系1での上流と下流とで相前後して行ってもよいし、基本的にはどちらが上流側になってもよい。
【0059】
以上のような分離膜21としては、既述のRO膜、逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane)がある。逆浸透膜は、浸透圧の差を利用して、ないしは濃度の高い液体に圧力をかけることで、水分子だけを透過させられる。つまり、通常の浸透現象と逆の働きをする逆浸透特性を発揮する特性を利用する。逆浸透膜による分離性能は透過孔の大きさが水の分子だけを通す特性からその透過孔の大きさを水分子オーダに見合う0.0001ミクロンとされるが諸説ある。いずれにしても、RO膜によれば透過孔のサイズ選択によっては処理対象中に溶存しているイオン成分を始めウイルスレベルまでも分離できることになる。ここで、上記マイクロバブル発生槽23から分離槽24への処理対象水2の送り込み圧および/またはマイクロバブル7の分離槽24での浮上力は、前記逆浸透膜である分離膜21での濃縮側の浸透圧として作用する。
【0060】
上記方法の膜分離工程において、マイクロバブル7を供給し、分離膜21に付着したスケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物を前記供給したマイクロバブル7に吸着させて浮遊分離させることができる。これにより、処理対象水2中のスケール化成分9をマイクロバブル7との吸着単位で膜分離する過程で、スケール化成分9が分離膜に電気的に付着することがあっても、そこに供給した浮遊、浮上勢力の強いマイナスに電荷した新たなマイクロバブル7によって吸着させて分離膜21表面から浮遊し分離させられる。これを達成するには、図1、図2の装置100、200において仮想線で示すように分離手段13に、具体的には分離膜21の濃縮側域13aに、マイクロバブル7を供給するマイクロバブル供給手段12aを備えればよい。
【0061】
しかし、これに限られることはなく、マイクロバブル供給手段12aに代えて、マイクロバブル発生工程3でのマイクロバブル供給手段12を分離手段13にて単独に、あるいはpH調整手段11と共に設置することもできる。これでは、マイクロバブル7のマイナス帯電によるスケール化成分9の吸着分離に十分な時間を得にくい場合、分離手段13の濃縮側13aの容量アップ、バブル供給位置から分離位置までの距離や高さを増大するといったことで対応できる。なお、図では、マイクロバブル供給手段12aは、マイクロバブル発生槽23から供給されているような方向からの矢印であるが、これは分離槽24へマイクロバブルを供給することを示す。
【0062】
また、上記分離工程8で、スケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を分離した濃縮水2aを、図1、図2の装置100、200に破線で示すように再度pH調整工程3またはバブル供給工程5の上流に返送することができる。このようにすると、濃縮水2aを再度pH調整工程3および/またはバブル供給工程5の上流に供給することで、マイナスに帯電したマイクロバブル7による再度のスケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物の分離処理に供することができ、分離率、濃縮度をさらに高められる。
【0063】
これには、分離槽24からの濃縮水2aの全量を返送するのが有利であるし、返送の繰り返し回数を増やすのが好適となるが、必要に応じて実施すればよい。また、全量の返送に代えて一部を返送にても有効ではある。これらの操作は、濃縮水2aの送り出し路31の途中に接続した返送路32との分岐部に設けた切換え調整弁33の通路切換えや送り出し路31側への流量制限調整などによって自由に行える。
【0064】
さらに、スケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を空中に放出して、濃縮する濃縮工程35を、図1、図2に示すように前記分離工程8の下流側に備えることができる。これにより、スケール化成分9が付着したマイクロバブル7の空中34への放出によって、マイクロバブル7はスケール化成分9を置き去りにして空中34に空気6として自然発散するので、置き去りにされるスケール化成分9はさらに濃縮して高濃縮液2a1となり、大幅に減溶化する。従って、取り扱いおよび処分が容易になる。
【0065】
このために、図1、図2の装置100、200では、分離手段13のから送り出される陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブル7を含む濃縮水2bを送り出し路31を通じ、空中34に開放した濃縮槽35に導入して、マイクロバブル7を空中に放出し、スケール化成分9を含む凝縮水2aを高濃縮水2a1に濃縮する濃縮手段36を設けている。
【0066】
このマイクロバブル7の空中34への放出のために、図2に示す装置200では、特に、濃縮工程35において、マイクロバブル7に超音波を照射することにより、マイクロバブル7を浮上させて空中34に放出させやすくする手法を採用している。このように、マイクロバブル7に超音波を照射すると、マイクロバブル7を積極的に浮上させられるので、空中34への放出を促進させられる。このために、装置200としては、濃縮手段37の濃縮槽36に、導入した濃縮水2aに超音波を照射する超音波発生装置38を設けている。具体的は、図2に示すように超音波振動子38aを濃縮槽36の底部から濃縮槽36内に導入した濃縮水2aに向け臨ませればよい。
【0067】
さらに、図1、図2のいずれの装置100、200においても、濃縮工程35の下流に、図1の装置100で代表して一点鎖線で示すように、pH調整剤43の投入によるpH調整および/または凝集剤45の投与により、濃縮された高濃縮水2a1を凝集沈殿させて回収に供する凝集工程41を実施するものとすることができる。これにより、濃縮工程後の高濃縮液2a1中のスケール化成分9である陽イオン金属または陽イオン化合物を、pH調整剤43によるpH調整および/または凝集剤45の投与により凝集度を高めて、凝集沈澱物2a2として沈澱させることで、スケール化成分9のさらなる減溶化を図って回収に供することができる。このためには、濃縮槽36の下流に凝集槽42を接続して濃縮槽36からの高濃縮液2a1を導入し、導入した高濃縮液2a1にpH調整剤43を投入するpH調整手段44および/または凝集剤45を投入する凝集剤供給手段46を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、処理対象水中の陽イオン金属や陽イオン化合物をマイナスに帯電操作したマイクロバブルにより吸着、分離しスケールが発生するのを抑制でき、設備コスト、ランニングコスト共に低減できる。
【符号の説明】
【0069】
1 水処理水系
2 処理対象水
2a 濃縮水
2b 透過水
2a1 高濃縮水
2a2 凝集沈殿物
3 pH調整工程
4 pH調整剤
5 マイクロバブル供給工程
6 空気
7 マイクロバブル
8 分離行程
9 スケール化成分
11 pH調整剤供給手段
12 マイクロバブル供給手段
13 分離手段
13a 濃縮側
13b 透過側
21 分離膜
23 マイクロバブル発生槽
24 分離槽
31 送り出し路
32 返送路
33 切換え調整弁
34 空中
35 濃縮工程
36 濃縮槽
37 濃縮手段
41 凝集工程
42 凝集槽
43 pH調整剤
44 pH調整手段
45 凝集剤
46 凝集剤供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン金属または陽イオン化合物を含む水処理水系での処理対象水をpH4以上に調整するpH調整工程と、
この処理対象水にマイクロバブルを供給するバブル供給工程と、
前記処理対象水中の陽イオン金属または陽イオン化合物を前記pH調整によりマイナスに帯電したマイクロバブルの表面に付着させるとともに、この陽イオン金属または陽イオン化合物を吸着しているマイクロバブルを前記処理対象水から比重の違いおよび/または粒径の違いにより分離する分離工程と、
を備えたことを特徴とする陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項2】
前記分離工程は、
陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを、その粒径から透過しない分離膜により捕捉して処理対象水から分離する膜分離工程である
請求項1に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項3】
前記膜分離工程において、
マイクロバブルを供給し、前記分離膜に付着した陽イオン金属または陽イオン化合物を前記供給したマイクロバブルに吸着させて浮遊分離させる
請求項2に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項4】
陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを分離した濃縮水を、再度pH調整工程および/またはバブル供給工程の上流に返送する請求項1〜3のいずれか1項の記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項5】
陽イオン金属または陽イオン化合物が付着しているマイクロバブルを空中に放出して、濃縮する濃縮工程を、
前記分離工程の下流側に備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項6】
前記濃縮工程は、
超音波発生装置によってマイクロバブルに超音波を照射することにより、マイクロバブルを浮上させて空中への放出させる請求項5に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項7】
前記濃縮工程の下流に、pH調整および/または凝集剤の投与により、濃縮された陽イオン金属または陽イオン化合物を凝集沈殿させて回収に供する凝集工程を備えた請求項6に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離方法。
【請求項8】
陽イオン金属または陽イオン化合物を含む水処理水系に、処理対象水をpH4以上に調整するpH調整手段と、
このpHの調整と同時または異時に処理対象水にマイクロバブルを供給するバブル供給手段と、
前記マイクロバブルを供給された処理対象水中の陽イオン金属または陽イオン化合物の前記pH調整によりマイナス帯電したマイクロバブル表面への吸着を伴い、この陽イオン金属または陽イオン化合物を吸着しているマイクロバブルを比重および/または粒径の違いを利用して前記処理対象水から分離する分離手段と、
を備えたことを特徴とする陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。
【請求項9】
前記分離手段に、導入した処理対象水中の陽イオン金属または陽イオン化合物が付着し
たマイクロバブルを透過させず捕捉する分離膜を処理対象水の通過経路途中に設けた請求項8に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。
【請求項10】
前記分離手段に、分離膜の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離側、つまり濃縮側にマイクロバブルを供給するマイクロバブル供給手段を備えた請求項9に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。
【請求項11】
陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルが分離されて分離手段から送り出される濃縮水を、再度処理対象水として、分離手段より上流のpH調整手段またはバブル供給手段に返送する返送路を設けた請求項8〜10のいずれか1項に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。
【請求項12】
前記分離手段から送り出される陽イオン金属または陽イオン化合物が付着したマイクロバブルを導入して、マイクロバブルを空中に放出し、陽イオン金属または陽イオン化合物を濃縮する濃縮手段を設けた請求項8〜11のいずれか1項に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。
【請求項13】
前記濃縮手段から送り出される濃縮後の陽イオン金属または陽イオン化合物を導入してpH調整手段によるpH調整および/または凝集剤供給手段による凝集剤の投与を行って陽イオン金属または陽イオン化合物の凝集沈殿を図る凝縮手段を設けた請求項8〜12のいずれか1項に記載の陽イオン金属または陽イオン化合物の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−161407(P2011−161407A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29670(P2010−29670)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(591261336)パナソニック環境エンジニアリング株式会社 (29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】