隊列走行装置
【課題】先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列に新たな車両が加わることができる隊列走行装置を提供する。
【解決手段】自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数との差が収容可能を示しているが(SD44がYes)、自車両が電波遮蔽体となって、最大収容台数の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する(SD45)。電波遮蔽状態であると判断した場合には(SD45がYes)、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する(SD49)。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、後続車両が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。
【解決手段】自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数との差が収容可能を示しているが(SD44がYes)、自車両が電波遮蔽体となって、最大収容台数の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する(SD45)。電波遮蔽状態であると判断した場合には(SD45がYes)、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する(SD49)。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、後続車両が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、他車両とともに隊列走行を行なうための車両走行制御を行なう隊列走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両が隊列を形成して走行する隊列走行において、隊列の複数の後続車両が、隊列の先頭車両が送信する走行情報を直接受信して車両走行制御を行なう技術が知られている(たとえば特許文献1)。この技術によれば、先頭車両の直近の後続車両以外の後続車両も、先頭車両の走行情報を迅速に反映した走行制御を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−239585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように、隊列の複数の後続車両が、隊列の先頭車両が送信する走行情報を直接受信して車両走行制御を行なう場合、後続車両は、先頭車両の走行情報を安定的に受信できる必要がある。そこで、先頭車両が隊列走行時に送信する情報に、現時点で隊列にさらに何台収容できるかを示す情報(以下、現在収容可能台数情報)を含ませることが考えられる。
【0005】
この現在収容可能台数情報は、先頭車両の無線通信機の通信能力により定まる隊列の最大収容台数と現在の隊列の収容台数(現在収容台数)との差や、その差を算出する前の最大収容台数および現在収容台数からなる情報である。
【0006】
先頭車両が送信する情報に、この現在収容可能台数情報を含ませることにより、隊列の車両数が、先頭車両が送信する情報を安定的に受信できない車両数となってしまうことを防止できる。
【0007】
しかし、先頭車両が送信する現在収容可能台数情報は、まだ隊列に入れることを示していても、新たな車両が隊列に加われない場合がある。具体的には、既に隊列に入っているいずれかの後続車両が大きい車両であり、この大きい後続車両により先頭車両の電波が遮蔽されてしまう場合である。
【0008】
この場合、先頭車両が送信する電波を遮蔽してしまう後続車両の存在により、新たに隊列に加わろうとする車両は、先頭車両から隊列走行情報を受信することができないので、隊列に加わることができないのである。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列に新たな車両が加わることができる隊列走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両に搭載される隊列走行装置であり、車車間通信を行なう無線通信機を備え、他車両が隊列走行制御を行なうために、無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信する。そして、自車両が隊列の後続車両であれば、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0011】
また、自車両が先頭車両である場合、先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点で隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を隊列走行情報に含ませて送信する。一方、自車両が後続車両であって、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が先頭車両であるとして、自車両が先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現在収容可能台数情報を含ませて送信する。なお、現在収容可能台数情報とは、あと何台収容できるかを直接的に示す情報でもよいし、後述する最大収容台数と現在収容台数からなる情報でもよい。
【0012】
このように、本発明では、自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する。
【0013】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、後続車両が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。また、受信した隊列走行情報には、先頭情報と現在収容可能台数情報が含まれているので、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列外の車両は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明では、上記目的を達成しつつ、サブ隊列を、隊列走行制御を行なう単位とすることで、全体隊列を長くすることができる。その請求項2記載の発明は、車両に搭載される隊列走行装置であり、車車間通信を行なう無線通信機を備え、他車両が隊列走行制御を行なうために、無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信する。そして、自車両が隊列の後続車両であれば、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0015】
また、隊列走行情報に、全体隊列のIDである全体隊列ID、および、全体隊列を、各隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の隊列に分けたサブ隊列のIDであるサブ隊列IDを含ませて送信する。
【0016】
また、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合、サブ隊列の先頭車両であることをサブ隊列の後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点でこのサブ隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を隊列走行情報に含ませて送信する。
【0017】
一方、自車両がサブ隊列の後続車両である場合には、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて隊列走行制御を行い、且つ、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、その先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とする。
【0018】
さらに、自車両が2番目以降のサブ隊列の先頭車両である場合には、前のサブ隊列の後続車両として、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて自車両の隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を隊列走行情報に含ませて送信する。
【0019】
この請求項2記載の発明では、全体隊列のIDを示す全体隊列IDを送信することに加えて、サブ隊列IDを送信しており、サブ隊列IDを利用して隊列走行制御が行われる。サブ隊列は、サブ隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の車両数であることから、サブ隊列における後続車両は、サブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報を受信して隊列走行制御を行なうことができる。
【0020】
加えて、2番目以降のサブ隊列の先頭車両は、前のサブ隊列における後続車両でもあり、自車両が後続車両となるサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を受信して自車両の隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を隊列走行情報に含ませて送信する。よって、自車両が先頭車両となっているサブ隊列の後続車両も、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に基づいた隊列走行制御を行なうことになる。これにより、全体隊列の先頭車両の収容台数を超えた台数の隊列を形成することができる。
【0021】
このように、全体隊列の先頭車両の収容台数を超えた台数の隊列を形成することができる構成を備えている場合、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両の存在により、隊列の車両数が制限されてしまうとすれば、全体隊列を長くするための構成が十分に活用できない。
【0022】
しかし、この請求項2記載の発明でも、サブ隊列の後続車両は、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行制御に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する。
【0023】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とする。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、新たにサブ隊列の先頭車両となった車両が送信する隊列走行情報を受信することができる。よって、サブ隊列の先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列外の車両は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができ、その結果、全体隊列を長くすることができる。
【0024】
ところで、後続車両の判断は、電波遮蔽状態であるとの判断だったとしても、この判断は正しいとは限らず、実際には、先頭車両の隊列走行情報が隊列最後尾の位置の車両により受信できる場合もある。この場合には、後続車両が新たに先頭車両として隊列走行情報を送信することにより、上記隊列最後尾の位置の車両は、2台の先頭車両からそれぞれ隊列走行情報を受信できる。よって、どちらを自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とするかが問題となる。
【0025】
そこで、請求項3記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、より前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。
【0026】
このように、より前方の先頭車両の隊列走行情報を用いるようにすれば、隊列全体においてより前方の車両の情報を使うことになる。よって、隊列の前方の車両挙動を迅速に反映した車両制御が可能となる。
【0027】
また、請求項4記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、受信品質が予め設定された基準品質以上の情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。このようにすれば、先頭車両として設定した車両から隊列走行情報を受信できないことによって、隊列走行制御ができなくなってしまうことを抑制できる。
【0028】
また、請求項5記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わった場合、隊列に加わったことを示す隊列参加通知を無線通信機から送信する。また、自車両が電波遮蔽状態であると判断して先頭車両となった後に、隊列参加通知を受信した場合には、自車両が後続車両となっている隊列に車両が加わったことを、自車両が後続車両となっている隊列の先頭車両に通知する。
【0029】
電波遮蔽によって、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両は、その電波遮蔽により、隊列に車両が1台加わったことも直接は知ることができない。しかし、このようにすれば、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両は、自車両が先頭となっている隊列の収容範囲内を走行する車両が1台増えたことを知ることができる。
【0030】
また、請求項1〜5記載の発明では、先頭車両からの隊列走行情報を用いて自車両の隊列走行制御を行なう。よって、後続車両が電波遮蔽体となっていて、先頭車両から隊列走行情報を受信することができないと、隊列外の車両は隊列に加わることができない状態が継続する。しかし、この状態でも、電波遮蔽体となっている後続車両は、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できる。そこで、請求項6記載のようにして、後続車両は自車両が電波遮蔽体となっていることを判断することができる。その請求項6記載の発明は、自車両が後続車両であって、隊列外の車両が送信する隊列走行情報を、所定時間以上、良好な受信品質で受信したにもかかわらず、その車両が隊列に入らない場合に、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【0031】
また、これ以外にも、隊列走行のために送信する情報には自車両の車高を含ませることも多いので、請求項7記載の発明のように、車高を利用して、自車両が電波遮蔽体となっていることを簡易的に判断してもよい。
【0032】
その請求項7記載の発明では、隊列走行情報には、自車両の車高情報が含まれており、自車両が後続車両であって、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用された隊列走行装置10を含む車載隊列走行システム1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における隊列走行制御の基本的な考え方を示す図である。
【図3】初期状態(StateA)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】走行軌跡の具体的な比較方法を説明する図である。
【図5】隊列走行準備状態(StateB)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図6】隊列走行可能状態(StateC)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図7】隊列走行中状態(StateD)における各車両が送信する隊列走行情報の一部を説明する図である。
【図8】隊列走行中状態(StateD)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップSD5の後続車両処理を詳しく示すフローチャートである。
【図10】図8のステップSD4のサブ隊列先頭車両処理を詳しく示すフローチャートである。
【図11】サブ隊列の先頭車両と、隊列走行準備状態(StateB)の車両Cとの間に電波遮蔽体のとなっている後続車両Bが存在している状態を示す図である。
【図12】車両Fが、2台の先頭車両A、Bから隊列走行情報を受信する場合があることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された隊列走行装置10を含む車載隊列走行システム1の概略的な構成を示すブロック図である。この車載隊列走行システム1は、多くの車両にそれぞれ搭載され、この車載隊列走行システム1を搭載した複数の車両により隊列走行が行われる。
【0035】
車載隊列走行システム1は、図1に示すように、隊列走行装置10の他に、レーザレーダ20、位置検出器30、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60を備えている。これらは、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LAN70で互いに接続されている。
【0036】
隊列走行装置10は、無線通信機11と制御部12とを備えている。無線通信機11は、送受信アンテナ(図示せず)を備え、例えば自車両の周囲数百メートルを通信範囲として、無線通信によって車々間通信を行なう。この無線通信機11が使用する電波は、例えば700MHz帯であるが、5.9GHzなど、他の周波数帯の電波でもよい。また、自車両の情報の送信は、同報送信(単方向通信)により行なう。
【0037】
制御部12は、内部に周知のCPU、ROM・RAM・EEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。制御部12は、無線通信機11を介して他車両から取得する情報、および、車内LAN70を介してレーザレーダ20、位置検出器30、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60から取得する情報に基づいて、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60を制御することで隊列走行制御を行なう。
【0038】
また、制御部12は、無線通信機11の送受信を制御する通信制御手段としても機能しており、無線通信機11から、隊列の他車両が隊列走行制御に利用するための自車両の情報である隊列走行情報を送信する。さらに、制御部12は、無線通信機11が受信した隊列走行情報を送信した送信元車両を特定する処理も実行する。なお、制御部12の処理の詳細は後述する。
【0039】
レーザレーダ20は、車両前端部に設置されて、車両前方の比較的狭い所定角度範囲でレーザ光を走査しつつ、そのレーザ光の反射光を受光して前方物体を検出する。前方物体の検出においては、反射光強度が所定強度以上であることに基づいて前方物体が存在することを検出する。また、レーザ光の送出方向から前方物体の相対方位を検出するとともに、レーザ光の送光から受光までの時間に基づいて前方物体までの距離を測定する。また、レーザレーダ20は、前方物体が自車両の直前方を走行する先行車両であるか否かの判断も行なう。よって、レーザレーダ20は、先行車両との車間距離を逐次測定することができる。なお、レーザレーダ20に代えてミリ波レーダを用いてもよい。また、前方物体が先行車両であるか否かの判断は制御部12が行ってもよい。
【0040】
位置検出器30は、GPS(global positioning system)の人工衛星からの電波を受信するGPS受信機を備え、そのGPS受信機が受信した電波に基づいて、自車両の現在位置を示す座標(以下、GPS測位座標)を逐次検出する。
【0041】
ブレーキECU40は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、例えば車速センサ、加速度センサから車速、前後加速度、横加速度を示す信号を取得し、それらの信号を制御部12へ供給する。また、制御部12からの指示に基づき、ブレーキアクチュエータを制御して、車両を減速させる。
【0042】
エンジンECU50は、制御部12からの指示に基づき、車両を加減速させるために、エンジン(図示せず)に発生させるエンジントルクを制御する。EPS_ECU60は、トルクセンサ、舵角センサから操舵トルク、ステアリング舵角を示す信号を取得し、それらの信号を制御部12へ供給する。また、制御部12からの指示に基づき、ステアリング軸を回転させるモータの制御を行なう。
【0043】
次に、制御部12が行なう隊列走行制御について詳しく説明していく。はじめに、本実施形態における隊列走行制御の基本的な考え方を図2を用いて説明する。本実施形態における隊列走行制御は、自車両が、図2に示す4つの状態のいずれであるかに応じた制御を行なうようになっている。4つの状態は、具体的には、初期状態(StateA)、隊列走行準備状態(StateB)、隊列走行可能状態(StateC)、隊列走行中状態(StateD)の4つであり、制御部12は、自車両がこの4つのいずれの状態であるかを示す状態パラメータを有している。
【0044】
以下、初期状態(StateA)から順番に、各状態における処理を説明する。初期状態(StateA)は、その名の通り最初の状態であり、どの車両も最初はこの初期状態(StateA)である。また、最初だけでなく、図2に示されているように、隊列走行準備状態(StateB)、隊列走行可能状態(StateC)、隊列走行中状態(StateD)から初期状態(StateA)へ移行することもある。
【0045】
自車両が初期状態(StateA)であれば図3に示す処理を実行する。図3では、まず、ステップSA1において、自車両の隊列走行情報を無線通信機11から同報送信する。この隊列走行情報には、最新のものから所定回数分(たとえば最新のものを含め全部で4回分)の連続したGPS測位座標と、車速と、方位を含んでいる。また、隊列走行情報には、走行制御内容、あるいは、走行挙動を示す情報(たとえば、ブレーキ制御に関する情報)が含まれることもある。また、この初期状態(StateA)では、隊列走行情報に含まれないが、後述するように、隊列走行中状態(StateD)では、全体隊列ID、サブ隊列IDが含まれ、さらに、現在収容台数、最大収容台数が含まれることもある。上記GPS測位座標は位置検出器30から逐次取得し、車速は、ブレーキECU40を介して車速センサから取得する。方位は、GPS測位座標の軌跡から算出してもよいし、地磁気センサが車両に搭載されている場合、その地磁気センサから方位を得るようにしてもよい。
【0046】
続くステップSA2では、他車両から、上記隊列走行情報を受信したか否かを判断する。自車両の周囲に車載隊列走行システム1を搭載した他車両が存在していれば、その他車両も隊列走行情報を送信するので、その他車両から隊列走行情報を受信することができる。ステップSA2の判断が否定判断であれば、ステップSA1へ戻る。一方、肯定判断であればステップSA3に進む。
【0047】
ステップSA3では、まず、他車両から受信した隊列走行情報に含まれている複数回分のGPS測位座標から、その他車両の走行軌跡を作成する。そして、作成した走行軌跡と、今回受信した隊列走行情報よりも前に受信してメモリに記憶してある隊列走行情報から作成される過去の走行軌跡とを比較する。そして、走行軌跡の一致度から、今回受信した隊列走行情報の送信元車両を特定する。
【0048】
なお、隊列走行を行なう状況においては、複数の車両からそれぞれ隊列走行情報を逐次受信することになるが、ここで比較に用いる過去の走行軌跡は、今回の走行軌跡と、GPS測位座標の測定時間が重複しているもののみである。より好ましくは、1回の測定時点以外は測定時点が略一致している走行軌跡のみを比較に用いる。
【0049】
走行軌跡の比較の方法について、測定回数が4回分であるとして図4を用いて具体的に説明する。過去の走行軌跡については、最も古いGPS測位座標を除いた3回分(図4のP2、P1、P0)により作成される走行軌跡を用いる。一方、今回の走行軌跡は、最新のものを除く3回分(図4のQ3、Q2、Q1)のGPS測位座標から作成する。GPS測位座標P0〜P3とGPS測位座標Q0〜Q3が同一車両から連続して送信された情報であれば、図4に両矢印で示すように、P0とQ1、P1とQ2、P2とQ3はそれぞれ同じ時点での同じ車両のGPS測位座標である。従って、図4に破線の四角で示すように、走行軌跡P2−P1−P0と、走行軌跡Q3−Q2−Q1は、これらのGPS測位座標P、Qが同一車両から連続して送信された情報である場合に略一致する一方、車両が異なる場合には走行軌跡の一致度は低くなる。
【0050】
よって、走行軌跡の一致度から、今回受信した隊列走行情報を送信した送信元車両は、前回の送信時点ではどこにいた車両であるかを特定することができる。なお、この一致度は、走行軌跡の形状の一致および走行軌跡の位置の両方の一致の程度を示すものである。上記走行軌跡に基づく車両の特定を逐次行なうことにより、自車両の周囲の複数の他車両から受信した最新のGPS測位座標が、一時的に互いに非常に近い座標であったとしても、隊列走行情報を送信した送信元車両が過去にどの位置にいた車両であるかを正しく特定することができる。なお、いずれの過去の走行軌跡に対しても一致度がある基準値以下であれば、新たに自車両の通信圏内に入ってきた車両であると判断する。
【0051】
続くステップSA4では、ステップSA3で特定した送信元車両が自車両と同一レーンを走行しているかどうかを、互いのGPS測位座標や自律センサ情報を用いて判断する。たとえば、互いのGPS測位座標から、送信元車両が自車両の前方の所定距離に存在すると判断でき、且つ、自律センサであるレーザレーダにより、自車両の直正面方向であって略上記距離に車両が検出できた場合に、自車両と送信元車両は同一レーンを走行していると判断する。
【0052】
ステップSA5は、ステップSA4のレーン判断が、自車両と送信元車両が同一レーンを走行しているとの判断結果である場合には肯定判断する。そしてステップSA6へ進む。一方、それ以外の場合にはステップSA5を否定判断して、ステップSA1へ戻る。
【0053】
ステップSA6では、ステップSA2で受信したと判断した隊列走行情報のRSSI(受信信号強度)、PER(パケットエラーレート)が、それぞれに対して設定してある基準を満たしているかどうかを判断するとともに、相対位置座標も基準を満たしているかどうかを判断する。RSSIについては高い方が好ましいので、判定基準値を超えている場合に基準を満たしているとする。PERは低い方が好ましいので、判定基準値以下であれば基準を満たしているとする。相対位置座標は、自車両と送信元車両の互いの最新のGPS測位座標の差であり、この差が示す距離が基準距離以下であれば基準を満たしているとする。そして、RSSI、PER、相対位置座標が全て基準を満たしていれば、ステップSA6を肯定判断する。この場合、近くに隊列走行情報を送信している他車両が存在し、その他車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できていることになる。ステップSA6を肯定判断した場合にはステップSA7へ進む。一方、RSSI、PER、相対位置座標のいずれか一つでも基準を満たしていないと判断した場合には、ステップSA6を否定判断してステップSA1へ戻る。
【0054】
ステップSA7では、状態パラメータを隊列走行準備状態(StateB)に変化させる。このステップSA7を実行して隊列走行準備状態(StateB)となった場合、図5に示す処理を実行する。
【0055】
次に、隊列走行準備状態(StateB)において実行する処理を、図5を用いて説明する。隊列走行準備状態(StateB)は、図2に示されるように、初期状態(StateA)からのみ移行する状態であり、初期状態(StateA)から隊列走行準備状態(StateB)へ移行する場合には、自車両はどの隊列に入っておらず、且つ、ある車両が送信元車両として特定されている。
【0056】
相対的に前に位置する車両が送信元車両および自車両のいずれであっても、互いに隊列を形成できることに変わりはないので、初期状態(StateA)から隊列走行準備状態(StateB)へ移行するかどうかの判断においては、送信元車両および自車両のいずれが進行方向前側にいるかの判断は行っていない。しかし、実際に隊列を形成する場合には、後続車両であるか先頭車両であるかで処理が異なる。
【0057】
そこで、まず、ステップSB1では、自車両が、上記送信元車両の後続車両かどうかを判断する。この判断は、自車両の最新のGPS測位座標と、送信元車両から受信した隊列走行情報に含まれているGPS測位座標とを用いて行なう。
【0058】
自車両のGPS測位座標のほうが、送信元車両のGPS測位座標よりも進行方向の後側である場合には、自車両は後続車両になると判断し、ステップSB2へ進む。一方、自車両のGPS測位座標のほうが、送信元車両のGPS測位座標よりも進行方向の前側である場合には、自車両は先頭車両になると判断し、ステップSB9へ進む。
【0059】
後続車両であると判断した場合に実行するステップSB2では、前の車両は隊列走行中かどうかを判断する。隊列走行中であれば、前の車両が送信する隊列走行情報には全体隊列IDが含まれることから、全体隊列IDが含まれているかどうかにより、このステップSB2の判断を行なう。隊列走行中であると判断した場合にはステップSB3へ進み、隊列走行中ではないと判断した場合にはステップSB8へ進む。
【0060】
ステップSB3を実行する場合、前の車両は、隊列走行の最後尾の車両である。本実施形態では、隊列走行において、直近の先行車両の挙動のみならず、サブ隊列の先頭車両が送信する情報も用いて隊列走行制御を行なう。そこで、ステップSB3では、サブ隊列の先頭車両からも隊列走行情報を受信できたかどうかを判断する。本実施形態では、後述するように、サブ隊列の先頭車両と後続車両とでは隊列走行情報の内容が異なっており、先頭車両のみ、最大収容台数、現在収容台数が隊列走行情報に含まれる。そこで、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報が受信できたかどうかは、たとえば、これら最大収容台数、現在収容台数が隊列走行情報に含まれているかどうかにより判断する。この判断が否定判断である場合には、ステップSB4へ進む。
【0061】
ステップSB4では、隊列の後続車両からの隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行準備状態(StateB)を維持すべきかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSB4を肯定判断してステップSB5へ進む。ステップSB5では、隊列走行準備状態(StateB)を維持すると決定する。この場合には、その後、再び、ステップSB1以下を実行する。一方、ステップSB4が否定判断であればステップSB7へ進む。
【0062】
ステップSB3が肯定判断である場合にはステップSB6へ進み、サブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断も肯定判断であればステップSB8へ進む。一方、否定判断であればステップSB7へ進む。ステップSB7では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0063】
ステップSB8では、状態パラメータを隊列走行可能状態(StateC)に変化させる。つまり、後続車両である場合にのみ、隊列走行可能状態(StateC)となり、且つ、前の車両が隊列走行をしている場合には、サブ隊列の先頭車両からも隊列走行情報を良好に受信できる場合にのみ隊列走行可能状態(StateC)となる。このステップSB8を実行して隊列走行可能状態(StateC)となった場合、後述する図6に示す処理を実行する。
【0064】
ステップSB1において先頭車両と判断した場合、ステップSB9において、隊列走行開始通知を後続車両から受信したか否かを判断する。この隊列走行開始通知は、後続車両が、後述する図6のステップSC7において送信する通知であり、先行車両に追従し、隊列走行を開始したことを示す通知である。この隊列走行開始通知を受信したと判断した場合にはステップSB10へ進む。
【0065】
ステップSB10では、状態パラメータを隊列走行中状態(StateD)に変化させる。つまり、先頭車両である場合には、後続車両からの隊列走行開始通知を受信することで隊列走行中状態(StateD)となる。
【0066】
一方、ステップSB11では、図3のステップSA6と同様に、送信元車両から受信した最新の隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行準備状態(StateB)を維持できるかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSB11を肯定判断してステップSB9へ戻る。一方、いずれか一つでも基準を満たしていない場合には、ステップSB11を否定判断してステップSB12へ進む。
【0067】
ステップSB12では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0068】
次に、隊列走行可能状態(StateC)において実行する処理を、図6を用いて説明する。前述したように、後続車両のみがこの隊列走行可能状態(StateC)へ移行できる。なお、この隊列走行可能状態(StateC)である間、隊列走行可能であることを示す報知が、常時、あるいは、周期的に、運転者に対して行われる。この報知の具体的態様としては、たとえば、運転者から視認可能な位置に設置された表示器に、隊列走行可能であることを表示する態様がある。
【0069】
まず、ステップSC1では、前方を走行する隊列の収容台数に余裕があるかどうかを判断する。隊列走行可能状態(StateC)へ移行するのは、図5のステップSB2がNO、あるいは、ステップSB6がYESの場合であり、SB2がNOの場合には、単独走行中であることから、収容台数に余裕があると判断する。また、SB6がYESの場合には、サブ隊列の先頭車両の情報が良好に受信できた場合である。その先頭車両が送信する隊列走行情報には、図7に示すように、最大収容台数および現在収容台数が含まれている。そこで、受信できたサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれる最大収容台数と現在収容台数から、収容台数に余裕があるかどうかを判断する。なお、複数のサブ隊列の先頭車両から隊列走行情報を受信した場合には、全てのサブ隊列の先頭車両についてこの判断を行ない、いずれかのサブ隊列の収容台数に余裕があると判断できればステップSC1を肯定判断する。ステップSC1において、収容台数に余裕がないと判断した場合には、前方の隊列に加わることができないので、ステップSC6へ進み、隊列走行可能状態(StateC)を終了し、初期状態(StateA)へ移行する。一方、収容台数に余裕があると判断した場合にはステップSC2へ進む。
【0070】
ステップSC2では、隊列走行の意思が、運転者から確認できたか否かを判断する。具体的な判断方法は、隊列走行の開始を指示する操作(たとえば、隊列走行開始ボタンが押されたこと)、あるいは、隊列走行の拒否を指示する操作が運転者によって行われたか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップSC3へ進む。
【0071】
ステップSC3は、図5のステップSB11などと同様に、送信元車両から受信した最新の隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行可能状態(StateC)を維持できるかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSC3を肯定判断してステップSC2へ戻る。一方、いずれか一つでも基準を満たしていない場合には、ステップSC3を否定判断してステップSC4へ進む。
【0072】
ステップSC4では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0073】
ステップSC2で隊列走行の意思が確認できた場合にはステップSC5へ進む。ステップSC5では、前述のステップSC2で判断できた隊列走行に対する運転者の意思が、隊列走行開始の意思であるか否かを判断する。この判断が否定判断、つまり、運転者の隊列走行を拒否する意思であった場合には、ステップSC6へ進む。ステップSC6では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0074】
一方、ステップSC5の判断が肯定判断であった場合には、ステップSC7へ進む。ステップSC7では、直近の先行車両を追従走行車両として決定する。なお、直近の先行車両がどの車両であるかはステップSA3での特定結果を用いる。あるいは、このステップSC7で再度、ステップSA3と同様にして送信元車両を特定してもよい。そして、ステップSC8では、隊列走行開始通知を含ませた隊列走行情報を送信する。追従走行車両(後続車両に追従走行される車両)は、隊列走行情報に含まれている所定回数分のGPS測位座標により、隊列走行開始通知を送信した車両が、直近の後続車両であることを特定できる。
【0075】
ステップSC8で隊列走行開始通知を送信した後は、ステップSC9へ進み、状態パラメータを隊列走行中状態(StateD)に変化させる。
【0076】
次に、隊列走行中状態(StateD)において実行する処理を説明する。図7は隊列走行中状態(StateD)における各車両が送信する隊列走行情報の一部を説明する図である。まず、この図7を用いて、隊列走行中状態(StateD)において各車両が送信する情報の内容、および、本実施形態におけるサブ隊列の分け方を説明する。
【0077】
図7は、隊列が図左側に向かって走行している状態を示しており、最も左側の車両C1が全体隊列の先頭車両である。全体隊列の先頭車両C1は、全体隊列IDを生成し、生成した全体隊列IDを隊列走行情報に含ませて送信する。なお、ここでは簡略化のため、全体隊列IDを「1」と示しているが、図8のステップSD2の説明で後述するように、実際には複雑なIDを生成する。
【0078】
また、全体隊列の先頭車両C1は、一番目のサブ隊列の先頭車両でもあり、サブ隊列ID=0を生成する。このサブ隊列IDと、最大収容台数および現在収容台数も隊列走行情報に含ませて送信する。
【0079】
最大収容台数は、自車両が先頭車両となっているサブ隊列に、自車両を含めて何台の車両が収容できるかを示す数値であり、自車両の無線通信機11の能力に応じて予め設定された値である。たとえば、自車両の無線通信機11の能力が、自車両の後方の3台までの車両と通信できる能力である場合、最大収容台数は自車両を含めて4となる。現在収容台数は、新たに後続車両となった車両から隊列走行開始通知を受信する毎に1ずつ増加させる値である。
【0080】
全体隊列の2番目の車両C2は、サブ隊列ID=0のサブ隊列において後続車両となっている。よって、この車両C2が送信する隊列走行情報には、全体隊列ID、サブ隊列ID=0、そのサブ隊列の最大収容台数、現在収容台数が含まれる。さらに、本実施形態では、各サブ隊列は、それらサブ隊列の先頭車両が連続するように形成される。つまり、全体隊列の2番目の車両C2は、車両C1が先頭車両となるサブ隊列の次のサブ隊列の先頭車両でもある。よって、車両C2は、自車両C2が先頭車両となっているサブ隊列のID=1も隊列走行情報に含ませる。また、サブ隊列の先頭車両であることから、このサブ隊列の最大収容台数、現在収容台数も、隊列走行情報に含ませる。この図7の例では、最大収容台数は3であることから、サブ隊列ID=1のサブ隊列は最大で3台の車両数となる。
【0081】
全体隊列の3番目の車両C3は、サブ隊列ID=0、1の2つのサブ隊列において後続車両となっている。よって、この車両C3が送信する隊列走行情報には、全体隊列IDと、サブ隊列ID=0、1と、それらサブ隊列ID=0、1の最大収容台数、現在収容台数とが含まれる。さらに、車両C3は、3番目のサブ隊列の先頭車両でもあるので、サブ隊列ID=2も隊列走行情報に含ませる。また、サブ隊列の先頭車両であることから、最大収容台数、現在収容台数も隊列走行情報に含ませる。この図7の例では、最大収容台数は3である。また、サブ隊列C2は、自車両C3と、1台の後続車両C4のみであることから、現在収容台数は2となっている。
【0082】
次に、隊列走行中状態(StateD)において実行する処理を図8を用いて説明する。なお、後続車両は、図6のステップSC9を実行することにより隊列走行中状態(StateD)となり、先行車両は、図5のステップSB10を実行することにより隊列走行中状態(StateD)となる。
【0083】
まず、ステップSD1では、自車両が全体隊列の先頭車両か否かを判断する。全体隊列の先頭車両である場合にはステップSD2へ進み、全体隊列の後続車両(先頭車両以外の車両)であればステップSD3へ進む。
【0084】
ステップSD2では、隊列走行情報を生成し、生成した隊列走行情報を送信する。ここで生成する隊列走行情報には、全体隊列ID、サブ隊列ID、現在収容台数、最大収容台数、および、初期状態(StateA)と同じ情報、すなわち自車両の走行情報が含まれる。
【0085】
上記隊列走行情報に含まれる複数の情報のうち、全体隊列IDは、隊列形成後、初回のこのステップSD2の実行時に作成し、2度目以降は既に作成済みのものを用いる。全体隊列IDの生成には、セキュリティを考慮するとともに、他の隊列の全体隊列IDと一致する可能性ができるだけ低くなるようにするため、生成毎に異なるIDとなり、且つ、所定長さ以上となるように定められた生成規則を用いる。たとえば、隊列走行を開始したときの座標、隊列走行を開始したとき時間、単にランダムに生成される文字列、それらを組み合わせたものなどが考えられる。
【0086】
この全体隊列IDとは異なり、サブ隊列IDは、全体隊列内において何番目のサブ隊列であるかが分り易い単純な数値とする。ここでは、最初のサブ隊列IDを0とし、順次、1ずつ増えるものとする。よって、このステップSD2で生成するサブ隊列IDは0となる。以上がステップSD2の説明である。このステップSD2を実行したら、後述するSD7へ進む。
【0087】
ステップSD3では、自車両がサブ隊列の先頭車両であるか否かを判断する。このステップSD3の判断は、全体隊列の先頭車両でない場合に実行することから、このステップSD3の判断は、全体隊列において2番目以降のサブ隊列の先頭車両であるか否かを判断することになる。なお、後述するステップSD37を実行した場合に、自車両が隊列の先頭車両であると認識することになる。ステップSD3が肯定判断である場合にはステップSD5へ進み、否定判断である場合にはステップSD4へ進む。
【0088】
ステップSD4を実行する場合には、自車両はサブ隊列の後続車両であり、且つ、いずれのサブ隊列の先頭車両ともなっていないことになる。このステップSD4では、サブ隊列の後続車両としての処理(後続車両処理)を行なう。
【0089】
図9は、ステップSD4の後続車両処理を詳しく示すフローチャートである。後続車両処理では、まず、ステップSD41で、他車両が送信した隊列走行情報を受信する。このステップSD41では、隊列内の複数の車両から隊列走行情報を受信することになる。さらには、隊列外の車両であっても、自車両の周囲に存在していれば、隊列外の車両からも隊列走行情報を受信する可能性がある。しかし、本実施形態では、サブ隊列を隊列走行制御を行なう単位としており、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0090】
そこで、続くステップSD42では、複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が隊列走行制御を行なう単位として設定しているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定する。なお、図7で説明したように、本実施形態では、各サブ隊列は、それらサブ隊列の先頭車両が連続するように形成される。よって、複数のサブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報を受信する可能性があるが、ここで特定するサブ隊列の先頭車両は、自車両を含めても最大収容台数を越えない現在収容台数となるサブ隊列のうちで、最も若い番号のサブ隊列の先頭車両である。
【0091】
たとえば、前述の図7の例では、車両C3は、サブ隊列ID=0とサブ隊列ID=1の2つのサブ隊列の先頭車両から隊列走行情報を受信する。この場合には、サブ隊列ID=0の先頭車両、つまり、車両C1の隊列走行情報を、自車両(車両C3)が隊列走行制御を行なうサブ隊列(サブ隊列ID=0)の先頭車両の隊列走行情報とする。ただし、車両C2も、サブ隊列ID=0のサブ隊列の車両において車両C3の先行車両であることから、この車両C2の挙動も考慮して隊列走行制御を行なう必要がある。そこで、車両C3は、車両C2の隊列走行情報も特定する。
【0092】
特定の方法は具体的には、まず、各隊列走行情報に含まれている所定回数分のGPS測位座標から、それぞれ走行軌跡を作成する。そして、作成した各走行軌跡と、メモリに記憶してある隊列走行情報から作成される過去の走行軌跡との比較から、各隊列走行情報を送信した送信元車両が、隊列内あるいは隊列外において、どのような相対位置関係で存在しているのかを特定する。この特定により、自車両の1台前方、2台前方・・・の隊列走行情報がどれであるかを特定できる。この特定結果と、自車両がサブ隊列の何番目であるかにより、必要とするサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定することができる。この場合、先頭車両から送信されてくる所定回数分のGPS測位座標を先頭車両の特定に利用している。よって、この所定回数分のGPS測位座標が特許請求の範囲の先頭情報に相当する。
【0093】
なお、自車両がサブ隊列の何番目かは、自車両がサブ隊列に加わったときに、サブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報に含まれている現在収容台数に1を加えることで求めることができる。また、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報には、現在収容台数、最大収容台数が含まれている一方、後続車両の隊列走行情報にはそれらが含まれていないことから、これらが含まれているかどうかを用いて、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定してもよい。つまり、現在収容台数、最大収容台数も先頭情報として利用してもよい。また、このステップSD42では、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、先頭車両と自車との間に車両が存在する場合には、その車両の隊列走行情報も特定する。
【0094】
続くステップSD43では、ステップSD42で特定したサブ隊列内の他車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御、すなわち、サブ隊列を維持するために自車両の走行制御(速度制御および操舵制御など)の内容を決定する。このステップSD43の処理は、公知の隊列走行制御において行われている処理と同様である。
【0095】
ステップSD44では、自車両が後続車両となって隊列走行制御を行っているサブ隊列の収容台数に余裕があるかを判断する。この判断は具体的には、サブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数とを比較することで行なう。最大収容台数と現在収容台数とが等しい場合には収容台数に余裕がないと判断する。この場合にはステップSD46へ進む。一方、最大収容台数のほうが現在収容台数よりも大きければ、余裕ありと判断してステップSD45へ進む。
【0096】
ステップSD45では、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両を検出したか否かを判断する。隊列走行状態が継続する場合とは、図5のステップSB3が否定判断となる状態が継続している場合、つまり、直近の先行車両からの隊列走行情報が取得できたことにより隊列走行準備状態(StateB)に移行したものの、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報が良好に受信できない場合である。
【0097】
この状態となるのは、サブ隊列の先頭車両と、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両との間に存在するサブ隊列の後続車両が、電波を遮っているからである。図11を用いて具体的に説明すると、サブ隊列の先頭車両Aの直後に、大きな後続車両Bが存在していることにより、隊列走行準備状態(StateB)の車両Cは、先頭車両Aが送信する電波を受信することができない。
【0098】
ここで、隊列に入っていない車両が隊列走行準備状態(StateB)を継続しているかどうかの判断を、隊列内の車両が行なう方法は次の通りである。すなわち、隊列に入っていない車両から、良好な受信品質で隊列走行情報が継続して(所定時間以上)受信できたかどうかにより上記判断を行う。図11においては、後続車両Bは、隊列に入っていない車両Cから、良好な受信品質で隊列走行情報が継続して受信できる。よって、ステップSD45を肯定判断することになるのは、電波遮蔽体となっている車両である。ステップSD45を肯定判断した場合にはステップSD49へ進み、否定判断した場合にはステップSD47へ進む。ステップSD46では、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となるかどうかを判断する。前述のように、本実施形態では、サブ隊列の先頭車両が連続するようにサブ隊列を順次形成する。従って、このステップSD46の判断は、具体的には、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、自車両が先頭車両の次を走行しているかどうかを判断することになる。この判断が否定判断である場合にはステップSD47へ進み、肯定判断である場合にはステップSD48へ進む。
【0099】
ステップSD47では、隊列走行情報を生成して送信する。このステップSD47で生成する隊列走行情報は、全体隊列ID、自車両が後続車両となっているサブ隊列のサブ隊列ID、および、自車両の走行情報を含んでいる。
【0100】
一方、ステップSD48を実行する場合には、自車両は新しいサブ隊列の先頭車両となる。そこで、ステップSD48では、新しいサブ隊列IDを生成する。この生成したサブ隊列IDと、自車両が先頭車両となるサブ隊列の最大収容台数と、そのサブ隊列の現在収容台数を、ステップSD47で生成する隊列走行情報に加えたものが、ステップSD48で生成する隊列走行情報である。なお、現在収容台数は、後続車両である状態において受信した隊列走行開始通知の数をカウントすることで決定してもよいし、また、ステップSD42の送信元車両特定処理において、後続車両の数を特定することで決定してもよい。
【0101】
ステップSD44で収容台数に余裕がないと判断した場合に、次のサブ隊列の先頭車両となる車両がこのステップSD48を実行して新たなサブ隊列が生成されることにより、全体隊列における最後尾のサブ隊列は、常に、収容台数に余裕があることになる。
【0102】
また、ステップSD45を肯定判断した場合に実行するステップSD49の処理も、ステップSD48と全く同じである。よって、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両を検出した場合には、サブ隊列の収容台数に余裕があっても、自車両は次のサブ隊列の先頭車両となる。従って、図11の車両Bはサブ隊列の先頭車両となる。これにより、車両Cは、車両Bから先頭車両としての隊列走行情報を受信してステップSB6を肯定判断することができる。よって、車両Cも隊列に加わることができる。
【0103】
ステップSD47、SD48、SD49のいずれかを実行したら、図8のステップSD6へ進む。ステップSD6では、図9のステップSD42で決定した内容を実行する。ステップSD6を実行した後はステップ7へ進む。
【0104】
次に、ステップSD3を肯定判断した場合に実行するステップSD5を説明する。ステップSD5を実行するのは、全体隊列における2番目以降のサブ隊列の先頭車両であり、ステップSD5では、図10に詳しく示すサブ隊列先頭車両処理を実行する。
【0105】
図10において、まず、ステップSD51では、図9のステップSD41と同様に、他車両が送信した隊列走行情報を受信する。続くステップSD52は、図9のステップSD42と同じであり、複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が隊列走行制御を行なう単位として設定しているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定する。また、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、先頭車両と自車との間に車両が存在する場合には、その車両の隊列走行情報も特定する。
【0106】
続くステップSD53では、ステップSD52で特定したサブ隊列内の他車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御の内容を決定する。このステップSD53の処理は、サブ隊列の後続車両である場合に実行する図9のステップSD43と同じである。つまり、サブ隊列の先頭車両も、前のサブ隊列の後続車両として隊列走行制御の内容を決定することになる。
【0107】
続くステップSD54では、隊列走行情報を生成する。ここで生成する隊列走行情報には、全体隊列ID、自車両が属する全てのサブ隊列のサブ隊列ID、自車両が先頭車両となっているサブ隊列の現在収容台数・最大収容台数、上記ステップSD53で決定した走行制御内容、および、初期状態(StateA)と同じ情報が含まれる。なお、全体隊列ID、および、自車両が後続車両となるサブ隊列のサブ隊列IDは、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行情報から取得する。また、自車両が先頭車両となるサブ隊列のサブ隊列IDは、自車両が新しいサブ隊列の先頭車両となると決定してステップSD48、SD49で決定したIDである。現在収容台数は、自車両が隊列に加わった後に受信した隊列走行開始通知の数をカウントすることで決定してもよいし、また、ステップSD43の送信元車両特定処理において、後続車両の数を特定することで決定してもよい。
【0108】
続くステップSD55では、隊列参加通知を受信したか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップSD58へ進み、肯定判断であればステップSD56へ進む。
【0109】
ステップSD56では、電波遮蔽状態であるか否かをさらに判断する。ここで、電波遮蔽状態とは、次の2つの条件を満たす状態である。1つ目の条件は、自車両が後続車両となっているサブ隊列には収容台数の余裕があることである。2つ目の条件は、そのサブ隊列の先頭車両の電波は、自車両が電波遮蔽体となっていることにより、先頭車両が送信している隊列走行情報に含まれている最大収容台数の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かないことである。1つ目の条件は、前述のステップSD44で判断している。2つ目の条件は、前述のステップSD45で判断している。よって、このステップSD55の判断は、自車両が、ステップSD45を肯定判断してステップSD49を実行している場合に肯定判断する。このステップSD56が肯定判断であればステップSD57へ進み、否定判断であればステップSD58へ進む。
【0110】
ステップSD57を実行する状態では、自車両は、自車両が先頭車両となっているサブ隊列に車両が加わったことを知った状態である。しかも、自車両が後続車両となっているサブ隊列の収容台数に余裕がある状態であることから、新たに加わったこの車両は、自車両が後続車両となっているサブ隊列の収容範囲に位置している。そこで、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両に、収容範囲を走行する車両台数が増えたことを通知するために、ステップSD57では、ステップSD54で生成した隊列走行情報に、隊列参加通知を追加する。
【0111】
ステップSD58では、生成した隊列走行情報を無線通信機11から送信する。ここで送信する隊列走行情報には、ステップSD53において、サブ隊列の後続車両として決定した隊列走行制御の内容が含まれている。そして、ここで送信した隊列走行情報は、この情報を送信した車両が先頭車両となっているサブ隊列の後続車両がステップSD41を実行することで受信され、その後続車両は、受信した隊列走行情報に基づいて隊列走行制御の内容を決定する。よって、サブ隊列の後続車両がステップSD41で決定する隊列走行制御の内容は、間接的に、前のサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を反映した内容となる。
【0112】
上記ステップSD58を実行したら図8のステップSD6へ進む。この場合には、ステップSD6において、図10のステップSD53で決定した内容を実行する。ステップSD6を実行した後はステップ7へ進む。
【0113】
ステップSD7では、隊列走行終了条件が成立したか否かを判断する。この隊列走行終了条件は、たとえば、運転者によりオーバーライド操作が行われたこと、他のレーンに移動したこと、隊列走行終了の意思を示す入力操作が行われたことなどである。なお、オーバーライド操作とは、追従走行制御により決定された車両の挙動と反する挙動を指示する運転者の操作である。たとえば、追従走行制御により決定された車両の挙動が加速である場合において、運転者がブレーキを踏む操作がオーバーライド操作である。
【0114】
ステップSD7の判断が否定判断であればステップSD1へ戻る。一方、肯定判断であればステップSD8へ進む。ステップSD8では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0115】
以上、説明した本実施形態によれば、自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数との差が収容可能を示しているが(ステップSD44がYes)、自車両が電波遮蔽体となって、最大収容台数の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断している(ステップSD45)。
【0116】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には(ステップSD45がYes)、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する(ステップSD49)。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両(図11の車両C)は、後続車両(図11の車両B)が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。また、受信した隊列走行情報には、先頭情報と現在収容可能台数情報が含まれているので、先頭車両(図11の車両A)の電波を遮蔽してしまう後続車両(図11の車両B)が存在していても、隊列外の車両(図11の車両C)は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、電波遮蔽状態であることを判断してサブ隊列の先頭車両となった場合(ステップSD49を実行した場合)、受信した隊列参加通知を隊列走行情報に含めて送信している(ステップSD57、SD58)。これにより、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両(図11の車両A)は、自車両が先頭となっている隊列の収容範囲内を走行する車両が1台増えたことを知ることができる。
【0118】
(変形例1)
自車両が隊列外の車両であり、隊列の最後尾に加わるときには、複数のサブ隊列の先頭車両から、それぞれ最大収容台数と現在収容台数を含んだ隊列走行情報を受信することも考えられる。
【0119】
たとえば、図12に示す場合、車両Bが電波遮蔽体となっているため、車両C、D、Eには、車両Aからの電波は届かず、車両C、D、Eは、車両Bを先頭車両とするサブ隊列として隊列走行制御を行っている。また、車両Aを先頭車両とするサブ隊列は、車両A、Bの2台となっている。
【0120】
しかしながら、車両Aの最大収容台数は、同図に破線で示すように6台分あり、しかも、新たに全体隊列に加わろうとする車両Fの車高が高い場合、車両Fは車両Aの電波を受信できる可能性もある。また、車両Bの最大収容台数が5台またはそれ以上であれば、車両Fは、車両Bの電波も受信することができる。この場合には、車両Fは、より前方の車両、つまり、車両Aを先頭車両として隊列走行制御を行なう。なお、いずれの先頭車両がより前方であるかの判断は、たとえば、サブ隊列のIDや、前述の実施形態における走行軌跡を用いた送信元車両の特定方法を用いる。
【0121】
このように、より前方の先頭車両の隊列走行情報を用いるようにすれば、隊列全体においてより前方の車両の情報を使うことになる。よって、隊列の前方の車両挙動を迅速に反映した車両制御が可能となる。
【0122】
ただし、より前方の車両から受信した受信品質が不十分である場合には、安定した隊列走行制御を行なうことができない。そこで、複数のサブ隊列の先頭車両からそれぞれ隊列走行情報を受信できる場合には、受信品質が予め設定された基準品質以上の隊列走行情報を用いることにする。そして、受信品質が基準品質以上の隊列走行情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。このようにすれば、先頭車両として設定した車両から隊列走行情報を受信できないことによって、隊列走行制御ができなくなってしまうことを抑制できる。
【0123】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0124】
たとえば、隊列走行のために送信する情報には自車両の車高を含ませることも多いので、車高を利用して簡易的に、自車両が電波遮蔽体となっていることを判断してもよい。具体的には、各車両から送信する隊列走行情報に、その車両の車高を含ませるようにしておく。そして、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、前述のステップSD45の判断に代えて、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【0125】
たとえば、前述の実施形態では、サブ隊列の先頭車両が連続していたが、サブ隊列の最後尾の車両が、次のサブ隊列の先頭車両となってもよい。この場合、ステップSD46において、次のサブ隊列の先頭車両かどうかの具体的判断として、自車両がサブ隊列の最後尾かどうかを判断すればよい。サブ隊列の最後尾であることの判断は、最大収容台数と現在収容台数とが等しいかどうかで判断する。
【符号の説明】
【0126】
1:車載隊列走行システム、 10:隊列走行装置、 11:無線通信機、 12:制御部、 20:レーザレーダ、 30:位置検出器、 40:ブレーキECU、 50:エンジンECU、 60:EPS_ECU、 70:車内LAN
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、他車両とともに隊列走行を行なうための車両走行制御を行なう隊列走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両が隊列を形成して走行する隊列走行において、隊列の複数の後続車両が、隊列の先頭車両が送信する走行情報を直接受信して車両走行制御を行なう技術が知られている(たとえば特許文献1)。この技術によれば、先頭車両の直近の後続車両以外の後続車両も、先頭車両の走行情報を迅速に反映した走行制御を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−239585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように、隊列の複数の後続車両が、隊列の先頭車両が送信する走行情報を直接受信して車両走行制御を行なう場合、後続車両は、先頭車両の走行情報を安定的に受信できる必要がある。そこで、先頭車両が隊列走行時に送信する情報に、現時点で隊列にさらに何台収容できるかを示す情報(以下、現在収容可能台数情報)を含ませることが考えられる。
【0005】
この現在収容可能台数情報は、先頭車両の無線通信機の通信能力により定まる隊列の最大収容台数と現在の隊列の収容台数(現在収容台数)との差や、その差を算出する前の最大収容台数および現在収容台数からなる情報である。
【0006】
先頭車両が送信する情報に、この現在収容可能台数情報を含ませることにより、隊列の車両数が、先頭車両が送信する情報を安定的に受信できない車両数となってしまうことを防止できる。
【0007】
しかし、先頭車両が送信する現在収容可能台数情報は、まだ隊列に入れることを示していても、新たな車両が隊列に加われない場合がある。具体的には、既に隊列に入っているいずれかの後続車両が大きい車両であり、この大きい後続車両により先頭車両の電波が遮蔽されてしまう場合である。
【0008】
この場合、先頭車両が送信する電波を遮蔽してしまう後続車両の存在により、新たに隊列に加わろうとする車両は、先頭車両から隊列走行情報を受信することができないので、隊列に加わることができないのである。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列に新たな車両が加わることができる隊列走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両に搭載される隊列走行装置であり、車車間通信を行なう無線通信機を備え、他車両が隊列走行制御を行なうために、無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信する。そして、自車両が隊列の後続車両であれば、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0011】
また、自車両が先頭車両である場合、先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点で隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を隊列走行情報に含ませて送信する。一方、自車両が後続車両であって、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が先頭車両であるとして、自車両が先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現在収容可能台数情報を含ませて送信する。なお、現在収容可能台数情報とは、あと何台収容できるかを直接的に示す情報でもよいし、後述する最大収容台数と現在収容台数からなる情報でもよい。
【0012】
このように、本発明では、自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する。
【0013】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、後続車両が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。また、受信した隊列走行情報には、先頭情報と現在収容可能台数情報が含まれているので、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列外の車両は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明では、上記目的を達成しつつ、サブ隊列を、隊列走行制御を行なう単位とすることで、全体隊列を長くすることができる。その請求項2記載の発明は、車両に搭載される隊列走行装置であり、車車間通信を行なう無線通信機を備え、他車両が隊列走行制御を行なうために、無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信する。そして、自車両が隊列の後続車両であれば、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0015】
また、隊列走行情報に、全体隊列のIDである全体隊列ID、および、全体隊列を、各隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の隊列に分けたサブ隊列のIDであるサブ隊列IDを含ませて送信する。
【0016】
また、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合、サブ隊列の先頭車両であることをサブ隊列の後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点でこのサブ隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を隊列走行情報に含ませて送信する。
【0017】
一方、自車両がサブ隊列の後続車両である場合には、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて隊列走行制御を行い、且つ、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、その先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とする。
【0018】
さらに、自車両が2番目以降のサブ隊列の先頭車両である場合には、前のサブ隊列の後続車両として、無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて自車両の隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を隊列走行情報に含ませて送信する。
【0019】
この請求項2記載の発明では、全体隊列のIDを示す全体隊列IDを送信することに加えて、サブ隊列IDを送信しており、サブ隊列IDを利用して隊列走行制御が行われる。サブ隊列は、サブ隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の車両数であることから、サブ隊列における後続車両は、サブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報を受信して隊列走行制御を行なうことができる。
【0020】
加えて、2番目以降のサブ隊列の先頭車両は、前のサブ隊列における後続車両でもあり、自車両が後続車両となるサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を受信して自車両の隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を隊列走行情報に含ませて送信する。よって、自車両が先頭車両となっているサブ隊列の後続車両も、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に基づいた隊列走行制御を行なうことになる。これにより、全体隊列の先頭車両の収容台数を超えた台数の隊列を形成することができる。
【0021】
このように、全体隊列の先頭車両の収容台数を超えた台数の隊列を形成することができる構成を備えている場合、先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両の存在により、隊列の車両数が制限されてしまうとすれば、全体隊列を長くするための構成が十分に活用できない。
【0022】
しかし、この請求項2記載の発明でも、サブ隊列の後続車両は、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行制御に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断する。
【0023】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とする。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両は、新たにサブ隊列の先頭車両となった車両が送信する隊列走行情報を受信することができる。よって、サブ隊列の先頭車両の電波を遮蔽してしまう後続車両が存在していても、隊列外の車両は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができ、その結果、全体隊列を長くすることができる。
【0024】
ところで、後続車両の判断は、電波遮蔽状態であるとの判断だったとしても、この判断は正しいとは限らず、実際には、先頭車両の隊列走行情報が隊列最後尾の位置の車両により受信できる場合もある。この場合には、後続車両が新たに先頭車両として隊列走行情報を送信することにより、上記隊列最後尾の位置の車両は、2台の先頭車両からそれぞれ隊列走行情報を受信できる。よって、どちらを自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とするかが問題となる。
【0025】
そこで、請求項3記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、より前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。
【0026】
このように、より前方の先頭車両の隊列走行情報を用いるようにすれば、隊列全体においてより前方の車両の情報を使うことになる。よって、隊列の前方の車両挙動を迅速に反映した車両制御が可能となる。
【0027】
また、請求項4記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、受信品質が予め設定された基準品質以上の情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。このようにすれば、先頭車両として設定した車両から隊列走行情報を受信できないことによって、隊列走行制御ができなくなってしまうことを抑制できる。
【0028】
また、請求項5記載の発明では、自車両が隊列外の車両であって隊列の最後尾に加わった場合、隊列に加わったことを示す隊列参加通知を無線通信機から送信する。また、自車両が電波遮蔽状態であると判断して先頭車両となった後に、隊列参加通知を受信した場合には、自車両が後続車両となっている隊列に車両が加わったことを、自車両が後続車両となっている隊列の先頭車両に通知する。
【0029】
電波遮蔽によって、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両は、その電波遮蔽により、隊列に車両が1台加わったことも直接は知ることができない。しかし、このようにすれば、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両は、自車両が先頭となっている隊列の収容範囲内を走行する車両が1台増えたことを知ることができる。
【0030】
また、請求項1〜5記載の発明では、先頭車両からの隊列走行情報を用いて自車両の隊列走行制御を行なう。よって、後続車両が電波遮蔽体となっていて、先頭車両から隊列走行情報を受信することができないと、隊列外の車両は隊列に加わることができない状態が継続する。しかし、この状態でも、電波遮蔽体となっている後続車両は、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できる。そこで、請求項6記載のようにして、後続車両は自車両が電波遮蔽体となっていることを判断することができる。その請求項6記載の発明は、自車両が後続車両であって、隊列外の車両が送信する隊列走行情報を、所定時間以上、良好な受信品質で受信したにもかかわらず、その車両が隊列に入らない場合に、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【0031】
また、これ以外にも、隊列走行のために送信する情報には自車両の車高を含ませることも多いので、請求項7記載の発明のように、車高を利用して、自車両が電波遮蔽体となっていることを簡易的に判断してもよい。
【0032】
その請求項7記載の発明では、隊列走行情報には、自車両の車高情報が含まれており、自車両が後続車両であって、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用された隊列走行装置10を含む車載隊列走行システム1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における隊列走行制御の基本的な考え方を示す図である。
【図3】初期状態(StateA)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】走行軌跡の具体的な比較方法を説明する図である。
【図5】隊列走行準備状態(StateB)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図6】隊列走行可能状態(StateC)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図7】隊列走行中状態(StateD)における各車両が送信する隊列走行情報の一部を説明する図である。
【図8】隊列走行中状態(StateD)において制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップSD5の後続車両処理を詳しく示すフローチャートである。
【図10】図8のステップSD4のサブ隊列先頭車両処理を詳しく示すフローチャートである。
【図11】サブ隊列の先頭車両と、隊列走行準備状態(StateB)の車両Cとの間に電波遮蔽体のとなっている後続車両Bが存在している状態を示す図である。
【図12】車両Fが、2台の先頭車両A、Bから隊列走行情報を受信する場合があることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された隊列走行装置10を含む車載隊列走行システム1の概略的な構成を示すブロック図である。この車載隊列走行システム1は、多くの車両にそれぞれ搭載され、この車載隊列走行システム1を搭載した複数の車両により隊列走行が行われる。
【0035】
車載隊列走行システム1は、図1に示すように、隊列走行装置10の他に、レーザレーダ20、位置検出器30、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60を備えている。これらは、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LAN70で互いに接続されている。
【0036】
隊列走行装置10は、無線通信機11と制御部12とを備えている。無線通信機11は、送受信アンテナ(図示せず)を備え、例えば自車両の周囲数百メートルを通信範囲として、無線通信によって車々間通信を行なう。この無線通信機11が使用する電波は、例えば700MHz帯であるが、5.9GHzなど、他の周波数帯の電波でもよい。また、自車両の情報の送信は、同報送信(単方向通信)により行なう。
【0037】
制御部12は、内部に周知のCPU、ROM・RAM・EEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。制御部12は、無線通信機11を介して他車両から取得する情報、および、車内LAN70を介してレーザレーダ20、位置検出器30、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60から取得する情報に基づいて、ブレーキECU40、エンジンECU50、EPS_ECU60を制御することで隊列走行制御を行なう。
【0038】
また、制御部12は、無線通信機11の送受信を制御する通信制御手段としても機能しており、無線通信機11から、隊列の他車両が隊列走行制御に利用するための自車両の情報である隊列走行情報を送信する。さらに、制御部12は、無線通信機11が受信した隊列走行情報を送信した送信元車両を特定する処理も実行する。なお、制御部12の処理の詳細は後述する。
【0039】
レーザレーダ20は、車両前端部に設置されて、車両前方の比較的狭い所定角度範囲でレーザ光を走査しつつ、そのレーザ光の反射光を受光して前方物体を検出する。前方物体の検出においては、反射光強度が所定強度以上であることに基づいて前方物体が存在することを検出する。また、レーザ光の送出方向から前方物体の相対方位を検出するとともに、レーザ光の送光から受光までの時間に基づいて前方物体までの距離を測定する。また、レーザレーダ20は、前方物体が自車両の直前方を走行する先行車両であるか否かの判断も行なう。よって、レーザレーダ20は、先行車両との車間距離を逐次測定することができる。なお、レーザレーダ20に代えてミリ波レーダを用いてもよい。また、前方物体が先行車両であるか否かの判断は制御部12が行ってもよい。
【0040】
位置検出器30は、GPS(global positioning system)の人工衛星からの電波を受信するGPS受信機を備え、そのGPS受信機が受信した電波に基づいて、自車両の現在位置を示す座標(以下、GPS測位座標)を逐次検出する。
【0041】
ブレーキECU40は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、例えば車速センサ、加速度センサから車速、前後加速度、横加速度を示す信号を取得し、それらの信号を制御部12へ供給する。また、制御部12からの指示に基づき、ブレーキアクチュエータを制御して、車両を減速させる。
【0042】
エンジンECU50は、制御部12からの指示に基づき、車両を加減速させるために、エンジン(図示せず)に発生させるエンジントルクを制御する。EPS_ECU60は、トルクセンサ、舵角センサから操舵トルク、ステアリング舵角を示す信号を取得し、それらの信号を制御部12へ供給する。また、制御部12からの指示に基づき、ステアリング軸を回転させるモータの制御を行なう。
【0043】
次に、制御部12が行なう隊列走行制御について詳しく説明していく。はじめに、本実施形態における隊列走行制御の基本的な考え方を図2を用いて説明する。本実施形態における隊列走行制御は、自車両が、図2に示す4つの状態のいずれであるかに応じた制御を行なうようになっている。4つの状態は、具体的には、初期状態(StateA)、隊列走行準備状態(StateB)、隊列走行可能状態(StateC)、隊列走行中状態(StateD)の4つであり、制御部12は、自車両がこの4つのいずれの状態であるかを示す状態パラメータを有している。
【0044】
以下、初期状態(StateA)から順番に、各状態における処理を説明する。初期状態(StateA)は、その名の通り最初の状態であり、どの車両も最初はこの初期状態(StateA)である。また、最初だけでなく、図2に示されているように、隊列走行準備状態(StateB)、隊列走行可能状態(StateC)、隊列走行中状態(StateD)から初期状態(StateA)へ移行することもある。
【0045】
自車両が初期状態(StateA)であれば図3に示す処理を実行する。図3では、まず、ステップSA1において、自車両の隊列走行情報を無線通信機11から同報送信する。この隊列走行情報には、最新のものから所定回数分(たとえば最新のものを含め全部で4回分)の連続したGPS測位座標と、車速と、方位を含んでいる。また、隊列走行情報には、走行制御内容、あるいは、走行挙動を示す情報(たとえば、ブレーキ制御に関する情報)が含まれることもある。また、この初期状態(StateA)では、隊列走行情報に含まれないが、後述するように、隊列走行中状態(StateD)では、全体隊列ID、サブ隊列IDが含まれ、さらに、現在収容台数、最大収容台数が含まれることもある。上記GPS測位座標は位置検出器30から逐次取得し、車速は、ブレーキECU40を介して車速センサから取得する。方位は、GPS測位座標の軌跡から算出してもよいし、地磁気センサが車両に搭載されている場合、その地磁気センサから方位を得るようにしてもよい。
【0046】
続くステップSA2では、他車両から、上記隊列走行情報を受信したか否かを判断する。自車両の周囲に車載隊列走行システム1を搭載した他車両が存在していれば、その他車両も隊列走行情報を送信するので、その他車両から隊列走行情報を受信することができる。ステップSA2の判断が否定判断であれば、ステップSA1へ戻る。一方、肯定判断であればステップSA3に進む。
【0047】
ステップSA3では、まず、他車両から受信した隊列走行情報に含まれている複数回分のGPS測位座標から、その他車両の走行軌跡を作成する。そして、作成した走行軌跡と、今回受信した隊列走行情報よりも前に受信してメモリに記憶してある隊列走行情報から作成される過去の走行軌跡とを比較する。そして、走行軌跡の一致度から、今回受信した隊列走行情報の送信元車両を特定する。
【0048】
なお、隊列走行を行なう状況においては、複数の車両からそれぞれ隊列走行情報を逐次受信することになるが、ここで比較に用いる過去の走行軌跡は、今回の走行軌跡と、GPS測位座標の測定時間が重複しているもののみである。より好ましくは、1回の測定時点以外は測定時点が略一致している走行軌跡のみを比較に用いる。
【0049】
走行軌跡の比較の方法について、測定回数が4回分であるとして図4を用いて具体的に説明する。過去の走行軌跡については、最も古いGPS測位座標を除いた3回分(図4のP2、P1、P0)により作成される走行軌跡を用いる。一方、今回の走行軌跡は、最新のものを除く3回分(図4のQ3、Q2、Q1)のGPS測位座標から作成する。GPS測位座標P0〜P3とGPS測位座標Q0〜Q3が同一車両から連続して送信された情報であれば、図4に両矢印で示すように、P0とQ1、P1とQ2、P2とQ3はそれぞれ同じ時点での同じ車両のGPS測位座標である。従って、図4に破線の四角で示すように、走行軌跡P2−P1−P0と、走行軌跡Q3−Q2−Q1は、これらのGPS測位座標P、Qが同一車両から連続して送信された情報である場合に略一致する一方、車両が異なる場合には走行軌跡の一致度は低くなる。
【0050】
よって、走行軌跡の一致度から、今回受信した隊列走行情報を送信した送信元車両は、前回の送信時点ではどこにいた車両であるかを特定することができる。なお、この一致度は、走行軌跡の形状の一致および走行軌跡の位置の両方の一致の程度を示すものである。上記走行軌跡に基づく車両の特定を逐次行なうことにより、自車両の周囲の複数の他車両から受信した最新のGPS測位座標が、一時的に互いに非常に近い座標であったとしても、隊列走行情報を送信した送信元車両が過去にどの位置にいた車両であるかを正しく特定することができる。なお、いずれの過去の走行軌跡に対しても一致度がある基準値以下であれば、新たに自車両の通信圏内に入ってきた車両であると判断する。
【0051】
続くステップSA4では、ステップSA3で特定した送信元車両が自車両と同一レーンを走行しているかどうかを、互いのGPS測位座標や自律センサ情報を用いて判断する。たとえば、互いのGPS測位座標から、送信元車両が自車両の前方の所定距離に存在すると判断でき、且つ、自律センサであるレーザレーダにより、自車両の直正面方向であって略上記距離に車両が検出できた場合に、自車両と送信元車両は同一レーンを走行していると判断する。
【0052】
ステップSA5は、ステップSA4のレーン判断が、自車両と送信元車両が同一レーンを走行しているとの判断結果である場合には肯定判断する。そしてステップSA6へ進む。一方、それ以外の場合にはステップSA5を否定判断して、ステップSA1へ戻る。
【0053】
ステップSA6では、ステップSA2で受信したと判断した隊列走行情報のRSSI(受信信号強度)、PER(パケットエラーレート)が、それぞれに対して設定してある基準を満たしているかどうかを判断するとともに、相対位置座標も基準を満たしているかどうかを判断する。RSSIについては高い方が好ましいので、判定基準値を超えている場合に基準を満たしているとする。PERは低い方が好ましいので、判定基準値以下であれば基準を満たしているとする。相対位置座標は、自車両と送信元車両の互いの最新のGPS測位座標の差であり、この差が示す距離が基準距離以下であれば基準を満たしているとする。そして、RSSI、PER、相対位置座標が全て基準を満たしていれば、ステップSA6を肯定判断する。この場合、近くに隊列走行情報を送信している他車両が存在し、その他車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できていることになる。ステップSA6を肯定判断した場合にはステップSA7へ進む。一方、RSSI、PER、相対位置座標のいずれか一つでも基準を満たしていないと判断した場合には、ステップSA6を否定判断してステップSA1へ戻る。
【0054】
ステップSA7では、状態パラメータを隊列走行準備状態(StateB)に変化させる。このステップSA7を実行して隊列走行準備状態(StateB)となった場合、図5に示す処理を実行する。
【0055】
次に、隊列走行準備状態(StateB)において実行する処理を、図5を用いて説明する。隊列走行準備状態(StateB)は、図2に示されるように、初期状態(StateA)からのみ移行する状態であり、初期状態(StateA)から隊列走行準備状態(StateB)へ移行する場合には、自車両はどの隊列に入っておらず、且つ、ある車両が送信元車両として特定されている。
【0056】
相対的に前に位置する車両が送信元車両および自車両のいずれであっても、互いに隊列を形成できることに変わりはないので、初期状態(StateA)から隊列走行準備状態(StateB)へ移行するかどうかの判断においては、送信元車両および自車両のいずれが進行方向前側にいるかの判断は行っていない。しかし、実際に隊列を形成する場合には、後続車両であるか先頭車両であるかで処理が異なる。
【0057】
そこで、まず、ステップSB1では、自車両が、上記送信元車両の後続車両かどうかを判断する。この判断は、自車両の最新のGPS測位座標と、送信元車両から受信した隊列走行情報に含まれているGPS測位座標とを用いて行なう。
【0058】
自車両のGPS測位座標のほうが、送信元車両のGPS測位座標よりも進行方向の後側である場合には、自車両は後続車両になると判断し、ステップSB2へ進む。一方、自車両のGPS測位座標のほうが、送信元車両のGPS測位座標よりも進行方向の前側である場合には、自車両は先頭車両になると判断し、ステップSB9へ進む。
【0059】
後続車両であると判断した場合に実行するステップSB2では、前の車両は隊列走行中かどうかを判断する。隊列走行中であれば、前の車両が送信する隊列走行情報には全体隊列IDが含まれることから、全体隊列IDが含まれているかどうかにより、このステップSB2の判断を行なう。隊列走行中であると判断した場合にはステップSB3へ進み、隊列走行中ではないと判断した場合にはステップSB8へ進む。
【0060】
ステップSB3を実行する場合、前の車両は、隊列走行の最後尾の車両である。本実施形態では、隊列走行において、直近の先行車両の挙動のみならず、サブ隊列の先頭車両が送信する情報も用いて隊列走行制御を行なう。そこで、ステップSB3では、サブ隊列の先頭車両からも隊列走行情報を受信できたかどうかを判断する。本実施形態では、後述するように、サブ隊列の先頭車両と後続車両とでは隊列走行情報の内容が異なっており、先頭車両のみ、最大収容台数、現在収容台数が隊列走行情報に含まれる。そこで、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報が受信できたかどうかは、たとえば、これら最大収容台数、現在収容台数が隊列走行情報に含まれているかどうかにより判断する。この判断が否定判断である場合には、ステップSB4へ進む。
【0061】
ステップSB4では、隊列の後続車両からの隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行準備状態(StateB)を維持すべきかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSB4を肯定判断してステップSB5へ進む。ステップSB5では、隊列走行準備状態(StateB)を維持すると決定する。この場合には、その後、再び、ステップSB1以下を実行する。一方、ステップSB4が否定判断であればステップSB7へ進む。
【0062】
ステップSB3が肯定判断である場合にはステップSB6へ進み、サブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断も肯定判断であればステップSB8へ進む。一方、否定判断であればステップSB7へ進む。ステップSB7では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0063】
ステップSB8では、状態パラメータを隊列走行可能状態(StateC)に変化させる。つまり、後続車両である場合にのみ、隊列走行可能状態(StateC)となり、且つ、前の車両が隊列走行をしている場合には、サブ隊列の先頭車両からも隊列走行情報を良好に受信できる場合にのみ隊列走行可能状態(StateC)となる。このステップSB8を実行して隊列走行可能状態(StateC)となった場合、後述する図6に示す処理を実行する。
【0064】
ステップSB1において先頭車両と判断した場合、ステップSB9において、隊列走行開始通知を後続車両から受信したか否かを判断する。この隊列走行開始通知は、後続車両が、後述する図6のステップSC7において送信する通知であり、先行車両に追従し、隊列走行を開始したことを示す通知である。この隊列走行開始通知を受信したと判断した場合にはステップSB10へ進む。
【0065】
ステップSB10では、状態パラメータを隊列走行中状態(StateD)に変化させる。つまり、先頭車両である場合には、後続車両からの隊列走行開始通知を受信することで隊列走行中状態(StateD)となる。
【0066】
一方、ステップSB11では、図3のステップSA6と同様に、送信元車両から受信した最新の隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行準備状態(StateB)を維持できるかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSB11を肯定判断してステップSB9へ戻る。一方、いずれか一つでも基準を満たしていない場合には、ステップSB11を否定判断してステップSB12へ進む。
【0067】
ステップSB12では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0068】
次に、隊列走行可能状態(StateC)において実行する処理を、図6を用いて説明する。前述したように、後続車両のみがこの隊列走行可能状態(StateC)へ移行できる。なお、この隊列走行可能状態(StateC)である間、隊列走行可能であることを示す報知が、常時、あるいは、周期的に、運転者に対して行われる。この報知の具体的態様としては、たとえば、運転者から視認可能な位置に設置された表示器に、隊列走行可能であることを表示する態様がある。
【0069】
まず、ステップSC1では、前方を走行する隊列の収容台数に余裕があるかどうかを判断する。隊列走行可能状態(StateC)へ移行するのは、図5のステップSB2がNO、あるいは、ステップSB6がYESの場合であり、SB2がNOの場合には、単独走行中であることから、収容台数に余裕があると判断する。また、SB6がYESの場合には、サブ隊列の先頭車両の情報が良好に受信できた場合である。その先頭車両が送信する隊列走行情報には、図7に示すように、最大収容台数および現在収容台数が含まれている。そこで、受信できたサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれる最大収容台数と現在収容台数から、収容台数に余裕があるかどうかを判断する。なお、複数のサブ隊列の先頭車両から隊列走行情報を受信した場合には、全てのサブ隊列の先頭車両についてこの判断を行ない、いずれかのサブ隊列の収容台数に余裕があると判断できればステップSC1を肯定判断する。ステップSC1において、収容台数に余裕がないと判断した場合には、前方の隊列に加わることができないので、ステップSC6へ進み、隊列走行可能状態(StateC)を終了し、初期状態(StateA)へ移行する。一方、収容台数に余裕があると判断した場合にはステップSC2へ進む。
【0070】
ステップSC2では、隊列走行の意思が、運転者から確認できたか否かを判断する。具体的な判断方法は、隊列走行の開始を指示する操作(たとえば、隊列走行開始ボタンが押されたこと)、あるいは、隊列走行の拒否を指示する操作が運転者によって行われたか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップSC3へ進む。
【0071】
ステップSC3は、図5のステップSB11などと同様に、送信元車両から受信した最新の隊列走行情報のRSSI、PER、相対位置座標が、いずれも基準を満たしているかどうかを判断する。この判断は、まだ、この隊列走行可能状態(StateC)を維持できるかどうかを判断するためである。RSSI、PER、相対位置座標がすべて基準を満たしている場合には、ステップSC3を肯定判断してステップSC2へ戻る。一方、いずれか一つでも基準を満たしていない場合には、ステップSC3を否定判断してステップSC4へ進む。
【0072】
ステップSC4では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0073】
ステップSC2で隊列走行の意思が確認できた場合にはステップSC5へ進む。ステップSC5では、前述のステップSC2で判断できた隊列走行に対する運転者の意思が、隊列走行開始の意思であるか否かを判断する。この判断が否定判断、つまり、運転者の隊列走行を拒否する意思であった場合には、ステップSC6へ進む。ステップSC6では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0074】
一方、ステップSC5の判断が肯定判断であった場合には、ステップSC7へ進む。ステップSC7では、直近の先行車両を追従走行車両として決定する。なお、直近の先行車両がどの車両であるかはステップSA3での特定結果を用いる。あるいは、このステップSC7で再度、ステップSA3と同様にして送信元車両を特定してもよい。そして、ステップSC8では、隊列走行開始通知を含ませた隊列走行情報を送信する。追従走行車両(後続車両に追従走行される車両)は、隊列走行情報に含まれている所定回数分のGPS測位座標により、隊列走行開始通知を送信した車両が、直近の後続車両であることを特定できる。
【0075】
ステップSC8で隊列走行開始通知を送信した後は、ステップSC9へ進み、状態パラメータを隊列走行中状態(StateD)に変化させる。
【0076】
次に、隊列走行中状態(StateD)において実行する処理を説明する。図7は隊列走行中状態(StateD)における各車両が送信する隊列走行情報の一部を説明する図である。まず、この図7を用いて、隊列走行中状態(StateD)において各車両が送信する情報の内容、および、本実施形態におけるサブ隊列の分け方を説明する。
【0077】
図7は、隊列が図左側に向かって走行している状態を示しており、最も左側の車両C1が全体隊列の先頭車両である。全体隊列の先頭車両C1は、全体隊列IDを生成し、生成した全体隊列IDを隊列走行情報に含ませて送信する。なお、ここでは簡略化のため、全体隊列IDを「1」と示しているが、図8のステップSD2の説明で後述するように、実際には複雑なIDを生成する。
【0078】
また、全体隊列の先頭車両C1は、一番目のサブ隊列の先頭車両でもあり、サブ隊列ID=0を生成する。このサブ隊列IDと、最大収容台数および現在収容台数も隊列走行情報に含ませて送信する。
【0079】
最大収容台数は、自車両が先頭車両となっているサブ隊列に、自車両を含めて何台の車両が収容できるかを示す数値であり、自車両の無線通信機11の能力に応じて予め設定された値である。たとえば、自車両の無線通信機11の能力が、自車両の後方の3台までの車両と通信できる能力である場合、最大収容台数は自車両を含めて4となる。現在収容台数は、新たに後続車両となった車両から隊列走行開始通知を受信する毎に1ずつ増加させる値である。
【0080】
全体隊列の2番目の車両C2は、サブ隊列ID=0のサブ隊列において後続車両となっている。よって、この車両C2が送信する隊列走行情報には、全体隊列ID、サブ隊列ID=0、そのサブ隊列の最大収容台数、現在収容台数が含まれる。さらに、本実施形態では、各サブ隊列は、それらサブ隊列の先頭車両が連続するように形成される。つまり、全体隊列の2番目の車両C2は、車両C1が先頭車両となるサブ隊列の次のサブ隊列の先頭車両でもある。よって、車両C2は、自車両C2が先頭車両となっているサブ隊列のID=1も隊列走行情報に含ませる。また、サブ隊列の先頭車両であることから、このサブ隊列の最大収容台数、現在収容台数も、隊列走行情報に含ませる。この図7の例では、最大収容台数は3であることから、サブ隊列ID=1のサブ隊列は最大で3台の車両数となる。
【0081】
全体隊列の3番目の車両C3は、サブ隊列ID=0、1の2つのサブ隊列において後続車両となっている。よって、この車両C3が送信する隊列走行情報には、全体隊列IDと、サブ隊列ID=0、1と、それらサブ隊列ID=0、1の最大収容台数、現在収容台数とが含まれる。さらに、車両C3は、3番目のサブ隊列の先頭車両でもあるので、サブ隊列ID=2も隊列走行情報に含ませる。また、サブ隊列の先頭車両であることから、最大収容台数、現在収容台数も隊列走行情報に含ませる。この図7の例では、最大収容台数は3である。また、サブ隊列C2は、自車両C3と、1台の後続車両C4のみであることから、現在収容台数は2となっている。
【0082】
次に、隊列走行中状態(StateD)において実行する処理を図8を用いて説明する。なお、後続車両は、図6のステップSC9を実行することにより隊列走行中状態(StateD)となり、先行車両は、図5のステップSB10を実行することにより隊列走行中状態(StateD)となる。
【0083】
まず、ステップSD1では、自車両が全体隊列の先頭車両か否かを判断する。全体隊列の先頭車両である場合にはステップSD2へ進み、全体隊列の後続車両(先頭車両以外の車両)であればステップSD3へ進む。
【0084】
ステップSD2では、隊列走行情報を生成し、生成した隊列走行情報を送信する。ここで生成する隊列走行情報には、全体隊列ID、サブ隊列ID、現在収容台数、最大収容台数、および、初期状態(StateA)と同じ情報、すなわち自車両の走行情報が含まれる。
【0085】
上記隊列走行情報に含まれる複数の情報のうち、全体隊列IDは、隊列形成後、初回のこのステップSD2の実行時に作成し、2度目以降は既に作成済みのものを用いる。全体隊列IDの生成には、セキュリティを考慮するとともに、他の隊列の全体隊列IDと一致する可能性ができるだけ低くなるようにするため、生成毎に異なるIDとなり、且つ、所定長さ以上となるように定められた生成規則を用いる。たとえば、隊列走行を開始したときの座標、隊列走行を開始したとき時間、単にランダムに生成される文字列、それらを組み合わせたものなどが考えられる。
【0086】
この全体隊列IDとは異なり、サブ隊列IDは、全体隊列内において何番目のサブ隊列であるかが分り易い単純な数値とする。ここでは、最初のサブ隊列IDを0とし、順次、1ずつ増えるものとする。よって、このステップSD2で生成するサブ隊列IDは0となる。以上がステップSD2の説明である。このステップSD2を実行したら、後述するSD7へ進む。
【0087】
ステップSD3では、自車両がサブ隊列の先頭車両であるか否かを判断する。このステップSD3の判断は、全体隊列の先頭車両でない場合に実行することから、このステップSD3の判断は、全体隊列において2番目以降のサブ隊列の先頭車両であるか否かを判断することになる。なお、後述するステップSD37を実行した場合に、自車両が隊列の先頭車両であると認識することになる。ステップSD3が肯定判断である場合にはステップSD5へ進み、否定判断である場合にはステップSD4へ進む。
【0088】
ステップSD4を実行する場合には、自車両はサブ隊列の後続車両であり、且つ、いずれのサブ隊列の先頭車両ともなっていないことになる。このステップSD4では、サブ隊列の後続車両としての処理(後続車両処理)を行なう。
【0089】
図9は、ステップSD4の後続車両処理を詳しく示すフローチャートである。後続車両処理では、まず、ステップSD41で、他車両が送信した隊列走行情報を受信する。このステップSD41では、隊列内の複数の車両から隊列走行情報を受信することになる。さらには、隊列外の車両であっても、自車両の周囲に存在していれば、隊列外の車両からも隊列走行情報を受信する可能性がある。しかし、本実施形態では、サブ隊列を隊列走行制御を行なう単位としており、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御を行なう。
【0090】
そこで、続くステップSD42では、複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が隊列走行制御を行なう単位として設定しているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定する。なお、図7で説明したように、本実施形態では、各サブ隊列は、それらサブ隊列の先頭車両が連続するように形成される。よって、複数のサブ隊列の先頭車両からの隊列走行情報を受信する可能性があるが、ここで特定するサブ隊列の先頭車両は、自車両を含めても最大収容台数を越えない現在収容台数となるサブ隊列のうちで、最も若い番号のサブ隊列の先頭車両である。
【0091】
たとえば、前述の図7の例では、車両C3は、サブ隊列ID=0とサブ隊列ID=1の2つのサブ隊列の先頭車両から隊列走行情報を受信する。この場合には、サブ隊列ID=0の先頭車両、つまり、車両C1の隊列走行情報を、自車両(車両C3)が隊列走行制御を行なうサブ隊列(サブ隊列ID=0)の先頭車両の隊列走行情報とする。ただし、車両C2も、サブ隊列ID=0のサブ隊列の車両において車両C3の先行車両であることから、この車両C2の挙動も考慮して隊列走行制御を行なう必要がある。そこで、車両C3は、車両C2の隊列走行情報も特定する。
【0092】
特定の方法は具体的には、まず、各隊列走行情報に含まれている所定回数分のGPS測位座標から、それぞれ走行軌跡を作成する。そして、作成した各走行軌跡と、メモリに記憶してある隊列走行情報から作成される過去の走行軌跡との比較から、各隊列走行情報を送信した送信元車両が、隊列内あるいは隊列外において、どのような相対位置関係で存在しているのかを特定する。この特定により、自車両の1台前方、2台前方・・・の隊列走行情報がどれであるかを特定できる。この特定結果と、自車両がサブ隊列の何番目であるかにより、必要とするサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定することができる。この場合、先頭車両から送信されてくる所定回数分のGPS測位座標を先頭車両の特定に利用している。よって、この所定回数分のGPS測位座標が特許請求の範囲の先頭情報に相当する。
【0093】
なお、自車両がサブ隊列の何番目かは、自車両がサブ隊列に加わったときに、サブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報に含まれている現在収容台数に1を加えることで求めることができる。また、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報には、現在収容台数、最大収容台数が含まれている一方、後続車両の隊列走行情報にはそれらが含まれていないことから、これらが含まれているかどうかを用いて、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定してもよい。つまり、現在収容台数、最大収容台数も先頭情報として利用してもよい。また、このステップSD42では、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、先頭車両と自車との間に車両が存在する場合には、その車両の隊列走行情報も特定する。
【0094】
続くステップSD43では、ステップSD42で特定したサブ隊列内の他車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御、すなわち、サブ隊列を維持するために自車両の走行制御(速度制御および操舵制御など)の内容を決定する。このステップSD43の処理は、公知の隊列走行制御において行われている処理と同様である。
【0095】
ステップSD44では、自車両が後続車両となって隊列走行制御を行っているサブ隊列の収容台数に余裕があるかを判断する。この判断は具体的には、サブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数とを比較することで行なう。最大収容台数と現在収容台数とが等しい場合には収容台数に余裕がないと判断する。この場合にはステップSD46へ進む。一方、最大収容台数のほうが現在収容台数よりも大きければ、余裕ありと判断してステップSD45へ進む。
【0096】
ステップSD45では、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両を検出したか否かを判断する。隊列走行状態が継続する場合とは、図5のステップSB3が否定判断となる状態が継続している場合、つまり、直近の先行車両からの隊列走行情報が取得できたことにより隊列走行準備状態(StateB)に移行したものの、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報が良好に受信できない場合である。
【0097】
この状態となるのは、サブ隊列の先頭車両と、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両との間に存在するサブ隊列の後続車両が、電波を遮っているからである。図11を用いて具体的に説明すると、サブ隊列の先頭車両Aの直後に、大きな後続車両Bが存在していることにより、隊列走行準備状態(StateB)の車両Cは、先頭車両Aが送信する電波を受信することができない。
【0098】
ここで、隊列に入っていない車両が隊列走行準備状態(StateB)を継続しているかどうかの判断を、隊列内の車両が行なう方法は次の通りである。すなわち、隊列に入っていない車両から、良好な受信品質で隊列走行情報が継続して(所定時間以上)受信できたかどうかにより上記判断を行う。図11においては、後続車両Bは、隊列に入っていない車両Cから、良好な受信品質で隊列走行情報が継続して受信できる。よって、ステップSD45を肯定判断することになるのは、電波遮蔽体となっている車両である。ステップSD45を肯定判断した場合にはステップSD49へ進み、否定判断した場合にはステップSD47へ進む。ステップSD46では、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となるかどうかを判断する。前述のように、本実施形態では、サブ隊列の先頭車両が連続するようにサブ隊列を順次形成する。従って、このステップSD46の判断は、具体的には、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、自車両が先頭車両の次を走行しているかどうかを判断することになる。この判断が否定判断である場合にはステップSD47へ進み、肯定判断である場合にはステップSD48へ進む。
【0099】
ステップSD47では、隊列走行情報を生成して送信する。このステップSD47で生成する隊列走行情報は、全体隊列ID、自車両が後続車両となっているサブ隊列のサブ隊列ID、および、自車両の走行情報を含んでいる。
【0100】
一方、ステップSD48を実行する場合には、自車両は新しいサブ隊列の先頭車両となる。そこで、ステップSD48では、新しいサブ隊列IDを生成する。この生成したサブ隊列IDと、自車両が先頭車両となるサブ隊列の最大収容台数と、そのサブ隊列の現在収容台数を、ステップSD47で生成する隊列走行情報に加えたものが、ステップSD48で生成する隊列走行情報である。なお、現在収容台数は、後続車両である状態において受信した隊列走行開始通知の数をカウントすることで決定してもよいし、また、ステップSD42の送信元車両特定処理において、後続車両の数を特定することで決定してもよい。
【0101】
ステップSD44で収容台数に余裕がないと判断した場合に、次のサブ隊列の先頭車両となる車両がこのステップSD48を実行して新たなサブ隊列が生成されることにより、全体隊列における最後尾のサブ隊列は、常に、収容台数に余裕があることになる。
【0102】
また、ステップSD45を肯定判断した場合に実行するステップSD49の処理も、ステップSD48と全く同じである。よって、隊列走行準備状態(StateB)が継続している車両を検出した場合には、サブ隊列の収容台数に余裕があっても、自車両は次のサブ隊列の先頭車両となる。従って、図11の車両Bはサブ隊列の先頭車両となる。これにより、車両Cは、車両Bから先頭車両としての隊列走行情報を受信してステップSB6を肯定判断することができる。よって、車両Cも隊列に加わることができる。
【0103】
ステップSD47、SD48、SD49のいずれかを実行したら、図8のステップSD6へ進む。ステップSD6では、図9のステップSD42で決定した内容を実行する。ステップSD6を実行した後はステップ7へ進む。
【0104】
次に、ステップSD3を肯定判断した場合に実行するステップSD5を説明する。ステップSD5を実行するのは、全体隊列における2番目以降のサブ隊列の先頭車両であり、ステップSD5では、図10に詳しく示すサブ隊列先頭車両処理を実行する。
【0105】
図10において、まず、ステップSD51では、図9のステップSD41と同様に、他車両が送信した隊列走行情報を受信する。続くステップSD52は、図9のステップSD42と同じであり、複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が隊列走行制御を行なう単位として設定しているサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を特定する。また、自車両が後続車両となっているサブ隊列において、先頭車両と自車との間に車両が存在する場合には、その車両の隊列走行情報も特定する。
【0106】
続くステップSD53では、ステップSD52で特定したサブ隊列内の他車両の隊列走行情報に基づいて、自車両の隊列走行制御の内容を決定する。このステップSD53の処理は、サブ隊列の後続車両である場合に実行する図9のステップSD43と同じである。つまり、サブ隊列の先頭車両も、前のサブ隊列の後続車両として隊列走行制御の内容を決定することになる。
【0107】
続くステップSD54では、隊列走行情報を生成する。ここで生成する隊列走行情報には、全体隊列ID、自車両が属する全てのサブ隊列のサブ隊列ID、自車両が先頭車両となっているサブ隊列の現在収容台数・最大収容台数、上記ステップSD53で決定した走行制御内容、および、初期状態(StateA)と同じ情報が含まれる。なお、全体隊列ID、および、自車両が後続車両となるサブ隊列のサブ隊列IDは、サブ隊列の先頭車両が送信する隊列走行情報から取得する。また、自車両が先頭車両となるサブ隊列のサブ隊列IDは、自車両が新しいサブ隊列の先頭車両となると決定してステップSD48、SD49で決定したIDである。現在収容台数は、自車両が隊列に加わった後に受信した隊列走行開始通知の数をカウントすることで決定してもよいし、また、ステップSD43の送信元車両特定処理において、後続車両の数を特定することで決定してもよい。
【0108】
続くステップSD55では、隊列参加通知を受信したか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップSD58へ進み、肯定判断であればステップSD56へ進む。
【0109】
ステップSD56では、電波遮蔽状態であるか否かをさらに判断する。ここで、電波遮蔽状態とは、次の2つの条件を満たす状態である。1つ目の条件は、自車両が後続車両となっているサブ隊列には収容台数の余裕があることである。2つ目の条件は、そのサブ隊列の先頭車両の電波は、自車両が電波遮蔽体となっていることにより、先頭車両が送信している隊列走行情報に含まれている最大収容台数の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かないことである。1つ目の条件は、前述のステップSD44で判断している。2つ目の条件は、前述のステップSD45で判断している。よって、このステップSD55の判断は、自車両が、ステップSD45を肯定判断してステップSD49を実行している場合に肯定判断する。このステップSD56が肯定判断であればステップSD57へ進み、否定判断であればステップSD58へ進む。
【0110】
ステップSD57を実行する状態では、自車両は、自車両が先頭車両となっているサブ隊列に車両が加わったことを知った状態である。しかも、自車両が後続車両となっているサブ隊列の収容台数に余裕がある状態であることから、新たに加わったこの車両は、自車両が後続車両となっているサブ隊列の収容範囲に位置している。そこで、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両に、収容範囲を走行する車両台数が増えたことを通知するために、ステップSD57では、ステップSD54で生成した隊列走行情報に、隊列参加通知を追加する。
【0111】
ステップSD58では、生成した隊列走行情報を無線通信機11から送信する。ここで送信する隊列走行情報には、ステップSD53において、サブ隊列の後続車両として決定した隊列走行制御の内容が含まれている。そして、ここで送信した隊列走行情報は、この情報を送信した車両が先頭車両となっているサブ隊列の後続車両がステップSD41を実行することで受信され、その後続車両は、受信した隊列走行情報に基づいて隊列走行制御の内容を決定する。よって、サブ隊列の後続車両がステップSD41で決定する隊列走行制御の内容は、間接的に、前のサブ隊列の先頭車両の隊列走行情報を反映した内容となる。
【0112】
上記ステップSD58を実行したら図8のステップSD6へ進む。この場合には、ステップSD6において、図10のステップSD53で決定した内容を実行する。ステップSD6を実行した後はステップ7へ進む。
【0113】
ステップSD7では、隊列走行終了条件が成立したか否かを判断する。この隊列走行終了条件は、たとえば、運転者によりオーバーライド操作が行われたこと、他のレーンに移動したこと、隊列走行終了の意思を示す入力操作が行われたことなどである。なお、オーバーライド操作とは、追従走行制御により決定された車両の挙動と反する挙動を指示する運転者の操作である。たとえば、追従走行制御により決定された車両の挙動が加速である場合において、運転者がブレーキを踏む操作がオーバーライド操作である。
【0114】
ステップSD7の判断が否定判断であればステップSD1へ戻る。一方、肯定判断であればステップSD8へ進む。ステップSD8では、状態パラメータを初期状態(StateA)に変化させる。この場合、前述の図3の処理を実行することになる。
【0115】
以上、説明した本実施形態によれば、自車両が後続車両である場合、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている最大収容台数と現在収容台数との差が収容可能を示しているが(ステップSD44がYes)、自車両が電波遮蔽体となって、最大収容台数の位置まで、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であるかどうかを判断している(ステップSD45)。
【0116】
そして、電波遮蔽状態であると判断した場合には(ステップSD45がYes)、自車両が先頭車両であるとした隊列走行情報を送信する(ステップSD49)。これにより、新たに隊列に加わろうとする車両(図11の車両C)は、後続車両(図11の車両B)が送信する先頭車両としての隊列走行情報を受信することができる。また、受信した隊列走行情報には、先頭情報と現在収容可能台数情報が含まれているので、先頭車両(図11の車両A)の電波を遮蔽してしまう後続車両(図11の車両B)が存在していても、隊列外の車両(図11の車両C)は、新たに隊列に加わって隊列走行制御を行なうことができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、電波遮蔽状態であることを判断してサブ隊列の先頭車両となった場合(ステップSD49を実行した場合)、受信した隊列参加通知を隊列走行情報に含めて送信している(ステップSD57、SD58)。これにより、隊列走行情報が遮蔽されてしまっている先頭車両(図11の車両A)は、自車両が先頭となっている隊列の収容範囲内を走行する車両が1台増えたことを知ることができる。
【0118】
(変形例1)
自車両が隊列外の車両であり、隊列の最後尾に加わるときには、複数のサブ隊列の先頭車両から、それぞれ最大収容台数と現在収容台数を含んだ隊列走行情報を受信することも考えられる。
【0119】
たとえば、図12に示す場合、車両Bが電波遮蔽体となっているため、車両C、D、Eには、車両Aからの電波は届かず、車両C、D、Eは、車両Bを先頭車両とするサブ隊列として隊列走行制御を行っている。また、車両Aを先頭車両とするサブ隊列は、車両A、Bの2台となっている。
【0120】
しかしながら、車両Aの最大収容台数は、同図に破線で示すように6台分あり、しかも、新たに全体隊列に加わろうとする車両Fの車高が高い場合、車両Fは車両Aの電波を受信できる可能性もある。また、車両Bの最大収容台数が5台またはそれ以上であれば、車両Fは、車両Bの電波も受信することができる。この場合には、車両Fは、より前方の車両、つまり、車両Aを先頭車両として隊列走行制御を行なう。なお、いずれの先頭車両がより前方であるかの判断は、たとえば、サブ隊列のIDや、前述の実施形態における走行軌跡を用いた送信元車両の特定方法を用いる。
【0121】
このように、より前方の先頭車両の隊列走行情報を用いるようにすれば、隊列全体においてより前方の車両の情報を使うことになる。よって、隊列の前方の車両挙動を迅速に反映した車両制御が可能となる。
【0122】
ただし、より前方の車両から受信した受信品質が不十分である場合には、安定した隊列走行制御を行なうことができない。そこで、複数のサブ隊列の先頭車両からそれぞれ隊列走行情報を受信できる場合には、受信品質が予め設定された基準品質以上の隊列走行情報を用いることにする。そして、受信品質が基準品質以上の隊列走行情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とする。このようにすれば、先頭車両として設定した車両から隊列走行情報を受信できないことによって、隊列走行制御ができなくなってしまうことを抑制できる。
【0123】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0124】
たとえば、隊列走行のために送信する情報には自車両の車高を含ませることも多いので、車高を利用して簡易的に、自車両が電波遮蔽体となっていることを判断してもよい。具体的には、各車両から送信する隊列走行情報に、その車両の車高を含ませるようにしておく。そして、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、前述のステップSD45の判断に代えて、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断する。
【0125】
たとえば、前述の実施形態では、サブ隊列の先頭車両が連続していたが、サブ隊列の最後尾の車両が、次のサブ隊列の先頭車両となってもよい。この場合、ステップSD46において、次のサブ隊列の先頭車両かどうかの具体的判断として、自車両がサブ隊列の最後尾かどうかを判断すればよい。サブ隊列の最後尾であることの判断は、最大収容台数と現在収容台数とが等しいかどうかで判断する。
【符号の説明】
【0126】
1:車載隊列走行システム、 10:隊列走行装置、 11:無線通信機、 12:制御部、 20:レーザレーダ、 30:位置検出器、 40:ブレーキECU、 50:エンジンECU、 60:EPS_ECU、 70:車内LAN
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
車車間通信を行なう無線通信機を備え、
他車両が隊列走行制御を行なうために、前記無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信し、
自車両が隊列の後続車両であれば、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう隊列走行装置であって、
自車両が先頭車両である場合、先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点で隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を前記隊列走行情報に含ませて送信し、
自車両が後続車両であって、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が先頭車両であるとして、自車両が先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、前記現在収容可能台数情報を含ませて送信することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項2】
車両に搭載され、
車車間通信を行なう無線通信機を備え、
他車両が隊列走行制御を行なうために、前記無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信し、
自車両が隊列の後続車両であれば、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう隊列走行装置であって、
前記隊列走行情報に、全体隊列のIDである全体隊列ID、および、全体隊列を、各隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の隊列に分けたサブ隊列のIDであるサブ隊列IDを含ませて送信し、
自車両がサブ隊列の先頭車両である場合、サブ隊列の先頭車両であることをサブ隊列の後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点でこのサブ隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を前記隊列走行情報に含ませて送信し、
自車両がサブ隊列の後続車両である場合、
前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、前記隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび前記先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて前記隊列走行制御を行い、
且つ、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、その先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とし、
さらに、自車両が2番目以降のサブ隊列の先頭車両である場合、
前のサブ隊列の後続車両として、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、前記隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび前記先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて自車両の前記隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を前記隊列走行情報に含ませて送信することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、より前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とすることを特徴とする隊列走行制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、受信品質が予め設定された基準品質以上の情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とすることを特徴とする隊列走行制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わった場合、隊列に加わったことを示す隊列参加通知を前記無線通信機から送信し、
自車両が前記電波遮蔽状態であると判断して先頭車両となった後に、前記隊列参加通知を受信した場合、自車両が後続車両となっている隊列に車両が加わったことを、自車両が後続車両となっている隊列の先頭車両に通知することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
自車両が後続車両であって、隊列外の車両が送信する隊列走行情報を、所定時間以上、良好な受信品質で受信したにもかかわらず、その車両が隊列に入らない場合に、自車両が電波遮蔽体となっていると判断することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項において、
隊列走行情報には、自車両の車高情報が含まれており、
自車両が後続車両であって、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項1】
車両に搭載され、
車車間通信を行なう無線通信機を備え、
他車両が隊列走行制御を行なうために、前記無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信し、
自車両が隊列の後続車両であれば、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう隊列走行装置であって、
自車両が先頭車両である場合、先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点で隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を前記隊列走行情報に含ませて送信し、
自車両が後続車両であって、先頭車両が送信する隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置までは、先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が先頭車両であるとして、自車両が先頭車両であることを後続車両が判断できる先頭情報、および、前記現在収容可能台数情報を含ませて送信することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項2】
車両に搭載され、
車車間通信を行なう無線通信機を備え、
他車両が隊列走行制御を行なうために、前記無線通信機から、自車両の走行情報を含む隊列走行情報を逐次送信し、
自車両が隊列の後続車両であれば、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報のうち、先頭車両として設定している車両からの隊列走行情報を用いて、自車両の隊列走行制御を行なう隊列走行装置であって、
前記隊列走行情報に、全体隊列のIDである全体隊列ID、および、全体隊列を、各隊列の先頭車両の無線通信機の通信能力によって定まる車両数以下の隊列に分けたサブ隊列のIDであるサブ隊列IDを含ませて送信し、
自車両がサブ隊列の先頭車両である場合、サブ隊列の先頭車両であることをサブ隊列の後続車両が判断できる先頭情報、および、現時点でこのサブ隊列にさらに収容できる車両台数を示す現在収容可能台数情報を前記隊列走行情報に含ませて送信し、
自車両がサブ隊列の後続車両である場合、
前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、前記隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび前記先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて前記隊列走行制御を行い、
且つ、サブ隊列の先頭車両の隊列走行情報に含まれている現在収容可能台数情報は収容可能を示しているが、自車両が電波遮蔽体となって、その現在収容可能台数情報から定まる隊列最後尾の位置まで、その先頭車両が送信する隊列走行情報が届かない電波遮蔽状態であると判断した場合、自車両が次のサブ隊列の先頭車両となると判断して、送信する隊列走行情報の内容を、自車両がサブ隊列の先頭車両である場合の内容とし、
さらに、自車両が2番目以降のサブ隊列の先頭車両である場合、
前のサブ隊列の後続車両として、前記無線通信機により複数の車両からそれぞれ受信した隊列走行情報から、自車両が後続車両となっているサブ隊列の先頭車両から受信した隊列走行情報を、前記隊列走行情報に含まれているサブ隊列IDおよび前記先頭情報により特定し、特定した隊列走行情報を用いて自車両の前記隊列走行制御の内容を決定し、決定した隊列走行制御の内容を前記隊列走行情報に含ませて送信することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、より前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とすることを特徴とする隊列走行制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わるとき、複数の先頭車両から、それぞれ収容可能を示す現在収容可能台数情報を含んだ隊列走行情報を受信できた場合、受信品質が予め設定された基準品質以上の情報のうちで最も前方の先頭車両の隊列走行情報を、自車両の隊列走行制御における先頭車両の情報とすることを特徴とする隊列走行制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
自車両が隊列外の車両であって前記隊列の最後尾に加わった場合、隊列に加わったことを示す隊列参加通知を前記無線通信機から送信し、
自車両が前記電波遮蔽状態であると判断して先頭車両となった後に、前記隊列参加通知を受信した場合、自車両が後続車両となっている隊列に車両が加わったことを、自車両が後続車両となっている隊列の先頭車両に通知することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
自車両が後続車両であって、隊列外の車両が送信する隊列走行情報を、所定時間以上、良好な受信品質で受信したにもかかわらず、その車両が隊列に入らない場合に、自車両が電波遮蔽体となっていると判断することを特徴とする隊列走行装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項において、
隊列走行情報には、自車両の車高情報が含まれており、
自車両が後続車両であって、隊列外の車両から良好な受信品質で隊列走行情報を受信できた場合、受信した隊列走行情報に含まれる車高と、自車両の車高とを比較して、自車両の車高の方が高い場合、自車両が電波遮蔽体となっていると判断することを特徴とする隊列走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−73362(P2013−73362A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211071(P2011−211071)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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