説明

階調補正装置、階調補正方法及び階調補正プログラム

【課題】小規模な演算規模で、かつ、安価な構成により高品質の階調補正を行う。
【解決手段】近傍画素最大最小値抽出回路11は、入力画像信号の注目画素の近傍画素の輝度値の最大値及び最小値を抽出する。階調補正信号生成回路12は、近傍画素最大最小値抽出回路11により得られた近傍画素の輝度値の最大値及び近傍画素の輝度値の最小値と入力画像信号とに基づいて、階調補正に用いる階調補正信号を生成する。加算回路13は、入力画像信号に階調補正信号を加算することにより、黒側閾値以下の入力信号と、白側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、黒側閾値から白側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は階調補正装置、階調補正方法及び階調補正プログラムに係り、特にカメラ撮影等で得られる映像信号の階調補正を行う階調補正装置、階調補正方法及び階調補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カメラ撮影等で得られる夜景や逆光の撮影画像において、暗部の階調がつぶれ気味になっているために、視認性が悪くなることがしばしばある。このような撮影画像の視認性を向上するために、これまで多くの階調補正方法が提案されている。そのうちの主要な階調補正方法は、以下の2つに分類される。
【0003】
一つは、ヒストグラムをもとにトーンカーブを変化させるもので、例えば特許文献1に記載されたような階調補正方法である。この特許文献1に記載の階調補正方法では、入力輝度値を所定の出力輝度値に変換する補正テーブルであるトーンカーブを用いたトーンカーブ補正と、撮影画像の輝度低周波成分を用いる階調補正とを併用して階調補正を行う。
【0004】
もう一つはレチネックス理論を用いて階調補正をするもので、例えば特許文献2に記載されたような階調補正方法である。この特許文献2に記載の階調補正方法では、人の視覚は照明光を除去して外界をみる明暗恒常性や色恒常性を備えており、視覚は各物体の反射率の比によって色を知覚するという、レチネックス(Retinex)理論を用いて階調補正を行う。反射率は、照明光に依存しない被写体の画像成分であるので、レチネックス理論を用いた階調補正方法では、原画像から照明光を分離して反射光を得ることによって、画像のコントラストの補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010―39758号公報
【特許文献2】特開2010―193199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に各記載の階調補正方法は、いずれも基本的に1画面全体の内容もしくは比較的広範囲の画像情報を分析して補正のパラメタを決定するようにしているため、演算規模が比較的大きく、コスト的な制約のある機器にとって採用しにくいという課題がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、小規模な演算規模で、かつ、安価な構成により高品質の階調補正を行い得る階調補正装置、階調補正方法及び階調補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の階調補正装置は、供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出手段と、入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、低輝度側閾値以下の入力信号と高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換手段と、最大最小値抽出手段から供給される近傍領域内の最大値と最小値との代表値を算出する代表値算出手段と、最大最小値抽出手段から供給される近傍領域内の最大値と最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出手段と、代表値と低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、代表値が低輝度側閾値以下の値、又は高輝度側閾値以上の値のときは、代表値と低輝度側閾値又は高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、代表値が低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成手段と、近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成手段と、少なくとも補正用信号と第1の補正係数と第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算手段と、入力画像信号に階調補正信号を加算することにより、低輝度側閾値以下の入力信号と、高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、低輝度側閾値から高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明の階調補正装置は、上記の第1の補正係数作成手段は、代表値が高輝度側閾値以上の値、又は低輝度側閾値以下の値のときは、代表値と高輝度側閾値との差分の二乗のレベル、又は代表値と低輝度側閾値との差分の二乗のレベルを出力し、代表値が低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成し、
上記の加算手段は、低輝度側閾値以下の入力信号では近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、低輝度になるほど出力レベルが高輝度方向へ変化する第1の非直線入出力特性部分と、高輝度側閾値以上の入力信号では近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、高輝度になるほど出力レベルが低輝度方向へ変化する第2の非直線入出力特性部分と、低輝度側閾値から高輝度側閾値までの入力信号範囲では入力信号レベルをそのまま出力する直線入出力特性部分とからなる入出力特性に基づいて、入力画像信号を階調補正した画像信号を出力することを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明の階調補正方法は、供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出ステップと、入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、低輝度側閾値以下の入力信号と高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換ステップと、最大最小値抽出ステップで抽出された近傍領域内の最大値と最小値との代表値を算出する代表値算出ステップと、最大最小値抽出で抽出された近傍領域内の最大値と最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出ステップと、代表値と低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、代表値が低輝度側閾値以下の値、又は高輝度側閾値以上の値のときは、代表値と低輝度側閾値又は高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、代表値が低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成ステップと、近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成ステップと、少なくとも補正用信号と第1の補正係数と第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算ステップと、入力画像信号に階調補正信号を加算することにより、低輝度側閾値以下の入力信号と、高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、低輝度側閾値から高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明の階調補正プログラムは、コンピュータに、
供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出機能と、入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、低輝度側閾値以下の入力信号と高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換機能と、最大最小値抽出機能で抽出された近傍領域内の最大値と最小値との代表値を算出する代表値算出機能と、最大最小値抽出で抽出された近傍領域内の最大値と最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出機能と、代表値と低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、代表値が低輝度側閾値以下の値、又は高輝度側閾値以上の値のときは、代表値と低輝度側閾値又は高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、代表値が低輝度側閾値より高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成機能と、近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成機能と、少なくとも補正用信号と第1の補正係数と第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算機能と、入力画像信号に階調補正信号を加算することにより、低輝度側閾値以下の入力信号と、高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、低輝度側閾値から高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小規模な演算規模で、かつ、安価な構成で高品質の階調補正をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の階調補正装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1中の階調補正信号生成回路12の一実施の形態のブロック図である。
【図3】図2中の補正用信号変換部の入出力特性の一例を示す図である。
【図4】図2中の第1の補正係数作成部の入出力特性の一例を示す図である。
【図5】図2中の第2の補正係数作成部の入出力特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の階調補正装置の一実施の形態の入出力特性を示す図である。
【図7】本発明の階調補正装置の一実施の形態による階調補正を説明するための入力画像信号波形と出力画像信号波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明になる階調補正装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図において、階調補正装置10は、近傍画素最大最小値抽出回路11と、階調補正信号生成回路12と、加算回路13とより構成される。
【0016】
近傍画素最大最小値抽出回路11は、例えば撮像画像信号である入力画像信号の注目画素の近傍画素(例えば、注目画素を中心とする上下左右斜めに隣接する周囲の計8画素)の輝度値(以下、画素値とも呼ぶ)の最大値及び最小値を抽出する。近傍画素最大最小値抽出回路11は、例えば上記の計8画素の近傍画素のいずれかが、外部ノイズなどで異常値となることが想定される場合は、その異常値の近傍画素を抽出対象から排除するため、近傍画素の画素値の上限値及び下限値を予め設定し、その上限値及び下限値の範囲内の画素値を持つ近傍画素のみを最大値及び最小値の抽出対象の近傍画素とするようにしてもよい。
【0017】
階調補正信号生成回路12は、近傍画素最大最小値抽出回路11により得られた近傍画素の輝度値の最大値(以下、近傍最大値という)及び近傍画素の輝度値の最小値(以下、近傍最小値という)と、入力画像信号とに基づいて、階調補正に用いる階調補正信号を生成する。
【0018】
加算回路13は、入力画像信号と階調補正信号生成回路12により生成された階調補正信号とを加算することで、階調補正された画像信号を生成して出力する。
【0019】
次に、本実施の形態の階調補正装置10の要部を構成する階調補正信号生成回路12の構成及び動作について、更に詳細に説明する。
【0020】
図2は、図1中の階調補正信号生成回路12の一実施の形態のブロック図を示す。図2において、階調補正信号生成回路12は、入力画像信号が供給される補正用信号変換部121と、近傍最大値と近傍最小値が供給される近傍領域代表値算出部122及び近傍領域振幅算出部123と、近傍領域代表値に基づいて第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成部124と、近傍領域振幅に基づいて第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成部125と、階調補正信号を出力する乗算部126とを含む構成とされている。
【0021】
補正用信号変換部121は、図3に示す入出力特性に基づいて、入力画像信号を変換した補正用信号を出力する。図3に示す入出力特性は、予め設定した低輝度側の閾値である黒側閾値と高輝度側の閾値である白側閾値と間の値の入力画像信号に対しては「0」を出力し、画像信号の黒側閾値以下の暗い入力画像信号に対しては入力レベルをそのまま出力し、画像信号の白側閾値以上の明るい入力画像信号に対しては最大輝度値である白レベル入力時に「0」となるように入力画像信号レベルから白レベルを減算した値を出力する特性を示す。
【0022】
近傍領域代表値算出部122は、近傍最大値と近傍最小値とに基づいて、近傍領域全体を代表する一つの値(すなわち、代表値)を第1の補正係数作成部124へ出力する。最も簡単で合理的な実現例として、ここでは近傍領域代表値算出部122は、近傍最大値と近傍最小値との加算平均値を代表値として第1の補正係数作成部124へ出力することとする。
【0023】
近傍領域振幅算出部123は、近傍最大値と近傍最小値とを入力信号として受け、近傍最大値から近傍最小値を減算し、その減算値を近傍領域の振幅値として第2の補正係数作成部125へ出力する。
【0024】
第1の補正係数作成部124は、近傍領域代表値算出部122から供給される近傍領域代表値をXr、黒側閾値をTb、白側閾値をTw、最小輝度値である黒レベルをゼロ、最大輝度値である白レベルをWとしたとき、以下に示す式で表わされる図4に示す入出力特性に基づいて第1の補正係数Y1を作成する。
(a)Xr<Tbの場合
Y1=(Tb−Xr)×(Tb−Xr) (1)
(b)Tb≦Xr≦Twの場合
Y1=0 (2)
(c)Xr>Twの場合
Y1=(Xr−Tw)×(Xr−Tw) (3)
第2の補正係数作成部125は、近傍領域振幅算出部123から供給される近傍領域の振幅値をXa、振幅閾値をTaとしたとき、以下に示す式で表わされる図5に示す入出力特性に基づいて第2の補正係数Y2を作成する。
(a)Xa<Taの場合
Y2=Ta−Xa (4)
(b)Xa≧Taの場合
Y2=0 (5)
乗算部126は、補正用信号変換部121からの補正用信号と、第1の補正係数作成部124からの第1の補正係数Y1と、第2の補正係数作成部125からの第2の補正係数Y2と、予め定められた一定値の固定係数とを乗算し、その乗算結果を階調補正信号として図1の加算回路13へ出力する。
【0025】
図1の加算回路13は、入力画像信号と図2の乗算部126から出力された階調補正信号とを加算して階調補正された画像信号を出力する。
【0026】
図6は、図1に示す階調補正装置10の全体の入出力特性を示す。入力画像信号が平坦な場合(近傍最大値と近傍最小値が等しい場合)は、近傍領域代表値Xrは入力画像信号の値に等しく、近傍領域の振幅値Xaはゼロとなる。その場合の階調補正装置10の入出力特性は、図6において、入力が黒側閾値以下及び白側閾値以上の区間は、曲線部分の特性(非直線入出力特性)となる。また、黒側閾値と白側閾値との間の階調を示す入力画像信号に対しては、階調補正装置10は図6の入出力特性に示すように、入力画像信号をそのまま出力画像信号として出力する直線入出力特性を示す。
【0027】
ここで、階調補正装置10は、黒側閾値以下の暗い階調を示す入力画像信号に対しては、図6にIで示す曲線部分の特性に基づいて補正し、近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、輝度値が低いほど図6にaで示す上方向に変化する曲線部分の特性(非直線入出力特性)を与える。このため、入力画像信号が、振幅が小さく、かつ、輝度値が低い画像信号であるほど高輝度方向に階調補正される。
【0028】
また、階調補正装置10は、白側閾値以上の明るい階調を示す入力画像信号に対しては、図6にIIで示す曲線部分の特性に基づいて補正し、近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、輝度値が高いほど図6にbで示す下方向に変化する曲線部分の特性(非直線入出力特性)を与える。このため、入力画像信号が、振幅が小さく、かつ、輝度値が高い画像信号であるほど低輝度方向に階調補正される。
【0029】
次に、本実施の形態の階調補正装置10による効果について図7と共に説明する。
【0030】
図7は、具体的な入出力画像信号波形の一例を示す。本実施の形態の階調補正装置10は低輝度側と高輝度側は対称的な処理を行うので、低輝度に近いレベルのパルス波形で説明する。図7(A)は入力画像信号波形、同図(B)は出力画像信号波形を示す。図7(A)に示す入力画像信号のパルス部の左右のフラット部分は、図6の入出力特性中の曲線部分の特性Iに従って、図7(B)に実線で示すように入力画像信号よりも明るい信号レベルに階調補正される。
【0031】
更に、図7(A)に示す入力画像信号のパルス部分に近づくにつれ、近傍領域代表値と近傍領域振幅値が大きくなるため、図6の入出力特性中の曲線部分の特性Iが直線部分の特性に近づくため、出力画像信号は図7(B)に実線で示すように元の入力画像と同じ低輝度に近づくように階調補正される結果、全体としてパルス部の両側に低輝度の輪郭が付加されたような波形となる。なお、図7(B)中の点線は、入力画像信号波形を示す。
【0032】
単純に一定のトーンカーブで低輝度を高輝度方向に上げる階調補正をした場合にはパルス部の振幅が小さくなるため、コントラストが弱い画像になる。これに対し、本実施の形態の階調補正装置10では、図7(B)に実線で示すように出力画像信号はパルス部の振幅が入力画像信号のそれと殆ど変化せず、かつ、パルス部の両側は高輝度方向に上げられるので、コントラストをある程度保ったまま、暗部の明度を上げることができる。
【0033】
このように、本実施の形態の階調補正装置10によれば、注目画素の近傍領域の画素の最大値と最小値の情報から、簡単な演算処理で階調補正する構成としたので、従来の階調補正装置のような1画面全体の内容もしくは比較的広範囲の画像情報を分析するための大容量のメモリや大規模な演算装置を用いる必要がないため、小規模な演算規模で、かつ、安価な構成で、コントラストをある程度保ったまま、暗部の明度を上げるか、明部の明度を下げるという高品質の階調補正をすることができる。
【0034】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態で説明した階調補正装置10の動作を実行させる階調補正方法や、図1及び図2のブロック図の構成をコンピュータのソフトウェアにより実行させる階調補正プログラムも本発明に包含されるものである。この場合、階調補正プログラムは、記録媒体からコンピュータに取り込まれるようにしてもよいし、ネットワークを介して配信されてコンピュータにダウンロードされるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 階調補正装置
11 近傍画素最大最小値抽出回路
12 階調補正信号生成回路
13 加算回路
121 補正用信号変換部
122 近傍領域代表値算出部
123 近傍領域振幅算出部
124 第1の補正係数作成部
125 第2の補正係数作成部
126 乗算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出手段と、
前記入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記低輝度側閾値以下の入力信号と前記高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、前記入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換手段と、
前記最大最小値抽出手段から供給される前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との代表値を算出する代表値算出手段と、
前記最大最小値抽出手段から供給される前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出手段と、
前記代表値と前記低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記代表値が前記低輝度側閾値以下の値、又は前記高輝度側閾値以上の値のときは、前記代表値と前記低輝度側閾値又は前記高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、前記代表値が前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成手段と、
前記近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成手段と、
少なくとも前記補正用信号と前記第1の補正係数と前記第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算手段と、
前記入力画像信号に前記階調補正信号を加算することにより、前記低輝度側閾値以下の入力信号と、前記高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、前記低輝度側閾値から前記高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、前記入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算手段と
を有することを特徴とする階調補正装置。
【請求項2】
前記第1の補正係数作成手段は、
前記代表値が前記高輝度側閾値以上の値、又は前記低輝度側閾値以下の値のときは、前記代表値と前記高輝度側閾値との差分の二乗のレベル、又は前記代表値と前記低輝度側閾値との差分の二乗のレベルを出力し、前記代表値が前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲の値のときはゼロレベルを示す前記第1の補正係数を作成し、
前記加算手段は、
前記低輝度側閾値以下の入力信号では前記近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、前記低輝度になるほど出力レベルが前記高輝度方向へ変化する第1の非直線入出力特性部分と、前記高輝度側閾値以上の入力信号では前記近傍領域の振幅値が小さいほど、かつ、前記高輝度になるほど出力レベルが前記低輝度方向へ変化する第2の非直線入出力特性部分と、前記低輝度側閾値から前記高輝度側閾値までの入力信号範囲では入力信号レベルをそのまま出力する直線入出力特性部分とからなる入出力特性に基づいて、前記入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の階調補正装置。
【請求項3】
供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出ステップと、
前記入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記低輝度側閾値以下の入力信号と前記高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、前記入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換ステップと、
前記最大最小値抽出ステップで抽出された前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との代表値を算出する代表値算出ステップと、
前記最大最小値抽出で抽出された前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出ステップと、
前記代表値と前記低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記代表値が前記低輝度側閾値以下の値、又は前記高輝度側閾値以上の値のときは、前記代表値と前記低輝度側閾値又は前記高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、前記代表値が前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成ステップと、
前記近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成ステップと、
少なくとも前記補正用信号と前記第1の補正係数と前記第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算ステップと、
前記入力画像信号に前記階調補正信号を加算することにより、前記低輝度側閾値以下の入力信号と、前記高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、前記低輝度側閾値から前記高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、前記入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算ステップと
を含むことを特徴とする階調補正方法。
【請求項4】
コンピュータに、
供給される入力画像信号中の注目画素の近傍領域内の2以上の画素の輝度値の最大値と最小値とを抽出する最大最小値抽出機能と、
前記入力画像信号と予め設定された低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記低輝度側閾値以下の入力信号と前記高輝度側閾値以上の入力信号とについてはそれぞれ入力信号レベルに関連したレベルの信号を出力し、かつ、前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の入力信号に対してはゼロレベルを出力する入出力特性に基づいて、前記入力画像信号から補正用信号を生成する補正用信号変換機能と、
前記最大最小値抽出機能で抽出された前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との代表値を算出する代表値算出機能と、
前記最大最小値抽出で抽出された前記近傍領域内の前記最大値と前記最小値との差分である近傍領域の振幅値を算出する振幅算出機能と、
前記代表値と前記低輝度側閾値及び高輝度側閾値とが供給され、前記代表値が前記低輝度側閾値以下の値、又は前記高輝度側閾値以上の値のときは、前記代表値と前記低輝度側閾値又は前記高輝度側閾値との差分に関連した値を示し、前記代表値が前記低輝度側閾値より前記高輝度側閾値までの範囲内の値のときはゼロレベルを示す第1の補正係数を作成する第1の補正係数作成機能と、
前記近傍領域の振幅値と振幅閾値との差分に応じた値の第2の補正係数を作成する第2の補正係数作成機能と、
少なくとも前記補正用信号と前記第1の補正係数と前記第2の補正係数とを乗算して階調補正信号を生成する乗算機能と、
前記入力画像信号に前記階調補正信号を加算することにより、前記低輝度側閾値以下の入力信号と、前記高輝度側閾値以上の入力信号とのそれぞれにおいて非直線入出力特性を示し、かつ、前記低輝度側閾値から前記高輝度側閾値までの入力信号範囲において直線入出力特性を示す入出力特性に基づいて、前記入力画像信号を階調補正した画像信号を出力する加算機能と
を実現させるための階調補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227796(P2012−227796A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94684(P2011−94684)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】