説明

集光手段を備えた散乱光式煙検知器

【課題】従来技術に比し煙検出感度を向上させた散乱光式煙検知器を提供すること。
【解決手段】散乱光式煙検知器用の検煙部であり、本体側内平面を有する検煙部本体と、検煙部本体に対応し蓋側内平面を有する蓋部とを含んでなり、検煙部内において、発光部と受光部とを、発光部からの一次光が受光部に到達しないように配置すると共に、本体側内平面および/または蓋側内平面において集光手段を形成し、集光手段は、発光部の発光方向中心軸と受光部の受光方向中心軸との交点を中心とする球状の煙検出領域であって前記受光方向中心軸周囲に形成される受光側錐状領域によって規定される煙検出領域において、発光部からの二次光が集光するような反射面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱光式煙検知器用の検煙部、この検煙部を備えた散乱光式煙検知器および散乱光式煙検知器用検煙部の成形型に関する。本発明の検煙部は、発光部からの一次光の反射光(二次光)を、所定の領域内に集光する集光手段を有している。
【背景技術】
【0002】
一般に、初期火災時には不完全な燃焼が起こり多量の煙が発生していることが多い。このような煙を光学的に検知して火災の発生を感知し、警報を発する散乱光式煙検知器がよく知られている。
【0003】
散乱光式煙検知器は、火災発生時に発生した煙が検煙部に流入し、流入した煙の中を通過するときの散乱光を捉えて煙を検知する方式の煙検知器である。この検煙部は、通常、光源を有する発光部と、受光素子を有する受光部とを備えた検煙部本体と、この検煙部本体を覆うように付設した蓋部とからなる。また、発光部と受光部とは、かかる受光部が発光部から発射される一次光を直接受光しないような位置関係に配置されており、受光部の受光素子は、非火災時には少なくとも一次光を受光せずに、火災時には煙の存在によって散乱した散乱光を受光して、煙の存在を検知する。
【0004】
このような散乱光式煙検知器に関し、良好な煙感度を達成するため、当該技術分野の当業者は種々の試みを行っているが、非火災時には可能な限り少量の光しか受光せずに、火災時には可能な限り多量の散乱光を受光しなければならないという、相反する要請が存在するため、満足のゆく煙感度を達成しうる技術は、未だ見当たらない。
例えば、以下の特許文献1に開示の散乱光式煙感知器は、その検煙部を形成する部材(蓋部)に光トラップを設け、この光トラップは、三角突条と水平底部で構成され、水平底部は、三角突条の頂点を通る発光部からの光が到達する深さ以上の深い位置に形成させている〔特許文献1の請求項1、参照〕。
しかしながら、かかる光トラップは、前記した煙感度への改善に実質的に寄与していない。なぜなら、既知の光トラップは、発光部からの一次光の反射光(二次光)による受光部への影響を最小限に抑えるべく設置したものであって〔特許文献1の段落番号0023、参照〕、非火災時において受光部の受光量の低減を意図したものである。このため、この既知技術は、理想的に受光量の低減が実現しても最善でもゼロであるため、理論的には無限大まで受光量の増加が可能な火災時の受光量・増加に比し、その改善の割合が小さく、煙感度への改善に実質的に寄与していないことが判明した。
【0005】
【特許文献1】特許3835546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術に比し煙検出感度を向上させた散乱光式煙検知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、検煙部において、発光部と受光部とによって規定される所定の煙検出領域内に、発光部からの一次光の反射二次光を集光しうる形状の集光手段を設けることにより、従来技術に比し火災時に際し受光部が受光する受光量を増大させることができ、これにより前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、散乱光式煙検知器用の検煙部であって、本体側内平面を有する検煙部本体と、前記検煙部本体に対応し蓋側内平面を有する蓋部とを含んでなり、当該検煙部内において、発光部と受光部とを、前記発光部からの一次光が前記受光部に到達しないように配置すると共に、前記本体側内平面および/または前記蓋側内平面において集光手段を形成し、前記集光手段は、前記発光部の発光方向中心軸と前記受光部の受光方向中心軸との交点を中心とする球状の煙検出領域であって前記受光方向中心軸周囲に形成される受光側錐状領域によって規定される前記煙検出領域において、前記発光部からの二次光が集光するような反射面を有することを特徴とする散乱光式煙検知器用検煙部を提供する。
また好適には、前記受光側錐状領域は、前記受光部側に頂点を有する円錐形の形態であることを特徴とする。さらに好適には、前記反射面は、前記二次光が前記煙検出領域に集光するような傾斜角度で傾斜しかつ前記発光部に対向する斜面であることを特徴とする。さらに好適には、前記斜面は、複数存在し、かつ、前記本体側内平面または前記蓋側内平面に沿って連続する稜線部を有する突起部において形成され、前記稜線部から前記本体側内平面または前記蓋側内平面に向かって傾斜することを特徴とする。
さらに好適には、さらに、ラビリンスを備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、その第2の態様によれば、本発明の散乱光式煙検知器用検煙部を備えていることを特徴とする散乱光式煙検知器を提供する。
さらに本発明は、その第3の態様によれば、本発明の散乱光式煙検知器用検煙部を射出成形するための型であることを特徴とする散乱光式煙検知器用検煙部の成形型を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明の構成要件、特に、検煙部内面に集光手段を設けて発光部からの二次光を煙検出領域に集光させることにより、火災時において一次光による散乱光だけでなく集光した二次光による散乱光を受光部が受光できるため、二次光をトラップさせる従来技術に比し、火災時の散乱光をより多量に受光することができた。他方、非火災時においても、本発明の前記要件によって二次光を煙検出領域内に集光させているため、(一次光だけでなく)二次光も受光部に到達することがなく、本発明の前記構成を有しない従来技術と略同等またはより少ない光量しか受光部が受光しない。
すなわち、本発明の集光手段により、火災時にはより多量の散乱光を受光できる一方、非火災時にはより少量の光しか受光することがないため、煙感度を飛躍的に向上させることができたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
前記したように、本発明は、散乱光式煙検知器21用の検煙部1であって、本体側内平面4を有する検煙部本体3と、検煙部本体3に対応し蓋側内平面12を有する蓋部2とを含んでなり、当該検煙部1内において、発光部6と受光部7とを、発光部6からの一次光51が受光部7に到達しないように配置すると共に、本体側内平面4および蓋側内平面12のうちの少なくともいずれか一方において集光手段15,17を形成し、集光手段15,17は、発光部6の発光方向中心軸Eと受光部7の受光方向中心軸Rとの交点を中心とする球状の煙検出領域であって受光方向中心軸R周囲に形成される受光側錐状領域S2によって規定される煙検出領域Zにおいて、発光部6からの二次光54が集光するような反射面11,16を有することを特徴とする散乱光式煙検知器用検煙部1(以下、検煙部1と呼ぶ。)を提供する〔番号は、添付の図1〜5を参照〕。
【0012】
ここに、受光部側錐状領域(S2)は、以下に記載の一次光側錐状領域(S1、図2)と同様に、好適には受光部側に頂点を有する、円錐や角錐(三角錐、四角錐等)などの錐状体の形態を形成しているが、いずれの錐状体も底面を有しておらず、したがって、例えば、発光部6から発した一次光は、錐状領域S1を通って、少なくとも、煙検出領域を包囲するラビリンス(添付の図2、参照)まで達することができる。
また、本明細書に用いられる「発光部と受光部とを、発光部からの一次光が受光部に到達しないように配置する」なる用語には、受光部に入射する一次光を遮断するための遮蔽板を設けることによって発光部からの一次光が、直接、受光部に到達しないような配置が包含され、もちろん、このような遮蔽板を用いずに発光部からの一次光が、直接、受光部に到達しないような配置も包含される。
【0013】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明することにより、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<散乱光式煙検知器>
図1は、本発明の実施形態である散乱光式煙検知器21の斜視図である。
図1に示すように、散乱光式煙検知器21は、検知器本体22と検煙部1と保護カバー23とブザー24とから構成され、検知器本体22には、散乱光式検知器が正常に動作するか否かのテスト用およびブザー24一次停止用のスイッチ25/引き紐26(引き紐26は一部省略)が付設される。また、検知器本体22には、ブザー24/検煙部1用の電池と回路基板が収納される。また、検知器本体22は、その背面が天井面や壁面等に予め取り付けた取付けベース(図示せず)に面接触するよう、付設される。
【0015】
<集光手段を備えた検煙部>
図2は、図1に示した散乱光式煙検知器21を構成する、本発明の実施形態である検煙部1の斜視図である。図3は、図2に示した検煙部1を構成する検煙部本体3を示し、(a)は、検煙部本体3の斜視図であり、(b)は、(a)に示した集光手段15の一部拡大斜視図である。図4は、図2に示した検煙部1を構成する蓋部2の斜視図である。
【0016】
この実施形態の検煙部1は、本体側内平面4を有する検煙部本体3と、蓋側内平面12を有し検煙部本体3を覆うように検煙部本体3に付設される蓋部2とを有する(図2)。また、図2および図3(a)に示すように、検煙部本体3は、本体側内平面4を有する円形平板状の底板であり、この底板の略中央において形成された集光手段15と、本体側内平面4から図中上方に立設され集光手段15を包囲するように前記底板の円周方向に沿って形成された複数の本体側ラビリンス構成部材5と、LED(特に近赤外線域のもの)などの光源を付設するための発光部6と、フォトダイオード、フォトトランジスタ、シリコン光電池などのシリコン系素子からなる受光素子を付設するための受光部7と、検煙部本体3と蓋部2とを嵌合により結合させるための突起8とを有する。発光部6と、受光部7とは、発光部からの一次光が受光部7に到達しないように配置する。
【0017】
<集光手段に関する煙検出領域>
前記したように、本発明の煙検出領域Zは、本発明の集光手段15,17によって発光部6からの二次光が集光される領域であり、2つの条件によって規定される(特に、図2〜4、参照)。
第1の条件は、発光部6の発光方向中心軸Eと、受光部7の受光方向中心軸Rとの交点を中心とする球状の煙検出領域であって、発光方向中心軸Eは、発光部6からの一次光の発光方向に沿った光束のほぼ中心を通る軸である一方、受光方向中心軸Rは、受光部7の受光方向に沿った散乱光の光束のほぼ中心を通る軸である(図2等、参照)。第2の条件は、球状の前記煙検出領域が、受光側錐状領域S2によって規定されることであり、この実施形態では、受光側錐状領域S2は、受光部7側に頂点を有する円錐形の形態である。このような形態を有するため、受光部7から離れるにつれて拡大し、その結果、煙検出領域Zを広く確保することができる。なお、この実施形態では、一次光側錐状領域S1も、同様に発光部6(点光源)側に頂点を有する円錐形の形態であり、前記球状の煙検出領域を規定している。
【0018】
また、この実施形態では、一次光側錐状領域S1および受光側錐状領域S2は、その円錐形の円錐母線角が、いずれも約12度であり、この円錐母線角とは、前記した発光方向中心軸E/受光方向中心軸Rに相当する円錐の軸線と、母線との間の角度を意味する。
以上、本発明の煙検出領域Zは、2つの前記条件によって規定されるため、二次光を高密度で集光することができ、火災時の二次光の散乱光を受光部7によってより多量の光量の光を受光することができ一方、非火災時においては、二次光の煙検出領域Z内への高密度・集光化によって、一次光だけでなく二次光も受光部7に到達することがなく、従来技術と略同等またはより少ない光量しか受光部7が受光しない。その結果、本発明の散乱光式煙検知器21の煙感度は、従来技術に比し、飛躍的に改善できた。
なお、前記円錐形の円錐母線角は、好適には0〜32度、より好適には5度〜27度、最も好適には10〜17度である。また円錐母線角は、有利には、0〜17度、10〜25度、15〜32度である。
【0019】
<集光手段の概要>
図3(b)は、反射面11を有する集光手段15の一部拡大斜視図を示す。この反射面11は、本体側内平面4に沿って連続する稜線部18を有する突起部19において形成され、稜線部18から本体側内平面4に向かって傾斜しかつ発光部6に対向する斜面である。このように反射面11を斜面とすることにより、一次光反射領域を広く確保でき、また、連続形態の稜線部であるため、製造上、有利であってかつ非連続形態に比し、効率的に一次光反射領域を確保することができる。もちろん、稜線部18は非連続の形態であってもよく、この場合、複数の反射面(斜面)を形成することができる。
また、稜線部18は、発光方向中心軸Eに沿って複数形成し、より多量の二次光を煙検出領域Zに集光させることができる。
【0020】
<検煙部本体の他の構成要素>
検煙部本体3に備えられた集光手段15、本体側ラビリンス構成部材5、発光部6、受光部7および突起8は、いずれも検煙部本体3に対し射出成形によって一体成形される樹脂材料からなるものであるが、別部品として形成され接着剤、嵌合などの手段で検煙部本体3に取り付けられてもよい。また、突起8を設けずに、検煙部本体3と蓋部2とを、例えば接着剤のみで結合してもよい。また、検煙部本体3の形状は、略円形であるが、三角形、四角形などの多角形や、楕円形であってもよい。
【0021】
<蓋部の構成要素>
図4に示すように、蓋部2は、その外形が切頭円錐体の形態を有し、蓋側内平面12を形成する円形平板状の底板と、この底板を包囲するように連設された側面(網部14)とを有する。蓋部2は、この底板の略中央において形成された集光手段17と、集光手段17を包囲するように網部14内面に沿って形成された複数の蓋側ラビリンス構成部材9と、発光部6を覆う発光部カバー6’と、受光部7を覆う受光部カバー7’とを備える。また、蓋部2の発光部6’近傍の網部14の外周には突起10が設けられている。突起10は、検煙部本体3と蓋部2とを結合させるための位置を明確にするためのものであり、突起10を目印とすることにより検煙部本体3と蓋部2との相互の結合位置を容易に特定できる。なお、突起10は必ずしも必要なものではない。また、網部14は、外部からの煙は流入させるが、外部からの蚊、ハエなどの虫の侵入を防止するためのものである。網部14の網目は、四角形状の微小な隙間として形成されているが、円状の微小な隙間として形成されていてもよい。なお、ラビリンス構成部材9は、切頭円錐体の天井部分に相当する底板の蓋側内平面12から図中下方に立設されている。検煙部本体3と同様に、蓋部2底板は、円形の他に、三角形、四角形などの多角形や、楕円形であってよく、これに対応して蓋部2の形状は、頭部が切り取られた三角錐や四角錐などの多角錐体であってよい。なお、蓋部2の側面(網部14)は、図示した実施形態のように成形の容易性の観点から、傾斜した形態が好適であるが、側面が傾斜していない円柱形態の蓋部2であってもよい。また、蓋部2の態様としては、網部14が蓋部2の主要部を構成する構造の他に、別部材としての網部を保持しうるような構造を有する態様(図示せず)であってもよい。
なお、蓋部2に備えられた集光手段17、蓋側ラビリンス構成部材9、発光部カバー6’、 受光部カバー7’、網部14、および突起10は、いずれも蓋部2に対し射出成形によって一体成形される樹脂材料からなるものであるが、別部品として形成され接着剤、嵌合などの手段で蓋部2に取り付けられてもよい。
【0022】
<ラビリンス>
前記したように、検煙部1は、検煙部本体3と蓋部2とに分割して設けた複数の本体側ラビリンス構成部材5および複数の蓋側ラビリンス構成部材9を有している。この本体側ラビリンス構成部材5と蓋側ラビリンス構成部材9とから、外部からの煙は流入させるが外部からの光は遮光するラビリンス13を形成している。なお、ラビリンス13は、検煙部本体3および蓋部2のうちのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0023】
<集光手段の詳細>
次に、本発明の集光手段15,17を、添付の図5〜図7に示した実施形態について、さらに詳しく説明する。なお主として、本体側内平面4の集光手段15について説明するが、蓋側内平面12の集光手段17も同様な形態を有し、同様な機能を奏することができる。
【0024】
図5は、本発明の検煙部1の内面に形成した集光手段15,17の反射面11,16の概略を示す、図2に示した検煙部1のラインF−Fに沿って切欠した断面図、
図6は、本発明の検煙部1の検煙部本体3における本体側内平面4に形成した反射面11の詳細を示す、図2の検煙部1のラインF−Fに沿って切欠した模式断面図、
図7は、本発明の検煙部1の検煙部本体3における本体側内平面4に形成した反射面11の詳細を示す、図2の検煙部1の蓋部2側から検煙部本体3を鳥瞰した模式図である。
【0025】
前記したように、集光手段15,17の反射面11,16は、検煙部1の内面に形成されているが、この実施形態では二次光54が煙検出領域Zに集光するような傾斜角度で傾斜する斜面であり、これにより、二次光54を確実に煙検出領域Zに集光させることができ(図5)、この点で、光をトラップさせるような傾斜角度で光トラップを設けている前記特許文献1と、明確な相違が存在する。傾斜角度は、本体側内平面4(または蓋側内平面12)に対して傾斜する傾斜角度である。図6に図示した傾斜角度θは、本体側内平面4に対して垂直な垂直断面おける傾斜角度である。図6に示すように、発光部6から離反するにつれて傾斜角度θが大きくなる(図6、参照)。なお、図7に示した1つの円弧状稜線部Cに関し、発光方向中心軸Eを本体側内平面4に垂直に投影した仮想中央線と、稜線部との交差する位置において、本発明の斜面は発光部6と正対した正対状態であって、傾斜角度が最小である。かかる交差する位置から円弧状の稜線部の両端C,C’に向かうにつれて、前記正対状態を維持しながら傾斜角度は大きくなる。
【0026】
図5〜図7に示すように、集光手段15の反射面11は、発光部6からの一次光51が到達しうる一次光到達可能領域M1内に形成され、この一次光到達可能領域M1は、発光部6先端の形状および寸法によって決定される。図7に示した平面拡散線A(A’)は、発光部6からの一次光51が到達可能な一次光51の拡散範囲を示す線であり、同様に、図6に示した垂直拡散線a(a’)は、発光部6からの一次光51が到達可能な一次光51の拡散範囲を示す線である。したがって、一次光到達可能領域M1は、発光部6の点光源を頂点とし、発光部6からの平面拡散線A(A’)および垂直拡散線a(a’)によって規定される円錐形の領域である。
【0027】
また、図6に示すように、稜線部18を有する突起部19は、本体側内平面4に対して垂直な垂直断面において三角形の形態であって、発光部6に対向する斜面(反射面11)は平坦な形態に形成されており、このような簡易な形態は、簡易に製造できる点で製造上、有利である。
また、複数の斜面(反射面11)は、一次光51が、隣り合う反射面11の間の本体側内平面4に到達しない間隔で配置されており、このため、本体側内平面4での一次光51の反射はなく、より効率的に二次光54を煙検出領域Zに集光させることができる。
【0028】
図7は、本発明の反射面11(稜線部18)の簡易的な製作方法を説明するため、1つの連続稜線部18(反射面11)を実線で示し、他の稜線部18は省略した。もちろん、以下の製作方法は1つの例示であり、本発明は、この製作方法に限定されるものではない。
まず、発光方向中心軸Eと受光方向中心軸Rとの交点を求め、これを煙検出領域Zの中心点Pとして決定する。一次光到達可能領域M1においてこの中心点Pから任意に延在させた仮想線B,B’(線分B,B’は、以下の仮想中央線を軸に対象)と、一次光51が到達可能な一次光51の拡散範囲を示す線である平面拡散線A,A’との交点C,C’を求める。この点C,C’において、平面拡散線A,A’と仮想線B,B’とのなす角を二等分する二等分線D,D’を作製し、この二等分線D,D’に接するような円弧を形成し、この円弧上において稜線部18を作製することができる。
また、簡易的な製作方法によれば、斜面(反射面11)の前記傾斜角度は、この斜面の略中央部において反射した二次光54が煙検出領域Zにおいて集光するような角度とすることができる。
以上のように作製した稜線部18(図3(b)、参照)は、一次光到達可能領域M1内において、発光部6と稜線部18との間に中心を有する円または近似円の一部を形成するように連設されており、また、前記仮想中央線を対称軸として対称形に形成されている。また前記したように、稜線部18は、発光部6に対向する斜面として反射面11が形成され、この反射面11と内平面4との境界を示す円弧部Xと、反射面11の反対側の斜面と内平面4との境界を示す円弧部Yを有している。
【0029】
<検煙部の成型型>
本発明の実施形態である検煙部の成形型は、前記したような検煙部1を射出成形するための型である。型は、例えば金属製の金型を用い、金型は、鋳造、鍛造などにより形成する。検煙部1の射出成形では、射出成形機にセットした金型内に、溶かした樹脂材料を注入し冷却して固めて検煙部1の成形品を製造する。この型を用いて集光手段(15、17)を有する検煙部1を射出成形することにより、短時間で多量の検煙部1を製造することができ、非常に生産性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の散乱光式煙検知器用検煙部は、この検煙部を備えた散乱光式煙検知器として、住宅、商業施設用ビル、学校・病院などの公益施設、工場などの様々な建築物で広く利用することができる。特に、住宅用火災警報器として利用する散乱光式煙検知器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態である散乱光式煙検知器の斜視図。
【図2】図1に示した散乱光式煙検知器を構成する、本発明の実施形態である散乱光式煙検知器用検煙部の斜視図。
【図3】図2に示した散乱光式煙検知器用検煙部を構成する検煙部本体を示し、(a)は、検煙部本体の斜視図、(b)は、(a)に示した集光手段の一部拡大斜視図。
【図4】図2に示した散乱光式煙検知器用検煙部を構成する蓋部を示す斜視図。
【図5】本発明の散乱光式煙検知器用検煙部の内面に形成した集光手段の反射面の概略を示す、図2に示した散乱光式煙検知器用検煙部のラインF−F断面図。
【図6】本発明の散乱光式煙検知器用検煙部の検煙部本体における本体側内平面に形成した反射面の詳細を示す、図2の散乱光式煙検知器用検煙部のラインF−F模式断面図。
【図7】本発明の散乱光式煙検知器用検煙部の検煙部本体における本体側内平面に形成した反射面の詳細を示す、図2の散乱光式煙検知器用検煙部の蓋部側から検煙部本体を鳥瞰した模式図。
【符号の説明】
【0032】
1:散乱光式煙検知器用の検煙部 2:蓋部 3:検煙部本体 4:本体側内平面
6:発光部 7:受光部 11、16:反射面 12:蓋側内平面
15、17:集光手段 21:散乱光式煙検知器 51:一次光 54:二次光
E:発光方向中心軸 R:受光方向中心軸 S1:一次光側錐状領域
S2:受光側錐状領域 Z:煙検出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱光式煙検知器用の検煙部であって、
本体側内平面を有する検煙部本体と、前記検煙部本体に対応し蓋側内平面を有する蓋部とを含んでなり、
当該検煙部内において、発光部と受光部とを、前記発光部からの一次光が前記受光部に到達しないように配置すると共に、前記本体側内平面および/または前記蓋側内平面において集光手段を形成し、
前記集光手段は、前記発光部の発光方向中心軸と前記受光部の受光方向中心軸との交点を中心とする球状の煙検出領域であって前記受光方向中心軸周囲に形成される受光側錐状領域によって規定される煙検出領域において、前記発光部からの二次光が集光するような反射面を有することを特徴とする散乱光式煙検知器用検煙部。
【請求項2】
前記受光側錐状領域は、前記受光部側に頂点を有する円錐形の形態であることを特徴とする請求項1記載の散乱光式煙検知器用検煙部。
【請求項3】
前記反射面は、前記二次光が前記煙検出領域に集光するような傾斜角度で傾斜しかつ前記発光部に対向する斜面であることを特徴とする請求項1または2記載の散乱光式煙検知器用検煙部。
【請求項4】
前記斜面は、複数存在し、かつ、前記本体側内平面または前記蓋側内平面に沿って連続する稜線部を有する突起部において形成され、前記稜線部から前記本体側内平面または前記蓋側内平面に向かって傾斜することを特徴とする請求項3記載の散乱光式煙検知器用検煙部。
【請求項5】
さらに、ラビリンスを備えることを特徴とする請求項1〜4の1つに記載の散乱光式煙検知器用検煙部。
【請求項6】
請求項1〜5の1つに記載の散乱光式煙検知器用検煙部を備えていることを特徴とする散乱光式煙検知器。
【請求項7】
請求項1〜5の1つに記載の散乱光式煙検知器用検煙部を射出成形するための型であることを特徴とする散乱光式煙検知器用検煙部の成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−287452(P2008−287452A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131153(P2007−131153)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】