説明

集電体製造用の炭素含有物質分散液

本発明は、二次電池、キャパシタ、超電導体などに使用される、集電体の活性層に関する。本発明のナノメートルサイズの炭素含有粒子の分散液は、溶液総量比で、i)1%〜4%(m/v)の懸濁された炭素含有粒子と、ii)20%〜40%(v/v)のポリマーマトリクスと、iii)ポリマーマトリクスの溶媒であり、バインダも分散剤も含まない湿潤剤とからなる。かかる分散液は、所定粘度のポリマーマトリクスを調製し、該マトリックスに、炭素含有粒子と湿潤剤を、使用総量の一部ずつ加え、安定した粘度のゾルが得られるまで、攪拌し続け、使用総量を使いきるまで該行程を繰り返すことにより得られる。かかる分散液は、粘度値10cP〜40cPのゾルであり、該分散液により、集電体の表面は、優れた伝導特性を有する炭素含有粒子層で、連続的かつ均質に被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、キャパシタ、超電導体のようなエネルギー貯蔵システムに使用される、集電体の活性層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、改良された集電体を製造するための組成物、およびそのような組成物を調製するための方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、これまでにない、注目すべき伝導特性を有する中間層を備えた、改良集電体の製造方法を提供することである。
【0003】
電気エネルギーの貯蔵システムは、電気化学経路によるものであれ静電気経路によるものであれ、おもに、電解質から電子を吸引する金属導体である集電体と、エネルギーの貯蔵を可能にする活物質を含んだ活性膜とで構成される。活性膜には、たとえば、バッテリにおけるレドックスシステム、スーパーキャパシタにおける活性炭、キャパシタにおける誘電体膜などがある。
【0004】
効果的な作用のためには、電解質から活性膜へのシステム内の電流抵抗を最大限に抑えることが必要である。この抵抗は、様々な要因によるものではあるが、主な有力要因を2つあげるなら、電解質抵抗、および電流コレクタと活性膜の間の界面抵抗であり、後者の抵抗は、大方において、界面層の性質、および接触の質の如何にかかっている。
【0005】
集電体と活性膜間の伝導性を改良するために、様々な方法が提案されてきた。たとえば、アルミニウム製の集電体の場合、不動態化現象に対応して、自然に表面を保護しており、アルミニウム界面−活性膜の抵抗を高めている水酸化アルミニウム層を除去する試みがなされてきた。
【0006】
たとえば、米国特許第6191935号には、アルミニウム製集電体を製造する技術が開示されているが、これは、硬い粒状炭素を圧縮により浸透させ、表面の絶縁アルミニウム層を破壊し、抵抗を軽減するものである。しかしながら、ある一定の期間が経過すると、活物質と集電体との接触の安定性は、保証されなくなる。
【0007】
米国特許第5949637号は、シート状のアルミニウム集電体支持体に孔を開け、活物質とアルミニウムシートの接触抵抗を軽減する記述を開示している。
【0008】
米国特許第6094788号は、炭素繊維で包囲した集電体を開示している。このアセンブリは、活物質と集電体との抵抗を軽減するために、非不動態化されたアルミニウムシートの使用を必要とする。しかしながら、先在のアルミナ層に関しては、何ら記述されておらず、このアルミナ層は、比較的厚くなり、高い接触抵抗を有する可能性がある。
【0009】
特開平11−162470号は、アルミニウムシートの集電体を開示している。この集電体用アルミニウムシートの表面は、アルミナ粒子を噴射することにより粗化され、アルミニウムシートと活物質との密着性を高めている。この方法は、集電体と活物質との接触抵抗を軽減することを可能にするものではあるが、その後に起こる不動態化から集電体を保護することができないという不都合がある。
【0010】
その他の技術は、集電体を保護層でコーティングするという方法に基づいている。たとえば、欧州特許出願第1032064号は、正極をペースト塗布したタイプの集電体に関するものであり、シュウ酸塩とシリコン化合物、またはリン酸化合物、もしくはクロム化合物からなるポリマー被覆を形成する方法が提案されている。この方法は、電極製造中のペースト塗布によって生ずる腐食から集電体を保護するためには有効であるが、実質的には、作用特性に何ら効果をもたらすものではない。
【0011】
一方、米国特許第4562511号は、分極可能な炭素電極について記述している。ここでは、アルミニウムの集電体を、導電性粒子を豊富に含んだ塗料で被覆することが提案されている。仏国特許第2824418号においては、グラファイトや炭素のような伝導性粒子を含んだ塗料層を、集電体と活物質との間に塗布し、その後、熱処理を施して溶剤を除去することにより、界面の電気特性を高めている。エポキシ樹脂またはポリウレタンをベースとした塗料が、スプレー噴射によって塗布される。こうした塗料によって得られる改良点にもかかわらず、これらの塗料には、界面抵抗を高めるバインダを含有するという不利益がある。
【0012】
より最近では、アルミニウム集電体の多孔質な表面に、炭素含有物質の層を設ける新技術が、実験室においてテストされている。多孔性を得るために、化学エッチングを行い、続いて、多孔質表面と活性膜との接触の持続性を確実にすると考えられている導電層を設けるのである。
【0013】
この層を形成する物質の物理的特性は、集電体の作用のために非常に重要であるばかりでなく、集電体の製造にとっても非常に重要である。実際、導電性物質は、粘着性で被膜性の薄層として塗布することが可能なものでなければならず、すなわち、この層は均質、同質でなければならず、必須条件として、支持体と一点の隙間なく完全に接触するものでなくてはならない。
【0014】
しかしながら、これまで用いられてきた導電性物質に富んだコーティング粒子は、孔内に入り込むことができず、事実上、交換面は減少する。実際、コーティング粒子は、表面力に打ち勝つことができず、従って、孔隙に入り込むことができない。同様に、直径数ミクロンの孔の奥深くまで入り込むためには、導電性粒子の大きさは、最大でも数十ナノメートルでなければなたないことが指摘されているが、コーティング粒子の大きさは、数十ミクロンである。この問題を解決し、活物質と多孔性集電体との連続的な接触面を実現するために、微細に分割した導電性物質を、ゾルを形成するポリマーマトリクスに懸濁し、この懸濁液を集電体上で成膜することが考察されてきた。
【0015】
多孔質または多孔質でない基板上に、金属酸化物層を形成するためにゾルを使用する方法は、仏国特許第2856397号が示すところである。ここで用いられている方法は、分散剤を添加した溶媒に金属酸化物を分散させ、この混合液にポリマー溶液を加えるというものである。こうして得られた懸濁液は、次に、浸漬−引上げ法(ディップ法の名で知られている)を用いて基板上に成膜され、有機物を除去して酸化物層のみを残すため、乾燥させ、焼成する。しかしながら、この技術を、微粒子炭素の分散を実現するために応用することはできない。実際、アセチレンブラックや活性炭のような炭素パウダーは、溶媒に対して異なった反応を示す。これらは、然るべく分散されずに凝集体を形成し、このため、一方ではゾルの粘性を変化させ、他方では焼成後の層に不規則を生じさせる。さらに、分散剤のような添加物は、接触面の状態を悪化させる。このように、酸化物の成膜を可能にすることで知られるゾル−ゲル法は、しかしながら、そもそも炭素含有物質を懸濁し、成膜するために開発されたものではないのである。
【特許文献1】米国特許第6191935号
【特許文献2】米国特許第5949637号
【特許文献3】米国特許第6094788号
【特許文献4】特開平11−162470号
【特許文献5】欧州特許出願第1032064号
【特許文献6】米国特許第4562511号
【特許文献7】仏国特許第2824418号
【特許文献8】仏国特許第2856397号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、意外なことに、ナノメートルサイズの炭素含有パウダーであっても、いくつかの条件を遵守すれば、ゾル−ゲル法を用い、ポリマーマトリクスに均等に分散できるということが発見された。これらの条件のいくつかは、この分野の常識に反するものである。所望の粘性を有した均質な分散液を得るために、特に大きな重要性を担っているのは、調製工程の順番と、その持続時間である。
【0017】
炭素含有物質のポリマーマトリクス内への分散が、ひとたび遂行されれば、集電体は、ディップ法(浸漬−引上げ法)を用いて、このゾルでコーティングされうる。ゾルの表面張力特性のおかげで、この混合物は、孔隙に入り込み、支持体の全表面を被覆する。この支持体に、続いて熱処理を施し、ポリマーマトリクスを除去する。こうして、表面を連続的で均質な炭素含有粒子層で被覆した支持体、たとえば集電体が得られる。
【0018】
このように、本発明の第一の目的は、ゾル−ゲル法を用いて炭素含有粒子をポリマーマトリクス分散する方法に係る。本発明の第二の目的は、この方法、すなわちゾルに炭素含有粒子を分散する方法によって、得ることが可能な溶液に係る。本発明のその他の目的は、抵抗の少ない集電体を製造するため、金属支持体上に均質な導電層を成膜する方法に係る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
より詳細には、本発明は、ナノメートルサイズの炭素含有粒子を分散した、バインダも分散剤も含まない分散液を調製する方法に係り、この方法は、
a)所定粘度のポリマーマトリクスを調製し、
b)このマトリックスに、炭素含有粒子と該マトリックスの溶媒である湿潤剤を、それぞれ使用総量の一部ずつ加え、
c)安定した粘度のゾルが得られるまで、これを攪拌し続け、
d)炭素含有粒子と溶媒を使いきるまで、ステップb)とステップc)を繰り返す、
ことからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
厳密には、粒子を懸濁するポリマーマトリクスは、予め用意しておく。そして、ゾルの調製を開始するまで、このマトリクスの温度を一定に保ち、所望の粘度を維持する。時間が経過しても変化せず、一定の粘度を保持するこうしたマトリクスを調製する技術は、様々なものが当業者には周知であり、使用されている。これに関しては、後に詳しく説明する。マトリクスの粘度値をどう設定するかは、実際、どのくらいの粘度の分散液を最終的に所望するかによって異なるのである。
【0021】
マトリクス内への粒子の導入は、溶媒の添加と並行して、少量ずつ行う。様々なマトリクス−溶媒の組み合わせを使用することができる。ただし、選択された溶媒は、炭素含有粒子のポリマーマトリクス内への導入、分散を可能とするため、同時に、炭素含有粒子の湿潤剤の役割を果たすものでなければならない。分散液の調製過程全体を通して、ゾルを強く攪拌し続ける必要があり、これにより、形成される可能性のある炭素含有物質の凝集体を破壊し、分散を確実なものする。
【0022】
この調製方法の原則は、少量の炭素含有物質と溶媒を、漸次的に加えていくということにある。高品質の分散液、すなわち、均質で、長い間不変の(特に、粘度に関して)分散液を得るためには、以下に記述する比率と作業条件を選択することが望ましい。
【0023】
本発明の方法の特徴の一つは、ステップb)を実行するたびに、100mlのポリマーマトリクスに対して、0.5g〜5g、好ましくは1g〜3gの炭素含有粒子を加えるということである。
【0024】
本発明の方法の特徴のもう一つは、ステップb)を最初に実行する際に加える溶媒の比率を、100mlのポリマーマトリクスに対して、少なくとも100mlとするということである。
【0025】
好ましくは、ステップb)を繰り返す際に加える溶媒の比率は、100mlのポリマーマトリクスに対して、20ml〜50mlである。
【0026】
ステップb)を繰り返す際に加える炭素含有粒子/溶媒の比率は、1%〜10%(m/v)であり、好ましくは、3%〜6%(m/v)である。この特徴は、後に均質な膜を形成するのに適正な、ある所定レベルの粘度の分散液を得ることを望む場合に重要である。実際、粘度は炭素含有粒子の量とともに増加するが、他方、たとえばアセチルアセトンのような溶媒は、高い流動性をもたらす。さらに、炭素含有粒子の過剰添加と、溶媒量の不足が結びつくと、ゾルは沈殿し、硬化する。実際には、ステップb)に従って3度の添加を行った後に、炭素含有粒子はすでに良好な分散を見せ、ゾルはより希釈され、硬化の危険が減少していることが観察された。したがって、その後は炭素含有粒子/溶媒の比率を大きくすることが可能であり、たとえば4%〜10%(m/v)とすることができる。
【0027】
本発明の興味深い特徴の一つは、ステップb)とステップc)を4回以上行うということ、好ましくは6回以上行うということである。いくつかのケースにおいては、たとえば高い濃度の炭素含有粒子分散液を所望するような場合は、ステップb)とステップc)を7回、またはそれ以上繰り返すことが必要となることもある。
【0028】
いずれにしても、所望の結果を得るためには、ステップc)において、粘度が安定するまでゾルを攪拌し続けることが不可欠である。ゾルは、チキソトロピック性(揺変性)であることが確認されており、時間の経過とともに粘度を変化させるが、ここでは粘度の減少が観察される。場合によっては、2時間の攪拌で十分なこともあるが、4時間以上攪拌を継続するのが通常であり、攪拌継続時間は8時間まで延長される可能性があり、特定のケースでは、さらに12時間まで延長されることもありうる。どのような反応を示すかまだ正確には分からない新しい組成物の分散液を作る場合、一定時間の間隔をあけて規則的にゾルの粘度を測定し、変化を制御することができるように、注意を払う必要がある。一定のせん断応力における粘度の測定は、一般的な粘度計(たとえばCouette粘度計)を用いて、容易に行うことができる。1時間の間隔をあけて測定した2つの粘度値の偏差が5%未満である場合、調製プロセスの続行が可能な安定性を示していると判断できる。
【0029】
本発明の方法における有益な特徴は、ここで、ステップb)の前後に、ゾルに超音波検査を行うということである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、最終的には、総量1g〜4gの炭素含有粒子を、100mlの最終分散液に導入する。さらに好ましい方法によれば、2g〜3gの炭素含有粒子を、100mlの最終分散液に導入する。本発明の方法のもう一つの好ましい実施形態によれば、総量60ml〜80mlの溶媒を、100mlの最終分散液に導入する。これらの濃度は、分散液を基板上で成膜する際に、均質な炭素含有粒子層の薄膜を得ることを可能とする。
【0031】
本発明の方法において、ナノメートルサイズの炭素含有粒子は、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、またはグラファイトといった、高い導電性を備えた物質から選択されることが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下の方法のいずれか1つによって、ポリマーマトリクスを得る。
【0033】
− 酸性溶媒内におけるヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンの縮合により、「シンプル」と呼ばれるマトリックスを得る。
【0034】
− 酸性溶媒内においてヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンが縮合したものに、エチレングリコールを添加して、「ミックス」と呼ばれるマトリックスを得る。
【0035】
ヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンからシンプルなポリマーマトリクスを作る方法は、当業者には周知であり、当業者であれば、所望の粘度を得るため要求される割合を用いて、必要に応じたマトリックスを得ることができる。これについては、実施例において説明する。
【0036】
一方、第2の方法は非常に革新的である。この方法は、比較的粘度の低いシンプルなマトリックスから作った集電体の場合、熱処理の間に、機械的分解により悪影響を受ける、という観察に端を発して開発された。この新しい組成のゾルは、粒子を浮遊状態に保持し、被膜すべき基板上に粒子を付着させる一方で、乾燥速度がより緩やかであり、満足のゆく粘度をもたらすという利点がある。エチレングリコールの作用メカニズムそれ自体は、まだ解明されていないが、ゾルの乾燥スピードに作用し(明らかに、乾燥速度は遅くなる)、層の収縮に起因する機械的応力を軽減し、これにより厚みの薄い基板の変形を回避するものと推測される。
【0037】
本発明のミックスマトリックスは、ポリマーとエチレングリコールを様々な割合で配合して作ることができる。ポリマー/エチレングリコールの容積比率が1:3〜2:1の組成であれば、有効に用いることができる。なお、好ましいポリマーマトリクスの容積比率は、ポリマー/エチレングリコール1:2である。
【0038】
基板上に導電層を成膜するために分散液を用いる場合、最終粘度をある特定の範囲内にすることが望ましいが、これは、ポリマーマトリクスが最初にある程度の粘度を有していると、容易に達成できる。このため、本発明の好ましい実施形態においては、ステップa)で得られるポリマーマトリクスの粘度を、10cP〜25cPとしている。
【0039】
同様に好ましい本発明の実施形態によれば、ステップc)の終了時点において、ゾルの粘度は10cP〜40cPである。この粘度は、本発明が意図する懸濁液の使用法からくる制約に対応するものである。すなわち、本発明は、浸漬−引き上げ法を用いて、所定の厚さの層(30μm〜50μmの範囲)を形成するために使用することができるものでなくてはならず、比較的濃度の低い(たとえば0.5mg/cm2〜1.5mg/cm2の範囲)炭素含有物質をかなりの量用意する必要がある。
【0040】
上述の方法により得られる分散液もまた、本発明の対象となる。より正確には、ナノメートルサイズの炭素含有粒子を含んだ分散液が対象となり、この分散液は、溶液総量比で、
i)1%〜4%、好ましくは2%〜4%(m/v)の懸濁した炭素含有粒子と、
ii)20%〜40%(v/v)のポリマーマトリクスと、および、
iii)ポリマーマトリクスの溶媒であり、バインダも分散剤も含まない湿潤剤と、からなる。
【0041】
好ましい実施形態によれば、炭素含有粒子は、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、またはグラファイトのような、導電性物質から選択される。
【0042】
もう一つの好ましい実施形態によれば、前記ポリマーマトリクスは、ヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンとの縮合生成物であり、何も混ぜないピュアなもの(シンプルマトリックス)、またはエチレングリコールで希釈したもの(ミックスマトリックス)がある。ミックスマトリックスは、ポリマーとエチレングリコールを様々な割合で配合して得ることができる。有益な容積比率は、ポリマー/エチレングリコール1:3〜2:1である。なお、好ましいポリマーマトリクスの容積比率は、ポリマー/エチレングリコール1:2である。
【0043】
さらにもう一つの好ましい実施形態によれば、ポリマーマトリクスの溶媒である前記湿潤剤は、アセチルアセトンまたはエタノールから選択される。
【0044】
最後に、上述のような、本発明の方法を用いて作られた炭素含有粒子の分散液が、本発明の対象となる。
【0045】
本発明の分散液は、10cP〜40cPの粘度を有することが好ましい。この粘度は、ディップ法を用いて、基板上に均質な炭素含有層を成膜することを可能にするものである。
【0046】
この炭素含有粒子の分散液は、様々な用途に使用することができる。たとえば、本発明の分散液は、基板上に、とりわけ、電気エネルギー貯蔵システムで使用される集電体を作るための基板上に、導電層を形成するのに有益である。この用途は、ゾルの分散特性および粘着特性を同時に利用しているという点に、利便性がある。
【0047】
したがって、本発明の目的は、基板上に導電性の炭素含有層を形成する方法に係り、この方法は本質的に
− 本発明に従って、ナノメートルサイズの炭素含有粒子の分散液を用意し、
− この分散液の層を基板上に形成し、
− この層を外気で乾燥させ、
− 熱処理を施して、前記少なくとも1つのポリマーを除去し、
− ブラッシングにより、基板に付着していない炭素含有粒子を取り除く、というステップからなる。
【0048】
このように、集電体上に成膜されるべき物質は、まず初めに、本発明のポリマーマトリクスに懸濁される。この物質は、たとえばグラファイト、カーボンブラック、活性炭、またはカーボンナノチューブのような、高い導電性を有する炭素含有物質から選択されることが好ましい。
【0049】
分散液の塗布は、当業者に周知の様々な方法を用いて行うことができる。たとえば、浸漬−引上げ法(「ディップコーティング」とも呼ばれる)、スピンコーティング、スリップコーティングなどの方法が使用できる。
【0050】
本発明の導電性炭素含有層の製造方法における有益な特徴によれば、炭素含有粒子の分散液は、10cP〜40cPの粘度を有し、浸漬−引上げ法により25cm/minの速度で基板上に塗布される。この技術は、所定の粘度を得るための収縮速度に従って作用することにより、炭素含有物質を含む層を、一定の厚さに制御して塗布することを可能とする。
【0051】
乾燥ステップは、最終製品の品質および性能にとって、重要である。このステップは、外気による乾燥のみで行うこともできるが、場合によっては、乾燥炉を通過させることもある。シンプルマトリックスから作った炭素含有分散液を使用する場合、乾燥時間は、15分〜1時間の範囲であるが、ミックスマトリックスから作った炭素含有分散液の場合は、10時間〜12時間の範囲となる。最後に、80℃まで30分間加熱することもできる。
【0052】
厚みの薄い基板(たとえば40μm〜70μmのもの)上に成膜することを望む場合、粘度10cP〜15cPのミックスマトリックスを使用し、ゾルを準備する際には、溶媒にエタノールを用いることが好ましい。こうして、10cP〜20cPの範囲の粘度を有する炭素含有懸濁液を得る。この懸濁液を焼成前に乾燥させるが、その乾燥時間は、数時間長くなる。この方法は、製造過程における薄い基板の機械的分解を回避するために、特に適している。
【0053】
ひとたび成膜が完了すれば、およそ450℃で4時間、層を焼成する。有機マトリックスを除去し、導電性の炭素含有膜を出現させるためには、この熱処理で十分である。この膜は、集電体を被覆し、その粗面に付着する。制御された化学量論の金属酸化物による合成に、ゾル−ゲル法を用いる場合、熱処理は700℃〜1000℃、もしくはそれ以上の高温で行う必要がある。この温度範囲は、アルミニウムの基板に炭素含有層を形成するためには、全くのところ不適切であることは明らかである。アルミニウムの溶解温度は、650℃だからである。このことは、ゾル−ゲル法が今日まで、本発明の目的のために使用されてこなかった理由の1つでもある。
【0054】
マトリックスの完全な焼成は、集電体の良好な作動のために不可欠である。さらに、処理の最後には、ブラッシングを施し、基板に付着しなかった炭素含有粒子を除去する。このステップもまた、求められる性能を得るためには不可欠である。
【0055】
本発明の技術は、いかなるバインダも必要としない。薄膜は、導電性炭素含有物質のみから形成されるため、バインダに起因する抵抗を回避することが可能となる。また、塗料をベースとしたコーティング剤には接着性ポリマーが用いられるが、本発明の技術によれば、そのような接着性ポリマーを使用する必要もない。本発明においては、ポリマーマトリクスにより、被膜に際して要望される接着特性が溶液に与えられ、このポリマーマトリクスは、後に除去される。導電粒子を固定するために、補充ポリマーを使用する必要もない。ここでもまた、接着剤に起因する抵抗を回避できる。
【0056】
本発明の導電性炭素含有層を作製する方法の実施例によれば、ここで用いられている基板は、予め表面に化学エッチングを施した、導電性金属製の多孔性支持体である。化学エッチングに関しては、たとえば酸洗浄が用いられるが、これにより、層の結合を容易にする粗面が作られ、交換面が増加する。
【0057】
本発明の導電性炭素含有層の形成方法を、電気エネルギー貯蔵システムにおける集電体の製造に応用することもまた、本発明の対象となる。
【0058】
最後に、本発明のもう一つの対象は、金属製集電体と活性膜からなる電気エネルギー貯蔵システムであり、ここで集電体は、上記に詳述した炭素含有粒子溶液を用いて得た導電性層で被覆されている。
【0059】
これらの電気エネルギー貯蔵システムには、特に、以下のものがある。
【0060】
− 二次電池(再充電可能なもの):リチウムイオン蓄電池またはリチウムポリマー蓄電池(おもに正極)、
− 活性炭または金属酸化物をベースとした超伝導体(正極および負極)、
− 電気化学キャパシタ(本質的に正極)。
【0061】
上述した技術を用いて得た集電体は、従来の集電体に比べて、向上した特性を有する。これらは、活性膜と集電体との接触抵抗が少ない。本発明のアルミニウム製集電体を用いて、実験室で組み立てた試験セルの抵抗は、標準的なアルミニウム製集電体を用いたセルの抵抗と比して、20%〜50%減少した。Fe−CrおよびFe−Cr−Niタイプのステンレス製薄板を用いた場合も、同様の結果が得られた。本発明の方法により製造したスーパーキャパシタにも、全体抵抗の減少が見られ、これにより単位質量当たりの出力が大幅に増加した。
【実施例】
【0062】
その他の利点および意味深い特性については、以下の実施例を参照されたい。
【0063】
なお、すべての粘度測定は、0℃の環境で、Couette粘度計(Lamy−Tve−05,position3)を使用して、一定のせん断速度(回転速度325cm/min)において行われた。
【0064】
[実施例1]
(シンプルポリマーマトリクスの調製)
26.25gのヘキサメチレンテトラミンと20mlのアセチルアセトンを混合し、ここに100mlの酢酸を加えた。この混合液を、ヘキサメチレンテトラミンが溶解するまで磁気攪拌し、次に、攪拌を続けながら100℃まで1時間加熱した。形成されたポリマーマトリクスを、室温で冷却した。ひとたび冷却されれば、ポリマーマトリクスは長期にわたって安定した粘度(17cP)を有した。
【0065】
なお、配合成分の割合を様々に変化させて、得られるマトリックスの粘度を調整することも可能であり、これにより粘度値10cP〜25cPのマトリックスを得ることができる。これらのマトリックスは、100μmを超える厚さの基板上に、炭素含有物質を成膜する場合の分散液を調製するのに適している。
【0066】
[実施例2]
(ミックスポリマーマトリクスの調製)
実施例1の方法で調製した、ヘキサメチレンテトラミンをベースとしたシンプルマトリックスに、エチレングリコールを加え、均質なゲルが得られるまで混ぜ合わせた。この実施例では、容量1のヘキサメチレンテトラミンに対して、容量2のエチレングリコールを使用した。このマトリクスの粘度値は、12cPであった。
【0067】
なお、配合成分の割合を様々に変化させて、得られるマトリックスの粘度を調整することも可能であり、これにより粘度値10cP〜15cPのマトリックスを得ることができる。これらのマトリックスは、薄い基板(100μm未満)の上に、炭素含有物質を成膜する場合の分散液を調製するのに適している。
【0068】
[実施例3]
(シンプルマトリックス内へのアセチレンブラックの分散)
アセチレンブラック3gを含有した120mlの分散液を調製する必要があった。炭素含有物質としてアセチレンブラック(Alfa Aesar社のカーボンブラック、ref2311533)を選択した。その粒子の平均サイズは、約50nmであり、これをヘキサメチレンテトラミンをベースとしたシンプルポリマーマトリクス内に分散した。溶媒にアセチルアセトンを使用した。
【0069】
実施例1の方法で調製した30mlのポリマーマトリクスを、適切な容器内に入れて攪拌した。ここに、まず最初に、40mlのアセチルアセトンで湿らせた0.25gのアセチレンブラックを導入してゾル化を開始させた。ゾルが形成された。これを12時間攪拌し続けて、アセチレンブラックの分散を助け、また、ゾルの硬化を防いだ。
【0070】
次に、0.5gのアセチレンブラックと10mlのアセチルアセトンを、12時間の間隔をあけて、連続的に追加した。この12時間という間隔は、粘度を安定させるために必要とされる攪拌継続時間に対応するものである(ゾルは揺変性であり、その粘度は攪拌時間にともない減少する)。この間ずつと500rpmの磁気攪拌を行った。さらに、成分追加の前後には、数分間の超音波攪拌(周波数30,000Hz、出力200w)を実行した。この作業を、n回繰り返した。この反復回数は、以下のように計算した。30mlのポリマーマトリクスから120mlの分散液を得るためには、90mlのアセチルアセトンを加える必要があり、そのうち40mlを初期段階で加え、50mlを反復ステップb)で5回に分けて加えた。さらに、3gのアセチレンブラックを、初期段階で0.25g加え、反復ステップb)で、2.75gを5回に分けて加えた。または、2.5gを5回に分けて加えた後、最後にアセチレンブラックだけを0.25g加えて、最終調整を行った。
【0071】
本実施例における成分の量や連続追加の回数は、ある一定の範囲内において、各成分がゾルの特性に与える影響を考慮した上で、変更可能である。実際、炭素含有物質はゾルの粘度を減少させ、一方、アセチルアセトンはこれを増加させる。さらに、炭素含有物質の過剰添加とアセチルアセトン量の不足が結びつくと、ゾルは沈殿し硬化することが確認された。同様に、この後基板に成膜すること意図する炭素含有物質の機能に応じて、ポリマーマトリクス、炭素含有物質、溶媒の量を調整することも必要である。
【0072】
従って、前記実施例に適正な妥協点を見いだし、以下のような調整を行うことが必要である。
【0073】
− 実施例1の方法で調製したポリマーマトリクス30mlに、
− 40mlのアセチルアセトンで湿らせた0.25gのアセチレンブラックを導入してゾル化を開始し、
− 0.3g〜0.5gのアセチレンブラックと10ml〜20mlのアセチルアセトンを4回〜8回添加し、
− アセチレンブラックのみを追加して、最終調整することにより、
2.5g〜3.5gのアセチレンブラックと、80ml〜100mlの溶媒を含んだ、30cP〜40cPの粘度値の、110ml〜130mlの分散液を得る。
【0074】
[実施例4]
(基板上への導電性炭素含有層の形成)
実施例3の方法で調製した分散液を用いて、細長い、純度99.9%のアルミニウム板(Alcan社製)を被膜した。アルミニウム板は、ラミネート加工をした後に電気化学的処理を施して、直径数ミクロンの深いチャネルにより、表面に多数の孔を形成したものを使用した。電気化学処理後のアルミニウム板の厚さは、150μm〜250μmであった。コーティングは、周知の浸漬−引上げ法により、30cm/min〜50cm/minの引き上げ速度で行った。次に、アルミニウム板を外気で30分乾燥させ、その後80℃の炉に30分入れた。
【0075】
次に、基板に、熱処理を施した。この熱処理は、1時間に100℃以上の割合で温度を次第に上昇させ、400℃に達した段階で、15分間かけて450℃まで上昇させるという方法で行われた。その後、この温度レベルを空中で4時間維持した。ポリマーマトリクスの分解は、およそ250℃〜300℃で始まった。熱処理の最後には、ポリマーマトリクスは完全に除去された。このことは、炭素含有層が良好な導電性を獲得するために必要不可欠である。なぜなら、ポリマーマトリクスは絶縁性であるため、アルミニウムと活物質間の電流通過を妨害することになるからである。基板を冷却した後、ブラッシングを施して、基板に付着しなかった炭素含有粒子を除去した。これらの粒子は、集電体と活物質との間に、不完全な結合ゾーンを発生させる危険性があるからである。
【0076】
基板上に成膜された層は、一様で、10μm〜30μmの厚さであった。層は、均質で、粘着性と被覆性があり、その必須条件として、支持体と1点の隙なく完全に接触した。それは、集電体の導電性炭素含有インターフェースとして、使用可能なものであった。
【0077】
[実施例5]
(ミックスマトリックス内へのアセチレンブラックの分散)
アセチレンブラック10gを含有する280mlの分散液を調製した。炭素含有物質としてアセチレンブラック(Alfa Aesar社のカーボンブラック、ref2311533)を選択した。その粒子の平均サイズは、約50nmであり、これをヘキサメチレンテトラミンとエチレングリコールをベースとしたミックスポリマーマトリクス内に分散した。ここでは、溶媒にエタノールを選択した。
【0078】
実施例2の方法で調製した120mlのポリマーマトリクスを、適切な容器内に入れて攪拌した。ここに、まず最初に、40mlのエタノールで湿らせた3gのアセチレンブラックを導入してゾル化を開始させた。ゾルが形成された。これを4時間攪拌し続けて、アセチレンブラックの分散を助け、また、ゾルの硬化を防いだ。
【0079】
次に、2gのアセチレンブラックと40mlのエタノールを、4時間(すなわち、粘度が安定するまでの時間)の間隔をあけて、連続的に追加した。この間ずつと、1000rpmの磁気攪拌下にゾルを維持した。さらに、成分追加の前後には、15〜30分間の超音波攪拌(周波数30,000Hz、出力200w)を実行した。この作業を、次のように分けて、n=3回繰り返した。すなわち、必要とされる160mlのエタノールのうち40mlを初期段階で加え、その後40mlずつ3回繰り返して追加した。また、10gのアセチレンブラックのうち3gを初期段階で加え、その後2gずつ3回繰り返して追加し、最後に1回1g加えて最終調整した。
【0080】
こうして得られた組成物の粘度は、13.6cPであった。エチレングリコールを用いることで、粘度の迅速な安定化が進み、作業全体の継続時間を大幅に短縮することが分かった。
【0081】
本実施例における成分の量や連続追加の回数は、ある一定の範囲内において、各成分がゾルの特性に与える影響を考慮した上で、変更可能である。従って、前記実施例にを、以下のように調整することも可能である。
【0082】
− 実施例2の方法で調製したポリマーマトリクス120mlに、
− 3gのアセチレンブラックと40mlのエタノールを導入してゾル化を開始し、
− 2g〜4gのアセチレンブラックと40ml〜60mlのエタノールを2回〜4回繰り返して追加し、
− アセチレンブラックのみを最後に追加して、最終調整することにより、
6g〜15g(好ましくは8g〜12g)のアセチレンブラックと、総量80ml〜240mlのエタノールを含んだ、10cP〜20cPの粘度値の、200ml〜360mlの分散液を得る。
【0083】
[実施例6]
(薄い基板上への導電性炭素含有層の形成)
実施例5の方法で調製した分散液を用いて、実施例4と同様にして得た厚さ50μm〜80μmの細長いアルミニウム板を被膜した。コーティングは、浸漬−引き上げ法により、25cm/min〜35cm/minの引き上げ速度で行った。次に、アルミニウム板を外気で10〜12時間乾燥させ、その後80℃の炉に3〜4時間入れた。次に、実施例4と同様の手順に従い、基板に、450℃の熱処理を4時間施した。
【0084】
基板上に成膜された層は、一様で、10μm〜30μmの厚さであった。層は、均質で、粘着性と被覆性があり、その必須条件として、支持体と1点の隙なく完全に接触した。それは、集電体の導電性炭素含有インターフェースとして、使用可能なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノメートルサイズの炭素含有粒子を分散した、バインダも分散剤も含まない分散液を調製する方法であって、
a)所定粘度のポリマーマトリクスを調製し、
b)前記マトリックスに、炭素含有粒子と該マトリックスの溶媒である湿潤剤を、それぞれの使用総量の一部ずつ加え、
c)安定した粘度のゾルが得られるまで、これを攪拌し続け、
d)使用総量の炭素含有粒子と溶媒を使いきるまで、ステップb)とステップc)を繰り返す、
ことを特徴とする、分散液の調製方法。
【請求項2】
前記ステップb)を実行する毎に、100mlのポリマーマトリクスに対して、0.5g〜5g、好ましくは1g〜3gの炭素含有粒子を加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)を最初に実行する際に、前記溶媒を100mlのポリマーマトリクスに対して、少なくとも100mlの比率で加えることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)を繰り返す際に、前記溶媒を100mlのポリマーマトリクスに対して、20ml〜50mlの比率で加えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)を繰り返す際に、炭素含有粒子/溶媒の比率を、1%〜10%(m/v)、好ましくは、3%〜6%(m/v)とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)とステップc)を4回以上、好ましくは6回以上行うということを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の実行毎に、実行前と実行後のそれぞれにおいて、ゾルに超音波検査を行うということを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
総量1g〜4g、好ましくは総量2g〜3gの炭素含有粒子が、100mlの最終分散液に導入されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
総量60ml〜80mlの溶媒が、100mlの最終分散液に導入されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノメートルサイズの炭素含有粒子は、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、またはグラファイトから選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーマトリクスの溶媒である湿潤剤は、アセチルアセトンまたはエタノールから選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーマトリクスを、
酸性溶媒内において、ヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンを縮合させる、あるいは、
酸性溶媒内において、ヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンを縮合させ、これにエチレングリコールを添加する、
という方法のいずれかにより得ることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーマトリクスが、ポリマーとエチレングリコールの容積比率において、1:3〜2:1、好ましくは1:2であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)で得られるポリマーマトリクスの粘度が、10cP〜25cPであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各ステップc)の終了時点において、ゾルの粘度を10cP〜40cPとすることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶液総量比で、
i)1%〜4%、好ましくは2%〜4%(m/v)の懸濁された炭素含有粒子と、
ii)20%〜40%(v/v)のポリマーマトリクス、および、
iii)ポリマーマトリクスの溶媒であり、バインダも分散剤も含まない湿潤剤、
とからなることを特徴とする、ナノメートルサイズの炭素含有粒子の分散液。
【請求項17】
前記炭素含有粒子は、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、またはグラファイトから選択されることを特徴とする、請求項16に記載の炭素含有粒子分散液。
【請求項18】
前記ポリマーマトリクスは、純物またはエチレングリコールで希釈された、ヘキサメチレンテトラミンとアセチルアセトンとの縮合生成物であることを特徴とする、請求項16または17に記載の炭素含有粒子分散液。
【請求項19】
前記ポリマーマトリクスが、ポリマーとエチレングリコールの容積比率において、1:3〜2:1、好ましくは1:2であることを特徴とする、請求項18に記載の炭素含有粒子分散液。
【請求項20】
前記ポリマーマトリクスの溶媒である湿潤剤は、アセチルアセトンまたはエタノールから選択されることを特徴とする、請求項16〜19のいすれか一項に記載の炭素含有粒子分散液。
【請求項21】
請求項1〜15の方法を用いて調製された、請求項16〜20に記載の炭素含有粒子分散液。
【請求項22】
10cP〜40cPの粘度を有することを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の炭素含有分散液。
【請求項23】
ナノメートルサイズの炭素含有粒子の分散液を、請求項16〜22に従って調製し、
この分散液の層を基板上に成膜し、
この層を外気で乾燥させ、
熱処理を施して、前記少なくとも1つのポリマーを除去し、
ブラッシングにより、基板に付着していない炭素含有粒子を取り除く、
というステップを有する、基板上に導電性炭素含有層を形成する方法。
【請求項24】
前記分散液の層は、10cP〜40cPの粘度を有し、浸漬−引上げ法により25cm/minの速度で基板上に成膜されることを特徴とする、請求項23に記載の基板上に導電性炭素含有層を形成する方法。
【請求項25】
前記基板は、予め表面に化学エッチングを施した、導電性金属製の多孔性支持体であることを特徴とする、請求項23または24に記載の基板上に導電性炭素含有層を形成する方法。
【請求項26】
請求項23〜25に記載したいずれかの方法を適用した、電気エネルギー貯蔵システムにおける集電体の製造方法。
【請求項27】
金属製集電体と活性膜を有し、該集電体が、請求項16〜22に記載したいずれかの炭素含有粒子溶液を用いて得た導電性層で被覆されていることを特徴とする、電気エネルギー貯蔵システム。

【公表番号】特表2009−516891(P2009−516891A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532828(P2008−532828)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002205
【国際公開番号】WO2007/036641
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508096714)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック (2)
【Fターム(参考)】