説明

隣接帯域の占有に依存したフィルタ設定方法

本発明は、無線を介して通信を行う方法に関する。この場合、複数のサブバンドに分割された周波数帯域が利用される。これらのサブバンドは信号送信のために無線局(NodeB,UE)により占有される。無線局(NodeB,UE)は信号を送信する前にフィルタ関数を使用してフィルタリングを実行し、少なくとも1つのサブバンドを介して信号を送信する。本発明によればフィルタ関数のパラメータは、少なくとも1つのサブバンドに隣接する少なくとも1つのサブバンドの占有に依存する。さらに本発明は、この方法を実施するための無線局(NodeB,UE)にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のサブバンドに分割された周波数帯域が使用される無線を介した通信方法に関する。
【0002】
無線通信システムにおいては、たとえば音声情報、画像情報、ビデオ情報、SMS(ショートメッセージサービス)、MMS(マルチメディアメッセージサービス)あるいは他のデータを有するメッセージが、電磁波により無線インタフェースを介して送信側の無線局と受信側の無線局との間で伝送される。その際、これらの無線局を無線通信システムの具体的な形態に従い応じて、多種多様な加入者局あるいはネットワーク側の無線局たとえば中継局、無線アクセスポイントまたは基地局とすることができる。移動無線通信システムの場合、加入者局の少なくとも一部は移動無線局である。電磁波の放射は、個々のシステムに対して設定されている周波数帯域内に位置する搬送波周波数によって行われる。
【0003】
今日の移動無線通信システムは、たとえばGSM(Global System for Mobile Communication)規格またはUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)規格に準拠するセルラシステムとして、たとえば複数の基地局、それらの基地局を監視および制御する装置ならびに他のネットワーク側の装置から成るネットワークインフラストラクチャによって構築されていることが多い。さらに別の例として挙げられるのは、たとえばIEEE 802.16に準拠するワイヤレスアクセスを用いたブロードバンドネットワークである。今後の移動無線通信システムとなる可能性があるのは、たとえばLTE((Long Term Evolution)と称するUMTSの発展形態あるいは第4世代のシステムならびにアドホックネットワークである。広域的に組織された(ローカルではない)階層型セルラ無線ネットワークのほかにも、通常は空間的に著しく制限された無線カバーエリアを有するワイヤレスのローカルネットワーク(WLAN;Wireless Local Area Network)もある。WLANに関する様々な規格の例として、HiperLAN, DECT, IEEE 802.11, BluetoothおよびWATMが挙げられる。
【0004】
無線通信システムの場合、加入者局から共通の伝送媒体へのアクセスは多元アクセス方式/マルチプレックス方式(Multiple Access、MA)によってコントロールされる。このような多元アクセスの場合には各加入者局間において、時間領域(時分割多重アクセス、TDMA)、周波数領域(周波数分割多重アクセス、FDMA)、符号領域(符号分割多重アクセス、CDMA)または空間領域(空間分割多重アクセス、SDMA)で伝送媒体を分割することができる。なお、多元アクセス方式の組み合わせも可能であり、たとえば周波数領域の多元アクセス方式と符号領域の多元アクセス方式とを組み合わせることができる。
【0005】
データをできるかぎり効率的に伝送できるようにする目的で、利用可能な周波数帯域全体を複数のサブキャリアに分割することができる(マルチキャリア方式)。マルチキャリアシステムの基礎を成す着想は、広帯域信号伝送の基本的な問題を複数の狭帯域信号の伝送に移行するということである。これによって得られる利点は殊に、受信機において必要とされる複雑さを低減できることである。これに加えて、利用可能な帯域幅を複数の狭帯域のサブキャリアに分割することにより、伝送すべきデータをそれぞれ異なるサブキャリアへ分配する点に関して、データ伝送の細分性ないしは粒度を著しく高めることができるようになり、つまり伝送すべきデータもしくは加入者局に対し無線リソースを高精度で分配することができる。殊に可変データレートによる伝送あるいはバースト状のデータトラフィックの場合、それぞれ異なる加入者局へサブバンド数を割り当てることにより、利用可能な帯域幅を効率的に利用することができる。マルチキャリア伝送方式の一例はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing 直交周波数分割多重)であり、この方式の場合、サブバンドに対し時間的に近づけて矩形のパルス波形が適用される。
【0006】
本発明の基礎とする課題は、複数のサブバンドに分割された周波数帯域が使用される無線を介した効率的な通信方法を提供することである。さらに本発明の課題は、本発明による方法を実施するための無線局を提供することである。
【0007】
この課題は、独立請求項の個々の特徴を備えた方法ならびに無線局により解決される。従属請求項には本発明の有利な実施形態が示されている。
【0008】
無線を介して通信を行うための本発明による方法によれば、複数のサブバンドに分割された周波数帯域が使用される。周波数領域において複数のサブバンドが直接相前後して続いている場合、すなわちそれらのサブバンドの間に他のサブバンドが存在しない場合、それらのサブバンドは隣接している。信号を送信するためサブバンドは無線局により占有されている。加入者側の無線局は、信号を送信するためにフィルタ機能ないしはフィルタ関数を使用してフィルタリング処理を実行し、この加入者側無線局はネットワーク側無線局により自身に対し割り当てられた少なくとも1つのサブバンドを介して信号を送信する。その際、フィルタ関数のパラメータは、少なくとも1つのサブバンドに隣接する少なくとも1つのサブバンドの占有ないしは占有状況に依存する。この依存性に対し以下のような作用をもたせることができる。すなわちパラメータの値が少なくとも1つの他の加入者側の無線局の占有ないしは占有状況に依存して選択されて、その値が使用されるようにするか、あるいはパラメータが占有ないしは占有状況に依存して使用されるか使用されるようにする。少なくとも1つの隣接サブバンドの占有に依存するほか、さらに別の依存性ももたせることができ、たとえば他のサブバンドの占有に依存させることができ、たとえば少なくとも1つの隣接サブバンドに隣り合ったサブバンドの占有に依存させることができる。
【0009】
他の加入者側無線局による少なくとも1つの隣接サブバンドの占有にフィルタリングを依存させることで有利には、種々の送信側の信号間における干渉を回避する役割が得られる。択一的に、少なくとも1つのサブバンドに隣接する少なくとも1つのサブバンドが無線局により占有されることにパラメータを依存させることができる。このやり方が殊に適しているのは、信号がダウンリンク方向で送信される場合すなわちネットワーク側無線局から加入者局へ送信される場合である。このようなケースではフィルタリングの依存性を、種々の受信側に向けて放射する1つの送信側における複数の信号間の干渉を回避するために役立たせることができる。
【0010】
本発明によれば加入者側無線局はフィルタリングを実行する前にネットワーク側無線局から、この加入者側無線局に対する少なくとも1つのサブバンドの割り当てと、少なくとも1つの他の無線局に対する少なくとも1つの隣接サブバンドの割り当てに関する情報を受け取る。加入者側無線局はこの情報を、使用すべきパラメータを求めるために用いることができる。このケースにおいて無線局に対するサブバンドの割り当てが意味するのは、このサブバンドが割り当てに該当する個々の無線局によって占有されているということである。
【0011】
無線局で使用されるフィルタを、たとえば時間領域または周波数領域におけるフィルタとすることができる。したがってフィルタ関数を、時間軸上または周波数軸上で表されたフィルタ特性曲線とすることができる。フィルタリング後、無線局は信号を送信する。この送信は、単一のサブバンドまたは複数の個々のサブバンドを使用して行うこともできるし、あるいは周波数領域において関連し合う複数の隣接サブバンドすなわち複数のサブバンドから成るブロックを使用して行うこともできる。
【0012】
信号を送信する前に、送信しようとする信号のフィルタリングに使用すべきフィルタ関数のパラメータについて決定が下される。この決定つまりはパラメータは、少なくとも1つのサブバンドに隣接する少なくとも1つのサブバンドの占有ないしは占有状況に依存する。したがってこの決定を下せるようにするためには、少なくとも1つの隣接サブバンドが占有されているかいないかをチェックする必要がある。このようなチェックならびに決定を無線局によって行うこともできるし、あるいは無線局に占有/非占有および/または使用すべきパラメータを伝達可能な他の装置によって行うこともできる。少なくとも1つの隣接サブバンドの占有状態を求めるために、様々な手法を適用することができる。
【0013】
ある1つのサブバンドが占有されているのは、無線局により着目時点において信号送信のためにそのサブバンドが用いられる場合である。さらにサブバンドの占有が生じる可能性があるのは、無線局の個々のサブバンドが着目時点で信号送信のために割り当てられており、この無線局に対し送信のためにサブバンドを使用する権限が与えられている場合である。ここで着目時点とは有利には、無線局により信号を送信する時点または期間のことである。有利には、無線局により使用されるパラメータの決定との関連においてサブバンドが占有されているとみなされるのは、そのような占有が無線局のロケーションを含む領域において生じている場合のみであり、たとえば無線局が存在する無線セル内で生じている場合だけである。
【0014】
本発明の実施形態によれば、パラメータにより周波数領域の周波数帯域が決定される。たとえばパラメータをαと称するロールオフファクタRoll-off-Factorとすることができる。パラメータにより周波数領域のフィルタ帯域幅が決定するということは、パラメータの変更により周波数領域のフィルタ帯域幅が変化することを意味する。同様に周波数領域の周波数帯域幅を決定する付加的なパラメータを設けることも可能である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの隣り合うサブバンドが占有されている場合、占有されていない場合よりも小さい周波数領域帯域幅が使用される。たとえばパラメータのために2つの離散的な値を設けることができる。この場合、占有されているときには小さい方の周波数領域フィルタ帯域幅に対応する値が用いられ、占有されていないときには大きい方の周波数領域フィルタ帯域幅に対応する値が用いられる。
【0016】
殊に有利であるのは、少なくとも1つの隣り合うサブバンドが占有されているならばパラメータによって、少なくとも1つの隣り合うサブバンドの一部分を使用せずに信号が送信されるような周波数領域フィルタ帯域幅が定められる。つまりこのことは、隣接サブバンドが占有されているならば、信号がこの隣接サブバンドには入り込まないことを意味する。そうではなくこの場合には、少なくとも1つのサブバンドを使用し場合によってはさらに別の隣接サブバンドに入り込みながら信号が送信される。さらに有利であるのは、少なくとも1つの隣り合うサブバンドが占有されていないならばパラメータによって、少なくとも1つの隣り合うサブバンドの一部分を使用しながら信号が送信されるような周波数領域フィルタ帯域幅が定められる。つまりこのことは、隣接サブバンドが占有されていないならば、信号がこの隣接サブバンドに入り込むことを意味する。2つの隣り合うサブバンドが存在するならばこれら2つのサブバンドのうち一方のサブバンドに対し、占有されている場合について述べたようなやり方を行うことができ、他方のサブバンドに対しては、占有されてIAに場合について述べたようなやり方を行うことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの他の無線局に対する少なくとも1つの隣接サブバンドの割り当てに関する情報が、無線局に対する少なくとも1つのサブバンドの割り当てに関する情報といっしょに符号化される。このようにした場合、無線局は自身に割り当てられた無線リソースを求める目的で、自身に該当しない無線リソースの割り当ても復号する必要がある。
【0018】
本発明による1つの有利な実施形態によればパラメータの依存性に基づき、少なくとも1つのサブバンドの一方の周波数周縁領域におけるフィルタ関数の経過特性は、少なくとも1つのサブバンドの他方の周波数周縁領域におけるフィルタ関数の経過特性とは異なる。少なくとも1つのサブバンドが単一のサブバンドであるならば、これによってこの単一のサブバンドの左端におけるフィルタ関数の経過特性をその右端におけるフィルタ関数の経過特性とは異ならせることができる。同様のことは、少なくとも1つのサブバンドが複数の関連し合うサブバンドである場合にもあてはまり、つまり複数のサブバンドから成る1つのブロックである場合にもあてはまる。つまりこの場合、最も左側に位置するサブバンドの左端におけるフィルタ関数の経過特性を最も右側に位置するサブバンドの右端におけるフィルタ関数の経過特性とは異ならせるようにすることができる。少なくとも1つのサブバンドが複数の個別のサブバンドであるならば、それぞれ左端と右端とで経過特性が等しい1つまたは複数のサブバンドを存在させることができ、および/または左端における経過特性が右端における経過特性とはそれぞれ異なる1つまたは複数のサブバンドを存在させることができる。
【0019】
パラメータの変化によって無線局のピーク送信電力と無線局の平均送信電力との比が変化すると、殊に有利である。したがってパラメータを変化させることによって、PAPR(Peak to Average Power Ratioピーク電力対平均電力比)の値に作用を及ぼすことができる。
無線局を加入者側の無線局とすることができる。この場合、ネットワーク側無線局に対して信号送信を行うことができ、あるいは他の加入者側無線局に直接、信号送信を行うことができる。択一的に、無線局をネットワーク側無線局とすることができる。この場合、加入者側無線局に対し信号送信を行うことができる。
【0020】
殊に有利であるのは、フィルタをルートレイズドコサインフィルタRoot Raised Cosine Filterとして構成することである。
【0021】
本発明による加入者側の無線局には、複数のサブバンドに分割された周波数帯域を使用しながら無線を介して通信を行う手段と、加入者側の無線局に対する少なくとも1つのサブバンドの割り当てと、少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する少なくとも1つの隣接サブバンドの割り当てに関して、ネットワーク側の無線局から情報を受け取る手段と、信号を送信するために少なくとも1つの割り当てられたサブバンドを占有する手段と、信号を送信する前にフィルタ関数を使用してフィルタリングを実行する手段が設けられており、その際、これらの手段は、加入者側の無線局に割り当てられた少なくとも1つのサブバンドに隣接する少なくとも1つのサブバンドが少なくとも1つの他の加入者側の無線局により占有されることに依存して、フィルタ関数のパラメータが使用されるように構成されている。さらに本発明による加入者側の無線局には、少なくとも1つのサブバンドの信号を送信する手段が設けられている。
【0022】
本発明によるネットワーク側の無線局には、複数のサブバンドに分割された周波数帯域を使用して通信を行う手段と、加入者側の無線局に対する少なくとも1つのサブバンドの割り当てと、少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する少なくとも1つの隣接するサブバンドの割り当てに関して、ネットワーク側の無線局の情報を送信する手段と、信号を送信するために割り当てられたサブバンドを占有する手段と、加入者側の無線局に割り当てられた少なくとも1つのサブバンドを介して信号を送信する前にフィルタ関数を使用してフィルタリングを実行する手段が設けられており、その際、これらの手段は、少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する少なくとも1つの隣接するサブバンドの割り当てに依存してフィルタ関数のパラメータが使用されるように構成されている。さらに本発明によるネットワーク側の無線局には、加入者側の無線局に割り当てられた少なくとも1つのサブバンドを介して信号を送信する手段が設けられている。
【0023】
本発明による無線局は本発明による方法の実施に殊に適しており、このことは種々の実施形態についてもあてはめることができる。このため無線局は他の適切な手段を有することができる。
【0024】
次に、実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】無線通信システムの一部分を示す図
【図2】種々のフィルタ特性曲線を示す図
【0026】
図1に描かれている無線通信システムの一部分には、ネットワーク側無線局NodeBの無線セルCが示されている。ネットワーク側無線局NodeBは、無線セルC内で加入者局たとえば図1に示されている加入者局UEと通信を行う。加入者局UEを移動無線局または固定無線局とすることができ、たとえば移動電話機またはコンピュータとすることができる。ネットワーク側無線局NodeBが接続されているネットワーク側インフラストラクチャを成す他の装置ならびに場合によっては存在する他の無線セルや加入者局は、見やすくするため図1には示されていない。
【0027】
本発明は様々な形式の無線通信システムに適用可能であり、したがってネットワーク側無線局NodeBをセルラシステムの無線局あるいはローカルシステムの無線局としてもよい。具体例として挙げられるのは、3G LTE (3rd Generation Long Term Evolution) と称するUMTSの発展形態によるシステムである。
【0028】
加入者局UEはネットワーク側無線局NodeBとアップリンク方向で、すなわち加入者局UEからネットワーク側無線局NodeBへのメッセージ送信により通信を行うことができ、および/またはダウンリンク方向で、すなわちネットワーク側無線局NodeBから加入者局UEへのメッセージ送信により通信を行うことができる。本発明は、ダウンリンク方向に対してもダウンリンク方向に対しても適用可能である。以下では具体例として、加入者局UEとネットワーク側無線局NodeBとの間のアップリンク方向での通信について考察する。ネットワーク側無線局NodeBと加入者局UEとの間のこのような通信のために、複数のサブバンドに分割された周波数帯域が使用される。図2にはこの周波数帯域の一部分が示されており、これにはサブバンドSB1,SB2,SB3が含まれており、この場合、横軸には周波数Fが示されている。サブバンドを介した信号伝送において、たとえばOFDMAまたはSC−FDMA(Single Carrier FDMA シングルキャリアFDMA)を使用することができる。
【0029】
送信側ではフィルタが使用される。以下ではフィルタ機能ないしはフィルタ関数という概念は、放射される信号の経過特性ないしは波形を周波数に関して規定する機能ないしは関数のことであり(英語:PulsshapingもしくはPulsshaping-Filterパルス成形もしくはパルス成形フィルタ)、したがって以下の説明は周波数領域ないしは周波数ドメインに係わるものとする。当然ながら、フーリエ変換により周波数領域のフィルタ関数を時間領域のフィルタ関数に変換することができるので、周波数領域に係わる記述を相応に時間領域に適用することができる。
【0030】
殊に有利であるのはルートレイズドコサインフィルタRoot Raised Cosine (RRC) FilterまたはカイザーフィルタKaiser Filterを利用することであり、これについてはたとえば技術仕様書3GPP TS 25.101 (3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; User Equipment (UE) radio transmission and reception (FDD))、第6.8.1章に記載されている。これらのフィルタは一般に、たとえばFIR(Finite Impulse Response有限インパルス応答)フィルタのようなディジタルフィルタを用いて構築される。フィルタの使用は、それらを利用することによりPAPR(Peak to Average Power Ratioピーク電力対平均電力比)を低減できることから適している。PAPR低減のこのような効果についてはたとえば、
・3GPP TSG-RAN WG1 #44 R1-060470 Denver, USA Feb 13th - 17th, 2006, Qualcomm Europe : "PAR Reduction through Frequency Domain Spectrum Shaping"
・3GPP TSG-RAN WG1 #44 R1-060669 Denver, USA Feb 13th - 17th, 2006, Siemens: "SC-FDMA PAPR Reduction"
・3GPP TSG-RAN WG1 #44 R14-060318 Denver, USA Feb 13th - 17th, 2006, NTT DoCoMo: "Optimum Roll-off Factor for DFT-Spread OFDM Based SC-FDMA in Uplink"
で説明されている。
【0031】
PAPRの値により、加入者局UEのピーク送信電力とそれらの平均送信電力の比が表される。この値は、アップリンク方向での伝送にとって殊に重要である。なぜならばアップリンク方向において達成可能なデータレートは、もしくは所定のデータレートのときの到達距離は、一般に送信増幅器の性能によって制限されるからである。この場合、制限を加えるファクタは平均電力ではなくピーク電力である。その理由は、増幅器はまえもって定められた規定のピーク電力を生じさせなければならないからである。したがってPARPが大きくなればなるほど、達成可能な平均電力は小さくなる。さらにたとえばQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)といった適切な変調方式を選ぶことで、PAPRを低減することができる。
【0032】
ロールオフファクタαを変えることによりフィルタ関数を整合させることができる。ロールオフファクタαはフィルタのパラメータを表すものであり、これを0≦α≦1の限界内で変えることができる。ロールオフファクタαが大きくなるにつれて、フィルタの帯域幅が広がる。実践において適用されることが多いのは、0.2〜0.5のロールオフファクタαである。ロールオフファクタαについては、たとえば技術仕様書3GPP TS 25.101 (3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; User Equipment (UE) radio transmission and reception (FDD))、第6.8.1章で説明されている。
【0033】
図2にはフィルタ関数の経過特性が、サブバンド境界におけるこの関数の垂直方向の上昇に対応するロールオフファクタα=0と、傾斜が緩やかにされた上昇に対応するロールオフファクタα>0について示されている。このダイアグラムからわかるように、ロールオフファクタα>0をサブバンドSB2に適用した場合、隣接するサブバンドSB1およびSB3における信号伝送が妨害を受ける。なぜならばサブバンドSB2のために設定されているスペクトル区間は、サブバンドSB1とSB2の範囲内に広がっているからである。したがってサブバンドSB2の信号の一部分は、サブバンドSB1とSB3を介して伝送される。隣接するサブバンドを介して同時に複数の信号が伝送され、その際にそれぞれあるいは双方のサブバンドのうち少なくとも一方に対してロールオフファクタα>−0が適用されると、不所望な隣接チャネル干渉が引き起こされる。
【0034】
既述のようにフィルタを利用することの利点は、PAPRが低減されることである。これに対し欠点となるのは、図2を参照しながら説明したようにフィルタの適用によりスペクトル効率が低減されることであり、つまり規定された伝送レートを達成するためには、フィルタを使用した場合にフィルタ処理を行わない場合よりも多くの周波数スペクトルが必要とされることである。スペクトルの広がりにより引き起こされる問題は、隣接するサブバンドを介して送信を行う送信機の信号が拡大されたスペクトルにより妨害を受けることである。受信機側における最適なフィルタは、マッチドフィルタによるアプローチに従い送信側フィルタと同じように広げられ、受信機側では種々の送信機の信号の重畳が生じることになる。
【0035】
フィルタ帯域幅つまりは殊にロールオフファクタαは、隣接チャネル占有状態に合わせて整合される。つまり隣接するサブバンドが占有されているケースでは、固有のフィルタリングすなわちロールオフファクタα≒0の使用が適している。これに対し隣接するサブバンドが空いているケースでは、すなわち信号伝送のために利用されないケースでは、それよりも大きいロールオフファクタを使用するのが有利である。なぜならばこれにより、隣接チャネル干渉に関して不利な作用を発生させることなく、PAPRを低減させることができるからである。
【0036】
加入者局UEに対し、ネットワーク側無線局NodeBへ信号を送信するためにサブバンドSB2が割り当てられる。択一的に加入者局UEに対し、「チャンク」("chunk")と呼ばれることの多い複数の隣接チャネルを割り当てることができる。たとえばチャンクを、互いに関連し合う3つのサブバンドから成る1つのブロックにより形成することができる。一般にチャンクの使用は、チャンクが1つの加入者局へ割り当て可能な無線リソースの最小単位であることを意味する。したがって個々のサブバンドSB2の代わりに1つのチャンクが割り当てられるならば、個々のサブバンドSB1およびSB3として図2に示されている周波数区間は有利にはチャンクでもある。個々のサブバンドSB2の割り当てに関する以下の記述は、チャンクの割り当てについても同様にあてはまるものである。両方の事例において、すなわち単一のサブバンドが割り当てられる事例あるいは複数の隣接サブバンドが割り当てられる事例において、複数の加入者局UEのうちの1つと他の加入者局により占有されるサブバンドとの間のサブバンド境界におけるフィルタ特性が整合される。加入者局UEが送信すべき信号の処理にあたり適用するフィルタ特性は、サブバンドSB1とSB3が占有されているか否かに依存して選定され、つまりそれらのサブバンドが着目時点で他の加入者局に対し信号送信のために割り当てられているか否かに依存して選定される。サブバンドSB1とSB3が空いておりあるいは占有されていないならば、ロールオフファクタα>0の適用によりサブバンドSB1とSB3の範囲へのサブバンドSB2のスペクトル拡大が実行される。これにより、加入者局UEがそれらの信号電力限界にある状況において殊に伝送が改善される。
【0037】
これに対し隣り合うサブバンドSB1とSB3が目下、着目時点で占有されているのであれば、加入者局UEのPAPRとスペクトル拡大により引き起こされる干渉との間で妥協を行わなければならない。したがって隣接サブバンドが占有されているならば、ロールオフファクタαのために隣接サブバンドが占有されていない場合よりも小さい値が用いられる。これによりPAPRは隣接サブバンドが占有されていない場合よりも大きくなるけれども、これによってサブバンドSB2とサブバンドSB1,SB3との間の干渉が低減される。このようにして、目下の状況に整合された伝送形式を選択することができる。
【0038】
サブバンドSB1が占有されている一方、サブバンドSB3が空いている場合、双方のサブバンド境界に対しそれぞれ異なるようにロールオフファクタを設定することができる。すなわちサブバンドSB1とSB2との間の境界に対してはロールオフファクタαについて小さい値が選定され、サブバンドSB2とSB3との間の境界に対してはロールオフファクタαについてそれよりも大きい値が選定される。周波数上限と周波数下限とでスペクトル拡大を個々に設定するこのようなケースでは、図2に示した対称的な経過特性とは異なり、非対称のフィルタ特性曲線が生じる。加入者局UEは、使用すべきフィルタリングを決定するために割り当てテーブルを利用することができる。一般にたとえば以下のことを適用することができる:個々の隣接サブバンドが占有されていない場合にはα=0.14、個々の隣接サブバンドが占有されている場合にはα=0.07。この割り当てテーブルがネットワーク側無線局NodeBに対し既知であれば、ネットワーク側無線局NodeBにより利用されるマッチドフィルタ(matched filter)を最適に調整することができる。
【0039】
隣り合うサブバンドが占有されているのか否かを検出する目的で、加入者局UEはネットワーク側無線局NodeBから送信される無線リソース割り当てを観察する。この目的でネットワーク側無線局NodeBは、割り当てに直接該当する加入者局だけでなく、隣接するサブバンドが割り当てられている加入者局も少なくとも、スケジューリング情報を受信および評価できるよう、このスケジューリング情報を送信する。
【0040】
すべての加入者局のチャネル割り当てをたとえばネットワーク側無線局NodeBによっていっしょに符号化することができ、これによって各加入者局にとって自身の無線リソース割り当てを求めるための復号後にすべてのチャネル割り当てが既知となる。ただ1つの加入者局のためだけでなく複数の加入者局のためにチャネル割り当てをいっしょに符号化することは、符号化すべきビット量の増大によってたとえばターボ符号化の適用といった効率的な符号化方式を利用できることから有利である。
【0041】
ただしすべての加入者局に対し他の加入者局のすべての無線リソース割り当てに関して情報を与える必要はなく、適用すべきスペクトル拡大の選択のためには、隣接サブバンドだけが重要である。このためチャネル割り当ての一部分をいっしょに符号化すれば十分である。この目的で、隣接サブバンドに割り当てられる加入者局をグループにまとめることができ、その際、それぞれ1つのグループのためにスケジューリング情報がいっしょに符号化される。
【0042】
さらにこの場合、加入者局UEに対しネットワーク側無線局NodeBから、その加入者局のサブバンドSB2と隣り合うサブバンドSB1、SB3が占有されているのか空いているのかを明示的に通知することもできる。このような明示的な通知を、加入者局UEに対したとえばサブバンドSB2の割り当てとともに送信することができる。明示的な通知を用いることで、加入者局UEが他の加入者局のチャネル割り当てを評価する必要がなくなる。
【0043】
加入者局UEに対し隣接サブバンドの占有に関して通知する既述の2つの手法を組み合わせることもできる。たとえば加入者局UEは、サブバンドSB1が占有されていることを他の加入者局から得ることができる一方、ネットワーク側無線局NodeBは加入者局UEに対し、サブバンドSB3が空いていることを明示的に伝達する。隣り合うサブバンドの占有に関して通知するためのこのような効率的な手法によっても、使用すべきフィルタ特性の決定に必要とされる付加的なシグナリングの手間がごく僅かに生じるだけである。
【0044】
これまで、加入者局UEに対しネットワーク側無線局NodeBから、他の加入者局に対するチャネル割り当てを通して暗黙的に、あるいは加入者局UEのために固有に定められたメッセージにより明示的に、隣接サブバンドSB1,SB3の占有に関して通知するやり方について述べてきた。隣接チャネル占有に関する情報を把握することで、それに続いて加入者局UEは使用すべきフィルタ特性を求め、その際に有利にはネットワーク側無線局NodeBにとって既知の割り当て規則が使用される。これに対する代案として、ネットワーク側無線局NodeBは加入者局UEに対し、使用すべきフィルタ特性に関して直接、たとえば加入者局UEに対するサブバンドSB2の割り当てといっしょに通知することができる。ネットワーク側無線局NodeBは、種々の加入者局によって使用すべきスペクトル拡大に関して効率的な判定を下すことができる。その理由は、ネットワーク側無線局NodeBにとってその無線リソースの管理にあたり無線リソース割り当てつまりは無線リソース占有は既知だからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブバンド(SB1,SB2,SB3)に分割された周波数帯域が使用され、該複数のサブバンドは信号送信のため無線局(NodeB,UE)により占有されている、
無線を介した通信方法において、
加入者側の無線局(UE)はネットワーク側の無線局(NodeB)から、少なくとも1つの他の加入者側の無線局への少なくとも1つのサブバンド(SB1,SB3)の割り当てに関する情報を受け取り、
前記加入者側の無線局(UE)は信号を送信する前に、フィルタ関数を利用したフィルタリングを実行し、該加入者側の無線局(UE)は、該加入者側の無線局(UE)に対しネットワーク側の無線局(NodeB)により割り当てられた少なくとも1つのサブバンド(SB2)を介して信号を送信し、
前記フィルタ関数のパラメータ(α)は、前記加入者側の無線局(UE)に割り当てられた少なくとも1つのサブバンド(SB2)と隣り合う少なくとも1つのサブバンド(SB1,SB3)の占有に依存することを特徴とする、
無線を介した通信方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記パラメータ(α)により周波数領域のフィルタ帯域幅が決定されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)が占有されているならば、占有されていないときよりも小さい周波数領域のフィルタ帯域幅が使用されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の方法において、
少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)が占有されているならば前記パラメータ(α)により、前記少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)の一部分を使用せずに信号が送信される周波数領域のフィルタ帯域幅が定められることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項記載の方法において、
少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)が占有されていないならば前記パラメータ(α)により、前記少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)の一部分を使用して信号が送信される周波数領域のフィルタ帯域幅が定められることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
少なくとも1つの他の無線局に対する少なくとも1つの隣り合うサブバンド(SB1,SB3)の割り当てに関する前記情報が、前記加入者側の無線局(UE)に対する少なくとも1つのサブバンド(SB2)の割り当てに関する情報といっしょに符号化されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、
前記パラメータ(α)の依存性に基づき、前記少なくとも1つのサブバンド(SB2)の一方の周波数周縁領域における前記フィルタ関数の経過特性は、前記少なくとも1つのサブバンド(SB2)の他方の周波数周縁領域におけるフィルタ関数の経過特性とは異なることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法において、
前記パラメータ(α)の変化により、無線局(NodeB,UE)のピーク送信電力と無線局(NodeB,UE)の平均送信電力との比が変化することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の方法において、
前記少なくとも1つのサブバンドは周波数領域において隣り合う複数のサブバンドであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載の方法において、
前記フィルタはルートレイズドコサインフィルタ(Root Raised Cosine Filter)であることを特徴とする方法。
【請求項11】
無線を介して通信を行う加入者側の無線局(UE)において、
複数のサブバンド(SB1,SB2,SB3)に分割された周波数帯域を使用して通信を行う手段と、
該加入者側の無線局(UE)に対する少なくとも1つのサブバンド(SB2)の割り当てと、少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する少なくとも1つの隣接するサブバンド(SB1,SB3)の割り当てに関して、ネットワーク側の無線局(NodeB)から情報を受け取る手段と、
信号を送信するために少なくとも1つの割り当てられたサブバンド(SB2)を占有する手段と、
信号を送信する前にフィルタ関数を使用してフィルタリングを実行する手段
が設けられており、前記手段は、加入者側の無線局(UE)に割り当てられた前記少なくとも1つのサブバンド(SB2)に隣接する少なくとも1つのサブバンド(SB1,SB3)の、少なくとも1つの他の加入者側の無線局による占有に依存して前記フィルタ関数のパラメータ(α)が使用されるように構成されており、
少なくとも1つのサブバンド(SB2)を介して信号を送信する手段が設けられていることを特徴とする、
無線を介して通信を行う加入者側の無線局。
【請求項12】
無線を介して通信を行うネットワーク側の無線局(NodeB)において、
複数のサブバンド(SB1,SB2,SB3)に分割された周波数帯域を使用して通信を行う手段と、
加入者側の無線局(UE)に対する少なくとも1つのサブバンド(SB2)の割り当てと、少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する少なくとも1つの隣接するサブバンド(SB1,SB3)の割り当てに関して、該ネットワーク側の無線局(NodeB)の情報を送信する手段と、
信号を送信するために割り当てられたサブバンド(SB1,SB2,SB3)を占有する手段と、
前記加入者側の無線局(UE)に割り当てられた少なくとも1つのサブバンド(SB2)を介して信号を送信する前にフィルタ関数を使用してフィルタリングを実行する手段
が設けられており、前記手段は、前記少なくとも1つの他の加入者側の無線局に対する前記少なくとも1つの隣接するサブバンド(SB1,SB3)の割り当てに依存して前記フィルタ関数のパラメータ(α)が使用されるように構成されており、
前記加入者側の無線局(UE)に割り当てられた少なくとも1つのサブバンド(SB2)を介して信号を送信する手段が設けられていることを特徴とする、
無線を介して通信を行うネットワーク側の無線局。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−544208(P2009−544208A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519933(P2009−519933)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057067
【国際公開番号】WO2008/009593
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】