説明

集束チューブ及びその製造方法

【課題】本発明は、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有するとともに、耐久性のある集束チューブ及び集束チューブの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】集束チューブ1を、互いに隣接するように略台形状に並列配置し、隣り合う樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2を構成するとともに、並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌し、樹脂製チューブ10及び収縮後の樹脂製熱収縮チューブ20が可撓性及び伸縮性を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、半導体や液晶の製造プロセスにおけるプロセス流体などの流体や、電気配線などの長尺体等の導通対象物をそれぞれ独立して導通させる樹脂製チューブを集束させた集束チューブ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、半導体や液晶の製造プロセスにおけるプロセス流体等の流体の導通を許容するふっ素樹脂製チューブを複数本束ねて一体化させた集束チューブが多く提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1の集束チューブもその1つである。
上記集束チューブは、複数本の熱溶融性ふっ素樹脂製チューブを束ね、その端部外周に外嵌するスリーブの内周に溝を設け、スリーブごと加熱することにより複数本の熱溶融性ふっ素樹脂製チューブとスリーブとを融着一体化する構成である。
【0004】
上記構成により、融着による接合力のみならず、アンカー効果による接合力が生じ、熱溶融性ふっ素樹脂製チューブとスリーブとの間に極めて十分な接合強度が生じるとされている。
【0005】
しかし、上記集束チューブは、束ねた熱溶融性ふっ素樹脂製チューブの外周に外嵌するスリーブが剛性を有するため、例えば、ディスペンサ等の滴下装置のように移動する箇所へ流体を輸送するための流体輸送配管として上記集束チューブを用いた場合、剛性を有するスリーブとの接合面で、熱溶融性ふっ素樹脂製チューブが折れ曲がって座屈する、或いは繰り返しの折曲げにより、ひび割れや破損が生じるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−162190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有するとともに、耐久性のある集束チューブ及び集束チューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、導通対象物の導通を許容する樹脂製チューブを、互いに隣接するように複数並列配置し、隣り合う樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させて並行融着部を構成するとともに、該並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌し、前記樹脂製チューブ及び収縮後の前記樹脂製熱収縮チューブが、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する集束チューブであることを特徴とする。
【0009】
上記導通対象物は、例えば、半導体や液晶等を製造する製造プロセスにおけるプロセス流体や、プロセス流体と熱交換して所望の温度に温度制御する流体状熱媒体等の液体状、ジェル状の流体、吸排気のための気体状の流体、或いは電気配線等の長尺体等とすることができる。
【0010】
上記樹脂製チューブは、それぞれが同樹脂材料で構成したチューブ、あるいは導通させる流体等の導通対象物の性状に合わせて異なる樹脂材料で構成したチューブとすることができるとともに、同形状で形成したチューブあるいは異なる形状で形成したチューブとすることができる。
【0011】
この発明により、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有するとともに、耐久性のある集束チューブを構成することができる。
詳しくは、複数並列配置した樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させて並行融着部を構成し、並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌するため、熱融着した並行融着部が分離せず、一体性を保つことのできる応力限界を向上させることができ、かつ多方向から作用する複雑な応力によっても分離しにくい一体化された集束チューブを構成することができる。
【0012】
また、樹脂製チューブ及び収縮後の樹脂製熱収縮チューブが、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有しているため、曲げや引っ張りによって、集束チューブが変形する場合であっても、確実な一体性を保持でき、耐久性のある集束チューブを構成することができる。
【0013】
詳しくは、複数並列配置した樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させた並行融着部を湾曲させた場合、熱融着した部分に曲げの負荷が作用する。特に、湾曲の径方向に複数段の樹脂製チューブを並列配置した並行融着部の場合、湾曲方向における径外側と径内側の樹脂製チューブとでは、湾曲する曲率半径が異なる。このため、曲率半径の違いにより、径外側の樹脂製チューブには引っ張り方向の力が付与され、径内側の樹脂製チューブには圧縮方向の力が付与される。このように、湾曲の径方向に複数段の樹脂製チューブを並列配置した並行融着部の場合、径方向の熱融着した部分には曲率半径が異なることによる負荷も作用する。
【0014】
また、引っ張り方向の力によって並行融着部が引き伸ばされる場合においても、並列配置した複数の樹脂製チューブ全てに対して均等でない引っ張り方向の力が付与されると、引っ張り方向の力が異なることによる負荷が作用する。
【0015】
しかし、複数並列配置した樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させた並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌するため、並行融着部の一体性を向上させるとともに、並行融着部に作用する変形による負荷を分散することができる。したがって、負荷によって熱融着した部分が分離したり、並行融着部が座屈したりすることなく、確実な一体性を保持でき、耐久性のある集束チューブを構成することができる。
【0016】
さらに、例えば、並行融着部の端部位置と、並行融着部に外嵌する樹脂製熱収縮チューブの端部位置とを略一致させた場合、負荷が集中する並行融着部及び樹脂製熱収縮チューブの端部において、上記負荷を並行融着部と樹脂製熱収縮チューブとで分散できるため、並行融着部と樹脂製熱収縮チューブとの一方のみに負荷が集中して破損することを防止できる。
【0017】
なお、例えば、樹脂製チューブを、プロセス流体を導通させる樹脂製のプロセス流体用チューブと、流体状熱媒体を導通させる樹脂製の流体用熱媒体用チューブとし、集束チューブを熱交換器として用いた場合、樹脂製チューブの外面同士が密着しているため、プロセス流体と流体状熱媒体とを高効率で熱交換することができる。また、並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌することで、作用する負荷を分散できるため、熱融着した部分の分離や並行融着部の座屈により樹脂製チューブの割れ等が生じ、チューブ内を導通するプロセス流体や流体状熱媒体が漏れ出して、混ざることを防止することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記並行融着部を、前記樹脂製チューブにおける両端の所定範囲より長手方向中央側部分に構成し、前記並行融着部の長手方向両端部側に、隣り合う樹脂製チューブの密着部分が熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部を構成することができる。
【0019】
これにより、樹脂製チューブに、導通対象物を容易、且つ確実に導通させることができるため、利用操作性が向上する。
詳述すると、例えば、集束チューブを使用する場合、集束チューブの樹脂製チューブの両端には、流体を供給あるいは送出する供給管あるいは送出管を接続するが、供給管あるいは送出管と、樹脂製チューブとの接続が不確実な場合、不確実な接続によって流体が漏出するおそれがある。しかし、樹脂製チューブの両端にチューブ離間部を形成したことにより、供給管あるいは送出管を確実に接続することができ、流体が供給管あるいは送出管との接続部分から漏出することを防止できる。
【0020】
また、樹脂製チューブに電気配線等の長尺体を導通する場合、隣り合う樹脂製チューブの密着部分が熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部を設けたことにより、例えば、装置内に当該集束チューブをセットしてから、電気配線等の長尺体を導通させる場合であっても、チューブ離間部における所望の樹脂製チューブの端部を、導通しやすい位置に持ってきてから長尺体を導通させることができるため、利用操作性を向上することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記樹脂製チューブを、可撓性を有する変性PTFE樹脂製チューブで構成することができる。
上記変性PTFE樹脂は、特性を損なわない量のパーフルオロオレフィンでPTFE樹脂を変性し、所望の可撓性を有するふっ素樹脂である。
【0022】
上記構成により、優れた可撓性を有するとともに、多用されている変性PTFE樹脂で樹脂製チューブを構成するため、優れた可撓性を有するとともに、確実な耐久性を有する集束チューブを、高品質且つ安定して供給することができる。
【0023】
また、この発明は、導通対象物の導通を許容するとともに、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する樹脂製チューブを、外面同士を密着させて融着金型に並行配置し、並列配置した前記樹脂製チューブを、前記融着金型ごと加熱して、外面同士が密着する前記樹脂製チューブの密着部分を融着によって一体化させて並行融着部を構成し、該並行融着部に、収縮後において可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する樹脂製熱収縮チューブを外嵌し、加熱収縮させて固定する集束チューブの製造方法であることを特徴とする。
【0024】
この製造方法により、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有するとともに、耐久性のある集束チューブを効率よく製造することができる。
詳しくは、複数並列配置した樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させて並行融着部を構成し、並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌するため、容易に一体化させ、確実な接合強度を有する集束チューブを効率よく製造することができる。
【0025】
また、樹脂製チューブ及び収縮後の樹脂製熱収縮チューブが、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有しているため、曲げや引っ張りによって、集束チューブが変形する場合であっても、確実な一体性を保持でき、耐久性のある集束チューブを効率よく製造することができる。
【0026】
この発明の態様として、前記融着金型の外部で、並行配置した前記樹脂製チューブにおける両端の所定範囲を相互に離間させる離間治具を、加熱前に装着することができる。
【0027】
上記製造方法により、樹脂製チューブに、導通対象物を容易、且つ確実に導通させることができるため、利用操作性を向上することのできる集束チューブを効率よく製造できる。
【0028】
詳述すると、例えば、集束チューブを使用する場合、集束チューブの樹脂製チューブの両端には、流体を供給あるいは送出する供給管あるいは送出管を接続するが、供給管あるいは送出管と、樹脂製チューブとの接続が不確実な場合、不確実な接続によって流体が漏出するおそれがある。しかし、樹脂製チューブの両端にチューブ離間部を形成したことにより、供給管あるいは送出管を確実に接続することができ、流体が供給管あるいは送出管との接続部分から漏出することを防止できる集束チューブを効率よく製造することができる。
【0029】
また、樹脂製チューブに電気配線等の長尺体を導通する場合、隣り合う樹脂製チューブの密着部分が熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部を設けたため、例えば、装置内に当該集束チューブをセットしてから、電気配線を導通させる場合であっても、チューブ離間部における所望の樹脂製チューブの端部を、導通しやすい位置に持ってきてから導通させることができるため、利用操作性を向上できる集束チューブを効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有するとともに、耐久性のある集束チューブ及び集束チューブの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】集束チューブの斜視図。
【図2】集束チューブにおける並行融着部の断面図による説明図。
【図3】集束チューブの製造方法についての説明図。
【図4】集束チューブの製造方法についての説明図。
【図5】集束チューブの製造方法についての説明図。
【図6】集束チューブの製造方法についての説明図。
【図7】集束チューブの融着金型についての説明図。
【図8】集束チューブの製造方法についての説明図。
【図9】集束チューブを装着したディスペンサの斜視図。
【図10】ディスペンサに装着した集束チューブの斜視図。
【図11】ディスペンサに装着した集束チューブの側方概略図。
【図12】集束チューブにおける導通状態ついての断面図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は集束チューブ1の斜視図を示し、図2は集束チューブ1における並行融着部2についての断面図による説明図を示している。なお、図1において、長手方向Lの全長の長い集束チューブ1を明確に図示するため、長手方向Lの中央部分を省略している。後述する図3から図6、及び図8についても、同様に、長手方向Lの中央部分を省略して図示している。
【0033】
集束チューブ1は、所定の長さで形成した23本の樹脂製チューブ10を、上下2段で略台形状に並列配置するとともに、長手方向Lの中央部分を熱融着によって接合した並行融着部2と、並行融着部2の長手方向Lの両側に配置した所定長さのチューブ離間部3とで構成している。
さらに、並行融着部2には、熱融着して一体化した樹脂製チューブ10に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌している。
【0034】
詳しくは、並行融着部2の断面図である図2(a)に示すように、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10を幅方向Wに密着するように互いに隣接させて下段に12本及び上段に11本並列配置している。
【0035】
さらに、集束チューブ1は、上段の11本の上段樹脂製チューブ10aのそれぞれが下段の12本の下段樹脂製チューブ10bの間となるように配置し、高さ方向Hに密着させて略台形状を形成している。
【0036】
そして、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10の長手方向Lの中央部分における密着部分m同士を熱融着させて一体化して並行融着部2を構成するとともに、熱融着させて一体化した並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌している(図2(b)参照)。
【0037】
なお、並行融着部2に外嵌する樹脂製熱収縮チューブ20の両端部20aと、樹脂製チューブ10の密着部分mが熱融着して構成する並行融着部2の両端部2aとは略同位置となるように配置している。
【0038】
また、樹脂製チューブ10において樹脂製熱収縮チューブ20が外嵌していない両端側部分、つまり両端から所定長さの範囲で樹脂製チューブ10が露出している部分については、樹脂製チューブ10が一体化していないチューブ離間部3を構成している。
【0039】
樹脂製チューブ10は、外径4mm×内径3mm:肉厚0.5mmの適宜の可撓性及び伸縮性を有するとともに、熱溶融性を有する変性PTFE樹脂製チューブで構成しているが、これに限定されず、熱溶融性を有するとともに、適宜の可撓性及び伸縮性のうち少なくともいずれか一方を有するふっ素樹脂チューブで構成してもよい。
【0040】
樹脂製熱収縮チューブ20は、熱収縮前寸法が略台形配置した23本の樹脂製チューブ10の外形線OL(図8(b)参照)より一回り長い内周長を有する熱収縮シリコンチューブで構成している。なお、当該熱収縮シリコンチューブ20は、樹脂製チューブ10の融点より収縮温度が低く、熱収縮後において、適宜の可撓性及び伸縮性を有しているが、これに限定されず、樹脂製チューブ10の融点より収縮温度が低く、熱収縮後において、適宜の可撓性及び伸縮性のうち少なくともいずれか一方を有する樹脂製熱収縮チューブで構成してもよい。
【0041】
このように、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10の長手方向Lの中央部分において、それぞれが密着する密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2を構成するとともに、その外側に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌し、並行融着部2の長手方向Lの外両側に、各樹脂製チューブ10が融着されていないチューブ離間部3を構成している。
【0042】
上記構成で構成された集束チューブ1は、樹脂製チューブ10内に導通させる流体400(図12(a)参照)を供給する流体供給管(図示省略)や流体400の送出を受ける流体送出管(図示省略)をチューブ離間部3で接続して用いることができる。
【0043】
また、上述の集束チューブ1は、可撓性及び伸縮性、並びに耐久性を有している。
詳しくは、集束チューブ1は、複数並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2に密着状態で樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌するため、熱融着した並行融着部2が分離せず、一体性を保つことのできる応力限界を向上させることができ、かつ多方向から作用する複雑な応力によっても分離しにくい一体化された集束チューブ1を構成することができる。
【0044】
また、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10及び収縮後の樹脂製熱収縮チューブ20が可撓性及び伸縮性を有しているため、曲げや引っ張りによって変形する場合であっても、座屈せず、確実な一体性を保持できるとともに、耐久性を有している。
【0045】
詳しくは、複数並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2を湾曲させた場合、熱融着部xに曲げの負荷が作用する。特に、並行融着部2は2段の樹脂製チューブ10を並列配置して構成しているため、湾曲方向における径外側と径内側の樹脂製チューブ10とでは、湾曲する曲率半径が異なる。このため、曲率半径の違いにより、径外側の樹脂製チューブ10には引っ張り方向の力が付与され、径内側の樹脂製チューブ10には圧縮方向の力が付与される。このように、樹脂製チューブ10を2段に並列配置した並行融着部2の場合、高さ方向の熱融着部xには曲率半径が異なることによる負荷も作用する。
【0046】
また、引っ張り方向の力によって並行融着部2が引き伸ばされる場合においても、並列配置した複数の樹脂製チューブ10の全てに対して均等でない引っ張り方向の力が付与されると、それぞれに対する引っ張り方向の力が異なることによる負荷が作用する。
【0047】
しかし、集束チューブ1は、複数並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を密着状態で外嵌しているため、並行融着部2の一体性を向上させるとともに、並行融着部2に作用する変形による負荷を分散することができる。したがって、集束チューブ1は、負荷によって熱融着部xが分離したり、並行融着部2が座屈したりすることなく、確実な一体性を保持でき、耐久性を有している。
【0048】
また、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10を、熱溶融性、可撓性及び伸縮性を有する変性PTFE樹脂で構成しているため、優れた可撓性及び伸縮性、並びに確実な耐久性を有している。
詳しくは、変性PTFE樹脂は、PTFE樹脂のごく一部の側鎖にビニルエーテルを結合させたパーフルオロビニルエーテル変性ポリテトラフルオロエチレンであり、所望の熱溶融性、可撓性及び伸縮性を有するふっ素樹脂である。
【0049】
さらに詳述すると、テトラフルオロエチレン(TFE)というふっ素樹脂であるとともに、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)樹脂であるPTFE樹脂は、熱溶融性を備えていないが、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、自己滑潤性等の特性を有している。樹脂製チューブ10を構成する変性PTFE樹脂は、上述したようなPTFE樹脂の特性を損なわないように、さらに、熱溶融性、可撓性及び伸縮性を有するように、パーフルオロオレフィンで変性している。
【0050】
熱溶融性、可撓性及び伸縮性を有するように変性した変性PTFE樹脂は、一般的に多用されるPFA樹脂との変形性能を比較した場合、以下の表1に示すように、MIT試験による屈曲寿命確認試験の結果から少なくとも30倍以上の屈曲寿命を有していることが分かる。また、変性PTFE樹脂は、曲げ弾性率がおよそ70%であり、曲げやすいことも確認できる。
【0051】
【表1】

このことから、変性PTFE樹脂で構成した樹脂製チューブ10は、PFA樹脂製の樹脂製チューブと比べて、少なくとも30倍以上の屈曲寿命を有するとともに、曲げ弾性率がおよそ70%であり、変形性能が高くなる。
【0052】
また、樹脂製チューブ10を、変形性能の高い変性PTFE樹脂で構成しているため、樹脂製チューブ10同士が熱融着した熱融着部xの変形性能も高くなる。したがって、樹脂製チューブ10で構成した集束チューブ1は、優れた可撓性及び伸縮性、並びに確実な耐久性を有することができる。さらにまた、樹脂製チューブ10を構成する変性PTFE樹脂は、多用されているため、品質の高い樹脂製チューブ10を安定供給することができる。
【0053】
また、集束チューブ1は、樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着させて構成した並行融着部2の端部2aと、並行融着部2に密着状態で外嵌する樹脂製熱収縮チューブ20の端部20aとの位置とを略一致させて配置しているため、作用する負荷が集中する並行融着部2及び樹脂製熱収縮チューブ20の端部2a,20aにおいて、上記負荷を並行融着部2と樹脂製熱収縮チューブ20とで分散できるため、並行融着部2と樹脂製熱収縮チューブ20との一方のみに負荷が集中して破損することを防止できる。
【0054】
また、集束チューブ1は、並行融着部2を、樹脂製チューブ10における両端の所定範囲より長手方向Lの中央側部分に構成し、並行融着部2の長手方向Lの両端部側に、隣り合う樹脂製チューブ10の密着部分mが熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部3を構成しているため、樹脂製チューブ10に、容易に流体400を導通させるための供給管あるいは送出管を接続したり、電気配線等の長尺体を容易、且つ確実に導通させることができる。
【0055】
次に、図3から図8とともに、集束チューブ1の製造方法について説明する。
図3は集束チューブ1を製造する準備工程についての説明図を示し、図4は樹脂製チューブ10を熱融着させる融着金型100に配置する配置工程についての説明図を示し、図5は融着金型100を組付ける組付け工程についての説明図を示している。
【0056】
図6はチューブ離間部3を形成するための離間部形成プレート200を装着するプレート装着工程についての説明図を示し、図7は融着金型100の構成及び密着部分mの熱融着についての説明図を示し、図8は樹脂製熱収縮チューブ20の外嵌工程についての説明図を示している。
【0057】
最初に、集束チューブ1を製造するための融着金型100、離間部形成プレート200及び中芯300について説明する。
集束チューブ1の並行融着部2を形成する、つまり樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着させる融着金型100は、並行融着部2と同程度の長さの直方体形状であり、上金型110と、下金型120と、左右の側部押え金型130,130とで構成している。
【0058】
上金型110は、図7(a)に示すように、底面側の幅方向Wの中央に、樹脂製チューブ10、下金型120の嵌合凸部121並びに側部押え金型130の嵌合を許容する嵌合凹部111を有する門型断面で形成している。
【0059】
なお、上金型110の80%程度の幅を占める嵌合凹部111における底面111aには上向きに凸な半円断面が幅方向Wに11個連続し、11本の上段樹脂製チューブ10aに対応するチューブ係止溝112を有している。
【0060】
また、上金型110における嵌合凹部111の幅方向Wの外側において、長手方向Lに所定間隔を隔てて複数箇所配置された固定ボルト100aの貫通を許容する固定ボルト貫通孔113を備えている(図5,6参照)。
【0061】
下金型120は、図7(a)に示すように、下向きに凸な半円断面が幅方向Wに12個連続し、12本の下段樹脂製チューブ10bに対応するチューブ係止溝122を上面121aに形成した嵌合凸部121を有する凸状断面で形成している。
【0062】
また、下金型120における嵌合凸部121の幅方向Wの外側において、融着金型100の固定ボルト貫通孔113に対応する位置に、固定ボルト100aの螺入を許容するボルト螺入孔123を備えている。
【0063】
嵌合凸部121の上面121aに載置して、樹脂製チューブ10の側方を押える側部押え金型130は、上段樹脂製チューブ10aの下外側及び下段樹脂製チューブ10bの上外側に接する円弧面131を有しており、幅方向Wの外側面を嵌合凸部121の外側面に合わせた状態で、嵌合凹部111に嵌合する。
【0064】
なお、上段樹脂製チューブ10a及び下段樹脂製チューブ10bが接するチューブ係止溝112、チューブ係止溝122及び円弧面131は、樹脂製チューブ10の融着を防止する融着防止メッキを施している。本実施例において、融着防止メッキとして、化学反応によってニッケル燐合金をコーティングするカニゼンメッキを施している。また、上金型110、下金型120及び側部押え金型130は同素材で構成している。
【0065】
離間部形成プレート200は、図6に示すように、各樹脂製チューブ10の貫通を許容する貫通孔201を適宜の間隔を隔てて、上段樹脂製チューブ10aと下段樹脂製チューブ10bの本数分を備えるとともに、それぞれの貫通孔201を所定の間隔で離間させて配置した薄板状鋼板であり、融着金型100の長手方向Lの両側に装備するように2枚備えている。
【0066】
中芯300は、一方の端部に握持用のプレート部301を備え、樹脂製チューブ10の内部空間10c(図2(b)参照)に挿入可能な径の細棒で構成している。なお、中芯300は、内部空間10cに挿入した樹脂製チューブ10の形状を保持することのできる適宜の強度で構成している。
【0067】
次に、融着金型100、離間部形成プレート200及び中芯300を用いた集束チューブ1の製造方法について説明する。
まず、集束チューブ1の準備工程では、樹脂製チューブ10を形成するために、上記寸法の変性PTFE樹脂製チューブを、23本分所定の長さに切断し、図3に示すように各樹脂製チューブ10に中芯300を挿入する。
【0068】
図4に示す配置工程では、中芯300を挿入した樹脂製チューブ10において、並行融着部2を構成する中央部分を下金型120のチューブ係止溝122に嵌め込み、その樹脂製チューブ10を幅方向Wの両側から側部押え金型130で挟みこむ。
【0069】
そして、図5に示す組付け工程では、下金型120の上方から嵌合凸部121が嵌合凹部111に嵌合するように上金型110を装着し、固定ボルト100aで固定するとともに(図5(b)参照)、中芯300を樹脂製チューブ10から抜き出す。
【0070】
そして、図6に示すプレート装着工程では、融着金型100を装着した樹脂製チューブ10の長手方向Lの両側から離間部形成プレート200を装着する。詳しくは、11本の上段樹脂製チューブ10aと12本の下段樹脂製チューブ10bを離間部形成プレート200における所定の貫通孔201に挿入する。これにより、密着するように略台形状に並列配置した23本の樹脂製チューブ10の両端部分を、図6(b)に示すように、幅方向W及び高さ方向Hに広がった状態で形状保持することができる。
【0071】
この状態で、雰囲気温度が予め360℃に設定された電気炉(図示省略)の中に融着金型100及び離間部形成プレート200ごと樹脂製チューブ10をセットし、1時間加熱し、その後金型温度が50℃になるまで冷却する。
【0072】
これにより、図7(c),(d)に示すように、外面が密着するように並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mが熱融着して熱融着部xを形成し、一体化された並行融着部2を形成することができる。
【0073】
また、離間部形成プレート200により、樹脂製チューブ10の両端部分を幅方向W及び高さ方向Hに所定間隔を隔てて離間させていたため、隣り合う樹脂製チューブ10が融着することなく、チューブ離間部3を構成することができる。
【0074】
上記工程によって、並行融着部2及びチューブ離間部3が形成された樹脂製チューブ10の束を融着金型100から取り出し、図8に示す樹脂製熱収縮チューブ20の外嵌工程において、収縮前の樹脂製熱収縮チューブ20を樹脂製チューブ10の並行融着部2の部分に遊嵌させる。このとき、並行融着部2の端部2aと、樹脂製熱収縮チューブ20の端部20aとが一致するように樹脂製熱収縮チューブ20を並行融着部2に遊嵌させる。
【0075】
なお、図8(a)において、収縮前の樹脂製熱収縮チューブ20を並行融着部2への遊嵌状態である断面略台形状で示しているが、樹脂製熱収縮チューブ20は一般的な円形断面の熱収縮シリコンチューブであり、遊嵌させるために、断面略台形状に図示しているに過ぎない。
【0076】
この樹脂製熱収縮チューブ20の外嵌工程において、樹脂製チューブ10の束の並行融着部2に遊嵌させた樹脂製熱収縮チューブ20は、図8(b)に示すように、樹脂製熱収縮チューブ20を、略台形状に配置した樹脂製チューブ10の並行融着部2の外形線OLより熱収縮前の内周長が長い寸法で形成しているため、樹脂製熱収縮チューブ20の内周面と束ねた樹脂製チューブ10の並行融着部2の部分の外形線OLとの間に隙間が形成されるように遊嵌することができる。
【0077】
この状態で、予め雰囲気温度200℃に予熱した電気炉内で1〜2分間加熱し、樹脂製熱収縮チューブ20を熱収縮させる。この熱収縮により、図2(a)に示すように、樹脂製熱収縮チューブ20の内周面が並行融着部2の部分の樹脂製チューブ10に対して密着し、樹脂製熱収縮チューブ20を束ねた樹脂製チューブ10の並行融着部2の部分に対して確実に固定することができる。
【0078】
このように、融着金型100、離間部形成プレート200及び中芯300を用いた上記製造方法によって、可撓性及び伸縮性を有するとともに、耐久性のある集束チューブ1を効率よく製造することができる。
【0079】
詳しくは、複数並列配置した樹脂製チューブ10同士の密着部分mを熱融着させるため、効率よく容易に樹脂製チューブ10を一体化させて並行融着部2を形成し、並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌するため、熱融着した並行融着部2が分離せず、一体性を保つことのできる応力限界を向上させることができ、かつ多方向から作用する複雑な応力によっても分離しにくい一体化された集束チューブ1を製造することができる。
【0080】
また、樹脂製チューブ10及び収縮後の樹脂製熱収縮チューブ20が、可撓性及び伸縮性を有しているため、曲げや引っ張りによって集束チューブ1が変形する場合であっても座屈することなく、上述したように、確実な一体性を保持でき、耐久性のある集束チューブ1を製造することができる。
【0081】
また、集束チューブ1は、並行融着部2を、樹脂製チューブ10における両端の所定範囲より長手方向Lの中央側部分に構成し、並行融着部2の長手方向Lの両端部側に、隣り合う樹脂製チューブ10の密着部分mが熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部3を構成しているため、樹脂製チューブ10に、容易に導通対象物導通させるための供給管あるいは送出管を接続したり、電気配線等の長尺体を容易、且つ確実に導通させることのできる集束チューブ1を製造することができる。
【0082】
また、中芯300を挿入してから、樹脂製チューブ10の並行融着部2の部分を下金型120のチューブ係止溝122に嵌め込むため、樹脂製チューブ10の形状を中芯300で保持でき、樹脂製チューブ10をチューブ係止溝122に容易に嵌め込むことができる。
【0083】
また、樹脂製チューブ10が接するチューブ係止溝112、チューブ係止溝122及び円弧面131に、融着防止メッキを施しているため、融着金型100を加熱した後に、融着金型100から樹脂製チューブ10を容易に離型することができる。
【0084】
したがって、例えば、融着金型100に融着した樹脂製チューブ10を引き剥がすことで樹脂製チューブ10の熱融着部xが分離して並行融着部2がばらけるおそれのある場合と比較して、確実に一体化した並行融着部2を形成することができる。
【0085】
また、融着金型100を構成する上金型110、下金型120及び側部押え金型130を同素材で構成しているため、樹脂製チューブ10の密着部分mを融着するために加熱した場合であっても、上金型110、下金型120及び側部押え金型130における加熱による熱膨張が同程度であり、異なる素材で構成して異なった熱膨張する場合と比較して、確実に密着部分mが融着によって一体化した集束チューブ1を得ることができる。
【0086】
さらにまた、集束チューブ1は、密着部分mが熱融着によって一体化した状態の並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を遊嵌させてから熱収縮後させているが、樹脂製熱収縮チューブ20を樹脂製チューブ10の融点より収縮温度が低い熱収縮シリコンチューブで構成しているため、樹脂製熱収縮チューブ20の収縮のための加熱によって、樹脂製チューブ10の熱融着部xが剥がれて、並行融着部2の一体性が損なわれるといったおそれもなく、可撓性及び伸縮性を有するとともに、耐久性のある集束チューブ1を効率よく製造することができる。
【0087】
なお、上記製造方法で製造され、可撓性及び伸縮性を有するとともに耐久性もあり、確実に導通対象物を導通させることのできる集束チューブ1は、例えば、図9に示すようなディスペンサ500等の装置における移動する流体滴下部501に流体を輸送するための流体輸送配管502として用いることができる。
【0088】
集束チューブ1を流体輸送配管502として装着するディスペンサ500について、図9から図11とともに説明する。詳しくは、図9は外観や流体輸送機構以外の機構を破線で示したディスペンサ500の斜視図を示し、図10は流体輸送配管502として機能する集束チューブ1についての斜視図を示し、図11は流体輸送配管502として機能する集束チューブ1についての側方概略図を示している。なお、図9において、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1は、ディスペンサ500の構成における配索状態を示しているが、図10及び11においては、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1の移動性能についての説明を明確にするため、簡略化して寝位のU字状に図示している。
【0089】
ディスペンサ500は、本体台座部500aの側面に備えた配管接合部503を介して図示しない流体タンクから供給された流体を、集束チューブ1で構成する流体輸送配管502を通じて流体滴下部501まで輸送して、図示省略する容器に流体滴下部501から滴下する装置である。なお、流体輸送配管502は、集束チューブ1の並行融着部2で構成し、両端のチューブ離間部3の部分で流体滴下部501や配管接合部503に接続している。
【0090】
なお、容器は、ディスペンサ500の幅方向wに所定間隔で複数配置されており、流体滴下部501は、滴下部移動機構504により幅方向wに所定間隔ずつ移動して、上記容器に流体400を滴下する構成である。
【0091】
この流体滴下部501の幅方向wの移動に伴い、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1は、一端が配管接合部503に固定されているため、並行融着部2が湾曲した湾曲部分Rも曲率を維持したまま幅方向wに移動する。
【0092】
しかし、集束チューブ1は、変形性能の高い変性PTFE樹脂で構成した樹脂製チューブ10を熱融着して一体化した並行融着部2に樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌することによって可撓性及び伸縮性、並びに耐久性を有しているため、湾曲部分Rが曲率を維持したまま幅方向wに移動しても破損や座屈することなく、確実に流体を配管接合部503から流体滴下部501に輸送することができる。
【0093】
詳しくは、略台形状に複数並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着によって一体化させた並行融着部2が湾曲させることによって、熱融着部xに曲げの負荷が作用する。特に、並行融着部2を2段の樹脂製チューブ10を並列配置して構成しているため、湾曲部分Rの径外側となる下段樹脂製チューブ10bと径内側となる上段樹脂製チューブ10aとでは、湾曲する曲率半径が異なってくる。このため、曲率半径の違いにより、径外側の下段樹脂製チューブ10bには引っ張り方向の力が付与され、径内側の上段樹脂製チューブ10aには圧縮方向の力が付与されて、上段樹脂製チューブ10aと下段樹脂製チューブ10bとの間の熱融着部xに曲率半径が異なることによる負荷が作用する。
【0094】
しかし、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1は、略台形状に並列配置した樹脂製チューブ10の密着部分mを熱融着して熱融着部xを形成し、一体化した並行融着部2に密着状態で樹脂製熱収縮チューブ20を外嵌するため、並行融着部2の一体性を向上させるとともに、並行融着部2に作用する負荷を樹脂製熱収縮チューブ20に分散することができる。また、変形性能の高い変性PTFE樹脂で構成した樹脂製チューブ10同士を熱融着した熱融着部xの変形性能も高くなる。したがって、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1は優れた可撓性及び、並行融着部2が座屈することのない確実な耐久性を有しているため、湾曲部分Rの曲げの負荷によって熱融着部xが分離することなく、確実な一体性を保持することができる。
【0095】
また、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1は、隣り合う樹脂製チューブ10の密着部分mが熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部3で流体滴下部501や配管接合部503に接続しているため、各樹脂製チューブ10に導通させる流体を供給あるいは送出する供給管あるいは送出管を接続することができる。
【0096】
なお、ディスペンサ500が半導体や液晶の製造するための装置であってもよい。この場合、半導体や液晶の製造プロセスにおけるプロセス流体の温度制御が重要であり、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1を構成する23本の樹脂製チューブ10のうち、11本の上段樹脂製チューブ10aにプロセス流体400a(図12(a)参照)を導通させ、12本の下段樹脂製チューブ10bに液状熱媒体400b(図12(a)参照)を導通させて、並行融着部2において温熱媒体として機能する液状熱媒体400bでプロセス流体400aを温度調整する熱交換器として集束チューブ1を用いることとなる。
【0097】
このように、集束チューブ1で構成する流体輸送配管502を熱交換器として機能させる場合、集束チューブ1の配管接合部503側のチューブ離間部3における上段樹脂製チューブ10aの端部に、導通させるプロセス流体400aを供給するプロセス流体供給管(図示省略)を接続し、流体滴下部501側のチューブ離間部3の端部に、導通したプロセス流体400aの送出を受けるプロセス流体送出管(図示省略)を接続する。
【0098】
同様に、集束チューブ1の配管接合部503側のチューブ離間部3における下段樹脂製チューブ10bの端部に、導通させる液状熱媒体400bを供給する流体状熱媒体供給管(図示省略)を接続し、流体滴下部501側のチューブ離間部3における下段樹脂製チューブ10bの端部に、導通した液状熱媒体400bの送出を受ける流体状熱媒体送出管(図示省略)を接続する。
【0099】
そして、プロセス流体供給管からプロセス流体400aを供給し、プロセス流体送出管から送出するとともに、流体状熱媒体供給管から液状熱媒体400bを供給し、流体状熱媒体送出管から送出することで、並行融着部2において、上段樹脂製チューブ10aを導通するプロセス流体400aと、下段樹脂製チューブ10bを導通する液状熱媒体400bとで熱交換することができる。
【0100】
詳しくは、液状熱媒体400bがプロセス流体400aより高温である場合は、樹脂製チューブ10を介して液状熱媒体400bからプロセス流体400aに熱が移動するため、プロセス流体400aの温度が向上する。逆に、液状熱媒体400bがプロセス流体400aより低温である場合は、樹脂製チューブ10を介してプロセス流体400aから液状熱媒体400bに熱が移動するため、プロセス流体400aの温度が低下する。
【0101】
このように、熱交換器として機能する流体輸送配管502(集束チューブ1)は、上段樹脂製チューブ10aを導通するプロセス流体400aと、下段樹脂製チューブ10bを導通する液状熱媒体400bとを効率よく熱交換させることによって、温度変化勾配の緩やかな熱交換を実現でき、高精度にプロセス流体400aを温度制御することができる。
【0102】
詳しくは、細いチューブである上段樹脂製チューブ10aを導通するプロセス流体400aと、上段樹脂製チューブ10aに一体化された下段樹脂製チューブ10bを導通する液状熱媒体400bとで温度変化勾配の緩やかな熱交換を行うため、プロセス流体400aの全体を高精度で温度制御することができる。
【0103】
また、プロセス流体400aと液状熱媒体400bとは、上段樹脂製チューブ10aと、下段樹脂製チューブ10bとに分かれて導通されるため、例えば、樹脂製チューブに割れ等の破損が生じ、一方のチューブからプロセス流体400aと液状熱媒体400bのいずれかが漏出した場合であっても、他方のプロセス流体400aや液状熱媒体400bとが混ざることを防止できる。
【0104】
また、例えば、半導体や液晶の製造するための装置であるディスペンサ500における本体台座部500aで稼働熱が生じやすい場合であっても、流体輸送配管502として機能する寝位のU字型部分を有する集束チューブ1の下部における本体台座部500a側の下段樹脂製チューブ10bに液状熱媒体400bを導通させ、流体輸送配管502として機能する集束チューブ1の下部において本体台座部500aと遠い側の上段樹脂製チューブ10aにプロセス流体400aを導通させたことにより、本体台座部500aから発せられる稼働熱の影響は液状熱媒体400bで吸収され、温調精度を要するプロセス流体400aに影響が及ばず、好適である。
【0105】
なお、熱交換器として機能する流体輸送配管502を構成する集束チューブ1の上段樹脂製チューブ10aには個々に異なるプロセス流体400aを導通させてもよい。また、例えば、左端の下段樹脂製チューブ10bには温かい液状熱媒体400bを導通させ、右端の下段樹脂製チューブ10bには冷たい液状熱媒体400bを導通させるなど、下段樹脂製チューブ10bに互いに異なる様々な温度の液状熱媒体400bを導通させてもよい。
【0106】
このように、様々な温度分布の管理が可能となり、極めて汎用性が高く、品質の安定した熱交換器を得ることができる。したがって、集束チューブ1で構成する流体輸送配管502は、温調を要する半導体や液晶の製造するための装置において、熱交換器として機能させることができ、汎用性が高い。
【0107】
なお、図12(b)に示すように、上段樹脂製チューブ10aや下段樹脂製チューブ10bのいずれかに電気配線400cを導通させてもよい。これにより、流体滴下部501の移動にともなって移動する電気配線400cが露出せず、他の機構に引っ掛かったりして断線するおそれが無く、より好適である。
【0108】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
樹脂製チューブは、樹脂製チューブ10、上段樹脂製チューブ10a及び下段樹脂製チューブ10bに対応し、
以下同様に、
導通対象物は、流体400、プロセス流体400a、液状熱媒体400b及び電気配線400cに対応し、
離間治具は、離間部形成プレート200に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0109】
例えば、上述の説明において、幅方向Wに密着させて12本の下段樹脂製チューブ10bと、11本の上段樹脂製チューブ10aとで略台形状に構成した集束チューブ1について説明したが、この本数に限定されず、その他の本数や、略円形状に樹脂製チューブ10を並列配置してもよい。また、左右非対称に配置してもよい。このように、樹脂製チューブ10をさまざまな配置で配置することによって、導通する流体400の用途に応じて導通させることができる。また、樹脂製チューブ10の内部空間10cに、装置における吸排気のための気体を導通対象物として導通させてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…集束チューブ
2…並行融着部
3…チューブ離間部
10…樹脂製チューブ
10a…上段樹脂製チューブ
10b…下段樹脂製チューブ
20…樹脂製熱収縮チューブ
100…融着金型
200…離間部形成プレート
400…流体
400a…プロセス流体
400b…液状熱媒体
400c…電気配線
m…密着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通対象物の導通を許容する樹脂製チューブを、互いに隣接するように複数並列配置し、隣り合う樹脂製チューブの密着部分を熱融着によって一体化させて並行融着部を構成するとともに、
該並行融着部に樹脂製熱収縮チューブを外嵌し、
前記樹脂製チューブ及び収縮後の前記樹脂製熱収縮チューブが、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する
集束チューブ。
【請求項2】
前記並行融着部を、
前記樹脂製チューブにおける両端の所定範囲より長手方向中央側部分に構成し、
前記並行融着部の長手方向両端部側に、隣り合う樹脂製チューブの密着部分が熱融着せず、相互に離間するチューブ離間部を構成した
請求項1に記載の集束チューブ。
【請求項3】
前記樹脂製チューブを、
可撓性を有する変性PTFE樹脂製チューブで構成した
請求項1又は2に記載の樹脂製熱交換器。
【請求項4】
導通対象物の導通を許容するとともに、可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する樹脂製チューブを、外面同士を密着させて融着金型に並行配置し、
並列配置した前記樹脂製チューブを、前記融着金型ごと加熱して、外面同士が密着する前記樹脂製チューブの密着部分を融着によって一体化させて並行融着部を構成し、
該並行融着部に、収縮後において可撓性及び伸縮性のうち少なくとも一方を有する樹脂製熱収縮チューブを外嵌し、加熱収縮させて固定する
集束チューブの製造方法。
【請求項5】
前記融着金型の外部で、並行配置した前記樹脂製チューブにおける両端の所定範囲を相互に離間させる離間治具を、加熱前に装着する
請求項4に記載の樹脂製熱交換器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−94654(P2011−94654A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247208(P2009−247208)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】