説明

隔壁形成方法

【課題】基板と隔壁材料層との間に、隔壁パターン材料層を焼成する際に焼失するような接着層を形成しておくことで、レジストマスクの除去工程における隔壁パターン材料層の倒壊を防止する。
【解決手段】基板上に隔壁材料層を形成し、その上にレジスト膜を形成してレジスト膜のパターニングを行い、パターニングしたレジスト膜を利用して不要部分の隔壁材料層を除去することで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去し、その後、隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成する際、基板と隔壁材料層との間に接着層を形成し、その接着層を、隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去する際には隔壁パターンの材料層を基板上に維持し得る程度の接着力を有し、かつ隔壁パターンの材料層を焼成した際には焼失する熱焼失性の材料で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁形成方法に関し、さらに詳しくは、レジストマスクを用いたパターニングで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジストマスクを除去する工程を有する隔壁形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁を有する表示パネルとして、プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と記す)が知られており、なかでもAC面放電型のPDPがよく知られている。このPDPは、前面側のガラス基板と背面側のガラス基板が貼り合わされ、内部に放電ガスが封入された構造となっている。前面側のガラス基板の内面には複数の表示電極が平行に形成され、この表示電極が誘電体層と保護層で覆われている。背面側のガラス基板には、放電空間を区画するための隔壁が形成され、隔壁と隔壁との間には3原色である赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の蛍光体層が形成されている。
【0003】
表示電極間に電圧を印加すると、隔壁により区画された放電空間で放電が起こり、紫外線が発生され、この紫外線により蛍光体層を励起発光させることによってカラー表示を行うようになっている。隔壁の形成には、サンドブラスト法やエッチング法のようなサブトラクト法が広く用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−301934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンドブラスト法を使用した隔壁形成プロセスでは、まず、基板上に隔壁材料層を形成し、この隔壁材料層上に感光性ドライフィルムをラミネートするか、あるいは液状の感光性レジストを塗布し、露光、現像することで、隔壁パターンのレジストマスクを形成する。
【0006】
そして、そのレジストマスクから露出した隔壁材料層をサンドブラストにより除去し、剥離液を用いてレジストマスクを洗浄除去することで隔壁パターンの材料層を形成し、その隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成する。
【0007】
このサンドブラスト法を使用した隔壁形成プロセスでは、隔壁材料層に切削粒子を吹き付ける切削工程と、その切削工程後にレジストマスクを除去する工程が必須である。
【0008】
しかしながら、レジストマスクの除去工程において、隔壁パターンとして残るべき隔壁材料層が倒壊して欠陥となる問題が発生する。このような問題は、画質が高精細となり、隔壁の幅が狭く、アスペクト比が高くなるにしたがって顕著となる。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、基板と隔壁材料層との間に、隔壁パターン材料層を焼成する際に焼失するような接着層を形成しておくことで、レジストマスクの除去工程における隔壁パターン材料層の倒壊を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板上に隔壁材料層を形成し、その上にレジスト膜を形成してレジスト膜のパターニングを行い、パターニングしたレジスト膜を利用して不要部分の隔壁材料層を除去することで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去し、その後、隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成する工程からなり、前記基板と隔壁材料層との間に接着層を形成する工程を備え、前記接着層が、隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去する際には前記隔壁パターンの材料層を基板上に維持し得る程度の接着力を有し、かつ隔壁パターンの材料層を焼成した際には焼失する熱焼失性の材料からなることを特徴とする隔壁形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隔壁形成時に隔壁が倒壊することがなくなるので、隔壁の不良率を低下させることができる。また、本発明を表示パネルの製造に適用した場合には、隔壁の幅を細くしても隔壁の倒壊がないので、より高精細な表示パネルの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の隔壁形成方法は、隔壁材料層の形成面と隔壁材料層との間に樹脂を主成分とする熱焼失性の接着層を設けた状態で隔壁のパターニングを行うことを骨子とするものである。接着層は、隔壁材料層の乾燥段階の熱処理には耐えることができ、パターニング後の焼成工程では隔壁材料内のバインダー成分とともに焼失する材料のものを用いる。
【0013】
本発明の隔壁形成方法は、サンドブラスト法によるパターニングに適しているが、レジストマスクの剥離工程を伴う化学エッチング法にも適用することができる。また、対象となるPDPもAC面放電型のPDPのみならず、DC型のPDPであってもよいし、隔壁が前面側の基板や、前面側の基板と背面側の基板との両方に形成されているPDPであっても、本発明を適用することが可能である。
【0014】
本発明において、基板としては、ガラス、石英、セラミックス等の基板や、これらの基板上に、電極、絶縁膜、誘電体層、保護膜等の所望の構成要素を形成した基板が含まれる。
【0015】
上記電極は、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。電極に用いられる材料としては、例えば、ITO、SnO2などの透明な導電性材料や、Ag、Au、Al、Cu、Crなどの金属の導電性材料が挙げられる。電極の形成方法としては、当該分野で公知の各種の方法を適用することができる。たとえば、印刷などの厚膜形成技術を用いて形成してもよいし、物理的堆積法または化学的堆積法からなる薄膜形成技術を用いて形成してもよい。厚膜形成技術としては、スクリーン印刷法などが挙げられる。薄膜形成技術の内、物理的堆積法としては、蒸着法やスパッタ法などが挙げられる。化学的堆積方法としては、熱CVD法や光CVD法、あるいはプラズマCVD法などが挙げられる。
【0016】
本発明において、隔壁材料層は、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。たとえば、ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるペースト状の隔壁材料を用い、この隔壁材料をスクリーン印刷法などで塗布して乾燥させることで形成することができる。
【0017】
レジスト膜は、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。たとえば、感光性ドライフィルムレジストを用い、これをラミネートすることで形成してもよい。あるいは、液状の感光性レジストを用い、これを公知のコート法で塗布することで形成してもよい。レジスト膜のパターニングは、フォトリソグラフの手法のような、当該分野で公知の各種の方法を用いて行うことができる。
【0018】
本発明は、レジストマスクを用いたパターニングで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジストマスクを除去する工程を有する方法で隔壁を形成するものであれば、PDPに限らず、あらゆるパネルの製造方法に適用することができる。
【0019】
上記隔壁形成方法、つまりレジストマスクを用いたパターニングで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジストマスクを除去する工程を有する隔壁形成方法としては、たとえば、サンドブラスト法やウエットエッチング法のようなサブトラクト法を用いた隔壁形成方法が挙げられる。
【0020】
サンドブラスト法を用いる場合には、レジストマスクを形成した隔壁材料層に切削粒子を吹き付けて不要部分の隔壁材料層を除去し、その後、剥離液を用いてレジストマスクを洗浄除去することで隔壁パターンの材料層を形成し、その隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成することができる。また、ウエットエッチング法を用いる場合には、レジストマスクを形成した隔壁材料層をエッチング液に浸漬するか、あるいはエッチング液で洗浄することで不要部分の隔壁材料層を除去し、その後、剥離液を用いてレジストマスクを洗浄除去することで隔壁パターンの材料層を形成し、その隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成することができる。
【0021】
本発明の隔壁形成方法は、幅100μm以下の隔壁を形成する際に特に好適に用いることができる。
【0022】
接着層は、一方の基板と隔壁材料層との間に形成できるものであればよく、隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去する際には隔壁パターンの材料層を基板上に維持し得る程度の接着力を有し、かつ隔壁パターンの材料層を焼成した際には焼失する熱焼失性の材料で形成されたものであればよい。
【0023】
この接着層は、少なくとも200℃までは焼失しない耐熱性樹脂を主成分とする材料で形成されていることが望ましい。具体的には、接着層は、ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリ4−フッ化エチレン、およびポリフェニレンサルファイドのグループから選択された1つまたは2つ以上の合成樹脂を主成分とする材料で形成されていることが望ましい。この接着層は、10μm以下の厚みで形成されていることが望ましい。
【0024】
以下、図面に示す実施形態に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0025】
図1(a)および図1(b)は本発明の隔壁形成方法を適用して製造されたPDPの一例を示す説明図である。図1(a)は前面側の基板の部分分解斜視図、図1(b)は背面側の基板の部分分解斜視図である。このPDPはカラー表示用のAC面放電型のPDPである。
【0026】
PDPは、PDPとして機能する構成要素が形成された前面側の基板11と背面側の基板21から構成されている。前面側の基板11と背面側の基板21としては、ガラス基板を用いているが、ガラス基板以外に、石英基板、セラミックス基板等も使用することができる。
【0027】
前面側の基板11の内側面には、水平方向に表示電極Xと表示電極Yが等間隔で交互に配置されている。表示電極Xは維持放電用の電極であり、表示電極Yは走査用の電極である。隣接する表示電極Xと表示電極Yとの間が全て表示ラインとなる。各表示電極X,Yは、ITO、SnO2などの幅の広い透明電極12と、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等からなる金属製の幅の狭いバス電極13から構成されている。表示電極X,Yは、Ag、Auについてはスクリーン印刷のような厚膜形成技術を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜形成技術とエッチング技術を用いることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。以後、表示電極XをX電極と称し、表示電極YをY電極と称することもある。
【0028】
なお、本PDPでは、表示電極Xと表示電極Yが等間隔に配置され、隣接する表示電極Xと表示電極Yとの間が全て表示ラインとなる、いわゆるALIS構造のPDPとなっているが、対となる表示電極X,Yが放電の発生しない間隔(非放電ギャップ)を隔てて配置された構造のPDPであっても、本発明を適用することができる。
【0029】
表示電極X,Yの上には、表示電極X,Yを覆うように第1の誘電体層17が形成されている。誘電体層17は、ガラスフリット、バインダー樹脂、および溶媒からなるガラスペーストを、前面側の基板11上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することにより形成している。誘電体層17は、プラズマCVD法でSiO2膜を成膜することにより形成してもよい。
【0030】
誘電体層17の上には、表示の際の放電により生じるイオンの衝突による損傷から誘電体層17を保護するための保護膜18が形成されている。この保護膜はMgOで形成されている。保護膜は、電子ビーム蒸着法やスパッタ法のような、当該分野で公知の薄膜形成プロセスによって形成することができる。
【0031】
背面側の基板21の内側面には、平面的にみて表示電極X,Yと交差する方向に複数のアドレス電極Aが形成され、そのアドレス電極Aを覆って第2の誘電体層24が形成されている。アドレス電極Aは、Y電極との交差部で発光セルを選択するためのアドレス放電を発生させるものであり、Cr/Cu/Crの3層構造で形成されている。このアドレス電極Aは、その他に、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr等で形成することもできる。アドレス電極Aも、表示電極X,Yと同様に、Ag、Auについてはスクリーン印刷のような厚膜形成技術を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜形成技術とエッチング技術を用いることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。誘電体層24は、誘電体層17と同じ材料、同じ方法を用いて形成することができる。
【0032】
隣接するアドレス電極Aとアドレス電極Aとの間の誘電体層24上には、放電空間を列方向に区画する直線状の隔壁29が形成されている。隔壁29は、たとえばボックスリブやワッフルリブ、メッシュ状リブなどと呼ばれるような格子状の隔壁であってもよい。隔壁29は、転写法、サンドブラスト法、感光性ペースト法等により形成することができる。例えば、転写法では、隔壁形状の凹部を有する転写凹版を用い、この転写凹版の凹部に、ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを充填して基板に転写し、これを焼成することで隔壁を形成する。サンドブラスト法では、ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを誘電体層24上に塗布して乾燥させた後、そのガラスペースト層上に隔壁パターンの開口を有する切削マスクを設けた状態で切削粒子を吹きつけて、マスクの開口に露出したガラスペースト層を切削し、この切削したガラスペースト層を焼成することにより隔壁を形成する。また、感光性ペースト法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光及び現像の後、焼成することにより形成する。
【0033】
隔壁29と隔壁29との間の細長い溝内の側面及び底面には、紫外線により励起されて赤(R)、緑(G)、青(B)の可視光を発生する蛍光体層28R,28G,28Bが形成されている。蛍光体層28R,28G,28Bは、蛍光体粉末とバインダー樹脂と溶媒とを含む蛍光体ペーストを隔壁29間の溝内にスクリーン印刷、又はディスペンサーを用いた方法などで塗布し、これを各色毎に繰り返した後、焼成することにより形成している。この蛍光体層28R,28G,28Bは、蛍光体粉末と感光性材料とバインダー樹脂とを含むシート状の蛍光体層材料(いわゆるグリーンシート)を使用し、フォトリソグラフィー技術で形成することもできる。この場合、所望の色のシートを基板上の表示領域全面に貼り付けて、露光、現像を行い、これを各色毎に繰り返すことで、対応するセル内に各色の蛍光体層を形成することができる。
【0034】
PDPは、上記した前面側の基板11と背面側の基板21とを、表示電極X,Yとアドレス電極Aとが交差するように対向配置し、周囲を封着し、隔壁29で囲まれた放電空間にXeとNeとを混合した放電ガスを充填することにより作製されている。放電ガスの封入圧力は66.4kPa(500Torr)程度である。このPDPでは、表示電極X,Yとアドレス電極Aとの交差部の放電空間が、表示の最小単位である1つのセル(単位発光領域)となる。1画素はR、G、Bの3つのセルで構成される。なお、放電空間を行方向に区画する横隔壁を有する格子セル構造のPDPであっても、本発明を適用することが可能である。
【0035】
上述したようなPDPにおいては、フルHD規格の画素配列は、縦方向が1080画素、横方向が1920画素であり、画素構成をR,G,Bの3セル横配列構成とすると、横方向のセル数は5760個となる。
【0036】
このセル配列を縦横比9対16で対角42インチの横長画面で実現しようとすると、有効画面寸法は水平920mm、垂直518mmとなるので、横方向のセルピッチは159μmとなり、このセルを仕切る縦の隔壁には必然的にボトム幅100μm以下のものが要求されることになる。
【0037】
対角寸法が55インチ程度の大きな画面でXGA程度の解像度を得る場合には、隔壁はボトム幅が130μm程度まで許容されるので、通常のサンドブラスト法で隔壁のパターニングを行っても問題は生じない。しかし、隔壁のボトム幅が100μm以下となる加工では、隔壁のパターニングを行うと、パターニングされた未焼成状態の隔壁材料と誘電体層面との接着力が弱く、隔壁パターン材料層からレジストマスクを除去するマスク剥離工程で隔壁パターン材料層の倒壊が起こり、精度良く隔壁を作ることができない、という問題が生ずる。
【0038】
なお、上記の隔壁のボトム幅とは、背面側の基板の第2誘電体層の表面から隔壁の高さの20%の位置で測定した隔壁の幅をいうものとする。
【0039】
図2(a)〜図2(g)は本発明の隔壁形成方法を工程順に示す説明図である。
図2(a)は背面側の基板21上にアドレス電極Aを形成した状態を示している。また、図2(b)はアドレス電極Aを覆うように低融点鉛ガラスからなる第2の誘電体層24を形成して焼成した状態を示している。ここまでの工程は従来と同じである。
【0040】
次に、図2(c)に示すように、隔壁形成面となる第2の誘電体層24の上に熱焼失性の接着層31を形成する。この接着層31は、例えばポリエーテル系の樹脂であるポリエーテルスルホンをブチルカルビトールに溶解した樹脂溶液を一様に塗布乾燥して、数ミクロンの厚み、好ましくは1〜10μmの厚みとなるように成膜する。例示したポリエーテルスルホンは、後の隔壁材料層の乾燥温度である200℃までの耐熱性を有する一方、隔壁パターン材料層の500℃を超える焼成温度では焼失する特性を持つ。
【0041】
このように、所定温度までは耐熱性を持つ熱焼失性の樹脂は、他にも種々選択可能である。たとえば、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリ4−フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイドなどを用いることができる。
【0042】
次に、図1(d)に示すように、接着層31の上に、乾燥することで隔壁材料層となる低融点ガラスペーストを、スクリーン印刷などで、隔壁の高さに見合う、例えば150μmの厚みで塗布し、約180℃で乾燥させて、隔壁材料層32を形成する。低融点ガラスペーストとしては、酸化鉛ガラス(PbO)と、構造体を強固にするためのアルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)等の強固材料(骨材)とを、エチルセルロース、有機バインダー、有機溶剤等からなる有機物質に分散剤を加えて混合したものを用いる。
【0043】
そして、その上に感光性のレジスト膜を付け、フォトマスクを介して露光し現像することで、隔壁パターンのレジストマスク33を形成する。感光性のレジスト膜は、感光性ドライフィルムレジストをラミネートすることで形成してもよいし、液状のレジストを塗布して乾燥させることで形成してもよい。
【0044】
その後、図2(e)に示すように、サンドブラスト加工により隔壁材料層32を切削して隔壁のパターニングを行うことで、隔壁パターンの材料層29aを得る。
【0045】
その後、図2(f)に示すように、サンドブラスト加工面にレジスト剥離液をシャワー状に流して、レジストマスク33を剥離除去する。
【0046】
このレジストマスク33の剥離工程において、本実施形態においては、剥離液で膨潤したレジストマスクの剥離力よりも隔壁材料層と誘電体層との接着力が大きくなるよう接着層31が機能しているので、隔壁パターン材料層が倒壊することはない。したがって、パネルの不良率を低下させることができる。また、隔壁の幅を細くしても隔壁パターン材料層の倒壊がないので、より高精細な表示パネルの製造が可能となる。
【0047】
最後に、図2(g)に示すように、隔壁パターン材料層29aを560℃の温度で焼成することで、焼結された隔壁29が完成する。この焼成プロセスにおいて、接着層31は隔壁材料内のバインダー成分などと一緒に焼失し、前面側の基板との組み立て工程や、完成したパネルの特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0048】
上述の実施形態では、第2の誘電体層に低融点鉛ガラスを用い、隔壁材料層についても低融点鉛ガラスを用いる構成について述べたが、それらの一方または両方を、例えば亜鉛(ZnO)系ガラスのような非鉛ガラスで構成する場合にも本発明は有益である。
【0049】
特に、第2の誘電体層と隔壁材料層の両方を亜鉛(ZnO)系の低融点ガラスで構成した場合には、それら両方を酸化鉛(PbO)系の低融点ガラスで構成した場合よりも、第2の誘電体層と隔壁材料層との間の接着強度が劣る現象が見られる。したがって、第2の誘電体層と隔壁材料層の両方に無鉛系の低融点ガラスを用いる場合には、本発明の効果はより顕著である。
【0050】
なお、第2の誘電体層は、低融点ガラスに限らず、CVD法で成膜した酸化珪素(SiO2)の薄膜の場合もあるが、第2の誘電体層が酸化珪素の薄膜であっても、本発明を適用することが可能である。
【0051】
上述の実施形態においては、隔壁構造がストレートパターンの場合について説明した。ストレートパターンまたはストライプパターンの場合、縦方向の隔壁がそれぞれ独立しているので、横方向へ倒壊しやすい構造となり、本発明の効果がより大きく期待できる。しかしながら、それ以外の構造、例えば格子状パターンの隔壁構造やミアンダパターンの隔壁構造でも、本発明を適用することにより、ボトム幅が100μm以下の高い精度の隔壁を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0052】
さらに、上述したサンドブラスト法以外に、ウエットエッチング法のようなレジスト剥離工程を伴うサブトラクト法による隔壁形成法を用いる場合でも、本発明を同様に適用して効果を得ることができる。
【0053】
また、以上の実施形態においては、AC型のPDPについて説明してきたが、DC型のPDPの場合においても同様に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、様々な形式のプラズマディスプレイ装置の製造に利用することができる。例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等のディスプレイ装置、平面型の壁掛けテレビジョン、或いは、広告や情報等を表示するための装置として利用されるプラズマディスプレイパネルなどのガス放電表示パネルの製造に際して幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の隔壁形成方法を適用して製造されたPDPの一例を示す説明図である。
【図2】本発明の隔壁形成方法を工程順に示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
11 前面側の基板
17 第1の誘電体層
18 保護膜
21 背面側の基板
24 第2の誘電体層
28R,28G,28B 蛍光体層
29 隔壁
29a 隔壁パターン材料層
31 接着層
32 隔壁材料層
33 レジストマスク
A アドレス電極
X,Y 表示電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に隔壁材料層を形成し、その上にレジスト膜を形成してレジスト膜のパターニングを行い、パターニングしたレジスト膜を利用して不要部分の隔壁材料層を除去することで隔壁パターンの材料層を形成した後、その隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去し、その後、隔壁パターンの材料層を焼成することで隔壁を形成する工程からなり、
前記基板と隔壁材料層との間に接着層を形成する工程を備え、
前記接着層が、隔壁パターンの材料層からレジスト膜を除去する際には前記隔壁パターンの材料層を基板上に維持し得る程度の接着力を有し、かつ隔壁パターンの材料層を焼成した際には焼失する熱焼失性の材料からなることを特徴とする隔壁形成方法。
【請求項2】
前記接着層は、少なくとも200℃までは焼失しない耐熱性樹脂を主成分とする材料で形成されてなる請求項1記載の隔壁形成方法。
【請求項3】
前記接着層は、ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリ4−フッ化エチレン、およびポリフェニレンサルファイドのグループから選択された1つまたは2つ以上の合成樹脂を主成分とする材料で形成されてなる請求項1記載の隔壁形成方法。
【請求項4】
前記接着層が、10μm以下の厚みで形成されてなる請求項1記載の隔壁形成方法。
【請求項5】
前記隔壁が、100μm以下の幅で形成されてなる請求項1記載の隔壁形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−159528(P2008−159528A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349798(P2006−349798)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】