説明

障害物検出装置

【課題】車両が障害物上を通過する際の底擦りの判定を正確に行うとともに、車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定が可能な障害物検出装置を提供する。
【解決手段】画像取得部1と、画像取得部1で取得した画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部2と、自車両の車両データおよび路面形状に基づいて、自車両が障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部3と、姿勢推定部3からの推定姿勢の情報を受けて、底擦りの判定や、底面以外の車体部分が障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部4と、接触判定部4からの判定結果に基づいて、警告を表示する警告表示部5と、自車両の車両データを保存する自車両データ保持部6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は障害物検出装置に関し、特に、車両の底面などが地面や障害物に接触することを防止するための障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の底面が地面や障害物に接触する、いわゆる「底擦り」の防止については従来から様々な工夫がなされており、例えば、特許文献1においては、ステレオカメラで路面の特徴点を測定し、予め準備した地図データと組み合わせることで対象地点の地形情報を取得し、予め準備した自車両データと照合して、底擦りが発生しそうな場合には警告を行う技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2においては、車両周辺の俯瞰図を提供する装置において、障害物を検知し、検知した障害物の高さが自車両のバンパー以上の高さである場合には警告を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3においては、カメラやレーダーで障害物を検知した場合、車高センサーによって車高を検知し、障害物に接触しそうな場合には警告を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−213143号公報
【特許文献2】特開2007−267343号公報
【特許文献3】特開2007−112317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した何れの特許文献においても、車両が障害物上を通過する際の車両姿勢を考慮していないので、正確な底擦りの判定が難しく、また、車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定が難しいという問題を有している。
【0007】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、車両が障害物上を通過する際の底擦りの判定を正確に行うとともに、車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定が可能な障害物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る障害物検出装置の第1の態様は、少なくとも自車両の前方の画像データを取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得した画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部と、前記自車両の車両データおよび前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記自車両が路面の障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部と、前記姿勢推定部で推定された前記車両姿勢の情報を受けて、前記自車両の車体が前記障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部と、を備え、前記接触判定部での判定結果を受け、前記障害物に前記自車両の車体が接触する場合に警告を与える。
【0009】
本発明に係る障害物検出装置の第2の態様は、前記画像取得部が、ステレオカメラを有し、前記ステレオカメラで得られた2つの画像の特徴点を相互に対応付けし、その結果得られた視差から画像上の各点の3次元位置を算出することで3次元画像データを取得し、前記路面形状計測部は、前記3次元画像データに基づいて前記路面形状を計測する。
【0010】
本発明に係る障害物検出装置の第3の態様は、前記姿勢推定部が、前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記障害物を通過する際の前記自車両の前輪、後輪の接地位置を推定し、その位置から前記自車両の傾き具合を含む前記車両姿勢の情報を算出する。
【0011】
本発明に係る障害物検出装置の第4の態様は、前記姿勢推定部が、前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、路面の傾斜角および/または路面の凹凸の高低の値に基づいて、姿勢推定を行うか否かの判定を行い、姿勢推定を行うと判定した場合に前記車両姿勢の情報を算出する。
【0012】
本発明に係る障害物検出装置の第5の態様は、前記接触判定部が、前記前記自車両データに基づいて、前記自車両の底面から前記ステレオカメラまでの第1の高さを取得するとともに、前記路面形状計測部で計測された前記障害物の高さの情報に基づいて、前記障害物の最高部から前記ステレオカメラまでの第2の高さを算出し、前記第1の高さと前記第2の高さとを比較し、前記第1の高さの方が高い場合には、前記障害物が前記自車両の車体底部に接触すると判定する。
【0013】
本発明に係る障害物検出装置の第6の態様は、前記接触判定部が、前記第1の高さと前記第2の高さとの比較において、前記第1の高さを変更する複数の閾値を設定し、前記複数の閾値を使用して段階的に前記障害物と前記車体底部との接触の判定を行う。
【0014】
本発明に係る障害物検出装置の第7の態様は、前記接触判定部が、前記第2の高さの時間変化のデータに基づいて前記障害物と前記車体底部との接触の判定を行う。
【0015】
本発明に係る障害物検出装置の第8の態様は、自車両の前方の画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部と、前記自車両の車両データおよび前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記自車両が路面の障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部と、前記姿勢推定部で推定された前記車両姿勢の情報を受けて、前記自車両の車体が前記障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部と、を備え、前記接触判定部での判定結果を受け、前記障害物に前記自車両の車体が接触する場合に警告を与える。
【0016】
本発明に係る障害物検出装置の第9の態様は、前記画像データが、外部から与えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る障害物検出装置の第1の態様によれば、自車両が障害物上を通過する際の車両姿勢を推定し、当該車両姿勢に基づいて自車両の車体が障害物に接触するか否かの判定を行うので、接触判定を正確に行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係る障害物検出装置の第2の態様によれば、ステレオカメラを用いて3次元画像データを取得し、路面形状計測部は、3次元画像データに基づいて路面形状を計測するので、路面形状を取得するためにレーダー装置等の複雑なセンサーが不要となり、装置コストが安価となる。
【0019】
本発明に係る障害物検出装置の第3の態様によれば、自車両の車両姿勢の情報を比較的容易に得ることができる。
【0020】
本発明に係る障害物検出装置の第4の態様によれば、姿勢推定部において姿勢推定を行うか否かの判定を行うので、不要な推定処理を省くことができ、処理速度の向上を図ることができる。
【0021】
本発明に係る障害物検出装置の第5の態様によれば、障害物が自車両の車体底部に接触するか否かの判定を比較的容易に行うことができる。
【0022】
本発明に係る障害物検出装置の第6の態様によれば、段階的に障害物と車体底部との接触の判定を行うので、より実状に即した判定が可能となる。
【0023】
本発明に係る障害物検出装置の第7の態様によれば、路面形状計測部での計測結果の時間変化によるばらつきの影響を除去して障害物と車体底部との接触の判定を行うことが可能となる。
【0024】
本発明に係る障害物検出装置の第8の態様によれば、自車両が障害物上を通過する際の車両姿勢を推定し、当該車両姿勢に基づいて自車両の車体が障害物に接触するか否かの判定を行うので、接触判定を正確に行うことが可能となる。
【0025】
本発明に係る障害物検出装置の第9の態様によれば、画像データとして、例えばカーナビゲーションシステムの記録媒体に含まれる地形図の3次元画像データを利用することで、地形の変化に起因する路面の変化をより正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ステレオカメラの配置例を示す図である。
【図2】ステレオカメラで取得した前方画像の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図4】ステレオカメラで取得した前方画像の一例を示す図である。
【図5】路面の凹凸位置における自車両の姿勢推定動作を模式的に示す図である。
【図6】底擦りの有無の判定方法を説明する模式図である。
【図7】判定結果を段階的に設定する例を示す図である。
【図8】車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定を説明する模式図である。
【図9】底擦りの警告が必要な障害物を着色して警告する例を示す俯瞰図である。
【図10】底擦りの警告が必要な障害物を着色して警告する例を示す平面図である。
【図11】障害物検出装置の基本的な検出動作を説明するフローチャートである。
【図12】障害物検出装置の検出の応用動作1を説明するフローチャートである。
【図13】本発明に係る障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図14】車体の底面が障害物に接触するか否かの判定を説明する模式図である。
【図15】Htの時間変化を表す図である。
【図16】Htの時間変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<実施の形態>
<装置構成>
図1は、本発明に係る障害物検出装置を搭載した車両VCにおけるステレオカメラの配置例を示す図である。
【0028】
図1において、車両VCには、前方、左右および後方の画像を取得する4台のステレオカメラが搭載されている。すなわち、前方の画像を取得するステレオカメラSC1、前方に対して左側の画像を取得するステレオカメラSC2、後方の画像を取得するステレオカメラSC3および前方に対して右側の画像を取得するステレオカメラSC4を備え、それぞれの撮影領域を領域R1、R2、R3およびR4で示している。
【0029】
このようなシステムを用いることで、自車両の周辺の画像データを取得し、それを視点を変えて自車両の上方から見た俯瞰図に変更することが可能となるが、本願では、特にステレオカメラSC1で取得した前方画像を、走行時の前方の障害物の検出に使用することを特徴としている。
【0030】
なお、各カメラの実際の配置位置は車種によって異なるが、例えば、ステレオカメラSC1はルームミラーの位置に配置され、ステレオカメラSC2およびSC4は、それぞれ、左右のサイドミラーの位置に配置され、ステレオカメラSC3は、リヤバンパーの位置などに配置される。なお、上記配置は一例であり、ステレオカメラの配置はこれに限定されるものではない。
【0031】
図2は、ステレオカメラSC1で取得した前方画像の一例を示す図であり、路面上を走行中の状態を示している。図2においては、中央線CLと、車道外側線OLとの間の路面を自車両が走行しており、車道外側線OLの外側には側壁WLが延在している状態を示している。
【0032】
路面の前方には障害物OBとなる隆起が存在しており、自車両は矢印ARで示すように、障害物OBに向かって直進している。なお、障害物OBは、40〜50m先に存在している。
【0033】
図3は、本発明に係る障害物検出装置100の構成を示すブロック図である。図3に示すように障害物検出装置100は、ステレオカメラSC1〜SC4を含む画像取得部1と、画像取得部1で取得した画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部2と、自車両の車両データおよび路面形状に基づいて、自車両が障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部3と、姿勢推定部3からの推定姿勢の情報を受けて、底擦りの判定や、底面以外の車体部分が障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部4と、接触判定部4からの判定結果に基づいて、警告を表示する警告表示部5と、自車両の車両データを保存する自車両データ保持部6とを備えている。以下、各部についての説明を行う。
【0034】
<画像取得部1>
ステレオカメラは、2台のカメラで異なる視点から同時に撮影を行うことができ、画像取得部1では、得られた2つの画像の特徴点を相互に対応付けし、その結果得られた視差から三角測量の原理に基づいて、画像上の各点の3次元位置を算出することで3次元画像データを得ることができる。
【0035】
<路面形状計測部2>
路面形状計測部2は、画像取得部1で得られた3次元画像データに基づいて、路面の凹凸などの走行の障害となる障害物の位置や高さ、深さ、形状の計測や、路面の傾斜を計測することで、路面形状のデータを取得する。
【0036】
路面の傾斜の計測に際しては、路面に設けられた中央線や車道外側線を示す白線や、道路標識などの画像中の特徴点を利用しても良く、特徴点情報を用いることで、路面形状の計測精度を高めることができる。
【0037】
図4は、ステレオカメラSC1で取得した前方画像の一例を示す図であり、自車両が上り坂に差し掛かる手前の状態を表している。
【0038】
上り坂では、中央線CLや車道外側線OL、側壁WLなどが傾斜を表す特徴点となるので、これらから傾斜角度等を正確に測定することが可能となる。
【0039】
また、例えばカーナビゲーションシステムに接続することで、地図データから地形図を取得するなど、外部記憶媒体を介して路面形状情報を取得できる構成とすれば、路面形状計測部2では路面の十分な情報が得られなかった場合に、外部データ用いて情報の補完を行うことができ、不測の事態にも対応することが可能となる。
【0040】
<姿勢推定部3>
姿勢推定部3は、自車両データ保持部6で保持される自車両の車両データ、例えば車高や車長、車両形状や車両底部からステレオカメラまでの高さに関するデータと、路面形状計測部2で計測された路面形状に基づいて、路面の凹凸を通過する際の前輪、後輪の接地位置(4点)を推定し、その位置から自車両の傾き具合などを推定する。
【0041】
図5には、路面の凹凸位置における自車両の姿勢推定動作を模式的に示す。図5においては、現在位置における車両VCと、未来位置における車両VCを示しており、車両VCが進む先の路面には複数の凹凸が存在している。
【0042】
すなわち、推定実施位置P1は、平坦な路面が一旦窪んで、再び盛り上がり始める位置(特異点)に対応し、窪みの位置や盛り上がりの位置などの路面形状の情報から、推定実施位置P1の近傍では、車両VCの姿勢が前方に傾斜するという推定結果を得ることができる。
【0043】
推定実施位置P2は、路面の隆起の極大部に対応し、隆起の傾斜や頂上の大きさなどの路面形状の情報から、推定実施位置P2の近傍では、車両VCの姿勢が極大部を跨いで水平になるという推定結果を得ることができる。
【0044】
推定実施位置P3は、路面の隆起から路面の窪みに移行する位置(特異点)に対応し、窪みの位置や隆起の位置などの路面形状の情報から、推定実施位置P1の近傍では、車両VCの姿勢が前方に傾斜するという推定結果を得ることができる。
【0045】
なお、図5においては、便宜的に凹凸の起伏を極端に表したが、実際にはステレオカメラから見渡せるレベルの、起伏の緩やかな凹凸に対応するものである。
【0046】
<接触判定部4>
接触判定部4では、姿勢推定部3で推定された障害物上の推定実施位置での車両姿勢に基づいて、底擦りの有無を判定する。
【0047】
図6は、底擦りの有無の判定方法を説明する模式図である。図6では、路面上の隆起OBが車両VCが跨げる程度の大きさである場合を想定しており、姿勢推定部3では、隆起OBを跨いだ状態で車両VCの前輪、後輪の接地位置GCの高低位置を路面形状計測部2で計測された路面情報に基づいて算出し、前輪と後輪とで高低差が無視できるのであれば、推定実施位置での車両姿勢は水平であると推定する。
【0048】
ここで、前輪、後輪の接地位置GCの高低位置は、例えば、隆起OBの頂点が車体の長さ方向の中央に位置した状態を想定し、自車両データ保持部6に保存された車体の長さ方向の中央から、それぞれ前輪、後輪までの長さを情報を取得して接地位置GCを特定することで、路面情報と付き合わせれば容易に求めることができる。
【0049】
以下、図6に示されるように、車両VCが隆起OBを跨いで水平な姿勢である場合を想定して説明する。
【0050】
接触判定部4では、自車両データ保持部6に保存された自車両データから、車両VCの底面からステレオカメラまでの高さH1を取得するとともに、路面形状計測部2で計測された隆起OBの高さの情報に基づいて、隆起OBの頂上からステレオカメラまでの高さH2を算出する。
【0051】
そして、H1とH2とを比較し、H1の方がH2より大きい(H1>H2)場合には、隆起OBは車両VCの底面に接触する、すなわち底擦りが発生すると判定する。
【0052】
ここで、隆起OBの頂上からステレオカメラまでの高さH2には、車両VCの上下動や計測誤差を考慮してマージンαを加算し、H1>H2+αとなった場合に底擦りが発生すると判定しても良い。マージンαは、統計的手法により求めた固定された値としても良いが、車種や、路面形状、積載量、速度などのパラメータを考慮して、適宜変更する値としても良い。
【0053】
また、判定結果は段階的に設定しても良い。例えば、図7に示すように、2種類の閾値Th1、Th2を設定し、条件1として、H1から閾値Th1を差し引いた値がH2より大きい(H1−Th1>H2)場合には、警告表示部5(図3)に危険を示す警告表示を行い、条件2として、H1から閾値Th2を差し引いた値がH2より大きい(H1−Th2>H2)場合には、警告表示部5(図3)に要注意を示す警告表示を行い、条件3として、条件1および条件2以外の場合には警告をしないとする設定としても良い。
【0054】
ここで、閾値Th1、Th2は、裕度を表す値であり、大小関係はTh1>Th2となっており、条件1では裕度が大きく設定されているにも関わらず、H2の方が小さいと判定された場合は、危険度がより高いということで危険を示す警告表示を行うことになる。
【0055】
なお、閾値Th1、Th2は、統計的手法により求めた固定された値としても良いが、走行データに基づいて動的に変化させても良い。例えば、走行中に起伏の激しい路面に差し掛かった場合には、路面形状計測部2で計測された結果に基づいて、閾値Th1、Th2の値を共に大きくするように変更し、起伏が少なくなると閾値Th1、Th2の値を共に小さくするように変更するような処理を行っても良い。
【0056】
また、接触判定部4では底擦りの有無だけでなく、車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定を行うことも可能である。
【0057】
すなわち、図8に示すように、急激なアップダウンを繰り返すような路面では、下り斜面から上り斜面に差し掛かる場合に、例えば車体の先端が上り斜面に接触する可能性がある。
【0058】
その場合、姿勢推定部3で、傾斜が下りから上りに変わる部分(特異点)の近傍で、車両VCの前輪、後輪の接地位置GCの高低位置を路面形状計測部2で計測された路面情報に基づいて算出して、車体の傾斜角を求めるとともに、自車両データ保持部6に保存された自車両データから、前輪の接地位置GCから車体先端までの長さLを求め、路面形状計測部2で計測された路面情報から得られる上り傾斜の情報との突き合わせを行うことで、車体が接触するか否かの判定を行う。
【0059】
接触の可能性があると判定された場合は、警告表示部5(図3)に注意を促す警告表示を行うことで、運転者は、速度を落とすなどして接触を回避する措置を採ることができる。
【0060】
なお、接触の判定には、車両VCの速度や、積載量による車体の路面からの高さの変動などの情報も考慮するようにすれば、より正確な判定が可能となる。
【0061】
<警告表示部5>
警告表示部5は、例えば車載モニタが使用され、ステレオカメラSC1〜SC4で取得した画像データに基づいて、自車両の上方から見た3次元の俯瞰図を作成して表示し、当該俯瞰図上の底擦りの警告が必要な障害物を着色して警告するなどの表示を行う。図9には、その一例を示す。
【0062】
図9に示すように、ステレオカメラSC1の撮影領域R1で取り込まれた画像データが、俯瞰図に変換されて示され、進行方向前方の隆起OBにはハッチングで示される部分に着色が施されてマーキング領域MKとして表示されている。なお、走行中であるので、前方用のステレオカメラSC1のみを障害物検出に使用しており、ステレオカメラSC2〜SC4の撮影領域については表示を行っていない。
【0063】
なお、警告表示部5での表示は俯瞰図に限定されるものではなく、ステレオカメラSC1で取得した前方画像を表示し、当該画像上の底擦りの警告が必要な障害物を着色して警告するなどの表示を行っても良い。図10には、その一例を示す。
【0064】
図10に示すように、ステレオカメラSC1で取得した前方画像が示され、進行方向前方の隆起OBにはハッチングで示される部分に着色が施されてマーキング領域MKとして表示されている。
【0065】
また、警告は上述した車載モニタ上での表示に限定されず、音声による警告や、警告灯の点滅による警告でも良い。
【0066】
<自車両データ保持部6>
自車両データ保持部6は、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置で構成され、車両長や車両高さ、底面からステレオカメラまでの高さなどの寸法情報の他に、車両自重や、積載物を積んだ場合に、重量センサーで取得される重量情報などを保存している。
【0067】
<動作>
<基本動作>
次に、上述した説明を前提として、障害物検出装置100の基本となる検出動作について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0068】
自車両が走行を初めて障害物検出装置100が動作を開始すると、画像取得部1のステレオカメラによる画像データが取得され始める(ステップS1)。
【0069】
路面形状計測部2では、画像取得部1で取得した画像データに基づいて路面形状を随時に計測する(ステップS2)。
【0070】
姿勢推定部3では、まず、路面形状計測部2で計測した路面形状に基づいて、姿勢推定を行うか否かの判定を行う(ステップS3)。
【0071】
この判定には、路面の傾斜角や凹凸の高低の値を使用し、例えば検出された凹凸が予め定めた高さ、あるいは深さの閾値を越えず、かつ路面の傾斜角が予め定めた閾値を越えない場合は車両姿勢に影響は与えないものと判定して姿勢推定は行わないものとする。
【0072】
この閾値は、統計的手法により求めた固定された値としても良いが、走行データに基づいて動的に変化させても良い。例えば、起伏の激しい路面が続く場合には、路面形状計測部2で計測された結果に基づいて起伏の平均値を算出して、その値を使用しても良い。
【0073】
ステップS3において、姿勢推定をしないと判定された場合はステップS2以下の動作を繰り返し、姿勢推定をすると判定された場合は、自車両が対象となる障害物を通過する際の車両姿勢の推定を行う(ステップS4)。
【0074】
そして、推定された車両姿勢に基づいて、接触判定部4で底擦りの判定や、底面以外の車体部分が障害物に接触するか否かの判定を行う(ステップS5)。
【0075】
接触判定部4で、対象となる障害物に自車両が接触すると判定された場合は、警告表示部5で所定の警告表示を行う(ステップS6)。
【0076】
なお、接触判定部4で、対象となる障害物に自車両が接触すると判定された場合は、警告表示は行わず、ステップS2以下の動作を繰り返す。
【0077】
警告表示部5で警告表示を行った後、ステップS7で、例えば走行を停止するなど、障害物検出が不要となる操作がなされたことを検出した場合は障害物検出を終了するが、そうでない場合は、ステップS2以下の動作を繰り返す。なお、障害物検出が不要となる操作の検出は、障害物検出装置100の何れの部位が行っても良く、また、障害物検出装置100の図示されない制御部が行う構成であっても良い。
【0078】
以上説明したように、障害物検出装置100によれば、車両VCが障害物上を通過する際の車両姿勢を推定し、当該車両姿勢に基づいて、底擦りの有無を判定するので、底擦りの判定を正確に行うとともに、車体の底面以外の部分が障害物に接触するか否かの判定も可能となる。
【0079】
<応用動作1>
以上の説明は、障害物検出装置100の基本動作の説明であり、自車両が障害物に向けて直進することを前提として説明したが、現実的には、車両は意図的にコースを変更する場合もあれば、路面の状態によってはハンドルを取られてコースを変更する場合もある。そこで、より現実的な応用動作について、図12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0080】
図12に示すフローチャートにおいて、ステップS11〜S14の動作は、図11を用いて説明したステップS1〜S4の動作と同じであるので説明は省略する。
【0081】
ここで、路面の状態をステレオカメラSC1で取得した前方画像を示す図13を用いて、状況を説明する。
【0082】
図13に示すように、自車両の進行方向前方には隆起OBが存在するが、隆起OBは道の片側に寄っているので、進路を変えることで隆起OB上を通過することを回避できる状態にある。運転者は、障害物検出装置100が一連の検出動作を行う前に矢印ARのようにコースを変更した。
【0083】
このような場合、姿勢推定部3では、例えば舵取り装置からの情報を受け、ハンドルが一定時間内で所定角度以上に回動された場合は、コースが変更されたものと判断し、ステップS12以下の動作を繰り返すように動作する。これにより、新たなコースについて、路面形状が取得され、結果的に、接触警告が行われないこととなる。
【0084】
一方、所定角度以上のハンドル操作が行われない場合は、ステップS16に進み、ステップS14で推定された車両姿勢に基づいて、接触判定部4で底擦りの判定や、底面以外の車体部分が障害物に接触するか否かの判定を行う(ステップS16)。
【0085】
接触判定部4で、対象となる障害物に自車両が接触すると判定された場合は、警告表示部5で所定の警告表示を行う(ステップS17)。
【0086】
なお、接触判定部4で、対象となる障害物に自車両が接触すると判定された場合は、警告表示は行わず、ステップS12以下の動作を繰り返す。
【0087】
警告表示部5で警告表示を行った後、ステップS18で、例えば走行を停止するなど、障害物検出が不要となる操作がなされたことを検出した場合は障害物検出を終了するが、そうでない場合は、ステップS12以下の動作を繰り返す。
【0088】
以上説明したように、障害物検出装置100がコース変更の情報を取得し、コース変更があった場合には、新たなコースについて障害物検出を行うように構成することで、より現実的な検出動作が可能となる。
【0089】
なお、上記の例では、姿勢推定部3がコース変更の有無を判定するものとして説明したが、当該判定は、接触判定部4で行っても良く、また、コース変更の有無を判定する専用の判定部を設けても良い。
【0090】
<応用動作2>
接触判定部4では、車両VCの底面からステレオカメラまでの高さH1と、隆起OBの頂上からステレオカメラまでの高さH2とを比較する際に、高さH2には、車両VCの上下動や計測誤差を考慮してマージンαを加算する場合もあることを説明したが、この方式以外にも、路面状態の変動や、計測誤差に対応する方法がある。
【0091】
すなわち、底擦りの対象となる障害物の頂上からステレオカメラまでの高さの値は、対象障害物が隆起OBのように動かないものであっても、例えば、自車両が起伏の激しい路面を走行している場合には、絶えず変動することになる。そのため、あるタイミングでは底擦りの警告が不要であったものが、別のタイミングでは警告が必要となる場合が想定される。このような場合には、対象障害物の最高部からステレオカメラまでの高さについて、時間変化を考慮して警告を行う方式が望ましい。以下、当該方式について、図14〜図16を用いて説明する。
【0092】
接触判定部4では、図14に示すように、自車両データ保持部6に保存された自車両データから、車両VCの底面からステレオカメラまでの高さH1を取得するとともに、路面形状計測部2で計測された対象障害物である隆起OBの高さの情報に基づいて、ある時刻tでの隆起OBの頂上からステレオカメラまでの高さHtを算出する。
【0093】
この算出動作は、車両VCが、隆起OBを検出してから接近するまでの間は、等間隔で繰り返して実行されるものであり、時刻tはその処理を行うタイミングに相当する。
【0094】
図15には、この繰り返し処理によって得られるHtの時間変化を表す。図15においては、横軸に時間を取り、縦軸にHtの値を取っている。
【0095】
図15に示すように、Htの値は時間とともに激しく変動しており、Htの値が大きいときは、車両VCが路面の隆起で跳ね上がってステレオカメラの位置が上昇し、そこで取得された隆起OBの高さが相対的に低くなり、その結果、見かけ上、ステレオカメラとの距離が離れた状態と想定される。
【0096】
逆に、Htの値が小さいときは、車両VCが窪みに落ちるなどしてステレオカメラの位置が下降し、そこで取得された隆起OBの高さが相対的に高くなり、その結果、見かけ上、ステレオカメラとの距離が接近した状態と想定される。
【0097】
従って、図15に示すHtの時間変化の波形は、路面の起伏の状態を反映した波形と言え、測定結果の信頼性は低いが、Htの値が極端に小さくなって最小値Hminを示す場合には、現実に高い隆起OBが存在する可能性が高いため、警告を発することとする。
【0098】
具体的には、最小値Hminと車両VCの底面からステレオカメラまでの高さH1とを比較して、H1の方がHminより大きい(H1>Hmin)場合には、隆起OBは車両VCの底面に接触する、すなわち底擦りが発生すると判定する。
【0099】
ここで、最小値Hminを特定するには図15のように最小値Hminの前後の値を測定しなければ判らず、極端に言えば車両VCが隆起OBに達するまで計測を続けなければ判らない可能性もある。しかし、車両VCが隆起OBに乗り上げて底擦りが発生してしまっては意味がないので、判定は、車両VCが隆起OBに達する予定時刻tXより前の時刻を判定限界時刻tlimとし、それまでに計測したHtの時間変化のデータに基づいて実行する。
【0100】
なお、予定時刻tXは車両VCの速度によって変わり、予定時刻tXが変われば判定限界時刻tlimも変更する。
【0101】
このように、Htの時間変化を考慮して警告を行うことで、運転者は走行状態に応じた、信頼性の高い警告を受けることができる。
【0102】
ここで、判定限界時刻tlimは、どこに設定しても良く、例えば、ステレオカメラが初めて隆起OBを検出した位置から、隆起OBまでの距離の半分に達するまでの時刻、あるいは現在の速度で停止に必要な制動距離に達するまでの時刻に設定しても良い。
【0103】
また、上記のように判定限界時刻tlimを設定して、それまでに得られたデータに基づいて最小値Hminを特定する方法の他に、波形の傾きから最小値Hminの存在を予測するという方法を採っても良いし、最小値Hminではなく波形の傾きから判定する方法でも良いし、その他の指標を用いて判定しても良い。
【0104】
なお、図15では時間変化を示したが、横軸に隆起OBまでの距離を取って、Htの距離変化のデータとしても良い。
【0105】
また、Htの時間変化を考慮して警告を行う方式は、図12を用いて説明した応用動作1と組み合わせることも可能である。
【0106】
すなわち、Htの時間変化を計測している場合、運転者がコース変更を行うと、結果的に最小値Hminが計測されないことになり、先に説明したような舵取り装置からの情報を受けなくとも、結果的にコース変更の情報を取得できることになる。
【0107】
図16は、図15と同様にHtの時間変化の計測結果を示すが、図15の場合と同じ起伏の激しい路面を走行している場合であっても、コース変更により最小値Hminが検出されなくなった、すなわちコース上に隆起OBが存在しなくなった例を示している。
【0108】
最小値Hminが検出されないので、警告が行われることはなく、結果的に、接触判定部4が、Htの時間変化のデータからコース変更も検知して接触判定を行ったことになる。
【0109】
このように、Htの時間変化を考慮して警告を行う方式を採用することで、コース変更を考慮した動作においても、舵取り装置からの情報を受ける必要がなくなり、コース変更の有無を判断する処理が不要となって、システムを簡略化できるという効果が得られる。
【0110】
<変形例>
以上説明した障害物検出装置100では、ステレオカメラSC1〜SC4を含む画像取得部1を備えるものとして説明したが、画像取得部1で3次元画像データを得る代わりに、外部から与えられる路面の3次元画像データを用いて障害物検出を行っても良い。
【0111】
例えば、カーナビゲーションシステムの記録媒体に地形図が3次元画像データとして含まれている場合はそれを利用することなどが考えられる。
【0112】
この場合、地形の変化に起因する路面の変化をより正確に検出できるという利点がある。
【符号の説明】
【0113】
SC1〜SC4 ステレオカメラ
OB 隆起
VC 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自車両の前方の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部と、
前記自車両の車両データおよび前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記自車両が路面の障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記姿勢推定部で推定された前記車両姿勢の情報を受けて、前記自車両の車体が前記障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部と、を備え、
前記接触判定部での判定結果を受け、前記障害物に前記自車両の車体が接触する場合に警告を与える、障害物検出装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、ステレオカメラを有し、
前記ステレオカメラで得られた2つの画像の特徴点を相互に対応付けし、その結果得られた視差から画像上の各点の3次元位置を算出することで3次元画像データを取得し、 前記路面形状計測部は、前記3次元画像データに基づいて前記路面形状を計測する、請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記姿勢推定部は、
前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記障害物を通過する際の前記自車両の前輪、後輪の接地位置を推定し、その位置から前記自車両の傾き具合を含む前記車両姿勢の情報を算出する、請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項4】
前記姿勢推定部は、
前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、路面の傾斜角および/または路面の凹凸の高低の値に基づいて、姿勢推定を行うか否かの判定を行い、姿勢推定を行うと判定した場合に前記車両姿勢の情報を算出する、請求項3記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記接触判定部は、
前記前記自車両データに基づいて、前記自車両の底面から前記ステレオカメラまでの第1の高さを取得するとともに、
前記路面形状計測部で計測された前記障害物の高さの情報に基づいて、前記障害物の最高部から前記ステレオカメラまでの第2の高さを算出し、前記第1の高さと前記第2の高さとを比較し、前記第1の高さの方が高い場合には、前記障害物が前記自車両の車体底部に接触すると判定する、請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項6】
前記接触判定部は、
前記第1の高さと前記第2の高さとの比較において、前記第1の高さの条件を変更する複数の閾値を設定し、前記複数の閾値を使用して段階的に前記障害物と前記車体底部との接触の判定を行う、請求項5記載の障害物検出装置。
【請求項7】
前記接触判定部は、
前記第2の高さの時間変化のデータに基づいて前記障害物と前記車体底部との接触の判定を行う、請求項5記載の障害物検出装置。
【請求項8】
自車両の前方の画像データに基づいて路面形状を計測する路面形状計測部と、
前記自車両の車両データおよび前記路面形状計測部で計測された前記路面形状に基づいて、前記自車両が路面の障害物を通過する際の車両姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記姿勢推定部で推定された前記車両姿勢の情報を受けて、前記自車両の車体が前記障害物に接触するか否かの判定を行う接触判定部と、を備え、
前記接触判定部での判定結果を受け、前記障害物に前記自車両の車体が接触する場合に警告を与える、障害物検出装置。
【請求項9】
前記画像データは、外部から与えられる、請求項8記載の障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−287015(P2010−287015A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139907(P2009−139907)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】